JP6121726B2 - 活物質およびそれを用いた二次電池 - Google Patents

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Description

本発明は、二次電池の活物質およびそれを用いた二次電池に関する。
近年、二次電池は、携帯電話やノートPCだけでなく、電気自動車用バッテリーとしてもその用途を広げている。二次電池の代表例としてはリチウムイオン電池が挙げられ、エネルギー密度が高いことから今後電気自動車用や家庭用の蓄電池だけでなく、風力や太陽光発電の電圧安定化など大型用途での利用も期待されている。
リチウム二次電池は、一般に正極と負極と電解質とから構成されており、正極にはたとえば遷移金属とアルカリ金属の酸化物、負極にはたとえば黒鉛やハードカーボンなどの炭素系材料や合金系材料、酸化物材料が、そして電解質にはたとえば有機電解液が用いられている。しかしながらリチウムイオン電池の正極材はLiやCo、Niなどのレアメタルが用いられており、地球上に存在する量、いわゆるクラーク数が小さく、今後Liイオン電池の需要が増えればさらに単価の高騰が懸念される。
そこで近年、リチウムイオン電池に替わり、ナトリウムイオンにより充放電を行うナトリウムイオン電池が研究・開発されている。ナトリウムイオン電池の特徴としては、リチウムでは不安定な層状化合物であるマンガン複合酸化物(LiMnO)を、比較的容易に合成できる点にある。たとえば、特許文献1では、ナトリウムおよびマンガンを含む酸化物を正極の活物質として提案している。
特開2006−216509号公報
しかしながら、特許文献1に記載されているNaMnO2−y(ただし、0<x≦1、−0.1<y<0.1)の構造を有する活物質は、高い充放電レートでは容量が低下し、用途によっては十分な出力特性が得られないという問題があった。
本発明は、上記の課題を鑑みてなされたもので、NaとMnとを含む複合酸化物の充放電レート特性を向上した活物質、およびそれを用いた二次電池を提供することを目的とする。
本発明の活物質は、Na、MnおよびMを含む複合酸化物(ただし、前記Mは、Mg、AlおよびCuからなる元素群のうち少なくともいずれか一種)であって、主として層状構造を有する結晶相から構成され、結晶粒子の平均粒子径が5μm以下であることを特徴とする。
また、本発明の活物質は、Na、MnおよびNiを含む複合酸化物であって、前記Niの含有量が、前記Mnと前記Niの合量に対し1原子%以上、原子%以下であり、主として層状構造を有する結晶相から構成され、結晶粒子の平均粒子径が5μm以下であるとともに、前記結晶相が六方晶および単斜晶のうち少なくともいずれか一種と、斜方晶とを含ことを特徴とする。
また、本発明の活物質は、Na、MnおよびCoを含む複合酸化物であって、前記Coの含有量が、前記Mnと前記Coの合量に対し5原子%以上、30原子%以下であり、主として層状構造を有する結晶相から構成され、結晶粒子の平均粒子径が5μm以下であることを特徴とする。
本発明の二次電池は、正極と、負極と、電解質とを有し、前記正極が上記の活物質を含むことを特徴とする。
本発明によれば、NaとMnとを含む複合酸化物の充放電レート特性を改善した活物質
、およびそれを用いた二次電池を提供できる。
本発明の一実施形態である二次電池の概略断面図である。 二次電池の外観を示す斜視図である。
本発明の一実施形態である二次電池について、図1に基づいて説明する。本実施形態の二次電池は、正極1と負極3との間に電解質層2を有し、これらは発電要素4を構成している。また、正極1および負極3の電解質層2に面する側とは反対側の面には、それぞれ正極側集電層5Pおよび負極側集電層5Nが設けられている。図1に示した発電要素4を、図2に示すような電池ケースに収納することにより二次電池が形成される。電池ケースの形態はラミネートタイプやチューブ型、コイン型など多種多様であるが、いずれの形態であっても良い。図2に示す6Nおよび6Pは、それぞれ外部回路と負極および正極とを電気的に接続する負極端子および正極端子であり、7はラミネートフィルムである。
正極1には、組成式NaMn1−y2+z(ただし、MはN、Co、Fe、Mg、AlおよびCuからなる元素群のうち少なくとも一種)で表わされる複合酸化物(以下、単に複合酸化物という場合もある)を活物質として用いる。この複合酸化物は、主として層状構造を有する結晶相で構成されており、NaとMnの複合酸化物においてMがMnの一部と置換固溶したものである。また、結晶粒子の平均粒子径は5μm以下である。
