以下、本発明の実施形態に係る増圧給水システムについて図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る増圧給水システムを示す模式図である。この増圧給水システムは、高層建築物(例えば、16階以上の建物)に使用される直結式の増圧給水システムである。図1に示すように、この増圧給水システムは、水道管2に連結された第1の給水装置BP1と、第1の給水装置BP1に直列に連結された第2の給水装置BP2とを有している。第1の給水装置BP1は、グランドレベルまたは地下に設置されており、第2の給水装置BP2は、建物1の中間層階に設置されている。
第1の給水装置BP1の吸込口は、導入管5を介して水道管2に接続されている。第1の給水装置BP1の吐出口と第2の給水装置BP2の吸込口とは第1の配水管7によって連結されており、この第1の配水管7は、建物1の低層階の各給水栓9に枝管12を介して連通している。第2の給水装置BP2の吐出口には、第2の配水管15が接続されており、この第2の配水管15は、建物1の高層階の各給水栓10に枝管13を介して連通している。第1の給水装置BP1は、水道管2からの水を増圧して建物1の低層階の各給水栓9に水を供給し、第2の給水装置BP2は、第1の給水装置BP1から移送された水を増圧して建物1の高層階の各給水栓10に水を供給するようになっている。
図2は、第1の給水装置BP1を示す模式図である。図2に示すように、第1の給水装置BP1は、導入管5を介して水道管2に連結されるポンプP1と、このポンプP1を駆動する駆動機としてのモータM1と、モータM1の回転速度を増減するインバータINV1と、ポンプP1の吐出側に配置された逆止弁CV1と、逆止弁CV1の吐出側に配置された流量検出器SW1、圧力センサPS1、および圧力タンクPT1とを備えている。これら構成要素は、キャビネットCB1内に収容されている。
逆止弁CV1は、ポンプP1の吐出口に接続された吐出管L1に設けられており、ポンプP1が停止したときの水の逆流を防止する。流量検出器SW1は吐出管L1を流れる水の流量を検出する流量検出器であり、水の流量が低下して所定の値に達したときに流量低下信号を出力し、流量が増加して前記所定の値に達したときに流量増加信号を出力するように構成されている。流量検出器SW1としては、流量センサやフロースイッチなどを使用することができる。圧力センサPS1は、ポンプP1の吐出側圧力(すなわち、第1の給水装置BP1に加わる背圧)を測定するための水圧測定器である。圧力タンクPT1は、ポンプP1が停止している間の吐出側圧力を保持するための圧力保持器である。吐出管L1は第1の配水管7に接続されている。
ポンプP1の吸込口には減圧式逆流防止器20が接続されている。この減圧式逆流防止器20は、水道管2への水の逆流を確実に防止するために設置することが義務付けられているものである。なお、減圧式逆流防止器とは、逃し弁が配置された中間室を2つの逆止弁が挟むように配置された構成を有する逆流防止器である。
第1の給水装置BP1は、給水動作を制御する制御盤(第1の制御部)CN1をさらに備えており、インバータINV1、流量検出器SW1、圧力センサPS1は、制御盤CN1に信号線を介して接続されている。流量検出器SW1により水の流量が所定の値にまで低下したことが検出されると、制御盤CN1はポンプP1の運転速度を一時的に上げるようインバータINV1に指令を出し、圧力タンクPT1に蓄圧してからポンプP1の運転を停止させるようになっている。このような停止動作は、少水量停止動作と呼ばれている。一方、ポンプP1の吐出側圧力(吐出管L1内の水圧)が所定の値まで低下すると、制御盤CN1はポンプP1の運転を開始するようインバータINV1に指令を出す。
この第1の給水装置BP1においては、流量検出器SW1や圧力センサPS1の出力信号に基づいて、ポンプP1の運転速度(回転速度)が制御盤CN1によって制御される。一般的には、圧力センサPS1により測定された圧力信号が設定された目標圧力と一致するようにポンプP1の運転速度を制御してポンプP1の吐出圧力が一定になるように制御する吐出圧力一定制御や、ポンプP1の吐出圧力の目標値を適切に変化させることにより末端の給水栓における供給水圧を一定に制御する推定末端圧力一定制御などが行われる。これらの制御によれば、その時々の需要水量に見合った回転速度でポンプP1が駆動されるので、省エネルギーを達成することができる。
図3は、第2の給水装置BP2を示す模式図である。第2の給水装置BP2の基本的な構成および動作は、上述した第1の給水装置BP1と同様であり、同一の構成要素には対応する符号が付されている。この第2の給水装置BP2は、減圧式逆流防止器を備えていない点で第1の給水装置BP1と相違する。これは、水道管2に直結されていない第2の給水装置BP2には、減圧式逆流防止器を設けることは義務付けられていないからである。しかしながら、第2の給水装置BP2に減圧式逆流防止器を設けてもよい。
