JP6124373B2 - ダイヤモンド半導体装置及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、ダイヤモンド結晶の選択的成長を利用したダイヤモンド半導体装置及びその製造方法に関する。
電気を効率的に利用するため、発電から消費に至るまで多段に亘る電力変換(交流・直流変換、周波数変換)が行われており、多数の半導体パワーデバイスが用いられている。
これら半導体パワーデバイスにおける電力損失を低減化することは、省エネルギー化に向けた重要なカギとなる。
ダイヤモンドは、半導体材料として広く用いられているシリコンに対して、ワイドバンドギャップであり、更に融点、熱伝導率、耐絶縁破壊性、キャリア速度限界、硬度・弾性定数、化学的安定性及び耐放射線性が高く、電子デバイス材料、特に半導体パワーデバイスの形成材料として、極めて高いポテンシャルを有している。
しかしながら、ダイヤモンドは、他の半導体材料に対して行われているイオン注入法等による不純物ドープが困難で、n型不純物ドープ領域の選択的形成に課題があり、目的に応じたデバイス設計を行うことができない問題があった。
こうした問題に対し、本発明者らは、これまで結晶面が制御されたダイヤモンド基板に形成した段差形状の底角を起点にn型不純物ドープダイヤモンド領域を結晶成長させることで、n型不純物がドープされたダイヤモンドの選択的形成に成功し、ダイヤモンド半導体装置の実現に向けた提案を行ってきた(特許文献1参照)。
しかしながら、半導体パワーデバイスを含む種々の素子構成からなる電子デバイスを具体的に構築する方法が課題として残され、よりデバイス設計の自由度が高いダイヤモンド半導体装置及びその製造方法の開発が求められてきた。特に、狙った位置に不純物がドープされたダイヤモンド領域とドープされていないダイヤモンドの絶縁領域を選択的に一体形成して、これらの領域で素子分離可能とする素子構造を構築することができれば、例えば、ドープ領域周辺を絶縁領域で分離し、ドープ領域周辺の素子領域のみをチャネル長として規定されたFET(電界効果型トランジスタ)構造を有するダイヤモンド半導体装置を実現することもでき、デバイス設計の自由度が大幅に高められるとともに、ダイヤモンド半導体装置を効率的に製造することができる。
国際公開第2010/001705号公報
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、デバイス設計の自由度を大幅に高めるとともに、効率的に製造可能なダイヤモンド半導体装置及びその製造方法を提供することを目的とする。
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 一の面側に第1p型半導体層が形成されるダイヤモンド基板と、第2p型半導体層で形成されるとともに前記ダイヤモンド基板の{001}の結晶面を有する前記一の面を基板面として前記基板面に対し略垂直方向に隆起して配され、その隆起された上面及び側面と前記基板面とで段差形状を形成するダイヤモンド段差部と、n型のリンドープダイヤモンド領域と、ダイヤモンド絶縁領域と、を有し、前記ダイヤモンド段差部は、側面が{110}の結晶面を有する第1段差部と、側面が{100}の結晶面を有する第2段差部とが一体に形成され、前記リンドープダイヤモンド領域は、前記第1段差部の前記段差形状の底角を起点に前記第1段差部の側面及び前記ダイヤモンド基板の前記基板面を成長基面として結晶成長させて形成され、前記ダイヤモンド絶縁領域は、前記第2段差部の側面及び前記ダイヤモンド基板の前記基板面を成長基面として結晶成長させて形成され、平面視で細長のライン状に形成される前記第1段差部の両側面にそれぞれ形成された前記リンドープダイヤモンド領域にゲート電極がそれぞれ形成され、前記第1段差部を胴部としていずれかの端部位置に形成される前記第2段差部上にソース電極が形成され、前記ダイヤモンド基板の前記第1p型半導体層が形成される前記基板面と反対側の面上にドレイン電極が形成されることを特徴とするダイヤモンド半導体装置。