複合酸化物が主として層状構造を有する結晶相から構成されるというのは、複合酸化物のX線回折パターンにおいて最も高い強度を有する回折ピークが、層状構造を有する結晶相に由来するものであること指す。
複合酸化物の結晶粒子の平均粒子径を5μm以下と小さくすることにより、活物質である複合酸化物の結晶粒子と電解質との反応界面が増大し、より優れた充放電レート特性を得ることができる。このように、結晶粒子の粒子径の小さい活物質を作製するには、複合酸化物を合成する際に低い熱処理温度で結晶粒子の粒成長を抑制する方法や、複合酸化物を合成した後、粉砕する方法などがある。合成後に粉砕する方法では、粉砕による結晶構造の変化や不純物の混入により特性が低下する懸念があり、また工程数も増加するため、合成する際に低い熱処理温度で結晶粒子の粒成長を抑制し、結晶粒子の微細化を図ることが好ましい。
一方、NaMn1−y2+zを低温で焼成した場合には、組成式Na0.44MnOの組成に代表される、S字型のトンネル構造を有する斜方晶の結晶相が容易に生成することが分かっている。このS字型トンネル構造を有する結晶相では、Naの挿入脱離が可能であるものの、層状構造を有する結晶相と比較して電極容量が小さいことが分かっている。そのため、本実施形態では、Mnの一部をN、Co、Fe、Mg、AlおよびCuからなる元素群のうち少なくとも一種であるMで置換し、NaMn1−y2+zとすることで、低い焼成温度でも層状構造を有する結晶相を安定に存在させることができるとともに、S字型トンネル構造を有する結晶相の生成を抑制することができ、電極容量の高い活物質とすることができる。
このとき、Mの含有量がMnとMの合量に対し30原子%以下である、すなわち、組成式NaMn1−y2+zにおいて、yが0<y≦0.3の範囲であることが重要である。Mの含有量を示すyを、y≦0.3とすることにより、NaとMnの複合酸化物に固溶しないMの酸化物などの結晶相の出現による容量低下や、Mn量の減少による、電
極容量の大幅な低下を抑制することができる。また、Mの含有量は、MnとMの合量に対し1原子%以上、すなわちyを0.01以上とすることが好ましい。このような範囲とすることで、十分な層状構造の安定化効果が得られる。特に、低い焼成温度でも層状構造を有する結晶相の生成を促進し、高い電極容量が得られるという点から、yは0.05≦y≦0.20の範囲とすることが好ましい。
また、xは0.4≦x≦1.0、zは0≦z≦0.1の範囲にあることが好ましい。xをこのような範囲とすることにより、複合酸化物自体として十分に高い容量が得られるとともに、Mn、NaCO、NaCOなどの炭酸ナトリウムおよびその水和物(NaCO・HOなど)のような充放電に寄与しない結晶相の出現を抑制することができる。また、zをこのような範囲とし、複合酸化物の結晶がより多くの酸素を含有することにより、4価のMnの増加を抑制し、複合酸化物自体の容量の低下を抑制することができる。このような範囲の組成を有し、二次電池の正極活物質として高い活性を有する、層状構造を有する結晶相から構成されるNaとMnの複合酸化物としては、たとえば、Na0.5MnO、Na0.7MnO2.05、Na0.7MnO、NaMnO、などが挙げられ、これらの複合酸化物の結晶粒子の平均粒子径を5μm以下にすることにより、さらに活物質の出力特性を高めることができ、高出力の二次電池となる。このように、主として層状構造を有する結晶相から構成され、結晶粒子の粒子径の小さいNaとMnの複合酸化物は、上述のように複合酸化物中のMnの一部をM、すなわちN、Co、Fe、Mg、AlおよびCuからなる元素群のうち少なくとも一種で置換したものを低温で合成することにより得られる。なお、層状構造を有する結晶相から構成されるNaとMnの複合酸化物のなかでも、NaMnOに代表される単斜晶の層状構造を有するものや、Na0.7MnO2.05、Na0.7MnOに代表される六方晶の層状構造を有するものは、特に高い活性を有する。したがって、本実施形態においては、層状構造を有する結晶相が、六方晶および単斜晶のうち少なくともいずれか一種を含むことが好ましい。
複合酸化物の平均粒子径は、複合酸化物の走査電子顕微鏡(SEM)写真を撮影して画像解析から算出したり、複合酸化物の粒度分布を回折散乱法などにより測定することにより確認できる。
