JP6117692B2 - 内燃機関のクランクシャフト構造 - Google Patents
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Description
一体式クランクシャフトの方が鍛造で成型されるので、強度的に優れており、本発明に係るクランクシャフトは、この一体式クランクシャフトに関するものである。
すなわち、クランクピンとクランクウエブが別体であれば両者のズレによって応力の集中を避けることができるが、クランクピンとクランクウエブが一体であると両者の相対的移動がないため応力が集中しやすい。
そこで、相対向するクランクウエブの対向面におけるクランクピンからクランクアームにかけて連続する隅部のカウンタウエイト側に凹部(肉盗み部)を形成して、応力の分散を図った例がある(特許文献1参照)。
クランクアーム部に連続してカウンタウエイト部が形成されたクランクウエブが回転中心軸にクランクジャーナルを突出形成するとともに、相対向させたクランクウエブのクランクアーム部間をクランクピンが連結して一体に形成された一体式のクランクシャフトであって、
前記クランクアーム部における前記クランクピンの付け根の周囲に環状に膨出してコネクティングロッドの軸方向の移動を規制するスラスト受面が形成されたクランクシャフトにおける内燃機関のクランクシャフト構造において、
相対向するクランクウエブの対向面におけるクランクピンからクランクアームにかけて連続する隅部(A)の近傍であって前記スラスト受面を一部切り欠く程に前記クランクピンに近い位置、かつ前記クランクジャーナルの中心軸に少なくとも一部が重なるように凹部(G)が形成され、
前記クランクジャーナルの中心軸に形成される第1給油路(31,61)と、前記第1給油路(31,61)の前記クランクジャーナルの中心軸から外方に離間した位置から前記クランクアーム部内を斜めに通って前記クランクピン内に延びる第2給油路(32,62)と、前記第2給油路(32,62)に直交して延び前記クランクピンの外周面に開口する第3給油路(33,63)とからなる油路構造が前記クランクシャフト内に形成され、
前記第2給油路(32,62)は、前記凹部Gから離れた応力中立面上に位置するように形成され、
前記凹部(G)は、少なくとも燃焼行程における最大圧力がコネクティングロッドを介してクランクピンに加わるクランク角度の時のピストンピンの中心軸(Cz)とクランクピンの中心軸(Cy)とを結ぶ最大圧力直線(P)上に形成されることを特徴とする。
請求項1記載の内燃機関のクランクシャフト構造において、
前記凹部(G)は、少なくとも一部が前記クランクシャフトの回転中心軸(Cx)よりクランクピン側に位置することを特徴とする。
請求項1または請求項2記載の内燃機関のクランクシャフト構造において、
前記凹部(G)は、前記クランクウエブを前記最大圧力直線(P)と交差する方向に直線的に貫通して形成されることを特徴とする。
請求項1または請求項2記載の内燃機関のクランクシャフト構造において、
前記凹部(G)は、前記最大圧力直線(P)と交差する方向に長尺に1つ形成されることを特徴とする。
請求項1または請求項2記載の内燃機関のクランクシャフト構造において、
前記凹部(G)は、前記スラスト受面の外周縁に沿って前記最大圧力直線(P)の両側に円弧状に延びて1つ形成されることを特徴とする。
請求項1または請求項2記載の内燃機関のクランクシャフト構造において、
前記凹部(G)は、前記スラスト受面の外周縁に沿って前記最大圧力直線(P)の両側に円弧状に複数形成されることを特徴とする。
請求項1ないし請求項6のいずれか1項記載の内燃機関のクランクシャフト構造において、
前記内燃機関は、気筒が互いにV字に配置されたV型内燃機関であり、
各気筒のコネクティングロッドがクランクシャフトの共通のクランクピンに連結されることを特徴とする。
