JP6120729B2 - ゴムウエットマスターバッチの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、少なくとも充填材、分散溶媒、およびゴムラテックス溶液を原料として得られるゴムウエットマスターバッチおよびその製造方法、ゴムウエットマスターバッチを含有するゴム組成物、ならびにゴム組成物を用いて得られた空気入りタイヤに関する。
従来から、ゴム業界においては、カーボンブラックなどの充填材を含有するゴム組成物を製造する際の加工性や充填材の分散性を向上させるために、ゴムウエットマスターバッチを用いることが知られている。これは、充填材と分散溶媒とを予め一定の割合で混合し、機械的な力で充填材を分散溶媒中に分散させた充填材含有スラリー溶液と、ゴムラテックス溶液と、を液相で混合し、その後、酸などの凝固剤を加えて凝固させたものを回収して乾燥するものである。ゴムウエットマスターバッチを用いる場合、充填材とゴムとを固相で混合して得られるゴムドライマスターバッチを用いる場合に比べて、充填材の分散性に優れ、加工性や補強性などのゴム物性に優れるゴム組成物が得られる。このようなゴム組成物を原料とすることで、例えば転がり抵抗が低減され、耐疲労性に優れた空気入りタイヤなどのゴム製品を製造することができる。
ゴムウエットマスターバッチを製造する技術において、様々な加硫ゴム物性の向上を目的として、2種類以上のカーボンブラックを併用する技術が報告されている。
例えば、下記特許文献1では、大小の粒子を含む個々の凝結体を有する充填材含有ゴム組成物の製造方法において、小さい粒子を大きい粒子の表面にグラフトさせる技術が記載されている。
また、下記特許文献2では、充填剤含有ゴム組成物において、ジエン系ゴム100質量部、ならびにハード級カーボンブラック80質量%以上、他の充填剤20質量%以下を予備混合してなる予備混合充填剤1〜150質量部を含むものとし、他の充填剤にカーボンブラックが含まれている場合にはそのカーボンブラックの一次凝集体の平均粒径を、ハード級カーボンブラックの一次凝集体の平均粒径の0.7倍以下とする技術が記載されている。
特開平11−335494号公報 特開2002−256109号公報
しかしながら、本発明者が鋭意検討した結果、上記先行技術には新たな課題が存在することが判明した。具体的には、特許文献1に記載の技術では、小さい粒子の再凝集による、個々の粒子サイズが大きくなることを防止することを目的とするが、得られる加硫ゴムでの導電性を高める工夫がされているわけではない。
また、特許文献2に記載の技術では、平均粒径の異なる2種類のカーボンブラックを使用することにより、加硫ゴムの機械的特性と粘弾性特性との両方を向上することを目的とするが、得られる加硫ゴムの導電性を高めるための製造工程上の工夫がされているわけではない。
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、低発熱性能および導電性の両方がバランス良く向上した加硫ゴムの原料となるゴムウエットマスターバッチおよびその製造方法、ゴム組成物ならびに空気入りタイヤを提供することにある。
前記課題を解決するため、カーボンブラック(1)および導電性フィラー(2)の分散性が加硫ゴムの低発熱性能および導電性に与える影響について鋭意検討した結果、本発明者は、以下の現象を見出した。
(i)導電性フィラー(2)の分散処理時間Yを長くすると、分散性が高まる反面、隣接するフィラー同士の距離が長くなることで導電パスが遮断されるとともに、フィラーのストラクチャー構造が破壊される。一方、導電性フィラーの分散性が悪いと、導電パスに偏りが発生する。したがって、加硫ゴムの導電性を高めるためには、導電性フィラー(2)の分散性を適度に調整する必要があること。
(ii)一方、カーボンブラック(1)の分散処理時間Xについては、分散処理時間を長くするほど、分散性が高まって、加硫ゴムの低発熱性能やその他のゴム物性が向上すること。
本発明は、上記(i)および(ii)の知見に基づき完成されたものであり、下記構成を備える。
