以下、本発明の実施形態について、図1乃至図17を参照して具体的に説明する。
図1は、情報処理システムの一例を示す図である。図1に示すように、情報処理システムは、情報処理装置1と、分電盤2と、消費電力計測器3とを有している。
分電盤2は、需要家の家屋4内に設置されている、部屋毎に電力を分配、供給するための電力分配器である。図1の例では、家屋4は、4つの部屋(部屋5a、部屋5b、部屋5c、部屋5d)を有している。この4つの部屋の各々は、特定領域の一例である。以降、部屋を区別して説明しない場合は、部屋5a〜5dを部屋5と呼ぶこととする。
分電盤2には、各部屋5a〜5dに対応するスイッチ6a〜6dが設けられている。以降、スイッチを区別して説明しない場合は、スイッチ6a〜6dをスイッチ6と呼ぶこととする。各々のスイッチ6は、それぞれが対応する部屋5と電力配線7とによって電気的に接続されており、各部屋5に設置されている電気機器は、電力配線7を介して電力を受けることができる。
消費電力計測器3は、スイッチ9a〜9dと、I/F10とを備えている。電力配線7のそれぞれにはクランプ8が設置されている。消費電力計測器3は、クランプ8から抽出された電流を、対応する各スイッチ9a〜9dに導き、当該電流に基づいて、電力配線7毎の消費電力(または消費電力量)を時系列で計測することができる。なお、以降では、消費電力量を消費電力と呼称することがある。I/F10は、消費電力計測器3と情報処理装置1とを送受信可能に接続するための入出力インターフェースである。消費電力計測器3によって計測された各部屋5の消費電力の情報は、例えばWiFi(Wireless Fidelity)等の無線通信によりI/F10からアクセスポイント11に転送され、アクセスポイント11からインターネット20を経由して情報処理装置1に転送される。このようにして、情報処理装置1は、部屋5毎の消費電力の情報を取得することができる。図1の例では、アクセスポイント11は、部屋5cに設けられている。
以下、情報処理装置1を構成する各部の機能について説明する。
図2は、情報処理装置1の構成の一例を示す図である。図2に示すように、情報処理装置1は、第1記憶部21と、第2記憶部22と、制御部23と、入力部24と、出力部25と、I/F26とを備えている。情報処理装置1は、電力事業者が所有する、需要家の電気機器の保有状況を推定するための管理装置であり、例えばサーバである。
第1記憶部21は、制御部23と電気的に接続されており、需要家の電気機器の保有状況を推定するための情報処理プログラムを記憶することができる。第1記憶部21としては、例えばROM(Read Only Memory)およびフラッシュメモリ等の半導体メモリ、またはHDD(Hard Disc Drive)等を用いることができる。
第2記憶部22は、各種情報を記憶するためのデータベース(DB;Data Base)として用いられる。第2記憶部22は、入力部24に入力された、部屋5毎の消費電力の情報を取得するタイミング(取得タイミング)の情報や、制御部23が情報処理プログラムを実行する際に用いる設定情報を記憶することができる。取得タイミングの情報とは、例えば、データの取得を開始する時刻を示す取得開始時刻、1回あたりのデータ取得期間を示す取得期間、データ取得期間内におけるデータの取得間隔を示す取得間隔、および一連のデータ取得を行う頻度を示す取得頻度等である。取得タイミングの情報の実施例については後述する。
また、第2記憶部22は、消費電力計測器3から受信した部屋5毎の消費電力の情報を格納することができる。また、第2記憶部22は、情報処理装置1による処理結果の情報として、例えば制御対象の部屋5を識別する情報と、機器の名称に関する情報と、消費電力の変動量の情報とを対応付けた分類結果テーブルを格納することができる。
第1記憶部21および第2記憶部22は、例えばROM(Read Only Memory)またはフラッシュメモリ等の半導体メモリ、またはHDD等のストレージ装置である。なお、第1記憶部21および第2記憶部22はそれぞれ複数個有していても良いし、同一のメモリによって構成されていても良い。
制御部23は、設定部31と、取得部32と、算出部33と、第1判定部34と、第2判定部35とを備えている。制御部23は、第1記憶部21に格納されている情報処理プログラムを読み出し、情報処理プログラムの各処理を実行することができる。また、制御部23は、第2記憶部22に格納されている部屋5毎の消費電力の情報等に基づいて情報処理プログラムを実行することにより、各部屋5が保有する機器の推定と消費電力の算出とを行うことができる。また、制御部23は、処理結果の情報として、制御対象の部屋5を識別する情報と、機器の名称に関する情報と、消費電力の変動量の情報とを対応付けて、第2記憶部22に格納されている分類結果テーブルに書き込むことができる。制御部23は、例えばCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサである。制御部23が実行する処理方法の詳細については後述する。
入力部24は、第2記憶部22に格納される、部屋5毎の消費電力の情報の取得タイミング等の設定情報を受信することができる。入力部24は、例えばキーボードまたはマウス等である。
出力部25は、情報処理装置1による処理結果を出力することができる。出力部25は、例えば液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイまたは有機ELディスプレイ等の表示装置である。
I/F26は、制御部23と消費電力計測器3を送受信可能に接続するための入出力インターフェースである。I/F26は、制御部23から受信した指示信号を消費電力計測器3に転送することができる。また、I/F26は、消費電力計測器3から送信された消費電力の情報を含む信号を制御部23に転送することができる。
次に、電気機器の推定方法について説明する。
電気機器は、DRに応答しやすい機器と、DRに応答しにくい機器とに大別することができる。前者の例としては、需要家が手動で電源のオンオフ制御できる照明器具を挙げることができる。後者の例としては、水槽、ルータ、冷蔵庫等を挙げることができる。
図3は、各種電気機器の消費電力パターンの一例を示す図である。なお、以降で説明する消費電力パターンは、消費電力の時系列情報の一例である。図3において、横軸は時間、縦軸は消費電力を示しており、図3(a)は、照明器具の消費電力パターン、図3(b)は、水槽の消費電力パターン、図3(c)は、ルータの消費電力パターン、図3(d)は、冷蔵庫の消費電力パターンを示している。
照明器具は、ユーザが使用したいときにだけ使用する電気機器の一例である。図3(a)に示すように、照明器具の消費電力パターンは、照明器具の電源のオンオフ制御を行ったときに電気機器の消費電力が増減するようなパターンとなっている。
水槽は、槽内で魚等の生物が生息できる環境を維持できるように常時駆動させる、ヒータ、フィルタまたはエアポンプ等を備えた機器である。図3(b)に示すように、水槽の消費電力パターンは、消費電力の顕著な増減が起こらないため、消費電力量がほぼ一定の状態で推移するパターンを示している。
ルータは、情報の送受のために常時駆動させる通信機器の一例である。図3(c)に示すように、ルータの消費電力パターンは、水槽と同様に消費電力の顕著な増減が起こらないため、消費電力量がほぼ一定の状態で推移するパターンを示している。なお、図3(b)および図3(c)に示すように、ルータはヒータを持たないため、水槽よりも消費電力が小さいことが多い。