前記凹部(G)の容積が大きい程、クランクシャフトの第2給油路(32,62)より凹部(G)側の体積が減少して引っ張り力も圧縮力も作用しない応力中立面は凹部(G)から離れる位置に変位することを考慮して、第1給油路(31,61)からクランクアーム部内を通ってクランクピン内に向かって直線的に延びる第2給油路(32,62)を、凹部(G)の容積が大きい程凹部(G)から離れる位置すなわち引っ張りも圧縮も受けない応力中立面上に形成することができ、第2給油路(32,62)に応力を殆ど生じさせずにできるだけ形状を維持して破断等を防止することができる。
また、凹部(G)はクランクウエブを直線的に貫通して形成されるので、鍛造成型時に凹部(G)を形成することが容易である。
本実施形態に係る内燃機関1は、V型4気筒の4ストローク内燃機関であり、図1は、同内燃機関1の一部断面図である。
なお、本明細書の説明において、前後左右の向きは、自動二輪車の直進方向を前方とする車両の通常の基準に従うものとする。
シリンダブロック3はクランクケース2とともにクランク室を構成する部分から前後斜め上方に前バンクシリンダ部3F,後バンクシリンダ部3Rが延出し、前後バンクシリンダ部3F,3Rの上に前後シリンダヘッド4F,4Rがそれぞれ重ねられ、さらにその上を前後シリンダヘッドカバー5F,5Rが覆っている。
このV型4気筒内燃機関の場合、左右のクランクピン23,23のクランク角度位置は同じである。
すなわち、クランク軸方向視で左右のクランクピン23,23は重なる。
左右のクランクピン23,23のそれぞれに前コネクティングロッド8Fの大端8Fbと後コネクティングロッド8Rの大端8Rbが、左右に並んでメタルベアリング9,9を介して回動自在に嵌合している。
すなわち、同一のクランクピン23に前コネクティングロッド8Fと後コネクティングロッド8Rが2つとも連結される。
クランクピン23のクランクピン中心軸Cyを中心として円環状に形成されるスラスト受面21sの外周縁は、クランクシャフト中心軸Cxに近接する位置にある(図5参照)。
凹部Gは、クランクアーム部21aのカウンタウエイト部21wとの連結部をクランクシャフト中心軸Cxとクランクピン中心軸Cyを結ぶ直線に直交する方向に指向して直線的に溝状をなして貫通している。
クランクシャフト20の縦断面図である図4を参照して、前後のクランクジャーナル22,22には軸心に、前後両側から潤滑油を採り入れる第1給油路31,31が形成されており、第1給油路31,31からクランクアーム部21a,21a内を通ってクランクピン23内に第2給油路32,32が斜めに延びて形成されている。
そして、クランクピン23内の大径第2給油路32b,32bに直交して第3給油路33,33が穿孔されて、第3給油路33,33は両端がクランクピン23の外周面に開口して潤滑油の吐出口としてメタルベアリング9の内側に潤滑油を供給する。
クランクピン23からクランクアーム部21aにかけて連続する隅部Aは、内燃機関の燃焼時にクランクピン23にかかる圧力により応力が集中する部位であり、本願発明者による凹部Gを隅部Aに近づければ近づける程、隅部Aに生じる応力を分散して緩和する効果が増大するという解析結果に基づいて、直線溝状をなす凹部Gを、隅部Aにより近づけるために、スラスト受面21sを一部切り欠いてまで接近した位置に形成している。
図2は、前バンクシリンダ部3Fの右気筒の燃焼行程において膨張圧力が最大となり、前コネクティングロッド8Fを介してクランクピン23に最大圧力が加わった時の状態を示している。
前後バンクシリンダ部3F,3Rの各膨張圧力の最大圧力が作用するいずれの場合も、最大圧力直線Pとクランクウエブ21との位置関係は同じなるように点火時期は設定されており、よって最大圧力直線P上に凹部Gが同じ位置関係で位置し、いずれの最大圧力時にも応力の集中を緩和することができ、少ない構成でクランクシャフト20の耐久性を向上することができる。
応力中立面より隅部A側に凹部Gがあり、応力中立面より隅部A側の体積が凹部Gにより減少している分、通常凹部Gが存在しないクランクシャフトに比べて応力中立面は凹部Gから離れた位置にある。
したがって、小径第2給油路32は、引っ張り力も圧縮力も作用しない応力中立面にあるので、小径第2給油路32aには応力が殆ど生じないため、小径第2給油路32aの形状が維持されて破断等を防止することができる。
また、小径第2給油路32の内径を小径に形成することで、応力中立面周囲の体積を増加させてクランクアーム部21aの剛性を向上させることができ、応力による変形を抑制することができる。