即ち本発明は、少なくとも充填材、分散溶媒、およびゴムラテックス溶液を原料として得られるゴムウエットマスターバッチの製造方法であって、前記充填材を前記分散溶媒中に分散させて充填材含有スラリー溶液を製造する工程(I)、前記充填材含有スラリー溶液と前記ゴムラテックス溶液とを混合して、充填材含有ゴムラテックス溶液を製造する工程(II)、前記充填材含有ゴムラテックス溶液を凝固・乾燥させる工程(III)を有し、前記充填材が、ASTM D1765に規定されたN300番台、N500番台、N600番台およびN700番台からなる群より選択される少なくとも1種のカーボンブラック(1)、ならびにアセチレンブラックおよび中空炭素材料からなる群より選択される少なくとも1種の導電性フィラー(2)からなる2種類の充填材を含み、前記工程(I)における、前記分散溶媒中での前記カーボンブラック(1)の分散処理時間をX、前記分散溶媒中での前記導電性フィラー(2)の分散処理時間をYとしたとき、X>Yであることを特徴とするゴムウエットマスターバッチの製造方法、に関する。
本発明に係るゴムウエットマスターバッチの製造方法では、充填材として少なくとも、ASTM D1765に規定されたN300番台、N500番台、N600番台およびN700番台からなる群より選択される少なくとも1種のカーボンブラック(1)と、アセチレンブラックおよび中空炭素材料からなる群より選択される少なくとも1種の導電性フィラー(2)とを併用する。カーボンブラック(1)は、主として最終的に得られる加硫ゴムの低発熱性能およびゴム強度などの向上に寄与し、導電性フィラー(2)は、主として最終的に得られる加硫ゴムの導電性の向上に寄与する。
本発明に係るゴムウエットマスターバッチの製造方法では、分散溶媒中でのカーボンブラック(1)の分散処理時間をX、分散溶媒中での導電性フィラー(2)の分散処理時間をYとしたとき、X>Yとすることにより、カーボンブラック(1)の分散性に優れ、かつ導電性フィラー(2)の分散性が適度に調節されたゴムウエットマスターバッチを製造することができる。その結果、かかるゴムウエットマスターバッチを原料として得られる加硫ゴムの低発熱性能および導電性の両方をバランス良く向上できる。
上記製造方法において、Y/X<0.8であることが好ましい。カーボンブラック(1)の分散処理時間Xに対する、導電性フィラー(2)の分散処理時間Yを0.8倍未満とすることにより、最終的に得られる加硫ゴムの低発熱性能および導電性の両方をさらにバランス良く向上することができる。
上記製造方法において、前記工程(I)が、前記充填材を前記分散溶媒中に分散させる際に、前記ゴムラテックス溶液の少なくとも一部を添加することにより、ゴムラテックス粒子が付着した前記充填材を含有するスラリー溶液を製造する工程(I−(a))であり、前記工程(II)が、ゴムラテックス粒子が付着した前記充填材を含有するスラリー溶液と、残りの前記ゴムラテックス溶液とを混合して、ゴムラテックス粒子が付着した前記充填材含有ゴムラテックス溶液を製造する工程(II−(a))であることが好ましい。
上記製造方法によれば、充填材を分散溶媒中に分散させる際に、ゴムラテックス溶液の少なくとも一部を添加することにより、ゴムラテックス粒子が付着した充填材を含有するスラリー溶液を製造する(工程(I)−(a))。これにより、充填材の表面の一部あるいは全部に、極薄いラテックス相が生成し、工程(II−(a))において残りのゴムラテックス溶液と混合する際、充填材の再凝集を防止することができる。その結果、充填材が均一に分散し、経時的にも充填材の分散安定性に優れたゴムウエットマスターバッチを製造することができる。かかるウエットマスターバッチは充填材が均一に分散し、かつ経時的な分散材の再凝集も抑制されているため、これを含有するゴム組成物を原料として得られる加硫ゴムでは、発熱性、耐久性およびゴム強度が著しく向上する。
なお、上記製造方法では、単に充填材を分散溶媒中に分散させてスラリー溶液を製造する場合に比べて、スラリー溶液中の充填材の分散性に優れ、かつ充填材の再凝集を防止することができるため、スラリー溶液の保存安定性にも優れるという効果も奏する。
また、本発明は、前記いずれかに記載の製造方法により製造されたゴムウエットマスターバッチおよび該ゴムウエットマスターバッチを含有するゴム組成物に関する。かかるゴムウエットマスターバッチは、カーボンブラック(1)の分散性に優れる反面、導電性フィラー(2)の分散性は適度に調整されている。このため、該ゴムウエットマスターバッチを含有するゴム組成物の加硫ゴムおよび空気入りタイヤは、低発熱性能および導電性がバランス良く向上する。
