JP6522511B2 - ヌクレオチド配列の確率指向性単離(pins) - Google Patents
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Description
分子診断および他のDNAを用いたアプローチは、探索、R&D、及び様々な診断部門等の部門においてますます注目を集めている。しかし、アッセイ又はスクリーニングにより解析されるのが如何なる標的であっても、全てのDNAを用いるアプローチは幾つかの課題、即ち、バックグラウンドのDNAに対して十分な量の目的物の量を発生させなければならないという課題に直面している。
近年、PCR試験が広く臨床微生物学における感染症の通常の診断のために開発されてきた。 PCRは、迅速な臨床検体中の細菌を検出すること、迅速、高精度且つ特定の、実験室内での関連疾患[1]の確認に適している。また、抗生物質耐性遺伝子又は遺伝子変異の存在の迅速な評価を可能にする。病原体の検出、それらの抗生物質耐性のメカニズム、それらの毒性因子と臨床試料中の細菌負荷を組み合わせたアプローチは、これらの感染患者のケアにおける大きな変化につながる可能性がある。したがって、複合的又は多重的な(complex or multiplex) PCRアッセイは、現在の分子診断分野を強化するために開発されている。
DNA配列の知識は、基本的な生物学的研究のために、及び診断、バイオテクノロジー、法医学生物学、及び生物学的系統分類学等の多数の応用分野において必要不可欠となっている。配列決定の迅速なスピードと近年のDNA配列決定技術によるコストの減少は、DNA配列の配列決定において有益であり、世界中で配列決定したDNAの総量は急速に増加している。
メタゲノミクスは一般的な配列決定アプローチのことであって、複雑なDNA混合物は小さい画分へと分離され、それぞれの配列が決定される。当該システムは培養能に依存せず、実際、実験室で培養可能または培養不可能の両方の試料について適用可能である。
産業分野の違いにより、未培養の微生物多様性にある広大な資源を探索するのに対して異なる動機がある。現在、ホワイト(工業用)バイオテクノロジーは、持続可能な現代社会の設立に中心的な役割を果たしているようである。天然の微生物の生物多様性の少量のサブ分画のみがスクリーニングに利用可能であるという前提が、通常受け入れられている。1990年Torsvikら[3]は土壌試料の天然に存在する微生物の多様性のせいぜい1%が実験室条件下で培養可能にすぎないと推定した。このことから、未知の天然物の発見の中に大きな可能性が存在し、また、バイオテクノロジー技術において天然及び環境中の試料中に存在する未知の大多数のDNAの存在へのアクセスが可能である。別の入手できない情報を取得する場合には、残念ながら膨大な量の配列決定が必要とされる。
a)標的DNA分子を含む混合ポリヌクレオチド試料を提供し、ここで前記標的DNA分子は1又は複数の、少なくとも10ヌクレオチドの固有の連続配列を含み、
b)混合ポリヌクレオチド試料を、希釈試料中の前記標的DNAの検出確率が0.75未満、好ましくは0.50未満、又はさらに好ましくは0.25未満になるまで連続的に希釈し、そして
c)少なくとも1つの複製希釈試料 (replicate dilution samples)中の前記標的DNA分子の検出確率が少なくとも0.75、好ましくは0.80 〜0.95となるまで、十分な数の希釈試料を複製し;
d)前記複製希釈試料中のDNAを増幅して、各試料のDNAの存在量 (abundance)を増加させ;
e)工程d)で増幅された前記複製希釈試料中の前記標的DNA分子の存在又は不存在を検出し、ここで、前記複製希釈試料中の前記標的DNA分子の頻度 (frequency)が、工程(a)における混合ポリヌクレオチド試料と比較して増加し;
f)前記DNA分子を含む少なくとも1つの複製希釈試料を、希釈試料中の標的DNAの検出確率が0.75未満になるまで連続的に希釈し、
そして、少なくとも1回、工程(c)〜(e)又は(f)を繰り返す。
本発明は、1)幾つかの複製物(replicates)中の、目的のDNA断片を含む試料の希釈(分離)、2)当該複製物中のDNAのランダムな増幅(コンセントレーション (concentration))、少なくとも1つの希釈物及び増幅されたものから目的のDNA断片を検出(選択)及び、1)〜3)を目的のDNA断片が標準の配列決定技術によって決定できるようになるまで繰り返す、を複数ラウンド行うことにより、目的のDNA断片を含む標的ヌクレオチド配列の頻度を段階的に増加させる、インビトロの方法に関する。
さらに、インビトロPINS法の必須の工程を以下に記載する。
標的DNA分子を含むことが既知である混合ポリヌクレオチド試料を、PINSの実行のために選定する。標的DNA内に存在する、少なくとも10個(又は15個)の固有のヌクレオチドの1又は複数のヌクレオチド配列が、DNA分子のスクリーニング及び検出のために所望の方法、例えばPCR検出、ハイブリダイゼーションプローブによるDNA検出、又はその類似の方法により選定される。典型的には、混合ポリヌクレオチド試料の標的DNA分子の頻度は、10-2 未満であり、例えば、10-3〜10-7の間であってもよい。
混合ポリヌクレオチド試料は、希釈試料中の標的DNA分子を検出できる確率が0.75未満になるまで所望の希釈回数により連続的に希釈される(この試料を希釈物(N)とする)。連続希釈は、好ましくは希釈係数が1:1より大きく、好ましくは1:2〜1:20、例えば、1:10である。各希釈試料は分離された容器、例えばマイクロタイタープレート、プラスチックチューブ又は類似のものの中に入れられる。
少なくとも1個の複製希釈試料における標的DNA分子の検出確率が1になるまで、希釈試料(N)の十分な数の複製物を生じさせる。複製物の好適な数は2〜500個、好ましくは、少なくとも10〜20個の複製物である。典型的には、複製物の好適な数は、希釈系列を調製するために用いられる希釈係数に相当する、即ち、希釈係数が1:10の場合、約10個の複製物が十分となるはずである。各希釈試料は分離された容器、例えばマイクロタイタープレート中のウェル、プラスチックチューブ又は類似物中に静置される。