冷蔵庫は、冷蔵温度を制御するために、インバータ制御により自動でオンオフ動作が行われる機器である。図3(d)に示すように、冷蔵庫の消費電力パターンは、インバータ制御に応じて消費電力が自動的に増減するパターンを示している。
図4は、部屋全体の消費電力パターンの一例を示す図である。図4において、横軸は時間、縦軸は消費電力を示しており、図4(a)は、照明器具と水槽とを有する部屋Aの消費電力パターン、図4(b)は、照明器具とルータとを有する部屋Bの消費電力パターン、図4(c)は、電気機器として照明器具と冷蔵庫とを有する部屋Cの消費電力パターンを示している。
部屋Aでは、図4(a)に示すように、照明器具による消費電力と水槽による消費電力とが重畳された消費電力パターンとなる。図4(a)を参照すれば、消費電力のレベルがベースレベル、すなわち手動による電源のオンオフ制御によらず、定常的に使用される電力レベルよりも高くなっている時間帯に照明器具が使用されていることがわかる。
部屋Bでは、図4(b)に示すように、照明器具による消費電力とルータによる消費電力とが重畳された消費電力パターンとなる。図4(b)を参照すれば、消費電力のレベルがベースレベルよりも高くなっている時間帯に照明器具が使用されていることがわかる。なお、ルータの消費電力は水槽の消費電力よりも小さいため、部屋Bの消費電力のベースレベルは部屋Aの消費電力のベースレベルよりも低くなっている。
部屋Cでは、図4(c)に示すように、照明器具による消費電力と冷蔵庫による消費電力とが重畳された消費電力パターンとなる。照明器具、冷蔵庫のいずれがオンとなっても消費電力が増加するため、図4(c)によれば、消費電力のレベルがベースレベルよりも高くなっている時間帯、すなわち消費電力のピークを2つ有する消費電力パターンとなっている。効果的なDRを実現するためには、2つのピークのうちいずれが照明器具によるもので、いずれが冷蔵庫によるものなのかを区別できることが好ましい。
次に、本実施形態における情報処理方法について説明する。
図5乃至図7は、情報処理方法の一例を示すフローチャートである。
まず、図5に示すように、設定部31は、部屋毎の消費電力の情報の取得タイミングを設定する(S101)。具体的には、設定部31は、入力部24に入力された、部屋毎の消費電力の情報の取得タイミングに関する各種の設定情報を第2記憶部22に格納する。
図8は、取得タイミングに関する設定情報の一例である。図8(a)に示すように、例えば、取得開始時刻t0として「17:00」、取得間隔Δtとして「1分」、取得回数nmaxとして「120回」、取得頻度として「毎日」が入力部24に入力されると仮定する。上述のように仮定すると、1頻度あたりのデータ取得期間を示す取得期間tpは、Δt×nmax=1分×120回=120分(2時間)と算出される。そして、取得部32は、消費電力計測器3が17:00から19:00まで、各部屋5の消費電力のデータを1分おきに毎日計測したデータを、インターネット20を介してI/F26で受信し、受信したデータを第2記憶部22に格納するように制御することができる。
なお、図8(a)ではパラメータの一つに取得回数が用いられているが、取得回数の代わりに上述の取得期間tpを用いることもできる。取得回数の代わりに取得期間tpを用いる場合は、図8(b)に示すように、取得回数nmaxとして「120回」を設定する代わりに、取得期間tpとして「120分」を設定する。この場合、取得回数nmaxは、tp/Δt=120分/1分=120回と算出される。これにより、取得部32は、消費電力計測器3に17:00から19:00まで、各部屋5の消費電力のデータを1分おきに毎日計測させることができる。
続いて、消費電力計測器3は、設定された取得タイミングに基づいて、クランプ8から抽出された電流から、部屋5毎の消費電力の時系列情報を計測する(S102)。この時系列情報を蓄積することにより、消費電力計測器3は、部屋5毎の消費電力パターンを得ることができる。計測された消費電力パターンは、第1の時系列情報の一例である。
図9は、部屋5aおよび部屋5bの消費電力パターンの一例を示す図である。図9において、横軸は時間、縦軸は消費電力を示しており、図9(a)は、部屋5aの消費電力パターン、図9(b)は、部屋5bの消費電力パターンを示している。
図5に戻り、S102の処理の後、消費電力計測器3は、計測した各部屋5の消費電力の情報をI/F10からアクセスポイント11に転送する。そして、消費電力計測器3は、アクセスポイント11からインターネット20を経由して情報処理装置1のI/F26に送信する。そして、取得部32は、I/F26を通じて消費電力計測器3から送信された各部屋5の消費電力パターンの情報を受信し、受信した各部屋5の消費電力パターンの情報を、第2記憶部22に格納する(S103)。
続いて、算出部33は、第2記憶部22に格納された各部屋5の消費電力パターンの情報に基づいて、消費電力の平均値を示す平均消費電力を部屋毎に算出する(S104)。図9中の1点鎖線は、S104で算出した平均消費電力を示している。平均消費電力は、1つの消費電力パターンに基づいて算出しても良いし、あるいは、これまで第2記憶部22に蓄積された複数の消費電力パターンに基づいて算出することもできる。
続いて、図6を参照して説明する。図6に示すように、第1判定部34は、各部屋5の消費電力パターンを順次参照し、需要家が入室した可能性がある部屋5が存在するか否かを判定する(S105)。S105で行う処理は、照明器具の点灯イベントが発生したと推定される部屋を複数の部屋5a〜5dの中から検索する処理であり、ある部屋で定常的に使用される電力に相当するレベルから消費電力が増加しているか否かを判定する方法の一例である。具体的には、第1判定部34は、消費電力が平均消費電力よりも低いレベルから高いレベルに変化する電力変化が存在するか否か、すなわち以下の式(1)を満たす消費電力の変化が存在するか否かを判定する。
式(1);
第1判定部34は、S105の判定をn=1から開始し、n=nmax(nmaxは図8に示す取得回数)で判定を行った後に、情報処理装置1による一連の処理を終了させる。図8の設定情報に基づいて判定を行う場合、t0は、取得開始時刻17:00であり、t1は、t0+Δt、すなわち17:01である。そして、第1判定部34は、1回の判定が終わる毎にnの値を1ずつ加算し、nが取得回数nmaxに達するまで消費電力パターンをスキャンしながら参照し、式(1)を満たす電力変化が存在するか否かを順次判定していく。式(1)を満たす電力変化が存在する場合、第1判定部34は、式(1)を満たす電力変化が存在すると判定した際に用いた時刻の情報を第2記憶部22に記憶する。ここで、時刻の情報は、実際の時刻としても良いし、判定時に用いたnの値としても良い。なお、式(1)を満たす電力変化が複数存在する場合、第1判定部34は、式(1)を満たす電力変化が存在すると判定したときの各々の時刻の情報を第2記憶部22に記憶する。
S105の処理の実施例を、図9を参照して説明する。図9(a)の消費電力パターンによれば、消費電力が平均消費電力よりも低いレベルから高いレベルへ変化する傾向は存在せず、式(1)を満たす電力変化は存在しない。一方、図9(b)の消費電力パターンによれば、tn−1とtnとの間の時間帯で、消費電力が平均消費電力よりも低いレベルから高いレベルに変化しており、式(1)を満たす電力変化が存在していることがわかる。したがって、第1判定部34は、需要家が部屋5bに入室した可能性があると判定することができる。以上の判定処理を、部屋5a〜5dの消費電力パターンの全てについて行う。
