特許文献1は、上述のように、凸レンズにより光源像を結像して、この光源像を投射レンズで投影している。また、特に特許文献1は、光源として白色発光ダイオード(半導体光源)を採用している例を開示している。
発光ダイオードの発光面は、均一に発光している訳ではない。発光ダイオードの発光面は、電極などのパターンにより輝度ムラが生じている。このため、凸レンズによって光源像を形成すると、この輝度ムラがそのまま投影レンズによって投影されて、照度ムラが生じる。
また、発光ダイオードは、一般的に、発光面の形状が正方形形状又は円形形状である。このため、凸レンズによって光源像を形成すると、発光面の形状の境界線はそのまま投影レンズによって投影される。そして、配光パターンを形成する際に、配光ムラが生じる。
また、特許文献1のように、1つの凸レンズで光源像を形成する場合には、収差の発生による配光ムラが生じる場合がある。
これらの配光ムラは、単に、高い光度の像に低い光度の像を重ね合わせるだけでは十分に解消されない。特許文献1では、例えば、リフレクタからの反射光によってロービーム用の配光パターンの全体形状を形成した上で、発光チップの像を、凸レンズによってシェードの上端縁の上方近傍において略結像させ、これを投影レンズによって前方に投影している。
以下に示す実施の形態では、固体光源を用いながら、セグメント化された光学面を用いて配光ムラを抑えて、高光度領域を形成することができる。「セグメント化された光学面」とは、区分されている光学面のことである。以下の各実施の形態では、区分され光学面は、各々の部分で異なる光学特性を有する
以下に示す実施の形態では、パワーの異なるセグメントに光源からの光を入射させている。そして、各セグメントが形成した複数の像を重ね合わせて、配光パターンの等高線の間隔が、不連続に変化することを抑制している。例えば、1つの光源像の端部を隣接する他の光源像と重ねることで、光源像の端部に発生する配光ムラを低減することができる。また、パワーの異なるセグメントを用いることで、配光パターン内の高光度領域と配光パターンの全体の形状とを形成している。
また、各々セグメントは、1つのレンズに比べて、口径が小さい。このため、1つの凸レンズで光源像を形成する場合に比べて、セグメント化された光学面は、収差の発生を抑えることができる。そして、配光ムラは抑制される。
なお、投射レンズは、投影レンズと同じ意味で用いている。ここで、「投射」とは、光線を投げかけること。なお、「投影」とは、像を映しだすことである。ここでは、投射レンズ8が、光源像又は配光パターンを照射面9上に映しだしている。
近年において、二酸化炭素(CO2)の排出と燃料の消費とを抑えるといった環境への負荷を軽減する観点から、例えば、車両の省エネルギー化が望まれている。これに伴い、車両用の前照灯装置においても小型化、軽量化及び省電力化が求められている。そこで、車両用の前照灯装置の光源として、半導体光源の採用が望まれている。半導体光源は、従来のハロゲンバルブ(ランプ光源)に比べて発光効率の高い。
「半導体光源」とは、例えば、発光ダイオード(LED(Light Emitting Diode))又はレーザーダイオード(LD(Laser Diode))などである。
従来のランプ光源(管球光源)は、半導体光源に比べて指向性の低い光源である。ランプ光源としては、白熱電球、ハロゲンランプ又は蛍光ランプ等が挙げられる。このため、ランプ光源はリフレクタ(反射鏡など)を用いて、放射した光に指向性を持たせている。一方、半導体光源は、少なくとも一つの発光面を備えており、光は発光面側に放射される。
このように、半導体光源はランプ光源と発光特性が異なる。このため、半導体光源は、リフレクタ(反射鏡など)を用いた従来の光学系ではなく、半導体光源に適した光学系を用いることが望ましい。
例えば、リフレクタは、点光源のランプに適している。このため、LEDなどの光源にリフレクタを用いた場合には、光源が一点ではなく多数になり、無駄な光が多くなる。そして、リフレクタで正しく反射される光が少なくなり、無駄な光がグレア光となる。これは、配光パターンの領域内での光量が減少する原因となる。
なお、上述の半導体光源は、固体光源の一種である。固体光源としては、例えば、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)又は平面上に塗布された蛍光体に励起光を照射して、発光させる光源等が挙げられる。これらの固体光源にも、半導体光源と同様の光学系を用いることが望ましい。
このように、管球光源は含まず、指向性を持つ光源を「固体光源」とよぶ。
「指向性」とは、光などが空間中に出力されるとき、その強度が方向によって異なる性質である。ここで「指向性を有する」とは、上述のように、発光面の表面側に光が進行して、発光面の裏面側には光が進行しないことをいう。つまり、光源から出射される光の発散角は180度以下となる。
「前照灯装置」とは、輸送機械などに搭載されて、操縦者の視認性及び外部からの被視認性を向上させるために使われる照明装置である。車両用の前照灯装置は、ヘッドランプ又はヘッドライトとも呼ばれる。
以下、車両用の前照灯装置を例として、図面を参照しながら本発明に係る実施の形態の例を説明する。なお、以下の実施の形態の説明においては、説明を容易にするためにXYZ座標を用いて説明する。
車両の左右方向をX軸方向とする。車両前方に対して左側を+X軸方向とし、車両前方に対して右側を−X軸方向とする。ここで、「前方」とは、車両の進行方向をいう。つまり、「前方」とは、前照灯装置が光を照射する方向である。
車両の上下方向をY軸方向とする。上側を+Y軸方向とし、下側を−Y軸方向とする。「上側」とは空の方向であり、「下側」とは地面(路面等)の方向である。
車両の進行方向をZ軸方向とする。進行方向を+Z軸方向とし、反対の方向を−Z軸方向とする。+Z軸方向を「前方」とよび、−Z軸方向を「後方」とよぶ。つまり、+Z軸方向は前照灯装置が光を照射する方向である。
上述のように、以下の実施の形態では、Z−X平面は、路面に平行な面とした。これは、通常考える場合には、路面は「水平面」であるからである。このため、Z−X平面は、「水平面」として考えている。「水平面」とは、重力の方向に直角な平面である。
しかし、路面は、車両の走行方向に対しては傾くことがある。つまり、登り坂又は下り坂などである。これらの場合には、「水平面」は、路面に平行な面として考える。つまり、「水平面」は、重力の方向に対して垂直な平面ではない。
一方、一般的な路面が車両の走行方向に対して左右方向に傾いていることは稀である。「左右方向」とは、走路の幅方向である。これらの場合には、「水平面」は、重力方向に対して直角な面として考える。例えば、路面が左右方向に傾き、車両が路面の左右方向に対して垂直であったとしても、車両が「水平面」に対して左右方向に傾いた状態と同等として考える。
なお、以下の説明を簡単にするために、「水平面」は、重力方向に垂直な平面として説明する。つまり、Z−X平面は、重力方向に垂直な平面として説明する。
また、以下の実施の形態で示す光源は、指向性を持つ光源(固体光源)として説明している。上述のように、主な例としては、発光ダイオード又はレーザーダイオード等の半導体光源である。また、光源は、有機エレクトロルミネッセンス光源又は平面上に塗布された蛍光体に励起光を照射して発光させる光源等も含む。
実施の形態で固体光源を例として採用しているのは、管球光源を用いた場合には、省エネルギー化の要望又は装置の小型化の要望に応え難いからである。しかし、省エネルギー化の要望よりも光利用効率を向上させるという要望を重視する場合には、光源は管球光源であってもよい。つまり、省エネルギー化の要望又は装置の小型化の要望が無い場合には、光源は管球光源であってもよい。
本発明は、車両用の前照灯装置のロービーム及びハイビームなどに適用される。また、本発明は、自動二輪車用の前照灯装置のロービーム及びハイビームなどに適用される。また、本発明は、三輪又は四輪等のその他の車両用の前照灯装置についても適用される。
しかし、以下の説明では、自動二輪車用の前照灯装置のロービームの配光パターンを形成する場合を例として説明する。自動二輪車用の前照灯装置のロービームの配光パターンは、カットオフラインが車両の左右方向(X軸方向)に水平な直線である。また、カットオフラインの下側(配光パターンの内側)の領域が最も明るい。
「配光」とは、光源の空間に対する光度分布をいう。つまり、光源から出る光の空間的分布である。また、「光度」とは、発光体の放つ光の強さの程度を示すもので、ある方向の微小な立体角内を通る光束を、その微小立体角で割ったものである。つまり、「光度」とは、光源からどのくらい強い光が出ているかを表す物理量である。また、「照度」とは、平面状の物体に照射された光の明るさを表す物理量のことである。単位面積あたりに照射された光束に等しい。
また、「配光パターン」とは、光源から放射される光の方向に起因する光束の形状及び光の強度分布(光度分布)を示している。「配光パターン」を以下に示す照射面9上での照度パターンの意味としても使用する。つまり、照射面9上での光の照射される形状及び照度分布を示している。また、「配光分布」とは、光源から放射される光の方向に対する光の強度分布(光度分布)である。「配光分布」を以下に示す照射面9上での照度分布の意味としても使用する。
このため、以下の実施の形態において、例えば、共役面PC上に形成される像(配光パターン)に関しても光度分布として説明している。
そして、道路交通規則では、対向車を眩惑させないために、配光パターンの上側の光の境界線(カットオフライン)は明瞭であることが要求される。つまり、カットオフラインの上側(配光パターンの外側)が暗く、カットオフラインの下側(配光パターンの内側)が明るい明瞭なカットオフラインが要求される。
このような明瞭なカットオフラインを実現するためには、カットオフラインに大きな色収差又はぼやけ等が生じてはならない。「カットオフラインにぼやけが生じる」とは、カットオフラインが不鮮明になることである。
車両用の前照灯装置は、これらの複雑な配光パターンを実現する必要がある。複雑な配光パターンを実現するためには、集光レンズ等を用いて局所的に照度を高める必要がある。
「カットオフライン」とは、前照灯装置の光を壁またはスクリーンに照射した場合にできる光の明暗の区切り線のことで、配光パターンの上側の区切り線のことである。つまり、配光パターンの上側の光の明部と暗部との境界線のことである。配光パターンの上側の光の明るい領域(配光パターンの内側)と暗い領域(配光パターンの外側)との境界線のことである。
カットオフラインは、すれ違い用の前照灯装置の照射方向を調節する際に用いられる用語である。すれ違い用の前照灯装置は、ロービームとも呼ばれる。
また、「ロービーム」とは、下向きのビームで、対向車とのすれ違いの際などに使用される。通常、ロービームでは、前方40m程度を照らす。また、「上下方向」とは、地面(路面)に対して垂直の方向である。
なお、上記の壁またはスクリーン上の配光パターンを照度分布として説明している。このため、最も明るい領域を「高照度領域」と呼んでいる。一方、配光パターンを光度分布と捉えると、配光パターンの最も明るい領域は「高光度領域」となる。例えば、後述の共役面PC上の配光パターンの高光度領域は、照射面9上の配光パターンの高照度領域に対応している。
また、他の道路交通規則の例として、歩行者の識別及び標識の識別のために、前照灯装置は、歩道側の照射を立ち上げる「立ち上がりライン」を有さなければならない。これは、対向車を幻惑させずに、ドライバーが歩道側の人または標識等を視認するためである。ここで、「立ち上がりライン」とは、ロービームの対向車側が水平であり、歩道側は対向車側に対して斜めに立ち上がった配光パターンの形状を示している。
上記の壁またはスクリーンを以下の実施の形態では照射面9として説明している。照射面9は、車両の前方の所定の位置に設定される仮想の面である。照射面9は、X−Y平面に平行な面である。つまり、照射面9は、前照灯装置が光を照射する方向(+Z軸方向)に対して垂直な面である。車両の前方の所定の位置は、前照灯装置の光度又は照度を計測する位置である。車両の前方の所定の位置は、道路交通規則等で規定されている。例えば、欧州では、UNECE(United Nations Economic Commission for Europe)が定める自動車用の前照灯装置の光度の計測位置は、光源から25mの位置である。日本では、日本工業標準調査会(JIS)が定める光度の計測位置は、光源から10mの位置である。
また、四輪の車両は、例えば、通常の四輪の自動車等である。また、三輪の車両は、例えば、ジャイロと呼ばれる自動三輪車である。「ジャイロと呼ばれる自動三輪車」とは、前輪が一輪で、後輪が一軸二輪の三輪でできたスクーターである。日本では原動機付自転車に該当する。車体の中央付近に回転軸を持ち、前輪及び運転席を含む車体のほとんどを左右方向に傾けることができる。この機構によって、自動二輪車と同様に旋回の際に内側へ重心を移動することができる。
実施の形態1.