複製された希釈試料のそれぞれにおけるDNAは、各試料におけるDNAの存在量を増加させるための総DNA複製の任意の方法を用いて増幅される。好適な複製方法は、縮重オリゴヌクレオチドプライマーPCR(Degenerate Oligonucleotide Primed PCR (DOP-PCR))、多重置換増幅(Multiple Displacement Amplification (MDA))[4]、ランダムプライマーPCR (randomly primed PCR)又は類似の方法を含む。
工程d)におけるゲノム増幅後の複製試料(N)は、所望の検出技術を用いて標的DNA分子の存在に関してスクリーニングされる。標的DNA分子を含むことが示された少なくとも1又は複数のスクリーニングされた試料(試料 + (sample + ))において、標的DNA分子の頻度は、工程(a)の混合ポリヌクレオチド試料中の頻度と比べて増加され得る。
一度、標的DNA分子の頻度が十分に増加されると、DNAは直接DNA配列決定の対象となる。標的DNA分子の配列決定は、PCR増幅された、検出に用いられる標的DNA分子断片、及び標的DNA断片の5’及び3’方向に隣接するヌクレオチド配列の両方について、Sanger配列決定、Pyro配列決定若しくは類似のDNA配列検出方法を用いて実施される。
最初の(original)DNA試料を試料N0とする。
N0 -> N0MDAのアリコートをPCRプレートに移し、標的DNA分子を検出するためにPCRを実行する。
20個の、試料N1の複製アリコートを調製し、希釈プレート上のA1 〜 C4に加える(表3)。各複製物においてDNA全体を増幅させるために全ての複製物についてMDAを行い、次いで増幅DNA中の標的DNA分子を検出するためにPCRを行う。
20個の、試料N2のアリコートを調製し、希釈プレート上のA1 〜 C4に加える(表4)。各複製においてDNA全体を増幅させるために全ての複製物についてMDAを行い、次いで増幅DNA中の標的DNA分子を検出するためにPCRを行う。
20個の、試料N2のアリコートを調製し、希釈プレート上のA1 〜 C4に加える(表5)。各複製においてDNA全体を増幅させるために全ての複製についてMDAを行い、次いで増幅DNA中の標的DNA分子を検出するためにPCRを行う。
PINSはマルチプレックスPINSの実行にも適用することができる。マルチプレックスPINSは、混合ポリヌクレオチド中の少なくとも10個(又は15個)のヌクレオチドの第2の連続した配列を検出するために設計されるというさらなる特徴を採用する。第1の又は第2の連続配列を、PINSの各サイクルにおいて共に精製する場合、それらは同じMDA増幅された標的DNA分子上に配置されなければならない。
III.i 混合ポリヌクレオチド試料
PINSは、標的DNA分子を含むことが知られている混合ポリヌクレオチド試料に対して適用してもよい。混合ポリヌクレオチド試料はDNA分子集団 (a population of DNA molecules)(例えば、染色体DNA分子又はプラスミドDNA分子)を含み、ここで集団内の個々のDNA分子は、それらのDNA中の、既知の少なくとも10個(又は15個)の核酸塩基対の連続配列の観点で異なり、その結果、既知の連続配列を含む標的DNA分子が、試料中の非標的分子と異なり、且つ非標的分子から区別され得る。混合ポリヌクレオチド試料はさらに1本鎖RNA又はDNAを含んでいてもよい。混合ポリヌクレオチド試料中のDNA分子集団は標的DNA分子を含む。
本発明のある実施形態によれば、標的DNA分子は細胞のゲノム由来であり、ここで、ゲノムは染色体DNA又は染色体外DNAであってもよい。さらに、標的DNA分子は細胞由来であってもよく、ここで、細胞は微生物細胞、植物細胞、動物細胞又は哺乳類細胞から選ばれる。哺乳類細胞は、ヒト細胞であってもよい。微生物細胞は、細菌性細胞、酵母細胞、又は真菌性細胞であってもよい。さらに、標的DNA分子は、真菌菌糸体又は真菌胞子由来であってもよい。
標的DNA分子を含む混合ポリヌクレオチド試料は、天然物又は生物から採取した試料(例えば、生体試料)から調製されてもよい。DNA又はRNAを含むポリヌクレオチドの選択的な抽出方法は既知である[5]。標的DNA分子が細胞由来である場合、通常、細胞破壊又は細胞透過が必要とされ、核酸分子全体(DNA又はRNAを含む)を細胞から分離するために、この工程は後続のDNA又はRNAを含むポリヌクレオチドの選択的抽出工程に先立って行われる。
通常のDNA増幅法、例えば、ランダム縮重プライマーPCR (randomly degenerate primed PCR)、リンカーライゲーションPCR、又は縮重オリゴヌクレオチドプライマー(DOP)PCR、及び多重変異増幅 (MDA)のように、多様なアプローチが提示されてきた。MDAはごく少量のDNAの全ゲノム増幅 (whole-genome amplification)(WGA)を行うのに十分であることが実証されている[6]。より古典的なPCRに基づくWGA法と比較して、MDAはDNA分子を、より良いゲノムカバレッジ (genome coverage)を有する、より高い分子量で発現させる。MDAは、2つの酵素活性を有する鎖置換ポリメラーゼを使用する:DNA合成(ポリメラーゼ)、及び、3'- 5'-末端方向において1本鎖DNAを分解するエキソ核酸分解(exonucleolytic)活性、例えば、真核B-型 DNAポリメラーゼ(UniProtKB/TrEMBL: Q38545)に含まれるバクテリオファージphi29 DNAポリメラーゼにより例示される。他のより有用なポリメラーゼはBstIポリメラーゼを含む。
