JP6112652B2 - 標的dnaの特異的増幅方法 - Google Patents

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Description

本発明は、サンプルに含まれる標的DNAの特異的増幅方法、標的DNAの特異的増幅方法のためのキット、および標的DNAの検出方法に関する。
河川や土壌などの環境中には培養条件が不明な微生物が多数存在する。このような微生物は、解析対象とするDNAを十分に取得することができないため、遺伝子解析が十分に進んでいない。このような微生物の遺伝子を解析することによって、全く新規な有用遺伝子が見出されることが期待されている。
人為的培養ができない微生物の遺伝子解析の手法として、メタゲノム解析が知られている。メタゲノム解析は、環境中の微生物の集合体(微生物叢)から抽出した各種微生物ゲノムDNAの混合物を解析対象として用いる。メタゲノムに含まれる同一種由来のDNAのポピュレーションは極めて低いため、実際の解析では、抽出したDNA混合物をもとにランダムプライマーを用いて元の組成を維持しつつ増幅させた増幅産物を用いることがある。データベース上のデータに基づくバイオインフォマティクス解析等がこれらのゲノムDNAについて行われるため、得られる遺伝子情報はしばしば有用遺伝子の一部分となる。このような部分的な遺伝子配列情報から全体の遺伝子情報を得るためには、その部分配列を含むゲノムDNAを広範囲にわたって取得する必要がある。そのため、一部の配列情報をもとにして、その周辺領域を含む広範囲のゲノムDNAを特異的に増幅させる技術が求められている。
一部の既知配列からその周辺配列を特異的に増幅させる方法として、逆PCR法が知られている(非特許文献1など)。逆PCR法は、DNAサンプルを特定の制限酵素で断片化してDNA連結酵素によって自己環状化させた環状DNAをテンプレートとして用いて、環状DNAの一領域から外に向かって設計したプライマーによってPCR反応を行うことにより、環状化DNA全体を増幅させる技術である。
しかしながら、逆PCR法にはいくつかの問題がある。まず、逆PCR法では、通常のDNA合成酵素が用いられるが、通常のDNA合成酵素は、増幅できる鎖長がおおよそ10K残基以内であり、それより長い場合には増幅効率が著しく低いことが知られており、逆PCR法によって広範囲のゲノム領域を取得することは困難である。そこで、増幅に適した長さのテンプレートDNAを得るために、様々な制限酵素を用いたDNA断片化の条件検討が必要になる。また、PCR法によるDNA増幅は、鋳型となるDNA配列、特にGC残基の存在割合(GC%)に非常に大きな影響を受けるため、特定のDNA配列は増幅させることができない。さらに、エクステンションと呼ばれるDNA合成時間長は、テンプレートの環状DNA長に合わせて設定する必要があるため、長さが不明のDNAを増幅させる場合には、多数の合成時間長を検討しなければならない。このようなことから、通常のDNA合成酵素によるPCR法を用いずにゲノムDNAを広範囲にわたって特異的に増幅させる技術が求められている。
DNAを増幅させる酵素として、鎖置換型DNA合成酵素が知られている。鎖置換型DNA合成酵素は、鋳型となる二本鎖DNAの水素結合を自ら解離しつつ、新しいDNA鎖を合成する酵素である。鎖置換型DNA合成酵素は、室温などの等温条件下で増幅反応を行う。環状DNAをテンプレートとして鎖置換型DNA合成酵素を用いてDNA合成を行うと、合成酵素が複製起点に達しても鎖を剥がしながら合成を進めるため、結果的に、テンプレートDNAがタンデムに並んだ直鎖状のDNAが合成される。鎖置換型DNA合成酵素は、PCR法に用いられる通常のDNA合成酵素と異なり、変異の導入効率が低く、長鎖DNAの合成に適していることが知られている。
鎖置換型DNA合成酵素は、至適反応温度が低く、低反応温度では長いプライマーは増幅の鋳型として非特異的な増幅を引き起こすため、鎖置換型DNA合成酵素とともに用いることができるプライマーの長さには制限があると考えられている。また、鎖置換型DNA合成酵素には製造の過程で宿主DNAが不可避的に混入しており、これが増幅の鋳型となって特異的増幅の妨げになることが知られている。そのため、鎖置換型DNA合成酵素を用いて各種のDNA混合物から目的DNA配列を特異的に増幅させることは容易ではないと考えられている。
特許文献1は、特異的増幅のために鎖置換型DNA合成酵素を用いる技術として、特殊なアダプターと複数のプライマーとを用いる方法を開示する。しかしながら、長鎖DNAはアダプターとのライゲーション効率が低いため、この方法は、長鎖ゲノムDNAを増幅する目的には適さない。また、この方法は、増幅目的DNAに対する脱リン酸化処理や制限酵素処理などの煩雑な工程を行う必要があり、その際に目的DNAを失う可能性があるため、微量のDNAをテンプレートとするメタゲノム解析の用途には適さない。なお、この方法では、1つのDNA合成反応で二本鎖DNAが合成されており、一本鎖DNAを合成する工程は行われていない。
鎖置換型DNA合成酵素の他の用途として、標的領域の存否を検出する反応への用途が知られている(特許文献2、非特許文献2〜3参照)。これらの方法では、特定のDNAが特異的に増幅されている。しかしながら、これらの方法は、極めて短鎖の非天然のプローブを特異的に増幅させており、サンプルに含まれる天然の微生物ゲノムDNA配列などの長鎖DNAを増幅させるものではない。また、鎖置換型DNA合成酵素は、至適反応温度が低いことを生かして、短鎖のランダムプライマーと組み合わせて用いて、各種DNA混合物をまんべんなく増幅させる目的にも用いられてきた(特許文献3〜6、および非特許文献4〜6参照)。これらの方法は、合成反応において複数のプライマーを用いるなど、特異性の低い増幅を行うことを目的としており、特定のプライマーによって合成されたDNAが再びプライマーとアニーリングして二本鎖DNAが合成されるため、その合成反応は、一本鎖DNAを合成する工程を行っていない。
特開2011−58号公報 特開2012−80871号公報 特開2010−94091号公報 特開2009−35号公報 特表2006−512094号公報 特開2010−51182号公報
Ochman,H.et al.,Genetic applications of an inverse polymerase chain reaction.Genetics,120(3),621−623,(1988). Nat Methods.2004 Dec;1(3):227−32.Epub 2004 Nov 18. Nucleic Acids Res.1998 Nov 15;26(22):5073−8. Dean,F.B.et al.,Comprehensive human genome amplification using multiple displacement amplification.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 99(8),5261−5266,(2002). Yamada,K.et al.,Retrieval of entire genes from environmental DNA by inverse PCR with pre−amplification of target genes using primers containing locked nucleic acids.Environ Microbiol.10(4),978-987,(2008). Biotechniques.2009 Jul;47(1):609−15.