図1(A)及び図1(B)は、実施の形態1に係る前照灯モジュール100の構成を示す構成図である。図1(A)は、車両前方に対して右側(−X軸方向)から見た図である。図1(B)は、上側(+Y軸方向)から見た図である。
図2(A)及び図2(B)は、実施の形態1に係る前照灯モジュール100の構成を示す構成図である。図2(A)は、車両前方に対して右側(−X軸方向)から見た図である。図2(B)は、上側(+Y軸方向)から見た図である。図2は、図1に対して、集光光学素子2の形状が異なる例を示している。
図3は、配光制御素子4の斜視図である。
図1に示すように、実施の形態1に係る前照灯モジュール100は、光源1、集光光学素子2、配光制御素子4、及び投射レンズ8を備える。実施の形態1に係る前照灯モジュール100は、遮光板5を備えることができる。なお、後述するように、配光制御素子4が集光機能を備える場合には、集光光学素子2を省くことができる。また、配光制御素子4と集光光学素子2との両方が集光機能を備えるもともできる。また、前照灯モジュール100は、集光光学素子2を光源1に取り付けて一体とした場合を含む。
実施の形態1では、例えば、光源1の光軸Cs、集光光学素子2の光軸C及び投射レンズ8の光軸Cpが一致している。実施の形態1では、例えば、集光光学素子2の光軸Cは、光源1の光軸Csと一致している。実施の形態1では、例えば、集光光学素子2の光軸Cは、投射レンズ8の光軸Cpと一致している。
<光源1>
光源1は、発光面11を備える。光源1は、発光面11から光を出射する。光源1は、例えば、発光面11から車両の前方を照明するための光を出射する。
光源1は、集光光学素子2の−Z軸方向側に位置している。
図1では、光源1は、+Z軸方向に光を出射している。「出射」とは、ある方向に向けて光を発することである。
光源1は、その種類を特に限定していない。しかし、上述の説明の通り以下の説明では、光源1がLED(発光ダイオード)であるとして説明する。以下において、発光ダイオードをLEDとよぶ。
光源1の発光面11の中心から、発光面11に垂直に伸びる軸を光源1の光軸Csとする。図3では、光源1の光軸Csは、Z軸に平行である。
<集光光学素子2>
集光光学素子2は、光源1から出射された光を集光光に変換する。集光光学素子2は、光源1から出射された光を集光する。
集光光学素子2は、光源1の+Z軸側(前方)に位置している。また、集光光学素子2は、配光制御素子4の−Z軸側(後方)に位置している。
集光光学素子2は、光源1から発せられた光を入射する。
「入射」とは、例えば、集光光学素子2を例とすると、集光光学素子2の内部に光が入ることである。
「入射」とは、例えば、光が光の入射面に達することを含む。図2では、光が集光光学素子2の入射面211,212に達することである。つまり、集光光学素子2を例とすると、「入射」とは、光が集光光学素子2に到達することを含む。
集光光学素子2は、前方(+Z軸方向)の任意の位置に光を集光させる。集光光学素子2は、集光機能を有する光学素子である。つまり、集光光学素子2は、正のパワーを有する光学素子である。
集光光学素子2の集光位置に関しては、図4及び図5を用いて説明する。
図1では、集光光学素子2は、正のパワーを有する凸レンズとして示している。また、図2では、集光光学素子2は、光の屈折及び光の反射を利用した光学素子として示している。
また、実施の形態1で示す集光光学素子2は、例えば、内部が屈折材で満たされている。
図1及び図2では、集光光学素子2は、1つの光学素子で構成されているが、複数の光学素子を用いることもできる。しかし、複数の光学素子を用いる場合には、各光学素子の位置決め精度を確保するなど、製造性を低下させることになる。
光源1及び集光光学素子2は、配光制御素子4の後方(−Z軸方向側)に配置されている。光源1は、配光制御素子4の後方(−Z軸方向側)に配置されている。集光光学素子2は、配光制御素子4の後方(−Z軸方向側)に配置されている。
図1及び図2では、光源1の光軸Csは、集光光学素子2の光軸Cと一致している。
以下において、図2に示す集光光学素子2を例として説明する。
図2では、集光光学素子2は、例えば、入射面211,212、反射面22及び出射面231,232を備える。
集光光学素子2は、光源1の直後に配置される。上述の「後方」とは異なり、ここで、「後」とは、光源1から出射された光の進行方向側のことである。ここでは、「直後」なので、発光面11から出射した光は、すぐに集光光学素子2に入射する。
LEDは、ランバート配光の光を出射する。「ランバート配光」とは、発光面の輝度が見る方向によらず一定となる配光である。つまり、LEDの配光の指向性は広い。このため、光源1と集光光学素子2との距離を短くすることで、より多くの光を集光光学素子2に入射させることができる。
集光光学素子2は、例えば、透明樹脂、硝子又はシリコーン材で製作されている。集光光学素子2の材料は、透過性を有すれば材質は問わず、透明な樹脂等でも構わない。つまり、光学素子2の材料は、透過性を有すればよい。しかし、光利用効率の観点から、集光光学素子2の材料は、透過性の高い材料が適している。また、集光光学素子2が、光源1の直後に配置されることから、集光光学素子2の材料は、耐熱性に優れた材料が好ましい。
「透過」とは、光などが物体の内部を通り抜けることである
入射面211は、集光光学素子2の中心部分に形成された入射面である。「集光レンズ2の中心部分」とは、光軸Cが入射面211上に交点を有していることである。つまり、光軸Cは、入射面211上を通っている。
また、入射面211は、例えば、正のパワーを有する凸面形状である。入射面211の凸面形状は、−Z軸方向に凸の形状をしている。入射面211は、例えば、光軸Cを回転軸とする回転対称の形状をしている。
なお、レンズにおいて、パワーは、「屈折力」ともよばれる。
入射面212は、例えば、楕円の長軸又は短軸を回転軸として回転させた回転体の表面形状の一部をしている。楕円の長軸又は短軸を回転軸として回転させた回転体を「回転楕円体」という。この回転楕円体の回転軸は、光軸Cと一致している。入射面212は、回転楕円体の回転軸方向の両端を切断した表面形状をしている。つまり、入射面212は、筒形状をしている。
入射面212の筒形状の一端(+Z軸方向側の端)は、入射面211の外周に接続されている。入射面212の筒形状は、入射面211に対して光源1側(−Z軸方向)に形成されている。入射面212の筒形状は、入射面211に対して後方に形成されている。つまり、入射面212の筒形状は、入射面211に対して光源1側に形成されている。
反射面22は、X−Y平面上の断面形状が、例えば、光軸Cを中心とした円形状をした筒形状をしている。反射面22の筒形状は、−Z軸方向側の端のX−Y平面上の円形状の直径が、+Z軸方向側の端のX−Y平面上の円形状の直径よりも小さい。つまり、反射面22は、−Z軸方向から+Z軸方向に向けて直径が大きくなっている。
例えば、反射面22は、円錐台の側面の形状をしている。中心軸を含む面上での円錐台の側面の形状は直線形状をしている。しかし、光軸Cを含む面上での反射面22の形状は曲線形状であっても構わない。「光軸Cを含む面」とは、面上に光軸Cの線を描けることである。
反射面22の筒形状の一端(−Z軸方向側の端)は、入射面212の筒形状の他端(−Z軸方向側の端)に接続している。つまり、反射面22は、入射面212の外周側に位置している。
出射面231は、入射面211の+Z軸方向側に位置している。出射面231は、例えば、正のパワーを有する凸面形状である。出射面231の凸面形状は、+Z軸方向に凸の形状をしている。光軸Cは、出射面231上に交点を有している。つまり、光軸Cは、入射面231上を通っている。出射面213は、例えば、光軸Cを回転軸とする回転対称の形状をしている。
入射面211と出射面231とで、集光機能を有している。つまり、入射面211と出射面231とで、正のパワーを有する。この場合には、例えば、入射面211または出射面231の一方が、負のパワーであってもよい。
出射面232は、出射面231の外周側に位置している。出射面232は、例えば、X−Y平面に平行な平面形状をしている。つまり、出射面232は、例えば、光軸Cに垂直な平面に平行な平面形状をしている。出射面232の内周及び外周は、円形状をしている。
出射面232の内周は、出射面231の外周に接続している。出射面232の外周は、反射面22の筒形状の他端(+Z軸方向側の端)に接続している。
発光面11から出射された光のうち、出射角の小さい光線は、入射面211に入射する。出射角の小さい光線は、例えば、発散角が60度以内である。出射角度の小さい光線は、入射面211から入射して、出射面231から出射する。出射面231から出射する出射角度の小さい光線は、入射面211または出射面231によって、集光される。出射面231から出射した出射角の小さい光線は、集光光学素子2の前方(+Z軸方向)の任意の位置に集光する。上述のように、集光位置に関しては後述する。
「発散角」とは、光の広がる角度である。
発光面11から出射された光のうち、出射角の大きい光線は、入射面212に入射する。出射角の大きい光線は、例えば、発散角が60度よりも大きい。入射面212から入射した光線は、反射面22で反射される。反射面22で反射された光線は、+Z軸方向に進行する。反射面22で反射された光線は、出射面232から出射する。出射面232から出射する出射角の大きい光線は、反射面22によって、集光される。出射面232から出射した出射角の大きい光線は、集光光学素子2の前方(+Z軸方向)の任意の位置に集光する。上述のように、集光位置に関しては後述する。
以下の各実施の形態で説明する集光光学素子2は、一例として、以下の機能を有する光学素子として説明する。
入射面211と出射面231とを透過する光は、屈折によって集光している。一方、入射面212と出射面232とを透過する光は、反射面22での反射によって集光している。つまり、集光光学素子2は、光源1から出射された出射角の小さい光線を屈折によって集光する。また、集光光学素子2は、光源1から出射された出射角の大きい光線を反射によって集光する。
出射面231から出射された光の集光位置には、光源1のパターン(発光面11の形状)と相似形状の像ができる。つまり、出射面231から出射された光の集光位置には、光源1の像が形成される。このため、光源1の発光面11の形状が、投射レンズ8によって投影されることで、配光ムラを生じることがある。
このような場合には、例えば、出射面231から出射された光の集光位置と、出射面232から出射された光の集光位置を異ならせることで、出射面231から出射された光による配光ムラを緩和させることが可能となる。
出射面232から出射された光線の集光位置と、出射面231から出射された集光位置とは、一致する必要はない。例えば、出射面231から出射された光の集光位置よりも、出射面232から出射された光の集光位置の方が、集光光学素子2に近い位置でも良い。
なぜなら、出射面232から出射された光は、光源像を形成しない。このため、出射面231から出射された光で形成される光源像に、出射面232から出射された光を重ねることで、光源像の光度ムラを低減することができる。
なお、実施の形態1では、遮光板5を用いてカットオフライン91を形成しているために、遮光板5で遮光された光は、投射光として利用されない。つまり、出射面231から出射された光の集光位置に形成された光源1の像の半分は、投射光として利用されない。
図2に示す集光光学素子2を用いる場合には、配光制御素子4と併用することで、配光ムラの低減効果を向上させることができる。
また、図1に示すように、集光光学素子2として通常の集光レンズを用いる場合でも、配光制御素子4により配光ムラを低減することができる。
また、実施の形態1においては、集光光学素子2の入射面211,212、反射面22及び出射面231,232の各々は、すべて光軸C中心の回転対称な形状としている。しかし、光源1から出射された光を集光できれば、回転対称な形状に限らない。
例えば、反射面22のX−Y平面上の断面形状を楕円形状にすることで、集光位置における集光スポットも楕円形状にすることができる。そして、前照灯モジュール100は、幅広い配光パターンを生成しやすくなる。
「集光スポット」とは、光が集光した位置での光束の形状である。「集光した位置」とは、出射面から出射された光の光束が最も小さくなる位置である。
また、光源1の発光面11の形状が矩形形状の場合にも、例えば、反射面22のX−Y平面上の断面形状を楕円形状する方が、集光光学素子2を小型にできる。
また、集光光学素子2は全体として正のパワーを有していればよい。入射面211,212、反射面22及び出射面231,232の各々は、それぞれ任意のパワーを有することができる。
なお、上述のように、光源1に管球光源を採用した場合には、集光光学素子として反射鏡を用いることができる。
<配光制御素子4>
配光制御素子4は、光源1の+Z軸方向に位置している。配光制御素子4は、集光光学素子2の+Z軸方向に位置している。配光制御素子4は、遮光板5の−Z軸方向に位置している。また、配光制御素子4は、投射レンズ8の−Z軸方向に位置している。
配光制御素子4は、集光光学素子2から出射された光を入射する。配光制御素子4は、前方(+Z軸方向)に光を出射する。集光光学素子2を用いない場合には、配光制御素子4は、光源1から出射された光を入射する。
図3は、配光制御素子4の斜視図である。図3に示す配光制御素子4は、一例である。
配光制御素子4は、例えば、板状の光学素子である。
配光制御素子4は、例えば、透明樹脂、硝子又はシリコーン材等で製作されている。
配光制御素子4は、スポット配光形成部41及び拡散配光形成部42を備えている。
以下において、「スポット配光」とは、一つの領域を集中的に照らす配光のことである。実施の形態1では、例えば、高照度領域を照らす配光である。
また、「拡散配光」とは、照射領域の全体を照らす配光のことである。拡散配光は、低照度領域を照らす配光である。低照度領域は、スポット配光が照射する高照度領域よりも低い照度の領域である。実施の形態1では、例えば、配光パターンの全体を照らす配光である。
また、「拡散光」とは、拡散された光である。「集光光」とは、集光された光である。つまり、拡散配光形成部42を透過した光の発散角は大きくなる。また、スポット配光形成部41を透過した光の発散角は小さくなる。
配光制御素子4は、共役面PC上に投射光学素子8が投射する配光パターンの配光分布を形成している。投射光学素子8は、配光制御素子4が形成した配光パターンを照射面9上に投影する。投射光学素子8は、共役面PC上に形成された配光パターンを照射面9上に投影する。照射面9上の配光パターンは、共役面PC上の配光パターンと相似形になる。
スポット配光形成部41は、共役面PC上の配光パターンの中に、高光度領域を形成する。拡散配光形成部42は、共役面PC上の配光パターンの中に、低光度領域を形成する。低光度領域は、高光度領域よりも低い光度の領域である。
上述のように、配光制御素子4は、集光光学素子2から出射された集光光の焦点位置を変更している。
図3では、例えば、スポット配光形成部41及び拡散配光形成部42は、配光制御素子4の入射面側に形成されている。つまり、スポット配光形成部41及び拡散配光形成部42は、配光制御素子4の−Z軸方向側の面に形成されている。
図3では、例えば、配光制御素子4は、2つの拡散配光形成部42a,42bを備えている。拡散配光形成部42aは、配光制御素子4の+X軸方向側に位置している。拡散配光形成部42bは、配光制御素子4の−X軸方向側に位置している。
そして、スポット配光形成部41は、2つの拡散配光形成部42a,42bの間に配置されている。スポット配光形成部41は、2つの拡散配光形成部42a,42bの間に位置している。
なお、実施の形態では、スポット配光形成部41と拡散配光形成部42a,42bとは、X軸方向に並べて配置されている。つまり、セグメント化された光学面41,42a,42bは、X軸方向に並べて配置されている。しかし、セグメント化された光学面は、例えば、X−Y平面上に2次元に配置されても構わない。
まず、スポット配光形成部41について説明する。
スポット配光形成部41は、例えば、X軸方向に曲率をもち、Y軸方向に曲率をもたない凸形状のシリンドリカルレンズである。つまり、スポット配光形成部41は、Z−X平面上では入射光を集光させる。一方、スポット配光形成部41は、Y−Z平面上では入射光をそのまま透過する。
シリンドリカルレンズは、円筒の側面の形状の屈折面を持つレンズである。シリンドリカルレンズは、一方向に屈折力を持って光を収束または発散させ、直交する方向では屈折力をもたないレンズである。
凸形状のシリンドリカルレンズに平行に入射した光は、直線上に集光する。図3では、この光が集光する直線は、Y軸に平行である。
図3では、スポット配光形成部41は、水平方向(X軸方向)に正のパワーを有する凸面形状である。つまり、スポット配光形成部41を、Z−X平面と平行な面で切断すると、凸レンズの形状をしている。
スポット配光形成部41が水平方向(X軸方向)に正のパワーを有している場合には、集光光学素子2で集光されてスポット配光形成部41に入射した光は、その発散角が変化する。そして、スポット配光形成部41に入射した光は、スポット配光形成部41を通過した後に、水平方向(X軸方向)にさらに集光する。
光軸Cは、スポット配光形成部41のレンズ面を通っている。図3では、光軸Cは、スポット配光形成部41をZ−X平面と平行な面で切断した場合の凸レンズの光軸と一致している。
または、光源1の光軸Csは、スポット配光形成部41のレンズ面を通っている。
または、光源1から出射された光の中心光線は、スポット配光形成部41のレンズ面を通っている。中心光線は、光源1の発光面11の中心から発せられた光の光束の中心に位置する光線である。各実施の形態では、中心光線は、光源の光軸と一致する例として説明している。また、各実施の形態では、光源の光軸は、集光光学素子の光軸と一致する例として説明している。
次に、拡散配光形成部42について説明する。
拡散配光形成部42は、例えば、X軸方向に曲率をもち、Y軸方向に曲率をもたない凹形状のシリンドリカルレンズである。つまり、拡散配光形成部42は、Z−X平面上では入射光を発散させる。一方、拡散配光形成部42は、Y−Z平面上では入射光をそのまま透過する。
図3では、拡散配光形成部42a,42bは、ともに水平方向(X軸方向)に負のパワーを有する凹面形状である。つまり、拡散配光形成部42を、Z−X平面と平行な面で切断すると、凹レンズの形状をしている。
拡散配光形成部42a,42bが水平方向(X軸方向)に負のパワーを有している場合には、集光光学素子2で集光されて拡散配光形成部42a,42bに入射した光は、その発散角が変化する。そして、拡散配光形成部42a,42bに入射した光は、拡散配光形成部42a,42bを通過した後に、水平方向(X軸方向)に発散する。つまり、拡散配光形成部42a,42bに入射した光は、発散角が大きくなる。
拡散配光形成部42は、スポット配光形成部41の周辺に形成される。
拡散配光形成部42は、集光光学素子2の光軸Cに対して、スポット配光形成部41よりも外側に配置される。または、拡散配光形成部42は、光源1の光軸Csに対して、スポット配光形成部41よりも外側に配置される。または、拡散配光形成部42は、光源1から出射された光の中心光線に対して、スポット配光形成部41よりも外側に配置される。
上述のように、図3では、拡散配光形成部42aは、スポット配光形成部41の+X軸側に配置されている。また、拡散配光形成部42bは、スポット配光形成部41の−X軸側に配置されている。
図3では、拡散配光形成部42a,42bは、スポット配光形成部41に接して配置されている。このため、配光制御素子4に到達した光は、スポット配光形成部41又は拡散配光形成部42のどちらかから配光制御素子4に入射する。つまり、配光制御素子4に到達する光は、スポット配光形成部41又は拡散配光形成部42のどちらかに到達する。
ただし、拡散配光形成部42a,42bは、必ずしも、スポット配光形成部41に接して配置される必要はない。