本発明によれば、従来技術における前記諸問題を解決することができ、デバイス設計の自由度を大幅に高めるとともに、効率的に製造可能なダイヤモンド半導体装置及びその製造方法を提供することができる。
図1は、第1実施形態に係るダイヤモンド半導体装置の製造プロセスを示す図(1)である。 図2は、第1実施形態に係るダイヤモンド半導体装置の製造プロセスを示す図(2)である。 図3は、第1実施形態に係るダイヤモンド半導体装置の製造プロセスを示す図(3)である。 図4は、第1実施形態に係るダイヤモンド半導体装置の製造プロセスを示す図(4)である。 図5(a)は、ゲート電圧の印加状況に応じて変化する空乏層の広がりを示す図(1)である。 図5(b)は、ゲート電圧の印加状況に応じて変化する空乏層の広がりを示す図(2)である。 図5(c)は、ゲート電圧の印加状況に応じて変化する空乏層の広がりを示す図(3)である。 図5(d)は、ゲート電圧の印加状況に応じて変化する空乏層の広がりを示す図(4)である。 図6は、第2実施形態に係るダイヤモンド半導体装置の製造プロセスを示す図(1)である。 図7は、第2実施形態に係るダイヤモンド半導体装置の製造プロセスを示す図(2)である。 図8は、第2実施形態に係るダイヤモンド半導体装置の製造プロセスを示す図(3)である。 図9は、第2実施形態に係るダイヤモンド半導体装置の製造プロセスを示す図(4)である。 図10(a)は、第3実施形態に係るダイヤモンド半導体装置の断面構造を部分的に示す説明図である。 図10(b)は、図10(a)の部分平面図である。 図11は、第4実施形態に係るダイヤモンド半導体装置の断面構造を部分的に示す説明図である。 図12は、様々なゲート電圧におけるドレイン電流−ドレイン電圧の特性を示す図である。 図13は、ドレイン電圧が−10Vにおけるドレイン電流−ゲート電圧の特性を示す図である。
(ダイヤモンド半導体装置及びその製造方法)
本発明のダイヤモンド半導体装置は、ダイヤモンド基板と、ダイヤモンド段差部と、n型のリンドープダイヤモンド領域と、ダイヤモンド絶縁領域を有し、必要に応じてその他の構造部分を有する。
<ダイヤモンド基板>
前記ダイヤモンド基板は、ダイヤモンドの単結晶基板としてなり、その基板表面が{001}の結晶面を有する。このような特徴を有する基板であれば、特に制限はなく、市販品等公知の基板から適宜選択して用いることができる。
<ダイヤモンド段差部>
前記ダイヤモンド段差部は、前記ダイヤモンド基板の{001}の結晶面を有する基板面上に略垂直に隆起して配され、その隆起された上面及び側面と前記基板面とで段差形状を形成する。この前記ダイヤモンド段差部は、側面が{110}の結晶面を有する第1段差部と、側面が{100}の結晶面を有する第2段差部とが一体に形成されることを特徴とする。このような結晶面が異なる2つの段差部を有することで、これらの側面に形成される前記リンドープダイヤモンド領域と前記ダイヤモンド絶縁領域で素子分離可能とする素子構造を構築することができる。即ち、前記リンドープダイヤモンド領域に基づき形成される半導体装置の通電領域に隣接して前記ダイヤモンド絶縁領域が形成されるため、他の素子に電流がリークすることなく、個々の素子のデバイス設計を行うことができる。
前記ダイヤモンド段差部は、前記ダイヤモンド基板に対して、前記第1段差部及び前記第2段差部が形成されるようにマスクを用いたリソグラフィ加工を行うことで形成される(ダイヤモンド段差部形成工程)。