したがって、本発明は、特異的に増幅させることを目的とするサンプル中の標的DNAが微量の長鎖DNAである場合や、用いるプライマーが高度の特異性を有する長鎖である場合であっても、複雑な工程を経ることなく、また、非特異的増幅産物を生じさせることなく、メタゲノム解析に耐える実用的な感度で、鎖置換型DNA合成酵素によって標的DNAを増幅させることを目的とする。
本発明者らは、上記の目的について鋭意探求していたところ、一般的に行われているように鎖置換型DAN合成酵素と複数のプライマーとを用いて一度に二本鎖DNAを合成させるのではなく、あえて、一本鎖DNA合成を行い、その後、合成された一本鎖DNAの相補鎖を合成するという二段階の増幅工程を試みた。すると、全く意外なことに、二段階の増幅工程を経ずに一度に二本鎖DNAを合成させていた場合に比して飛躍的に高い特異性で目的とする二本鎖DNAを増幅させることができ、長鎖DNAを標的DNAとする場合や、長鎖プライマーを用いる場合であっても、メタゲノム解析に耐える実用的な感度で、サンプルに含まれる標的DNAを特異的に増幅させることができることを見出した。
すなわち、本発明は、標的DNAを環状DNAとして含むサンプル、標的DNAに対する特異的なプライマー、および鎖置換型DNA合成酵素を用いて一本鎖DNAを合成する工程を含むことを特徴とする、サンプルに含まれる標的DNAの特異的増幅方法を提供する。
また、本発明は、合成された一本鎖DNAの相補鎖を合成して二本鎖DNAを合成する工程を含む、前記の方法を提供する。
また、本発明は、一本鎖DNAを合成する工程の前に、DNA結合酵素を用いて標的DNAを含む環状DNAを合成する工程を含む、前記の方法を提供する。
また、本発明は、標的DNAに対する特異的なプライマーが非DNA核酸プライマーである、前記の方法を提供する。
また、本発明は、非DNA核酸プライマーがRNAプライマーである、前記の方法を提供する。
さらに、本発明は、鎖置換型DNA合成酵素、鎖置換型DNA合成反応用緩衝液、およびデオキシリボヌクレオチドを含む、前記の方法を行うためのキットを提供する。
また、本発明は、非DNA核酸プライマーを含む、前記のキットを提供する。
さらに、本発明は、前記の方法によって合成された核酸を検出することを含む、標的DNAの検出方法を提供する。
さらに、本発明は、標識ヌクレオチドアナログを用いて前記の方法を行うことを特徴とする、標識DNAの製造方法を提供する。
また、本発明は、標識ヌクレオチドアナログ、DNA結合酵素、鎖置換型DNA合成酵素、鎖置換型DNA合成反応用緩衝液、およびデオキシリボヌクレオチドを含む、前記の製造方法を行うためのキットを提供する。
本発明の増幅方法によれば、特異的に増幅させることを目的とするサンプル中の標的DNAが微量の長鎖DNAである場合や、用いるプライマーが高度の特異性を有する長鎖である場合であっても、複雑な工程を経ることなく、また、非特異的な増幅産物を生じさせることなく、メタゲノム解析に耐える実用的な感度で、サンプル中に存在する標的DNAを増幅させることができる。本発明の増幅方法によれば、極めて効率的にメタゲノム解析を行うことができ、人為的に培養することができない環境中の微量微生物から全く新規な有用遺伝子の情報を取得するメタゲノム解析が極めて容易になる。
また、本発明の増幅方法においては、PCR法において問題となる増幅産物のキャリーオーバーによるコンタミネーションを考慮する必要が殆どないため、初期導入コストとランニングコストを低く抑えることが可能である。
本発明の増幅方法によれば、簡便な操作と設備で目的のDNAをその全配列が既知であるか否かにかかわらず増幅することができ、また、当該DNAを有する微生物などを検出するために有用なDNAマーカーを容易に作製することができ、医学、薬学、農学、食品学などの研究や、感染症の臨床検査の医療分野や、食品産業における簡便な生菌検査や食中毒における迅速検査など、簡便さ、省力化、迅速さが求められる様々な基礎および応用分野においてとくに有用である。
メタゲノム解析においては、個体数が非優占であっても細菌種が非常に多数いるため、次世代シークエンサーを用いて配列未知の標的遺伝子の配列決定を行おうとしても、それらのゲノムも同時に解読してしまい、同一ゲノム由来のリードを取得する確率が低く、そのためアセンブルされず長いコンティグを取得することができなかった。本発明の増幅方法によれば、配列未知の標的遺伝子を特異的に濃縮することができるため、冗長度が上昇することでコンティグ長が増加し、遺伝子の全配列を取得することが可能になる。特に、本発明の増幅方法によれば、創薬シーズとして注目されているものの現在取得方法が確立されていなかったメタゲノム中の二次代謝産物の遺伝子クラスターを取得することができる。
メタゲノム解析において、従来法は、セルソーターや、希釈法、マイクロフルイディクスなどで分取された微生物1細胞をもとにして、ランダムヘキサマーを用いたMDA法(multiple displacement amplification)で全ゲノム増幅をしたものを、全ゲノム解読に使用している。このランダムな配列のプライマーを用いたMDA法では、phi29DNA polymeraseに混入している大腸菌ゲノムも増幅されるという問題があった。本発明の増幅方法において、大腸菌にコードされていない配列のプライマーを設計して使用することによって、この問題を回避することができる。そして、メタゲノム解析において得られた部分配列情報を用いて、効率的に、微生物の1細胞由来のゲノムをほぼ完全に増幅することができる。