配光制御素子4は、配光パターン形状形成素子の一例として考えられる。また、配光制御素子4は、集光素子の一例として考えられる。
「配光パターン形状形成素子」とは、配光パターンの形状を形成する素子のことである。
<遮光板5>
次に、遮光板5について説明する。
遮光板5は、配光制御素子4から出射された光の一部を遮光する。遮光板5は、上述のカットオフライン91を形成する。
遮光板5は、照射面9と光学的に共役の位置にある。照射面9は、前照灯モジュール100に対して無限遠の位置に配置されていると考える。このため、共役点は、投射レンズ8の前側の焦点となる。遮光板5は、投射レンズ8の前側の焦点位置に配置される。つまり、共役面PCは、投射レンズ8の光軸Cpに垂直な面である。そして、共役面PCは、投射レンズ8の前側の焦点位置にある。前側の焦点は、光が入射する側の焦点である。実施の形態1では、光は−Z軸方向側から投射レンズ8に入射している。つまり、前側の焦点は、投射レンズ8の−Z軸側の焦点である。
「光学的に共役」とは、1つの点から発した光が他の1つの点に結像する関係のことをいう。従って、遮光板5の+Y軸方向の辺51は、カットオフライン91の形状にすることが好ましい。なぜなら、遮光板5は、照射面9と光学的に共役の位置にある。このため、遮光板5(共役面PC)の位置での配光パターンは、照射面9上での配光パターンと相似形になるからである。なお、遮光板5の位置での配光パターンは、上下方向および左右方向が反転して、照射面9上に投影される。
なお、例えば、投射レンズ8がトロイダルレンズであった場合には、遮光板5(共役面PC)の位置での配光パターンに対して、照射面9上での配光パターンは、縦方向と横方向との比率が異なる。つまり、照射面9上での配光パターンは、遮光板5(共役面PC)の位置での配光パターンを基にして形成される。
<投射レンズ8>
投射レンズ8は、遮光板5の+Z軸方向に位置している。
投射レンズ8は、正のパワーを有するレンズである。遮光板5(共役面PC)の位置に形成された配光パターンの像は、投射レンズ8によって車両の前方の照射面9に拡大して投影される。
投射レンズ8は、遮光板5の位置に形成された配光パターンの像を拡大して投射する「投射光学素子」である。実施の形態では、一例として、この投射光学素子を投射レンズ8として説明する。
投射レンズ8は、1枚のレンズで構成されてもよい。また、投射レンズ8は、複数のレンズを用いて構成されてもよい。ただし、レンズの枚数が増加すると、光利用効率は低下する。このため、投射レンズ8は、1枚又は2枚で構成されることが望ましい。
投射レンズ8は、透明樹脂等で製作されている。また、投射レンズ8の材質は、透明樹脂に限らず、透光性を有する屈折材であれば構わない。これは、上述の集光光学素子2または配光制御素子4においても同様である。「透光性」とは、光を透過する性質ことである。
また、投射レンズ8は、その光軸Cpを集光光学素子2の光軸Cよりも下側(−Y軸方向)に位置するように配置されることが望ましい。なお、図2では、説明を簡単にするために、集光光学素子2の光軸Cと投射レンズ8の光軸Cpとを一致させている。
なぜならば、自動車用のロービームに求められる所定の配光パターンは、対向車側のカットオフラインが水平線よりもわずかに下に位置させる必要があるためである。投射レンズ8の光軸Cpを集光光学素子2の光軸Cよりも下側(−Y軸方向)に配置すれば、照射面9上の配光パターンを下側(−Y軸方向)の位置に配置することができる。
投射レンズ8の光軸Cpは、レンズの両面の曲率中心を結ぶ線である。投射レンズ8の光軸Cpは、投射レンズ8の面頂点を通る法線である。図1及び図2の場合では、投射レンズ8の光軸Cpは、投射レンズ8の面頂点を通るZ軸に平行な軸となる。
投射レンズ8の面頂点がX―Y平面上でX軸方向又はY軸方向に平行移動する場合には、投射レンズ8の面頂点の法線もX―Y平面上でX軸方向又はY軸方向に平行移動する。このため、同様に、投射レンズ8の光軸CpもX―Y平面上でX軸方向又はY軸方向に平行移動する。また、投射レンズ8が、X−Y平面に対して傾斜する場合には、投射レンズ8の面頂点の法線もX−Y平面に対して傾斜する。このため、同様に、投射レンズ8の光軸CpもX−Y平面に対して傾斜する。
図1及び図2では、例えば、投射レンズ8の光軸Cpは、光源1の光軸及び集光レンズ2の光軸Cと一致している。また、光源1の光軸Csは、発光面11の中心位置での法線と一致している。
また、図1及び図2では、遮光板5の+Y軸方向側の辺51のY軸方向の位置と、投射レンズ8の光軸CpのY軸方向の位置とが一致するように、投射レンズ8を配置している。つまり、図1及び図2では、遮光板5の+Y軸方向側の辺51は、投射レンズ8の光軸Cpと交差している。図1及び図2では、遮光板5の+Y軸方向側の辺51は、投射レンズ8の光軸Cpと直交している。
なお、遮光板5の+Y軸方向側の辺51が直線でない場合には、例えば、遮光板5の+Y軸方向側の辺51と投射レンズ8の光軸Cpとの交わる位置(点Q)でのX−Y平面に平行な面が、照射面9と光学的に共役の関係にある。つまり、点Qを含みX−Y平面に平行な面を、照射面9と光学的に共役の位置に配置できる。点Qは、辺51と光軸Cpとが交わる点である。
このように配置することで、照射面9上のカットオフライン91のY軸方向の位置を光源1の中心のY軸方向の位置に一致させることができる。つまり、辺51と光軸Cpとが交わる配置することで、照射面9上のカットオフライン91のY軸方向の位置を光源1の中心のY軸方向の位置に一致させることができる。
なお、必ずしも、遮光板5の+Y軸方向側の辺51と投射レンズ8の光軸Cpとは交わる必要はない。つまり、点Qの光軸Cp方向(Z軸方向)の位置が、投射レンズ8の光軸Cp方向(Z軸方向)の焦点の位置と一致すればよい。
もちろん、前照灯モジュール100を傾けて車両に搭載する場合には、その傾きに応じて投射レンズ8を配置する位置を変更してもよい。しかし、投射レンズ8の位置を調整する方が、前照灯モジュール100全体を調整するよりも小さい部品の調整であるため、容易に調整することができる。また、前照灯モジュール100の単体で調整することができる。
<光線の挙動>
図2に示すように、集光光学素子2によって集光された光は、スポット配光形成部41、拡散配光形成部42a又は拡散配光形成部42bのいずれかから配光制御素子4に入射する。
スポット配光形成部41は、例えば、X軸方向にのみ曲率を有する凸面形状の屈折面である。拡散配光形成部42a,42bは、例えば、X軸方向にのみ曲率を有する凹面形状の屈折面である。
ここで、スポット配光形成部41、拡散配光形成部42a及び拡散配光形成部42bのX軸方向の曲率は、路面に対して水平方向の「配光の幅」に寄与する。また、スポット配光形成部41、拡散配光形成部42a及び拡散配光形成部42bのY軸方向の曲率は、路面に対して垂直方向の「配光の高さ」に寄与する。
「配光の幅」とは、照射面91上に投影された配光パターンのX軸方向の長さである。「配光の高さ」とは、照射面91上に投影された配光パターンのY軸方向の長さである。
なお、上述では、スポット配光形成部41及び拡散配光形成部42a,42bをシリンドリカルレンズとして説明した。しかし、「配光の高さ」を調整する場合には、スポット配光形成部41または拡散配光形成部42a,42bをX軸方向とY軸方向とで異なるパワーを有するレンズ面とすることができる。
X軸方向とY軸方向で異なる曲率を有するレンズ面としては、例えば、トロイダルレンズ面が挙げられる。「トロイダルレンズ面」とは、樽の表面またはドーナツの表面のように、直交する2つの軸方向の曲率が異なる面のことである。
<Z−X平面上の光線の挙動>
まず、スポット配光形成部41を通る光について説明する。
図2(B)に示すように、Z−X平面で見ると、スポット配光形成部41は、凸面形状である。つまり、スポット配光形成部41は、水平方向(X軸方向)について正のパワーを有している。
ここで、例えば、「Z−X平面で見る」とは、Y軸方向から見るという意味である。つまり、Z−X平面に投影して見るということである。
このため、スポット配光形成部41に入射した光は、更に集光されて配光制御素子4の出射面43から出射する。このため、スポット配光形成部41がシリンドリカルレンズの場合には、スポット配光形成部41に入射した光は、集光位置PHよりも手前側(−Z軸方向側)で集光する。
したがって、スポット配光形成部41に入射して、配光制御素子4の出射面43から出射した光の共役面PC上のX軸方向の光束の幅は、スポット配光形成部41の曲率により変化する。
Z−X平面で見ると、スポット配光形成部41により、最も明るいスポット配光を形成するには、図2に示すようにスポット配光形成部41から出射された光のX軸方向の集光位置PWが、共役面PCと一致すれば良い。つまり、集光位置PWが、共役面PC上に位置すれば良い。ただし、スポット配光形成部41によって照明されるX軸方向の領域は最も小さくなる。
つまり、集光位置PWが共役面PCと一致すれば、最も明るいスポット配光が形成される。集光位置PWは、スポット配光形成部41から出射された光のX軸方向の集光位置である。
図2(A)において、Y軸方向の集光位置PHは一点鎖線で示されている。また、図2(A)において、共役面PCは破線で示されている。図2(B)において、X軸方向の集光位置PWは一点鎖線で示されている。
なお、集光光学素子2の入射面211と出射面231とを透過する光について、その集光位置PH,PWが共役面PC上にあるということは、光源1の発光面11を共役面PC上に結像させるということである。つまり、集光光学素子2の入射面211と出射面231とを透過する光について、その集光位置PH,PWが、共役面PCの位置に一致すると、光源1の発光面11は共役面PC上に結像される。
また、図2(A)及び図2(B)では、集光光学素子2の入射面211と出射面231とを透過する光について、集光位置PW及び集光位置PHのそれぞれが、共役面PCの位置に一致している。このことは、X軸方向及びY軸方向のそれぞれについて、集光光学素子2と配光制御素子4とは、光源1の発光面11を、共役面PC上に結像させるということである。つまり、集光光学素子2と配光制御素子4とは、共役面PC上に発光面11の像を形成する。
集光位置PWは、X軸方向の集光位置である。つまり、集光位置PWは、Z−X平面上での集光位置である。集光位置PHは、Y軸方向の集光位置である。つまり、集光位置PHは、Y−Z平面上での集光位置である。
つまり、図2において、集光光学素子2は、X軸方向とY軸方向とで異なるパワーを有している。例えば、集光光学素子2の入射面211と出射面231とは、トロイダルレンズである。
例えば、図2(A)のように、Y−Z平面で見れば、集光光学素子2のパワーとスポット配光形成部41のパワーとを合成した集光位置PHは共役面PC上である。ただし、図2(A)では、スポット配光形成部41はパワー有していないため、集光位置PHは、集光光学素子2のY軸方向の集光位置となる。
一方、図2(B)のように、Z−X平面で見れば、集光光学素子2のパワーとスポット配光形成部311のパワーとを合成した集光位置PWは、共役面PC上である。図2(B)では、スポット配光形成部41はパワーを有している。
集光位置PH,PWは、集光光学素子2と配光制御素子4との合成パワーによる集光位置である。図2(A)では、集光位置PHは、集光光学素子2のパワーによるY軸方向の集光位置である。図2(B)では、集光位置PWは、集光光学素子2とスポット配光形成部41との合成パワーによるX軸方向の集光位置である。
このため、集光光学素子2のX軸方向の焦点の焦点距離は、集光光学素子2のY軸方向の焦点の焦点距離よりも短くなる。つまり、集光光学素子2のZ−X平面上での焦点距離は、集光光学素子2のY−Z平面上での焦点距離よりも短くなる。X軸方向の焦点の位置は、焦点位置PWである。Y軸方向の焦点の位置は、焦点位置PHである。
共役面PCは、照射面9と共役の位置にある。
このため、共役面PC上における水平方向の光の広がりは、照射面9における「配光の幅」に相当する。つまり、スポット配光形成部41のX軸方向の曲率を変化させることで、共役面PC上のX軸方向の光束の幅を制御することができる。
これによって、前照灯モジュール100のスポット配光(高照度領域)の明るさを変化させることができる。つまり、スポット配光の幅が狭いときは、スポット配光の幅が広いときに比べてスポット配光の明るさは明るくなる。幅の狭いスポット配光の明るさは、幅の広いスポット配光の明るさよりも明るい。
また、スポット配光形成部41による集光位置PWは、必ずしも共役面PCと一致している必要はない。
図4及び図5は、実施の形態1に係る前照灯モジュール100の集光位置PWを説明する図である。なお、図4(A)及び図5(A)に示すように、集光位置PHは、共役面PC上に位置している。
図4では、スポット配光形成部41から出射した光の集光位置PWは、共役面PCよりも手前側(−Z軸方向側)に位置している。つまり、集光位置PWは、スポット配光形成部41と遮光板5との間に位置している。集光位置PWは、スポット配光形成部41と共役面PCとの間に位置している。集光位置PWは、スポット配光形成部41と遮光板5との間の空隙に位置している。なお、図4では、集光位置PWは、集光光学素子2とスポット配光形成部41とによって決まる。
「空隙」とは、隙間のことである。
図4の構成では、集光位置PWを通過した後の光は発散する。したがって、共役面上PC上のX軸方向の光束の幅は、集光位置PWのX軸方向の光束の幅よりも広い。そのため、共役面PCからは、水平方向(X軸方向)に広がりを持った光が出射される。
図5では、スポット配光形成部41から出射した光の集光位置PWは、共役面PCよりも後段側(+Z軸方向側)に位置している。図5では、集光位置PWは、共役面PCよりも+Z軸方向側に位置している。つまり、集光位置PWは、遮光板5(共役面PC)と投射レンズ8との間に位置している。なお、図5では、集光位置PWは、集光光学素子2とスポット配光形成部41とによって決まる。
なお、「後段」とは、光が進行して行く方向を示している。例えば、集光光学素子2から出射された光が配光制御素子4に到達する場合には、配光制御素子4は集光光学素子2の後段に配置されている。
図5の構成では、共役面PCを透過した光は、集光位置PWで集光している。したがって、共役面上PC上のX軸方向の光束の幅は、集光位置PWのX軸方向の光束の幅よりも広い。そのため、共役面PCからは、水平方向(X軸方向)に広がりを持った光が出射される。
共役面PCから集光位置PWまでの距離を制御することで、共役面PC上のX軸方向の光束の幅を制御することができる。そのため、共役面PWからは、水平方向(X軸方向)に広がりを持った光が出射される。
なお、集光位置PH,PWは、X−Y平面上において光束径がもっとも小さくなることで、単位面積あたりの光の密度が最も高くなる位置である。
このため、集光位置PWと共役面PCの位置とが一致する場合には、照射面9上におけるスポット配光の幅は、最も狭くなる。そして、照射面9上におけるスポット配光の照度は、最も高くなる。
つまり、最も明るいスポット配光を形成したい場合には、スポット配光形成部41を透過した光の集光位置PWを共役面PCの位置と一致させればよい。また、スポット配光形成部41を透過した光の集光位置PHを共役面PCの位置と一致させればよい。
ここで、集光位置PH,PW及び共役面PCの位置は、Z軸方向の位置である。
次に、拡散配光形成部42a,42bを通る光について説明する。
図2(B)に示すように、Z−X平面で見ると、拡散配光形成部42a,42bは、凹面形状をしている。つまり、拡散配光形成部42a,42bは、水平方向(X軸方向)について負のパワーを有している。図2(B)では、拡散配光形成部42a,42bは、−Y軸方向に凹の凹面形状である。
このため、拡散配光形成部42a,42bに入射した光は、拡散されて配光制御素子4の出射面43から出射する。つまり、拡散配光形成部42a,42bに入射した光は、発散角が大きくなって配光制御素子4の出射面43から出射する。
したがって、拡散配光形成部42a,42bに入射して、配光制御素子4の出射面43から出射した光の共役面PC上のX軸方向の光束の幅は広くなる。拡散配光形成部42a,42bによって、共役面PC上でのX軸方向の光束の幅は広くなる。
例えば、図2(B)に示すように、拡散配光形成部42a,42bに入射して、配光制御素子4の出射面43から出射する光の共役面PC上の光束L2の幅は、スポット配光形成部41に入射して、配光制御素子4の出射面43から出射する光の共役面PC上の光束L1の幅よりも広い。ここで、幅は、X軸方向の光束の寸法である。
このようにして、拡散配光形成部42a,42bは、X軸方向に負のパワーを有することで、幅広い配光パターンを形成することができる。拡散配光形成部42a,42bは、スポット配光形成部41を透過して生成されるスポット配光よりも幅広い拡散配光を形成する。
拡散配光形成部42a,42bは、スポット配光よりも幅広い拡散配光を形成する。スポット配光は、スポット配光形成部41を透過して形成される。拡散配光は、拡散配光形成部42a,42bを透過して形成される。
これにより、拡散配光形成部42a,42bに入射して、配光制御素子4の出射面43から出射した光の共役面PC上の光束L2の幅は、スポット配光形成部41に入射して、配光制御素子4の出射面43から出射した光の共役面PC上の光束L1の幅よりも広くなる。
つまり、共役面PC上で、X軸方向において、光束の幅L2は、光束L1の幅よりも広くなる。光束L1は、スポット配光形成部41に入射して、配光制御素子4の出射面43から出射した光の光束である。光束L2は、拡散配光形成部42a,42bに入射して、配光制御素子4の出射面43から出射した光の光束である。
この拡散配光は、スポット配光に重畳されて照射面9上に投射される。スポット配光は、スポット配光形成部41によって形成される。拡散配光は、拡散配光形成部42a,42bによって形成される。
「重畳」とは、重ねることである。
このように、拡散配光は、スポット配光を内包するように重畳される。そして、拡散配光は、スポット配光が照射面9上に投影する光源1の発光面11の形状(光源像)の境界線をぼかすことができる。前照灯モジュール100は、スポット配光の明るさを維持したまま、容易に配光ムラを低減することができる。
「内包」とは、内部にもっていることである。ここでは、拡散配光の領域内にスポット配光が位置していることである。
つまり、拡散配光の領域内にスポット配光が位置している。そのため、照射面9上の配光パターンの内側に高照度領域が形成される。拡散配光は、配光パターンの全体を形成する。そして、スポット配光は高照度領域を形成する。
高照度領域は、発光面11の形状(光源像)を基にして形成されている。発光面11の形状は、通常、矩形形状または円形形状である。そのため、発光面11の形状を基にして、高照度領域は容易に形成される。
また、図1に示す前照灯モジュール100は、屈折面で、配光パターンと高照度領域とを形成している。図2に示す前照灯モジュール100は、屈折面と全反射面とで、配光パターンと高照度領域とを形成している。つまり、前照灯モジュール100は、ミラー面を備えるリフレクタを採用していない。このため、後述するように、前照灯モジュール100は、光利用効率の向上または製造工程の簡素化を容易にする。
なお、Z−X平面で見て、拡散配光形成部42a,42bを凸面形状とすることができる。つまり、拡散配光形成部42a,42bは、X軸方向に正のパワーを有することができる。
<Z−Y平面上の光線の挙動>
配光制御素子4は、Y軸方向(垂直方向)にパワーを有していない。つまり、配光制御素子4は、Y−Z平面で見れば、パワーを有していない。このため、例えば、図2(A)に示すように、配光制御素子4に入射した光をY−Z平面で見ると、配光制御素子4に入射する光線と配光制御素子4から出射する光線との光軸Cに対する角度は変化しない。
したがって、光源1から出射された光は、集光光学素子2によって、共役面PH上に集光さる。
