<実施形態1>
本発明の一実施形態に係るスピーカシステムについて、図1から図6を参照して以下に説明する。但し、この実施形態に記載されている構成は、特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
〔スピーカシステムの構成〕
まず、本実施形態に係るスピーカシステムについて、図1を参照して説明する。図1は、本実施形態に係るスピーカシステム1の要部構成を示す図である。図1の(a)は、スピーカシステム1の概観を示す図であり、(b)は、スピーカシステム1の分解斜視図であり、(c)は、(a)のA−A’断面図である。
図1の(a)に示すように、本実施形態に係るスピーカシステム1は、音声出力部10、伝送ケーブル20、エンクロージャ(第1の細長形エンクロージャ)21、および、エンクロージャ(第2の細長形エンクロージャ)22を備えている。
(音声出力部)
音声出力部10は、供給される音声信号の表す音声を出力する手段である。音声出力部10は、図1の(b)および(c)に示すように、スピーカ(第1のスピーカ)11、スピーカ(第2のスピーカ)12、連結棒(棒状部材)13、および、スピーカネット14を備えている。
スピーカ11、12は、入力される音声信号を物理的な振動に変換することにより、音声信号の示す音声を出力する。具体的には、スピーカ11、12は、入力される音声信号に応じて、当該スピーカ11、12の備える振動板(後述する図2において、15)を振動させることにより、音声信号の示す音声を出力する。
図1の(b)に示すように、スピーカ11は、後述するメインエンクロージャ(第1のメインエンクロージャ)23の長手方向の一端に配置され、振動板15が備えられている面(音声出力面)がメインエンクロージャ23とは反対側に位置するように配置されている。また、スピーカ12は、後述するメインエンクロージャ(第2のメインエンクロージャ)24の長手方向の一端に配置され、音声出力面がメインエンクロージャ24とは反対側に位置するように配置されている。
さらに、スピーカ11および12は、互いに対向するように配置されている。より具体的には、スピーカ11の音声出力面とスピーカ12の音声出力面とが、互いに対向するように配置されている。
連結棒13は、スピーカ11とスピーカ12とを、音声出力面が互いに対向するように連結する。また、連結棒13は、互いに対向するスピーカ11とスピーカ12との位置関係を固定すると共に、スピーカ11とスピーカ12との距離を固定する。
なお、連結棒13の本数は、2本以上であれば特に限定されるものではないが、スピーカ11および12から出力される音声の伝搬を阻害してしまうことを避けるため、少ないことが好ましい。具体的には、連結棒13の本数は、2本〜4本程度であることが好ましい。また、連結棒13は、スピーカ11および12から出力される音声の伝搬を阻害してしまうことを避けるため、細い棒状の部材であることが好ましい。
これは、スピーカ11および12を連結する部材の形状を棒状以外の形状(例えば、板状など)にする場合よりも、スピーカ11および12から出力される音声のうち、伝搬の阻害される音声の量を低減することができるからである。
ここで、スピーカ11、12および連結棒13について、図2を参照して説明する。なお、スピーカ11および12は同様の構成を有しているため、ここでは、特にスピーカ11について説明する。図2は、図1の(c)のB−B’断面図である。図2の(a)は、連結棒13が2本である場合を示し、(b)は、連結棒13が3本である場合を示し、(c)は、連結棒13が4本である場合を示している。
図2に示すように、スピーカ11は、振動板15、および、フレーム16を備えている。振動板15は、スピーカ11に備えられるコイル(不図示)と共に、音声信号(電気信号)を物理的な振動に変換し、振動板15自身を振動させることによってスピーカ11から音声を出力する。また、フレーム16は、スピーカ11を構成する部材を支持する筐体である。
図2の(a)〜(c)に示すように、連結棒13は、スピーカ11の備えるフレーム16に配置されている。また、図1の(b)〜(c)に示すように、連結棒13は、スピーカ11と、スピーカ11に対向するスピーカ12とを連結するように設けられている。
また、連結棒13は、スピーカ11、12の中心を原点として、等角度(例えば、図2の(a)〜(c)に示すように、180度、120度および90度など)の間隔で配置されている。このように、連結棒13を等角度で配置することにより、スピーカ11および12の振動を効率的に打ち消し合わせることができる。
なお、連結棒13の配置される位置は、特に限定されるものではなく、例えば、スピーカ11の配置されたメインエンクロージャ23の長手方向の一端の面であって、スピーカ11の周囲の面に設けられていてもよい。この場合には、連結棒13は、スピーカ11の配置されたメインエンクロージャ23の長手方向の一端の面と、当該面に対向する面であってスピーカ12の配置されたメインエンクロージャ24の長手方向の一端の面とを連結するように設けられていればよい。
連結棒13は、スピーカ11とスピーカ12との距離が、スピーカ11およびスピーカ12の備える振動板15の大きさ(直径)以上となるように、スピーカ11および12を連結する。これによって、スピーカ11および12の双方から出力される音声によってスピーカ11とスピーカ12との間に発生する定在波を抑制することができる。
スピーカネット14は、スピーカ11および12を保護する保護部材である。スピーカネット14は、埃などに起因するスピーカ11および12の性能の劣化を低減することができる。
(伝送ケーブル)
伝送ケーブル20は、音声信号を伝送するケーブルであって、外部から入力された音声信号を音声出力部10の備えるスピーカ11、12に伝送する。
伝送ケーブル20は、図1の(b)に示すように、音声出力部10の中で二又に分かれている。二又に分かれた伝送ケーブル20の一方はメインエンクロージャ23を介してスピーカ11に接続され、他方はメインエンクロージャ24を介してスピーカ12に接続されている。
(エンクロージャ)
エンクロージャ21、22は、スピーカ11、12を格納する細長形の筐体である。なお、本実施形態では、図1の(a)に示すように、エンクロージャ21、22の形状が筒状である場合を例に挙げて説明するが、これに限定されるものではなく、例えば、角柱状の形状であってもよいし、ラグビーボール形の形状であってもよい。
また、エンクロージャ21、22は、図1の(a)に示すように、ほぼ同一軸上に配置されている。
図1の(b)および(c)に示すように、エンクロージャ21は、メインエンクロージャ23とサブエンクロージャ(第1のサブエンクロージャ)25とよって構成されている。また、エンクロージャ22は、メインエンクロージャ24とサブエンクロージャ(第2のサブエンクロージャ)26とによって構成されている。