図1は、本発明の増幅方法によって特異的に増幅させた一本鎖DNAを、用いたプライマーごとに異なるレーンでゲル電気泳動して確認する写真である。 図2は、本発明の増幅方法によって特異的に増幅させた一本鎖DNAの相補鎖をPhi29 DNA polymerase(図2A)またはLA Taq polymerase(図2B)によって合成して得た二本鎖DNAを、用いたプライマーごとに異なるレーンでゲル電気泳動して確認する写真である。矢印が2.7kbの増幅産物を示す。 図3は、pUC19および大腸菌の混合物をテンプレートとして行った第1の増幅反応においてpUC19のみが特異的に増幅されたことを確認するゲル電気泳動の写真である。 図4は、シュードモナスと大腸菌との混合菌液をテンプレートとして行った第1の増幅反応において、シュードモナス属のゲノムDNAのみが特異的に増幅されたことを確認するゲル電気泳動の写真である。 図5は、テンプレートとして用いた混合菌液の希釈倍率が異なる場合についての図4と同様の写真である。 図6は、第1の増幅反応に用いたプライマーが異なる場合についての図4と同様の写真である。 図7は、テンプレートとして用いた菌液の希釈倍率が異なり、かつ用いたプライマーが異なる場合についての図4と同様の写真である。
本発明の増幅方法は、一本鎖DNAを合成する工程を含む。
本発明の一本鎖DNAを合成する工程においては、標的DNAを環状DNAとして含むサンプルが用いられる。サンプルは、特異的に増幅させることを目的とするDNAを含む任意の試料である。サンプルの由来としては、ウイルス、原核生物、真核生物などが挙げられる。また、サンプルの由来としては、ヒトなどの動物、植物、昆虫、菌類、原生生物、細菌、カビ、酵母などが挙げられる。サンプルは、個体そのものに由来するものであっても、その一部に由来するものであってもよく、糞便、尿、および汗などの排泄物、血液、精液、唾液、胃液、および胆汁などの体液等、ならびに外科的に生体から取り出した組織、および体毛などの生体から脱落した組織に由来するものであってもよい。また、サンプルの由来としては、食品等の加工物が挙げられる。サンプルは、DNAなどの核酸以外の生体成分であるタンパク質などを除去する工程や、DNAなどの核酸を濃縮する工程などによって精製されたものであってもよい。サンプルに含まれるDNAは、単一の配列からなるものであってもよいし、異なる配列からなるDNA断片の混合物であってもよい。サンプルは、単独または複数の微生物由来の全体または一部のゲノムDNAを含むメタゲノム解析用DNA試料であってもよい。メタゲノム解析用DNA試料の由来としては、たとえば、ヒトの腸内細菌叢、海中の微生物群、海底の鯨骨細菌群、農場土壌の細菌群、鉱山廃水中のバイオフィルム、メタン酸化古細菌群などが挙げられる。DNA試料の由来する微生物は、培養条件が既知であってもよいし、培養条件が未知である難培養菌であってもよい。
サンプルは、標的DNAを含む。標的DNAは、特異的に増幅させることを目的とするDNAである。標的DNAは、サンプルに他のDNAが含まれる場合、それらと比較して高い効率で増幅させることを目的とするDNAである。本発明の増幅方法によれば、標的DNAの配列の全部が既知でなくても、増幅させることができる。したがって、標的DNAは、配列の全部が既知であることもあるが、配列の一部のみが既知であることもある。また、標的DNAは、既知配列と相同性を有する領域を一部にのみ有することもある。標的DNAは、長鎖ゲノムDNAであってもよく、その鎖長は、たとえば、1kbp〜全ゲノムスケール(数Mbp(たとえば、2〜9Mbp))である。標的DNAは、培養条件が未知の微生物のゲノムDNAの部分配列であってもよい。標的DNAの含有量は、サンプル全体に対して、たとえば、数分子(たとえば、2〜9分子)/μL〜6fM、または100分子/μL〜6fMなどである。後記の実施例に示すように、本発明の増幅方法においては、標的DNAの分子数が10分子である場合であっても、ゲル電気泳動で視覚可能な程度に標的DNAを特異的に増幅させることができた。したがって、サンプル中の標的DNAの分子数は、数分子(たとえば、2〜9分子)以上、または10分子以上であってもよい。
サンプルは、標的DNAを環状DNAとして含む。サンプルは、標的DNAを環状DNAの全体として含んでもよく、標的DNAを環状DNAの一部分に含んでもよい。
標的DNAを環状DNAとして含むサンプルは、標的DNAを含有する直鎖状DNAを含むサンプルをもとにした環状化反応により調製してもよい。環状化反応は、DNA結合酵素などの酵素によって行ってもよい。DNA結合酵素としては、たとえば、Taq DNAリガーゼ(NEB社)等の耐熱性DNA連結酵素や、T4DNA Ligase(各社)、E.coli DNA ligase(各社)などが挙げられる。環状化反応を行う直鎖DNAは、制限酵素などのDNA切断酵素などによって断片化したものであってもよい。断片化によって、標的DNAが1つのDNA断片の全部になるようにしてもよいし、標的DNAが1つのDNA断片の一部分として含まれるようにしてもよい。直鎖DNAは、環状化反応に先立ち、アダプターなどの付加的なDNAと接続してもよい。環状化反応は、サンプルに含まれるDNAの全量を環状化させるものであってもよいし、部分的に環状化させるものであってもよい。環状化反応の後、DNA分解酵素によって、非環状化DNAの分解除去を行ってもよい。しかしながら、直鎖DNAが残存する場合でも、直鎖DNAをテンプレートとする増幅反応は行われないと考えられるから、非環状化DNAの分解除去は行わなくてもよい。非環状化DNAの分解除去を行わない場合には、より簡便に本発明の方法を行うことができる。DNA分解酵素としては、たとえば、RecBCDエクソヌクレアーゼ(各社)、エクソヌクレアーゼI(各社)、T5エクソヌクレアーゼ(各社)、Plasmid Safe(登録商標、Epicentre社)エクソヌクレアーゼVI(Epicentre社)、RecJエクソヌクレアーゼ(Epicentre社)などの、直鎖状DNAをモノヌクレオチドまで分解可能なエクソヌクレアーゼが挙げられる。