道路交通規則等に定められる配光パターンは、例えば、カットオフライン91の下側の領域が最大照度となっている。
共役面PCと照射面9とは共役の関係である。このため、照射面9上のカットオフライン91の下側(−Y軸方向側)の領域を最大の照度とするには、遮光板5の辺51の上側(+Y軸方向側)の領域の光度を最も高くすれば良い。
このような配光パターンを形成するには、例えば、集光光学素子2によって共役面PH上に集光された光の一部を、遮光板5によって遮光する。共役面PC上に集光する光の光度は、光軸C上が最も高くなる。このため、図2(A)に示すように、例えば、光軸C上で遮光すれば、カットオフライン91の下側(−Y軸方向)の領域を最大の照度とすることができる。
図2(A)では、遮光板5の辺51を光軸C上に配置する例を示した。しかし、遮光板5の辺51を光軸Cの付近に配置した場合でも、カットオフライン91の下側(−Y軸方向)の領域の照度が大きく低下するわけではない。このため、遮光板5の辺51を光軸Cから少しずれた位置に配置して、前照灯モジュール100を作製することは可能である。
例えば、発光面11の像の−Y軸方向側の端部と遮光板5の辺51とを一致させることもできる。この場合には、発光面11の像で形成された高光度領域を全て照射面9上に投影することができる。
図2(A)では、スポット配光形成部41及び拡散配光形成部42a,42bを、シリンドリカルレンズとして説明した。しかし、スポット配光形成部41または拡散配光形成部42a,42bを、X軸方向とY軸方向で異なるパワーを有するレンズ面とすることができる。例えば、トロイダルレンズ面が挙げられる。
このように、Y−Z平面上での光束の高さは、水平方向の配光の幅を調整する場合と同様に、配光制御素子4のスポット配光形成部41及び拡散配光形成部42a,42bの垂直方向(Y軸方向)の曲率を任意に変化させることで調整することができる。
<配光パターン>
自動二輪車用の前照灯装置のロービームの配光パターンでは、カットオフライン91は水平な直線形状をしている。つまり、カットオフライン91は、車両の左右方向(X軸方向)に延びる直線形状をしている。
また、自動二輪車用の前照灯装置のロービームの配光パターンは、カットオフライン91の下側の領域が最も明るくなければならない。この最大照度の領域を「高照度領域」とよぶ。つまり、カットオフライン91の下側の領域は、高照度領域である。
遮光板5上の共役面PCと照射面9とは、光学的に共役の関係にある。辺51は、共役面PC上の光が透過する領域の中で最も下端(−Y軸方向側)に位置する。このため、辺51は、照射面9におけるカットオフライン91に対応する。
共役面PC上の配光パターンは、投射レンズ8によって、上下方向及び左右方向が反転されて、照射面9上に投影される。
実施の形態1に係る前照灯モジュール100は、投射レンズ8によって、共役面PC上に形成された配光パターンを照射面9上に直接投影する。このため、共役面PC上の配光分布は、そのまま照射面9上に投影される。つまり、共役面PC上の光度分布は、そのまま照射面9上の照度分布となる。
従って、カットオフライン91の下側の領域が最も明るくなる配光パターンを実現するには、共役面PC上で辺51の+Y軸方向側の領域の光度が最も高い光度分布とすればよい。
また、照射面9上に投影される配光パターンに配光ムラ(照度ムラ)が生じないためには、共役面PC上でムラのない配光分布を形成すればよい。
図6及び図7は、実施の形態1に係る前照灯モジュール100の照射面9上での照度分布をコンター表示で示した図である。
「コンター表示」とは、等高線図で表示することである。「等高線図」とは、同じ値の点を線で結んで表した図である。
図6は、図2に示す配光制御素子4を用いた場合の照度分布である。つまり、遮光板5の位置に共役面PCが有る。そして、共役面PC上に集光位置PH,PWが有る。つまり、遮光板5上に集光位置PH,PWが有る。
図7は、図4に示す配光制御素子4を用いた場合の照度分布である。つまり、遮光板5の位置に共役面PCが有る。そして、配光制御素子4と遮光板5との間に集光位置PWが有る。また、共役面PC上に集光位置PHが有る。つまり、遮光板5上に集光位置PHが有る。
この照度分布は、25m前方(+Z軸方向)の照射面9に投影された照度分布である。また、この照度分布は、シミュレーションにより求めたものである。
図6から分かるように、配光パターンのカットオフライン91は明瞭な直線である。つまり、カットオフライン91の下側では、等高線の幅が狭い。そして、配光分布は、カットオフライン91から短い距離で、最高照度の領域(高照度領域)93となっている。
図6では、高照度領域93の中心は配光パターンの中心よりも+Y軸方向側に位置している。図6では、高照度領域93は配光パターンの中心よりも+Y軸方向側の範囲内に納まっている。配光パターンの中心は、配光パターンの幅方向の中心で、配光パターンの高さ方向の中心である。
配光パターンのカットオフライン91の下側(−Y軸方向側)の領域92が最も明るいことがわかる。つまり、配光パターンのカットオフライン91の下側の領域92に、配光パターンの中の最も明るい領域93が含まれている。
また、配光パターンの等高線の間隔は、高照度領域93から周辺にかけて、連続的に狭くなっている。つまり、高照度領域93から配光パターンの周辺にかけて、等高線の間隔は、極端に狭くなっていない。また、等高線の間隔は、極端に広くなっていない。つまり、等高線の間隔は、連続的に狭くなっている。
つまり、配光パターンの等高線の間隔が連続的に狭くなっていることは、配光ムラが生じていないことを意味している。配光パターンの等高線の間隔が連続的に変化していることは、配光ムラが生じていないことを意味している。
また、図7に示す配光パターンは、カットオフライン91は、明瞭な直線である。つまり、カットオフライン91の下側では、等高線の幅が狭い。そして、配光分布は、カットオフライン91から短い距離で、最高照度の領域(高照度領域)93となっている。
図7では、高照度領域93の中心は配光パターンの中心よりも+Y軸方向側に位置している。図7では、高照度領域93は配光パターンの中心よりも+Y軸方向側の範囲内に納まっている。
そして、図7に示す配光パターンは、カットオフライン91の下側(−Y軸方向側)の領域92が最も明るく照明されている。つまり、配光パターンのカットオフライン91の下側の領域92に、配光パターンの中の最も明るい領域93が含まれている。
図6及び図7では、カットオフライン91の下側の領域92は、配光パターンの中心とカットオフライン91との間に位置している。
また、配光パターンの等高線の間隔は、高照度領域93から周辺にかけて、連続的に狭くなっている。つまり、高照度領域93から配光パターンの周辺にかけて、等高線の間隔は、極端に狭くなっていない。また、等高線の間隔は、極端に広くなっていない。つまり、等高線の間隔は、連続的に狭くなっている。
つまり、配光パターンの等高線の間隔が連続的に狭くなっていることは、配光ムラが生じていないことを意味している。配光パターンの等高線の間隔が連続的に変化していることは、配光ムラが生じていないことを意味している。
このように、スポット配光形成部41の曲面形状を変化させることで、配光分布を容易に変更することができる。特に、高照度領域の形状及び照度を変更することができる。
また、配光パターンに光源1の光源像がはっきりと投影されることなく高照度領域93を形成することができている。つまり、配光ムラを生じることなく高照度領域93を形成できている。照度ムラを抑えて高照度領域93は形成されている。
つまり、前照灯モジュール100は、配光パターンに高照度領域を設けるために、複雑な光学系の構成を必要としない。また、前照灯モジュール100は、高照度領域の照度ムラを抑えるために、複雑な光学系の構成を必要としない。また、前照灯モジュール100は、配光パターン内の照度ムラを抑えるために、複雑な光学系の構成を必要としない。つまり、前照灯モジュール100は、小型で簡易な構成で光利用効率を向上した前照灯装置を実現することができる。
<比較例>
以下において、実施の形態1に係る前照灯モジュール100の効果を検証するための比較例について説明する。本比較例は、実施の形態1に係る前照灯モジュール100における配光制御素子4を構成要素から外したものである。
図8は、比較例の前照灯モジュール101を示す構成図である。
前照灯モジュール100では、集光光学素子2の集光位置PH,PWは、共役面PCと一致している。また、比較例の前照灯モジュール101でも、集光光学素子2の集光位置PH,PWは共役面PCと一致している。
このようにすることで、カットオフラインの下側の領域92に高照度領域93を得ることができる。
図9は、比較例の前照灯モジュール101の照射面9上での照度分布をコンター表示で示した図である。シミュレーションの条件は、図6および図7の場合と同様である。
図9では、光源1の光源像が長方形として投影されている。つまり、光源1の光源像の境界がはっきりと投影されている。
また、配光パターンの等高線の間隔は、高照度領域93から周辺にかけて、不連続に変化している。つまり、高照度領域93から配光パターンの周辺にかけて、一部の領域で、等高線の間隔が極端に狭くなっている。また、一部の領域で、等高線の間隔が極端に広くなっている。
つまり、図9では、配光ムラが生じている。配光ムラは、高照度領域93の周辺の領域で生じている。配光パターンの等高線の間隔が不連続に変化していることは、配光ムラが生じていることを意味している。
これは、集光光学素子2の入射面211に入射して、出射面232から出射した光によって、光源1の発光面11が、共役面PC上に結像されるためである。そのため、光源1の発光面11の境界がそのまま照射面9に投影される。光源1の発光面11が、共役面PC上に結像される際に、収差などの影響を受ける。そして、発光面11の境界は、配光ムラとなって表れる。
図2に示す前照灯モジュール101は、3つの像を共役面PC上に形成している。一方、図8に示す前照灯モジュール101は、1つの像を、共役面PC上に形成している。この点で、比較例の前照灯モジュール101は、前照灯モジュール101と相違している。
このように、比較例では集光光学素子2の集光位置PHを共役面PCと一致させることで、高照度領域を形成することはできた。しかし、比較例では配光ムラを生じてしまい、ドライバーの距離感を見誤らせる可能性がある。
一方、実施の形態1に係る前照灯モジュール100は、配光制御素子4を配置することで、高照度領域を維持したまま配光ムラを効果的に低減することができる。
これは、スポット配光形成部41が共役面PC上に形成した像の上に、拡散配光形成部42から出射された拡散光を重畳しているからである。つまり、スポット配光形成部41が共役面PC上に形成した像の上に、拡散配光形成部42が共役面PC上に形成した像を重ねているからである。
本発明の実施の形態1に係る前照灯モジュール100は、自動二輪車用の前照灯装置のロービームを例として説明した。しかし、本発明は、これに限るものではない。例えば、前照灯モジュール100は、自動三輪車用の前照灯装置のロービーム又は四輪の自動車用の前照灯装置のロービームにも適用が可能である。
図10は、遮光板5の辺51の形状の一例を示した模式図である。辺51の形状は、例えば、図10に示すような段差のある形状にすることができる。つまり、図10に示す辺51の形状は、屈曲線形状をしている。
後方(−Z軸方向)から見て、左側(−X軸方向側)の辺51aは、右側(+X軸方向側)の辺51bよりも高い位置(+Y軸方向)にある。
共役面PCと照射面9とは、光学的に共役の関係にある。このため、共役面PC上の配光パターンの形状は、投射レンズ8によって、上下方向及び左右方向が反転して照射面9上に投影される。配光パターンは、辺51の+Y軸方向側に形成される。
つまり、照射面9上で、車両の進行方向の左側のカットオフライン91は高く、右側のカットオフライン91は低い。
これにより、歩行者の識別及び標識の識別のために、歩道側(左側)の照射を立ち上げる「立ち上がりライン」を容易に形成することができる。なお、車両が道路の左側を走行する場合で説明している。このため、車両が道路の右側を走行する場合には、立ち上がりラインは、左右方向が逆になる。つまり、右側の照射を立ち上げる立ち上がりラインとなる。
また、車両の中には、複数の前照灯モジュールを並べて、各モジュールの配光パターンを足し合わせて配光パターンを形成する場合がある。つまり、複数の前照灯モジュールを並べて、各モジュールの配光パターンを足し合わせて一つの配光パターンを形成する場合がある。この様な場合でも、実施の形態1に係る前照灯モジュール100は、容易に適用できる。
前照灯モジュール100は、配光制御素子4のスポット配光形成部41又は拡散配光形成部42の曲面形状を調整することで、配光パターンの幅又は高さを変化させることができる。そして、配光分布も変化させることができる。
また、実施の形態1では、スポット配光形成部41は1つの領域に形成され、拡散配光形成部42は2つの領域に形成された例を示した。しかし、拡散配光形成部42はこれに限らず、複数の領域に形成されも良い。ただし、スポット配光形成部41は、光軸Cを通る領域に形成されることが望ましい。
また、スポット配光形成部41の水平方向(X軸方向)は、必ずしも正のパワーを有する必要はない。例えは、スポット配光形成部41の水平方向(X軸方向)は、負のパワーを有していても、集光光学素子2のパワーと合わせて正のパワーになれば、同様の効果が得られる。
変形例2では、スポット配光形成部311または拡散配光形成部312をトロイダルレンズ面とすることで、集光光学素子2を省いた例を示している。
また、スポット配光形成部41は、配光パターンの中心部分に位置する高照度領域を形成する。このため、スポット配光形成部41は、拡散配光形成部42よりも水平方向(X軸方向)で大きいパワーを有することが望ましい。つまり、スポット配光形成部41の水平方向(X軸方向)のパワーは、拡散配光形成部42の水平方向(X軸方向)のパワーよりも大きく設定されることが望ましい。
光軸Cを通る光線が高照度領域を照明することが、配光制御素子4にとって負荷が少なく最も効率的である。通常、高照度領域は、配光パターン中心に位置している。このため、スポット配光形成部41は、光軸C上に配置されることが望ましい。そして、スポット配光形成部41は、拡散配光形成部42よりも水平方向(X軸方向)で大きいパワーを有することが望ましい。
つまり、スポット配光形成部41は、拡散配光形成部42よりも水平方向で大きなパワーを有する。そして、スポット配光形成部41は、光を集光して高照度領域を形成する。拡散配光形成部42は、光軸Cから外れた位置に配置される。つまり、光軸Cは、拡散配光形成部42上を通らない。このため、拡散配光形成部42は、スポット配光形成部41よりも弱い正のパワーまたは負のパワーを備えて、スポット配光形成部よりも光を拡散させることが望ましい。
つまり、例えば、スポット配光形成部41と拡散配光形成部42とが水平方向(X軸方向)で凸面である場合には、スポット配光形成部41の水平方向(X軸方向)の曲率半径は、拡散配光形成部42の水平方向(X軸方向)の曲率半径よりも小さい。
一方、スポット配光形成部41と拡散配光形成部42とが水平方向(X軸方向)で凹面である場合には、スポット配光形成部41の水平方向(X軸方向)の曲率半径は、拡散配光形成部42の水平方向(X軸方向)の曲率半径よりも大きい。
つまり、水平方向(X軸方向)において、拡散配光形成部42のパワーは、スポット配光形成部41のパワーよりも小さい。
凸面は、正のパワーとなり、凹面は負のパワーとなる。このため、スポット配光形成部41が凸面で、拡散配光形成部42が凹面の場合には、スポット配光形成部41は正のパワーとなり、拡散配光形成部42は負のパワーとなる。このため、拡散配光形成部42のパワーは、スポット配光形成部41のパワーよりも小さくなる。
また、前照灯モジュール100は、集光光学素子2と配光制御素子4との光学的な位置関係を調整することで、配光パターンの幅及び高さを変化させることができる。そして、配光分布も変化させることができる。
また、前照灯モジュール100は、遮光板5の辺51の形状で、カットオフライン91の形状を規定することができる。つまり、遮光板5の形状により配光パターンを形成できる。
このため、複数の前照灯モジュール間で、特に、集光光学素子2の形状等を変更する必要がない。つまり、集光光学素子2を共通部品とすることができる。このため、部品の種類を削減でき、組立性を改善して、製造コストを低減することができる。
また、この様な配光パターンの幅及び高さを任意に調整する機能と、配光分布を任意に調整する機能とは、前照灯モジュール100の全体で発揮できれば良い。前照灯モジュール100は、光学部品として、集光光学素子2、配光制御素子4及び遮光板5を備える。つまり、これらの機能を、前照灯モジュール100を構成する集光光学素子2又は配光制御素子4のいずれかの光学面と、遮光板5とに分散することも可能である。
<変形例1>
また、スポット配光形成部41と拡散配光形成部42とは、セグメント化された不連続な面として説明した。しかし、スポット配光形成部41と拡散配光形成部42とは、繋がった面とすることができる。また、スポット配光形成部41と拡散配光形成部42とは、滑らかに繋がった連続面とすることができる。
図18(A)及び図18(B)は、実施の形態1に係る変形例1の前照灯モジュール102の構成を示す構成図である。また、図19は、変形例1の配光制御素子40の斜視図である。
例えば、図19では、スポット配光形成部41は、二点鎖線で囲われた領域である。また、拡散配光形成部42は、破線で囲われた領域である。
図19から分かるように、スポット配光形成部41と拡散配光形成部42との境界は、滑らかな曲面で繋がれている。配光制御素子4の入射面は、全体にわたって連続面で形成されている。つまり、スポット配光形成部41と拡散配光形成部42との境界には、段差はない。また、スポット配光形成部41と拡散配光形成部42との境界は、例えば、V字のように曲げられていない。「V字のような曲げ」とは、2つの面の間に稜線が形成されているような曲げである。「稜線」とは、2つの面の交わる部分の線分のことである。つまり、2つの面の間には角ができている。
図20は、配光制御素子4に入射する光線の一例を示している。図20は、+Y軸方向から見た図である。
図20から分かるように、スポット配光形成部41と拡散配光形成部42がセグメント化されている場合には、スポット配光形成部41と拡散配光形成部42との境界の段差44に入射する光線が存在する。図20では、例えば、光線Rが段差44に入射している。
光線Rは、スポット配光形成部41または拡散配光形成部42に入射していない。このために、光線Rは、設計されたところに到達しない。例えば、光線Rは、共役面PC上の設計された位置に到達しない。つまり、光線Rは、配光制御素子4によって制御されていない。このため、光線Rは、配光パターンの品質が低下する。また、光線Rが共役面PC上の有効な範囲に到達しない場合には、光線Rは、配光パターンに利用されない。
このような、段差44に入射した光線Rは、有効に利用できない。このため、段差44は、光利用効率の低下を招く。また、光線Rは、不要な光として、グレアなどの原因になる。グレア光は、眩しい光のことである。前照灯装置では、グレア光は、視界を不快にさせて、前を見えづらくさせる光のことである。
また、境界がV字のように曲がっている場合でも、段差44と同様の現象が発生する。
しかし、配光制御素子40は、スポット配光形成部41と拡散配光形成部42の境界に段差がない。このため、スポット配光形成部41と拡散配光形成部42とに入射する光は、配光パターンの設計に利用される。つまり、配光制御素子4に入射する光線は、配光制御素子4によって制御されている。そして、配光制御素子40では、配光パターンに利用されない光または配光パターンの品質を低下させる光は発生しない。配光制御素子40は、光利用効率の向上とグレア光の低減とに寄与する。
上記の変形例1は、他の実施の形態にも適用できる。
実施の形態2.