S105において、需要家が入室した可能性がある部屋5が存在すると判定されなかった場合(S105否定)、第1判定部34は、nに1を加算し(S106)、nが取得回数nmaxを超えているか否かを判定する(S107)。nが取得回数nmaxを超えていないと判定された場合(S107否定)、S105に戻る。そして、第1判定部34は、再びS105の処理を実行する。一方、nが取得回数nmaxを超えていると判定された場合(S107肯定)、S112に移る。S112の処理については後で説明する。
S105において、需要家が入室した可能性がある部屋5が存在すると判定された場合(S105肯定)、第1判定部34は、入室以前に退室があった可能性のある部屋5が存在するか否かを判定する(S108)。S108において、第1判定部34は、S105で需要家が入室した可能性があると判定した際に用いた時刻tnの所定時間前に、需要家が退室した可能性がある部屋5が存在するか否かを判定する。S108で行う処理は、照明器具の消灯イベントが発生した部屋を複数の部屋5a〜5dの中から検索する処理であり、消費電力が定常的に使用される電力に相当するレベルへ減少している部屋5が存在するか否かを判定する方法の一例である。
以下、S108の処理の具体例について説明する。
退室した部屋5と入室した部屋5との距離が離れている場合、部屋5間の移動に相応の時間を要することが予想される。このため、設定部31は、判定を行うにあたり、部屋5間の移動に要する最短の所要時間wおよび最長の所要時間xを予め設定する。最短の所要時間wおよび最長の所要時間xの設定では、部屋5間の位置関係に応じて、移動元の部屋5と、移動先の部屋5と、部屋5間の移動に要する時間とを対応付けて各々個別の値を設定するのが好ましい。上述のように設定することで、退室の検出精度の向上を図ることができるからである。ところが、電力事業者は、需要家の部屋5間の位置関係の情報を有していないことが多いため、その場合は、最短の所要時間wおよび最長の所要時間xを同一の値に設定しても良い。設定した情報は、例えば図2に示す第2記憶部22に格納することができる。
S108において、第1判定部34は、S105で需要家が入室した可能性があると判定された部屋5以外の各部屋5の消費電力パターンを参照しながら、t
n−wからt
nの間で以下の式(2)を満たし、かつ、t
n−xからt
n−wの間で以下の式(3)を満たす消費電力の変化が存在するか否かを判定する。ここで、時刻t
nは、S105で需要家が入室した可能性があると判定した際に用いた時刻である。
式(2);
図9(a)を参照しながらS108の処理を説明する。部屋5aと部屋5bとの間の移動時間として、例えば最短の所要時間としてw=2(分)、最長の所要時間としてx=4(分)が設定されていると仮定する。
図9(a)の消費電力パターンによれば、少なくともtn−1(tnの1分前)とtnとの間の時間帯で、消費電力が平均消費電力よりも低いことがわかる。このため、式(2)を満たしていると判断することができる。また、図9(a)の消費電力パターンによれば、tn−3(tnの3分前)とtnー2(tnの2分前)との間の時間帯で、平均消費電力よりも高いレベルから低いレベルに変化していることがわかる。ここで、w=2(分)、x=4(分)が設定されている場合、tnの4分前からtnの2分前までの間に式(3)を満たす消費電力の変化が存在していることがわかる。
したがって、図9(a)の消費電力パターンは、式(2)と式(3)との両方を満たすこととなり、第1判定部34は、需要家が部屋5aを退室し、部屋5bに移動した可能性があると判定することができる。第1判定部34は、以上の判定処理を、部屋5cおよび部屋5dの消費電力パターンについても同様にして行う。
このように、本実施形態によれば、ある部屋5からある部屋5へ移動するための最短時間wおよび最長時間xの値を設定し、設定した値に基づいて消費電力の変化が存在するか否かを判定する。このことにより、退室した部屋5と入室した部屋5との距離が離れている場合においても需要家の退室を推定できるため、電気機器の推定精度の向上を図ることができる。
以上のようにして、S108の処理を実行する。
図6に戻り、時刻tnの所定時間前に需要家が退室した可能性がある部屋5が存在すると判定されなかった場合(S108否定)、第2判定部35は、S105に関連する入室後の消費電力パターンが登録されているか否かを判定する(S109)。具体的には、第2判定部35は、消費電力がベースレベルからより高いレベルに増加したことを示す消費電力パターン、すなわち、式(1)を満たす電力変化に対応する消費電力パターンが第2記憶部22に登録されているか否かを判定する。
消費電力パターンが第2記憶部22に登録されていると判定された場合(S109肯定)、第2判定部35は、S105で検出した消費電力の変化が照明器具によるものと判定し、S111に進む。一方、消費電力パターンが第2記憶部22に登録されていると判定されなかった場合(S109否定)、S106に進む。
一方、時刻tnの所定時間前に需要家が退室した可能性がある部屋5が存在すると判定された場合(S108肯定)、S105で検出した消費電力の変化が照明器具によるものと判定し、入室後の消費電力パターンを登録する(S110)。
以下、S110の処理の具体例について説明する。
需要家は、入室して照明器具をオンにした後に、テレビやエアコン等の、需要家が手動で電源のオンオフ制御できる電気機器を使用することが想定され、電気機器を使用することにより、消費電力の上昇が観測される可能性がある。また、入室直後に使用する電気機器は、一般的には数種類に限られることが多い。このため、入室したと推定されるタイミングの後の消費電力パターンを抽出し、登録することにより、部屋5の消費電力がベースレベルからより高いレベルに増加した場合に、その変化が入室によるものと推定しやすくなる。
図10は、S110における、入室後の消費電力パターンを登録する方法を説明するための図である。図10に示すように、登録する消費電力パターンの時間帯として、所定の時間帯T
afterを予め設定しておく。そして、S108の判定を行った対象である時刻t
nからT
afterが経過するまでの時間帯に対応する消費電力パターン、すなわち、
式(4);
を満足する消費電力パターンr’j,i(t)を、S103で第2記憶部22に格納した消費電力パターンの中から抽出する。そして、抽出した消費電力パターンr’j,i(t)を登録データとして第2記憶部22に格納する。このとき、登録データは、計測時刻と消費電力とを対応付けた状態で格納されている。また、登録データは、新たな登録が行われるたびに蓄積されていき、登録数が蓄積に従い増加していく。
以上のようにして、S110の処理を実行する。
図6に戻り、S110の処理の後、算出部33は、需要家が退室した可能性があると判定した部屋5および需要家が入室した可能性があると判定した部屋5における消費電力の変動量を算出する。そして算出部33は、算出した結果を分類結果テーブルに格納する(S111)。
以下、S111の処理の具体例について説明する。