本発明は、少なくとも充填材、分散溶媒、およびゴムラテックス溶液を原料として得られるゴムウエットマスターバッチの製造方法に関する。
本発明において、充填材とは、カーボンブラック、シリカ、クレー、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウムなど、ゴム工業において通常使用される無機充填材を意味する。上記無機充填材の中でも、本発明においては、充填材として少なくとも、カーボンブラック(1)および導電性フィラー(2)からなる2種類を含む。
カーボンブラック(1)は、ASTM D1765に規定されたN300番台、N500番台、N600番台およびN700番台からなる群より選択される少なくとも1種であり、加硫ゴムの低発熱性能を効果的に高めるために、カーボンブラック(1)の配合量をゴム成分100質量部に対して22〜78質量部とすることが好ましく、26〜58質量部とすることが好ましい。ここで、N300、N500、N600、N700はASTM D1765に規定される分類コードである。
導電性フィラー(2)は、アセチレンブラックおよび中空炭素材料からなる群より選択される少なくとも1種であり、中空炭素材料としては、例えば、ケッチェンブラック、ナノポーラスカーボン、またはカーボンナノチューブが挙げられる。アセチレンブラックは、ストラクチャーが高度に発達した構造を有しており、これらが数珠的に繋がることで導電パスが形成されるため、アセチレンブラックを含有する加硫ゴムは導電性が高まる。一方、ケッチェンブラック、ナノポーラスカーボン、またはカーボンナノチューブなどの中空炭素材料は、同一質量で比較したときに加硫ゴム中での充填容積が大きいため、中実炭素材料に比して粒子間距離が短くなり、結果として加硫ゴムの導電性を高める効果を有する。加硫ゴムの導電性を効果的に高めるために、導電性フィラー(2)の配合量をゴム成分100質量部に対して3〜35質量部とすることが好ましく、6〜26質量部とすることが好ましい。
使用する導電性フィラー(2)の平均粒子径が小さすぎると、加硫ゴムの低発熱性能に悪影響を及ぼす傾向がある。このため、導電性フィラー(2)の平均粒子径は、15nm以上であることが好ましく、22nm以上であることが好ましい。なお、導電性フィラー(2)の平均粒子径は電子顕微鏡による目視観察で求めることができる。具体的には導電性フィラー(2)を個々の一次凝集体まで分散させて透過型電子顕微鏡にて観察し、任意に100個以上の一次凝集体の最長径を測り、その平均値によって求めることができる。
カーボンブラック(1)および導電性フィラー(2)は、通常のゴム工業において、そのハンドリング性を考慮して造粒された、造粒物であってもよく、未造粒物であってもよい。
分散溶媒としては、特に水を使用することが好ましいが、例えば有機溶媒を含有する水であってもよい。
ゴムラテックス溶液としては、天然ゴムラテックス溶液および合成ゴムラテックス溶液を使用することができる。
天然ゴムラテックス溶液は、植物の代謝作用による天然の生産物であり、特に分散溶媒が水である、天然ゴム/水系のものが好ましい。天然ゴムラテックス溶液については濃縮ラテックスやフィールドラテックスといわれる新鮮ラテックスなど区別なく使用できる。合成ゴムラテックス溶液としては、例えばスチレン−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴムを乳化重合により製造したものがある。
以下に、本発明に係るゴムウエットマスターバッチの製造方法について説明する。かかる製造方法は、前記充填材を前記分散溶媒中に分散させて充填材含有スラリー溶液を製造する工程(I)、前記充填材含有スラリー溶液と前記ゴムラテックス溶液とを混合して、充填材含有ゴムラテックス溶液を製造する工程(II)、および前記充填材含有ゴムラテックス溶液を凝固・乾燥させる工程(III)を有する。
そして、本発明においては、前記工程(I)における、前記分散溶媒中での前記カーボンブラック(1)の分散処理時間をX、前記分散溶媒中での前記導電性フィラー(2)の分散処理時間をYとしたとき、X>Yであることが特徴である。