図11(A)及び図11(B)は、実施の形態2に係る前照灯モジュール110の構成を示す構成図である。図11(A)は、車両前方に対して右側(−X軸方向)から見た図である。図11(B)は、上側(+Y軸方向)から見た図である。
図11(A)及び図11(B)に示すように、実施の形態2に係る前照灯モジュール110は、光源1、集光光学素子2及び導光投射光学素子3を備える。なお、導光投射光学素子3の配光制御面31が集光機能を有する場合には、集光光学素子2を省くことができる。また、前照灯モジュール110は、集光光学素子2を光源1に取り付けて一体とした場合を含む。
実施の形態2は、実施の形態1の配光制御素子4の機能、遮光板5の機能及び投射レンズ8の機能が一体となった導光投射光学素子3を備える点で実施の形態1と相違する。つまり、導光投射光学素子3は、配光制御素子4及び投射レンズ8を含む構成をしている。また、遮光板5の機能は、反射面32によって実現されている。
実施の形態1で説明した前照灯モジュール100の構成要素と同様の構成要素には、同一符号を付し、その説明を省略する。
実施の形態1と同様の構成要素は、光源1及び集光光学素子2である。ただし、実施の形態2では、光源1及び集光光学素子2の配置は、実施の形態1と異なる。
また、実施の形態1と同じ構成要素の構成、機能又は動作等は、実施の形態2で説明を省いた場合でも、実施の形態1の記載を代用する。また、実施の形態2の中で説明した、実施の形態1に関する記載は、実施の形態1の説明として用いる。ここで、「動作」とは、光の挙動を含む。
光源1及び集光光学素子2は、光軸Cs,Cを−Y軸方向に角度aだけ傾けて配置される。「光軸を−Y軸方向に傾ける」とは、−X軸方向側から見て、X軸を回転軸として、Z軸に平行な光軸を時計回りに回転させることである。
光源1及び集光光学素子2について説明を容易にするために、新たな座標系としてX1Y1Z1座標を用いる。X1Y1Z1座標は、XYZ座標を−X軸方向側から見て、X軸を回転軸として時計回りに角度aだけ回転した座標である。
実施の形態2において、X軸は、反射面32に平行で、光軸C1に垂直である。Y軸は、Z−X平面に垂直である。Z軸は、光軸C1に平行である。X1軸は、反射面32に平行で、光軸C1に垂直である。つまり、X1軸は、X軸と同じである。Y1軸は、Z1−X1平面に垂直である。Z1軸は、光軸C2に平行である。または、Z1軸は、光軸Csに平行である。
なお、実施の形態1では、集光光学素子2の光軸C2は、Z1軸に平行である。また、集光光学素子2の光軸C2は、光源1の光軸Csと一致している。
実施の形態2では、光軸C1は導光投射光学素子3の光軸である。光軸C2は集光光学素子2の光軸である。光軸Csは、光源1の光軸である。
<光源1>
光源1は、発光面11を備える。光源1は、発光面11から車両の前方(+Z軸方向)を照明するための光を出射する。
光源1は、集光光学素子2の−Z1軸方向側に位置している。光源1は、導光投射光学素子3の−Z軸方向側(後方)に位置している。そして、光源1は、導光投射光学素子3の+Y軸方向側(上側)に位置している。
図11では、光源1は、+Z1軸方向に光を出射している。光源1は、その種類を特に限定していないが、上述の説明の通り以下の説明では、光源1がLEDであるとして説明する。
<集光光学素子2>
集光光学素子2自体は、実施の形態1と同様である。集光光学素子2自体に関しては、実施の形態1の説明で代用して、実施の形態2での説明は省略する。
なお、実施の形態1で説明した集光光学素子2の光軸Cは、実施の形態2では光軸C2となる。つまり、実施の形態1の説明中の光軸Cを光軸C2に読み替える。
また、実施の形態1で説明した集光光学素子2のXYZ座標は、実施の形態2ではX1Y1Z1座標となる。つまり、実施の形態1の説明中のXYZ座標をX1Y1Z1座標に読み替える。
集光光学素子2は、光源1の+Z1軸方向側に位置している。また、集光光学素子2は、導光投射光学素子3の−Z1軸方向側に位置している。集光光学素子2は、導光投射光学素子3の−Z軸方向側(後方)に位置している。そして、集光光学素子2は、導光投射光学素子3の+Y軸方向側(上側)に位置している。
集光光学素子2は、光源1から発せられた光を入射する。集光光学素子2は、前方(+Z1軸方向)の任意の位置に光を集光させる。集光光学素子2は、集光機能を有する光学素子である。集光光学素子2の集光位置に関しては、図13及び図14を用いて説明する。
光源1及び集光光学素子2は、導光投射光学素子3の上側(+Y軸方向側)に配置されている。また、光源1及び集光光学素子2は、導光投射光学素子3の後方(−Z軸方向側)に配置されている。
光源1及び集光光学素子2は、反射面32に対して、反射面32の光を反射する側に位置している。つまり、光源1及び集光光学素子2は、反射面32に対して、反射面32の表面側に位置している。光源1及び集光レンズ2は、反射面32の法線方向であって、反射面32に対して、反射面32の表面側に位置している。集光光学素子2は、反射面32に対向する側に配置されている。
図11では、光源1の光軸Csは、集光光学素子2の光軸C2と一致している。
そして、光源1及び集光光学素子2の光軸Cs,C2は、例えば、反射面32上に交点を有している。
また、例えば、入射面31で光が屈折する場合には、集光光学素子2から出射された中心光線が、反射面32上に到達する。つまり、集光光学素子2の光軸C2又は中心光線は、反射面32上に交点を有している。なお、中心光線は、光源1から放射されて集光光学素子2を出射するまでは、光軸C2と一致している。
中心光線は、光源の発光面の中心から発せられた光の光束の中心に位置する光線である。各実施の形態では、中心光線は、光源の光軸と一致する例として説明している。また、各実施の形態では、光源の光軸は、集光光学素子の光軸と一致する例として説明している。
集光光学素子2は、光源1の直後に配置される。上述の「後方」とは異なり、ここで、「後」とは、光源1から出射された光の進行方向側のことである。ここでは、「直後」なので、発光面11から出射した光は、すぐに集光光学素子2に入射する。
<導光投射光学素子3>
導光投射光学素子3は、集光光学素子2の+Z1軸方向側に位置している。導光投射光学素子3は、集光光学素子2の+Z軸方向側に位置している。そして、導光投射光学素子3は、集光光学素子2の−Y軸方向側に位置している。
導光投射光学素子3は、集光光学素子2から出射された光を入射する。導光投射光学素子3は、前方(+Z軸方向)に光を出射する。
導光投射光学素子3は、反射面32によって光を導光する機能を有する。また、導光投射光学素子3は、出射面33によって光を投射する機能を有する。このため、光学素子3を説明する際には、理解を容易にするために、導光投射光学素子3として説明する。導光投射光学素子3は、光を導光して投射する光学素子である。
「導光」とは、内面反射を利用して、一方(入射面)から入射した光を他方(出射面)へ導くことである。
図12は、導光投射光学素子3の斜視図である。導光投射光学素子3は、配光制御面31、反射面32及び出射面33を備える。導光投射光学素子3は、入射面34を備えることができる。
導光投射光学素子3は、出射面33に投射機能を持たせないようにできる。この場合には、実施の形態1で示したように、前照灯モジュール110は、投射レンズ8を備えることができる。
導光投射光学素子3は、例えば、透明樹脂、硝子又はシリコーン材等で製作されている。
また、実施の形態2で示す導光投射光学素子3は、例えば、内部が屈折材で満たされている。
配光制御面31は、導光投射光学素子3の−Z軸方向側の端部に設けられている。配光制御面31は、導光投射光学素子3の+Y軸方向側の部分に設けられている。
配光制御面31は、実施の形態1の配光制御素子4と同等の機能を有する。つまり、配光制御面31は、スポット配光形成部311及び拡散配光形成部312を備える。つまり、導光投射光学素子3は、配光制御素子4を含んだ構成をしている。スポット配光形成部311は、配光制御素子4のスポット配光形成部41に相当する。拡散配光形成部312は、配光制御素子4のスポット拡散配光形成部42に相当する。
図11(A)、図11(B)及び図12では、例えば、導光投射光学素子3の配光制御面31は、2つの拡散配光形成部312a,312bを備えている。拡散配光形成部312aは、配光制御面31の+X1軸方向側(+X軸方向側)に位置している。拡散配光形成部312bは、配光制御面31の−X1軸方向側(−X軸方向側)に位置している。
そして、スポット配光形成部311は、2つの拡散配光形成部312a,312bの間に配置されている。
実施の形態1では、配光制御素子4は、光軸Cに対して垂直に配置されている。しかし、実施の形態2では、配光制御面31は、光軸C2に対して傾いている。図11では、光軸C2は、配光制御面31の法線に対して、−Y1軸方向に傾いている。
つまり、配光制御面31の法線に対して、−X軸方向から見て、光軸C2は、反時計回りに回転している。集光光学素子2から出射した中心光線は、配光制御面31の法線に対して、−Y1軸方向から配光制御面31に到達する。集光光学素子2から出射した中心光線は、配光制御面31に対して、反射面32が配置されている方向から配光制御面31に到達する。実施の形態2では、中心光線は光軸C2上の光線として示している。
これは、配光制御面31から入射した光が、屈折して反射面32に到達するようにするためである。
図11(A)、図11(B)及び図12では、スポット配光形成部311は、X1軸方向(X軸方向)に曲率をもち、Y1軸方向(またはY軸方向)に曲率を持たない凸形状のシリンドリカルレンズである。
つまり、スポット配光形成部311は、配光制御面31に平行で、X軸に垂直な方向に曲率を持たない。ここで、配光制御面31は、スポット配光形成部311及び拡散配光形成部312の設けられている平面として説明している。つまり、スポット配光形成部311及び拡散配光形成部312は、この仮想の平面上に形成されているとしている。この平面は、例えば、配光制御面31が曲面であった場合には、近似された平面であってもよい。これは、以下のスポット配光形成部311及び拡散配光形成部312の形状の説明において同様である。
図11では、スポット配光形成部311は、X1軸方向(X軸方向)に正のパワーを有する凸面形状である。つまり、スポット配光形成部311を、Z1−X1平面(またはZ−X平面)と平行な面で切断すると、凸レンズの形状をしている。
つまり、スポット配光形成部311を、X軸に平行で、配光制御面31に垂直な面で切断すると、凸レンズの形状をしている。
光軸C2は、スポット配光形成部311のレンズ面を通っている。図11では、例えば、光軸C2は、スポット配光形成部311をZ1−X1平面と平行な面で切断した場合の凸レンズの光軸と一致している。
つまり、図11では、例えば、光軸C2は、スポット配光形成部311をX軸に平行で、配光制御面31に垂直な面で切断した場合の凸レンズの光軸と一致している。
拡散配光形成部312は、例えば、X1軸方向に曲率をもち、Y1軸方向に曲率をもたない凹形状のシリンドリカルレンズである。
つまり、拡散配光形成部312は、配光制御面31に平行で、X軸に垂直な方向に曲率を持たない。また、拡散配光形成部312は、Y−Z平面上で曲率を持たない。
図11では、拡散配光形成部312a,312bは、ともにX1軸方向(X軸方向)に負のパワーを有する凹面形状である。つまり、拡散配光形成部312を、Z1−X1平面(またはZ−X平面)と平行な面で切断すると、凹レンズの形状をしている。
つまり、拡散配光形成部312を、X軸に平行で、配光制御面31に垂直な面で切断すると、凹レンズの形状をしている。
配光制御面31は、配光パターン形状形成部の一例として考えられる。また、配光制御面31は、集光部の一例として考えられる。
「配光パターン形状形成部」とは、配光パターンの形状を形成する部分のことである。
反射面32は、配光制御面31の−Y軸方向側の端部に設けられている。つまり、反射面32は、配光制御面31の−Y軸方向側に配置されている。そして、反射面32は、配光制御面31の+Z軸方向側に配置されている。実施の形態2では、反射面32の−Z軸方向側の端部は、配光制御面31の−Y軸方向側の端部に接続している。
反射面32は、反射面32に到達した光を反射する。つまり、反射面32は、光を反射する機能を有する。つまり、反射面32は、光反射部として機能する。反射面32は、光反射部の一例として考えられる。
反射面32は、+Y軸方向に面している。つまり、反射面32の表面は、+Y軸方向に面している。「面している」とは、「向いている」という意味である。反射面32の表面は、光を反射する面である。反射面32の表面は、+Y軸方向を向いている。反射面32の裏面は、−Y軸方向を向いている。
反射面32は、Z−X平面に対して、X軸に平行な軸を中心として、−X軸方向から見て時計回りに回転した面である。図11では、反射面32は、Z−X平面に対して、角度bだけ回転した面となっている。
つまり、反射面32は、導光投射光学素子3が光を出射する方向(+Z軸方向)に、反射面を向けるように傾いている。
図11では、反射面32は平面で示されている。しかし、反射面32は、平面である必要はない。反射面32は、曲面形状でも構わない。
反射面32は、ミラー蒸着をすることでミラー面としても良い。しかし、反射面32は、ミラー蒸着をせずに全反射面として機能させることが望ましい。
なぜなら、全反射面はミラー面よりも反射率が高く、光利用効率の向上に寄与するからである。また、ミラー蒸着の工程をなくすことで、導光投射光学素子3の製造工程を簡素化することができる。そして、導光投射光学素子3の製造コストの低減に寄与する。
特に、実施の形態1に示す構成では、反射面32への光線の入射角が浅いため、ミラー蒸着をしなくても反射面32を全反射面とすることができる特徴がある。「入射角が浅い」とは、入射角が大きいということである。入射角は、光線が入射するとき、入射方向と境界面の法線とがなす角度である。ここでは、境界面は反射面32である。
入射面34は、例えば、光を入射して、出射面33からハイビームに相当する光を出射するために使用される。ハイビーム用の光源は、図11には示していないが、例えば、入射面34に対向する位置に配置されている。ハイビーム用の光源(光源6)は、図21に示して、変形例2で図21を用いて説明する。
入射面34は、例えば、X−Y平面に平行な面をしている。しかし、入射面34は、曲面形状をすることができる。入射面34を曲面形状とすることで、入射する光の配光を変更することができる。
入射面34は、反射面32の−Y軸方向側に配置されている。つまり、入射面34は、反射面32の裏面側に配置されている。図11では、入射面34の+Y軸方向側の端部は、反射面32の+Z軸方向側の端部に接続している。図11では、入射面34の+Y軸方向側の端部は、反射面32の+Z軸方向側の端部に配置されている。
入射面34は、図11では、照射面9と光学的に共役の位置にある。このため、入射面34上及びその延長上にある共役面PC上の光の形状が、照射面9に投影される。つまり、出射面33は、入射面34上及びその延長上にある共役面PC上の光の形状を照射面9に投影する。ここで、光の形状は、配光パターンである。
図11では、入射面34からは光線は入射されていない。つまり、入射面34から入射する光線はない。このため、図11では、配光制御面31から入射した光の共役面PC上の形状が、照射面9に投影される。
なお、共役面PC上の光の像(配光パターン)は、導光投射光学素子3内の共役面PC上の一部に形成される。つまり、導光投射光学素子3内の共役面PC上の範囲内で、配光パターンを前照灯モジュール110に適した形状に形づくることができる。例えば、複数の前照灯モジュールを用いて照射面9上に1つの配光パターンを形づくる場合には、各前照灯モジュールの役割に応じた配光パターンを共役面PC上に形づくることができる。
稜線部321は反射面32の−Y軸方向側の辺である。稜線部321は反射面32の+Z軸方向側の辺である。そして、稜線部321は、照射面9と光学的に共役の位置にある。稜線部321は、実施の形態1の遮光板5の辺51に相当する。
「稜線」とは、一般的には、面と面との境界線のことである。しかし、ここでは、「稜線」は面の端部を含む。実施の形態1では、例えば、稜線部321は、反射面32と入射面34とを接続する部分である。つまり、反射面32と入射面34との接続する部分が稜線部321である。
しかし、例えば、導光投射光学素子3の内部が空洞となっていて、入射面34が開口部となっている場合には、稜線部321は反射面32の端部となる。つまり、稜線部321は、面と面との境界線を含む。また、稜線部321は、面の端部を含む。なお、上述のように実施の形態2では、導光投射光学素子3は、内部が屈折材で満たされている。
また、「稜線」は直線に限らず曲線等も含まれる。例えば、稜線は上述した「立ち上がりライン」の形状とすることもできる。実施の形態1で説明した遮光板5の辺51a,51bと同様の形状とすることができる。実施の形態2では、稜線部321は、直線形状である。実施の形態2では、稜線部321は、X軸に平行な直線形状をしている。
つまり、稜線部321の形状等は、実施の形態1の辺51の形状等と同様である。そのため、稜線部321の形状等の説明は、実施の形態1の辺51の形状等の説明で代用する。
また、実施の形態2では、稜線部321は入射面34の+Y軸方向側の辺である。稜線部321も入射面34上にある。このため、稜線部321は照射面9と光学的に共役の位置にある。
また、実施の形態2では、稜線部321は、出射面33の光軸C1と交差している。稜線部321は、出射面33の光軸C1と直角に交差している。光軸C1は、実施の形態1の光軸Cpに相当する。
光軸C1は、出射面33の面頂点を通る法線である。図11の場合では、光軸C1は、出射面33の面頂点を通るZ軸に平行な軸となる。