第1の給水装置BP1は、導入管5と第1の配水管7とを連通させるバイパス管(図示しない)を備えてもよい。バイパス管には図示しない逆止弁が取り付けられる。ポンプP1の吸込側圧力が所定の圧力よりも高い場合、導入管5内の水はバイパス管を通って(すなわちポンプP1を迂回して)低層階の各給水栓9に供給される。第2の給水装置BP2も同様にバイパス管および逆止弁を備えてもよい。ポンプP2の吸込側圧力が所定の圧力よりも高い場合、第1の配水管7内の水はバイパス管を通って高層階の各給水栓10に供給される。
第1の給水装置BP1の制御盤(第1の制御部)CN1および第2の給水装置BP2の制御盤(第2の制御部)CN2は、それぞれ通信機能を有している。これらの制御盤CN1,CN2は、RS−232などのインターフェイス(シリアルポート)を有しており、通信線25を介して互いに接続されている。制御盤CN1,CN2は、この通信線25を通じて双方向のシリアル通信が可能となっている。なお、シリアル通信に代えて、接点信号(電気的なON/OFF信号)を用いる通信を用いてもよい。
ポンプP1,P2の回転速度、および給水装置BP1,BP2の故障情報は、制御盤CN1と制御盤CN2との間で双方向に伝送される。このような通信機能は、第1の給水装置BP1と第2の給水装置BP2の連携運転を可能とする。なお、通信線25を用いた有線方式に代えて、通信線を用いない無線方式を採用してもよい。
第2の給水装置BP2の圧力センサPS2および流量検出器SW2は、制御盤CN2に接続されているとともに、信号線26,27を介して第1の給水装置BP1の制御盤CN1にも接続されている。したがって、圧力センサPS2の出力値(すなわち、ポンプP2の吐出側圧力の測定値)および流量検出器SW2の出力信号(すなわち、上述した流量低下信号および流量増加信号)は、制御盤CN2に送信され、かつ信号線26,27を通じて第1の給水装置BP1の制御盤CN1に送信されるようになっている。なお、信号線26,27を省略し、圧力センサPS2の出力値および流量検出器SW2の出力信号を制御盤CN2から制御盤CN1に通信線25を介して送信してもよい。
ポンプP1,P2は、吐出側圧力が所定の値にまで低下したときに始動される。したがって、制御盤CN1,CN2には、ポンプP1,P2を始動させるトリガーとなる始動圧力S1,S3がそれぞれ設定されている。さらに、制御盤CN1には、ポンプP1を始動させるための第2の始動圧力S2が設定されている。この第2の始動圧力S2は、圧力センサPS2の出力値(ポンプP2の吐出側圧力の測定値)に基づく始動発令のための第2のしきい値である。第1の始動圧力S1は、圧力センサPS1の出力値(ポンプP1の吐出側圧力の測定値)に基づく始動発令のための第1のしきい値である。ポンプP1の第2の始動圧力S2は、ポンプP2の始動圧力S3よりも大きく設定されている(S2>S3)。これは、ポンプP2が始動される前にポンプP1を始動させるためである。
制御盤CN1は、圧力センサPS1および圧力センサPS2の両方の出力値を監視し、圧力センサPS1の出力値が第1の始動圧力S1にまで低下したとき、および/または圧力センサPS2の出力値が第2の始動圧力S2にまで低下したときの2つのトリガーに基づきポンプP1を始動させる。ポンプP2の吐出側圧力が低下すると、圧力センサPS2は、ポンプP2の始動圧力S3よりも先にポンプP1の始動圧力S2を検出する。制御盤CN1は、信号線26を通じて送られてくる圧力センサPS2の出力値(すなわち、ポンプP2の吐出側圧力の測定値)が始動圧力S2に達したときに、ポンプP1を始動させる。このような構成により、ポンプP1は、常にポンプP2よりも先に始動される。
ポンプP1が停止している状態で、低層階で水が使用されると、ポンプP1の吐出側圧力が低下する。そして、この吐出側圧力が始動圧力S1にまで低下すると、ポンプP1が始動される。このように、ポンプP1は、2つの圧力センサPS1,PS2の出力値に基づいて始動される。ポンプP1の吐出側の流量が所定の値にまで低下すると、流量検出器SW1は流量低下信号を制御盤CN1に送信する。制御盤CN1はこの流量低下信号を受け、ポンプP1の運転を停止させる。
高層階で水が使用され、ポンプP2の吐出側圧力が始動圧力S3にまで低下すると、ポンプP2が始動される。この場合、ポンプP2の運転中にポンプP1が停止すると、ポンプP1とポンプP2との間を連結する第1の配水管7内に負圧が形成され、給水栓9から空気が吸い込まれてしまう。そこで、このような空気の吸い込みを防止するために、ポンプP1の運転中にポンプP2が始動されると、たとえ制御盤CN1が流量検出器SW1から流量低下信号を受信した場合であっても、制御盤CN1はポンプP1の運転を停止させない、つまりポンプP1の運転を強制的に継続させるように構成されている。
高層階で水が使用されると、ポンプP2の吐出側圧力が低下すると同時に、吐出管L2内の水の流量が増加する。吐出管L2内の水の流量が増加して所定の値に達すると、流量検出器SW2は流量増加信号を信号線27を介して制御盤CN1に送信する。つまり、ポンプP2が始動されるときとほぼ同時に、流量検出器SW2は流量増加信号を制御盤CN1に送信する。したがって、この流量増加信号は、ポンプP2の始動を示す始動信号ということができる。また、この流量増加信号は、ポンプP2が少水量停止動作を行う値を超えたときに流量検出器SW2からの出力信号として発する信号である。流量低下信号は、ポンプP2が少水量停止動作を行う値以下のときに流量検出器SW2からの出力信号として発する信号である。