また、凹部Gはクランクウエブ21を直線的に貫通して形成されるので、鍛造成型時に凹部Gを形成することが容易である。
本クランクシャフト40は、前記第1の実施形態に係るクランクシャフト20のうちクランクウエブを変形したものである。
凹部Gは、クランクピン43からクランクアーム部41aにかけて連続する隅部Aの近傍であってスラスト受面41sを一部切り欠く程にクランクピン43に近い位置にある。
本クランクシャフト50は、クランクウエブ51の形状と給油路の構造が前記実施の形態と異なる例である。
本クランクシャフト50は、V型4気筒内燃機関に用いられるもので、相対向させたクランクウエブ51,51のクランクアーム部51a,51a間をクランクピン53が連結して一体に形成された一体式のクランクシャフト50であり、クランクピン53とその両側のクランクウエブ51,51の組み合わせを、2組前後に配して共通のクランクジャーナル52で一体に連結して形成されている。
クランクピン53に最大圧力が加わるクランク角度の時におけるピストンピン中心軸Czとクランクピン中心軸Cyとを結ぶ最大圧力直線Pが通る側に、凹部Gは片寄って形成され、最大圧力直線P上にある。
第2給油路62,62および連結給油路62c,62cに直交して第3給油路63,63が穿孔されて、第3給油路63,63は両端がクランクピン53の外周面に開口して潤滑油の吐出口としてクランクピンとコネクティングロッドの大端との連結部に潤滑油を供給する。
したがって、第2給油路62は、引っ張り力も圧縮力も作用しない応力中立面にあるので、第2給油路62には応力が殆ど生じないため、第2給油路62の形状が維持されて破断等を防止することができる。
内燃機関の燃焼時にクランクピン53にかかる圧力により応力が集中するクランクピン73からクランクアーム部71aにかけて連続する隅部Aが円弧状に存在するので、凹部Gは隅部Aに沿って近接してスラスト受面71sを一部切り欠いて円弧状に形成されることになり、隅部Aの必要な範囲を隅部Aに近接した円弧状の凹部Gが効率良くカバーして応力を効果的に分散し、かつ隅部Aに生じる最大の応力集中も、凹部Gが最大圧力直線P上にあることにより緩和され、クランクシャフト50の耐久性を向上させることができる。
但し、凹部Gは、最大圧力直線P上にあるようにする。
内燃機関の燃焼時にクランクピン93にかかる圧力により応力が集中する隅部Aの必要な範囲を隅部Aに近接した凹部Gが円弧状に効率良くカバーして常時応力の分散を図ることができるとともに、最大の応力集中も、凹部Gが最大圧力直線P上にあることにより効果的に緩和され、クランクシャフト90の耐久性を向上させることができる。
クランクシャフト中心軸Cxとクランクピン中心軸Cyとを結ぶ直線上に円形の凹部G1が形成され、同直線より一方の側に片寄って円弧状の凹部G2が形成されており、円弧状の凹部G2は最大圧力直線Pが通る側に片寄って位置して最大圧力直線P上にある。
クランクシャフト中心軸Cxとクランクピン中心軸Cyとを結ぶ直線上に円弧状の凹部G1が形成され、同直線の両側にそれぞれ円弧状の凹部G2,G3が形成されている。
一方の側に片寄った凹部G2は、最大圧力直線P上にある。
Cx…クランクシャフト中心軸、Cy…クランクピン中心軸、Cz…ピストンピン中心軸、
20…クランクシャフト、21…クランクウエブ、21a…クランクアーム部、21w…カウンタウエイト部、21s…スラスト受面、22…クランクジャーナル、23…クランクピン、
31…第1給油路、32…第2給油路、32…第2給油路、32a…小径第2給油路、32b…大径第2給油路、33…第3給油路、
40…クランクシャフト、41…クランクウエブ、41a…クランクアーム部、41w…カウンタウエイト部、41s…スラスト受面、43…クランクピン、
50…クランクシャフト、51…クランクウエブ、51a…クランクアーム部、51w…カウンタウエイト部、51s…スラスト受面、52…クランクジャーナル、53…クランクピン、
61…第1給油路、62…第2給油路、63…連結給油路、64…第3給油路、