つまり、出射面33の面頂点がX―Y平面上でX軸方向又はY軸方向に平行移動する場合には、出射面33の面頂点の法線も同様に、X―Y平面上でX軸方向又はY軸方向に平行移動する。このため、同様に、光軸C1もX―Y平面上でX軸方向又はY軸方向に平行移動する。また、出射面33が、X−Y平面に対して傾斜する場合には、出射面33の面頂点の法線もX−Y平面に対して傾斜する。このため、同様に、光軸C1もX−Y平面に対して傾斜する。
稜線部321は、配光パターンのカットオフライン91の形状となる。なぜなら、稜線部321は照射面9と光学的に共役の位置にあるからである。このため、照射面9上の配光パターンは、稜線部321を含む共役面PC上の配光パターンと相似形になる。従って、稜線部321は、カットオフライン91の形状にすることが好ましい。
なお、例えば、出射面33がトロイダルレンズ面であった場合には、共役面PCの位置での配光パターンに対して、照射面9上での配光パターンは、縦方向と横方向との比率が異なる。つまり、照射面9上での配光パターンは、共役面PCの位置での配光パターンを基にして形成される。
出射面33は、導光投射光学素子3の+Z軸方向側の端部に設けられている。出射面33は、正のパワーを有する曲面形状をしている。出射面33は、+Z軸方向に突出した凸面形状をしている。
光軸C1は、出射面33の光軸である。また、上述のように、出射面33が平面で投射レンズ8を採用した場合には、光軸C1を、投射レンズ8の光軸とすることができる。投射レンズ8を採用した例は、図21に示して、変形例2で図21を用いて説明する。
<光線の挙動>
図11に示すように、集光光学素子2によって集光された光は、スポット配光形成部311、拡散配光形成部312a又は拡散配光形成部312bのいずれかから導光投射光学素子3に入射する。
図11(B)及び図12では、拡散配光形成部312a,312bの外側が平面形状となっている。しかし、集光光学素子2によって集光された光は、この平面部分からは導光投射光学素子3に入射しない。つまり、導光投射光学素子3に入射する際の光束は、スポット配光形成部311および拡散配光形成部312a,312bの領域内にある。
配光制御面31は、実施の形態1の配光制御素子4と同等の機能を有する。つまり、スポット配光形成部311は、実施の形態1のスポット配光形成部41と同等の機能を有する。また、拡散配光形成部312a,312bは、実施の形態1の拡散配光形成部42a,42bと同等の機能を有する。
スポット配光形成部311は、例えば、X軸方向にのみ曲率を有する凸面形状の屈折面である。拡散配光形成部312a,312bは、例えば、X軸方向にのみ曲率を有する凹面形状の屈折面である。
実施の形態1で説明したように、例えば、拡散配光形成部312a,312bを、例えば、X軸方向にのみ曲率を有する凸面形状の屈折面とすることができる。
ここで、スポット配光形成部311、拡散配光形成部312a及び拡散配光形成部312bのX軸方向の曲率は、路面に対して水平方向の「配光の幅」に寄与する。つまり、スポット配光形成部311、拡散配光形成部312a及び拡散配光形成部312bのZ−X平面上での曲率は、路面に対して水平方向の「配光の幅」に寄与する。
つまり、スポット配光形成部311、拡散配光形成部312a及び拡散配光形成部312bをX軸に平行で配光制御面31に垂直な面で切断した際の切断面の曲率は、路面に対して水平方向の「配光の幅」に寄与する。
また、スポット配光形成部311、拡散配光形成部312a及び拡散配光形成部312bのY軸方向の曲率は、路面に対して垂直方向の「配光の高さ」に寄与する。つまり、スポット配光形成部311、拡散配光形成部312a及び拡散配光形成部312bのY−Z平面上での曲率は、路面に対して垂直方向の「配光の高さ」に寄与する。
つまり、スポット配光形成部311、拡散配光形成部312a及び拡散配光形成部312bの配光制御面31に平行で、X軸に垂直な方向の曲率は、路面に対して垂直方向の「配光の高さ」に寄与する。なお、実施の形態2では、Z−X平面は、配光制御面31と反射面32とに垂直な面である。
なお、上述では、スポット配光形成部311及び拡散配光形成部312a,312bをシリンドリカルレンズとして説明した。しかし、「配光の高さ」を調整する場合には、スポット配光形成部311及び拡散配光形成部312a,312bをX軸方向とY軸方向とで異なるパワーを有するレンズ面とすることができる。ここでの「Y軸方向」は、上述のように、配光制御面31に平行で、X軸に垂直な方向である。
X軸方向とY軸方向で異なる曲率を有するレンズ面とは、例えば、トロイダルレンズ面が挙げられる。「トロイダルレンズ面」とは、樽の表面やドーナツの表面のように、直交する2つの軸方向の曲率が異なる面のことである。
拡散配光形成部312a,312bがトロイダルレンズ面の例を、図21に示して、変形例2で図21を用いて説明する。
<Z−X平面上の光線の挙動>
まず、スポット配光形成部311を通る光について説明する。
図11(B)に示すように、Z−X平面で見ると、スポット配光形成部311は、凸面形状である。つまり、スポット配光形成部311は、水平方向(X軸方向)について正のパワーを有している。
ここで、「Z−X平面で見る」とは、Y軸方向から見るという意味である。つまり、Z−X平面に投影して見るということである。このため、スポット配光形成部311に入射した光は、スポット配光形成部311で更に集光されて伝播する。ここで「伝播」とは、ここでは、導光投射光学素子3の中を光が進行するという意味である。
したがって、スポット配光形成部311に入射して、導光投射光学素子3の出射面33から出射する光の共役面PC上でのX軸方向の光束の幅は、スポット配光形成部311の曲率により変化する。
図11(B)に示すように、光束L1は、スポット配光形成部311に入射して、導光投射光学素子3の出射面33から出射する。光束L2は、拡散配光形成部312に入射して、導光投射光学素子3の出射面33から出射する。
共役面PC上での光束L1のX軸方向の幅は、スポット配光形成部311の曲率により変化する。
Z−X平面で見ると、スポット配光形成部311により、最も明るいスポット配光(高照度領域)を形成するには、図11(B)に示すように、スポット配光形成部311から出射された光の集光位置PWが、共役面PCと一致すれば良い。ただし、スポット配光形成部311によって照明されるX軸方向の領域は最も小さくなる。
つまり、集光位置PWが共役面PCと一致すれば、最も明るいスポット配光が形成される。集光位置PWは、スポット配光形成部311から出射された光のX軸方向の集光位置である。
図11(B)において、X軸方向の集光位置PWは、一点鎖線で示されている。そして、集光位置PWは、稜線部321上に位置している。また、図11(B)において、稜線部321の位置が共役面PCの位置である。図11(A)において、共役面PCは破線で示されている。また、Y軸方向の集光位置PHは、一点鎖線で示されている。
なお、集光光学素子2の入射面211と出射面231とを透過する光について、その集光位置PH,PWが共役面PC上にあるということは、LEDの発光面11を共役面PC上に結像させるということである。つまり、集光光学素子2の入射面211と出射面231とを透過する光について、その集光位置PH,PWが、共役面PCの位置に一致している。そして、光源1の発光面11は共役面PC上に結像される。
また、図11(A)及び図11(B)では、集光光学素子2の入射面211と出射面231とを透過する光について、集光位置PW及び集光位置PHのそれぞれが、共役面PCの位置に一致している。このことは、X軸方向及びY軸方向のそれぞれについて、集光光学素子2と配光制御面31とは、光源1の発光面11を、共役面PC上に結像させるということである。つまり、集光光学素子2と配光制御面31とは、共役面PC上に発光面11の像を形成する。
集光位置PWは、X軸方向の集光位置である。つまり、集光位置PWは、Z−X平面上での集光位置である。集光位置PHは、Y軸方向の集光位置である。つまり、集光位置PHは、Y−Z平面上での集光位置である。
つまり、図11において、集光光学素子2は、X1軸方向とY1軸方向とで異なるパワーを有している。例えば、集光光学素子2の入射面211と出射面231とは、トロイダルレンズである。
例えば、図11(A)のように、Y−Z平面で見れば、集光光学素子2のパワーとスポット配光形成部311のパワーとを合成した集光位置PHは、共役面PC上である。ただし、図11(A)では、スポット配光形成部311はパワー有していないため、集光位置PHは、集光光学素子2のY軸方向の集光位置となる。
一方、図11(B)のように、Z−X平面で見れば、集光光学素子2のパワーとスポット配光形成部311のパワーとを合成した集光位置PWは、共役面PC上である。図11(B)では、スポット配光形成部311はパワーを有している。
集光位置PH,PWは、集光光学素子2と配光制御素子4との合成パワーによる集光位置である。図11(A)では、集光位置PHは、集光光学素子2のパワーによるY軸方向の集光位置である。図11(B)では、集光位置PWは、集光光学素子2とスポット配光形成部311との合成パワーによるX軸方向の集光位置である。
このため、集光光学素子2のX軸方向の焦点の焦点距離は、集光光学素子2のY軸方向の焦点の焦点距離よりも短くなる。つまり、集光光学素子2のZ−X平面上での焦点距離は、集光光学素子2のY−Z平面上での焦点距離よりも短くなる。X軸方向の焦点の位置は、焦点位置PHである。Y軸方向の焦点の位置は、焦点位置PWである。
共役面PCは、照射面9と共役の位置にある。
このため、共役面PC上における水平方向の光の広がりは、照射面9における「配光の幅」に相当する。つまり、入射面31のスポット配光形成部311のX軸方向の曲率を変化させることで、共役面PC上のX軸方向の光束の幅を制御することができる。
これによって、前照灯モジュール110のスポット配光(高照度領域)の明るさを変化させることができる。つまり、スポット配光の幅が狭いときは、スポット配光の幅が広いときに比べてスポット配光の明るさは明るくなる。幅の狭いスポット配光の明るさは、幅の広いスポット配光の明るさよりも明るい。
また、スポット配光形成部311による集光位置PWは、必ずしも共役面PCと一致している必要はない。
図13及び図14は、実施の形態2に係る前照灯モジュール110の集光位置PWを説明する図である。
図13では、スポット配光形成部311から出射した光の集光位置PWは、共役面PCよりも手前側(−Z軸方向側)に位置している。つまり、集光位置PWは、集光光学素子2と導光投射光学素子3の共役面PCとの間に位置している。集光位置PWは、集光光学素子2と共役面PCとの間に位置している。なお、図13では、集光位置PWは、集光光学素子2とスポット配光形成部41とによって決まる。
図13の構成では、集光位置PWを通過した後の光は発散する。したがって、共役面PC上のX軸方向の光束の幅は、集光位置PWのX軸方向の光束の幅よりも広い。そのため、共役面PCからは、水平方向(X軸方向)に広がりを持った光が出射される。
図14では、スポット配光形成部311から出射した光の集光位置PWは、稜線部321(共役面PC)の後段側(+Z軸方向側)に位置している。図14では、集光位置PWは、共役面PCよりも+Z軸方向側に位置している。図14では、共役面PCは集光位置PWよりも−Z軸方向側に位置している。つまり、集光位置PWは、稜線部321(共役面PC)と出射面33との間に位置している。
図14の構成では、共役面PCを透過した光は、集光位置PWで集光している。したがって、共役面上PC上のX軸方向の光束の幅は、集光位置PWのX軸方向の光束の幅よりも広い。そのため、共役面PCからは、水平方向(X軸方向)に広がりを持った光が出射される。
共役面PCから集光位置PWまでの距離を制御することで、共役面PC上のX軸方向の光束の幅を制御することができる。そのため、共役面PWからは、水平方向(X軸方向)に広がりを持った光が出射される。
なお、集光位置PH,PWは、X−Y平面上において光束径がもっとも小さくなることで、単位面積あたりの光の密度が最も高くなる位置である。
このため、集光位置PWと共役面PCの位置(稜線部321のZ軸方向の位置)とが一致する場合には、照射面9上における配光の幅は、最も狭くなる。そして、照射面9上におけるスポット配光の照度は、最も高くなる。なお、ここでは、Z軸方向の位置について説明している。
つまり、最も明るいスポット配光を形成したい場合には、スポット配光形成部311を透過した光の集光位置PWを共役面PCの位置と一致させればよい。また、スポット配光形成部311を透過した光の集光位置PHを共役面PCの位置と一致させればよい。
ここで、集光位置PH,PW及び共役面PCの位置は、Z軸方向の位置である。
次に、拡散配光形成部312a,312bを通る光について説明する。
図11(B)に示すように、Z−X平面で見ると、拡散配光形成部312a,312bは、凹面形状をしている。つまり、拡散配光形成部312a,312bは、水平方向(X軸方向)について負のパワーを有している。図11(B)では、拡散配光形成部42a,42bは、−Y軸方向に凹の凹面形状である。
このため、拡散配光形成部312a,312bに入射した光は、拡散されて導光投射光学素子3に入射して、共役面PCに到達する。つまり、拡散配光形成部312a,312bに入射した光は、発散角が大きくなって導光投射光学素子3に入射する。そして、発散角が大きくなった光は、共役面PCに到達する。
したがって、拡散配光形成部312a,312bに入射して、導光投射光学素子3の出射面33から出射する光の共役面PC上のX軸方向の光束の幅は広くなる。拡散配光形成部312a,312bによって、共役面PC上でのX軸方向の光束の幅は広くなる。
例えば、図11(B)に示すように、拡散配光形成部312a,312bに入射して、導光投射光学素子3の出射面33から出射する光の共役面PC上の光束L2の幅は、スポット配光形成部311に入射して、導光投射光学素子3の出射面33から出射する光の共役面PC上の光束L1の幅よりも広い。ここで、幅は、X軸方向の光束の寸法である。
このようにして、拡散配光形成部312a,312bは、X軸方向に負のパワーを有することで、幅広い配光パターンを形成することができる。拡散配光形成部312a,312bは、スポット配光形成部311を透過して生成されるスポット配光よりも幅広い拡散配光を形成する。
拡散配光形成部312a,312bは、スポット配光よりも幅広い拡散配光を形成する。スポット配光は、スポット配光形成部311を透過して形成される。拡散配光は、拡散配光形成部312a,312bを透過して形成される。
なお、Z−X平面で見て、拡散配光形成部312a,312bを凸面形状とすることができる。つまり、拡散配光形成部312a,312bは、X軸方向に正のパワーを有することができる。この場合には、拡散配光形成部312a,312bの焦点距離は、スポット配光形成部311の焦点距離よりも長い。
これにより、拡散配光形成部312a,312bに入射して、導光投射光学素子3の出射面33から出射する光の共役面PC上の光束L2の幅は、スポット配光形成部311に入射して、導光投射光学素子3の出射面33から出射する光の共役面PC上の光束L1の幅よりも広くなる。
つまり、共役面PC上で、X軸方向において、光束の幅L2は、光束L1の幅よりも広くなる。光束L1は、スポット配光形成部311に入射して、導光投射光学素子3の出射面33から出射する光の光束である。光束L2は、拡散配光形成部312a,312bに入射して、導光投射光学素子3の出射面33から出射する光の光束である。
この拡散配光は、スポット配光に重畳されて照射面9上に投射される。スポット配光は、スポット配光形成部311によって形成される。拡散配光は、拡散配光形成部312a,312bによって形成される。
このように、拡散配光は、スポット配光を内包するように重畳される。そして、拡散配光は、スポット配光が照射面9上に投影する光源1の発光面11の形状(光源像)の境界線をぼかすことができる。前照灯モジュール110は、スポット配光の明るさを維持したまま、容易に配光ムラを低減することができる。
つまり、拡散配光の領域内にスポット配光が位置している。そのため、照射面9上の配光パターンの内側に高照度領域が形成される。拡散配光は、配光パターンの全体を形成する。そして、スポット配光は高照度領域を形成する。
高照度領域は、発光面11の形状(光源像)を基にして形成されている。発光面11の形状は、通常、矩形形状または円形形状である。そのため、発光面11の形状を基にして、高照度領域は容易に形成される。
また、図11に示す前照灯モジュール110は、屈折面と全反射面とで、配光パターンと高照度領域とを形成している。図11に示す集光光学素子2を、通常の集光レンズとすることで、前照灯モジュール110は、屈折面で、配光パターンと高照度領域とを形成することができる。つまり、前照灯モジュール110は、ミラー面を備えるリフレクタを採用していない。このため、前照灯モジュール110は、光利用効率の向上または製造工程の簡素化を容易にする。
<Y−Z平面上の光線の挙動>
配光制御面31は、Y−Z平面で見れば、パワーを有していない。このため、配光制御面31から入射した光をY−Z平面で見れば、例えば、図11(A)に示すように、配光制御面31で屈折された光は導光投射光学素子3内を伝播して、反射面32に導かれる。ここで「伝播」とは、導光部品3の中を光が進行するという意味である。
導光投射光学素子3に入射して反射面32に到達した光は、導光投射光学素子3に入射してから、反射面32に直接到達している。「直接到達する」とは、他の面などで反射されることなく、到達するという意味である。導光投射光学素子3に入射して反射面32に到達した光は、他の面などで反射されることなく、反射面32に到達している。つまり、反射面32に到達した光は、導光投射光学素子3内で最初の反射をする。