また、本実施形態においては、組成式Na0.44MnOの組成に代表されるS字型のトンネル構造を有する斜方晶の結晶相の含有比率は、活物質のX線回折パターンにおいて、主たる結晶相である層状構造を有する結晶相のメインピークの強度Isに対する、S字型のトンネル構造を有する結晶相のメインピークの強度Itの強度比It/Isにして、30%以下であることが好ましい。このような比率とすることで、S字型トンネル構造を有する結晶相による影響を抑え、高い容量を確保することができる。なお、層状構造を有する結晶相のメインピークは、主たる結晶相が六方晶の場合は六方晶の(002)面を示す回折ピーク、単斜晶の場合は単斜晶の(111)面を示す回折ピークとし、S字型のトンネル構造を有する結晶相のメインピークは、斜方晶の(350)面または(200)面を示す回折ピークとする。
また、上述のように、Mn3、NaCO、NaCOおよびNaCO・HOや、N、Co、Fe、Mg、AlおよびCuなどの元素であるMの酸化物および炭酸塩などの結晶相は充放電に寄与せず、これらの異相が存在することにより容量の低下が懸念されるため、活物質はこれらの結晶相を実質的に含まないことが好ましい。なお、活物質がこれらの結晶相を実質的に含まないとは、活物質のX線回折(XRD)測定において、Mn3、NaCO、NaCOおよびNaCO・HO、Mの酸化物および炭酸塩などの異相が確認できないことをいう。
なお、活物質である複合酸化物の組成は、元素分析により確認すればよく、たとえば蛍光X線分析や、波長分散型X線分光分析(WDS)、ICP発光分光分析などを用いればよい。活物質に含まれる結晶相は、活物質のX線回折(XRD)測定により得られた回折パターンを同定することにより確認できる。なお、MがNaとMnの複合酸化物に固溶していることは、たとえば、元素分析によりMが含有されていることが確認されるとともに、X線回折によりNaとMnの複合酸化物以外にMを含む異相が確認できないことや、複合酸化物の格子定数がMの含有量に応じて変化していることなどから確認できる。
なお、本実施形態においては、正極に上記のNa、MnおよびMを含む複合酸化物以外の正極活物質を含んでいてもかまわない。また、工程上の不可避不純物としてたとえばZrやTi、Si、C、Bなどを0.5質量%以下の割合で含有していてもよい。
このような活物質の作製法の一例として、固相法による合成について説明する。Na源としては、たとえば炭酸ナトリウムや炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウムなどを用いることができる。Mn源としては、三二酸化マンガン(III)、二酸化マンガン(IV)、炭酸マンガン(II)などを用いることができる。N、Co、Fe、Mg、Al、Cuなどの元素であるM源としては、これらの元素の酸化物、炭酸塩などを用いることが
できる。これらの素原料粉末を所定量配合して、アルコールなどの溶媒中で混合し、溶媒を乾燥した後、600〜1100℃、好ましくは700〜800℃の温度範囲で熱処理することで、Na、MnおよびMを含む複合酸化物を得ることができる。なお、本実施形態の活物質、すなわちMが固溶したNaとMnの複合酸化物の合成に用いる手法は固相法に限るものではなく、他の合成法、たとえば、水熱法、ゾルゲル法など、周知の合成法のいずれを用いてもよい。
得られた複合酸化物は、必要に応じボールミルやビーズミル等の手法により粉砕するなどして粒度調整を行ってもよい。粒度調整を行う場合、複合酸化物の粉末の平均粒径は、それを用いる二次電池の使用条件や電極の作製方法に応じて適正な範囲に調整すればよく、たとえば0.1〜5μmの範囲から目的に応じた適正な範囲を選択して調整すればよい。粉末の平均粒径は、たとえば回折散乱法による粒度分布測定などにより確認できる。
得られた複合酸化物を用いて電極を作製する。たとえば、活物質としてこの複合酸化物を80質量%、導電助剤としてアセチレンブラックを10質量%およびバインダーとしてポリフッ化ビニリデンを10質量%に、さらに溶媒としてNMP(N−メチルピロリドン)を添加してスラリーを作製する。作製したスラリーを、ドクターブレード法などの周知のシート成形法により、たとえばAl箔上に塗布し溶剤を乾燥することで、Na、MnおよびMを含む複合酸化物である活物質と導電助剤と結着剤とを含む電極を作製できる。