環状DNAは、標的DNAの内部以外の部分に、制限酵素切断部位を1または複数有していてもよい。その場合、後述のとおり、二本鎖のDNA増幅産物を得たのち、当該制限酵素による切断を行うことによって、多コピー数のDNA断片からなる特異的DNA増幅産物を得ることができる。環状DNAは、一本鎖であってもよいし、二本鎖であってもよい。環状DNAの鎖長は、たとえば、1kbp〜全ゲノムスケール(数Mbp(たとえば、2〜9Mbp))である。
本発明の一本鎖DNAを合成する工程においては、標的DNAに対する特異的なプライマーが用いられる。標的DNAに対する特異的なプライマーの配列は、標的DNAにおける既知の配列情報や、標的DNAに関する物理的性質の実験結果などをもとにして、公知の方法および技術常識に従って、適宜決定することができる。また、標的DNAに対する特異的なプライマーの配列は、サンプル中のDNAに関する情報に基づかずに、増幅を目的とする配列を任意に選択することによって設計してもよい。標的DNAに対する特異的なプライマーの鎖長は、たとえば、8〜100塩基、より好ましくは8〜20塩基である。標的DNAに対する特異性は、プライマーが長いほど上昇し、短いほど減少する傾向にある。標的DNAに対する特異的なプライマーは、プライマー自身がテンプレートとならず、特異的増幅効率が高まる点で、非DNA核酸プライマーであることが好ましい。非DNA核酸としては、RNAのほか、GNA、LNA/BNA、TNAなどの核酸アナログが挙げられる。非DNA核酸プライマーとしては、プライマーになりうるだけでなく、鋳型となることができ、2本鎖化することができるプライマーが好ましい。標的DNAに対する特異的なプライマーは、DNAの特異的な増幅を効率的に行うことができる点で、Tm値が40〜56℃であることが好ましい。標的DNAに対する特異的なプライマーは、特異的増幅効率の高さの点で、エクソヌクレアーゼ耐性であることが好ましい。ここで、エクソヌクレアーゼとしては、鎖置換型DNA合成酵素が有するエクソヌクレアーゼが挙げられる。標的DNAに対する特異的なプライマーとして、鎖置換型DNA合成酵素のエクソヌクレアーゼに対して耐性を有するプライマーを用いる場合には、より特異性の高いDNA増幅をより効率的に行うことができる。
本発明の一本鎖DNAを合成する工程においては、鎖置換型DNA合成酵素が用いられる。鎖置換型DNA合成酵素は、鋳型となる二本鎖DNAの水素結合を自ら解離することができるDNA合成酵素であり、市販品として容易に入手することができる。鎖置換型DNA合成酵素としては、たとえば、phi29 polymerase(各社)、Klenow DNA Polymerase(5’−3’,3’−5’exo minus)(各社)、Sequenase(登録商標)Version 2.0 T7 DNA Polymerase(USB社)、Bsu DNA Polymerase、Large Fragment(NEB社)などの中温性の鎖置換型DNA合成酵素や、Bst DNA Polymerase(Large Fragment)(各社)、Bsm DNA Polymerase、Large Fragment(Fermentas社)、BcaBEST DNA polymerase(TakaraBio社)、Vent DNA polymerase(NEB社)、Deep Vent DNA polymerase(NEB社)、DisplaceAce(登録商標)DNA Polymerase(Epicentre社)等の耐熱性の鎖置換型DNA合成酵素が挙げられる。このうち、増幅後の配列の正確性の点で、phi29 polymeraseが好ましい。また、本発明の一本鎖DNAを合成する工程において用いられる鎖置換型DNA合成酵素は、エクソヌクレアーゼ活性を有するものであってもよい。鎖置換型DNA合成酵素としては、正確性の点で、phi29 polymeraseのような高いエクソヌクレアーゼ活性を有する酵素が望ましい。
本発明の増幅方法においては、これらのサンプル、プライマー、および合成酵素を用いて、一本鎖DNAを合成する工程が行われる。一本鎖DNAを合成する反応は、鎖置換型DNA合成酵素のDNA伸長反応によって行われる。一本鎖DNAを合成する反応において、反応液中に含まれる含有量は、標的DNAについては、たとえば、数分子(たとえば、2〜9分子)/μL〜6fM、または100分子/μL〜6fMなどであり、標的DNAに対する特異的なプライマーについては、たとえば、2.5μM〜10μMであり、鎖置換型DNA合成酵素については、たとえば、0.1〜1000units/μL、より好ましくは5〜100units/μLである。一本鎖DNAを合成する反応に用いる反応液は、Mg2+などの金属イオン、緩衝剤などを含む鎖置換型DNA合成反応用緩衝液や、dATP、dGTP、dCTP、dTTPなどのデオキシリボヌクレオチドなどの他の成分を含んでよい。後記の実施例に示すように、本発明の増幅方法においては、標的DNAの分子数が10分子である場合であっても、ゲル電気泳動で視覚可能な程度に標的DNAを特異的に増幅させることができた。したがって、反応液に含まれる標的DNAの分子の数は、たとえば、数分子(たとえば、2〜9分子)以上、または10分子以上である。