また、反射面32で反射された光は、直接、出射面33から出射している。つまり、反射面32で反射された光は、他の面等で反射されることなく、出射面33に到達する。つまり、反射面32で最初の反射をした光は、この一度の反射で出射面33に到達する。
図11では、集光光学素子2の出射面231,232の内、集光光学素子2の光軸C2よりも+Y1軸方向側から出射した光は、反射面32に到達している。また、集光光学素子2の出射面231,232の内、集光光学素子2の光軸C2よりも−Y1軸方向側から出射した光は、反射面32で反射されることなく出射面33から出射している。
つまり、導光投射光学素子3に入射した光のうち、一部の光が反射面32に到達する。反射面32に到達した光は、反射面32で反射されて、出射面33から出射する。
なお、光源1及び集光光学素子2の傾斜角度aの設定により、集光光学素子2から出射する全ての光を反射面32で反射させることができる。また、反射面32の傾斜角度bの設定により、集光光学素子2から出射する全ての光を反射面32で反射させることができる。
また、光源1及び集光光学素子2の傾斜角度aの設定により、導光投射光学素子3の光軸C1方向(Z軸方向)の長さを短くすることができる。そして、光学系の奥行き(Z軸方向の長さ)を短くできる。ここで「光学系」とは、実施の形態1では、集光光学素子2及び導光投射光学素子3を構成要素に持つ光学系である。
また、光源1及び集光光学素子2の傾斜角度aの設定により、集光光学素子2から出射した光を、反射面32に導くことが容易になる。このため、効率的に共役面PC上で稜線部321の内側(+Y軸方向側)の領域に光を集めやすくなる。
つまり、集光光学素子2から出射した光を、反射面32の共役面PC側に集めることで、稜線部321の+Y軸方向の領域から出射する光の出射量を多くすることができる。この場合には、集光光学素子2から出射される中心光線と反射面32と交点は、反射面32の共役面PC側に位置している。
図11では、集光光学素子2から出射された光の中心光線は、稜線部321の位置に到達している。図11では、集光光学素子2から出射された光は、稜線部321の位置に集光している。
つまり、集光光学素子2から出射されて、スポット配光形成部311を透過した光の中心光線は、稜線部321の位置に到達している。このため、上述のように、集光光学素子2と配光制御面31とは、共役面PC上に発光面11の像を形成する。そして、発光面11の像の中心は、稜線部321上にある。
このため、発光面11の中心から−Y1軸方向の像は、稜線部321よりも+Y軸方向の共役面PC上の領域に形成される。また、発光面11の中心から+Y1軸方向の像は、反射面32で反転されて、共役面PC上で、発光面11の中心から−Y1軸方向の像に重ねられる。
発光面11の中心から−Y1軸方向の像を第1の像として、発光面11の中心から+Y1軸方向の像を第2の像とする。第2の像は、反射面32で反転されて、共役面PC上で、第1の像に重ねられる。
これにより、前照灯モジュール100の場合に比べて、前照灯モジュール110は、高光度の配光パターンを形成することができる。つまり、前照灯モジュール110は、前照灯モジュール100よりも、高い光利用効率を実現できる。
実施の形態1で説明したように、前照灯モジュール100は、遮光板5で光を遮光する構成を採用している。このため、前照灯モジュール100は、遮光板5によって第2の像を形成する光を遮光している。
なお、光軸Cs,C2が共役面PCに対して傾斜していることから、光源像は共役面PCに対して傾斜している。しかし、光源像の傾斜は、配光パターンの形成には影響の無い程度とすることができる。
また、共役面PC上に光源像を形成しない構成であっても、反射面32で光を反射させて、共役面PC上に高光度領域を形成することはできる。
従って、照射面9に投影される配光パターンのカットオフライン91の下側の領域を明るくすることが容易になる。
また、導光投射光学素子3の光軸C1方向(Z軸方向)の長さが短くなることで、導光投射光学素子3の光の内部吸収が少なくなり光利用効率が向上できる。「内部吸収」とは、導光部品(本実施の形態では導光投射光学素子3)を光が透過する際の、表面反射の損失を除く、材料内部での光損失のことである。内部吸収は導光部品の長さが長いほど増加する。
一般的な導光素子では、光は導光素子の側面で反射を繰り返して導光素子の内部を進行する。これにより、光の強度分布は均一化される。実施の形態2では、導光投射光学素子3に入射した光は、反射面32で1回反射されて、出射面33から出射されている。この点で、実施の形態2の導光投射光学素子3の使用方法は、従来の導光素子の使用方法と相違する。
道路交通規則等に定められる配光パターンは、例えば、カットオフライン91の下側(−Y軸方向側)の領域が最大照度となっている。上述のように、導光投射光学素子3の稜線部321は、照射面9と共役の関係にある。このため、カットオフライン91の下側(−Y軸方向側)の領域を最大の照度とするには、導光投射光学素子3の稜線部321の上側(+Y軸方向側)の領域の光度を最も高くすれば良い。
なお、稜線部321が直線でない場合には、例えば、稜線部321と光軸C1との交わる位置(点Q)でのX−Y平面に平行な面(共役面PC)が、照射面9と共役の関係にあるようにできる。なお、必ずしも、稜線部321と出射面33の光軸C1とは交わる必要はない。つまり、光軸C1に対して、稜線部321は、+Y軸方向または−Y軸方向に位置することができる。
カットオフライン91の下側(−Y軸方向側)の領域が最大照度となるような配光パターンを生成するには、図11(A)に示すように、Y−Z平面上で見て、導光投射光学素子3の配光制御面31から入射した光の一部を反射面32によって反射させることが有効である。
なぜなら、配光制御面31から入射した光のうち、反射面32で反射せずに稜線部321の+Y軸方向側に到達した光と、反射面32上で反射された光とが、共役面PC上で重畳されるからである。
つまり、照射面9上の高照度領域に対応する共役面PC上の領域で、反射面32で反射せずに共役面PCに到達した光と、反射面32上で反射されて共役面PCに到達した光とを重畳する。このような構成により、稜線部321の上側(+Y軸方向側)の領域の光度を、共役面PC上の光度の中で最も高くすることができる。
反射面32で反射せずに共役面PCに到達した光と、反射面32で反射されて共役面PCに到達した光とを、共役面PC上で重畳することで、光度の高い領域を形成している。共役面PC上での光度の高い領域の位置の変更は、反射面32上での光の反射位置を変更することで可能である。
反射面32上での光の反射位置を共役面PCに近づけることで、共役面PC上の稜線部321の近くを光度の高い領域とすることができる。つまり、照射面9上でのカットオフライン91の下側を照度の高い領域とすることができる。
図11では、集光光学素子2から出射された光は、稜線部321の位置に集光している。このため、照射面9上でのカットオフライン91の下側を照度の高い領域とすることができる。
また、この重畳された光の量は、水平方向の配光の幅を調整する場合と同様に、配光制御面31の垂直方向(Y軸方向)の曲率を任意に変化させることで調整することができる。
「重畳された光の量」とは、反射面32で反射せずに稜線部321の+Y軸方向側(共役面PC上)に到達した光と、反射面32上で反射された光との重畳された光の量である。
この様に、配光制御面31の曲率を調整することで、配光を調整することができる。つまり、配光制御面31の曲率を調整することで、所望の配光を得ることができる。ここで「所望の配光」とは、例えば、道路交通規則等によって定められる所定の配光等のことである。または、複数の前照灯モジュールを用いて、1つの配光パターンを形成する場合には、「所望の配光」とは、各前照灯モジュールに要求される配光のことである。
また、集光光学素子2と導光投射光学素子3との幾何学関係を調整することで、配光を調整することができる。つまり、集光光学素子2と導光投射光学素子3との幾何学関係を調整することで、所望の配光を得ることができる。ここで「所望の配光」とは、例えば、道路交通規則等によって定められる所定の配光等のことである。または、複数の前照灯モジュールを用いて、1つの配光パターンを形成する場合には、「所望の配光」とは、各前照灯モジュールに要求される配光のことである。
「幾何学関係」とは、例えば、集光光学素子2及び導光投射光学素子3の光軸C1方向の位置関係である。集光光学素子2から導光投射光学素子3までの距離が短くなると、反射面32で反射する光の量が少なくなり、配光の垂直方向(Y軸方向)の寸法が短くなる。つまり、配光パターンの高さが低くなる。反対に、集光光学素子2から導光投射光学素子3までの距離が長くなると、反射面32で反射する光の量が増えて、配光の垂直方向(Y軸方向)の寸法が長くなる。つまり、配光パターンの高さが高くなる。
また、重畳された光の位置は、反射面32で反射される光の位置を調整することで変化させることができる。
「重畳された光の位置」とは、反射面32で反射せずに稜線部321の+Y軸方向側(共役面PC上)に到達した光と、反射面32上で反射された光とが共役面PC上で重畳される位置である。つまり、重畳された光の位置は、共役面PC上での高光度領域の範囲である。高光度領域は、照射面9上の高照度領域に対応する共役面PC上の領域である。
また、反射面32で反射される光の集光位置を調整することで、出射面33上での高光度領域の高さを調整することができる。つまり、集光位置が共役面PCに近いと、高光度領域の高さ方向の寸法は短くなる。反対に、集光位置が共役面PCから遠いと、高光度領域の高さ方向の寸法は長くなる。
上述では、高照度領域は、カットオフライン91の下側(−Y軸方向側)の領域と説明している。これは、照射面9上の配光パターンの高照度領域の位置である。
例えば、複数の前照灯モジュールを用いて、照射面9上に1つの配光パターンを形成す場合がある。このような場合には、各前照灯モジュールの共役面PC上での高光度領域は、稜線部321の+Y軸方向側の領域とは限らない。共役面PC上で、各前照灯モジュールの配光パターンに適した位置に、高光度領域を形成する。
上述のように、水平方向の集光位置PWを調整することで、配光パターンの幅を制御することができる。そして、垂直方向の集光位置PHを調整することで、配光パターンの高さを制御することができる。また、水平方向の集光位置PWを調整することで、高照度領域の幅を制御することができる。そして、垂直方向の集光位置PHを調整することで、高照度領域の高さを制御することができる。
このように、水平方向の集光位置PWと垂直方向の集光位置PHとは、必ずしも一致している必要はない。水平方向の集光位置PWと垂直方向の集光位置PHとを独立して設定することで、配光パターンの形状又は高照度領域の形状を制御することができる。
また、導光投射光学素子3の稜線部321の形状を変更することで、カットオフライン91の形状を、容易に形成できる。つまり、カットオフライン91は、導光投射光学素子3の稜線部321をカットオフライン91の形状とすることで容易に形成できる。このため、実施の形態1で示した遮光板5を用いてカットオフライン91の形状を形成する場合と比べて、光利用効率が高いという利点も有する。なぜなら、光を遮光することなくカットオフライン91を形成することができるからである。
共役面PC上に形成された配光パターンの像は、導光投射光学素子3によって車両の前方の照射面9に拡大されて投影される。導光投射光学素子3は、共役面PC上に形成された配光パターンの像を照射面9に投影する。つまり、出射面33は、共役面PC上に形成された配光パターンの像を照射面9に投影する。
出射面33の焦点位置は、例えば、光軸C1上の稜線部321の位置(Z軸方向の位置)に一致している。つまり、出射面33の焦点位置は、稜線部321と光軸C1との交点上にある。
または、出射面33の焦点のZ軸方向(光軸C1方向)の位置は、稜線部321のZ軸方向の位置に一致している。この場合には、出射面33の焦点は、稜線部321上になくてもよい。
従来の前照灯装置では、遮光板と投射レンズとを用いるために、部品間の位置ばらつきによるカットオフラインの変形又は配光のばらつき等の変化が発生した。しかし、導光投射光学素子3は、1つの部品の形状精度で、出射面33の焦点位置を光軸C1方向で稜線部321の位置に一致させることができる。
これにより、前照灯モジュール110は、カットオフラインの変形又は配光のばらつき等の変化を抑えることができる。なぜならば、一般に2つの部品間の位置精度よりも1つの部品の形状精度の方が容易に向上できるからである。
図15(A)及び図15(B)は、実施の形態2に係る前照灯モジュール110の導光投射光学素子3の反射面32の形状を説明する図である。図15(A)及び図15(B)は、導光投射光学素子3の配光制御面31から共役面PCまでの部分を抜き出して表わしている。
図15(A)は、比較のために、反射面32がZ−X平面に対して傾斜していない場合を示している。つまり、図15(A)の反射面32は、Z−X平面に平行である。図15(B)は、導光投射光学素子3の反射面32の形状を表している。
図15(B)に示す導光投射光学素子3の反射面32は、Z−X平面に対して平行な面ではない。例えば、図15(B)に示すように、反射面32は、Z−X平面に対してX軸を回転軸とした傾斜した平面(傾斜面)である。導光投射光学素子3の反射面32は、−X軸方向から見て、X軸を回転軸として、時計回りに回転した面である。図15(B)では、反射面32は、Z−X平面に対して角度fだけ回転した面となっている。つまり、反射面32の配光制御面31側(−Z軸方向側)の端部は、共役面PC側(+Z軸方向側)の端部(稜線部321)よりも+Y軸方向に位置する。
図15(A)に示す導光投射光学素子3の反射面32は、Z−X平面に平行な平面である。入射面31から入射した光は、反射面32で反射して、共役面PCに到達する。
光の反射面32への入射角は、入射角S1である。そして、光の反射面32での反射角は、反射角S2である。反射の法則から、反射角S2は、入射角S1に等しい。反射面32の垂線m1は、図15(A)中に一点鎖線で示されている。
光は共役面PCに対して入射角S3で入射する。光は共役面PCから出射角Sout1で出射する。出射角Sout1は、入射角S3に等しい。共役面PCの垂線m2は、図15(A)中に一点鎖線で示されている。共役面PCの垂線m2は、光軸C1に対して平行である。
なお、図15(A)および図15(B)では、共役面PCを実線で描いている。しかし、共役面PCは、上述のように、架空の面である。つまり、共役面PCは、仮想の面である。
光は配光制御面31で大きく屈折するため、共役面PCから出射する光の出射角Sout1は大きくなる。出射角Sout1が大きくなると、それに伴って、出射面33の口径は大型化する。なぜなら、出射角Sout1の大きな光は、出射面33上で光軸C1から離れた位置に到達するからである
一方、図15(B)に示す導光投射光学素子3の反射面32は、X−Z平面に対して傾斜している。反射面32の傾斜方向は、−X軸方向から見て、X−Z平面に対して時計回りに回転する方向である。
つまり、反射面32は、光の進行方向(+Z軸方向)に対して、導光投射光学素子3内の光路が広がる方向に傾斜している。反射面32は、光の進行方向(+Z軸方向)に向けて、導光投射光学素子3内の光路が広がるように傾斜している。ここで、光の進行方向は、導光投射光学素子3内の光の進行方向である。そのため、光の進行方向は、導光投射光学素子3の光軸C1に平行な方向である。
反射面32は、出射面33の光軸C1の方向において、出射面33側を向くように傾斜している。「出射面33側を向く」とは、出射面33側(+Z軸方向側)から見て、反射面32が見えるということである。
配光制御面31から入射した光は、反射面32で反射して、共役面PCに到達する。
光の反射面32への入射角は、入射角S4である。そして、光の反射面32での反射角は、反射角S5である。反射の法則から、反射角S5は、入射角S4に等しい。反射面32の垂線m3は、図15(B)中に一点鎖線で示されている。
光は共役面PCに対して入射角S6で入射する。光は共役面PCから出射角Sout2で出射する。出射角Sout2は、入射角S6に等しい。共役面PCの垂線m4は、図15(B)中に一点鎖線で示されている。共役面PCの垂線m4は、光軸C1に対して平行である。
反射面32の傾斜により、入射角S4は入射角S1より大きい。また、反射角S5は反射角S2より大きい。そのため、入射角S6は入射角S3より小さくなる。つまり、共役面PCから出射される際の光軸C1に対する光の傾斜角度を比較すると、出射角Sout2は出射角Sout1より小さくなる。
反射面32を、光の進行方向(+Z軸方向)に向けて、導光投射光学素子3内の光路が広がるように傾斜させることで、出射面33の口径を小さくすることができる。
反射面32を、出射面33の光軸C2の方向において、出射面33側を向くように傾斜させることで、出射面33の口径を小さくすることができる。投射レンズ8を採用する場合には、反射面32を、投射レンズ8の光軸Cpの方向において、投射レンズ8側を向くように傾斜させることで、投射レンズ8の口径を小さくすることができる。
なお、出射角Sout2を出射角Sout1より小さくするために、反射面32を曲面形状とすることも可能である。つまり、反射面32は、光の進行方向(+z軸方向)に向けて光路が広がるような曲面で形成されている。
反射面32は、出射面33の光軸C1の方向において、出射面33側を向くような曲面で形成されている。投射レンズ8を採用する場合には、反射面32は、投射レンズ8の光軸Cpの方向において、投射レンズ8側を向くような曲面で形成されている。
反射面32の傾斜は、反射面32で反射した光が共役面PCから出射するときの出射角Soutを小さくするように作用する。したがって、反射面32の傾斜により、出射面33の口径を小さくすることができる。また、投射レンズ8を採用する場合には、反射面32の傾斜により、投射レンズ8の口径を小さくすることができる。そして、前照灯モジュール110を小型化できる。特に、前照灯モジュール110の高さ方向(Y軸方向)の薄型化に貢献する。