本発明においては、X>Yの関係を満たす範囲で、カーボンブラック(1)の分散処理時間Xおよび分散溶媒中での導電性フィラー(2)の分散処理時間Yを調節する必要がある。最終的に得られる加硫ゴムの低発熱性能および導電性の両方をさらにバランス良く向上するためには、Y/X<0.8とすることが好ましく、Y/X<0.6とすることがより好ましい。
なお、工程(I)において、カーボンブラック(1)および導電性フィラー(2)は、例えば分散溶媒中において、先にカーボンブラック(1)の分散処理を行って得られたスラリー溶液に、導電性フィラー(2)を添加し、これを混合することで、X>Yとなるように調整しても良い。あるいは、X>Yの関係を満たすように、カーボンブラック(1)および導電性フィラー(2)の分散処理を別々に行い、処理後にこれらを合せて使用しても良い。
工程(I)において、ゴムラテックス溶液存在下でカーボンブラック(1)および導電性フィラー(2)、ならびに分散溶媒を混合する方法としては、高せん断ミキサー、ハイシアーミキサー、ホモミキサー、ボールミル、ビーズミル、高圧ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、コロイドミルなどの一般的な分散機を使用してカーボンブラックを分散させる方法が挙げられる。
上記「高せん断ミキサー」とは、ローターとステーターとを備えるミキサーであって、高速回転が可能なローターと、固定されたステーターと、の間に精密なクリアランスを設けた状態でローターが回転することにより、高せん断作用が働くミキサーを意味する。このような高せん断作用を生み出すためには、ローターとステーターとのクリアランスを0.8mm以下とし、ローターの周速を5m/s以上とすることが好ましい。このような高せん断ミキサーは、市販品を使用することができ、例えばSILVERSON社製「ハイシアーミキサー」が挙げられる。
特に、本発明においては、前記工程(I)が、前記充填材を前記分散溶媒中に分散させる際に、前記ゴムラテックス溶液の少なくとも一部を添加することにより、ゴムラテックス粒子が付着した前記充填材を含有するスラリー溶液を製造する工程(I−(a))であり、前記工程(II)が、ゴムラテックス粒子が付着した前記充填材を含有するスラリー溶液と、残りの前記ゴムラテックス溶液とを混合して、ゴムラテックス粒子が付着した前記充填材含有ゴムラテックス溶液を製造する工程(II−(a))であることが好ましい。以下に、工程(I−(a))および工程(II−(a))について説明する。
(1)工程(I−(a))
工程(I−(a))では、カーボンブラック(1)および導電性フィラー(2)を含む分散材を分散溶媒中に分散させる際に、ゴムラテックス溶液の少なくとも一部を添加することにより、ゴムラテックス粒子が付着した充填材を含有するスラリー溶液を製造する。ゴムラテックス溶液は、あらかじめ分散溶媒と混合した後、充填材を添加し、分散させても良い。また、分散溶媒中に充填材を添加し、次いで所定の添加速度で、ゴムラテックス溶液を添加しつつ、分散溶媒中で充填材を分散させても良く、あるいは分散溶媒中に充填材を添加し、次いで何回かに分けて一定量のゴムラテックス溶液を添加しつつ、分散溶媒中で充填材を分散させても良い。ゴムラテックス溶液が存在する状態で、分散溶媒中に充填材を分散させることにより、ゴムラテックス粒子が付着した充填材を含有するスラリー溶液を製造することができる。工程(I−(a))におけるゴムラテックス溶液の添加量としては、使用するゴムラテックス溶液の全量(工程(I−(a))および工程(II−(a))で添加する全量)に対して、0.075〜12質量%が例示される。
工程(I−(a))では、添加するゴムラテックス溶液の固形分(ゴム)量が、充填材との質量比で0.25〜15%であることが好ましく、0.5〜6%であることが好ましい。また、添加するゴムラテックス溶液中の固形分(ゴム)濃度が、0.2〜5質量%であることが好ましく、0.25〜1.5質量%であることがより好ましい。これらの場合、ゴムラテックス粒子を充填材に確実に付着させつつ、充填材の分散度合いを高めたゴムウエットマスターバッチを製造することができる。