即ち、前記ダイヤモンド基板上に、前記第1段差部及び前記第2段差部が形成されるようにマスクを形成した後、該マスクを用いたリソグラフィ加工を行うことで製造することができる。この際、前記マスクの形成は、前記リソグラフィ加工で形成される前記第1段差部及び前記第2段差部の側面における結晶面がそれぞれ{110}面、{100}面となるように形成位置を考慮して行う。前記第1段差部の側面を{110}面とし、前記第2段差部の側面を{100}面とするためには、平面視で前記第1段差部の側面が延在する方向に対して45°傾けた方向に沿って前記第2段差部の側面を形成すればよい。
前記ダイヤモンド段差部としては、特に制限はないが、n型の前記リンドープダイヤモンド領域とp/n接合を形成するように、p型不純物がドープされたp型不純物ドープ領域を有していてもよい。
この場合、ダイヤモンド源とp型不純物源を原料ガスとして用いたCVD(Chemical Vaper Deposition)により表面側にp型不純物ドープ層が形成されたダイヤモンド基板を用い、これをリソグラフィ加工することで、前記ダイヤモンド段差部中に前記p型不純物ドープ領域を形成することができる。
前記p型不純物としては、ボロンが挙げられ、前記p型不純物領域におけるボロン濃度としては、1×1015cm−3〜1×1018cm−3が好ましい。
前記ダイヤモンド段差部の形状としては、前記第1段差部と前記第2段差部を有する限り特に制限はないが、例えば、前記第1段差部が平面視で細長のライン状に形成され、前記第2段差部が前記第1段差部を胴部として少なくともいずれかの端部位置に一体形成される形状を好適に挙げることができる。
前記ライン状に形成される第1段差部の線幅Wとしては、100nm〜10μmが好ましい。前記線幅が100nm未満であるとリソグラフィでパターン形成できないことがあり、10μmを超えると100ボルト以下の有効な電圧で半導体装置をオフ状態にすることができないことがある。
また、前記ライン状に形成される第1段差部の高さHと線幅Wとの比であるH/Wとしては、0.001〜100が好ましい。前記H/Wが0.001未満であると第1段差部の高さHを制御して形成できないことがあり、100を超えると段差を形成できないことがある。
前記好適な形状に関し、素子分離を好適に行う目的で、前記第2段差部は、少なくとも一部に平面視で前記第1段差部のライン方向を基準として左右側に位置する側面のそれぞれに{100}の結晶面を有することがより好ましい。
また、前記好適な形状に関し、前記ダイヤモンド段差部としては、より実用的な半導体装置を形成する目的で、前記ダイヤモンド基板上に複数配されていてもよく、この場合、前記ダイヤモンド段差部同士が前記第1段差部のライン方向を基準とした左右位置に並設されることが好ましい。
また、並設される前記ダイヤモンド段差部における前記第1段差部間の間隔としては、前記第1段差部の高さHに対して0.01倍〜2倍程度が好ましい。前記間隔が0.01倍より小さいと段差部を有する深い溝を制御して形成できないことがあり、2倍程度より大きいと溝の部分をリンドープダイヤモンド層で埋めることができないことがある。
<リンドープダイヤモンド領域及びダイヤモンド絶縁領域>
前記リンドープダイヤモンド領域は、前記第1段差部の前記段差形状の底角を起点に前記第1段差部の側面及び前記ダイヤモンド基板の前記基板面を成長基面として結晶成長させて形成される。また、前記ダイヤモンド絶縁領域は、前記第2段差部の側面及び前記ダイヤモンド基板の前記基板面を成長基面として結晶成長させて形成される。
これらダイヤモンドの結晶成長領域は、ダイヤモンド源及びリン源を原料ガスとして用いたCVDにより、前記第1段差部の前記段差形状の底角を起点に前記第1段差部の側面及び前記ダイヤモンド基板の前記基板面を成長基面として前記リンドープダイヤモンド領域を結晶成長させて形成すると同時に、前記第2段差部の側面及び前記ダイヤモンド基板の前記基板面を成長基面として前記ダイヤモンド絶縁領域を結晶成長させて形成する(リンドープダイヤモンド領域−ダイヤモンド絶縁領域形成工程)。