なお、導光投射光学素子3は、図15(A)に示した反射面32の構成を採用できる。
<配光パターン>
前照灯モジュール110は、導光投射光学素子3の入射面を配光制御面31としているので、実施の形態1と同様の配光パターンを得ることができる。このため、配光パターンに関する説明を実施の形態1の説明で代用する。
また、実施の形態1の遮光板5と同様に、稜線部321の形状により「立ち上がりライン」を容易に形成することができる。
図16は、導光投射光学素子3の共役面PC上での断面形状の一例を示した模式図である。稜線部321の形状は、例えば、図16に示すような段差のある形状にすることができる。つまり、図16に示す稜線部321の形状は、上述した屈曲線形状をしている。
導光投射光学素子3の場合には、導光投射光学素子3の内部を光が進行する。このため、稜線部321a,321bの形状は、実施の形態1に示す遮光板5の辺51a,51bの形状と同じとなる。稜線部321a,321bは、導光投射光学素子3の断面上の−Y軸方向側の辺である。辺51a,51bは、遮光板5の+Y軸方向側の辺である。
後方(−Z軸方向)から見て、左側(+X軸方向側)の稜線部321aは、右側(−X軸方向側)の稜線部321bよりも高い位置(+Y軸方向)にある。
共役面PCと照射面9とは、光学的に共役の関係にある。このため、共役面PC上の配光パターンの形状は、上下方向及び左右方向が反転して照射面9上に投影される。つまり、照射面9上で、車両の進行方向の左側のカットオフライン91は高く、右側のカットオフライン91は低い。
これにより、歩行者の識別及び標識の識別のために、歩道側(左側)の照射を立ち上げる「立ち上がりライン」を容易に形成することができる。なお、車両が道路の左側を走行する場合で説明している。このため、車両が道路の右側を走行する場合には、立ち上がりラインは、左右方向が逆になる。つまり、右側の照射を立ち上げる立ち上がりラインとなる。
また、車両の中には、複数の前照灯モジュールを並べて、各モジュールの配光パターンを足し合わせて配光パターンを形成する場合がある。つまり、複数の前照灯モジュールを並べて、各モジュールの配光パターンを足し合わせて配光パターンを形成する場合がある。この様な場合でも、実施の形態2に係る前照灯モジュール110は、容易に適用できる。
前照灯モジュール110は、導光投射光学素子3の配光制御面31の曲面形状を調整することで、配光パターンの幅及び高さを変化させることができる。そして、配光分布も変化させることができる。
また、前照灯モジュール110は、集光光学素子2と導光投射光学素子3との光学的な位置関係又は導光投射光学素子3の配光制御面31の形状を調整することで、配光パターンの幅及び高さを変化させることができる。そして、配光分布も変化させることができる。
また、反射面32を用いることで、配光分布の変化も容易にできる。例えば、反射面32の傾斜角度bを変化させることで、高照度領域の位置を変化させることができる。
また、前照灯モジュール110は、導光投射光学素子3の稜線部321の形状で、カットオフライン91の形状を規定することができる。つまり、導光投射光学素子3の形状により配光パターンを形成できる。
このため、複数の前照灯モジュール間で、特に、集光光学素子2の形状等を変更する必要がない。つまり、集光光学素子2を共通部品とできる。このため、部品の種類を削減でき、組立性を改善して、製造コストを低減することができる。
また、この様な配光パターンの幅及び高さを任意に調整する機能と、配光分布を任意に調整する機能とは、前照灯モジュール110の全体で発揮できれば良い。前照灯モジュール110の光学部品は、集光光学素子2及び導光投射光学素子3を備える。つまり、これらの機能を、前照灯モジュール110を構成する集光光学素子2又は導光投射光学素子3のいずれかの光学面に分散することも可能である。
例えば、導光投射光学素子3の反射面32を曲面形状にしてパワーを持たせ、配光を形成することも可能である。
しかし、反射面32については、必ずしも全ての光が反射面32に到達する必要は無い。このため、反射面32に形状を持たせた場合には、配光パターンの成形に寄与できる光の量は限られる。そのため、反射面32で反射することで、配光パターンに反射面32の形状の作用を与えられる光の量は限られる。つまり、光が反射面32で反射されることで、反射面32の形状が配光パターンに与える影響は限られている。したがって、全ての光に対して光学的に作用を与えて、容易に配光パターンを変化させるためには、配光制御面31にパワーを持たせて配光を形成させることが好ましい。
なお、実施の形態1で説明した配光制御素子4、反射素子および投射レンズ8を用いて導光投射光学素子3と同等の機能を実現することができる。反射素子は、反射面32に相当する。
<変形例2>
図21は、変形例2に係る前照灯モジュール111の構成を示す構成図である。
前照灯モジュール111は、光源1,6、集光光学素子7および投射レンズ8を備えている。また、前照灯モジュール111は、集光光学素子2を備えていない。集光光学素子2は、光源1用の集光素子である。変形例2では、例として、導光投射光学素子3の代わりに、出射面330が平面の光学素子を示している。この光学素子は投射機能を有していないため、導光光学素子30として説明する。
まず、ハイビーム用の光源6について説明する。
光源6と集光光学素子7について説明を容易にするために新たな座標系としてX2Y2Z2座標を用いる。X2Y2Z2座標は、XYZ座標を−X軸方向から見て、X軸を回転軸として反時計回りに角度eだけ回転した座標である。
光源6は、発光面61を備える。光源6は、発光面61から車両の前方を照明するための光を出射する。
光源6は、集光光学素子7の−Z2軸側に位置している。光源6は、導光光学素子30の−Z軸側(後方)に位置している。そして、光源6は、導光光学素子30の−Y軸側(下側)に位置している。
図21では、光源6は、+Z2軸方向に光を出射している。光源6は、その種類を特に限定していないが、上述の説明の通り以下の説明では、光源6がLEDであるとして説明する。
集光光学素子7は、光源6の+Z2軸側に位置している。また、集光光学素子7は、導光光学素子30の−Z2軸側に位置している。集光光学素子7は、導光光学素子30の−Z軸側(後方)に位置している。そして、集光光学素子7は、導光光学素子30の−Y軸側(下側)に位置している。
集光光学素子7は、光源6から発せられた光を入射する。集光光学素子7は、前方(+Z2軸方向)に光を集光させる。図21では、集光光学素子7が正のパワーを有する集光光学素子7として示している。
また、変形例2で示す集光光学素子7は、例えば、内部が屈折材で満たされている。
図21では、集光光学素子7は、1つの集光光学素子7で構成されているが、複数の光学部品を用いることもできる。しかし、複数の光学素子を用いる場合には、各光学素子の位置決め精度を確保するなど、製造性を低下させることになる。
変形例2では、集光光学素子7の光軸C3は、Z2軸に平行である。また、集光光学素子7の光軸C3は、光源6の光軸Cs2と一致している。
集光光学素子7の詳細な構成及び機能は集光光学素子2と同様である。そのため、集光光学素子2の説明で、集光光学素子7の説明を代用する。ただし、集光光学素子7の焦点距離等の光学性能は、集光光学素子2に対して異なる値を取りえる。
光源6及び集光光学素子7は、導光光学素子30の下側(−Y軸方向側)に配置されている。また、光源6及び集光光学素子7は、導光光学素子30の後方(−Z軸方向側)に配置されている。つまり、変形例2に係る前照灯モジュール111では、図21に示すように、光源7は、光源1の下側(−Y軸方向側)に配置されている。
次に、光線の挙動について説明する。
図21に示すように、集光光学素子7によって集光された光は、導光光学素子30の入射面34に入射する。入射面34は、屈折面である。また、図21では、入射面34は、平面形状で示している。入射面34に入射した光は、入射面34で屈折される。入射面34に入射した光は、出射面330から出射する。
なお、変形例2で示す導光光学素子30は、例えば、内部が屈折材で満たされている。
入射面34は照射面9と共役の関係にある。つまり、入射面34は、照射面9と光学的に共役の位置にある。従って、入射面34上に集光光学素子7によって形成された配光パターンの像は、投射レンズ8によって車両の前方の照射面9に拡大して投影される。
入射面34は稜線部321よりも下側(−Y軸方向側)に配置されている。このため、入射面34上に形成された配光パターンの像は、照射面9上ではカットオフライン91よりも上側(+Y軸方向側)に投影される。したがって、光源6及び集光光学素子7は、ハイビームで照明される領域を照明することができる。
また、図21に示すように集光光学素子7から出射される光の集光位置を調整することで、ハイビームの配光を変更することができる。また、集光光学素子7と導光光学素子30との幾何学関係を調整することで、ハイビームの配光を変更することができる。
「幾何学関係の調整」とは、例えば、集光光学素子7と導光光学素子30との光軸C1方向(Z軸方向)の位置関係を調整することである。集光光学素子7と導光光学素子30との光軸C1方向の位置関係が異なれば、集光光学素子7によって集光された入射面34上の集光スポットのサイズが変わる。つまり、集光光学素子7によって集光された光の入射面34上の光束径が変わる。そして、それに応じて、照射面9上の配光は変化する。
上述の例では、入射面34を共役面PC上に配置した。しかし、入射面34を共役面PCより−Z軸方向側に配置することができる。つまり、共役面PCは入射面34の+Z軸側に存在する。共役面PCは導光光学素子30の内部に存在する。
このような構成の場合には、共役面PCの稜線部321より下側(−Y軸方向側)に形成される配光パターンの像を、入射面34の形状で制御することができる。
例えば、入射面34は正のパワーを有する曲面形状である。そして、集光光学素子7から出射された光は稜線部321に集光する。このような場合には、カットオフライン91の上側(+Y軸側)の領域が最も明るく照明される配光パターンとなる。
この様に、入射面34の面の形状を変化させることで、容易にハイビームの配光パターンを制御することができる。
以上のように、実施の形態2に係る前照灯モジュール111は、ロービームの配光パターンとハイビームの配光パターンとの両方を同一の前照灯モジュールで容易に形成することができる。つまり、ハイビーム用の前照灯モジュールとロービーム用の前照灯モジュールとをそれぞれ別々に用意する必要がない。このため、従来の前照灯装置に比べて小型の前照灯装置を実現することができる。
次に、投射レンズ8の採用について説明する。
導光光学素子30は、出射面330を備えている。出射面330は、例えば、平面である。出射面330は、例えば、投射レンズ8の光軸Cpに垂直な平面である。
そのため、導光光学素子30は、配光パターンを照射面9上に投影する機能を有していない。そして、前照灯モジュール111は、投射レンズ8を備えている。投射レンズ8は、配光パターンを照射面9上に投影する。
つまり、導光光学素子30は、配光制御素子4を含んだ構成をしている。また、導光投射光学素子3は、導光光学素子30が投射レンズ8を含んだ構成をしている。
投射レンズ8の焦点は、例えば、光軸Cpの方向において、配光パターンの位置にある。つまり、配光パターンは共役面PC上に形成されている。これにより、投射レンズ8は、この配光パターンを照射面9上に投影することができる。
なお、出射面330にパワーを持たせることができる。この場合には、出射面330と投射レンズ8とが、配光パターンを照射面9上に投影する。
最後に、トロイダルレンズ面の拡散配光形成部312a,312bについて説明する。
導光光学素子30の配光制御面31は、トロイダルレンズ面で形成されている。図21では、Y−Z平面上で見て、配光制御面31は、曲面形状をしている。このため、例えは、スポット配光形成部311または拡散配光形成部312は、Y−Z平面上で、集光機能を有している。
このため、前照灯モジュール111は、光源1から出射された光を集光する集光光学素子2を備えていない。
図21に示す前照灯モジュール111では、スポット配光形成部311または拡散配光形成部312で集光された光は、共役面PCで集光している。また、図21に示す前照灯モジュール111では、スポット配光形成部311または拡散配光形成部312で集光された光は、稜線部321で集光している。また、図21に示す前照灯モジュール111では、スポット配光形成部311または拡散配光形成部312で集光された光は、投射レンズ8の光軸Cp上で集光している。
実施の形態3.
図17は、前照灯モジュール100,102,110,111を実装した前照灯装置10の構成を示した構成図である。上述の実施の形態では、前照灯モジュール100,102,110,111の実施の形態を説明した。図17では、一例として、前照灯モジュール100を搭載した例を示している。
例えば、図17に示された3つの前照灯モジュール100の全部又は一部を、前照灯モジュール102,110,111に置きかえることができる。
前照灯装置10は、筐体97を備える。また、前照灯装置10は、カバー96を備えることができる。
筐体97は、前照灯モジュール100を保持している。
筐体97は、例えば、車体の内部に配置されている。
筐体97の内部には、前照灯モジュール100が収められている。図17では、例として、3個の前照灯モジュール100が収められている。なお、前照灯モジュール100の個数は、3個に限定されない。前照灯モジュール100の個数は、1個または2個でも良く、4個以上でも良い。
前照灯モジュール100は、例えば、筐体97の内部に、X軸方向に並べて配置されている。なお、前照灯モジュール100の並べ方は、X軸方向に並べる方法に限らない。デザイン又は機能等を考慮して、前照灯モジュール100をY軸方向又はZ軸方向にずらして配置しても良い。
また、図17では、筐体97の内部に前照灯モジュール100を収めている。しかし、筐体97は、箱形状である必要はない。筐体97は、フレーム等で構成されており、そのフレームに前照灯モジュール100が固定される構成を採用しても良い。なぜなら、四輪の自動車等の場合には、筐体97は車体の内部に配置されているからである。このフレーム等は、車体を構成する部品であってもよい。この場合には、筐体97は車体を構成する一部となる。つまり、筐体97は筐体部となる。
自動二輪車の場合には、筐体97は、ハンドルの近くに配置されている。四輪の自動車の場合には、筐体97は、車体の内部に配置されている。
カバー96は、前照灯モジュール100から出射された光を透過する。そして、カバー96を透過した光は、車両の前方に出射される。カバー96は透明な材料で作製されている。
カバー96は、車体の表面部分に配置されて、車体の外部に表れている。
カバー96は、筐体97の+Z軸方向に配置されている。
前照灯モジュール100から出射された光は、カバー96を透過して、車両の前方(+Z軸方向)に出射される。図17では、カバー96から出射された光は、隣り合う前照灯モジュール100から出射された光と重なり合って、1つの配光パターンを形成している。
カバー96は、前照灯モジュール100を風雨又は塵埃等から守るために設けられている。しかし、投射レンズ8が前照灯モジュール100の内部の部品を風雨又は塵埃等から守る構造の場合には、特にカバー96を設ける必要はない。
以上で説明したように、複数の前照灯モジュール100を備える場合には、前照灯装置10は、前照灯モジュール100の集合体である。また、1個の前照灯モジュール100を備える場合には、前照灯装置10は、前照灯モジュール100と等しくなる。つまり、前照灯モジュール100が前照灯装置10である。または、前照灯装置10は、1個の前照灯モジュール100にカバー96または筐体97などを取り付けた構成となる。
なお、上述の各実施の形態においては、「平行」または「垂直」などの部品間の位置関係又は部品の形状を示す用語を用いている場合がある。これらは、製造上の公差や組立て上のばらつきなどを考慮した範囲を含む。このため、請求の範囲に部品間の位置関係または部品の形状を示す記載した場合には、これらの記載は、製造上の公差又は組立て上のばらつき等を考慮した範囲を含む。
また、以上のように本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこれらの実施の形態に限るものではない。
<付記>
以下の内容を付記として記載する。
<付記1>
光を出射する光源と、
前記光源から出射された光を集光光に変換する集光光学素子と、
前記集光光の焦点位置を変更する配光制御素子と、
前記配光制御素子から出射した光を投射する投射光学素子と
を備え、
前記配光制御素子は、前記投射光学素子の光軸に垂直な面であって、前記投射光学素子の前側の焦点位置にある面上に前記投射光学素子が投射する配光パターンの配光分布を形成し、前記配光パターンの中に高光度領域を形成する第1の配光形成部及び前記配光パターンの中に、前記高光度領域よりも低い光度の低光度領域を形成する第2の配光形成部を備える前照灯モジュール。
<付記2>
前記第1の配光形成部は、前記集光光学素子の光軸上に配置される付記1に記載の前照灯モジュール。
<付記3>
前記第1の配光形成部は、前記第2の配光形成部よりも大きいパワーを有する付記1又は2に記載の前照灯モジュール。
<付記4>
前記配光制御素子から出射した光を反射する反射面を備え、
前記投射光学素子の光軸方向において、前記反射面の前記投射光学素子側の端部は、前記面上に位置する付記1から3のいずれか1項に記載の前照灯モジュール。
<付記5>
付記1から4のいずれか1項に記載の前照灯モジュールを備えた前照灯装置。