S111において、算出部33は、図9の消費電力パターンを用いて、需要家が入室または退室した可能性があると判定した時間帯における消費電力の高低差を算出することにより、照明器具の消費電力量を求めることができる。また、算出部33は、図9の消費電力パターンを用いて、ある時刻における総消費電力量から算出した照明器具の消費電力量を差し引くことにより、照明器具以外の消費電力量を求めることができる。
なお、入室した部屋5の照明器具の消費電力量の算出方法の一例として、例えば需要家が入室した可能性があると判定した時刻をtnとして、dj,i(tn)−dj,i(tn−1)を算出し、算出した値を需要家が入室した可能性がある部屋5の照明器具の消費電力の変動量とすることもできる。あるいは、別の一例として、所定の設定値mを用いて、dj,i(tn+m)−dj,i(tn−1−m)を変動量とすることもできる。後者の方法によれば、広い時間範囲で差分を求めることができるため、より正確に変動量を算出することができる。
退室した部屋5の照明器具の消費電力の算出方法の一例として、例えば需要家が入室した可能性があると判定した時刻をtnとして、dj,i(tn−x)−dj,i(tn)を算出し、算出した値を需要家が退室した可能性がある部屋5の照明器具の消費電力量とすることもできる。あるいは、別の一例として、所定の設定値mを用いて、dj,i(tn−x−m)−dj,i(tn+m)を変動量とすることもできる。後者の方法によれば、広い時間範囲で差分を求めることができるため、より正確に変動量を算出することができる。
以上のようにして、S111の処理を実行する。
このように、本実施形態によれば、部屋5毎の消費電力パターンから、一方の部屋の消費電力がベースレベルからより高いレベルに増加する所定時間前に、他方の部屋の消費電力がベースレベルよりも高いレベルからベースレベルに減少したことを検知する。このことにより、需要家の部屋5間の移動があったことを推定することができる。そして、このときの消費電力の変動量を算出することにより、部屋5毎の照明器具による消費電力量を他の電気機器と区別して算出することができる。
また、図3および図4に示す消費電力パターンの例では、消費電力の変動がない時間帯では消費電力がほぼ一定であるとして説明したが、実際の消費電力パターンはノイズを含むため、図9に示すように、消費電力がノイズにより変化している。このため、ノイズによる変化の仕方によっては、式(1)〜式(3)の判定基準を満足してしまい、誤った判定が行われることがある。本実施形態によれば、部屋5毎の消費電力パターンから、一方の部屋5の消費電力が、一方の部屋5のベースレベルからより高いレベルに変動する所定時間前に、他方の部屋5の消費電力が、他方の部屋5のベースレベルよりも高いレベルからベースレベルに減少したことを検知する。このことにより、ノイズによる変動による誤判断の可能性を抑えることができるため、判定精度の向上を図ることができる。
また、本実施形態によれば、取得部32が取得した消費電力パターンが、第1の部屋の消費電力がベースレベルからより高いレベルに変化する所定時間前に、第2の部屋の消費電力がベースレベルよりも高いレベルからベースレベルに変化することを示す場合に、取得した消費電力パターンのうち、第1の部屋の消費電力がベースレベルからより高いレベルに変化した後の消費電力パターンを第2記憶部22に登録しておく。これにより、需要家が照明をオフにせずに退室したときなど、需要家が退室したことが消費電力パターンの変動に反映されなかった場合であっても、登録された消費電力パターンと照合することにより、取得した消費電力の変動が照明器具によるものと推定することができる。なお、分類結果テーブルについては後述する。
図6に戻り、S111の処理の後、前述のS106の処理を実行する。その後、S107の判定処理を実行する。S107肯定と判定された場合、第1判定部34は、各部屋5の中に需要家の入室があった可能性がある部屋、及び将来退室がある可能性のある部屋Xが存在するか否かを判定する(S112)。部屋Xは、第1の特定領域の一例である。
以下、S112の処理について説明する。
例えば夜間において、ある部屋の消費電力のレベルがベースレベルから立ち上がった後、ベースレベルよりも高い状態で推移している場合、その部屋では、
・ケース1:需要家が在室しているため、照明がオンになっている
・ケース2:需要家が在室していないにも関わらず、照明がオンになっている
のいずれかのケースが推定できる。
以下、ケース1の一例について説明する。
図11は、ケース1における、需要家が部屋5間を移動する様子、および各部屋5における消費電力パターンの一例を示す図である。図11(a)は、当初部屋5aに需要家が三人おり、そのうち二人が部屋5bおよび部屋5cにそれぞれ分かれて移動した場合を示す図である。図11(b)は、部屋5a、5b、5c、および5dの消費電力パターンである。
図11(a)に示すように、部屋5aの中にいる三人のうちの二人の需要家が部屋5aを退室しても、部屋5aにはまだ需要家が一人残っているため、部屋5aの照明はオンのままになっている。このとき、図11(b)に示すように、部屋5aの消費電力は、ベースレベルよりも高いレベルの状態で推移する。
一方、移動先の部屋である部屋5bおよび部屋5cでは、部屋5aを退室した需要家が入室するため、照明はオフからオンに変化する。そのため、図11(b)に示すように、部屋5bおよび5cの消費電力は、ベースレベルから立ち上がった後、ベースレベルよりも高いレベルの状態で推移する。また、図11(a)に示すように、部屋5dでは需要家が入室していないため、図11(b)に示すように、部屋5dの消費電力は、ベースレベルの状態で推移する。
このように、部屋5aに需要家が一人残っている場合は、消費電力の減少が観測されない。このため、図6のS108において、第1判定部34は入室以前に退室があった可能性のある部屋5は存在しないと判定する。
図12は、ケース1における、需要家が図11に示す行動の後にとり得る部屋5間の移動の様子、および各部屋5における消費電力パターンの一例を示す図である。図12(a)は、部屋5aに残っている需要家が照明をオフにして退室する様子を示す図である。図12(b)は、部屋5a、5b、5c、および5dの消費電力パターンである。
図12(a)に示すように、部屋5aに残っている需要家が照明をオフにして退室し、部屋5dに移動して入室したとすると、部屋5dの照明はオフからオンに変化する。このとき、図12(b)に示すように、部屋5aの消費電力は、ベースレベルよりも高いレベルからベースレベルに減少し、部屋5dの消費電力は、ベースレベルから立ち上がり、ベースレベルよりも高いレベルとなる。
一方、部屋5bおよび部屋5cでは、図12(a)に示すように、既に需要家がそれぞれ在室しており、照明がオンのままである。よって、図12(b)に示すように、部屋5bおよび部屋5cの消費電力は、ベースレベルよりも高いレベルの状態で推移する。
このように、ケース1では、将来、部屋5aに残っている需要家が照明をオフにして退室する可能性が考えられる。
次に、ケース2の一例について説明する。
図13は、ケース2における、需要家が部屋5間を移動する様子と、各部屋5における消費電力パターンの一例を示す図である。図13(a)は、当初部屋5aに需要家が二人おり、照明をオンにした状態で、需要家が部屋5bおよび部屋5cにそれぞれ分かれて移動した場合を示す図である。図13(b)は、部屋5a、5b、5c、および5dの消費電力パターンである。