前記ダイヤモンド段差部の第1段差部をライン状に形成する場合、前記リンドープダイヤモンド領域−ダイヤモンド絶縁領域形成工程により該第1段差部の両側面に前記リンドープダイヤモンド領域を形成することができる。
また、前記第2段差部に前記第1段差部のライン方向を基準として左右側に位置する側面のそれぞれに{100}の結晶面が形成される場合、前記リンドープダイヤモンド領域−ダイヤモンド絶縁領域形成工程により、これらの結晶面に前記ダイヤモンド絶縁領域を形成することができる。
前記リンドープダイヤモンド領域におけるリン濃度としては、特に制限はないが、1×1016cm−3〜1×1021cm−3が好ましく、5×1016cm−3〜5×1020cm−3がより好ましい。リン濃度が1×1016cm−3未満であるとリンドープダイヤモンド領域がダイヤモンド絶縁領域と同様の絶縁層となることがあり、1×1021cm−3を超えるとリンドープタイヤモンド領域の結晶性の劣化により半導体装置の性能を低下させることがある。
前記その他の構造部分としては、特に制限はなく、構築する半導体装置の設計目的に応じて適宜選択することができ、例えば、電極、pコンタクト領域等が挙げられる。
前記電極としては、構築する半導体装置に応じて形成され、接合型電界効果トランジスタを作製する場合には、ゲート電極、ソース電極、ドレイン電極が形成される。
即ち、前記接合型電界効果トランジスタを作製する場合、前記第1段差部の両側面にそれぞれ形成された前記リンドープダイヤモンド領域に前記ゲート電極がそれぞれ形成され、前記第2段差部が前記第1段差部を胴部としてその両端部位置にそれぞれ形成される2つの前記第2段差部のうち、一の前記第2段差部に前記ソース電極が形成され、他の前記第2段差部に前記ドレイン電極が形成される。
また、前記pコンタクト領域は、金属との接触抵抗を小さくする目的で配され、前記第2段差部に形成された後、該pコンタクト領域と接触するように各種金属電極が形成される。なお、pコンタクト領域にドープされるボロン濃度としては、1×1019cm−3〜1×1022cm−3程度が好ましい。
<第1実施形態>
本発明の前記ダイヤモンド半導体装置の実施形態の例を以下に説明する。
先ず、図1〜図4を参照しつつ、前記ダイヤモンド半導体装置の第1実施形態について、その製造プロセスとともに説明する。この第1実施形態に係るダイヤモンド半導体装置は、平面型の接合型電界効果トランジスタを構成する。なお、各図中、左側は平面を示し、右側は断面を示す。
先ず、基板面が{001}の結晶面を有するダイヤモンド基板1を用意し、この基板面上に、ダイヤモンド源とp型不純物源を原料ガスとして用いたCVDにより、p型不純物がドープされたp型ダイヤモンド層2を形成する(図1参照)。
次いで、マスクを用いたリソグラフィ加工により、ダイヤモンド基板1及びp型ダイヤモンド層2がダイヤモンド段差部2’を有するようにエッチングする(図2参照)。この時、ダイヤモンド段差部2’には、側面の結晶面が{110}で細長のライン状に形成される第1段差部3と、該第1段差部3を胴部としてその両端部位置に側面の結晶面が{100}の第2段差部4a,4bが形成される。第1段差部3における{110}面は、ダイヤモンド基板1の<110>方向の結晶方位に沿って側面を形成することで形成される。また、第2段差部4a,4bにおける{100}面は、第1段差部3の側面が延在する
方向に対して45°傾けた方向に沿って側面を形成することで形成され、第2段差部4a,4bのそれぞれは、その側面において4つの{100}面を有する。なお、ライン状に形成される第1段差部3の線幅、高さは、それぞれ図2中の符号W,Hで表される。