本発明においては、ゴムラテックス溶液存在下で充填材および分散溶媒を混合し、ゴムラテックス粒子が付着した充填材を含有するスラリー溶液を製造する際、充填材の分散性向上のために界面活性剤を添加しても良い。界面活性剤としては、ゴム業界において公知の界面活性剤を使用することができ、例えば非イオン性界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両イオン系界面活性剤などが挙げられる。また、界面活性剤に代えて、あるいは界面活性剤に加えて、エタノールなどのアルコールを使用しても良い。ただし、界面活性剤を使用した場合、最終的な加硫ゴムのゴム物性が低下することが懸念されるため、界面活性剤の配合量は、ゴムラテックス溶液の固形分(ゴム)量100質量部に対して、2質量部以下であることが好ましく、1質量部以下であることがより好ましく、実質的に界面活性剤を使用しないことが好ましい。
工程(I−(a))において製造されるスラリー溶液中、ゴムラテックス粒子が付着した充填材は、90%体積粒径(μm)(「D90」)が、31μm以上であることが好ましく、35μm以上であることがより好ましい。この場合、スラリー溶液中の充填材の分散性に優れ、かつ充填材の再凝集を防止することができるため、スラリー溶液の保存安定性に優れると共に、最終的な加硫ゴムの発熱性、耐久性およびゴム強度にも優れる。
(2)工程(II−(a))
工程(II−(a))では、スラリー溶液と、残りのゴムラテックス溶液とを混合して、ゴムラテックス粒子が付着した充填材含有ゴムラテックス溶液を製造する。スラリー溶液と、残りのゴムラテックス溶液とを液相で混合する方法は特に限定されるものではなく、スラリー溶液および残りのゴムラテックス溶液とを高せん断ミキサー、ハイシアーミキサー、ホモミキサー、ボールミル、ビーズミル、高圧ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、コロイドミルなどの一般的な分散機を使用して混合する方法が挙げられる。必要に応じて、混合の際に分散機などの混合系全体を加温してもよい。
残りのゴムラテックス溶液は、工程(III)での乾燥時間・労力を考慮した場合、工程(I−(a))で添加したゴムラテックス溶液よりも固形分(ゴム)濃度が高いことが好ましく、具体的には固形分(ゴム)濃度が10〜60質量%であることが好ましく、20〜30質量%であることがより好ましい。
(3)工程(III)
工程(III)では、充填材含有ゴムラテックス溶液を凝固させる。凝固方法としては、ゴムラテックス粒子が付着したカーボンブラック含有ゴムラテックス溶液中に凝固剤を添加して凝固物を得る方法が挙げられる。
凝固剤としては、ゴムラテックス溶液の凝固用として通常使用されるギ酸、硫酸などの酸や、塩化ナトリウムなどの塩を使用することができる。
工程(III)では、凝固段階で得られた凝固物を溶液から分離(固液分離)し、乾燥してゴムウエットマスターバッチを製造する。固液分離段階では、必要に応じて、充填材含有ゴムラテックス溶液中に、凝集剤を含有させた後、得られた凝集体を回収し、乾燥させてもよい。凝集剤としては、ゴムラテックス溶液の凝集剤として公知のものを限定なく使用でき、具体的には例えば、カチオン性凝集剤が挙げられる。また、固液分離は当業者に公知の手法、例えば遠心分離やろ過などを実施することができる。
凝固物の乾燥方法としては、オーブン、真空乾燥機、エアードライヤーなどの各種乾燥装置を使用することができる。
工程(III)実施後、得られたゴムウエットマスターバッチと各種配合剤とを乾式混合する。使用可能な配合剤としては、例えば、硫黄系加硫剤、加硫促進剤、シリカ、シランカップリング剤、酸化亜鉛、メチレン受容体およびメチレン供与体、ステアリン酸、加硫促進助剤、加硫遅延剤、有機過酸化物、老化防止剤、ワックスやオイルなどの軟化剤、加工助剤などの通常ゴム工業で使用される配合剤が挙げられる。
硫黄系加硫剤としての硫黄は通常のゴム用硫黄であればよく、例えば粉末硫黄、沈降硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄などを用いることができる。本発明に係るゴム組成物における硫黄の含有量は、ゴム成分100質量部に対して0.3〜6質量部であることが好ましい。硫黄の含有量が0.3質量部未満であると、加硫ゴムの架橋密度が不足してゴム強度などが低下し、6.5質量部を超えると、特に耐熱性および耐久性の両方が悪化する。加硫ゴムのゴム強度を良好に確保し、耐熱性と耐久性をより向上するためには、硫黄の含有量がゴム成分100質量部に対して1.5〜5.5質量部であることがより好ましく、2.0〜4.5質量部であることがさらに好ましい。