一本鎖DNAを合成する反応におけるDNA伸長反応の反応温度は、酵素の至適温度とプライマー鎖長に基づく変性温度(プライマーが鋳型DNAに結合(アニール)/解離する温度帯)に基づいて通常の手順により適宜設定すればよい。反応温度は、たとえば、室温程度の等温であり、鎖置換型DNA合成酵素としてphi29 DNA polymeraseを使用する場合は、好ましくは25℃〜42℃、より好ましくは28〜32℃である。一本鎖DNAを合成する反応におけるDNA伸長反応は、サーマルサイクラーを用いる必要はなく、一定の低温において実施すればよい。一本鎖DNAを合成する反応におけるDNA伸長の反応時間は、たとえば、10時間〜40時間である。DNA伸長反応ののち、熱変成によってDNA伸長反応を停止してもよい。
一本鎖DNAを合成する反応に先立ち、標的DNAと、標的DNAに対する特異的なプライマーとをアニーリングさせるプライマーアニーリング反応を行ってもよい。また、プライマーアニーリング反応に先立ち、30秒〜2分間、90〜100℃で加熱することによって標的DNAを熱変性させてもよい。プライマーアニーリング反応は、たとえば、熱変性工程の後、20〜60分間かけて90〜98℃から20〜30℃まで徐々に温度を下げるなどの漸進的アニーリング工程によって行われる。
一本鎖DNAを合成する工程は、合成されたDNAが一本鎖DNAであることを確認する工程を含んでもよく、たとえば、一本鎖DNAの確認は、制限酵素消化による切断の可否を調べることによって行うことができる。
以上の一本鎖DNAを合成する工程を行うことによって、サンプルに含まれる標的DNAを特異的に増幅させることができ、標的DNAのタンデムリピートであるDNA増幅産物が得られる。得られた標的DNAの特異的増幅産物は、合成された一本鎖DNAのままでもよいが、合成された一本鎖DNAの相補鎖を合成して二本鎖DNAを合成する工程によって、二本鎖DNAとしてもよい。
合成された一本鎖DNAの相補鎖を合成して二本鎖DNAを合成する工程は、鎖置換型DNA合成酵素によるDNAの伸長反応によって行ってもよい。鎖置換型DNA合成酵素は、前述のものを用いることができる。鎖置換型DNA合成酵素によるDNA伸長反応において、用いるプライマーは、既知配列から設計することができる配列特異的なプライマーであってもよいし、ランダムヘキサマーなどのランダムプライマーであってもよいが、残存するコンタミDNAを増幅させるおそれが少ない点で、配列特異的なプライマーを用いることが好ましい。鎖置換型DNA合成酵素による反応は、前述の一本鎖DNAを合成する反応と同様の反応条件において行うことができる。鎖置換型DNA合成酵素によって二本鎖DNAを合成する工程において用いる配列特異的なプライマーの鎖長は、たとえば、20〜100塩基、とくに、20〜30塩基である。
また、合成された一本鎖DNAの相補鎖を合成して二本鎖DNAを合成する工程は、鎖置換型でない通常のDNA合成酵素によるDNA伸長反応によって行ってもよい。鎖置換型でない通常のDNA合成酵素によるDNAの伸長反応は、たとえば、サーマルサイクラーを用い、高分子DNAの立体構造をほぐす変性を行うための変性温度、プライマーを鋳型DNAに結合(アニール)させる対合を行うための対合温度、酵素活性による相補鎖の伸長を行うための伸長温度という3種類の温度に変化させる温度変化を1回〜数回与えて行われる。温度変化の回数は、プライマーダイマー形成などの好ましくない反応が起こりにくい点で、2回以下〜9回以下であることが好ましい。好ましくは、変性温度および伸長温度は、使用酵素の至適温度であり、対合温度は、プライマーのTm値の±5℃の範囲である。通常のDNA合成酵素による二本鎖DNA合成工程において用いるプライマーの鎖長は、たとえば、20〜100塩基である。
本発明の増幅方法は、特異的に増幅させた増幅産物を、配列依存的に切断する工程を含んでもよい。たとえば、二本鎖DNAである特異的増幅産物は、制限酵素によって切断してもよい。配列依存的に切断することによって、タンデムリピートであるDNA増幅産物を、繰り返し単位ごとに切断することができる。配列依存的に切断する部位が、標的DNAの外側にある場合、切断によって、配列を同じくする多数のDNA断片としてDNA増幅産物を製造することができ、これにより、標的DNAのコピー数を増大させることができる。そのようなコピー数を増大させた標的DNAは、ゲル電気泳動などによる増幅産物の同定、分離、および精製が容易であり、その後の解析などの操作を容易に行うことができる。
本発明の増幅方法は、前述のようなDNA結合酵素、鎖置換型DNA合成酵素、および鎖置換型DNA合成反応用緩衝液を含むキットによって行ってもよい。キットは、前述のような標的DNAに対する特異的なプライマーを含んでもよい。また、キットは、dNTP混合物など、DNA伸長反応などに用いられる他の成分を含んでよく、鋳型となる環状DNAや標識ヌクレオチドアナログや検出用蛍光色素を含んでもよい。