次いで、ダイヤモンド源とリン源を原料として用いたCVDにより、第1段差部3の段差形状の底角を起点に第1段差部の側面({110}面)及びダイヤモンド基板1の基板面を成長基面としてリンドープダイヤモンド領域5a,5bを結晶成長させて形成すると同時に、第2段差部4a,4bの側面({100}面)及びダイヤモンド基板1の基板面を成長基面としてダイヤモンド絶縁領域6a,6bを形成する(図3参照)。この時、ダイヤモンド基板1の基板面自体には、ダイヤモンドの結晶成長がみられず、また、第2段差部4a,4bの側面に形成されるダイヤモンド絶縁領域6a,6bには、リンがほとんどドープされず、絶縁領域とみなせる。したがって、ダイヤモンド段差部2’の形状に基づき、第1段差部3の側面にのみリンドープダイヤモンド領域5a,5bを選択形成し、第2段差部4a,4bの側面にのみダイヤモンド絶縁領域6a,6bを選択形成することができる。
最後に、第2段差部4a上にソース電極8、第2段差部4b上にドレイン電極9を形成し、リンドープダイヤモンド領域5a,5b上にそれぞれゲート電極7a,7bを形成する。これにより、第1実施形態に係るダイヤモンド半導体装置10を製造する(図4参照)。
この平面型の接合型電界効果トランジスタとして構成されるダイヤモンド半導体装置10の素子動作を図5(a)〜図5(d)を用いて説明する。図5(a)〜図5(d)は、ゲート電圧の印加状況に応じて変化する空乏層の広がりを示す図であり、図5(a)から図5(d)に進むにしたがって、ゲート電圧を増加させた様子を示している。ゲート電圧を印加しない状態(図5(a)参照)から、ゲート電圧を印加し始めると、第1段差部3のp型ダイヤモンド領域(チャネル領域)に空乏層Dが生じる(図5(b)参照)。この空乏層Dは、ゲート電圧を増加させると大きく広がり(図5(c)参照)、最終的には、p型ダイヤモンド領域全体に対して支配的に広がる(図5(d)参照)。これにより、ダイヤモンド半導体装置10をソース−ドレイン間に流れるドレイン電流が空乏層Dにより制御された素子とすることができる。
このダイヤモンド半導体装置10においては、ダイヤモンド絶縁領域6a,6bの存在により、ドレイン電流が他の素子に漏洩することがなく、確実に素子分離を行うことができるとともに、ソース−ドレイン間に形成されるチャネル長をダイヤモンド絶縁領域6a,6bの配設位置で確実に規定することができる。
<第2実施形態>
次に、先ず、図6〜図9を参照しつつ、前記ダイヤモンド半導体装置の第2実施形態について、その製造プロセスとともに説明する。この第2実施形態に係るダイヤモンド半導体装置は、第1実施形態に係るダイヤモンド半導体装置にpコンタクト領域を追加形成したものに係る。なお、各図中、左側は平面を示し、右側は断面を示す。
先ず、基板面が{001}の結晶面を有するダイヤモンド基板11を用意し、この基板面上に、ダイヤモンド源とp型不純物源を原料ガスとして用いたCVDにより、p型不純物がドープされたp型ダイヤモンド層12aと、p型不純物が高濃度にドープされたpダイヤモンド層12bを形成する(図6参照)。
次いで、マスクを用いたリソグラフィ加工により、ダイヤモンド基板11及びp型ダイヤモンド層12aがダイヤモンド段差部12a’を有するようにエッチングする(図7参照)。この時、ダイヤモンド段差部12a’には、側面の結晶面が{110}で細長のライン状に形成される第1段差部13と、該第1段差部13を胴部としてその両端部位置に側面の結晶面が{100}の第2段差部14a,14bが形成される。また、第2段差部14a,14b上にpダイヤモンド層12bがリソグラフィ加工されたpコンタクト領域12b’,12b’’が形成される。