加硫促進剤としては、ゴム加硫用として通常用いられる、スルフェンアミド系加硫促進剤、チウラム系加硫促進剤、チアゾール系加硫促進剤、チオウレア系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤、ジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤などの加硫促進剤を単独、または適宜混合して使用しても良い。加硫促進剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して1.0〜5.0質量部であることがより好ましく、1.5〜4.0質量部であることがさらに好ましい。
老化防止剤としては、ゴム用として通常用いられる、芳香族アミン系老化防止剤、アミン−ケトン系老化防止剤、モノフェノール系老化防止剤、ビスフェノール系老化防止剤、ポリフェノール系老化防止剤、ジチオカルバミン酸塩系老化防止剤、チオウレア系老化防止剤などの老化防止剤を単独、または適宜混合して使用しても良い。老化防止剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して0.5〜6.0質量部であることがより好ましく、1.0〜4.5質量部であることがさらに好ましい。
また、本発明に係るゴム組成物では、例えばタイヤ用として使用する場合に、タイヤのベルトとの接着性を向上するため、メチレン受容体およびメチレン供与体を配合しても良い。メチレン受容体およびメチレン供与体を含有するゴム組成物の加硫ゴムでは、メチレン受容体の水酸基とメチレン供与体のメチレン基とが硬化反応することで、他の部材との接着性を高めることができる。
メチレン受容体としては、フェノール類化合物、またはフェノール類化合物をホルムアルデヒドで縮合したフェノール系樹脂が用いられる。かかるフェノール類化合物としては、フェノール、レゾルシンまたはこれらのアルキル誘導体が含まれる。アルキル誘導体には、クレゾール、キシレノールなどのメチル基誘導体、ノニルフェノール、オクチルフェノールなどの長鎖アルキル基による誘導体が含まれる。フェノール類化合物は、アセチル基などのアシル基を置換基に含むものであってもよい。
また、フェノール類化合物をホルムアルデヒドで縮合したフェノール系樹脂には、レゾルシン−ホルムアルデヒド樹脂、フェノール樹脂(フェノール−ホルムアルデヒド樹脂)、クレゾール樹脂(クレゾール−ホルムアルデヒド樹脂)など、さらには複数のフェノール類化合物からなるホルムアルデヒド樹脂などが含まれる。これらは、未硬化の樹脂であって、液状または熱流動性を有するものが用いられる。
これらの中でも、ゴム成分や他の成分との相溶性、硬化後の樹脂の緻密さ、さらには信頼性の見地から、メチレン受容体としてはレゾルシンまたはレゾルシン誘導体が好ましく、特には、レゾルシン、またはレゾルシン−アルキルフェノール−ホルマリン樹脂が好ましい。
上記メチレン供与体としては、ヘキサメチレンテトラミンまたはメラミン樹脂が用いられる。かかるメラミン樹脂としては、例えば、メチロールメラミン、メチロールメラミンの部分エーテル化物、メラミンとホルムアルデヒドとメタノールの縮合物などが用いられ、その中でもヘキサメトキシメチルメラミンが特に好ましい。
上述のとおり、工程(III)で得られるゴムウエットマスターバッチは、カーボンブラック(1)の分散性に優れる反面、導電性フィラー(2)の分散性は適度に調整されているため、該ゴムウエットマスターバッチを含有するゴム組成物の加硫ゴムは、低発熱性能および導電性がバランス良く向上している。このため、このゴム組成物を用いて製造された空気入りタイヤ、具体的にはトレッドゴム、サイドゴム、プライもしくはベルトコーティングゴム、またはビードフィラーゴムに本発明に係るゴム組成物を使用した空気入りタイヤは、低発熱性能および導電性が両立したゴム部を備える。
以下に、この発明の実施例を記載してより具体的に説明する。
(使用原料)
a)充填材
カーボンブラック(1)−(a) N330;「シースト3」(東海カーボン社製)(平均粒子径28nm、DBP吸油量101cm/100g、窒素吸着比表面積79m/g
カーボンブラック(1)−(b) N550;「シーストSO」(東海カーボン社製)(平均粒子径43nm、DBP吸油量115cm/100g、窒素吸着比表面積42m/g