PINSによる標的DNA分子の単離は、1又は複数の、上記DNA分子中の少なくとも15ヌクレオチドの固有の連続配列に基づく。PCRに基づいて検出する場合、1又は複数の固有の連続配列は標的DNA断片を発生させるために増幅され、当該断片のヌクレオチド配列を決定することができる。加えて、標的DNA断片の5’及び3’方向に隣接するヌクレオチド配列は、高速ゲノムウォーキング(rapid genome walking (RGW)[7])により検出することができる。RGWは簡素で、例えば標的DNA断片のように、既知の配列から開始されるより大きいDNA分子において上流又は下流へ配列を決定するためのPCRに基づく方法である。RGWはPCRを用いて6kbまでの大きなDNA分子の個々の増幅を可能とする。前のサイクルで得られた配列に基づく新しいプライマーを使って、単純に複数サイクルRWGを用いることにより配列が延長される。通常、4つの異なる制限酵素によりDNAを消化し特異的に割り当てられたアダプターにライゲーションすることにより、大きな標的DNA分子の精製試料からライブラリーが構築される。ライゲーションされたDNAは、DNA内のアダプター又は既知の配列へアニーリングするプライマーにより配列決定され、例えばSanger配列決定、Pyro配列決定、合成による配列決定、ライゲーション又は2つの塩基をコード化する配列決定、若しくは類似の方法のような、所望のDNA配列検出方法が用いられる[8]。
VI.i. PINS及びマルチプレックスPINS適用の研究開発
天然より採取した試料から抽出した混合ヌクレオチド試料における、標的DNAを単離又は濃縮させるためのPINSの使用は、天然に存在し、無菌培養物としては頻繁に得ることができない微生物のゲノム又はその一部に対する直接的なアクセスを提供する。PINSは特に以下のような化学的ビルディングブロック又は活性剤を含む酵素をコードするDNAを単離または濃縮するのに有用である:
・酸(例えば、マレイン酸、アスパラギン酸、マロン酸、プロピオン酸、コハク酸、フマル酸、クエン酸、酢酸、グルタミン酸、イタコン酸、レブリン酸、アコニット酸 (acotinic acid)、グルカル酸、グルコン酸、及び乳酸)、
・アミノ酸(例えば、セリン、リジン、トレオニン)、
・アルコール(エタノール、ブタノール、プロパンジオール、ブタンジオール、アラビトール)、及び
・他の高付加価値製品(例えば、アセトイン、フルフラール、及びレボグルコサン等)
・抗生物質、抗癌化合物(例えば、ペプチド - ポリケチド;ラクタム類似体等)
PINS又はマルチプレックスPINSは、多細胞器官由来の試料、例えば、被験体(例えば、ヒト又は動物)から採取された体液又は排泄物からの生検(biopsy)又は試料における、医学的適応又は疾患の診断又は観察のための、標的DNAの解析に用いられてもよい。
PINSは混合DNA試料の発生する、複合体からの所望のDNA領域の増幅において、特異的に試料を選択することに基づく。Phi29に基づく増幅(MDA)は、現在可能な最も信頼し得るゲノム増幅として繰返し述べられてきたが、顕著なバイアスが導入されることが知られている。Panら[18]は、総論として、増幅バイアスを避ける高い特異性をもつDNA複合体の全ゲノム増幅(WGA)は、課題が残ると述べている。さらに、DOP-PCR及びランダムプライマーPCR(random priming PCR)等の代わりの増幅方法により、類似の現象が観察された。これらの2つの増幅方法は、さらによりバイアスのかかった増幅産物を結果としてもたらし、遺伝子座発現の再生において不十分な方法として述べられている[19]。反応テンプレートの存在量にかかわらず、バイアスは一見避けられないが[20]生成物から独立したテンプレートの量(TIP)又は増幅中に導入されたバイアスは、反応中のDNAテンプレートの量とは負の相関関係であり、いくつかの研究によると総収率は70〜75%を示すことが記録されている[18]。全ゲノム増幅は、PINS工程でDNAを増幅するために適用され、そのため、ゲノム増幅バイアスに関するこれらの共通の課題もまた、PINSに当てはまることが予想される。WGAの複数工程を含む手順により、標的DNA分子に対して有意なバイアスが観察されるであろうことが予想される。したがって、PINSのようなWGAの複数工程を行う手順は、混合試料中のDNAの特異的な領域を濃縮するのを可能にする方法としては考えられてこなかった。驚くべきことに、TIP/バイアスの課題は、標的DNA分子の初期濃度が極めて低くても、PINSの技術を適用した場合には見られない。PINSシステムにおいて観測された最小限の陰性TIP/バイアスは増幅工程から得られた総ゲインよりも顕著に低く、そのため、最終結果は各サイクルにおける実質的な標的DNA分子の濃縮となる。高濃度のDNAもまた十分にPINSの対象となり得るため、この方法は最初のDNAテンプレートの希釈を必要としない。この場合、たった数倍のWGA法による増幅を必要とする。
以下の例は、標的DNA分子の濃縮及び/又は単離のために、PINSが他の方法、例えばショットガンクローニング(shot-gun cloning)又はメタゲノミクス(metagenomics)に対して優れているか又は補完的である理由を示す。実施例1で用いたPINSに代えて、従来のメタゲノミクスを採用すると、平均サイズ3*109塩基対の2*106ゲノムのシークエンシングが必要となる。よって、HPV18の配列を得るために総計で少なくとも6*1015塩基対が必要となる。PINS2ラウンド後、HPV18標的の発現度は79倍(increased by a factor of 79)増加し、よってここではわずか4.47*1013の塩基対が配列決定に必要にすぎない。さらなるPINSラウンドは、配列決定に必要な量をより減少させることができる。
実施例中で適用された原料及び方法を示す:
PCR反応:以下の反応混合物20μl中で行った:ヌクレアーゼの存在しない水(nuclease free water)(7 μl)、10 μl 2x SSO Advance Sybr TR-Mixture (BioRad)、5 μMフォワードプライマー(fw-primer)(1 μl)、6 μMリバースプライマー(Re-primer)(1 μl)、1μl DNAテンプレート付。2x SSO Advance Sybr TR-Mixtureの組成: dNTPs、Sso7フュージョンポリメラーゼ、MgCl2、SYBR(登録商標) Green I、及び安定剤。
MDAは以下に記載するプロトコールに従って行われた:
混合I:変性(Denaturing)及び再アニーリング(Re-annealing)
0,5μl 水
1μl エキソ-抵抗性ランダムヘキサマープライマー(Exo-resistant random hexamer Primers )(Thermo Scientific)
(1μl DNA テンプレート)*
7,5μl 水
4μl 2mM dNTP
2μl Phi29緩衝液(Thermo Scientific)
1μl ピロホスホターゼ(Pyrophosphotase) 0,01U/μl (Thermo Scientific)
0,5μl Phi29 ポリメラーゼ(Thermo Scientific)
1. 最初に、DNAテンプレート*を追加せず混合物1を調製し、4 μlの混合物1をマイクロ遠心分離試験管に加えた。次いでDNAテンプレートをマイクロ遠心分離試験管の蓋中に1 μl置くことにより、混合物へ加えた。試験管を遠心分離にかけ、遠心分離後、すばやく氷へ移した。
2. 次いで、混合物1(工程1より)を氷から94°C (あらかじめ温められたPCR機)へ移し、3分間94°C で保ち、次いで氷に戻した。
3. 混合物2より15 μlを、混合物1(工程2より)を加えた。
4. 最終混合物(混合物1 + 混合物2) を30°C で16時間インキュベートした(PCR機)。インキュベーションの終わりに、最終混合物の温度を10分間、65°Cに昇温し、 ポリメラーゼを失活させた。
DNA定量化はQuantusTM fluorometer (Promega)を用いて製造元の記載する方法により行った。ゲル電気泳動:PCRの結果はBioRad SubCell Equipmentを用いた2%アガロースゲル電気泳動に基づき評価した。ゲル電気泳動は80V 、1%アガロースで20-30分間行った。可視化はエチジウムブロマイド(0.5μg/ml)をゲルに入れることにより行った。
試料中の標的DNA分子の検出確率は、超幾何分布(hypergeometric distribution)を用いて計算され、ここで、集団(population)は最初の(original)試料の液体体積であり、ここにおいて標的が存在(陽性)又は不存在であり、試験試料は最初の試料から採取された液体の体積である。核酸分子は体積の僅かな部分にしか貢献しないため、集団の体積及び試験試料の体積の両方が計算上1000倍される。
P = 1-Hypgeom.dist(0;3500;4;100000) = 0.133
である。
P = 1-Hypgeom.dist(0;35000;4;100000) = 0.821
である。
x = (希釈)試験試料中の陽性の数
n = (希釈)試験試料の体積 * 1000
M = 最初の試料(集団)中の標的DNA分子数
N = 最初の試料(集団)の体積 * 1000
である。
HeLa細胞由来のDNAでスパイクしたリファレンスDNAから混合ヌクレオチド試料を調製した。HeLa細胞はNew England Biolabs (100μg/ml)より精製DNA試料として得た。リファレンスDNAはヒトのボランティア由来の細胞から抽出された。HeLa細胞中の標的DNA分子は、選択された標的PCRプライマー[配列番号1及び配列番号2]により十分に増幅され、一方、ヒトリファレンスDNAはこのプライマー対による増幅産物を産生しなかった。両方のタイプのDNAは、混合物をセットする前にMDAプロトコールを用いて別々に増幅された。MDA増幅に続き、HeLaDNAの3回の10倍希釈における最確数(most probable number、MPN)計算を用い、MDA増幅されたHeLaDNA中の標的DNAコピー量は71750コピー/μであると決定された。標的DNAは希釈されていないMDA増幅されたリファレンスDNA(連続希釈を行う)中、0.029 標的コピー/μlを含み、且つ0.187μg/μlの総DNA濃度を有する最終的にスパイクされた混合物を作成するために1:2.500.000の係数で希釈された。したがって、当初の混合ポリヌクレオチド試料中の標的DNAコピーの初期量は:(0.029 標的コピー/μl):(0.187μg/μl) = 0.153標的コピー/μg DNAと算出された。混合DNA試料の総体積は45μlであった。3.5μlの混合ポリヌクレオチド試料中の標的DNA分子の検出率は0.078(1-hypgeo(0;3500;1;45000));即ち、0.75より少なかった。第1ラウンドのPINSで用いられた試料体積は3.5μlであった。
HPV18からのDNA配列はGenBank (GQ180790)より得られ、続く2プライマーは、HPV18ゲノム中の96bpのDNA断片(GenBank Acc. No: GQ180790)を標的とするよう手動で設定された。
フォワードプライマー(Fw プライマー): GTTTAGTGTGGGCCTGTGC [配列番号(SEQ ID NO: )1]
リバースプライマー(Rev プライマー): GGCATGGGAACTTTCAGTGT [配列番号2]
標的DNA分子数が初期ポリヌクレオチド混合物中のPCR検出限界を下回ることを確認するため、PCR解析を行った。9個のポリヌクレオチド混合物試料(それぞれ1μlの最初の混合物を含む)がプライマー対[配列番号1及び2]とともにPCR増幅用DNAテンプレートとして用いられたが、予想された96 bpPCR産物はいずれの試料からも検出されなかった。最初の混合物からの個々の陰性PCR試料を示すアガロースゲルは図1において確認され得る。