本発明の増幅方法は、標的DNAの全配列が既知でなくても、標的DNAの全配列を増幅することができる。したがって、本発明の増幅方法は、既知配列の周辺領域を含む長鎖DNAを取得するための方法、およびゲノムDNA上の既知配列の周辺領域の配列を決定するための方法として有用である。本発明の増幅方法は、標的DNAとしての有用遺伝子をクローニングするための方法として有用であり、特に、培養方法が未知であって自然界に微量にしか存在しない微生物における有用遺伝子をクローニングするための方法として有用である。また、本発明の増幅方法は、長鎖DNAの特異的増幅に適しており、たとえば、1kbp〜全ゲノムスケール(数Mbp(たとえば、2〜9Mbp))の長鎖ゲノムDNAの特異的増幅方法として有用である。PCRプライマーは、2箇所の既知配列が存在しないと適切なプライマーを設計することができず、しかも、その既知配列は増幅可能な10kb以下の距離に位置していなければならないのに対して、本発明の増幅方法は、1箇所のみの既知配列をもとにして広範囲な領域を合成することができる。したがって、本発明の増幅方法は、標的DNAにおける既知配列が1箇所である場合の増幅方法として、または配列特異的なプライマーとして1種類のプライマーのみを用いる場合の増幅方法として、有用である。さらに、本発明の増幅方法は、サンプル中の標的DNAの存在を検出するための方法としても有用である。サンプル中の標的DNAの存在の検出は、本発明の増幅方法によって合成された核酸を、配列依存的な検出方法によって検出することによって行うことができる。さらに、標識ヌクレオチドアナログを用いて本発明の増幅方法を行うことによって、標識DNAを製造することができる。
以下、実施例によって本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1 環状DNAモデルを用いた特異的プライマーによる増幅:
環状DNAモデルに使用したpUC19はマルチクローニングサイト脇に特異的なM13ファージの配列を有する。この領域に特異的な配列をもつ9〜11merのRNAプライマー(表1)をデザインし、Phi29 DNA polymerase推奨の方法(メーカー名:Epicentre)で第1の鎖置換型DNA合成酵素によるDNA伸長反応を行った。まず、2μLのbuffer(メーカー名:Epicentre)、1fgのpUC19および200pmolのプライマーを全量10μLになるように加え、95℃1分間の熱変性後、30分かけて25℃まで徐々に温度を下げることによってプライマーアニーリング反応を行った。次に、プライマーアニーリング反応後の反応液に、Phi29 DNA polymerase推奨のRCA反応溶液(メーカー名:Epicentre)を、全量20μLになるように加え、30℃で16時間の等温増幅反応を行った。最後に65℃まで温度を上げ、Phi29 DNA polymeraseを失活させて反応を終了し、第1増幅反応の反応液を得た。第1のDNA伸長反応による増幅産物が1本鎖DNAであることは、EcoRI消化で切断されないことによって確かめた(図1)。図1において、各レーン1〜6は、それぞれ、第1の増幅反応に配列番号1〜6のプライマーを用いた場合の結果を示す。
次に、pUC19上のマルチクローニングサイト近傍のM13領域の異なる配列でデザインされたM13 reverseプライマー(表2)を使用して、次の2通りの方法で増幅を行い、二本鎖化のための2次増幅を行った。
1)第2の鎖置換型DNA合成酵素によるDNA伸長反応:
増幅が終了した第1増幅反応の反応液5μLに対し、Phi29 DNA polymerase推奨の方法で調製した200pmolのM13 reverseプライマーを含むRCA反応液(メーカー名:Epicentre)を20μL加え、第1増幅反応と同様に等温増幅反応を行った。
2)DNAポリメラーゼによる相補鎖伸長:
増幅が終了した第1増幅反応の反応液10μLからエタノール沈殿によって反応液を除去し、DNA回収した。その沈殿を10μLのミリQで溶解し、これをDNAテンプレートとして、LA Taq polymerase(TaKaRa)を用い、製品プロトコルに従って、100pmolのM13 reverseプライマーを含むPCR反応液100μLを調製した。94℃を3分、55℃を5分、続いて72℃を2時間で相補鎖伸長反応を行った。
上の1)2)で得られた反応液2μLをEcoRI消化したDNAをゲル電気泳動によって観察した。ゲル電気泳動の結果を図2に示す。図2の(A)は、第2の鎖置換型DNA合成酵素によるDNA伸長反応を行った上記の1)の結果である。図2の(B)は、DNAポリメラーゼによる相補鎖伸長を行った上記の2)の結果である。各レーン1〜6は、それぞれ、第1の増幅反応に配列番号1〜6のプライマーを用いた場合の結果を示す。図2に示すように、上記1)、および上記2)のいずれの場合においても、全てのプライマーを用いた場合において、pUC19の長さと一致する2.7kbの断片が観察された。このことから、本発明の増幅方法によって、標的DNAであるpUC19が特異的に増幅できることがわかった。また、二本鎖化のための二次増幅は、鎖置換型DNA合成酵素を用いても、DNAポリメラーゼを用いても、効率的に行うことができることがわかった。このように、上記の実施例の条件においては、増幅目的の標的DNAが微量な長鎖DNAであり、用いるプライマーが長鎖であり、反応液中には鎖置換型DNA合成酵素に含まれる大腸菌ゲノムDNAが混入していたにもかかわらず、非特異的な増幅産物を生じさせることなく、メタゲノム解析に耐えるほどの実用的な感度で、特異的に標的DNAを増幅させることができた。
実施例2 pUC19および大腸菌の混合テンプレートを使用する増幅反応:
1011細胞/μL以下の濃度の大腸菌(E.coli JM109株)の菌液を10倍に希釈した菌液(10〜10細胞)に、1pg(約3.4x10分子)のpUC19を混合したものを鋳型(混合テンプレート)に使用したこと、およびpUC19のbla遺伝子(アンピシリン耐性遺伝子)の配列を基にして設計した以下の表3に示すRNAプライマーを使用したことのほかは、実施例1と同様の方法によって第1の増幅反応を行った。なお、対照として、鋳型を用いない増幅反応も行った。