カーボンブラック(1)−(c) N774;「シーストS」(東海カーボン社製)(平均粒子径66nm、DBP吸油量68cm/100g、窒素吸着比表面積27m/g
導電性フィラー(2)−(a) アセチレンブラック;「デンカブラック」(電気化学工業社製)(平均粒子径35nm、DBP吸油量160cm/100g、窒素吸着比表面積69m/g
導電性フィラー(2)−(b) ケッチェンブラック;「ケッチェンブラックEC300J」(ライオン社製)(平均粒子径30nm、DBP吸油量360cm/100g、窒素吸着比表面積800m/g
導電性フィラー(2)−(c) カラー用カーボンブラック;「トーカブラック#8500」(東海カーボン社製)(平均粒子径14nm、DBP吸油量96cm/100g、窒素吸着比表面積290m/g
b)分散溶媒 水
c)ゴムラテックス溶液
天然ゴムラテックス溶液(NR濃縮ラテックス);(レヂテックス社製)(DRC(Dry Rubber Content)=60%のものをゴム濃度が25質量%となるように調整、質量平均分子量Mw=23.6万)
天然ゴムラテックス溶液(NRフィールドラテックス);(Golden Hope社製)(DRC=31.2%のものをゴム濃度が25質量%となるように調整、質量平均分子量Mw=23.2万)
d)凝固剤 ギ酸(一級85%、10%溶液を希釈して、pH1.2に調整したもの);「ナカライテスク社製」
e)亜鉛華 亜鉛華3号;(三井金属社製)
f)ステアリン酸;(日油社製)
g)ワックス;(日本精蝋社製)
h)老化防止剤
(A)N−フェニル−N’−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン 「6PPD」、(モンサント社製)、融点44℃
(B)2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合体「RD」、(大内新興化学工業社製)、融点80〜100℃
i)硫黄、(鶴見化学工業社製)
j)加硫促進剤
(A)N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド;「サンセラーCM」、(三新化学工業社製)
(B)1,3−ジフェニルグアニジン;「ノクセラーD」、(大内新興化学工業社製)
実施例1
0.5質量%に調整した希薄ラテックス水溶液にカーボンブラック(1)−(a)(N330)40質量部を添加し、PRIMIX社製ロボミックスを使用して、カーボンブラックを分散させることにより(該ロボミックスの条件:9000rpm、分散処理時間X=30分)、天然ゴムラテックス粒子が付着したカーボンブラック含有スラリー溶液を製造した(工程(I−(a)))。別途、0.5質量%に調整した希薄ラテックス水溶液に導電性フィラー(2)−(a)10質量部を添加し、PRIMIX社製ロボミックスを使用して、フィラーを分散させることにより(該ロボミックスの条件:9000rpm、分散処理時間Y=15分)、天然ゴムラテックス粒子が付着したフィラー含有スラリー溶液を製造した(工程(I−(a)))。最後に、得られた両スラリー溶液を混合した。
次に、工程(I−(a))で製造されたカーボンブラック/フィラー混合スラリー溶液に、残りの天然ゴムラテックス溶液(固形分(ゴム)濃度25質量%となるように水を添加して調整されたもの)を、工程(I−(a))で使用した天然ゴムラテックス溶液と合わせて、固形分(ゴム)量で100質量部となるように添加し、次いでSANYO社製家庭用ミキサーを使用して(該ミキサーの条件:11300rpm、30分)、天然ゴムラテックス粒子が付着したカーボンブラック/フィラー含有天然ゴムラテックス溶液を製造した(工程(II−(a)))。
工程(II−(a))で製造された天然ゴムラテックス粒子が付着したカーボンブラック/フィラー含有天然ゴムラテックス溶液に、凝固剤としてギ酸10質量%水溶液をpH4に成るまで添加し、90℃に加温した状態で、天然ゴムラテックス粒子が付着したカーボンブラック含有天然ゴムラテックス溶液を凝固させた(工程(III))。
SUS製パンチングメタル2.0φ、3.5Pを使用して、ろ過分離することにより、凝固物を溶液から分離し、スエヒロEPM社製スクイザー式1軸押出脱水機(V−02型)で乾燥することにより、天然ゴムウエットマスターバッチを製造した(工程(IV))。