メインエンクロージャ23(24)の長手方向の一端にはスピーカ11(12)が接続され、他端にはサブエンクロージャ25(26)が接続される。なお、メインエンクロージャ23(24)とサブエンクロージャ25(26)とは、例えば、スクリューキャップ方式で接続可能であればよいが、接続方法は特に限定されない。
また、エンクロージャ21および22は、その長さを任意に調整することができる。具体的には、エンクロージャ21、22を構成するサブエンクロージャ25、26として、様々な長さのサブエンクロージャが用意されていればよい。つまり、様々な長さのサブエンクロージャの中から任意の長さのサブエンクロージャをサブエンクロージャ25、26として採用することによって、エンクロージャ21および22の長さを任意に調整することができる。
なお、エンクロージャ21および22の長さの調整方法は、これに限定されるものではない。例えば、サブエンクロージャ25および26が伸縮可能に構成されており、サブエンクロージャ25および26を任意の長さに調整することによってエンクロージャ21および22の長さを任意に調整する構成を採用してもよい。
〔スピーカシステムの指向特性〕
次に、本実施形態に係るスピーカシステム1の特性について、図3から図6を参照して説明する。以下では、スピーカシステム1の長手方向を鉛直方向に配置する場合を例に挙げて説明する。なお、本実施形態では、スピーカシステム1の長手方向(スピーカ11、12の音声出力面の法線方向とも記載する)に垂直な面内方向を水平方向とも呼称する。また、スピーカシステム1の長手方向と該長手方向を基準とした偏角とによって規定される面内方向を垂直方向と呼称する。
(水平方向の指向特性)
まず、スピーカシステム1の水平方向の指向特性について、図3および図4を参照して、従来のスピーカシステムの水平方向の指向特性と比較しつつ説明する。
図3は、従来のスピーカシステムの水平方向の指向特性を示す図である。図3の(a)は、従来のスピーカシステムにおける指向特性の解析位置を示す図であり、(b)は、従来のスピーカシステムの水平方向の指向特性を示すグラフである。また、図4は、本実施形態に係るスピーカシステム1の水平方向の指向特性を示す図である。図4の(a)は、スピーカシステム1における指向特性の解析位置を示す図であり、(b)は、スピーカシステム1の水平方向の指向特性を示すグラフである。
図3の(a)に示すように、従来のスピーカシステムは、左右に(Y軸方向に並べて)配置された2つの直接放射型のスピーカによって構成されている。本実施形態では、図3の(a)に示すように、XY平面上においてX軸(つまり、従来のスピーカシステムの正面)からの角度が0度、30度、60度および90度(Y軸)となる位置において、従来のスピーカシステムから水平方向(XY平面方向)に出力される音声を解析し、その解析結果を図3の(b)のグラフに示している。
また、図4の(a)に示すように、xy平面上(スピーカ11および12からの距離が等しい平面(等距離平面)上)においてx軸からの角度が0度、30度、60度および90度(y軸)となる位置において、スピーカシステム1から水平方向(xy平面方向)に出力される音声を解析し、その解析結果を図4の(b)のグラフに示している。
従来のスピーカシステムでは、図3の(b)に示すように、解析した音声の高域成分(特に、5kHz以上の高周波数帯域)の音圧が、0度の位置において高く、90度に近づく(つまり、従来のスピーカシステムの正面からずれる)ほど低くなった。つまり、従来のスピーカシステムは、水平方向の指向特性が高く、位置によって音声の聞こえ方が異なってしまう。
これに対し、本実施形態に係るスピーカシステム1は、図4の(b)に示すように、0度、30度、60度および90度の各位置で解析した音声の何れの周波数帯域にも、ほとんど差異が現れなかった。つまり、スピーカシステム1は、水平方向の指向性(すなわち、スピーカ11、12の音声出力面の法線方向に垂直な方向に関する指向性)が低く、スピーカシステム1に対する位置に係らずに音声の聞こえ方(音質)が略一定となる。
(垂直方向の指向特性)
次に、スピーカシステム1の垂直方向の指向特性について、図5および図6を参照して、従来のスピーカシステムの垂直方向の指向特性と比較しつつ説明する。
図5は、従来のスピーカシステムの垂直方向の指向特性を示す図である。図5の(a)は、従来のスピーカシステムにおける指向特性の解析位置を示す図であり、(b)および(c)は、従来のスピーカシステムの垂直方向の指向特性を示すグラフである。また、図6は、本実施形態に係るスピーカシステム1の垂直方向の指向特性を示す図である。図6の(a)は、スピーカシステム1における指向特性の解析位置を示す図であり、(b)および(c)は、スピーカシステム1の垂直方向の指向特性を示すグラフである。
従来のスピーカシステムは、図5の(a)に示すように、XZ平面上(従来のスピーカシステムを構成する2つのスピーカから等距離となる平面上)においてX軸からの角度が0度、30度、60度および90度(Z軸正方向)となる位置、および、0度、−30度、−60度および−90度(Z軸負方向)となる位置において、従来のスピーカシステムから垂直方向(XZ平面方向)に出力される音声を解析し、その解析結果を図5の(b)および(c)のグラフに示している。
また、図6の(a)に示すように、xz平面上においてx軸からの角度が0度、30度、60度および90度(z軸正方向)となる位置、および、0度、−30度、−60度および−90度(z軸負方向)となる位置において、スピーカシステム1から垂直方向(xz平面方向)に出力される音声を解析し、その解析結果を図6の(b)および(c)のグラフに示している。
従来のスピーカシステムでは、図5の(b)および(c)に示すように、解析した音声の高域成分(特に、1kHz以上の高周波数帯域)の音圧が、0度の位置において高く、90度および−90度に近づく(つまり、X軸から遠ざかる)ほど低くなった。つまり、従来のスピーカシステムは、垂直方向の指向特性が高く、位置によって音声の聞こえ方が異なってしまう。
これに対し、本実施形態に係るスピーカシステム1は、図6の(b)および(c)に示すように、0度〜90度、および、0度〜−90度の各位置で解析した音声の音圧の、何れの周波数帯域における差異も、図5の(b)および(c)と比較して極めて小さかった。つまり、スピーカシステム1は、従来のスピーカシステムよりも垂直方向の指向性(すなわち、音声出力面の法線方向を基準とした偏角に関する指向性)が低く、スピーカシステム1に対する位置に係らずに音声の聞こえ方が略一定となる。
上述のように、エンクロージャ21、22の形状は細長形であり、各エンクロージャの長手方向の一端に配置された各スピーカの音声出力面が互いに対向している。このように構成することにより、スピーカシステム1の備える一方のスピーカから出力された音声は、他方のスピーカおよび当該他方のスピーカを備える細長形エンクロージャの長手方向の一端以外に、その伝搬が阻害されることはない。
なお、エンクロージャ21、22は、その形状が筒状であり、また、より細いほど、当該エンクロージャ21、22による音声の伝搬の阻害をより低減することができる。