バインダーは、ポリフッ化ビニリデン以外にも、たとえばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ素系ゴム、スチレンブタジエンゴム、ポリイミド樹脂(PI)、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂など、用途によって適したものを選んで使用できる。また、導電助剤も、アセチレンブラックの代わりにケッチェンブラックやカーボンナノチューブ、黒鉛、ハードカーボン、金属(アルミニウム、金、白金など)の粉末、無機導電性酸化物(酸化インジウムスズ(ITO)ガラス、酸化スズなど)など、使用電圧範囲において化学的に安定で導電性を示すものであればその材料はいずれでも良い。
また、得られた複合酸化物の粉末を用いて、押し出し成形やロールコンパクション法などの成形法によって圧粉体を作製し、電極を形成してもよい。また、複合酸化物の粉末を焼成し、導電助剤やバインダーを含まない焼結体として用いてもよい。
負極3に用いる活物質の種類は、Sn−Sbコンポジットガラスなどのガラス材料や、
ハードカーボン、ナトリウム金属、NaTiなどの酸化物材料、NaTi(POや活性炭などを用いることができる。
電解質層2としては、有機電解液やイオン液体等の非水系電解液や水系電解液をセパレータに含浸させたものや、高分子固体電解質、無機固体電解質、溶融塩等のいずれも用いることができる。水系電解液や非水系電解液を含浸させるセパレータには、イオンを通し、かつ正負極のショートを防止することが求められる。具体的には、ポリオレフィン繊維製の不織布やポリオレフィン製の微多孔膜、ガラスフィルター、セラミックの多孔質材料などを用いることができる。ここで、ポリオレフィンとしてはポリエチレン、ポリプロピレンを挙げることができ、一般的にリチウムイオン電池などの二次電池に用いられるセパレータが適用可能である。
有機電解液は、有機溶媒と電解質塩によって構成され、必要に応じて電極表面への被膜形成、過充電防止、難燃性の付与等を目的とした添加剤を加えてもよい。有機溶媒としては、高誘電率を有し、低粘性、低蒸気圧のものが好適に用いられ、このような材料としては、たとえば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、スルホラン、1,2−ジメトキシエタン、1,3−ジメトキシプロパン、ジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、メチルエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートから選ばれる1種もしくは2種以上を混合した溶媒が挙げられる。電解質塩としては、たとえば過塩素酸ナトリウム(NaClO)、四フッ化ホウ酸ナトリウム(NaBF)、六フッ化リン酸ナトリウム(NaPF)、NaN(SOF)、NaN(CFSO、NaN(CSO等のナトリウム塩が挙げられる。このうち、NaN(SOF)、NaN(CFSOおよびNaN(CSOは、他のアルカリ金属塩と混合して一定温度以上の環境で使用することで、溶融塩としても用いることができる。
水系電解液としては、たとえば1〜3mol/Lの硫酸ナトリウム水溶液を用いること
ができる。このような水系電解液は、pHの調整により水の電気分解電位を変化させることができるため、二次電池の充電電位を変えることも可能である。
電解質層2として高分子固体電解質や無機固体電解質を用いる場合は、その厚みをたとえば10μm以下、さらには3μm以下と薄くすることができ、同一体積の二次電池と比較して活物質をより多く詰め込めるため、高容量化が進み、結果としてエネルギー密度向上にも寄与することができる。ただし、固体電解質は、ショートを防止するために絶縁破壊やピンホールによるショートを起こさない必要最低限の厚みを確保する必要がある。
正極側集電層5Pには、正極の電位において溶解などの反応が発生しない耐食性を有する材料を用いればよい。このような材料としては、たとえば、アルミニウム、タンタル、ニオブ、チタン、金、白金等を含む金属材料や合金、黒鉛、ハードカーボン、ガラス状炭素等の炭素質材料、ITOガラス、酸化すずなどの無機導電性酸化物材料などを用いることができる。その中でもアルミニウム、金、白金は耐食性に優れ、容易に入手できるため好ましい。特にアルミニウムは、表面に酸化被膜を形成して不動態化し、高い電位においても耐食性に優れる点から好ましい。
負極側集電層5Nには、負極の電位においてNaとの合金化などの副反応が発生しない材料を用いればよい。このような材料としては、たとえば、銅、ニッケル、真鍮、亜鉛、アルミニウム、ステンレス、タングステン、金、白金等を含む金属材料や合金、黒鉛、ハードカーボン、ガラス状炭素等の炭素質材料、ITOガラス、酸化すずなどの無機導電性酸化物材料などを用いることができる。特に、導電性が高く比較的安価な点から、アルミ