部屋5aの照明がオンのままとなるケース2は、例えば需要家が部屋5aを退室する時に照明を消し忘れた場合や、需要家がすぐに戻ってくるつもりで部屋5aを退室した場合等に起こり得る。
図13(a)に示すように、二人の需要家が部屋Aを退室すると、部屋5aは不在の状態となるが、部屋5aの照明はオンのままになっている。そのため、図13(b)に示すように、部屋5aの消費電力は、ベースレベルよりも高いレベルの状態で推移する。
一方、移動先の部屋である部屋5bおよび部屋5cでは、部屋5aを退室した需要家がそれぞれ一人ずつ入室するため、ともに照明はオフからオンに変化する。そのため、図13(b)に示すように、部屋5bおよび5cの消費電力は、ベースレベルから立ち上がる。また、図13(a)に示すように、部屋5dでは需要家が入室していない。そのため、図13(b)に示すように、部屋5dの消費電力は、ベースレベルの状態で推移する。
このように、部屋5aに需要家が在室していないにも関わらず、照明がオンになっている場合は、消費電力が減少する変化が観測されない。このため、図6のS108において、第1判定部34は入室以前に退室があった可能性のある部屋5は存在しないと判定する。
図14は、ケース2における、需要家が図13に示す行動の後にとり得る部屋5間の移動の様子、および各部屋5における消費電力パターンの一例を示す図である。図14(a)は、部屋5aから部屋5bに移動した需要家が部屋5aに戻って照明をオフにする様子を示す図である。図14(b)は、部屋5a、5b、5c、および5dの消費電力パターンである。例えば部屋5bに移動した需要家が、部屋5aを退室する時に部屋5aの照明を消し忘れた場合等に起こり得る。
図14(a)に示すように、部屋5bに在室していた需要家が部屋5aに戻って部屋5a照明をオフにしたとすると、部屋5aの照明はオンからオフに変化する。このとき、図14(b)に示すように、部屋5aの消費電力は、ベースレベルよりも高いレベルからベースレベルに減少する。また、図14(a)に示すように、部屋5bでは、照明がオンのままであるので、図14(b)に示すように、消費電力はベースレベルよりも高いレベルの状態で推移する。
一方、部屋5cでは、図14(a)に示すように、既に需要家がそれぞれ在室しており、照明がオンのままである。よって、図14(b)に示すように、部屋5cの消費電力は、ベースレベルよりも高いレベルの状態で推移する。また、図14(a)に示すように、部屋5dでは需要家が入室していない。そのため、図14(b)に示すように、部屋5dの消費電力は、ベースレベルの状態で推移する。
このように、ケース2においても、将来、部屋5aの照明がオンからオフに変化する可能性が考えられる。
そこで、図6のS112において、第1判定部34は、各部屋5の消費電力パターンを参照しながら、ベースレベルからベースレベルよりも高いレベルに立ち上がる消費電力パターンを示す部屋5があるか否かを検索する。図12および図13の例では、部屋5bおよび部屋5cが当該部屋5に該当する。部屋5bおよび部屋5cは、第2の特定領域の一例である。
そして更に、第1判定部34は、各部屋5の消費電力パターンを引き続き参照しながら、ベースレベルよりも高い状態で推移している消費電力パターンを示す部屋があるか否かを検索する。消費電力がベースレベルよりも高い状態で推移している場合、将来消費電力が減少する可能性を有している。そこで、上述の状態で推移している部屋を部屋Xとして抽出する。図12および図13の各ケースでは、例えば部屋5aが部屋Xとして抽出される。
需要家の入室があった可能性がある部屋、及び将来退室がある可能性のある部屋Xが存在すると判定された場合(S112肯定)、第1判定部34は、抽出した部屋Xの情報を移動情報テーブルに登録する(S113)。
なお、抽出される部屋Xの数は単数とは限らず、複数抽出されることもある。例えば、部屋5bおよび部屋5cに需要家が入室した際に起こった消費電力の増加が、S109において照明器具によるものと判定されなかった(S109否定)場合は、部屋5bおよび部屋5cの照明器具の消費電力量が推定できていない。このため、これらの部屋で将来退室イベントが発生するか否かを監視することが望ましい。よって、この場合は、部屋5aに加え、部屋5bおよび部屋5cも部屋Xとして抽出することが好ましい。
図15は、移動情報テーブルの一例を示す図である。図15(a)は、部屋Xに需要家が在室していたか否かを判定する前のテーブルの一例であり、図15(b)は、部屋Xに需要家が在室していたか否かを判定した後に更新されたテーブルの一例である。
図15(a)および図15(b)に示すように、移動情報テーブルには、「移動先入室時刻」、「移動情報」、および「在室可能性」の各情報が対応付けられて格納されている。「移動先入室時刻」欄は、移動先に入室した時刻が登録される欄であり、図6のS105で需要家が入室した可能性があると判定した際に用いた時刻tnが登録される。図15では、時刻tnの例として「2012/11/20 19:30」を示す情報と、「2012/11/20 19:40」を示す情報とが登録されている。「移動情報」欄は、需要家の移動元として予想される部屋Xと、図6のS105で需要家が入室した可能性があると判定した移動先の情報とが登録される欄である。図15では、移動元の例として「部屋5a」の情報が登録されており、移動先の例として「部屋5b」および「部屋5c」の情報が登録されている。「在室可能性」欄は、移動元で在室していた可能性を推定した結果が登録される欄である。「在室可能性」欄には、移動元で在室していた可能性が高い場合には「1」が登録される。一方、移動元で在室していた可能性が低い場合には「0」が登録される。S113では、第1判定部34は、図15(a)に示すように、初期情報として全ての「在室可能性」欄に「0」を登録する。
一方、各部屋5の消費電力パターンを参照した結果、消費電力がベースレベルへ減少する可能性のある部屋Xがあると判定されなかった場合(S112否定)、第1判定部34は、情報処理装置1による一連の処理を終了させる。このとき、各部屋5の照明器具の消費電力量の推定結果を出力部25から出力することができる。
以上のようにして、S113の処理を実行する。S113の処理の後、図7のS114に進む。
続いて、図7を参照して説明する。S114以降の処理では、消費電力パターンを再度計測し、取得した消費電力パターンに基づいて、図6のS112で抽出した部屋Xの照明器具の消費電力量を推定する処理が実行される。
まず、S114に処理が進んだ場合、移動情報テーブルには、消灯のイベントが発生する可能性がある部屋Xが登録されている。そこで、消費電力計測器3は、消灯のイベントが発生するか否かを監視するために、部屋5毎の消費電力パターンの再計測を実行する(S114)。
図16は、消費電力パターンの再計測の際に用いる設定情報の一例である。図16(a)に示すように、例えば、取得間隔Δt’として「1分」、取得回数nmax’として「120回」が入力部24に入力されると仮定する。上述のように仮定すると、1頻度あたりのデータ取得期間を示す取得期間tp’は、Δt’×nmax’=1分×120回=120分(2時間)と算出される。消費電力パターンの再計測を開始する時刻は、S114において消費電力計測器3が取得部32から再計測を実行する旨の指示信号を受信した時刻とすることができる。例えば、消費電力計測器3が図8の設定情報に従って19:00に1回目の計測を終えた後、19:02に取得部32から指示信号を受信したとする。この場合、消費電力計測器3は、19:02から21:02までの間に2回目の計測(再計測)を実施することとなる。