制御盤CN1がこの流量増加信号を流量検出器SW2から受けると、制御盤CN1は、たとえ流量検出器SW1から流量低下信号を受信した場合であっても、ポンプP1の運転を停止させない、つまりポンプP1の運転を強制的に継続させるように構成されている。
上述したように、ポンプP2は、ポンプP2の吐出側圧力が始動圧力S3にまで低下したときに始動される。したがって、他の実施形態として、制御盤CN1は、圧力センサPS2によって取得されるポンプP2の吐出側圧力に基づいて、ポンプP2が始動したか否かを決定してもよい。具体的には、圧力センサPS2の出力値(ポンプP2の吐出側圧力の測定値)がポンプP2の始動圧力S3にまで低下したときは、制御盤CN1は、たとえ流量検出器SW1から流量低下信号を受信した場合であっても、ポンプP1の運転を停止させない、つまりポンプP1の運転を強制的に継続させる。
さらに他の実施形態として、制御盤CN1は、圧力センサPS2の出力値および流量検出器SW2からの流量増加信号の両方に基づいて、ポンプP2が始動したか否かを決定してもよい。具体的には、制御盤CN1が流量検出器SW2から流量増加信号を受信したとき、または圧力センサPS2の出力値がポンプP2の始動圧力S3にまで低下したときは、制御盤CN1は、たとえ流量検出器SW1から流量低下信号を受信した場合であっても、ポンプP1の運転を停止させない、つまりポンプP1の運転を強制的に継続させる。
このように、制御盤CN1は、圧力センサPS2の出力値および/または流量検出器SW2からの流量増加信号に基づいて、ポンプP1の強制的に継続させる。したがって、ポンプP2が運転している間は、ポンプP1の運転が継続される。このような構成により、第1の配水管7内に負圧が形成されることが防止される。
図4は、第2の給水装置BP2の他の構成例を示す模式図である。図4に示すように、ポンプP2の上流側には、ポンプP2の吸込側圧力を測定する吸込側圧力センサ40(以下、単に圧力センサ40という)が設置されている。第2の給水装置BP2のその他の構成は、図3に示す構成と同様である。圧力センサ40は、制御盤CN2に接続されている。さらに圧力センサ40は信号線28を介して制御盤CN1に接続されており、圧力センサ40の出力値(すなわち、ポンプP2の吸込側圧力の測定値)は信号線28を通じて制御盤CN1に送られる。なお、この圧力センサ40の出力値も信号線28を省略して制御盤CN2から制御盤CN1に通信線25を介して送ってもよい。
第1の給水装置BP1の制御盤CN1は、第2の給水装置BP2から送られてくる圧力センサ40の出力値に基づき、低層階の給水栓9の給水圧力(末端圧力)が所定の目標値となるようにフィードバック制御する。具体的には、制御盤CN1は、圧力センサ40の出力値が所定の目標値を維持するようにポンプP1の運転を制御する。低層階の末端圧力は、第2の給水装置BP2の吸込側圧力に実質的に等しいので、圧力センサ40の出力値は低層階の給水栓9の給水圧力(末端圧力)を示していると考えることができる。したがって、圧力センサ40の出力値から、低層階の実際の末端圧力を監視することができる。
このような運転制御方法によれば、実際の末端圧力に基づいてポンプP1の運転が制御されるので、配水管7内の摩擦抵抗に起因する圧力降下の影響を受けない末端圧力一定制御が実現される。したがって、所望の末端圧力での給水が可能となる。なお、第2の給水装置BP2の圧力センサ40は、第1の給水装置BP1の圧力センサPS1の代用として用いることができるので、圧力センサPS1は省略してもよい。
次に、ポンプP1,P2の停止動作について説明する。低層階および高層階の両方で水が使用されている場合に低層階での水の使用が停止されても、高層階で水が使用されている限り、ポンプP1の吐出側の流量は、所定の値(少水量停止動作を開始するための流量の設定値)までは低下しない。したがって、制御盤CN1は、ポンプP2が運転していることを示す流量増加信号を流量検出器SW2から受け取った後は、圧力センサ40の出力値に基づいて末端圧力一定制御を行い、ポンプP2の吸込側圧力が所定の目標圧力に維持されるようポンプP1の運転を継続させる。したがって、低層階での配水管7に負圧が形成されることが防止される。
低層階での水の使用が停止された後に、高層階での水の使用が停止されると、ポンプP1,P2の吐出側の流量が低下する。ポンプP1の吐出側の流量が所定の値まで低下すると、流量検出器SW1は流量低下信号を制御盤CN1に送信し、ポンプP2の吐出側の流量が所定の値まで低下すると、流量検出器SW2は流量低下信号を制御盤CN1,CN2に送信する。制御盤CN1は、流量検出器SW1から流量低下信号を受け取り、かつ流量検出器SW2から流量低下信号を受け取ったことを条件として、ポンプP1の運転を停止する。すなわち、制御盤CN1は、インバータINV1に指令を発してポンプP1の回転速度を一時的に増加させて圧力タンクPT1に蓄圧し、その後ポンプP1の運転を停止させる(少水量停止動作)。制御盤CN2は、流量検出器SW2から流量低下信号を受信したことを条件として、ポンプP2の運転を停止する。すなわち、制御盤CN2は、流量検出器SW2からの流量低下信号を受けると、インバータINV2に指令を出してポンプP2の回転速度を一時的に増加させて圧力タンクPT2に蓄圧し、その後ポンプP2を停止させる(少水量停止動作)。