次いで、ダイヤモンド源とリン源を原料として用いたCVDにより、第1段差部13の段差形状の底角を起点に第1段差部の側面({110}面)及びダイヤモンド基板11の基板面を成長基面としてリンドープダイヤモンド領域15a,15bを結晶成長させて形成すると同時に、第2段差部14a,14bの側面({100}面)及びダイヤモンド基板11の基板面を成長基面としてダイヤモンド絶縁領域16a,16bを形成する(図8参照)。
最後に、pコンタクト領域12b’上にソース電極18、pコンタクト領域12b’’上にドレイン電極19を形成し、リンドープダイヤモンド領域15a,15b上にそれぞれゲート電極17a,17bを形成する。これにより、第2実施形態に係るダイヤモンド半導体装置20を製造する(図9参照)。
この第2実施形態に係るダイヤモンド半導体装置20においては、pコンタクト領域12b’,12b’’を有するため、金属電極との接触抵抗を小さくすることができる。
これ以外は、第1実施形態に係るダイヤモンド半導体装置10と同様であるため、説明を省略する。
なお、本発明の前記ダイヤモンド半導体装置の応用先としては、これら平面型の電界効果半導体装置の例に限定されることなく、種々の素子構成を有する半導体装置を挙げることができる。
<第3実施形態>
また、本発明の前記ダイヤモンド半導体装置としては、平面型のデバイス構成だけでなく、縦型のデバイス構成とすることができる。
縦型のデバイス構成を有する半導体装置の一例として、縦型の接合型電界効果型トランジスタを構成する第3実施形態に係るダイヤモンド半導体装置を図10(a),(b)を参照しつつ説明する。なお、図10(a)は、第3実施形態に係るダイヤモンド半導体装置の断面構造を部分的に示す説明図であり、図10(b)は、その部分平面図である。
この第3実施形態に係るダイヤモンド半導体装置30は、図10(a),(b)に示すように、ダイヤモンド基板21と、p型半導体層22と、該p型半導体層22に形成されたダイヤモンド段差部22’と、ダイヤモンド段差部22’の第1段差部23の側面に形成されたリンドープダイヤモンド領域25と、第2段差部24の側面に形成されたダイヤモンド絶縁領域26と、リンドープダイヤモンド領域25上に形成されたゲート電極27と、第2段差部24上に形成されるソース電極28と、ダイヤモンド基板21のp型半導体層22が形成される面と反対側の面に形成されるドレイン電極29とで構成される。
なお、ここでは、ダイヤモンド段差部22’が複数配され、該ダイヤモンド段差部22’同士が第1段差部23のライン方向を基準とした左右位置に並設される。また、第2段差部24は、ライン状の第1段差部23の一方の端部に形成される。第1段差部23間の間隔は、図10(b)中の符号Sで表される。
このダイヤモンド半導体装置30の基本構造は、ダイヤモンド基板21とp型半導体層22とで形成される下地をダイヤモンド基板21’として取り扱い、第1実施形態に係るダイヤモンド半導体装置10と略同様の方法で製造することができる。また、各種電極の配設も従来公知の製造方法により形成することができる。
このように構成される縦型の接合型電界効果型トランジスタとしての第3実施形態に係るダイヤモンド半導体装置30においては、図10(a)中に矢印で示すようにチャネルが形成され、第1実施形態に係るダイヤモンド半導体装置10と同様の動作原理で動作させることができる。
<第4実施形態>
縦型のデバイス構成の他の例として、縦型MOSFETを構成する第4実施形態に係るダイヤモンド半導体装置を図11を参照しつつ説明する。なお、図11は、第4実施形態に係るダイヤモンド半導体装置の断面構造を部分的に示す説明図である。
この第4実施形態に係るダイヤモンド半導体装置40は、図11に示すように、ダイヤモンド基板31と、p型半導体層32と、該p型半導体層32に形成されたダイヤモンド段差部32’と、ダイヤモンド段差部32’の第1段差部の側面に形成されたリンドープダイヤモンド領域35と、第2段差部の側面に形成されたダイヤモンド絶縁領域(図示略)とを有する。リンドープダイヤモンド領域35の形成領域近傍には、実施例1と同様の方法によりリンドープダイヤモンド領域35を一旦形成した後、その一部をエッチングすることにより部分的に除去し、該除去部に対してCVD加工して形成したダイヤモンドのp領域41が配される。