上述のように、スピーカ11および12の音声出力面を互いに対向するように配置することにより、本実施形態に係るスピーカシステム1は、全方向に対して優れた無指向性を得ることができる。
本実施形態に係るスピーカシステム1は、水平方向(図4の(a)におけるxy平面(等距離平面)方向)において、360度の方向に指向性の低い音声を出力することができる。また、スピーカシステム1は、垂直方向(図1の(a)におけるyz平面方向)において、180度の方向に音声を出力することができる。
また、スピーカシステム1は、スピーカ11および12の音声出力面を互いに対向するように配置することにより、スピーカ11(12)が音声を出力する際に発生する振動を、対向する他方のスピーカ12(11)が音声を出力する際に発生する振動によって打ち消すことができる。これによって、スピーカシステム1全体の振動を抑制することができるため、スピーカシステム1の振動に起因する振動音、ビビリ音などの発生を抑制することができる。
さらに、本実施形態にスピーカシステム1は、筒状のエンクロージャ21、22として、直径が約2.54cm(約1インチ)のエンクロージャを採用することができる。これにより、スピーカシステム1を細長い筒状の構造とすることができる。このような細長い筒状の構造とすることにより、例えば、スピーカシステム1をテレビなどの表示装置の横に配置した場合にも、テレビのデザイン性を損なうこともない。
なお、本実施形態では、スピーカ11およびエンクロージャ21がスピーカシステム1の上側に位置し、スピーカ12およびエンクロージャ22が下方に位置する場合を例に挙げて説明しているが、もちろん、逆の位置関係であってもよい。つまり、スピーカ12およびエンクロージャ22がスピーカシステム1の上側に位置し、スピーカ11およびエンクロージャ21が下方に位置してもよい。
つまり、スピーカ11およびエンクロージャ21と、スピーカ12およびエンクロージャ22との位置関係を上下で反転させたとしても、スピーカシステム1の特性に何ら影響を及ぼすものではない。
<実施形態2>
実施形態1では、スピーカシステム1の備えるエンクロージャ21および22の長さが同じである場合を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。以下に、本発明の他の実施形態に係るスピーカシステム2について、図7から図9を参照して説明する。
なお、説明の便宜上、実施形態1に係るスピーカシステム1と同様の機能を有する構成要素については同一の符号を付し、その説明を省略する。本実施形態では、主に、実施形態1との相違点について説明するものとする。
図7は、本実施形態に係るスピーカシステム2の一例を示す図である。図7の(a)は、エンクロージャ21がエンクロージャ22よりも長いスピーカシステム2の概観を示し、(b)は、(a)に示すスピーカシステム2を備えるテレビジョン受像機(テレビ)100の概観を示している。
また、図8は、本実施形態に係るスピーカシステム2’の他の一例を示す図である。図8の(a)は、エンクロージャ21がエンクロージャ22よりも短いスピーカシステム2’の概観を示し、(b)は、(a)に示すスピーカシステム2を備えるテレビ100の概観を示している。
図7および図8に示すように、本実施形態に係るスピーカシステム2、2’は、取付部31を備え、エンクロージャ21および22の長さが互いに異なること以外は、実施形態1に記載のスピーカシステム1と同じ構成である。
図7の(a)に示すように、スピーカシステム2の備えるエンクロージャ21は、エンクロージャ22よりも長い。このため、図7の(a)に示すように、音声出力部10は、スピーカシステム2の中心よりも下方に位置することとなる。
また、図7の(a)に示すように、スピーカシステム2の備えるエンクロージャ21および22の一端であって、音声出力部10の配置されている一端と反対側の一端に、取付部31が配置されている。スピーカシステム2は、図7の(b)に示すように、この取付部31によって、テレビ100に接続される。したがって、テレビ100に接続されたスピーカシステム2の音声出力部10は、テレビ100の短手方向の中心よりも下方に位置することになる。
図7の(b)に示すように、スピーカシステム2の音声出力部10をテレビ100の短手方向の中心よりも下方に位置させることにより、スピーカシステム2は、聴きやすく落ち着いた雰囲気の音場を形成することができる。例えば、聴きやすく落ち着いた雰囲気の音場は、視聴されるコンテンツがニュースである場合などに、より効果的である。
また、図8の(a)に示すように、スピーカシステム2’の備えるエンクロージャ21は、エンクロージャ22よりも短い。このため、図8の(a)に示すように、音声出力部10は、スピーカシステム2の中心よりも上方に位置することとなる。
また、図8の(a)に示すように、スピーカシステム2’の備えるエンクロージャ21および22の一端であって、音声出力部10の配置されている一端と反対側の一端に、取付部31が配置されている。スピーカシステム2’は、図8の(b)に示すように、取付部31によって、テレビ100に接続される。したがって、テレビ100に接続されたスピーカシステム2’の音声出力部10は、テレビ100の短手方向の中心よりも上方に位置することになる。
図8の(b)に示すように、スピーカシステム2’の音声出力部10を、テレビ100の短手方向の中心よりも上方に位置させることにより、スピーカシステム2は、臨場感のある音場を形成することができる。例えば、臨場感のある音場は、視聴されるコンテンツが映画である場合などに、より効果的である。
なお、本実施形態では、エンクロージャ21をエンクロージャ22よりも短くすることによって、音声出力部10をスピーカシステム2’の中心よりも上方に位置させる構成を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではない。例えば、エンクロージャ21をエンクロージャ22よりも長くすることによって、音声出力部10を中心よりも下方に位置させたスピーカシステム2の上下を反転することによって、音声出力部10を中心よりも上方に位置させる構成を採用することもできる。
(反射板)
また、本実施形態に係るスピーカシステム2”は、図9に示すように、反射板32をさらに備えていてもよい。図9は、本実施形態に係るスピーカシステム2”のさらに他の一例を示す図である。図9の(a)は、反射板32を備えたスピーカシステム2”の概観を示し、(b)は、(a)に示すスピーカシステム2”を備えるテレビ100の概観を示している。
図9の(a)および(b)に示すように、スピーカシステム2”は、反射板32を備えている。
反射板32は、スピーカシステム2”の音声出力部10と平行(すなわち、エンクロージャ21、22の長手方向と平行)に設けられている。反射板32は、音声出力部10から出力される音声を反射することにより、スピーカシステム2”に一定の指向性を与えることができる。