制御盤CN1は、流量検出器SW2から送られる流量低下信号を受けた時から所定の時間が経過したときにポンプP2の運転が停止されたと判断する。ここで所定の時間とは、制御盤CN1が流量検出器SW2からの流量低下信号を受信してからポンプP2が停止されるまでの時間をいう。この所定の時間は、上述したポンプP2の少水量停止動作に必要な時間に基づいて決定される。
低層階で水が使用されているときに高層階での水の使用が停止されると、ポンプP2の吐出側の流量が低下する。ポンプP2の吐出側の流量が低下して所定の第2の値に達すると、流量検出器SW2は流量低下信号を制御盤CN1および制御盤CN2に送信する。制御盤CN1は、流量検出器SW1から流量増加信号を受信した後に流量検出器SW2から流量低下信号を受信したとき、すなわち低層階で水が使用されつつ高層階での水の使用が停止されたときは、ポンプP1の運転を継続する。制御盤CN2は、流量検出器SW2からの流量低下信号を受け取ったことを条件として、ポンプP2の運転を停止させる。なお、この流量増加信号は、ポンプP1が少水量停止動作を行う値を超えたときに流量検出器SW1からの出力信号として発する信号である。流量低下信号は、ポンプP1が少水量停止動作を行う値以下のときに流量検出器SW1からの出力信号として発する信号である。
ポンプP2の停止後、ポンプP1の吐出側の流量が低下して所定の第1の値(少水量停止動作を開始するための流量の設定値)に達すると、流量検出器SW1は流量低下信号を制御盤CN1に送信する。制御盤CN1は、ポンプP2の運転が停止されたと判断し、かつ、流量検出器SW1からの流量低下信号を受けると、ポンプP1の少水量停止動作を行う。すなわち、制御盤CN1は、インバータINV1に指令を発してポンプP1の回転速度を一時的に上げて圧力タンクPT1に蓄圧し、その後ポンプP1の運転を停止させる。
上述した第1の給水装置BP1および第2の給水装置BP2は、いずれも1台のポンプのみを有しているが、図5に示すように複数のポンプを有してもよい。図5は、複数のポンプを備えた第1の給水装置BP1を示す模式図である。図示しないが、第2の給水装置BP2も、同様の配置に従って複数のポンプを備えることができる。複数のポンプを備えることにより、追加解列を伴う複数台運転を行ったり、運転中にあるポンプやインバータの異常が検出された場合に、他の正常なポンプやインバータに運転を切り替えて給水を継続することができる。
次に、本発明のさらに他の実施形態に係る増圧給水システムについて説明する。なお、以下の説明において、上述した実施形態と同一の構成要素には同一の符号を引用し、その重複する説明は省略する。
図6は、本発明の他の実施形態に係る増圧給水システムを示す模式図である。上述した図1に示す実施形態では、給水装置BP1,BP2のそれぞれの制御盤CN1,CN2の間で直接通信が行われるが、図6に示す実施形態では、第2の給水装置BP2に通信装置30が接続されており、この通信装置30を介して給水装置BP1,BP2の間で通信が行われる。
図7は、図6に示す増圧給水システムの詳細な構成を示す図である。本実施形態における給水装置BP1,BP2は、それぞれ複数の(図7では2台の)ポンプを有しているが、図2および図3に示すような1台のポンプを有する給水装置も本発明に係る増圧給水システムに使用することができる。低層階用の第1の給水装置BP1と高層階用の第2の給水装置BP2の基本的構成は同一である。
図7に示すように、第1の給水装置BP1において、ポンプP1の上流側には減圧式逆流防止器20が接続されており、この減圧式逆流防止器20の上流側には吸込側圧力センサPS11(以下、単に圧力センサPS11という)が設けられている。この圧力センサPS11はポンプP1の吸込側圧力を測定するセンサである。圧力センサPS11は制御盤CN1に接続されており、制御盤CN1は圧力センサPS11の出力値に基づいてポンプP1の吸込側圧力を監視している。
第1の給水装置BP1が運転中に、何らかの原因で水道管2の圧力が低下すると、水道管2に負圧が形成されるおそれがある。そこで、水道管2に負圧が形成されないようにするために、ポンプP1の吸込側圧力、すなわち圧力センサPS11の出力値が所定のしきい値にまで低下したときは、制御盤CN1はポンプP1の運転を停止させるようになっている。
同様に、第2の給水装置BP2にも、吸込側圧力センサPS21(以下、単に圧力センサPS21という)が設けられている。この圧力センサPS21は減圧式逆流防止器20の上流側に配置され、ポンプP2の吸込側圧力を測定する。圧力センサPS21は制御盤CN2に接続されており、制御盤CN2は圧力センサPS21の出力値に基づいて第2のポンプP2の吸込側圧力を監視している。