上記のように、工程1で調製された、混合ポリヌクレオチド試料の10個の個別の3.5 μl試料を、体積20μlでのMDA増幅のために選択し、ここで3.5 μlの混合ポリヌクレオチド試料中の標的DNA分子の検出率は0.078 (1-hypgeo(0;3500;1;45000)); 即ち、0.75より少なかった。1 μlの各MDA 増幅試料につき3個の複製したアリコート(#1 〜 #10)が、上記のように、標的特異的なPCRプライマー対を用いて、PCR増幅による標的DNA分子の存在確認のためにスクリーニングされ、次いでPCR産物を可視化するためにアガロースゲル電気泳動を行った(図2)。10個の複製試料が解析されたため、10個の複製希釈試料のうち少なくとも1つにおいて、標的DNA分子の検出確率は0.778 (1-hypgeo(0;35000;1;45000))、即ち、0.75より高かった。#10のみ、3個の複製全てにおいて、正確なサイズの陽性PCR産物の結果が確認された。#10よりさらに10個の試料(各1μlのテンプレートを含む)を、同一条件を用いたPCRにより解析し、5個(10個のうち)の正確なPCR産物を結果として得た。第1のスクリーニングで得られた3個(3個のうち)と、続くスクリーニングで得られたもの、ここで5個(10個のうち)は陽性であった、とを合わせて、総計8個(13個のうち)が陽性であると観察され、全て#10を起源としていた。#10の総DNA濃度は0.222 μg/μlと定量化された。第2のスクリーニングからの10個のPCR生産物を示すアガロースゲルは図2において確認される。
PINS第2ラウンドを進める前に、十分量のテンプレートを発生させるために、#10からの3.5 μl のテンプレートを50 μlのMDA反応混合物を用いることにより増幅させた。#10の再増幅の結果は、10の1 μlアリコートのPCR解析によって確認され、ここで10個のうち6個のPCR反応において、標的DNA分子が検出された(0.60標的DNAコピー/ μl)。この結果は#10の最初の標的DNA分子の頻度8/13(0.62)と良く相関する。標的コピー/μl試料の出現率を、総DNA濃度で割ることにより、相対的な標的DNA分子の存在は、(0.6標的/μl):(0.222 μg/μl) = 2.70標的/μgと算出された。
PINS第1ラウンド由来の、#10の再増幅試料の10個のアリコートを、MDA反応混合物中20倍希釈され、その結果標的DNA分子は、0.03標的DNA分子/μlの頻度に希釈した。希釈試料の1μlアリコート中の標的DNA分子(HPV18)の検出確率は、1-hypgeo(0;1000;30;50000) = 0.455、即ち0.75未満であった。各アリコートを上記のMDAプロトコールを用いて増幅させた。10個のMDA反応外では、標的DNA分子は2つの反応試料、#8及び#10において検出され、ここで3個(3個のうち)の複製PCR反応が標的に対して陽性であった。10個の複製試料のうち少なくとも1個における標的の検出確率は1-hypgeo(0;10000;30;50000) = 0.9988、即ち0.75超であった。
最初の混合物(0.153 標的/μg)から最終試料(12.08 標的/μg)までの計算により、2回の連続したラウンドのPINS増幅後に、総ゲイン79.05に達した。第1ラウンドのPINS前のHPV18の存在量は、1 / 1.97*106 HPV18陽性ゲノム当量/総ゲノム当量であった。第1及び第2ラウンドPINS後の、対応する存在量はそれぞれ1.02*105及び 2.49*104であった。表1で確認できるように、濃縮は21個の試験を用いて行われ、必要とされる配列決定等の従来試験の必要数は79倍減少した。
本実施例において、標的DNA分子の配列決定を促進するためのPINSの使用が、PCRにより検出される限界を下回る標的DNA量の混合ポリヌクレオチド試料中で行われた。選択された標的DNA分子はHPVゲノム内に位置するポリヌクレオチドであった。混合試料中のこの標的DNA分子の量は0.0286コピー/μlに相当した。混合試料は実施例1に上記されるように調製された。標準的なPCRプロトコールを用い、PCR反応に添加されたテンプレート溶液量は通常1μlであり、PCRによる検出で陽性となるために必要な標的DNAの最少濃度は1コピー/μlである。よって、混合ポリヌクレオチド中の標的DNA分子の量は、PCR増幅及び後続の配列決定に必要な量の約35倍未満であった。実施例は、既知の標準PCRに基づく手順によっては達成不可能であった、混合試料中の標的DNAの配列決定のためにどのようにPINSが使用されることができるかを示す。
混合ポリヌクレオチド試料(実施例1の混合ポリヌクレオチド試料に対応、MDA増幅前)μl当たりの標的DNA分子のコピー数がPCRの検出限界より下であったことを確認するため、一連の10個の重複試料をPCR増幅させ(原料及び一般的方法 (Material and General Methods)に示されるプロトコールによる)、ここでは変更された50サイクルを用い、最適化された増幅パラメーターを用いた:15分間、94°C/65.8°/72°Cの各温度を維持した。増幅中で用いられたHPV-特異的プライマーは:
HPV-264f: 5’-GTGGTGTATAGAGACAGTATACC-3’ [配列番号3]
HPV-911f: 5’- CCTTCTGGATCAGCCATTGT [配列番号4]
であった。
最初の混合ヌクレオチド試料中の標的DNA分子のコピー数(0.0286標的コピー/μl)は、実施例1に記載されるように、PINSの実施により最終量は2.5標的コピー/μlに増加した。MDA増幅産物は、最初の混合ポリヌクレオチド試料のPINS第1ラウンドを行うことによって発生され、1μlのMDA増幅試料を用いて、上記のようにPCRにより解析された。図7に示されるように、予想されたサイズ(667 bp)のPCR産物が得られた。最初の混合ポリヌクレオチド試料の非特異的増幅の低いレベルにより、図7の#2列の塗布標本のように検出可能な低いバックグラウンドを発生した。レーン#2の667 bpまでの検出可能な生成物はゲルアウト(gel-out)(GeneJet Gel-out kit, Thermo Fischer Scientific)によって単離され、連続シークエンスを許容するため標的DNA分子の量を増加させるためにPCR再増幅を行った(レーン#A,図8)。