また、反射板32は、図10に示すように、音声出力部10を中心に、その周りを回転する。図10は、本実施形態に係るスピーカシステム2”の備える反射板32が回転する際の状態遷移図である。図10の(a)は、反射板32が右回りに回転した状態を示し、(b)は、反射板32が左回りに回転した状態を示している。
図10の(a)および(b)に示すように、反射板32は、スピーカシステム2”の備える音声出力部10を中心に、右回りにも左回りにも回転する。なお、反射板32は、その回転範囲が制限された構成としてもよいし、音声出力部10を中心に360度回転可能な(回転範囲が制限されない)構成としてもよいし、特に限定されない。
反射板32は、上述のように、スピーカシステム2”に一定の指向性を与えることができる。また、反射板32は、音声出力部10を中心として回転可能に備えられている。したがって、スピーカシステム2”は、音声出力部10から出力される音声の伝わる方向(放射方向)を、反射板32を回転させることによって容易に調整することができる。
これによって、反射板32を備えるスピーカシステム2”は、テレビ100を利用するユーザの位置に応じて、当該スピーカシステム2”の音声出力部10から出力される音声がより聴き取りやすい音場を形成することができる。
<実施形態3>
次に、本発明のさらに他の実施形態に係るスピーカシステム3について、図11から図13を参照して説明する。なお、説明の便宜上、実施形態1に係るスピーカシステム1と同様の機能を有する構成要素については同一の符号を付し、その説明を省略する。本実施形態では、主に、実施形態1との相違点について説明するものとする。
図11は、本実施形態に係るスピーカシステム3の構成の一例を示す図である。図11の(a)は、スピーカシステム3の分解斜視図であり、(b)は、(a)のC−C’断面図である。
図11に示すように、本実施形態に係るスピーカシステム3は、エンクロージャ21にバスレフポート(第1の低音増幅部)41を備え、エンクロージャ22にバスレフポート(第2の低音増幅部)42を備えていること以外は、実施形態1に記載のスピーカシステム1と同じ構成である。なお、図11では、便宜的に、スピーカネット14の図示を省略している。
(バスレフポート)
バスレフポート41、42は、音声を出力する際にスピーカ11、12の後面から発生する音の低音域をヘルムホルツ共鳴によって増幅して出力するための、音声の低音域の増幅構造である。図11(a)および(b)に示すように、バスレフポート41は、サブエンクロージャ25の一端であって、メインエンクロージャ23と接続可能な一端とは異なる一端に設けられている。また、バスレフポート42は、サブエンクロージャ26の一端であって、メインエンクロージャ24と接続可能な一端とは異なる一端に設けられている。
また、図11(a)および(b)に示すように、バスレフポート41および42は、音声の出力に際して各バスレフポートにおいて発生する反作用を打ち消すような対称構造となるように配置されている。このように、バスレフポート41および42を、対称となるように配置することにより、バスレフポート41および42において発生する振動を互いに打ち消すことができる。したがって、スピーカシステム3は、スピーカシステム3全体の振動を抑制しつつ、当該スピーカシステム3から出力される音声の低音域を増幅することができる。
さらに、バスレフポート41および42は、スピーカシステム3において面対称に配置されれば、その配置位置は特に限定されない。例えば、図12に示すように、バスレフポート(第1の低音増幅部)43およびバスレフポート(第2の低音増幅部)44を、サブエンクロージャ25および26の側面に配置することもできる。
図12は、本実施形態に係るスピーカシステム3’の構成の他の一例を示す図である。図12の(a)は、スピーカシステム3’の分解斜視図であり、(b)は、(a)のD−D’断面図である。図12(a)および(b)に示すように、バスレフポート43、44は、サブエンクロージャ25、26の側面に、対称構造となるように配置されている。
このように、バスレフポート41および42、43および44は、音声の出力に際して各バスレフポートにおいて発生する反作用を打ち消すような対称構造となるように配置することにより、振動を抑えつつ、低音域の音声の出力方向を柔軟に調整することができる。
(パッシブラジエータ)
さらに、本実施形態に係るスピーカシステム3”は、出力する音声の低音域の増幅構造として、図13に示すように、バスレフポート41、42の変わりに、パッシブラジエータ(第1の低音増幅部)45、パッシブラジエータ(第2の低音増幅部)46を備えていてもよい。図13は、本実施形態に係るスピーカシステム3”の構成のさらに他の一例を示す図である。図13の(a)は、スピーカシステム3”の分解斜視図であり、(b)は(a)のE−E’断面図である。
図13の(a)および(b)に示す要に、スピーカシステム3”は、パッシブラジエータ45、46を備えている。パッシブラジエータ45、46は、サブエンクロージャ25、26の一端であって、メインエンクロージャ23、24と接続可能な一端とは異なる一端に設けられている。
また、パッシブラジエータ45および46は、音声の出力に際して各パッシブラジエータにおいて発生する反作用を打ち消すような対称構造となるように配置されている。これによって、スピーカシステム3”は、スピーカシステム3”全体の振動を抑制しつつ、当該スピーカシステム3から出力される音声の低音域を増幅することができる。
<実施形態4>
本発明のさらに他の実施形態に係るスピーカシステム4について、図14から図18を参照して以下に説明する。本実施形態に係るスピーカシステム4は、さらに、駆動装置50を備えている。なお、本実施形態では、スピーカシステム4が駆動装置50を備える場合を例に挙げて説明するが、これに限定されるものではなく、例えば、スピーカシステム4の外部に設けられていてもよい。
なお、説明の便宜上、実施形態1に係るスピーカシステム1と同様の機能を有する構成要素については同一の符号を付し、その説明を省略する。本実施形態では、主に、実施形態1との相違点について説明するものとする。
〔駆動装置の構成〕
まず、本実施形態に係る駆動装置(駆動手段)50について、図14を参照して説明する。図14は、本実施形態に係る駆動装置50の要部構成を示す図である。
図14に示すように、駆動装置50は、ローパスフィルタ(LPF)51、52、ハイパスフィルタ(HPF)53、54、アンプ(AMP)55、56、加算器57、58、および音声制御部59を備えている。また、駆動装置50には、音声出力面が互いに対向するように配置された2つのスピーカ11、およびスピーカ12が接続されている。LPF51、HPF53、AMP55、および加算器57は、スピーカ11から出力される音声に関する処理を行い、LPF52、HPF54、AMP56、および加算器58は、スピーカ12から出力される音声に関する処理を行う。