圧力センサPS21を設ける理由は、圧力センサPS11を設ける理由と基本的に同様である。すなわち、給水装置BP1,BP2のいずれもが運転しているときに、故障などの理由により第1の給水装置BP1の吐き出し圧力が大きく低下すると、配水管7に負圧が形成されるおそれがある。そこで、ポンプP2の吸込側圧力、すなわち圧力センサPS21の出力値が所定のしきい値にまで低下したときは、制御盤CN2はポンプP2の運転を停止させる。
第1の給水装置BP1および第2の給水装置BP2の基本的構成は同一であるため、高層階用の第2の給水装置BP2も減圧式逆流防止器20を有している。上述したように、第2の給水装置BP2に減圧式逆流防止器20を設けることは必要とされていないが、次のような理由から第2の給水装置BP2にも減圧式逆流防止器20を設けることが好ましい。第2の給水装置BP2のポンプP2が停止しているとき、高層階の配水管15内の水頭圧は第2の給水装置BP2の逆止弁CV2によって受け止められる。ところが、この逆止弁CV2が故障すると、高層階の配水管15の上端から低層階の配水管7の下端までの高さ分の水頭圧が第1の給水装置BP1に作用することになる。第1の給水装置BP1がその水頭圧を受け止めるのに十分な耐圧性能を有していない場合は、第1の給水装置BP1が故障または破損してしまう。そこで、このような2次的な故障、破損を防止するために、第2の給水装置BP2にも、図7に示すように、減圧式逆流防止器20を設けることが好ましい。
ポンプP2の上流側には、吸込側圧力センサPS5(以下、単に圧力センサPS5という)がさらに設けられており、ポンプP2の下流側には、吐出側圧力センサPS22(以下、単に圧力センサPS22という)および吐出側圧力センサPS6(以下、単に圧力センサPS6という)が設けられている。圧力センサPS5は、圧力センサPS21の上流側に配置され、これらは実質的に同じ高さに位置している。したがって、圧力センサPS5の出力値と圧力センサPS21の出力値とは実質的に同じである。圧力センサPS6は、圧力センサPS22および圧力タンクPT2の下流側に配置され、圧力センサPS6と圧力センサPS22とは実質的に同じ高さに位置している。したがって、圧力センサPS6の出力値と圧力センサPS22の出力値とは実質的に同じである。
第1の給水装置BP1に設けられている吐出側圧力センサPS12(以下、単に圧力センサPS12という)は、上述した実施形態における圧力センサPS1に対応する。第2の給水装置BP2に設けられている圧力センサPS22および圧力センサPS6は、上述した実施形態における圧力センサPS2に対応する。圧力センサPS22は制御盤CN2に接続されており、制御盤CN2は圧力センサPS22の出力値に基づいてポンプP2の吐出側圧力を監視している。
通信装置30は、第2の給水装置BP2に隣接して配置されている。通信装置30は、通信線25を介して第1の給水装置BP1の制御盤CN1に接続されている。圧力センサPS5,PS6および流量検出器SW2は通信装置30に接続されている。圧力センサPS5,PS6の出力値、すなわちポンプP2の吸込側圧力および吐出側圧力の測定値は、通信装置30を介して第1の給水装置BP1の制御盤CN1に送信されるようになっている。流量検出器SW2から出力される流量低下信号および流量増加信号も通信装置30を介して制御盤CN1に送信されるようになっている。
流量検出器SW2は制御盤CN2にも接続されており、流量検出器SW2から出力される流量増加信号および流量低下信号は制御盤CN2にも送信されるようになっている。圧力センサPS22は制御盤CN2に接続されているが、通信装置30には接続されていない。一方、圧力センサPS6は通信装置30に接続されているが、制御盤CN2には接続されていない。したがって、圧力センサPS22の出力値はポンプP2の始動に使用され、圧力センサPS6の出力値はポンプP1の始動に使用される。
第1の給水装置BP1は、導入管5と第1の配水管7とを連通させるバイパス管(図示しない)を備えてもよい。バイパス管には逆止弁が取り付けられる。ポンプP1の吸込側圧力が所定の圧力よりも高い場合、導入管5内の水はバイパス管を通って低層階の各給水栓9に供給される。第2の給水装置BP2も同様にバイパス管および逆止弁を備えてもよい。ポンプP2の吸込側圧力が所定の圧力よりも高い場合、第1の配水管7内の水はバイパス管を通って高層階の各給水栓10に供給される。
図8に示すように、通信装置30は省略してもよい。この場合、圧力センサPS5,PS6および流量検出器SW2は信号線を介して制御盤CN1に直接接続される。
以下、図7および図8に示す第1の給水装置BP1と第2の給水装置BP2の運転方法について詳細に説明する。ポンプP1は、必ずポンプP2よりも先に始動される。このようなポンプP1,P2の始動順序を確立するために、制御盤CN1は3つの圧力センサPS12,PS5,PS6の出力値に基づいてポンプP1を始動させる。制御盤CN1には、ポンプP1を始動させるトリガーとなる始動圧力S10,S11,S12が記憶されている。これらの始動圧力は、圧力センサPS12,PS5,PS6の出力値に対してそれぞれ設定されたしきい値である。すなわち、制御盤CN1は、圧力センサPS12によって測定されたポンプP1の吐出側圧力、圧力センサPS5によって測定されたポンプP2の吸込側圧力、および圧力センサPS6によって測定されたポンプP2の吐出側圧力のいずれかがその対応する始動圧力に達したときに、ポンプP1を始動させる。