70…クランクシャフト、71…クランクウエブ、71a…クランクアーム部、71w…カウンタウエイト部、71s…スラスト受面、72…クランクジャーナル、73…クランクピン、
80…クランクシャフト、81…クランクウエブ、81a…クランクアーム部、81w…カウンタウエイト部、81s…スラスト受面、82…クランクジャーナル、83…クランクピン、
90…クランクシャフト、91…クランクウエブ、91a…クランクアーム部、91w…カウンタウエイト部、91s…スラスト受面、92…クランクジャーナル、93…クランクピン、
100…クランクシャフト、101…クランクウエブ、101a…クランクアーム部、101w…カウンタウエイト部、101s…スラスト受面、102…クランクジャーナル、103…クランクピン、
110…クランクシャフト、111…クランクウエブ、111a…クランクアーム部、111w…カウンタウエイト部、111s…スラスト受面、112…クランクジャーナル、113…クランクピン。
Claims (7)
- クランクアーム部に連続してカウンタウエイト部が形成されたクランクウエブが回転中心軸にクランクジャーナルを突出形成するとともに、相対向させたクランクウエブのクランクアーム部間をクランクピンが連結して一体に形成された一体式のクランクシャフトであって、
前記クランクアーム部における前記クランクピンの付け根の周囲に環状に膨出してコネクティングロッドの軸方向の移動を規制するスラスト受面が形成されたクランクシャフトにおける内燃機関のクランクシャフト構造において、
相対向するクランクウエブの対向面におけるクランクピンからクランクアームにかけて連続する隅部(A)の近傍であって前記スラスト受面を一部切り欠く程に前記クランクピンに近い位置、かつ前記クランクジャーナルの中心軸に少なくとも一部が重なるように凹部(G)が形成され、
前記クランクジャーナルの中心軸に形成される第1給油路(31,61)と、前記第1給油路(31,61)の前記クランクジャーナルの中心軸から外方に離間した位置から前記クランクアーム部内を斜めに通って前記クランクピン内に延びる第2給油路(32,62)と、前記第2給油路(32,62)に直交して延び前記クランクピンの外周面に開口する第3給油路(33,63)とからなる油路構造が前記クランクシャフト内に形成され、
前記第2給油路(32,62)は、前記凹部Gから離れた応力中立面上に位置するように形成され、
前記凹部(G)は、少なくとも燃焼行程における最大圧力がコネクティングロッドを介してクランクピンに加わるクランク角度の時のピストンピンの中心軸(Cz)とクランクピンの中心軸(Cy)とを結ぶ最大圧力直線(P)上に形成されることを特徴とする内燃機関のクランクシャフト構造。 - 前記凹部(G)は、少なくとも一部が前記クランクシャフトの回転中心軸(Cx)よりクランクピン側に位置することを特徴とする請求項1記載の内燃機関のクランクシャフト構造。
- 前記凹部(G)は、前記クランクウエブを前記最大圧力直線(P)と交差する方向に直線的に貫通して形成されることを特徴とする請求項1または請求項2記載の内燃機関のクランクシャフト構造。
- 前記凹部(G)は、前記最大圧力直線(P)と交差する方向に長尺に1つ形成されることを特徴とする請求項1または請求項2記載の内燃機関のクランクシャフト構造。
- 前記凹部(G)は、前記スラスト受面の外周縁に沿って前記最大圧力直線(P)の両側に円弧状に延びて1つ形成されることを特徴とする請求項1または請求項2記載の内燃機関のクランクシャフト構造。
- 前記凹部(G)は、前記スラスト受面の外周縁に沿って前記最大圧力直線(P)の両側に円弧状に複数形成されることを特徴とする請求項1または請求項2記載の内燃機関のクランクシャフト構造。
- 前記内燃機関は、気筒が互いにV字に配置されたV型内燃機関であり、
各気筒のコネクティングロッドがクランクシャフトの共通のクランクピンに連結されることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項記載の内燃機関のクランクシャフト構造。
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