なお、図16(a)ではパラメータの一つに取得回数が用いられているが、取得回数の代わりに上述の取得期間tpを用いることもできる。取得回数の代わりに取得期間tpを用いる場合は、図16(b)に示すように、取得回数nmax’として「120回」を設定する代わりに、取得期間tp’として「120分」を設定する。この場合、取得回数nmax’は、tp’/Δt’=120分/1分=120回と算出される。
図7に戻り、S114において、消費電力計測器3は、設定された取得タイミングに基づいて、クランプ8から電流を抽出することにより、部屋5毎の消費電力パターンを取得することができる。再計測された消費電力パターンは、第2の時系列情報の一例である。
続いて、消費電力計測器3は、S103と同様の処理により、計測した各部屋5の消費電力パターンの情報を消費電力計測器3から情報処理装置1に送信する。そして、取得部32は、受信した消費電力パターンの情報を、第2記憶部22に格納する(S115)。
続いて、第1判定部34は、需要家が入室した可能性がある部屋5が存在するか否かを判定する(S116)。この部屋5は、第3の特定領域の一例である。S116において、第1判定部34は、再計測された消費電力パターンを参照しながら、消費電力が平均消費電力よりも低いレベルから高いレベルに変化する電力変化が存在するか否か、すなわち式(1)を満たす消費電力の変化が存在するか否かを判定する。
需要家が入室した可能性がある部屋が存在すると判定されなかった場合(S116否定)、S117に進む。一方、需要家が入室した可能性がある部屋が存在すると判定された場合(S116肯定)、第1判定部34は、入室以前に退室があった可能性のある部屋Xが存在するか否かを判定する(S119)。
S119において、第1判定部34は、S116で需要家が入室した可能性があると判定した際に用いた時刻tnの所定時間前に、需要家が退室した可能性がある部屋5が存在するか否かを判定する。第1判定部34は、移動情報テーブルに登録されている部屋Xの消費電力パターンを参照しながら、消費電力が平均消費電力よりも高いレベルから低いレベルに変化する電力変化が起こっているか否か、すなわち式(2)および式(3)を満たす消費電力の変化が存在するか否かを判定する。ここでは、消費電力が平均消費電力よりも高いレベルから低いレベルに変化する可能性を有する部屋Xを予め移動情報テーブルに登録しているため、消費電力パターンの参照範囲を絞ることが可能となっている。
入室以前に退室があった可能性のある部屋Xが存在すると判定されなかった場合(S119否定)、S117に進む。一方、入室以前に退室があった可能性のある部屋Xが存在すると判定された場合(S119肯定)、第1判定部34は、部屋Xで需要家が在室していた可能性が高いと判定し、移動情報テーブルの「在室可能性」の欄を更新する(S120)。
既に説明した通り、図15(a)に示すように、移動情報テーブルの「在室可能性」の欄には、初期情報として「0」が登録されている。S120において、第1判定部34は、移動情報テーブルの対応する「在室可能性」の欄を「0」から「1」に更新する。例えば、図15(b)に示すように、2012/11/20 19:30における「在室可能性」の欄には「1」が登録されており、更新が行われたことを示している。また、2012/11/20 19:40における「在室可能性」の欄にも「1」が登録されており、更新が行われたことを示している。
続いて、算出部33は、需要家が退室した可能性があると判定した部屋5および需要家が入室した可能性があると判定した部屋5における消費電力の変動量を算出する。そして算出部33は、算出した結果を分類結果テーブルに格納する(S121)。
S121において、算出部33は、S114で再計測した消費電力パターンを用いて、需要家が入室または退室した可能性があると判定した時間帯における消費電力の高低差を算出することにより、照明器具の消費電力量を算出する。S121では、S120で更新した「在室可能性」の欄における「1」の情報が、照明器具の消費電力量を算出する対象を示すフラグとして用いられる。
また、算出部33は、S114で再計測した消費電力パターンを用いて、ある時刻における総消費電力量から算出した照明器具の消費電力量を差し引くことにより、照明器具以外の消費電力量を算出する。算出した照明器具の消費電力量を分類結果テーブルに格納する。
図17は、分類結果テーブルの一例を示す図である。算出部33は、算出した部屋5毎の照明器具の消費電力量と、照明器具以外の消費電力量を値とを第2記憶部22に格納する。また、分類結果テーブルを出力部25に出力することもできる。
部屋5毎に設けられている照明器具は、頻繁に取り換えるものではないため、算出される照明器具の消費電力値は所定の確率分布に従っていることがある。そこで、図17に示すような分類結果テーブルの情報を統計データとして蓄積させていくことにより、部屋5毎の照明器具の消費電力値をより正確に見積もることが可能となる。また、例えば、需要家がある照明器具を消費電力の異なる別の種類の照明器具に交換すると、消費電力値の統計データもそれに合わせて変化する。このため、電力事業者側で需要家が照明器具を変更したことを検知し、把握することも可能である。
S121の処理の後、S117に移る。S117において、第1判定部34は、nに1を加算し、nが取得回数nmaxを超えているか否かを判定する(S118)。S118において、nが取得回数nmaxを超えていると判定された場合(S118肯定)、情報処理装置1による一連の処理を終了する。nが取得回数nmaxを超えていないと判定された場合(S118否定)、S116に戻り、第1判定部34は、再びS116の処理を実行する。
以上のようにして、本実施形態における情報処理装置1による処理を実行する。
電力事業者は、算出した照明器具の消費電力量の情報に基づいて電力料金を決定することができる。電力事業者は、例えばピーク時間帯の電力料金を高くした料金プランや、顧客が減らした電力需要に対して対価を支払うようにする料金プラン等を設定することができる。
また、電力事業者から、設定した料金プランとともに照明器具の消費電力量の情報を併せて需要家に提示することもできる。この方法によれば、需要家にとっては、自身の照明器具の消費電力量を把握することができるため、料金プランを決定する際の材料として活用することができる。また、電力事業者にとっては、照明器具の節電を需要家に促しやすくなるため、ピーク時間帯における電力消費の低減を図ることができる。
また、電力事業者は、例えば、算出した照明器具の消費電力量と、家庭内の機器毎の消費電力量の割合を示す統計情報(例えば、URL:http://setsuden-lab.com/setsuden -kiso1.html等)とに基づいて、手動でオンオフ制御が可能な機器全体の消費電力量を推定し、推定した消費電力量に基づいて電力料金プランを決定することができる。
以上説明したように、本実施形態によれば、複数の部屋5の各々の消費電力の時系列情報に基づいて、消費電力が減少する可能性のある部屋Xを複数の部屋から抽出する。そして、部屋Xの消費電力が部屋Xで定常的に使用される電力に相当するレベルに減少したときに、その減少が照明器具によるものか否かを判定する。この方法によれば、消灯イベントが発生する可能性が高い部屋Xを監視し、消費電力がベースレベルに減少するまで待機することにより、照明器具によるものか否かを判定する機会を増やすことができる。その結果、より多くの部屋の照明器具の消費電力量を推定することができる。
