JP6118081B2 - 灯油基材及び灯油組成物 - Google Patents
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Description
(1)10%留出温度が40〜100℃、50%留出温度が150〜210℃、90%留出温度が240〜380℃である。
(2)密度が0.93〜0.99g/cm3である。
[2] 56℃に加熱した際に揮発して得られる成分中に、ジシクロペンタジエン及びスチレンモノマーが含有されていない[1]に記載の灯油基材。
[3] 前記水素化処理が、水素の存在下、水素化触媒を用いて行われる処理であり、その処理条件が、水素圧力2〜6MPa、液空間速度(LHSV)0.3〜1.5h-1、水素/油比250〜500Nm3/kLである[1]又は[2]に記載の灯油基材。
本発明の灯油基材は、重質ナフサ及び/又は灯油100容量部に対し、ナフサの熱分解から得られる所定の性状を有する熱分解油(以下、「本発明に係る熱分解油」ということがある)1〜50容量部を混合し、反応温度180〜210℃にて水素化処理して得られる。
本発明に係る熱分解油は、5〜40容量部であることが好ましく、10〜30容量部であることがより好ましい。
(1)10%留出温度(T10)が40〜100℃、50%留出温度(T50)が150〜210℃、90%留出温度(T90)が240〜380℃である。
このような蒸留性状を有することで、好適に水素化処理することができる。
10%留出温度は好ましくは45〜95℃であり、より好ましくは50〜90℃である。50%留出温度は好ましくは160〜200℃であり、より好ましくは170〜190℃である。90%留出温度は好ましくは240〜370℃であり、より好ましくは240〜360℃である。
これらの留出温度の範囲内であれば、窒素分の含有量を低減でき、窒素分による水素化触媒への被毒を抑えることができる。なお、熱分解油の窒素分は、50質量ppm以下であることが好ましく、30質量ppm以下であることがより好ましい。また、熱分解油における各留出温度はガスクロ蒸留の留出温度である。
PetroOXYは、酸化安定度の指標となるもので、後述の実施例に記載の方法にて測定される。PetroOXYが6分未満では、長期保存時に酸化劣化する可能性が高くなってしまう。
また、メルカプタン濃度についても後述の実施例に記載の方法にて測定される。メルカプタン濃度が18質量ppmを超えると独特の強い臭いが感じられる。
また、基材のメルカプタン濃度を下げることにより、製品(灯油)のメルカプタン濃度も低下し、製品で5ppm以下であれば独特の臭いは感じられなくなる。
なお、通常の灯油水素化処理装置では反応温度が300℃以上となるため、熱分解油をブレンド通油すると210℃を超える部位でオレフィンやジエンが重合し、熱交換器、加熱炉、反応塔等において、汚れや圧力損失の増加が起こり、運転継続が困難になることがある。
水素化処理の詳細な条件(好ましい条件)は後述する。
重質ナフサを得るナフサ原料としては、一般にフルレンジナフサと呼ばれるナフサが挙げられる。輸入ナフサには、炭素数9、10以上の重質分を含むため、ライトナフサやヘビーナフサを分離した後に得られる重質ナフサが特に好適に使用される。
なお、水素圧力(=全圧(反応塔出口の高圧セパレータの圧力)×供給水素ガス中の水素濃度で定義される)が高いほど水素化が容易に行われるが、同時に水素化による発熱が多くなりすぎ制御が困難になる、設備費が高くなる等の不具合が起こるため、コストを考慮しても上記のような範囲とすることが好ましい。
なお、反応器が管型反応器(反応塔)の場合の反応温度は、触媒重量平均温度で定義される温度をさす。
また、液空間速度(LHSV)は0.3〜1.5h-1とすることが好ましく、0.5〜1.0h-1とすることがより好ましく、0.75〜1.0h-1とすることがさらに好ましい。液空間速度を0.3〜1.5h-1とすることで臭気の原因物質を選択的に水素化することができる。
さらに、水素/油比は250〜500Nm3/kLとすることが好ましく、300〜500Nm3/kLとすることがより好ましい。水素/油比を250〜500Nm3/kLとすることで反応に必要な水素を供給し、触媒の劣化を抑制することができる。なお、水素/油比の油は、ポンプ送液量(kL:キロリットル)をベースとしている。
本発明の灯油組成物は、既述の本発明の灯油基材を1容量%以上含有してなり、引火点が40℃以上、煙点が21.0以上、90%留出温度が268℃以下である。
また、上記灯油としては常圧蒸留装置より得られる直留灯油(又は脱硫処理した灯油)、直留軽質軽油(又は脱硫処理した軽質軽油)、直留重質軽油(又は脱硫処理した重質軽油)の直留系基材を主体として用い、これに流動接触分解装置及び/又は残渣流動接触分解装置より得られる軽質サイクル油、減圧蒸留装置より得られる減圧軽油を水素化した水素化減圧軽油、水素化分解装置より得られる水素化分解軽油、直接重油脱硫装置より得られる直脱軽油等を混合し、更に残留炭素付与用の常圧残油、直脱残油、減圧残油等を混合して10%残油の残留炭素分が0.2重量%を超えるように製造されるものを適用することができる。
[基材]
(1)重質ナフサ
使用した重質ナフサの性状を下記表1に示す。
本実施例における各種の測定・評価方法は下記の通りである。
(1)密度