第1の増幅産物の2本鎖化は行わず、第1の増幅反応によって得た増幅産物をテンプレートとして、以下の表4に示すbla遺伝子特異的プライマーセットを用いて、または表5に示すE.coli特異的プライマーセットを用いて、通常のPCR増幅反応を行い、鋳型(混合テンプレート)に含まれるpUC19が第1の増幅反応によって特異的に増幅されたかどうかを確認した。なお、E.coli特異的プライマーセットは、APPLIED AND ENVIRONMENTAL MICROBIOLOGY,1996,p.1242−1247を参考にして設計した。bla遺伝子特異的プライマーセットを用いる場合、テンプレートにbla遺伝子が含まれていれば、387bpの増幅産物が得られることが予想される。E.coli特異的プライマーセットを用いる場合、テンプレートにE.coli由来のDNAが含まれていれば、585bpの増幅産物が得られることが予想される。
確認のためのPCR増幅反応の増幅産物のゲル電気泳動の結果を図3に示す。図3の左側のゲルの写真は、bla遺伝子特異的プライマーセットを用いた場合の結果を示す。図3の右側のゲルの写真は、E.coli特異的プライマーセットを用いた場合の結果を示す。それぞれのゲルの写真において、1〜4のレーンは、順に、配列番号8〜11のRNAプライマーを用いて、かつ鋳型を用いて行った第1の増幅反応によって得られた増幅産物の結果を示し、5〜8のレーンは、順に、配列番号8〜11のRNAプライマーを用いて、鋳型を用いずに行った第1の増幅反応によって得られた増幅産物の結果を示す。
図3の左側の写真のレーン1〜4において、約400bpの増幅産物が観察されたことから、第1の増幅反応によってpUC19が増幅できたことが確認された。これに対して、図3の右側の写真のレーン1〜4においては、約600bpの増幅産物が確認されなかったことから、第1の増幅産物によって大腸菌のゲノムDNAが特異的に増幅されなかったことが確認された。このことから、本発明の増幅方法によれば、特異的な増幅を目的とするDNA以外のDNAが鋳型に混入している場合においても、目的とするDNAを特異的に増幅させることができることが明らかになった。なお、右側の写真の第3および第4レーンに見られる増幅産物は、確認のためのPCR増幅反応における非特異的な増幅産物であると推察される。
実施例3 シュードモナスと大腸菌の混合テンプレートを使用する増幅反応:
以下の点を除き、実施例1と同様にして第1の増幅反応を行った。鋳型としては、1011細胞/μL以下の濃度の大腸菌(E.coli JM109株)の菌液を10、10、10、または1010倍に希釈した希釈大腸菌菌液(数〜10細胞)と、1011細胞/μL以下の濃度のシュードモナス・フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescense)ATCC17400株の菌液を10、10、10、または1010倍に希釈した希釈シュードモナス菌液(数〜10細胞)と、同希釈倍率の希釈大腸菌菌液および希釈シュードモナス菌液を1:1で混合したものとを使用した。シュードモナス・フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescense)ATCC17400株は非リボソームペプチド合成酵素(NRPS)遺伝子を保持しているため、第1の増幅反応におけるRNAプライマーとしては、NRPSの配列をもとに設計した以下の表6に示すプライマーを用いた。
第1の増幅反応によって得られた増幅産物について、実施例2と同様の方法によって、増幅産物の確認のためのPCR増幅反応を行った。PCR増幅反応には、以下の表7に示すシュードモナス属特異的プライマーセット、および表8に示すE.coli特異的プライマーセットを用いた。なお、シュードモナス属特異的プライマーセットの設計にあたっては、Pros One,2008,e3578を参照した。E.coli特異的プライマーセットの設計にあたっては、APPLIED AND ENVIRONMENTAL MICROBIOLOGY,1996,p.1242−1247を参照した。シュードモナス属特異的プライマーセットを用いる場合、テンプレートにシュードモナス属由来のDNAが含まれていれば、617bpの増幅産物が得られることが予想される。E.coli特異的プライマーセットを用いる場合、テンプレートにE.coliのゲノムDNAが含まれていれば、585bpの増幅産物が得られることが予想される。
配列番号16のNRPS9Rプライマーと各種の鋳型を用いて行った第1の増幅反応についての実験結果を図4に示す。図4における各レーンは、鋳型として、以下の表9に示す菌液を用いた実験についての結果である。ただし、レーンEは、RCA増幅を行わず、大腸菌のポジティブコントロールとして示した。図4において、PCR primer Ps−spは、シュードモナス属特異的プライマーセットを、PCR primer Eco−spは、E.coli特異的プライマーセットを、確認のためのPCR増幅反応に用いたことを示す。
また、用いた鋳型の希釈度が異なる以外は図4と同様の方法によって得た結果を、図5に示す。第1の増幅反応のためのRNAプライマーとしては、NRPS9Rプライマーを用いた。レーンの1〜4は、希釈大腸菌菌液(E.coliのみ)、希釈シュードモナス菌液(Psuedomonasのみ)、およびこれらの混合菌液(mix1:1)を調製した際の希釈倍率が異なる。レーン1〜4についての希釈倍率を以下の表10に示す。