駆動装置50は、スピーカ11、およびスピーカ12から出力される音声を示す音声信号の入力を受け付ける。駆動装置50は、入力された音声信号をLPF51、52、HPF53および54に供給する。なお、駆動装置50が行う、スピーカ11から出力される音声に関する処理およびスピーカ12から出力される音声に関する処理は、基本的には同様の処理であるため、以下ではスピーカ11から出力される音声に関する処理について説明する。
(LPF、HPF)
LPF51、およびHPF53は、駆動装置50へ入力された音声信号を低、中域成分の音声信号と高域成分の音声信号とに分離する。具体的には、LPF51は、音声信号の低、中域成分を濾波(いわゆる低域濾波)することによって音声信号の低、中域成分を分離し、HPF53は、音声信号の高域成分を濾波(いわゆる高域濾波)することによって音声信号の高域成分を分離する。
本実施形態においては、高域成分の音声信号とは、可聴帯域における1.5kHz〜20kHzの周波数を有する音声を示す音声信号であり、低、中域成分の音声信号とは、可聴帯域における1.5kHz未満の周波数を有する音声を示す音声信号とする。したがって、本実施形態においては、LPF51は、1.5kHz未満の周波数を有する音声信号を選択的に通過させるフィルタであり、HPF53は、1.5kHz〜20kHzの周波数を有する音声を選択的に通過させるフィルタである。
なお、上記の周波数による低、中域成分および高域成分の区別は本発明を限定するものではなく、例えば、用いるスピーカの特性を考慮し、ユーザにとって最も違和感の生じない周波数を、低、中域成分と高域成分との閾値として選択してもよい。
LPF51は、通過した低、中域成分の音声信号を、加算器57に入力する。一方、HPF53は、通過した高域成分の音声信号をAMP55に入力する。
(AMP)
AMP55は、入力された高域成分の音声信号の示す音声の音量を増幅または減衰し、加算器57に入力する。AMP55、およびAMP56は音声制御部59によって制御されており、音声制御部59から受信した制御信号に基づいて、音量の増幅率を決定する。
(音声制御部)
音声制御部59は、AMP55およびAMP56による高域成分の音声信号の示す音声の音量の増幅率を個別に制御する。特に、音声の定位を変更する場合には、AMP55およびAMP56による増幅率を互いに異ならせるようにAMP55およびAMP56を制御する。なお、音声の定位の変更については、図面を変えて後述する。
(加算器)
加算器57は、LPF51から入力された低、中域成分の音声と、AMP55から入力された高域成分の音声とを加算し、スピーカ11に入力する。スピーカ11は、加算器57から入力された音声信号の示す音声を出力する。
LPF52、HPF54、AMP56、および加算器58は、上述した処理と同様の処理を行う。スピーカ12は、スピーカ11と同様に、加算器58から入力された音声信号の示す音声を出力する。
上述したような駆動装置50によってスピーカ11、12から出力される音声のうち、低、中域成分の音声は、同相かつ同音量(同振幅)の音声であるため、互いのスピーカの振動をキャンセルすることができる。これは、低、中域成分の音声がスピーカ11、12の振動に及ぼす影響が大きい一方、高域成分の音声がスピーカ11、12の振動に及ぼす影響が小さいためである。
また、スピーカ11、12から出力される音声のうち、高域成分の音声は、同相かつ音量が異なる(振幅が異なる)音声である。このスピーカ11、12からそれぞれ出力される音声のうち、高域成分の音声の音量比(振幅比)を制御することにより、スピーカシステム4は、音声の定位を上下に変更した音場を形成することができる。
また、上記駆動装置50は、デジタルシグナルプロセッサ(DSP:digital signal processor)等のコンピュータとして実現されていてもよい。この場合、コンピュータを上記各手段として機能させることにより、そのコンピュータを上記駆動装置として動作させる音声信号処理プログラム、および、そのプログラムを記録した記録媒体も、本発明の範疇に含まれる。
〔音場の形成〕
続いて、本実施形態に係る駆動装置50を備えるスピーカシステム4を用いて音場を変化させる原理について、図15から図18を参照して説明する。図15は、本実施形態に係るスピーカシステム4を用いた場合の、音声の定位の変更範囲を示す図である。図16は、本実施形態に係るスピーカシステム4において、スピーカ11および12からそれぞれ出力する音声が同音量である場合の音場を示す図である。
一般的に、音の上下方向の検知は頭部伝達関数に拠るため、頭部伝達関数が大きく変化する高域成分の音声が出力される位置に音声が定位した音場が形成される。例えば、本実施形態に係るスピーカシステム4において、スピーカ11および12から同一の音声がそれぞれ出力される場合には、等距離平面(図15において示す破線を含む平面)において、スピーカ11および12から出力されたそれぞれの音声の位相が揃っている。このため、等距離平面上において、スピーカ11および12から出力された音声の重ね合わせが起こり、音量(音圧)が最大となる。そのため、等距離平面上に音声が定位した音場が形成されることになる。
このように、スピーカ11、12からそれぞれ出力される音声の音量比を制御することにより、音場を変化させることができる。なお、上下のスピーカ11、12間の距離は、スピーカ11、12の直径の2倍程度までの距離を選択することが好ましい。
図16に示すように、スピーカ11、12からそれぞれ出力される音声のうち、高域成分の音声の音量比が1:1である場合、破線で示した等距離平面に音声が定位した音場が形成される。スピーカ11から出力される音声を聴いた際に、ユーザが感じる音の方向は図16の矢印Aで示す方向である。同様にスピーカ12から出力される音声を聴いた際に、ユーザが感じる音の方向は図16の矢印Bで示す方向である。
したがって、スピーカ11、12から同位相かつ同音量で音声を出力した場合、ユーザが感じる音の方向は、矢印AおよびBが示すベクトルの合成ベクトルである矢印Cの方向、すなわち等距離平面上の方向である。また、この等距離平面上において、スピーカ11、12からそれぞれ「1」の音量で出力される音声は、図16に示すように、重ね合わせにより「2」の音量となる。
(定位の変更)
また、スピーカシステム4は、スピーカ11および12から出力されるそれぞれの音声の音量を異ならせることによって、音声の定位を変更することができる。
しかしながら、単にスピーカ11および12の音量比を変化させ、音声の定位を変更した場合には、スピーカ11、12の振動を互いに打ち消し合わせることが困難となる。そこで、本実施形態では、図17に示すように、駆動装置50を用いて、スピーカシステム4のスピーカ11、12から出力される音声を低、中域成分の音声と、高域成分の音声とに分離し、高域成分の音量比のみを変化させる。
図17は、本実施形態に係るスピーカシステム4において、スピーカ11および12からそれぞれ出力される音声の音量が異なる場合の音場を示す図である。