レーン#Aから単離された(図8)精製された産物はフォワード及びリバース両プライマーを用いて配列決定された[配列番号3 及び4]。得られた配列はHPV18 (HPU89349)の配列にアラインメントされ、0個のミスマッチを有する完全なアラインメントとなった(図9)。実施例は、それらの配列が決定され得るレベルまで稀少な量の配列を濃縮するための、PINSの効果を確認する。
3.1 エンドグルカナーゼをコードする標的DNA分子の選択のためのプライマー決定
多重のエンドグルカナーゼをコードする微生物遺伝子及び推定のエンドグルカナーゼはGenBankより得られ、そのヌクレオチド配列は多重配列のためのClustalWアラインメントを用いて配列決定された。アラインメントにより、保存された核酸配列領域が同定され、これらの保存されたDNA配列の1つを有する標的DNA分子プライマーのセットが設計された。プライマー及びエンドグルカナーゼをコードする得られた遺伝子の配列の部分アラインメントは、図10に示される。
森林土壌の試料(8)は多様な土壌微生物源として採集される。8個の異なった試料からのDNAは、Bead Beatingを用いて、Kvistら[10]によって記載されるように抽出される。各抽出物はMDARepli-g Miniキットを用いて増幅され、上記のMDA増幅条件(原料及び一般的方法 (Materials and general methods))が用いられる。増幅DNAの性質を0.7%アガロースゲル上の可視化により確認する。
選択されたプライマー [配列番号5 及び 6]を用い、選択されたPCR条件: 94°C(30 秒) + 60°C(30 秒) + 72°C(30 秒)を用いて、標的DNA配列が観察されるかどうかを評価するために、最初のPCR解析が行われ、30サイクル実行される。
標的DNA分子を含むことを確認されたDNA試料を、以下の通りPINSの対象とする:
上記の検出された定量化に基づいて、1:10の希釈係数(D)を用いて希釈系列が調製され、次いで(N)の複数の複製希釈を10-2に設定する。20個の個々の10-2希釈した試料を調製し、Repli-g Mini kit (Qiagen)を用いて遺伝子増幅の対象とした。各増幅試料は、PCRプライマー[配列番号5 及び 6]及び上記1.3のRT-PCR条件を用いて個別に解析された。結果は、20個の試料のうちの3個が陽性PCR増幅され、予想されたサイズのDNA産物であった。PINS解析結果の関連データを以下に列記する。
PINS 定量化数 (quant no): 24.3
希釈係数: 10
次の希釈: 10-3
次の反復の試料: 20
前ラウンド(PINS#1)からのPINS-ソフトウェア解析に基づき、全体で少なくとも20個の試料が次ラウンドの複製に必要とされると推定される。よって、20個の10-3希釈試料を調製し(即ち、前の総希釈試料(Dt)に対し10倍の希釈(D)増大)、そして各個別の試料はRepli-g MDA kitを用いて増幅される。各試料は続いてプライマー[配列番号5 及び6]を用いて解析され、(20個のうち)1個の試料が予想されたサイズのDNA産物を生成する。この試料はさらなる進行のために選択される。PINS解析結果の関連データを以下に列記する。
PINS定量化数: 230
希釈係数: 9.6
次の希釈: 10-4
次の反復の試料: 20
PINS#2の計算値に基づいて、少なくとも20試料が次ラウンドの濃縮に再び必要とされると推定される。ソフトウェアにより提示される希釈は10-4であり、20個の試料が調製される。20試料はRepli-g Mini Kitを用いて増幅され、続いてプライマー[配列番号5 及び 6]を用いたRT-PCR増幅の対象とされ、ここで4個の試料が予想されたサイズのDNA産生物を生成する。これらの4個の試料をプールし、次の反復ラウンドへ用いる。PINS解析結果の関連データを以下に列記する。
PINS定量化数: 2840
希釈係数: 12
次の希釈: 8.4*10-6
次の反復試料: 25
PINS#4の計算値に基づいて、ここで合計25個の試料が8,4*10-6希釈で調製される。各個別の複製希釈試料はRepli-g Mini Kitを用いて複製される。プライマー[配列番号: 5 及び 6]を用いたRT-PCR解析は、2つの試料が予想されたサイズのDNA産物を精製することを示す。PINS解析結果の関連データを以下に列記する。
PINS 定量化数: 27200
希釈係数: 12
次希釈: 8.8*10-7
次反復試料: 25
PINS#4の計算値に基づいて、ここで合計25個の試料が8.8-10-7希釈で調製される。さらに、各個別の試料はRepli-g Mini Kitを用いて増幅される。プライマー配列番号6 及び 6]を用いたRT-PCR解析は、2つの試料が予想されたサイズのDNA産物を精製することを示す。PINSソフトウェアの結果を以下に列記する。
PINS 定量化数: 365000
5サイクルのPINSは標的DNA分子の存在を、例えば標的DNAを含む遺伝子全体及び潜在的オペロンを従来のシークエンシング法により配列決定できる状態に置かれるように、増強させることを提供する。結果として、RGW法[7]が、3つの無作為DNA試料のライブラリーにおいて実行され、ここで、標的DNA分子で濃縮された3個のライブラリーは、3の制限的消化(EcoRI, HindIII 及び BglII/MboI)、次いで互換性のある5’突出末端(5’overhangs)を含む各RWGプライマー、例えば、オリゴ配列を形成するためのプライマー対[配列番号5] 及び[配列番号6]、による消化をアニーリングすることにより発生する。[配列番号5及び6]のスクリーニングに用いられる標的DNA分子に特異的なプライマーは、標的DNA分子及びその隣接領域に及ぶより大きなPCR産物を発生させるためのPCR増幅において、RGWプライマー[配列番号5]との組合せで用いられる。