この状態で、p領域41の一部とリンドープダイヤモンド領域35とダイヤモンド段差部32’上に、ゲート絶縁膜37aを介してゲート電極37bが形成されるとともに、p領域41の開放された領域上にソース電極38が形成される。また、ダイヤモンド基板31のp型半導体層32が形成される面と反対側の面には、ドレイン電極39が形成される。このようにして、縦型MOSFET構造を有する第4実施形態に係るダイヤモンド半導体装置40を構成することができる。
このダイヤモンド半導体装置40では、ゲート電極37bに負の電圧を加えると、ゲート絶縁膜37aとの界面近傍におけるn型のリンドープダイヤモンド領域35にホールによるチャネル反転層が形成される。この状態でドレイン電極39に負の電圧を印加することにより、ソース電極38からドレイン電極39にホールが動き、電流が流れる。これを制御することにより素子動作が実行される。
実施例に係るダイヤモンド半導体装置を以下のように製造した。ここでは、図4に示す平面型の接合型電界効果トランジスタを製造することとしている。
先ず、表面が{001}面を有するダイヤモンド単結晶基板1を用意し、この基板1に対してマイクロ波プラズマCVD装置を使用して、H:400sccm(Standard Cubic Centimeter per Minute)、CH:2.4sccm、B/Hガス=100ppm:0.24sccm、圧力:25Torr(1Torr=133.322Pa)、マイクロ波パワー:750W、基板ヒータ温度:800℃、成長時間3時間の条件で、ボロンドープダイヤモンドの合成を行い、約700nm程度の膜厚のボロンドープp型ダイヤモンド層2を形成した(図1参照)。
次いで、電子線リソグラフィ法及びリフトオフ法により、{001}面ダイヤモンド単結晶基板1の表面の一部に図2に示すダイヤモンド段差部2’と平面形状が同形状のAu/Ti薄膜マスク(Au300nm/Ti10nm)を形成した。マスクの配置は、後に形成するダイヤモンド段差部2’の第1段差部3の側面が{110}面、第2段差部4a,4bの各側面が{100}面となるようにした。
この状態で、誘導結合プラズマエッチング装置によりマスクを用いた異方性エッチングを行った。エッチングガスの条件は、O:95sccm、CF:2sccm、RFパワー:300W、バイアス:50W、圧力:2Paであり、エッチング深さは1.4μmである。その後、熱王水処理(HNO:HCl=1:3、80℃)、硫酸加水(HSO:H:H0=3:1:1、120℃)処理、及び熱混酸(HNO:HSO=1:3、240℃)処理を施し、Au/Tiマスクを除去した。これにより図2に示す、側面が{110}の結晶面を有する第1段差部3と、側面が{100}の結晶面を有する第2段差部4a,4bとが一体に形成されたダイヤモンド段差部2’を形成した。この時、第1段差部3の線幅を0.5μmとし、高さを1.4μmとした。
ダイヤモンド段差部2’が形成された基板1に対し、リンドープダイヤモンド領域5a,5b、ダイヤモンド絶縁領域6a,6bを形成した。形成は、マイクロ波プラズマCVD装置を使用して、H:398sccm、CH:0.2sccm、PH:0.1sccm、圧力:75Torr、マイクロ波パワー:750W、基板ヒータ温度:800℃、成長時間2時間の条件で行った。これにより、図3に示すように、リンドープダイヤモンド領域5a,5bが第1段差部3の段差形状の底角を起点に第1段差部3の側面及び基板1の基板面を成長基面として<111>方向に成長されて形成され、ダイヤモンド絶縁領域6a,6bが第2段差部4a,4bの側面及び基板1の基板面を成長基面として成長されて形成される。このとき、ダイヤモンド絶縁領域6a,6bには、リンがほとんどドープされず、絶縁領域とみなせる。また、ダイヤモンド段差部2’の側面と近接しない基板1上(結晶面{001})には、ダイヤモンドが結晶成長しない。これにより、リンドープダイヤモンド領域5a,5b及びダイヤモンド絶縁領域6a,6bを選択的に成長させることが可能となる。