(第1の変形例)
次に、本実施形態における、情報処理方法の第1の変形例について説明する。なお、第1の変形例を実現するための情報処理システムは、図1および図2に例示されている情報処理システムの構成を用いることができるため、重複部分についての説明を省略する。
第1の変形例では、入室後の消費電力パターンの登録数が所定の閾値Nthを超えているか否かを判定する処理と、入室後の消費電力パターンを、距離(類似度)に基づいて複数のグループに分類、すなわちクラスタリングする処理とを実行することを特徴としている。
図18は、情報処理方法の第1の変形例を示すフローチャートである。S105までの処理は、図5および図6と略同様である。S105肯定と判定された場合、第1判定部34は、入室した時刻tnの所定時間前に需要家が退室した可能性がある部屋5が存在するか否かを判定する(S108)。
時刻tnの所定時間前に需要家が退室した可能性がある部屋5が存在すると判定された場合(S108肯定)、第2判定部35は、S105で検出した消費電力の変化が照明器具によるものと判定し、入室後の消費電力パターンを登録する(S201)。S201の処理の後、S111に進む。S111以降の処理は、図6における処理と略同様である。
一方、時刻t
nの所定時間前に需要家が退室した可能性がある部屋5が存在すると判定されなかった場合(S108否定)、第2判定部35は、第2記憶部22を参照して、入室後の消費電力パターンの登録数が所定の閾値N
thを超えているか否か、すなわち以下の式(5)を満たすか否かを判定する。(S202)。
式(5);
ここで、閾値Nthは、入室後の消費電力パターンが登録されているか否かを判定するために十分な量の消費電力パターンが蓄積されているか否かを判定するための基準として用いられ、例えばNth=10である。情報処理システムの導入開始時には、第2記憶部22に登録される消費電力パターンの登録数が少ない。このため、入室後の消費電力パターンに変化がみられた場合に、需要家による電気機器の操作によるものなのか、あるいは需要家を介さずに自動でオンオフ動作する電気機器によるものなのかを区別することが困難となる可能性がある。
そこで、入室後の消費電力パターンの登録数が所定の閾値Nthを超えている場合に、入室後の消費電力パターンが登録されているか否かを判定する。これにより、ある程度消費電力パターンが蓄積された後に判定を行うことができるため、判定精度の向上を図ることができる。
入室後の消費電力パターンの登録数が閾値Nthを超えていると判定されなかった場合(S202否定)、S106に移る。一方、入室後の消費電力パターンの登録数が閾値Nthを超えていると判定された場合(S202肯定)、登録中の、入室後の消費電力パターンをクラスタリングする(S203)。
以下、S203の処理の具体例について説明する。
需要家が入室した部屋5では、需要家が使用する電気機器の種類によって、消費電力パターンの大きさや変化が異なる。また、需要家が電気機器を使用しない場合や、需要家を介さずに自動でオンオフ動作する電気機器が動作する場合もある。このため、S201で登録した需要家が入室した後の消費電力パターンの変化は一様ではなく、時刻tnからTafterが経過するまでの時間帯に対応する消費電力パターンは、大別して複数の種類が存在する。さらに、S108で誤って肯定と判定され、S201で入室後の消費電力パターンが抽出され、登録される可能性もある。
そこで、S203では、第2記憶部22に登録されている入室後の消費電力パターンを、距離(類似度)に基づいて複数のグループに分類、すなわちクラスタリングする処理を行う。そして、S108で誤って肯定と判定され、S201で抽出された入室後の消費電力パターンを除外する処理を行う。クラスタリングの方法としては種々の方法が知られており、特定の方法に限定するものではない。以下に、K−means法を用いたクラスタリング方法の一例について説明する。
図19は、クラスタリング方法の一例を示すフローチャートである。
まず、第2判定部35は、第2記憶部22に登録されている複数の入室後の消費電力パターンdj,i(t)の中から、ランダムにk個(kは所定の数)の消費電力パターンdj,i(t)を選択する。そして、第2判定部35は、選択した消費電力パターンdj,i(t)の各々を代表点c1(t)、c2(t)、・・・ck(t)として設定する(S401)。
続いて、第2判定部35は、第2記憶部22に登録されている、すべての入室後の消費電力パターンd
j,i(t)の各々について、代表点c
1(t)、c
2(t)、・・・c
k(t)のうち、代表点との距離dist(d
j,i(t)、c
n(t))、すなわち
式(6);
が最小となるような代表点を選択し、割り当てることにより、クラスタを生成する(S402)。クラスタとは、入室後の消費電力パターンdj,i(t)をグループ化した場合の各々のグループである。
続いて、第2判定部35は、代表点の割り当てに変化があるクラスタが存在するか否かを判定する(S403)。なお、S403の判定が1回目である場合は、代表点の割り当てに変化がないものとみなす。代表点の割り当てに変化があると判定された場合(S403肯定)、第2判定部35は、クラスタ毎に、重心となる入室後の消費電力パターンdj,i(t)を選択し、代表点c1(t)、c2(t)、・・・ck(t)を再設定する(S404)。そして、第2判定部35は、S402の処理を再び行う。S402〜S404の処理を繰り返していくと、次第に代表点の変化が小さくなっていく。代表点の割り当てに変化がないと判定された場合(S403否定)、第2判定部35は、クラスタリングが完了し、S405に進む。
S405において、第2判定部35は、所定の数以下の入室後の消費電力パターンで構成されるクラスタが存在するか否かを判定する。具体的には、第2判定部35は、クラスタを構成する入室後の消費電力パターンの数が、全登録数に対する割合が所定の割合以下であるか否かによって判定する。あるいは、第2判定部35は、クラスタを構成する入室後の消費電力パターンの数が、所定の数以下であるか否かによって判定する。
所定の数以下の入室後の消費電力パターンで構成されるクラスタが存在しない場合(S405否定)、S204に進む。一方、所定数以下の入室後の消費電力パターンで構成されるクラスタが存在する場合(S405肯定)、S406に進み、第2判定部35は、当該クラスタをS204での判定対象から除外する。
以上のようにして、S203の処理を実行する。S203の処理の後、図18のS204に進む。
図18に戻り、S204において、第2判定部35は、S105に関連する、入室後の消費電力パターンrj,i(t)に対応する消費電力パターンが、第2記憶部22に登録されているか否かを判定する。
具体的には、例えば、第2判定部35は、既に登録されている、S203の処理の際に除外した消費電力パターンを除くすべての入室後の消費電力パターンr
j,i(t)について、d
j,i,m(t)±{σ(t)の自然数倍}の範囲、すなわち以下の式(7),式(8)および式(9)を満たすか否かをクラスタ毎に判定する。ここで、d
j,i,m(t)は、クラスタを構成する入室後の消費電力パターンを示す関数であり、σ(t)は、クラスタを構成する入室後の消費電力パターンの標準偏差を示す関数である。
式(7);
m:クラスタを構成する入室後の消費電力パターンの識別番号