制御盤CN2には、ポンプP2を始動させるトリガーとなる始動圧力S13が記憶されている。この始動圧力S13は、圧力センサPS22の出力値に対して設定されたしきい値である。すなわち、制御盤CN2は、圧力センサPS22によって測定されたポンプP2の吐出側圧力が始動圧力S13に達したときに、ポンプP2を始動させる。この始動圧力S13は、上記始動圧力S12よりも小さく設定される(S12>S13)。これは、ポンプP2が始動される前にポンプP1を始動させるためである。圧力センサPS22は、ポンプP2の始動圧力を検出するための始動圧力センサとして機能する。
ポンプP1の上記始動条件の具体例について、図9を参照して説明する。なお、以下の説明では、圧力[Pa]は揚程[m]として表されている。図9に示すように、第1の給水装置BP1から第2の給水装置BP2までの高さH1は45m、第2の給水装置BP2から最も高い給水栓10(高層階での給水末端)までの高さH2は55mである。第1の給水装置BP1の目標吐出圧力(目標揚程、後述する第1の給水装置BP1の推定末端圧力一定制御を行う場合の目標圧力Pb)は、高さH1よりも大きい70mに設定されており、これは、第1の給水装置BP1の目標末端圧力(第2の給水装置BP2の吸込側における目標圧力であり、20mに設定されている)と高さH1とを考慮して設定された値になっている。第2の給水装置BP2の目標吐出圧力(目標揚程)は、高さH2よりも大きい70mに設定されている。
この例において、ポンプP1の3つの始動圧力、すなわち始動圧力S10,S11,S12は、それぞれ70m,20m,70mに設定されている。また、ポンプP2の始動圧力S13は、始動圧力S12よりもやや小さい68mに設定されている。
次に、上述の条件の下でのポンプP1,P2の始動動作について説明する。ポンプP1,P2の両方が停止している場合に低層階で水が使用されると、ポンプP1の吐出側圧力およびポンプP2の吸込側圧力が低下する。制御盤CN1は、ポンプP1の吐出側圧力(すなわち、圧力センサPS12の出力値)が70m(始動圧力S10)まで低下したとき、またはポンプP2の吸込側圧力(すなわち、圧力センサPS5の出力値)が20m(始動圧力S11)まで低下したときに、ポンプP1を始動させる。
ポンプP1,P2の両方が停止している場合に高層階で水が使用されると、ポンプP2の吐出側圧力が低下する。ポンプP2の吐出側圧力は圧力センサPS22,PS6によって測定されている。これらの圧力センサPS22,PS6は同じ高さに配置されているので、その出力値は実質的に同じであるが、上述したように、圧力センサPS6の出力値は第1の給水装置BP1の制御盤CN1によって監視され、圧力センサPS22の出力値は第2の給水装置BP2の制御盤CN2によって監視される。ポンプP2の吐出側圧力が70m(始動圧力S12)まで低下したとき、すなわち圧力センサPS6の出力値が70mにまで低下したとき、制御盤CN1はポンプP1を始動させる。その後、ポンプP2の吐出側圧力が68m(始動圧力S13)まで低下したとき、すなわち圧力センサPS22の出力値が68mにまで低下したとき、制御盤CN2はポンプP2を始動させる。
ポンプP1の始動圧力S12(70m)は、ポンプP2の始動圧力S13(68m)よりも高く設定されているので、ポンプP2の吐出側圧力は、ポンプP2の始動圧力S13(68m)よりも先にポンプP1の始動圧力S12(70m)に達する。したがって、高層階のみで水が使用されている場合であっても、ポンプP1がポンプP2よりも先に始動される。このような構成により、低層階での配水管7に負圧が形成されることが防止される。低層階および高層階の両方で水が使用された場合は、上述の始動動作に従って、ポンプP1,P2がこの順に始動される。
ポンプP1が運転しているときに高層階で水の使用が開始されると、ポンプP2の吐出側圧力が低下する。図8に示す実施形態では、ポンプP2の吐出側圧力は圧力センサPS22および圧力センサPS6によって測定される。圧力センサPS6によって取得された測定値は制御盤CN1に送られる。ポンプP2の吐出側圧力がポンプP2の始動圧力S13(68m)まで低下したときは、低層階で水が使用されなくなっても(すなわち、流量低下信号が流量検出器SW1から制御盤CN1に送信されたとしても)、制御盤CN1はポンプP1の運転を強制的に継続させる。このような構成により、ポンプP2が運転している間はポンプP1の運転が停止せず、低層階での配水管7に負圧が形成されることが防止される。
圧力センサPS6の出力値の代わりに、流量検出器SW2から送られる流量増加信号を用いて制御盤CN1はポンプP1の運転継続を判断してもよい。すなわち、ポンプP1が運転しているときに高層階で水の使用が開始されると、ポンプP2の吐出側で水が流れ始める。この吐出側の水の流量が増加して上記所定の第2の値に達すると、流量検出器SW2は流量増加信号を制御盤CN1に送信する。制御盤CN1は、この流量増加信号を受け、ポンプP1の運転を強制的に継続させる。