ニウムまたはニッケルを用いることが好ましい。特にアルミニウムは、銅やニッケルと同様に導電性が高く比較的安価であり、リチウムに対しては合金を形成するため使用できないが、ナトリウムに対しては不活性であるため、正極および負極のいずれにも集電体として用いることが可能である。
正極側集電層5Pおよび負極側集電層5Nは、これらの金属材料からなる金属箔やメッシュを用いてもよいし、金属材料、炭素質材料またはITOガラスや酸化すずなどの無機導電性酸化物材料などをフィラーとした導電性インクなどを電極材料表面に塗布し、乾燥させたものを用いてもよい。また、白金やアルミニウム、チタンなどの金属を電極材料表面に蒸着したものであってもよい。
なお、金属箔またはメッシュを用いる場合、その厚みは5〜20μmとすることが好ましい。また、金属箔を使用する場合は、電極材料との接着力向上のために、金属箔の表面を粗面化処理したものを用いてもよい。この場合、金属箔の表面粗さは、算術平均粗さ(Ra)にして0.5〜2μmであることが好ましい。金属箔の表面粗さは、触針式、光干渉式等の表面粗さ計や、レーザー顕微鏡、原子間力顕微鏡(AFM)等を用いて測定する。一般的に使用される触針式表面粗さ計を用いる場合は、JIS B0601に基づいて、たとえば、触針先端径を2μm、測定長を4.8mm、カットオフ値を0.8mmという条件で測定すればよい。
以上、本実施形態の二次電池について説明したが、本発明は本実施形態に限定されるものではなく、本発明を逸脱しない範囲で種々変更したものにも適用することができる。
以下、本発明の二次電池について、実施例に基づき詳細に説明する。
まず、正極活物質となるNa、Mn、およびM(N、Co、Fe、Mg、Al、Cuなどの元素)を含む複合酸化物を合成した。素原料として炭酸ナトリウム、三二酸化マンガン(III)、およびMとしてN、Co、Fe、Mg、AlおよびCuの酸化物を用いた。これらの素原料を、組成式NaMn1−y2+zで表したときにxが0.7かつyが0.01〜0.3となるように配合し、イソプロピルアルコール(IPA)を溶媒としてスラリー化し、ZrOボールを用いてボールミルにて20時間混合した。混合後のスラリーを乾燥した後、表1に示す温度において10時間の熱処理を行い、複合酸化物を合成した。合成した複合酸化物は、ICP発光分光分析により組成を確認してMnとMの合量に対するMの比率を算出するとともに、CuKα線を用いてX線回折(XRD)測定を行い、その回折パターンの解析により複合酸化物に含まれる結晶相を確認した。それぞれの複合酸化物における、MnとMの合量に対するMの比率、および確認された結晶相を表1に示す。作製した複合酸化物はいずれも、そのX線回折パターンにおいて、六方晶の層状構造を有するNa0.70MnO2.05結晶相の回折ピークが確認された。また、たとえば、試料No.3等のX線回折パターンからは、層状構造を有する結晶相の他に、斜方晶のS字型トンネル構造を有するNa0.44MnO結晶相の微小な回折ピークが確認された。このように、斜方晶のS字型トンネル構造を有する結晶相(以下、単に斜方晶ともいう)が確認された試料については、さらに六方晶の層状構造を有する結晶相(以下、単に六方晶ともいう)のメインピークである(002)面を示す回折ピークの強度Isと、斜方晶のメインピークである(350)面および(200)面を示す回折ピークのうち強度が高いほうの回折ピークの強度Itとを用いて、XRDピーク強度比It/Isを算出し、表1に示した。なお、いずれの試料においても、NaとMnの複合酸化物以外にはごく微小な回折ピークしか確認されず、Mは複合酸化物の結晶相にほぼ固溶していると考えられる。
また、回折散乱法により合成した複合酸化物の粒度分布を測定し、d50の値を複合酸化物の平均粒子径として表1に示した。
次に、合成したこれらの複合酸化物を活物質として正極を作製した。正極活物質として合成した複合酸化物の粉末を80質量%、導電助剤としてアセチレンブラックを10質量%、およびバインダーとしてポリフッ化ビニリデンを10質量%配合し、さらに溶媒として15質量%のNMP(N−メチルピロリドン)を用いてスラリーを作製した。このスラリーを、正極側集電層となるアルミニウム箔上にドクターブレード法により塗布し、溶媒を乾燥することにより、厚さが50μmの正極活物質層を形成した。得られた正極活物質層を、正極側集電層であるアルミニウム箔と共に10×10cmの正方形状に切断して正極を作製した。さらにアルミニウム箔の正極活物質層が形成されていない側の面の端部に正極端子となるアルミニウム箔をスポット溶接で取り付けた。