JIS K 2249に準拠して測定した。
(i)ガスクロ蒸留性状
JIS K 2254に準拠して測定した。
(ii)エングラー蒸留性状
JIS K 2254に準拠して測定した。
(3)メルカプタン濃度及び硫黄分
メルカプタン濃度: JIS K 2276 メルカプタン硫黄分分析試験方法
硫黄分:JIS K 2541−4「放射線式励起法」(10wtppm以上の場合)
JIS K 2541−7「波長分散蛍光X線法」(10wtppm未満の場合)
56℃に加熱した際に揮発して得られる成分中のジシクロペンタジエン濃度を、下記ののようにして測定した。また、スチレンモノマーの濃度も同様にして測定した。ここで、ジシクロペンタジエン及びスチレンモノマーを測定したガスクロのエリア%が合わせて0.1%未満の場合、上記の臭い成分なしとした。0.1以上の場合はありとした。
GCの条件:注入口 240℃
カラム DB−1(長さ30m、直径0.32mm)
オーブン温度 40℃(5min)→240℃(10min)
昇温速度は10℃/min
MSの条件:Scan Mode(m/z 29〜400)
三点嗜好法に準拠して行った。独特の強い臭いがあると感じた場合を×、独特の臭いが少しある場合を△、独特の臭いがない場合を○とした。
JIS K 2537に準拠して測定した。
(7)引火点
JIS K 2265に準拠して測定した。
灯油基材及び灯油組成物の酸化安定度は、PetroOXY試験「経済産業省告知第72号(軽油中の酸化安定度の測定方法として経済産業大臣が定める方法)」により測定される誘導期間で表した。誘導期間とは、試料5mlに所定量の酸素を封入し、140℃まで上昇させて、初期圧力が10%低下するまでの時間である。
(9)臭素価
JIS K 2605に準拠して測定した。
(10)窒素分
JIS K 2609に準拠して測定した。
下記表4−1、表4−2に示す条件及び下記の条件にて、各種基材を混合し水素化処理して灯油基材を作製した。
水素化処理には高圧固定床流通式の反応器を用い、触媒は、軽油深度脱硫装置で、脱硫軽油の硫黄分が10質量ppm以下となるように2年間使用したコバルトモリブデン系の市販軽油脱硫触媒(使用済触媒)を市販の灯油で洗浄後、空気中で風乾したものを60ミリリットル充填した。
原料油は純度100%の水素ガスとともに反応管の上段から導入するダウンフロー形式で流通させて反応評価を行った。
使用した使用済触媒は硫化済のものであるが、空気で酸化されているおそれがあったため、予備硫化に相当する処理を実施した。反応圧力(水素圧力)は反応器出口で調整した。水素/原料油比は水素化反応器入口の供給量で調整した。
前処理として、DMDS(ジメチルジスルフィド)を添加し硫黄濃度を2.0質量%に調整した、密度0.844g/cm3の中東系軽油をベースとする予備硫化油を水素ガスとともに流通させて、最初110℃で4時間処理後、温度360℃まで10時間で昇温し、温度360℃で4時間硫化処理を行った。その後、原料油を重質ナフサに切替え、温度360℃で4時間通油し、触媒に含まれると考えられる重質分を洗浄・除去した後、所定の温度に低下させた。
生成油は、回収時間を調整することにより、400ccから最大2L回収した。系内容器に所定量回収した生成油に窒素ガスを60NL/hで0.5時間流通し、生成油に含まれる硫化水素の除去を行った。該熱分解油及び重質ナフサ等による希釈油は、常温では変質するため、温度0℃の保冷庫で保管した。
作製した灯油基材について、各種測定・評価を行った。結果を下記表4−1及び表4−2、並びに下記表5−1及び表5−2に示す
下記表6−1及び表6−2に示すように、各種基材を混合して灯油組成物を作製した。作製した灯油組成物について各種測定・評価を行った。結果を下記表6−1及び表6−2に示す。
Claims (4)
- 重質ナフサ100容量部に対し、ナフサの熱分解から得られる熱分解油1〜50容量部を混合し、水素化処理して得られるPetroOXY(酸化安定度)が6分以上、メルカプタン濃度が18質量ppm以下の灯油基材であって、
前記ナフサの熱分解から得られる熱分解油が、エチレン製造装置から副生される熱分解留分で、下記(1)及び(2)の性状を有し、
前記水素化処理は、水素の存在下、水素化触媒を用いて行われる処理であり、その処理条件が、水素圧力2〜6MPa、反応温度180〜210℃、液空間速度(LHSV)0.3〜1.5h −1 、水素/油比250〜500Nm 3 /kLである、灯油基材。
(1)10%留出温度が40〜100℃、50%留出温度が150〜210℃、90%留出温度が240〜380℃である。
(2)密度が0.93〜0.99g/cm3である。 - 56℃に加熱した際に揮発して得られる成分中に、ジシクロペンタジエン及びスチレンモノマーが含有されていない請求項1に記載の灯油基材。
- 前記水素化触媒が、モリブデン系水素化触媒である請求項1または2に記載の灯油基材。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の灯油基材を1容量%以上含有してなり、引火点が40℃以上、煙点が21.0mm以上、90%留出温度が268℃以下であり、PetroOXY(酸化安定度)が50分以上である灯油組成物。
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