本実施例は、混合試料中(例えば、患者から採取された)mecA遺伝子の存在を検出するため、及び遺伝子が試料中に存在するブドウ球菌(Staphylococci)ゲノムに由来するかを決定するためのPINSの使用を示す。本解析は同時に起こるmecA遺伝子の上流約13000塩基対のブドウ球菌遺伝子の共増幅をモニターするためのPINSの使用に依存する。実験は多重置換増幅(MDA)に対するphi29ポリメラーゼの高い忠実度(fidelity)を利用して設計され、増幅中に発生されるために上限+70000 bpまでのゲノム断片を許容する。PINSの実行後、mecA遺伝子及びブドウ球菌遺伝子(SA)に特異的なプライマーを用いて発生したPCR産物のレベルが同程度の量に到達する場合、PCR産物は同じゲノムに由来し、即ち、MRSA、MDAの範囲内に共増幅されたことを示す。PINS処理後のシークエンシングされたPCR生産物の集合体は、mecA遺伝子がブドウ球菌遺伝子(SA)に由来することを確認するために用いられる。
mecAをコードする微生物遺伝子の多配列はGenBankデータベースより得られ、これらの配列は多配列アラインメントのためのClustalWを用いてアラインメントされる[9]。100%配列同一のアラインメント領域は、プライマー設計に位置し、用いられる。結果として得られたmecAを標的するプライマーは:
MR-fw: 5’-CAAACTACGGTAACATTGATCGCAAC-3’ [配列番号16]
MR-Re: 5’ - CAATATGTATGCTTTGGTCTTTCTGC-3’ [配列番号17],
であり、且つ126 bp PCR産物を生成すると予想される。
プライマーの配列は:
SA-fw: 5’- CGTGAAGAAACAGAACGAATGATTC - 3’ [配列番号18],
SA-Re: 5’- GCCTCTAGAATATTTCATCGCATTTG - 3’ [配列番号19],
であり、且つ126 bp PCR産物を生成すると予想される。
MRSAを含む疑いのある試料をPINS解析の対象とする。患者から試料を綿棒(cotton-stick-swab)を用いて採集する。A&A Biotechnology (Poland) DNA Swab抽出キットを用いて全DNAを綿から抽出する。
4.3.1: 第1ラウンドPINS #1
検出された最初の試料中の標的DNA分子レベルに基づき、試料N(1.7*10-3希釈)の10の複製を調製する。10個の複製試料のそれぞれにRepli-g Ultra-fastを適用し、その後MR標的DNA分子を検出するためのRT-PCR解析を実行することにより、10個の試料(「試料E」)のうち1個の試料が多量のMR-PCR産物を産生することが確認され、一方残りの9個の試料は検出可能なMR-PCR産物の量を含まない。このMR陽性の試料において、RT-PCRの定量化は、MR-PCR生産物の存在量が1.27*103であり、SA-PCR生産物の存在量が1.31*103ことを示す。ここで、2つの標的DNA分子の比は同レベルにシフトし、最初の比1:8から、1:1に近い比となる。
陽性「E」試料に基づき、1.27*10-3 (2.3.1)希釈を有する他の一連の希釈を設定し、再度N (1,27*10-4希釈)の10個の複製試料を調製する。各試料はRepli-g Ultra-fast MDA kitを用いて増幅される。RT-PCR解析より、MRは10個のうち9個の試料を検出することができ、陽性試料中のMRの存在量は1.32*104であることが明らかとなる。比較解析は、SAの存在量が同一のまま: 1.31*104であるように、SA-PCR生産物のレベルが増加していないことを明らかにする。2つの生産物の比は、再び1:1にかなり近づく。標的の存在量において顕著な変化を得ることなくx10倍の追加の増幅を得るためPINSを採用し、量はさらに増加しないと結論づけ、純粋(に近い)試料の存在を示す。したがって、追加のPINSラウンドは、結果としてさらに高い精製レベルになることはない。したがって、次のステップは、抵抗性の遺伝子mecA及びその隣接遺伝子の同定を進めるために増幅されたテンプレートのシークエンスを行い、そして同じ試料中に置かれる独立したDNA分子のようなMR及びSAよりもむしろMRSAの存在を確認することである。
既知のMRSA(GenBank, NCBI)を標的とするよう設定されたプライマーが、配列決定(sequencing)及び集合(assembly)に用いられるPCR産物と重複を発生させるために用いられる。種々の長さの24のPCR産物が発生し、2つの連続的な2475 bp及び19186 bpの配列がPCRにより生産され、配列決定され、及び集合される。追加の789bpがRGW [7]により得られ、十分な重複が、2つの集合体が1つの22450 bpの大きな集合体の中へ組み入れられるために設定される。Nucleotide BLAST [11]はデータベース中では多重MRSA株(multiple MRSA strains)とほぼ完全一致する(>99.9%)ことを示す。