制御盤CN1は、圧力センサPS6の出力値および流量検出器SW2からの流量増加信号の両方を用いて制御盤CN1はポンプP1の運転継続を判断してもよい。すなわち、圧力センサPS6の出力値(ポンプP2の吐出側圧力の測定値)がポンプP2の始動圧力S13まで低下したか、または制御盤CN1が流量検出器SW2から送られた流量増加信号を受信したときは、制御盤CN1はポンプP1の運転を強制的に継続させる。このように、圧力センサPS6の出力値および流量検出器SW2からの流量増加信号の両方を用いることにより、高層階のポンプP2の運転開始を確実に検出することができる。例えば、何らかの原因で、圧力センサPS6の出力値または流量検出器SW2の流量増加信号のいずれか一方に基づくポンプP2の運転開始検出に失敗または遅延が生じた場合でも、他方に基づいてポンプP2の運転開始を検出することができる。したがって、低層階での配水管7に負圧が形成されることを確実に防止することができる。
次に、ポンプP1,P2の停止動作について説明する。低層階および高層階の両方で水が使用されている場合に低層階での水の使用が停止されても、高層階で水が使用されている限り、ポンプP1の吐出側の流量は、所定の第1の値までは低下しない。したがって、制御盤CN1は、ポンプP2が運転していることを示す流量増加信号を流量検出器SW2から受け取った後は、圧力センサPS5の出力値に基づいて末端圧力一定制御を行い、ポンプP2の吸込側圧力が所定の目標圧力に維持されるようポンプP1の運転を継続させる。したがって、低層階での配水管7に負圧が形成されることが防止される。
低層階での水の使用が停止された後に、高層階での水の使用が停止されると、ポンプP1,P2の吐出側の流量が低下する。ポンプP1の吐出側の流量が所定の値まで低下すると、流量検出器SW1は流量低下信号を制御盤CN1に送信し、ポンプP2の吐出側の流量が所定の値まで低下すると、流量検出器SW2は流量低下信号を制御盤CN1,CN2に送信する。制御盤CN1は、流量検出器SW1から流量低下信号を受け取り、かつ流量検出器SW2から流量低下信号を受け取ったことを条件として、ポンプP1の運転を停止する。すなわち、制御盤CN1は、インバータINV1に指令を発してポンプP1の回転速度を一時的に増加させて圧力タンクPT1に蓄圧し、その後ポンプP1の運転を停止させる(少水量停止動作)。制御盤CN2は、流量検出器SW2から流量低下信号を受信したことを条件として、ポンプP2の運転を停止する。すなわち、制御盤CN2は、流量検出器SW2からの流量低下信号を受けると、インバータINV2に指令を出してポンプP2の回転速度を一時的に増加させて圧力タンクPT2に蓄圧し、その後ポンプP2を停止させる(少水量停止動作)。
制御盤CN1は、流量検出器SW2から送られる流量低下信号を受けた時から所定の時間が経過したときにポンプP2の運転が停止されたと判断する。ここで所定の時間とは、制御盤CN1が流量検出器SW2からの流量低下信号を受信してからポンプP2が停止されるまでの時間をいう。この所定の時間は、上述したポンプP2の少水量停止動作に必要な時間に基づいて決定される。
低層階で水が使用されているときに高層階での水の使用が停止されると、ポンプP2の吐出側の流量が低下する。ポンプP2の吐出側の流量が低下して所定の値に達すると、流量検出器SW2は流量低下信号を制御盤CN1および制御盤CN2に送信する。制御盤CN1は、流量検出器SW1から流量増加信号を受信した後に流量検出器SW2から流量低下信号を受信したとき、すなわち低層階で水が使用されつつ高層階での水の使用が停止されたときは、ポンプP1の運転を継続する。制御盤CN2は、流量検出器SW2からの流量低下信号を受け取ったことを条件として、ポンプP2の運転を停止させる。
ポンプP2の停止後、ポンプP1の吐出側の流量が低下して所定の値(少水量停止動作を開始するための流量の設定値)に達すると、流量検出器SW1は流量低下信号を制御盤CN1に送信する。制御盤CN1は、ポンプP2の運転が停止されたと判断し、かつ、流量検出器SW1からの流量低下信号を受けると、ポンプP1の少水量停止動作を行う。すなわち、制御盤CN1は、インバータINV1に指令を発してポンプP1の回転速度を一時的に上げて圧力タンクPT1に蓄圧し、その後ポンプP1の運転を停止させる。
このように、ポンプP1,ポンプP2の順で始動され、ポンプP2が運転している間はポンプP1の運転が継続され、ポンプP2,ポンプP1の順で停止される。したがって、ポンプP2が運転しているときは、常にポンプP1が運転していることになり、低層階での配水管7での負圧の形成を防止することができる。なお、3段以上の給水装置を直列に繋げた場合も、同様に、階層の低い順からポンプが始動され、高層階でのポンプが運転している間は、下層階でのポンプの運転が継続され、階層の高い順からポンプが停止される。