図17に示すように、スピーカ11、12からそれぞれ出力される音声のうち、高域成分の音声の音量比が1.5:0.5となるように設定した場合、破線で示した等距離平面より上方に音声が定位した音場が形成される。スピーカ11から出力される音声を聴いた際に、ユーザが感じる音の方向は図17の矢印A’で示す方向である。同様にスピーカ12から出力される音声を聴いた際に、ユーザが感じる音の方向は図17の矢印B’で示す方向である。
したがって、スピーカ11、12から同位相の音声が異なる音量で出力される場合、ユーザが感じる音の方向は、矢印A’およびB’が示すベクトルの合成ベクトルである矢印C’の方向、すなわち等距離平面よりもスピーカ11に近い方向である。このとき、等距離平面上において、スピーカ11から出力される「1.5」の音量の音声と、スピーカ12から出力される「0.5」の音量の音声とは、図17に示すように、重ね合わせによって「2」の音量となる。したがって、スピーカシステム4は、等距離平面における音量は略一定のまま、スピーカの振動を抑制しつつ、音声を上方に定位させた音場を形成することができる。
上記のように、音声制御部59は、等距離平面における音量を略一定に保つように、AMP55、およびAMP56によるそれぞれの増幅率を制御する。例えば、図17に示す例よりもさらに上方に音声を定位させる場合には、高域成分の音声の音量比が1.7:0.3となるように増幅率をそれぞれ設定すればよい。これによって、スピーカシステム4は、等距離平面における音量は略一定のまま、音声を上方に定位させた音場を形成することができる。
これにより、本実施形態に係るスピーカシステム4は、スピーカ11および12の振動を互いに打ち消し合わせることによって抑制しつつ、音声の定位を変更することができる。この際、スピーカ11、12間の中点における音量が変化しないように、音量比を調整する。
また、スピーカ11、12から出力される音声のうち、高域成分の音声の音量比が2:0となるように設定した場合、スピーカ11の位置、すなわち、図15における矢印Aの示す方向に音声が定位した音場が形成される。同様に、スピーカ11、12から出力される音声のうち、高域成分の音声の音量比が0:2となるように設定した場合、スピーカ12の位置、すなわち、図15における矢印Bの示す方向に音声が定位した音場が形成される。
図18は、本実施形態に係るスピーカシステム4において、スピーカ11、12間の距離を変化させた場合の音声の特性を示すグラフであり、グラフの横軸は周波数(単位はkHz)、縦軸は音圧(単位はdB)である。スピーカ11、12間の距離を2cm、4cm、および6cmに設定した場合において、等距離平面上にて測定した音声の特性をそれぞれ示している。図18に示すように、特にスピーカ間の距離が短い場合には、音声の特性を示す曲線の高域成分におけるくぼみ(ディップ)が大きくなる。したがって、スピーカ11と12との間にある程度の距離を設けることによって、より良好な特性を得ることができる。
本実施形態のように、スピーカの音声出力面を互いに対向するように配置した場合には、従来のスピーカシステムと比較して、等距離平面上において、高域成分の音声が低、中域成分の音声よりも小さくなることが考えられる。これは、高域成分の音声が指向性および直進性が高いためである。
しかし、本実施形態に係るスピーカシステム4は、駆動装置50を備えることによって、高域成分の音声信号を増幅することができる。つまり、本実施形態に係るスピーカシステム4は、駆動装置50によって高域成分のみが増幅された音声を出力することができるため、等距離平面上において聴取される音声の周波数特性をフラットに近づけることができる。
したがって、本実施形態に係るスピーカシステム4は、等距離平面上において、中域成分の音声よりも小さく聞こえると考えられる高域成分の音声のみを増幅するために、更なる回路や構成を備える必要がない。
以上のように、本実施形態に係るスピーカシステム4を用いて、音声出力面が互いに対向するように配置されたスピーカ間の中点を、例えばTV画面の高さの中心に配置するなど、ユーザの好みに応じて調整することができる。また、例えばデザインの都合などによって、上記スピーカシステム4をオフセットして配置しなければならないような場合においても、TV画面の中心に音声を定位させ、音場を形成することができる。
なお、本実施形態では、駆動装置50によって1つのスピーカシステム4を駆動する場合を例に挙げて説明したが、これに限定されず、駆動装置50によって2つのスピーカシステム4を同時に駆動してもよい。さらに、駆動装置50は、この2つのスピーカシステム4から出力される音声の音量を、異ならせるように駆動してもよい。なお、この場合には、2つのスピーカシステム4は、それぞれの音声出力面の法線方向が平行になるように配置されることが好ましい。
これによって、駆動装置50は、2つのスピーカシステム4の法線方向に対して垂直な面内方向に関しても、音声の定位を変更することができる。つまり、駆動装置50は、2つのスピーカシステム4を上記のように駆動することにより、全方位に対して音声の定位を変更することができる。
〔まとめ〕
本発明の一態様に係るスピーカシステム(スピーカシステム1〜4)は、上述のように、第1の細長形エンクロージャ(エンクロージャ21)の長手方向の一端に配置され、音声出力面(振動板が備えられている面)が当該第1の細長形エンクロージャとは反対側に位置する第1のスピーカ(スピーカ11)と、第2の細長形エンクロージャ(エンクロージャ22)の長手方向の一端に配置され、音声出力面が当該第2の細長形エンクロージャとは反対側に位置する第2のスピーカ(スピーカ12)と、を備え、上記第1のスピーカの音声出力面と上記第2のスピーカの音声出力面とが対向するように配置されている、ことを特徴としている。
上記の構成によれば、上記第1のスピーカおよび上記第2のスピーカは、それぞれ対向して配置されている。これによって、一方のスピーカが音声を出力する際に発生する振動を、対向する他方のスピーカが音声を出力する際に発生する振動によって打ち消すことができる。これによって、上記スピーカシステム全体の振動を抑制することができるため、上記第1および第2のスピーカの振動に起因する振動音、ビビリ音などの発生を抑制することができる。
また、上記第1および第2の細長形エンクロージャは、その形状が細長形であることから、一方のスピーカから出力された音声のうち、他方のスピーカおよび細長形エンクロージャによってその伝搬を阻害される音声が少ない。これは、各細長形エンクロージャの長手方向の一端に配置された各スピーカの音声出力面が互いに対向しているため、一方のスピーカから出力された音声が、他方のスピーカおよび当該他方のスピーカを備える各細長形エンクロージャの長手方向の一端以外に阻害されないためである。
したがって、上記スピーカシステムは、上記第1および第2の細長形エンクロージャの長手方向と音声の伝搬方向とのなす角(すなわち、長手方向を基準とする偏角)に関する指向性の低いスピーカシステムを実現することができる。
また、本発明の一態様に係るスピーカシステムにおいて、上記第1のスピーカと上記第2のスピーカとは、複数の棒状部材(連結棒13)によって連結されていてもよい。