選択成長されたリンドープダイヤモンド領域5a,5bのリン濃度は、SIMS(Secondary Ion Mass Spectroscopy)測定から、8×1019cm−3程度となった。
次いで、Ti(30nm)/Pt(30nm)/Au(100nm)のゲート電極7a,7b/ソース電極8/ドレイン電極9を図4のように蒸着し、実施例に係る接合型電界効果トランジスタを製造した。この接合型電界効果トランジスタの電気伝導性を測るために、ゲート電圧を−15Vから10V、ソース−ドレイン間電圧を0Vから−10Vまで変化させ特性を評価した。図12に様々なゲート電圧におけるドレイン電流−ドレイン電圧の特性を示し、図13にドレイン電圧が−10Vにおけるドレイン電流−ゲート電圧の特性を示す。これら図12,13に示すように、実施例に係る接合型電界効果トランジスタでは、明瞭なトランジスタ特性が得られ、そのリーク電流は10−15A程度であり、ON/OFF比は7桁程度であった。
1,11,21,21’,31,31’ ダイヤモンド基板
2,12a p型ダイヤモンド層
2’,12a’,22’,32’ ダイヤモンド段差部
3,13,23 第1段差部
4a,4b,14a,14b,24 第2段差部
5a,5b,15a,15b,25,35 リンドープダイヤモンド領域
6a,6b,16a,16b,26 ダイヤモンド絶縁領域
7a,7b,17a,17b,27,37b ゲート電極
8,18,28,38 ソース電極
9,19,29,39 ドレイン電極
10,20,30,40 ダイヤモンド半導体装置
12b pダイヤモンド層
12b’,12b’’ pコンタクト領域
22,32 p型半導体層
37a ゲート絶縁膜
41 p領域
W 線幅
H 高さ
D 空乏層
S 間隔

Claims (1)

  1. 一の面側に第1p型半導体層が形成されるダイヤモンド基板と、第2p型半導体層で形成されるとともに前記ダイヤモンド基板の{001}の結晶面を有する前記一の面を基板面として前記基板面に対し略垂直方向に隆起して配され、その隆起された上面及び側面と前記基板面とで段差形状を形成するダイヤモンド段差部と、n型のリンドープダイヤモンド領域と、ダイヤモンド絶縁領域と、を有し、
    前記ダイヤモンド段差部は、側面が{110}の結晶面を有する第1段差部と、側面が{100}の結晶面を有する第2段差部とが一体に形成され、
    前記リンドープダイヤモンド領域は、前記第1段差部の前記段差形状の底角を起点に前記第1段差部の側面及び前記ダイヤモンド基板の前記基板面を成長基面として結晶成長させて形成され、
    前記ダイヤモンド絶縁領域は、前記第2段差部の側面及び前記ダイヤモンド基板の前記基板面を成長基面として結晶成長させて形成され、
    平面視で細長のライン状に形成される前記第1段差部の両側面にそれぞれ形成された前記リンドープダイヤモンド領域にゲート電極がそれぞれ形成され、
    前記第1段差部を胴部としていずれかの端部位置に形成される前記第2段差部上にソース電極が形成され、
    前記ダイヤモンド基板の前記第1p型半導体層が形成される前記基板面と反対側の面上にドレイン電極が形成されることを特徴とするダイヤモンド半導体装置。
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