B型バンバリーミキサー(神戸製鋼社製)を使用し、得られた天然ゴムウエットマスターバッチに表1に記載の各種添加剤を配合してゴム組成物とし、その加硫ゴムの物性を測定した。結果を表1に示す。
実施例2〜4、比較例3〜5
カーボンブラック(1)および/または導電性フィラー(2)の種類、および分散処理時間を表1に記載のものに変更したこと以外は、実施例1と同じ条件でゴムウエットマスターバッチを製造した。
比較例1〜2
ゴムウエットマスターバッチを製造して、これを原料としてゴム組成物を製造するのに代えて、表1に記載の各種配合剤を乾式混合によりゴム組成物を製造した。結果を表1に示す。
(評価)
評価は、各ゴム組成物を所定の金型を使用して、150℃で30分間加熱、加硫して得られたゴムについて行った。
(低発熱性能)
JIS K6265に準じて、製造した加硫ゴムの低発熱性能を、損失正接tanδにより評価した。UBM社製レオスペクトロメーターE4000を使用し、50Hz、80℃、動的歪2%の条件で測定した。評価は比較例1を100として指数評価し、数値が低いほど低発熱性能に優れることを意味する。結果を表1に示す。
(電気抵抗)
JIS K6911に準じて、加硫ゴムの電気抵抗値を測定した(測定条件;印加電圧1000V、気温25℃、実度50%)。結果を表1に示す。
Figure 0006120729
比較例1は、乾式(B型バンバリーミキサー)にて混合した。比較例2は、乾式にてカーボンブラック(1)/導電性フィラー(2)を含むゴム組成物を作成した。比較例2では、導電性フィラー(2)の分散が悪い為に、得られた加硫ゴムの低発熱性能が悪化し、導電性も改良されなかった。比較例3−5は、カーボンブラック(1)/導電性フィラー(2)を同一時間処理して、カーボンブラック(1)/導電性フィラー(2)を含むスラリーを作成した。比較例2より充填材の分散が良くなる為、比較例3−5では、低発熱性能は改良されたが、分散処理中に導電性フィラー(2)のストラクチャー構造が多く破壊されたため、導電性はあまり向上しなかった。
一方、実施例1では、比較例1〜3と比較して、加硫ゴムの低発熱性能が悪化することなく、導電性を改良することができた。実施例2では、カーボンブラック(1)の種類を変更したが、実施例1と同様の効果が得られた。実施例3,4では、カーボンブラック(1)としてN550やN774を使用しても同様の効果が得られた。

Claims (2)

  1. 少なくとも充填材、分散溶媒、およびゴムラテックス溶液を原料として得られるゴムウエットマスターバッチの製造方法であって、
    前記充填材を前記分散溶媒中に分散させて充填材含有スラリー溶液を製造する工程(I)、前記充填材含有スラリー溶液と前記ゴムラテックス溶液とを混合して、充填材含有ゴムラテックス溶液を製造する工程(II)、および前記充填材含有ゴムラテックス溶液を凝固・乾燥させる工程(III)を有し、
    前記充填材が、ASTM D1765に規定されたN300番台、N500番台、N600番台およびN700番台からなる群より選択される少なくとも1種のカーボンブラック(1)、ならびにアセチレンブラックおよび中空炭素材料からなる群より選択される少なくとも1種の導電性フィラー(2)からなる2種類の充填材を含み、
    前記工程(I)における、前記分散溶媒中での前記カーボンブラック(1)の分散処理時間をX、前記分散溶媒中での前記導電性フィラー(2)の分散処理時間をYとしたとき、X>Y、かつY≧15(分)であり、
    前記工程(I)が、前記充填材を前記分散溶媒中に分散させる際に、前記ゴムラテックス溶液の少なくとも一部を添加することにより、ゴムラテックス粒子が付着した前記充填材を含有するスラリー溶液を製造する工程(I−(a))であり、
    前記工程(II)が、ゴムラテックス粒子が付着した前記充填材を含有するスラリー溶液と、残りの前記ゴムラテックス溶液とを混合して、ゴムラテックス粒子が付着した前記充填材含有ゴムラテックス溶液を製造する工程(II−(a))であることを特徴とするゴムウエットマスターバッチの製造方法。
  2. Y/X<0.8である請求項1に記載のゴムウエットマスターバッチの製造方法。
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