負極活物質にはナトリウム金属を用いた。負極側集電層となるアルミニウム箔上に、負極活物質層となるナトリウム箔をプレスにより圧着し、これを10×10cmの正方形状に切断して負極を作製した。さらに、アルミニウム箔のナトリウム箔を圧着していない側の面の端部に負極端子となるアルミニウム箔をスポット溶接で取り付けた。
作製した正極および負極の間に、電解液を含んだポリプロピレン/ポリエチレン製多孔質膜のセパレータを配置し、発電要素を作製した。電解液は、有機溶媒であるプロピレンカーボネート(PC)に、NaN(CFSO(いわゆるNaTFSI)を1mol/Lで溶解したものを用いた。
作製した発電要素を、外装体である袋状のアルミラミネートフィルムに収納し、電解液を注入して、正極端子および負極端子の端部が外装体の開口部から露出した状態で外装体の開口部を熱溶着により密閉し、二次電池とした。
作製した二次電池について以下のような条件で充放電試験を行い、電池特性を確認した。
充放電電圧範囲:上限4.0V、下限1.5V
充放電電流値 :1mA/cm(定電流充放電)
測定温度 :30℃
電池特性として、初期放電容量、および充放電レート特性として1Cおよび0.1Cにて充放電した場合の放電容量比(1Cにおける放電容量/0.1Cにおける放電容量)を表1に示す。
Figure 0006121726
試料No.2〜6、9〜11は、正極活物質がNi、Co、Mg、Al、Cuなどの元素であるMの含有量がMnとMの合量に対して30原子%以下であり、六方晶の層状構造を有するNa0.70MnO2.05結晶相から構成される平均粒子径が5μm以下の複合酸化物であることから、良好なレート特性を示した。正極活物質がMを含まない試料No.12、13のうち、800℃で熱処理して複合酸化物を合成した試料No.12は、
斜方晶のS字トンネル構造を有するNa0.44MnO結晶相の含有量が多いため、放電容量が小さいものとなり、1000℃で熱処理して複合酸化物を合成した試料No.1
3は、複合酸化物の平均粒子径が8μmと大きく、充放電レート特性に劣るものであった。なお試料No.1、7、8は参考例である。
1・・・・正極
2・・・・電解質層
3・・・・負極
4・・・・発電要素
5N・・・負極側集電層
5P・・・正極側集電層
6N・・・負極端子
6P・・・正極端子
7・・・・ラミネートフィルム

Claims (7)

  1. Na、MnおよびMを含む複合酸化物(ただし、前記Mは、Mg、AlおよびCuからなる元素群のうち少なくともいずれか一種)であって、
    主として層状構造を有する結晶相から構成され、
    結晶粒子の平均粒子径が5μm以下であることを特徴とする活物質。
  2. 前記Mの含有量が、前記Mnと前記Mの合量に対し1原子%以上、30原子%以下であることを特徴とする請求項1に記載の活物質。
  3. 前記層状構造を有する結晶相が、六方晶および単斜晶のうち少なくともいずれか一種を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の活物質。
  4. Na、MnおよびNiを含む複合酸化物であって、
    前記Niの含有量が、前記Mnと前記Niの合量に対し1原子%以上、原子%以下であり、
    主として層状構造を有する結晶相から構成され、結晶粒子の平均粒子径が5μm以下であるとともに、
    前記結晶相が六方晶および単斜晶のうち少なくともいずれか一種と、斜方晶とを含ことを特徴とする活物質。
  5. Na、MnおよびCoを含む複合酸化物であって、
    前記Coの含有量が、前記Mnと前記Coの合量に対し5原子%以上、30原子%以下であり、
    主として層状構造を有する結晶相から構成され、結晶粒子の平均粒子径が5μm以下であることを特徴とする活物質。
  6. 正極と、負極と、電解質とを有し、前記正極が請求項1乃至5のいずれかに記載の活物質を含むことを特徴とする二次電池。
  7. 前記正極と前記負極との間でナトリウムイオンをやり取りすることにより充放電を行うことを特徴とする請求項6に記載の二次電池。
JP2013009425A 2013-01-22 2013-01-22 活物質およびそれを用いた二次電池 Active JP6121726B2 (ja)

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