PINS第1ラウンドにより、MRの存在量が8倍増加したことが確認された。標的化されていないバックグラウンドでの解析の実行により、MRとSAとの間の比は、PINSの最初の実行の間に明らかに偏り(PINS#1)、一方、続くラウンドではこの比率は維持された(PINS#2)。よって、PINS選択ラウンド中にMR標的DNA分子のみが用いられたとしても、標的化されていないSAは同量存在することから、両方の標的DNA分子は同じDNA断片に由来するものと結論づけられる。解析より、非抵抗性のStaphylococciも推定では最初の混合物中に存在するにもかかわらず、MR抵抗性は他のコアグラーゼ陰性ブドウ球菌(coagulase-negative Staphylococci)[12]等のようなmecAを含む細菌ではなく、スタフィロコッカス・アウレウスに由来することが明らかである。MRはスタフィロコッカス・アウレウスでない細菌株において存在し得るが、MDA増幅中の両方の標的DNA分子の共増幅のため、明らかにSAとともに増幅する。よって、プライムされた(primed)配列はゲノム中で13000 kbに分離され、両方の性質を同じゲノムのフラクションへ割り当てることが可能であり、MRSAの存在を診断するのに十分である可能性がある。加えて、この観察結果を検証し、DNAは既知のMRSA遺伝子配列とほぼ同一である(+99.9%)ことが明らかとなった。
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Claims (19)
- DNA分子集団を含む混合ポリヌクレオチド試料から標的DNA分子を濃縮するためのインビトロの方法であって、以下の工程:
a)前記標的DNA分子及び非標的DNA分子を含む混合ポリヌクレオチド試料を提供し、ここで前記標的DNA分子は1又は複数の、少なくとも10ヌクレオチドの既知の固有の連続配列を含み、前記固有の連続配列は前記非標的DNA分子と区別可能であり、
b)希釈された混合ポリヌクレオチド試料中の前記標的DNA分子の検出確率が0.75未満になるまで、前記混合ポリヌクレオチド試料を連続的に希釈し、そして
c)少なくとも1つの複製希釈試料中の前記標的DNA分子の検出確率が少なくとも0.75となるまで、十分な数の、前記希釈された混合ポリヌクレオチド試料の複製物を製造し;
d)前記複製希釈試料中のDNA分子を増幅して、各試料のDNA分子の存在量を増加させ;
e)工程d)で増幅された前記複製希釈試料中の標的DNA分子の存在又は不存在を検出し、そして標的DNA分子の存在が検出された複製希釈試料を選択し、ここで、前記選択された複製希釈試料中の前記標的DNA分子の頻度が、工程(a)における混合ポリヌクレオチド試料と比較して増加されており;そして
f)前記標的DNA分子を含むものとして工程e)で選択された複製希釈試料を、希釈試料中の前記標的DNA分子の検出確率が0.75未満になるまで連続的に希釈すること、
を含み、そして、少なくとも1回、工程(c)〜(e)又は(f)を繰り返すことを含む、方法。 - 工程b)において、希釈された混合ポリヌクレオチド試料中の前記標的DNA分子の検出確率が0.50未満になるまで、前記混合ポリヌクレオチド試料を連続的に希釈する、請求項1に記載の方法。
- 工程b)において、希釈された混合ポリヌクレオチド試料中の前記標的DNA分子の検出確率が0.25未満になるまで、前記混合ポリヌクレオチド試料を連続的に希釈する、請求項1又は2に記載の方法。
- 工程c)において、少なくとも1つの複製希釈試料中の前記標的DNA分子の検出確率が0.80〜0.95となるまで、十分な数の、前記希釈された混合ポリヌクレオチド試料の複製物を製造する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
- 工程a)の混合ポリヌクレオチド試料中の前記標的DNA分子の頻度が非標的DNA分子に対して10-2〜10-7である、請求項1〜4のいずれか1項に記載に記載の方法。
- 工程a)の混合ポリヌクレオチド試料中の前記標的DNA分子の頻度が非標的DNA分子に対して10-4〜10-7である、請求項5に記載の方法。
- 工程b)における前記混合ポリヌクレオチド試料の連続的希釈物が、各試料中のDNAの存在量を増加させるために増幅され、次いで各増幅試料において前記標的DNA分子の存在又は不存在を検出し、これにより前記標的DNAの検出確率が0.75未満である希釈試料を得るために必要な連続希釈回数を決定する、請求項1〜6の何れか1項に記載の方法。
- 工程d)においてDNA分子は、ランダム縮重プライマーPCR、リンカーライゲーションPCR、縮重オリゴヌクレオチドプライマー(DOP)PCR及び多重置換増幅から選択される技術により増幅される、請求項1〜7の何れか1項に記載の方法。
- 少なくとも一部の前記標的DNA分子の核酸配列を決定するために、前記標的DNA分子の核酸配列解析を行う工程g)をさらに含む、請求項1に記載の方法。
- 前記標的DNA分子内において、前記1又は複数の、少なくとも10ヌクレオチドの固有の連続配列の存在がPCRにより検出される、請求項1〜7の何れか1項に記載の方法。
- 前記標的DNA分子内における、前記1又は複数の、少なくとも10ヌクレオチドの固有の連続配列の存在が、前記標的DNA分子へのハイブリダイゼーションにより検出される、請求項1〜7の何れか1項に記載の方法。
- 前記標的DNA分子が、少なくとも10ヌクレオチドの固有の連続配列を、少なくとも2つ含み、ここで、前記標的DNA分子は50〜100,000個の核酸塩基対を含む、請求項1に記載の方法。
- 前記標的DNA分子が150〜3,000個の核酸塩基対を含む、請求項12に記載の方法。
- 前記標的DNA分子が150〜1500個の核酸塩基対を含む、請求項12又は13に記載の方法。
- 工程(f)の希釈試料の総希釈が工程(c)〜(e)の各反復に対して2〜20倍増加される、請求項1〜14の何れか1項に記載の方法。
- 工程(c)で調製された複製希釈試料の数が2〜500個である、請求項1〜15の何れか1項に記載の方法。
- 標的DNA分子が細胞ゲノムに由来する、請求項1〜14の何れか1項に記載の方法。
- 細胞が細菌性細胞、真菌性細胞及び哺乳類細胞から選択される、請求項17に記載の方法。
- 標的DNA分子が、ウィルスゲノム、哺乳類ゲノム、又はそれらの組合せに由来する、請求項1〜14の何れか1項に記載の方法。
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