上記の構成によれば、上記第1のスピーカと上記第2のスピーカとを複数の棒状部材によって連結している。これによって、上記第1および第2のスピーカから出力される音声であって、上記スピーカシステムの長手方向に垂直な方向に伝搬する音声のうち、上記第1および第2のスピーカを連結する部材によって音声の伝搬の阻害を低減することができる。これは、上記第1および第2のスピーカを連結する部材の形状を棒状以外の形状(例えば、板状など)にする場合よりも、上記第1および第2のスピーカから出力される音声のうち、伝搬の阻害される量を低減することができるからである。
しがたって、上記スピーカシステムは、上記スピーカシステムの長手方向に垂直な方向に関する指向性を低くすることができる。
また、本発明の一態様に係るスピーカシステムにおいて、上記第1のスピーカと上記第2のスピーカとの距離は、上記第1のスピーカおよび上記第2のスピーカの備える振動板(振動版15)の直径以上であってもよい。
上記の構成によれば、上記第1のスピーカと上記第2のスピーカとの距離は、上記第1のスピーカおよび上記第2のスピーカの備える振動板の直径以上である。これによって、上記スピーカシステムは、上記第1および第2のスピーカの双方から出力される音声によって上記第1のスピーカと上記第2のスピーカとの間に発生する定在波を効率的に抑制することができる。
また、本発明の一態様に係るスピーカシステムにおいて、上記第1の細長形エンクロージャは、長手方向の一端に上記第1のスピーカが配置されている第1のメインエンクロージャ(メインエンクロージャ23)と、第1のサブエンクロージャ(サブエンクロージャ25)とによって構成されており、上記第2の細長形エンクロージャは、長手方向の一端に上記第2のスピーカが配置されている第2のメインエンクロージャ(メインエンクロージャ24)と、第2のサブエンクロージャ(サブエンクロージャ26)とによって構成されていてもよい。
上記の構成によれば、上記第1および第2の細長形エンクロージャを、それぞれ、上記第1および第2のメインエンクロージャと、第1および第2のサブエンクロージャとによって構成されている。このため、上記スピーカシステムは、上記第1または第2のサブエンクロージャの長さを任意に調整することにより、上記第1および第2の細長形エンクロージャの長さを任意に調整することが可能である。
したがって、上記スピーカシステムは、上記第1のスピーカと上記第2のスピーカとが対向して配置される位置、すなわち、当該スピーカシステムから音声が出力される位置を、上記第1および第2のサブエンクロージャの長さによって任意に調整することができる。これによって、上記スピーカシステムは、当該スピーカシステムの使用環境に合わせて、音声が出力される位置を最適に調整することができる。
また、本発明の一態様に係るスピーカシステムにおいて、上記第1の細長形エンクロージャ、および、上記第2の細長形エンクロージャは、筒状であってもよい。
上記の構成によれば、第1の細長形エンクロージャ、および、第2の細長形エンクロージャは、筒状である。これにより、上記スピーカシステムは、当該スピーカシステムから出力される音声を、より均一に出力することができる。しかも、上記スピーカシステムは、上記第1および第2の細長形エンクロージャが共に筒状であるため、当該第1および第2の細長形エンクロージャによる音声の伝搬の阻害をより低減すことができる。
また、本発明の一態様に係るスピーカシステムは、上記第1のスピーカと上記第2のスピーカとが対向して配置されている位置に、上記第1のスピーカおよび上記第2のスピーカから出力される音声を反射する反射板32が、上記第1の細長形エンクロージャおよび上記第2の細長形エンクロージャの長手方向と平行に配置されていてもよい。
上記の構成によれば、上記第1および第2のスピーカから出力される音声を上記反射板32によって反射することにより、出力される音声の伝わる方向を調整することができる。したがって、上記スピーカシステムは、ユーザの位置に応じて上記反射板32の向きを調整することにより、当該スピーカシステムから出力される音声がより聴き取りやすい音場を形成することができる。
また、本発明の一態様に係るスピーカシステムにおいて、上記第1の細長形エンクロージャは、上記第1のスピーカから出力される音声の低周波数成分を増幅する第1の低音増幅部(バスレフポート41、43、パッシブラジエータ45)を備え、上記第2の細長形エンクロージャは、上記第2のスピーカから出力される音声の低周波数成分を増幅する第2の低音増幅部(バスレフポート42、44、パッシブラジエータ46)を備えていてもよい。
上記の構成によれば、上記スピーカシステムは、上記第1および第2の細長形エンクロージャの双方に低音増幅部を備えている。これによって、上記スピーカシステムは、当該スピーカシステム全体の振動を抑制しつつ、当該スピーカシステムから出力される音声の低音域を増幅することができる。
また、本発明の一態様に係るスピーカシステムは、上記第1のスピーカから出力される音声の音量と、上記第2のスピーカから出力される音声の音量とを異ならせるように駆動する駆動手段(駆動装置50(特に駆動装置50の備える音声制御部59))を備えている、ことが好ましい。
上記の構成によれば、上記駆動手段は、上記第1および第2のスピーカから出力される音声の音量を異ならせるように駆動する。これによって、上記駆動装置は、2つのスピーカの音声出力面が互いに対向するように配置されている場合であっても、音声の定位を変更することができる。
また、本発明の一態様に係るスピーカシステムは、上記駆動手段は、上記第1のスピーカから出力される音声の高域成分の音量と、上記第2のスピーカから出力される音声の高域成分の音量とを異ならせるように駆動する、ことが好ましい。
上記の構成によれば、上記駆動手段は、上記第1および第2のスピーカから出力される音声のうち、高域成分の音声の音量のみを異ならせるように駆動し、低域成分および中域成分の音声の音量が等しくなるように駆動する。
これによって、上記駆動手段は、上記第1のスピーカから出力される低、中域成分の音声によって上記第2のスピーカの振動をキャンセルし、上記第2のスピーカから出力される中・低域成分の音声によって上記第1のスピーカの振動をキャンセルすることができる。また、上記駆動装置は、上記第1および第2のスピーカから出力される高域成分の音声の音量を異ならせることにより、定位を変更することができる。
したがって、上記駆動手段は、上記第1のスピーカおよび上記第2のスピーカの振動を抑えつつ、定位を変更することができる。
また、本発明の一態様に係るスピーカシステムにおいて、上記駆動手段は、上記第1のスピーカから出力される音声の音量と、上記第2のスピーカから出力される音声の音量とを合わせた音量が、一定となるように駆動する、ことが好ましい。