図4および図5に示すように、シュードモナス属特異的プライマーセットを用いた場合には、鋳型が混合菌液である場合であっても、約600pbの増幅産物が得られた。これに対して、E.coli特異的プライマーセットを用いた場合には、約600bpの増幅産物は観察されなかった。このことから、本発明の増幅方法によって、鋳型が混合菌液である場合であっても、目的としないE.coliのゲノムを非特異的に増幅させることなく、目的とするシュードモナス属のゲノムDNAを特異的に増幅することができたことが分かる。特に、図5に示すように、1010倍の希釈を行った場合(数コピーの鋳型)にも、シュードモナス属のゲノムDNA由来の増幅産物が観察されたことから、本発明の増幅方法は、高い検出感度を有することが分かる。
第1の増幅反応に用いたプライマーが異なる場合を比較した結果を図6に示す。実験の手法は、図4および図5の場合と同様である。レーン1〜4は、用いたプライマーがそれぞれ異なる。用いたプライマーを以下の表11に示す。
図6に示すように、いずれのプライマーを用いた場合にも、約600bpの増幅産物が確認された。プライマーが短くても、効率よく増幅産物が得られる場合があることがわかる。
第1の増幅反応に用いたプライマーが異なり、かつ、第1の増幅反応に用いた鋳型の希釈度が異なる場合についての同様の実験の結果を図7に示す。鋳型には、希釈大腸菌菌液と希釈シュードモナス菌液との混合菌液を用いた。各レーンについての希釈の倍率を以下の表12に示す。
図7に示すように、鋳型が混合菌液である場合において、いずれのプライマーを用いた場合にも、シュードモナス属のゲノムDNAを特異的に増幅させることができた。特に、NRPS9Rについてのレーン1〜4、NRPS12Fについてのレーン1〜4、NRPS17Rについてのレーン4、およびNRPS18Fについてのレーン1〜3においては、強い増幅が観察された。プライマーとしてNRPS12Fを用いた場合には、鋳型の分子数が10であっても増幅度が低かったのに対して、プライマーとしてNRPS18Fを用いた場合には、1010倍に希釈した鋳型を用いた場合であっても増幅が観察された。このことから、第1の増幅反応における特異的増幅の効率は、第1の増幅反応に用いるプライマーの長さよりも、そのプライマーのTm値に関係があると考えることができる。増幅効率の高かったNRPS9RのTm値は、増幅効率の低かったNRPS12FのTm値より高い。このことから、Tm値が高い方が増幅の特異性は向上すると考えられる。一方、NRPS17RのTm値は高いが、増幅効率は高くない。このことから、Tm値は高すぎても、高い増幅効率は得られないと考えられる。したがって、NRPS9RのTm値とNRPS18FのTm値の間のTm値、つまり40〜56℃のTm値を持つプライマーであれば、プライマーの長さに関わらず、特異的な増幅を効率的に行うことができると考えられる。
本発明の増幅方法は、メタゲノム解析の実用に適した増幅感度を有するので、メタゲノム解析用のメタゲノムDNAの製造方法や、メタゲノム解析用のメタゲノムDNAから特定の微生物由来ゲノムDNAの全部または一部を増幅または濃縮する方法として、有用である。しかしながら、本発明の増幅方法を用いる技術分野は、メタゲノム解析の分野に限定されることなく、本発明の増幅方法は、たとえば、医学、薬学、農学、食品学などの研究や、感染症の臨床検査の医療分野や、食品産業における簡便な生菌検査や食中毒における迅速検査など、簡便さ、省力化、迅速さが求められる様々な基礎および応用分野において用いることができる。

Claims (10)

  1. 標的DNAを含む環状DNA1種類の、標的DNAに対する特異的なプライマーを結合させ次いで、鎖置換型DNA合成酵素を用いて一本鎖DNAを合成する工程を含むことを特徴とする、サンプルに含まれる標的DNAの特異的増幅方法。
  2. 合成された一本鎖DNAの相補鎖を合成して二本鎖DNAを合成する工程を含む、請求項1に記載の方法。
  3. 一本鎖DNAを合成する工程の前に、DNA結合酵素を用いて標的DNAを含む環状DNAを合成する工程を含む、請求項1または2に記載の方法。
  4. 標的DNAに対する特異的なプライマーが非DNA核酸プライマーである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
  5. 非DNA核酸プライマーがRNAプライマーである、請求項4に記載の方法。
  6. 鎖置換型DNA合成酵素、鎖置換型DNA合成反応用緩衝液、およびデオキシリボヌクレオチドを含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法を行うためのキット。
  7. 非DNA核酸プライマーを含む、請求項6に記載のキット。
  8. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法によって合成された核酸を検出することを含む、標的DNAの検出方法。
  9. 標識ヌクレオチドアナログを用いて請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法を行うことを特徴とする、標識DNAの製造方法。
  10. 標識ヌクレオチドアナログ、DNA結合酵素、鎖置換型DNA合成酵素、鎖置換型DNA合成反応用緩衝液、およびデオキシリボヌクレオチドを含む、請求項9に記載の方法を行うためのキット。
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