p:任意の自然数(1,2,3・・・)
σ(t):クラスタを構成する入室後の消費電力パターンの標準偏差
式(8);
なお、dj,i,m(t)をクラスタの代表点のみに限定することもできる。この方法によれば、式(7)の判定回数を減らすことができるため、処理速度の向上を図ることができる。
S105に関連する、入室後の消費電力パターンrj,i(t)に対応する消費電力パターンが、第2記憶部22に登録されていると判定された場合(S204肯定)、S111に移る。このとき、判定されていないクラスタについては判定を省略することができる。S111以降で実行する処理は、図6における処理と略同様である。
一方、全てのクラスタを構成する消費電力パターンについて、S201で抽出した入室後の消費電力パターンrj,i(t)に対応する消費電力パターンが、第2記憶部22に登録されていないと判定された場合(S204否定)、S106に移る。S106、S107およびS112で実行する処理は、図6における処理と略同様である。よって、処理の説明は省略する。
このように、第1の変形例によれば、所定数以下の、入室後の消費電力パターンで構成されるクラスタに属する消費電力パターンを、S204で行う判定の対象から除外する。この方法によれば、S204の照合処理を実行するに際し、S108で誤って肯定と判定されたためにS201で抽出された消費電力パターンを予め除外しておくことが可能となる。これにより、S204の処理の短縮化を図ることができる。
(第2の変形例)
次に、本実施形態における、情報処理方法の第2の変形例について説明する。なお、第2の変形例を実現するための情報処理システムは、図1および図2に例示されている情報処理システムの構成を用いることができるため、重複部分についての説明を省略する。
図1乃至図19に示す実施形態では、情報処理装置1の第1判定部34が、移動情報テーブルに登録されている部屋Xで消灯イベントが発生したことを検知する。これに対して第2の変形例では、需要家側に設置されている消費電力計測器3が、部屋Xで消灯イベントが発生したことを検知することを特徴としている。
図20は、情報処理方法の第2の変形例を示すフローチャートである。処理を開始してからS114までの処理は、図5乃至図7のフローチャートに示す処理と同様である。消費電力計測器3は、S114で消費電力パターンの再計測を開始した後、移動情報テーブルに登録されている部屋Xのうち、需要家の退室があった可能性がある部屋Xが存在するか否かを判定する(S501)。S501において、消費電力計測器3は、S114以降に計測された部屋Xの消費電力パターンを参照しながら、退室の可能性を示す、消費電力が平均消費電力よりも高いレベルから低いレベルに変化する電力変化が起こっているか否かを判定する。これにより、消費電力計測器3は、部屋Xにおける消灯イベントの発生を監視することができる。
需要家の退室があった可能性がある部屋Xが存在すると判定されなかった場合(S501否定)、消費電力計測器3は、S501の処理を再び実行する。一方、需要家の退室があった可能性がある部屋Xが存在すると判定された場合(S501肯定)、消費電力計測器3は、消費電力パターンの再計測が終了した後、計測された各部屋5の消費電力パターンを消費電力計測器3から情報処理装置1に送信する。そして、取得部32は、各部屋5の消費電力パターンを受信し、受信した情報を第2記憶部22に格納する(S502)。すなわち、消費電力計測器3は、部屋Xで消灯イベントが発生していない場合は消費電力パターンを情報処理装置1に送信しない。消費電力計測器3は、部屋Xの消費電力の変化を監視し、部屋Xで消灯イベントが発生したことを検知した場合に、再計測した消費電力パターンを情報処理装置1に送信する。S502の処理の後は、情報処理装置1側で処理を実行する。
消灯イベントが発生したことが情報処理装置1に通知されると、第1判定部34は、需要家が部屋Xを退室したと推定される時刻以後に、需要家の入室があった可能性がある別の部屋5が存在するか否かを判定する(S503)。具体的には、第1判定部34は、移動情報テーブルに登録されている部屋Xのうち、S501で需要家が退室した可能性があると判定された部屋5以外の各部屋5の消費電力パターンを参照しながら、需要家の入室を示す消費電力の変化が存在するか否かを判定する。
需要家が部屋Xを退室したと推定される時刻以後に、需要家の入室があった可能性がある別の部屋5が存在すると判定されなかった場合(S503否定)、情報処理装置1による一連の処理を終了する。一方、需要家が部屋Xを退室したと推定される時刻以後に、需要家の入室があった可能性がある別の部屋5が存在すると判定された場合(S503肯定)、第1判定部34は、退室元の部屋Xで需要家が在室していた可能性が高いと判定し、移動情報テーブルの「在室可能性」の欄を更新する(S504)。S504における処理の方法は、図7におけるS120の処理と同様である。
続いて、算出部33は、需要家が退室した可能性があると判定した部屋5および需要家が入室した可能性があると判定した部屋5における消費電力の変動量を算出する。そして算出部33は、算出した結果を分類結果テーブルに格納する(S505)。S505における処理の具体的な方法は、図7におけるS121の処理と同様である。S121の処理の後、情報処理装置1による一連の処理を終了する。
以上のようにして、第2の変形例における情報処理装置1による処理を実行する。
このように、第2変形例によれば、消費電力計測器3が消費電力パターンを取得しながら、部屋Xの消費電力がベースレベルよりも高いレベルからベースレベルに減少したか否かを監視する。そして、部屋Xの消費電力がベースレベルへ減少したことを消費電力計測器3が検知したときに、情報処理装置1は、消費電力計測器3から消費電力パターンを受信し、その減少が照明器具によるものか否かを判定する。この方法によれば、消費電力がベースレベルへ減少したことが検知されるまで、消費電力計測器3から情報処理装置1への消費電力パターンの送信は行われない。このため、消費電力計測器3と情報処理装置1との間のネットワークの負荷を低減させることができる。
以上、本発明の好ましい実施例について詳述したが、本発明は特定の実施例に限定されるものではなく、種々の変形や変更が可能である。例えば、S108の処理では、ある部屋5からある部屋5へ移動するための最短時間wおよび最長時間xの値を設定し、設定した値に基づいて消費電力の変化が存在するか否かを判定する例について説明したが、wのみをw=0と設定することもできる。w=0と設定することにより、移動先の部屋5の側で移動元の部屋5の照明をオフにすることができる場合(例えば、移動元の部屋5が階段である場合等)においても、消費電力の変化が照明器具によるものと判定することができる。
また、第1の変形例では、第2記憶部22に登録されている消費電力パターンをクラスタリングする処理を行っているが、第1の変形例の中で当該処理を省略することもできる。
また、照明器具の電源をオフにすることにより定常的に使用される電力に相当するレベルへ減少する消費電力パターン、または照明器具の電源をオンにすることにより定常的に使用される電力に相当するレベルから増加する消費電力パターンが予め取得できている場合では、当該消費電力パターンを第2記憶部22に登録しておき、照合する際のレファレンスとして用いることもできる。この方法によれば、図6に示すS105およびS108の処理を省略することができる。