上記の構成によれば、上記駆動手段は、上記第1および第2のスピーカから出力される音声の総和を一定にすることにより、上記第1および第2のスピーカからの距離の等しい平面(等距離平面とも記載する)上において聞こえる音量を略一定にすることができる。これによって、上記駆動手段は、上記第1および第2のスピーカから出力される音声の音量を異ならせるように駆動する場合にも、音量の総和を一定にすることによって、等距離平面上において聞こえる音量を略一定にすることができる。
本発明の一態様に係る制御方法は、上述のように、第1の細長形エンクロージャ(エンクロージャ21)の長手方向の一端に配置され、音声出力面(振動板が備えられている面)が当該第1の細長形エンクロージャとは反対側に位置する第1のスピーカ(スピーカ11)と、第2の細長形エンクロージャ(エンクロージャ22)の長手方向の一端に配置され、音声出力面が当該第2の細長形エンクロージャとは反対側に位置する第2のスピーカ(スピーカ12)と、を備え、上記第1のスピーカの音声出力面と上記第2のスピーカの音声出力面とが対向するように配置されているスピーカシステム(スピーカシステム1〜4)の制御方法であって、上記第1のスピーカから出力される音声の音量と、上記第2のスピーカから出力される音声の音量とを異ならせるように駆動する駆動ステップを含んでいる、ことを特徴としている。
上記の制御方法によれば、上記のスピーカシステムと同様の効果を奏する。
また、本発明の一態様に係るスピーカシステム1〜4としてコンピュータを動作させるためのプログラムであって、上記コンピュータを上記の手段として機能させることを特徴とするプログラム、および、このようなプログラムが記録されているコンピュータ読み取り可能な記録媒体もまた、本発明の範疇に含まれる。
上記の特許文献4には、表示画面と、高音用、中音用及び低音用のスピーカとを備えた表示装置であって、高音用のスピーカが表示画面の上下方向中央の左右端部にそれぞれ設けられ、低音用のスピーカが表示画面の下端部に設けられた表示装置が開示されている。
しかし、特許文献4に記載の技術では、表示装置の左右の一方に備えられた1組の高音用、中音用及び低音用のスピーカ(各1つずつ)だけでは音声の定位を変更することはできない。つまり、特許文献4に記載の技術は、表示装置の左右に設けられた、高音用、中音用及び低音用のスピーカをそれぞれ2つずつ備えることによって初めて音声の定位を変更することができるものである。
また、高音用の2つのスピーカの音量を異ならせても、表示画面の短手方向に関する音声の定位は高音用のスピーカの位置に固定されることとなる。
一方、本発明の一態様に係る駆動装置50は、上述のように、第1のスピーカ(スピーカ11)の音声出力面と、第2のスピーカ(スピーカ12)の音声出力面とが対向するように配置されたスピーカシステム4を駆動する駆動装置であって、上記第1のスピーカの音声出力面から出力される音声の音量と上記第2のスピーカの音声出力面から出力される音声の音量とを異ならせるように駆動する駆動手段(音声制御部59)を備えている。
上記の構成によれば、上記駆動手段は、音声出力面が互いに対向して配置されている上記第1および第2のスピーカから出力される音声の音量を異ならせるように駆動する。これによって、上記駆動装置50は、2つのスピーカの音声出力面の法線方向に関して音声の定位を変更することができる。つまり、上記駆動装置50は、音声出力面が対向する2つのスピーカから出力される音声の音量を異ならせることにより、1つのスピーカシステムだけで音声の定位を変更することができる。
また、上記駆動装置50は、例えば、スピーカシステムを2つ用意して表示装置の左右に、表示装置の短手方向と音声出力面の法線方向とが平行になるよう配置することにより、全方位に対して音声の定位を変更することができる。
〔ソフトウェアによる実現例〕
最後に、スピーカシステム1を制御する駆動装置50の備える音声制御部59は、集積回路(ICチップ)上に形成された論理回路によってハードウェア的に実現してもよいし、CPU(Central Processing Unit)を用いてソフトウェア的に実現してもよい。
後者の場合、音声制御部59は、各機能を実現するプログラムの命令を実行するCPU、上記プログラムを格納したROM(Read Only Memory)、上記プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)、上記プログラムおよび各種データを格納するメモリ等の記憶装置(記録媒体)などを備えている。そして、本発明の目的は、上述した機能を実現するソフトウェアである音声制御部59の制御プログラムのプログラムコード(実行形式プログラム、中間コードプログラム、ソースプログラム)をコンピュータで読み取り可能に記録した記録媒体を、上記音声制御部59に供給し、そのコンピュータ(またはCPUやMPU)が記録媒体に記録されているプログラムコードを読み出し実行することによっても、達成可能である。
上記記録媒体としては、一時的でない有形の媒体(non-transitory tangible medium)、例えば、磁気テープやカセットテープ等のテープ類、フロッピー(登録商標)ディスク/ハードディスク等の磁気ディスクやCD−ROM/MO/MD/DVD/CD−R等の光ディスクを含むディスク類、ICカード(メモリカードを含む)/光カード等のカード類、マスクROM/EPROM/EEPROM(登録商標)/フラッシュROM等の半導体メモリ類、あるいはPLD(Programmable logic device)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等の論理回路類などを用いることができる。
また、音声制御部59を通信ネットワークと接続可能に構成し、上記プログラムコードを通信ネットワークを介して供給してもよい。この通信ネットワークは、プログラムコードを伝送可能であればよく、特に限定されない。例えば、インターネット、イントラネット、エキストラネット、LAN、ISDN、VAN、CATV通信網、仮想専用網(Virtual Private Network)、電話回線網、移動体通信網、衛星通信網等が利用可能である。また、この通信ネットワークを構成する伝送媒体も、プログラムコードを伝送可能な媒体であればよく、特定の構成または種類のものに限定されない。例えば、IEEE1394、USB、電力線搬送、ケーブルTV回線、電話線、ADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)回線等の有線でも、IrDAやリモコンのような赤外線、Bluetooth(登録商標)、IEEE802.11無線、HDR(High Data Rate)、NFC(Near Field Communication)、DLNA(Digital Living Network Alliance)、携帯電話網、衛星回線、地上波デジタル網等の無線でも利用可能である。なお、本発明は、上記プログラムコードが電子的な伝送で具現化された、搬送波に埋め込まれたコンピュータデータ信号の形態でも実現され得る。
なお、ここで開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。