以上の通り、ポンプP1,P2の始動、継続運転、および停止について詳しく説明したが、図8に示す2つの圧力センサPS21,PS5を図4に示す圧力センサ40に、図8に示す2つの圧力センサPS22,PS6を図4に示す圧力センサPS2に当てはめれば、図8に示す実施形態における増圧給水システムでの始動と停止の動作は、図4に示す実施形態でも同様となる。
図10に示すように、圧力センサPS21および圧力センサPS6は省略してもよい。この場合、圧力センサPS5および圧力センサPS22は、それぞれ、制御盤CN2および通信装置30の両方に接続される。なお、図示しないが、通信装置30を設けない構成(図8参照)においても圧力センサPS21および圧力センサPS6は省略してもよい。この場合、圧力センサPS5および圧力センサPS22は、それぞれ、制御盤CN2および制御盤CN1の両方に接続される。
図10に示すように圧力センサPS6を省略した場合、始動圧力S12,S13は、圧力センサPS22の出力値に対して設定されたしきい値となる。すなわち、圧力センサPS22の出力値が第1の始動圧力S12(70m)に達すると、制御盤CN1はポンプP1を始動させる。そして、圧力センサPS22の出力値が第2の始動圧力S13(68m)に達すると、制御盤CN2はポンプP2を始動させる。
ポンプP1の運転中、第1の給水装置BP1の制御盤CN1は、圧力センサPS5の測定値に基づき、低層階の給水栓9の給水圧力(低層階での末端圧力)が所定の目標値となるようにフィードバック制御する。具体的には、制御盤CN1は、圧力センサPS5の測定値が所定の目標値を維持するようにポンプP1の運転を制御する。圧力センサPS5が故障した場合には、制御盤CN1は、圧力センサPS12の測定値に基づいて推定末端圧力一定制御を行う。圧力センサPS5の故障は、その出力値が所定時間の間に全く変化しない等の条件により制御盤CN1によって検出することが可能である。
ここで、推定末端圧力一定制御について、図11の運転特性曲線図を参照して説明する。図11において、横軸は水量すなわち流量であり、縦軸はヘッドすなわち揚程であり、曲線NxはポンプP1の回転速度を一定としたときの運転特性を示す。抵抗曲線Rは、ポンプP1から給水末端(給水栓9)までの使用水量に応じた管路抵抗である。推定末端圧力一定制御においては、使用水量に応じた(抵抗曲線Rで示される)管路抵抗を考慮して、ポンプP1の回転速度が制御される。すなわち、ポンプP1の吐出し圧力が抵抗曲線Rに沿って変化するように圧力センサPS12の測定値に基づいてポンプP1の回転速度が制御される。したがって、水量が少ないときは、管路抵抗が少ないので、その分ポンプP1の必要動力が低くなり、省エネルギー運転が実現される。
図11の例では、ポンプP1の回転速度は、Na(最大水量時に目標推定末端圧力(図9の例でいえば20m)を達成するための回転速度)とNb(水量0のとき上記目標推定末端圧力を達成するための回転速度)との間で制御される。例えば、流量Q1では、ポンプP1は回転速度Ncで運転される。図11のPaは、最大水量時に目標推定末端圧力を達成するために必要なポンプP1の吐出側圧力であり、Pbは、水量0時に目標推定末端圧力を達成するために必要なポンプP1の吐出側圧力である。
圧力センサPS12の測定値に基づいて推定末端圧力一定制御を行っている場合、圧力センサPS5を使用した末端圧力一定制御に比べると、第2の給水装置BP2の吸込側圧力の確実性が低く、推定した圧力よりも低くなっている可能性がある。また、推定末端圧力一定制御では、通常、ポンプP1の回転速度から水量Qを推定するため、末端圧力一定制御に較べて、水の使用量の急変動に対する追従性が悪くなる傾向がある。したがって、特に低層階での水使用量が少ないときに高層階での水の使用量が急に増大した場合など、第2の給水装置BP2の吸込側圧力が著しく低下して、配水管7に負圧が形成されるおそれがある。これに対しては以下のように対応することができる。
第1の給水装置BP1と第2の給水装置BP2との間の管路抵抗を考慮して設定される最大水量時のポンプP1の吐出側必要圧力Paと、Paから管路抵抗分を差し引いたPb(水量0時のポンプP1の吐出側必要圧力)について、Paの値はそのままとして、Pbをより高い圧力Pb’(水量0時に推定末端圧力が目標推定末端圧力となるときに必要なポンプP1の吐出側必要圧力より高い圧力)に設定し、図12に示すように、管路抵抗Rに代えて新たな曲線R’を設定する。これにより、第1の給水装置BP1が水量が少水量に近いところで運転されていても第1の給水装置BP1の吐き出し圧力に余裕ができるため、高層階での水使用の急増に対応できる。更に、図13に示すように、Pbをより高い圧力Pb”に設定し、Pa=Pb”としてもよい。この場合は、推定末端圧力一定制御ではなく、吐出圧力一定制御となる。つまり、低層階の給水装置BP1では吐出圧力一定制御を行うことにより、水使用の急増に対する給水装置BP2の吸込側圧力の低下を防ぐことができる。
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうることである。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲とすべきである。