JP6112548B2 - 自己倍数化抑制に基づく酵母の育種方法 - Google Patents

自己倍数化抑制に基づく酵母の育種方法 Download PDF

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Description

本発明は、酵母の交雑を行なうための、酵母菌株を育種する方法に関する。
酵母は古来より人類の日常生活と密接に関わり合ってきた。清酒,ワイン,ビール等の酒精飲料、及びパン、味噌,醤油等の発酵食品の製造に加えて、近年のバイオテクノロジーの発達により医薬品の製造にも関わるに至っている。(以降、「飲料・食品・医薬品等の製品の製造などの産業上有用な用途に用い得る酵母」を「実用酵母」とも表示する)。
酵母の有効利用に際しては、優秀な酵母を育種することが不可欠である。これまでに様々な育種法が用いて、実用酵母菌株の改良が行われてきた。とりわけ突然変異育種法は古くから広く用いられてきた方法であり、紫外線や放射線又は薬剤など種々の突然変異誘発源によって、人為的に突然変異を誘発することで形質を改変する方法である。しかしながら実用酵母は二倍体あるいは四倍体といった高次倍数体であることが多いため、所望の性質を有する突然変異体を得るには多大な労力を要する。
一方、他の育種法として、交雑育種法が知られている。交雑育種法は、異なる二つの菌株(親株)について人為的に交雑を行い、所望の形質を有する交雑株を選抜する方法であり、両親株の優良形質を併有する株を得るために有効な方法である。酵母の交雑には接合を利用するため、交雑の両親株として用いる二株は互いに接合する性質(以降「接合能」とも表示する)、すなわち、それぞれa型とα型の接合型を持つことが必要である。ところが、実用酵母の多くは二倍体であり、通常は接合能を有さないa/α型の接合型を持つ。そこで減数分裂を経て胞子を形成させることで、a型もしくはα型の接合型を持つ一倍体の減数分裂分離体(以降、「減数体」とも表示する)を取得することが必要となる。このとき生成したa型もしくはα型の酵母細胞は親株の全ての形質を継承するとは限らないため、かかる減数体を用いて製造した交雑体の集団から所望の形質を有する酵母株を選別する作業に時間と労力を要する。
さらには、各々所望する形質を有する2つの優秀な一倍体酵母が存在したとしても、それらの接合型がa型とa型、又はα型とα型であった場合にはそれらを接合させることができない。その際には、どちらか一方の親株から、異なる接合型を持ち、尚かつ所望の形質を有する減数体を新たに取得しなければならないが、既存の減数体と同等の形質を有しつつ接合型のみ異なる減数体、すなわち接合型座位を除く全ての遺伝的背景が同一の酵母株を取得することはこれまで極めて困難であった。
ところが最近、酵母細胞内に接合型変換遺伝子HO(以降、「HO遺伝子」とも表示する)を発現させることによって、酵母の接合型をa型又はα型へと変換する技術(特許文献1参照)が開発された。この技術により、親株の接合型座位を除く全ての遺伝的背景を継承したa型又はα型の酵母を出現させることが可能となり、上記の「所望の形質を有する酵母株の選別作業」を軽減できることが期待されている。しかしながら、上記技術の課題も認識されている。特許文献2や特許文献3に示されるように、HO遺伝子による接合型の変換作用を利用しても、生成した所望の接合型を持つ酵母の近傍で、対となる接合型を持つ酵母(以降、「対型酵母」とも表示する)が残存あるいは新生することが不可避なため、増殖の過程で接合して自己倍数化(非特許文献1参照)を惹起してしまう。このような望まざる自己倍数化が起こってしまうと、HO遺伝子による接合型の変換作用を利用して作製した所望の接合型を持つ目的の酵母を分離することが困難となる。
以上のように、所望の形質を有する異なった実用酵母から、それぞれの形質を継承したa型とα型の一倍体酵母の組み合わせを獲得するには依然甚大な労力が必要である。
特開2010-220481号公報 特開平7-67664号公報 特開2009-171912号公報
KentaroFurukawa,et.al.,2011,PLoS One,Vol.6,e26584
本発明の課題は、任意の接合型を持つ酵母から、接合型変換の際の自己倍数化を回避して、所望の接合型を持つ酵母を製造する方法を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を行った結果、接合型変換の際に不本意にも生成する対型酵母の接合能を人為的に抑制することで、自己倍数化を回避して所望する接合型の酵母が得られることを見出した。優秀な形質を有する酵母に対して、接合を制御する遺伝子、例えばa型酵母の製造ではa1遺伝子を、α型酵母の製造ではα2遺伝子を予め導入することにより、生成した対型酵母にa/α型の遺伝的背景を一過的に創出することで、かかる酵母の接合を抑制することに成功し、本発明を完成するに到った。
すなわち、本発明は以下を包含する。
〔1〕 任意の接合型を有する酵母から、所望の接合型を有する酵母を製造する方法であって、
(1)前記酵母の接合型を変換する工程、
(2)前記酵母の自己倍数化を抑制する工程
を含む、方法。
〔2〕 前記酵母が、醸造用酵母又はパン酵母である前記〔1〕に記載の方法。
〔3〕 前記自己倍数化を抑制する工程が、プロモーターの下流に接合を制御する遺伝子を連結した構築物又はベクターを利用して、該遺伝子を前記酵母の細胞内で発現させる方法により構成される、前記〔1〕又は〔2〕に記載の方法。
〔4〕 前記接合を制御する遺伝子が、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)属酵母由来のa1遺伝子又はα2遺伝子である、前記〔3〕に記載の方法。
〔5〕 前記プロモーターが、PGK1プロモーターである、前記〔3〕又は〔4〕に記載の方法。
〔6〕 前記所望の接合型がα型であるとき、前記プロモーターがa型特異的に発現する遺伝子のプロモーターである、前記〔3〕又は〔4〕に記載の方法。
〔7〕 前記a型特異的に発現する遺伝子のプロモーターが、STE2プロモーターである、前記〔6〕に記載の方法。
〔8〕 前記接合型を変換する工程が、プロモーターの下流に接合変換遺伝子を連結した構築物又はベクターを利用して、該遺伝子を前記酵母の細胞内で発現させる方法により構成される、前記〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の方法。
〔9〕 前記接合型変換遺伝子が、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)属酵母由来のHO遺伝子である、前記〔8〕に記載の方法。
〔10〕 前記プロモーターが、酵母の接合型に依存した発現特性を示さないプロモーターである、前記〔8〕又は〔9〕に記載の方法。
〔11〕 前記プロモーターが、GAL1プロモーターである、前記〔10〕に記載の方法。
〔12〕 前記〔1〕〜〔11〕のいずれかに記載した方法により製造した酵母を、少なくとも片方の親株として、酵母の交雑株を製造する方法。
〔13〕 前記〔1〕〜〔12〕のいずれかに記載した方法により製造した酵母。
本発明によれば、自己倍数化を回避して効率よく接合型の変換を行うことができるので、優良な形質を有する酵母から所望する接合型を持つ酵母を容易に製造することができる。所望の接合型を持つ酵母を用いれば、交雑育種法に伴う上述の問題を回避することができるので、両親株の優良な形質を併有する交雑株を著しく効率的に育種することが可能となると考えられる。すなわち、本発明の製造方法は、従来法では交雑育種ができなかった、又は困難であった実用酵母の交雑育種の効率性を著しく高めることを可能とするものである。
所望の接合型を持つ酵母を製造する方法の模式図:(A)本発明の接合を抑制する方法の原理の概略を示す模式図、(B)従来の接合型変換技術において生じる自己倍数化を示す模式図、(C)本発明により所望の接合型を持つ酵母を製造する方法の概略を示す模式図。 細胞特異的に緑色蛍光タンパク質GFPレポーターを発現させた場合における、各接合型の酵母細胞が発する蛍光強度を示すグラフ:(A)酵母のa型の場合、(B)酵母のα型の場合。 a型又はα型特異的にGFPレポーターを発現する酵母細胞に、酵母の接合型に依存した発現特性を示さないPGK1プロモーターの制御下で、a1遺伝子又はα2遺伝子を構成発現させた場合における、各接合型の酵母細胞の挙動:(A)各接合型の酵母細胞が発する蛍光強度を示すグラフ、(B)異なる栄養要求性を有する親株との接合により生成した二倍体酵母の生育を示す写真。 α型特異的にGFPレポーターを発現する酵母細胞に、a型の接合型を有する酵母において特異的に発現する遺伝子のプロモーターの制御下でα2遺伝子を発現させた場合における、各接合型の酵母細胞の挙動:(A)酵母細胞内での遺伝子発現の概略を示す模式図、(B)各接合型の酵母細胞が発する蛍光強度を示すグラフ、(C)異なる栄養要求性を有する親株との接合により生成した二倍体酵母の生育を示す写真。 α型からa型への接合型変換の実施結果:(A)α型からa型へ変換した酵母の第三染色体の変化を示す模式図、(B)接合型変換において単離した酵母が発する蛍光強度を示すグラフ、(C)既存のBY4741株、又は創製したa型酵母HR41−K株と、α型酵母HR42−11T株との接合により生成した二倍体酵母の生育を示す写真、(D)定量PCRにより酵母の倍数性を評価したグラフ。 a型からα型への接合型変換の実施結果:(A)単離した酵母が発する蛍光強度を示すグラフ、(B)創製したα型酵母HR42−K株又はHR42−K’株と、a型酵母MCF4741株との接合により生成した二倍体酵母の生育を示す写真、(C)定量PCRにより酵母の倍数性を評価したグラフ。 a/α型からa/a型又はα/α型への接合型変換の実施結果:(A)プラスミドpHY−2GAを導入したa/α型又はa/a型酵母が発する蛍光強度を示すグラフ、(B)プラスミドpLY−3GCを導入したa/α型又はα/α型酵母が発する蛍光強度を示すグラフ、(C)本技術により創製した酵母の接合効率を評価する方法及びその結果を示したグラフ。
1.本発明における「酵母の接合型の変換」について
本発明は、任意の接合型を有する酵母の接合型を変換することにより、所望の接合型を有する酵母を製造する方法に関する。本発明の製造方法は、酵母の接合型を変換する工程、及び該酵母の自己倍数化を抑制する工程を含むことを特徴とし、これらの工程を含んでいる限り、当業者に公知のもののうち技術的に適用可能な全ての工程を包含することを排除しない。
本発明において、接合型の変換とは、任意の接合型を有する酵母を、該接合型以外のいずれかの接合型を有する酵母に変換することを指す。具体的には、一倍体のa型酵母を一倍体のα型酵母に変換すること、一倍体のα型酵母を一倍体のa型酵母に変換すること、二倍体のa/α型酵母を二倍体のa/a型酵母に変換すること、あるいは二倍体のa/α型酵母を二倍体のα/α型酵母に変換することなどを指し、変換前の接合型あるいは変換後の接合型の種類が限定されることはない。また、変換前後の酵母の遺伝子型あるいは表現型は、接合型に関連する部分以外は不変であることが好適であるが、接合型の変換に伴い、接合型に関連する部分以外の遺伝子型あるいは表現型が変化することを除外しない。
2.本発明の適用可能な「酵母」について
上記の「酵母」としては、飲料、食品、医薬品等の製品の製造などの産業上有用な用途に用い得る酵母(実用酵母)、具体的には、サッカロミセス(Saccharomyces)属、ピキア(Pichia)属、クリベロマイセス(Kluyveromyces)属に属する酵母を好適に例示することができ、飲料や食品の製造に用い得る酵母をさらに好適に用いることができ、飲料や食品の製造に用いることができ、かつ、サッカロミセス(Saccharomyces)属に属する酵母を特に好適に用いることができる。上記の「飲料や食品の製造に用い得る酵母」としては、下面発酵酵母、上面発酵酵母、ワイン酵母、清酒酵母、焼酎酵母、ウイスキー酵母などの醸造用酵母や、パン酵母などを好適に例示することができる。また、上記の「酵母」には、親株だけでなく、かかる親株から胞子形成を経て得られる減数体も含む。なお、後記実施例で詳述するように、本発明の対象とする酵母は接合型座位(以下、MAT座位とも表示する)に変異を有しないものが好ましい。ただし、MAT座位に変異を有する酵母であっても、相同組み換え等の公知の技術を用いて、MAT座位を修正することで本発明を適用することが可能である。
3.本発明における「自己倍数化を抑制する工程」について
本発明の製造方法における「自己倍数化を抑制する工程」としては、かかる酵母の接合型変換の際に生成する対型酵母の接合能を欠失し得る工程である限り特に制限されない。具体的にはa1、α2、GPA1(GenBankアクセッション番号:NP_011868)、SST2(GenBankアクセッション番号:NP_013557)、DIG1(GenBankアクセッション番号:NP_015276;参考文献1参照)などの「接合を制御する遺伝子」を酵母細胞内で発現させる方法を好適に例示することができ、a1遺伝子又はα2遺伝子を酵母細胞内で発現させる方法をさらに好適に例示することができ、かつ、後記実施例で詳述するように、配列番号1に示されるアミノ酸配列(GenBankアクセッション番号:CAA24622)をコードするa1遺伝子、又は配列番号2に示されるアミノ酸配列(GenBankアクセッション番号:DAA07518)をコードするα2遺伝子を酵母細胞内で発現させる方法を特に好適に例示することができる。なお、酵母の接合型変換の際に生成する対型酵母の接合能を欠失し得る限り、上記好適として例示した配列において1個若しくは数個のアミノ酸残基が欠失、置換、挿入又は付加された配列を有する変異体、あるいは改変体を用いることもできる。なお、本発明において「1もしくは数個」とは、1〜50個、好ましくは1〜20個、より好ましくは1〜10個であり、全長のアミノ酸配列の80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上の同一性を有する範囲内での変異があるか、または改変が施されていることを表す。
したがって、本発明における好ましい接合を制御する遺伝子は、例えば、酵母細胞内で発現させることによって、かかる酵母の接合型変換の際に生成する対型酵母の接合能を欠失し得る遺伝子であって、かつ下記の(1)〜(4)のいずれかから選択されるアミノ酸配列をコードする遺伝子であると表すことができる。
(1)配列番号1に示されるアミノ酸配列、
(2)配列番号1に示されるアミノ酸配列の1個若しくは数個のアミノ酸残基が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列、
(3)配列番号2に示されるアミノ酸配列、
(4)配列番号2に示されるアミノ酸配列の1個若しくは数個のアミノ酸残基が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列。
4.本発明における「接合型を変換する工程」について
本発明の製造方法における「接合型を変換する工程」としては、その酵母の接合型を変換し得る工程である限り特に制限されない。具体的には接合型変換遺伝子(HO遺伝子)を酵母細胞内で発現させる方法や、相同組み換えを用いてMAT座位を変換する方法、UV照射等を用いた変異誘発法などを好適に例示することができ、HO遺伝子を酵母細胞内で発現させる方法をさらに好適に例示することができる。HO遺伝子としては、例えば、先の特許文献1に記載のHO遺伝子である、Saccharomyces sensu stricto、S.cerevisiae、S.cariocanus、S.kudriavzevii、S.mikatae、S.bayanus、S.pastorianus又は、S.uvarumに由来するHO遺伝子などを用いることができる。中でもS.cerevisiaeに由来するHO遺伝子が好ましく、特に、ワイン酵母サッカロミセス・セレビシエ EC1118株に由来するHO遺伝子を好適に用いることができ、後記実施例で詳述するように、配列番号3に示されるアミノ酸配列をコードするHO遺伝子をさらに好適に用いることができる。なお、酵母の接合型を変換し得る限り、上記好適として例示した配列において1個若しくは数個のアミノ酸残基が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列を有する変異体、あるいは改変体を用いることもできる。これらの変異体、あるいは改変体は、該タンパク質の223番目のアミノ酸残基がグリシンであることが好ましい。また、該タンパク質の475番目のアミノ酸残基は、ヒスチジンであることが好ましい。
したがって、本発明における好ましいHO遺伝子は、例えば、酵母の接合型を変換し得る遺伝子であって、かつ下記の(1)又は(2)のアミノ酸配列をコードする遺伝子であると表すことができる。
(1)配列番号3に示されるアミノ酸配列、
(2)配列番号3に示されるアミノ酸配列の1個若しくは数個のアミノ酸残基が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列であり、ただし、223位のグリシン及び475位のヒスチジンが保存されているアミノ酸配列。
5.本発明における所望の接合型を持つ酵母を製造する方法について
(5−1)方法の概略
本発明における所望の接合型を持つ酵母を製造する方法の概略を図1に示す。本発明の方法を、図1を参照して説明する。酵母の接合を誘起する遺伝子群(以降、hsgとも表示する)は、a型又はα型の一倍体細胞内で特異的に発現し、a/α型の二倍体細胞内ではかかる遺伝子群の発現が抑制されている。接合を制御する遺伝子として、a型細胞ではa1遺伝子が、α型細胞ではα2遺伝子が発現しているが、これらがコードするタンパク質は、単独ではhsgの発現に対し影響を与えることはほとんどない。一方、a/α型細胞は両遺伝子を発現し、これらがコードするタンパク質はa1‐α2複合体を形成し、かかる複合体の作用によりhsgの発現を抑制する(参考文献2参照)。そこで、図1Aに示すように、a型細胞内でα2遺伝子を、又はα型細胞内でa1遺伝子を強制的に発現させると、一倍体であるにもかかわらずa1‐α2複合体を形成させることができるので、かかる酵母の接合能を抑制することが可能となる。
図1Bに示す従来の接合型変換では、ガラクトースの添加によりHO遺伝子が発現して接合型が変換されるが(参考文献3参照)、この際、所望の接合型を持つ酵母の他に対型酵母が残存するため、かかる酵母との接合により自己倍数化が惹起されて、所望の接合型を持つ酵母が消失していく。一方、図1Cに示す本発明の方法では、生成した対型酵母の接合能をa1‐α2複合体の形成により抑制できるため、自己倍数化の回避が可能となり、所望の接合型を持つ酵母の獲得が容易になる。GFPレポーターの蛍光を指標に酵母細胞を単離すれば、効率的に該酵母を製造することができる。
(5−2)酵母細胞内でa1遺伝子又はα2遺伝子を発現させる方法
本発明の製造方法における、「酵母細胞内でa1遺伝子又はα2遺伝子を発現させる」方法としては、接合型変換の際に生成する対型酵母に、該酵母細胞内でa1遺伝子又はα2遺伝子を発現させ得る方法である限り、特に制限されない。具体的にはPGK1プロモーター(参考文献4参照)、ADH1プロモーター(参考文献4参照)、TDH3プロモーター(参考文献4参照)、STE2プロモーター、STE6プロモーター(先の特許文献1参照)、MFA1プロモーター(参考文献2参照)、又はMFA2プロモーター(参考文献2参照)などを、a1又はα2遺伝子と連結した構築物又はベクターを用いることが好ましく、後記実施例で詳述するように、a1遺伝子を発現させる場合においては、接合型に影響を受けないPGK1プロモーター(配列番号4)を、α2遺伝子を発現させる場合においては、a型特異的な発現特性を有するSTE2プロモーター(配列番号5)を連結した構築物又はベクターを用いることがさらに好ましい。なお、対型酵母にa1遺伝子又はα2遺伝子を発現させ得る限り、上記好適として例示したプロモーター配列において1個若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入又は付加された塩基配列を有する改変型プロモーターを用いることもできる。
したがって、本発明における好ましいプロモーターは、例えば、下記の(1)〜(4)のいずれかから選択される塩基配列を有するものであると表すことができる。
(1)配列番号4に示される塩基配列、
(2)配列番号4に示される塩基配列の1個若しくは数個のアミノ酸残基が欠失、置換、挿入又は付加された塩基配列。
(3)配列番号5に示される塩基配列、
(4)配列番号5に示される塩基配列の1個若しくは数個のアミノ酸残基が欠失、置換、挿入又は付加された塩基配列。
(5−3)酵母細胞内でHO遺伝子を発現させる方法
本発明の製造方法における、「酵母細胞内でHO遺伝子を発現させる」方法としては、任意の酵母に、その酵母細胞内でHO遺伝子を発現させ得る方法である限り、特に制限されない。具体的にはGAL1プロモーター(参考文献4参照)、CUP1プロモーター(参考文献5参照)、PGK1プロモーター、ADH1プロモーター、又はTDH3プロモーターなどをHO遺伝子と連結した構築物又はベクターを用いることが好ましく、ガラクトースの存在により遺伝子の発現が誘導されるGAL1遺伝子のプロモーターを連結した構築物又はベクターを用いることがさらに好ましい。また、かかるGAL1プロモーターとしては、HO遺伝子を発現させる酵母から取得するのが望ましいが、下面発酵酵母、上面発酵酵母、ワイン酵母、清酒酵母、焼酎酵母、ウイスキー酵母などのアルコール飲料醸造用酵母や、パン酵母などの産業上有用な酵母であれば、後記実施例で詳述するように、サッカロミセス・セレビシエに由来するGAL1プロモーター(配列番号6)を用いることができる。
なお、酵母細胞内にHO遺伝子を発現させ得る限り、上記好適として例示したプロモーター配列において1個若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入又は付加された塩基配列を有する改変型プロモーターを用いることもできる。
したがって、本発明における好ましいプロモーターは、例えば、下記の(1)又は(2)のいずれかから選択される塩基配列を有するものであると表すことができる。
(1)配列番号6に示される塩基配列、
(2)配列番号6に示される塩基配列の1個若しくは数個のアミノ酸残基が欠失、置換、挿入又は付加された塩基配列。
(5−4)酵母への導入方法
上記の構築物の酵母への導入方法としては、エレクトロポレーション法、金属処理法、プロトプラスト法等の技術的に適用可能な当業者に公知の全ての方法を用いることができる。上記構築物の酵母への導入は、上記構築物を酵母へ直接導入することであってもよいが、上記構築物をベクターに組み込んで、そのベクターを酵母へ導入することを好適に例示することができ、上記構築物を、酵母で自律複製可能なプラスミドに組み込んで、そのプラスミドを酵母へ導入することをさらに好適に例示することができる。かかるプラスミドを酵母へ導入した場合は、その酵母の染色体DNAにそのプラスミドの痕跡を残さずに、酵母からかかるプラスミドを容易に除去することができ、除去したその酵母は、現行の法規制で規定されるところの組換え体生物等には該当しないと解釈されるので、飲料や食品にも制限無く利用することができる点で好ましい。上記の「酵母で自律複製可能なプラスミド」としては、YCpタイプ、YEpタイプ、YRpタイプのプラスミドを好適に例示することができる。
(5−5)変換された接合型の選抜
前述のように、酵母細胞内にHO遺伝子を発現させることにより、その酵母の接合型が変換し、a型からはα型の、あるいはα型からはa型の接合型を持つ酵母細胞を製造することができる。a/α型の接合型を持つ二倍体酵母にHO遺伝子を発現させた場合は、a/a型あるいはα/α型の遺伝子型を持つ細胞が得られる。a/a型あるいはα/α型の表現型はそれぞれa型とα型と同一であることが知られている。
本発明の製造方法は、接合型の変換を望む酵母の細胞内で接合を制御する遺伝子を発現させる工程、及び該酵母の細胞内で接合型変換遺伝子を発現させる工程を含むことを特徴とするが、これらの工程の後に、所望の接合型を持つ酵母株を選抜する工程をさらに行っても良い。所望の接合型を持つ酵母株は、HO遺伝子を発現させた酵母細胞の集団から、シングルコロニーを単離し、その接合能を確認することによって、容易に選抜することができる。
(5−6)接合能の確認方法
上記の接合能を確認する方法としては、単離した酵母株とa型の株やα型の株との接合を実際に試みることによって、接合能を調べる方法の他に、a型の酵母株に特異的に発現することが知られている遺伝子のプロモーター(以降、「a型特異的プロモーター」と表示する)又はα型の酵母株に特異的に発現することが知られている遺伝子のプロモーター(以降、「α型特異的プロモーター」と表示する)の制御下で、レポーター遺伝子の発現を可能とする構築物(好ましくは、該構築物を組み込んだベクター、より好ましくは、該構築物を組み込んだ、酵母で自律複製可能なプラスミド)を酵母に導入しておき、かかるレポーター遺伝子の発現を調べることによってその酵母がa型であるかα型であるかを確認する方法を好適に例示することができる。
上記の「a型特異的プロモーター」としては、後記実施例で詳述するように、例えばサッカロミセス・セレビシエのSTE2遺伝子プロモーター(配列番号5)を好適に例示することができ、上記の「α型特異的プロモーター」としては、後記実施例で詳述するように、例えばサッカロミセス・セレビシエのSTE3遺伝子プロモーター(配列番号7)を好適に例示することができる。また、上記の「レポーター遺伝子」としては、例えば、蛍光レポーター遺伝子、発色レポーター遺伝子、発光レポーター遺伝子を好適に例示することができる。蛍光レポーター遺伝子としては、例えば、緑色蛍光タンパク質(GFP)、赤色蛍光タンパク質(DsRed)、シアン色蛍光タンパク質(CFP)などが挙げられる。発色レポーター遺伝子としては、例えば、βガラクトシダーゼ(lacZ)などが挙げられる。発光レポーター遺伝子としては、例えば、ルシフェラーゼ(luc)などが挙げられる。
上記の「a型特異的プロモーター又はα型特異的プロモーターの制御下で、レポーター遺伝子の発現を可能とする構築物」と、前述の「酵母細胞内でa1遺伝子又はα2遺伝子の発現を可能とする構築物」は、同一のベクター(好ましくは、酵母で自律複製可能なプラスミド)に組み込まれていてもよい。
(5−7)不要なプラスミドの脱落方法
本発明の製造方法は、「酵母細胞内でHO遺伝子を発現させた後」、「所望の接合型を持つ酵母を選抜した後」、又は、「単離された酵母を他の酵母と接合させた後」に、不要となったプラスミド、すなわち、「酵母の接合型に影響を受けない遺伝子のプロモーターを用いて、HO遺伝子を発現させるための構築物を組み込んだプラスミド」や、「a型特異的プロモーター又はα型特異的プロモーターを用いて、レポーター遺伝子を発現させるための構築物を組み込んだプラスミド」、又は「酵母細胞内でa1遺伝子又はα2遺伝子を発現させるための構築物を組み込んだプラスミド」を脱落させる工程をさらに含んでいることが好ましく、これらの構築物を全て脱落させる工程をさらに含んでいることがより好ましい。かくしてプラスミドを脱落させた株は、その酵母の染色体DNAに外来DNA(前述のプラスミド)の痕跡を全く残さないため、かかる株は、現行の法規制で規定するところの組換え体生物等には該当しないと解釈される。したがって、接合前のかかる酵母は、飲料や食品にも制限無く利用することができる交雑株を得るための交雑育種の母本として好適に用いることができ、接合後のかかる酵母は、飲料や食品にも制限無く利用することができる点で好ましい。
上記のプラスミドを酵母から脱落させる方法としては、特に制限されないが、そのプラスミドを保持させる方向の選択圧をかけない条件でその酵母を培養した後、そのプラスミドに含まれる選択マーカー遺伝子を持たなくなった細胞を選択することにより、プラスミドを脱落した株を容易に得ることができる。
6.本発明の交雑株を製造する方法
本発明の交雑株を製造する方法としては、本発明の製造方法により製造された所望の接合型を持つ酵母(以降、「本発明による酵母」とも表示する)を、少なくとも片方の親株として交雑を行なう工程を含む。かかる酵母の交雑方法としては特に制限されず、両方の親株を混合して培養する等の公知の方法を用いることができる。なお、両方の親株のそれぞれに別個のマーカー遺伝子(好ましくは薬剤耐性遺伝子)を導入しておくと、それらの両方のマーカー遺伝子を併せ持つ株を選別することで、交雑株を容易に単離することが可能となる。上記のマーカー遺伝子としては、例えば、ブラストサイジン耐性遺伝子(BSR遺伝子)や、G418耐性遺伝子(kanMX4遺伝子)、又はヒスチジン合成遺伝子(HIS3遺伝子)やロイシン合成遺伝子(LEU2遺伝子)、ウラシル合成遺伝子(URA3遺伝子)を好適に例示することができる。上記の本発明の交雑株を製造する方法においては、本発明による酵母同士を両親株として交雑してもよいし、本発明による酵母でない方の親株として、元々a型もしくはα型の接合能を有している株を用いても良い。後記実施例では、同一の親株に別個のマーカー遺伝子を導入したのち、創製したa/a型及びα/α型酵母を接合させて四倍体酵母を作成したが、当業者に公知の形態の内、技術的に適用可能ないかなる形態も排除しない。
上記の本発明の交雑株を製造する方法を用いると、従来法では実用的な交雑育種ができなかった、又は困難であった酵母(例えば実用酵母)について、両親株の優良な形質を併有する交雑株(以降、「本発明による交雑株」とも表示する)を著しく効率的に育種することが可能となる。上記の本発明による交雑株として、例えば、醸造用酵母として優良な形質を2つ以上併有する交雑株や、パン酵母として優良な形質を2つ以上併有する交雑株を例示することができる。醸造用酵母として優良な形質としては、高発酵性、硫化水素低生産性、高度凝集性、亜硫酸高生産性、アルコール高耐性を好適に例示することができる。
(参考文献)
参考文献1:Cook JG,et al.,1996,Genes Dev,Vol.10,2831-2848.
参考文献2:Botstein D,et.al.,2004,Genetics,Vol.166,653-660.
参考文献3:Kentaro Furukawa,et.al.,2011,PLoS One,Vol.6,e26584.
参考文献4:Siavash P et al.,2010,Yeast,Vol.27,955-964.
参考文献5:Etcheverry T,1990,Methods Enzymol,Vol.185,319-329.
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明はこれら実施例にその技術的範囲が限定されるものではない。
本発明におけるその他の用語や概念は、当該分野において慣用的に使用される用語の意味に基づくものであり、本発明を実施するために使用する様々な技術は、特にその出典を明示した技術を除いては、公知の文献等に基づいて当業者であれば容易かつ確実に実施可能である。また、各種の分析などは、使用した分析機器又は試薬、キットの取り扱い説明書、カタログなどに記載の方法を準用して行った。
なお、本明細書中に引用した技術文献、特許公報及び特許出願明細書中の記載内容は、本発明の記載内容として参照されるものとする。
(実験方法)
(1)培地の調製
1%(w/v)酵母エキストラクト、2%(w/v)ペプトンおよび2%(w/v)グルコースを含むYPD培地、1%(w/v)酵母エキストラクト、2%(w/v)ペプトンおよび2%(w/v)ガラクトースを含むYPGal培地、0.67%(w/v)アミノ酸不含酵母ニトロゲンベース(Becton Dickinson社製)及び2%(w/v)グルコースを含むSD培地、又は0.67%(w/v)アミノ酸不含酵母ニトロゲンベース及び2%(w/v)ガラクトースを含むSGal培地で酵母を培養した。SD培地及びSGal培地には選択マーカーに対応するアミノ酸および核酸を適宜添加した。2%(w/v)寒天をこれらの培地に添加してYPDおよびSDの固体培地を調製した。
(2)酵母の調製
酵母サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)のメチオニン要求性a型一倍体株BY4741(参考文献6参照)、リジン要求性α型一倍体株BY4742(参考文献6参照)、及び以下の実施例で作製した酵母株、並びに酵母株に導入したプラスミドの情報を表1に示す。a型のMY4741の接合型座位(以下、MAT座位とも表示する)は、1塩基変異により接合型変換酵素HOに認識されないため、接合型を変換することができない。またα型のBY4742のMAT座位は、HOの認識配列を有しており、接合型の変換が可能であるが、その際に鋳型として利用される染色体DNA上のサイレント型のa型遺伝子(以下、HMRa遺伝子とも表示する)は上述の変異を有する。すなわち、BY4742の接合型変換により創製したa型細胞では再び接合型を変換することができなくなる。そこでBY4742のHMRa遺伝子を、遺伝子組換えによりHOの認識配列を含むものと置換した形質転換株HR42−K株を作製し、接合型変換実験に用いた。
(3)蛍光測定
図1B及び図1Cに示すように、緑色蛍光タンパク質をコードするGFP遺伝子(配列番号8)を酵母の接合型を示すためのレポーター遺伝子として用いた。酵母形質転換体を、SD培地を用いて30℃で18時間培養したのち、集菌および洗浄して滅菌水で再懸濁した。菌体濃度OD600=5.0となるように調整した酵母懸濁液100μLの蛍光強度をマイクロプレートリーダーInfinite200(Tecan Japan社製)を用いて測定した。励起フィルタセンター波長を485nm(フィルタ帯域幅20nm)に、蛍光フィルタセンター波長を535nm(フィルタ帯域幅25nm)に設定し、ゲインを50に固定して測定を行った。
(4)増殖アッセイ
酵母の接合能を評価するため、a型およびα型の酵母の栄養要求性の違いを利用して、接合体のみが生育可能となるよう作成した寒天培地を用いて増殖アッセイを実施した。a型及びα型酵母株をそれぞれ初期菌体濃度OD600=0.1で1mLのYPD培地に播種し、30℃にて1.5時間共培養した。菌体を回収して洗浄したのち、滅菌蒸留水に再懸濁した。OD600=1.0、0.1および0.001の酵母懸濁液を調製し、接合体のみが生育することができる寒天培地上に10μLずつスポットして、30℃で2日間培養したのち、コロニー形成の有無を調べた。
(5)定量PCR
定量PCRを用いて以下のように、酵母株の染色体DNAのセット数(以下、「倍数性」とも示す)を測定した。染色体DNA上に1コピーのkanMX4遺伝子(配列番号8)を遺伝子組換えにより導入した一倍体酵母株、HR42−11T及びMCF4741(表1)を後述のように作製した。両株の染色体DNA上には1コピーのkanMX4遺伝子1コピーのPGK1遺伝子(内在遺伝子;配列番号9)が存在する。かかる酵母のうちいずれかを接合の親株として、倍数性を測定したい酵母株と掛け合わせて接合体を作成した。例えば作成した接合体が二倍体であった場合、2セットの染色体DNA上には1コピーのkanMX4遺伝子と2コピーのPGK1遺伝子が存在することになる。すなわち、kanMX4遺伝子のコピー数を基準に相対定量したPGK遺伝子のコピー数が、酵母接合体の倍数性を示すことになる。定量PCRの試薬としてはThunderbird SYBR qPCR Mix(Toyobo社製)を用い、ABI PRISM 7900HT Sequence Detection System(Applied Biosystems社製)を用いて測定を行った。kanMX4遺伝子のコピー数の定量にはプライマー1(配列番号10)及びプライマー2(配列番号11)を用いた。またPGK1遺伝子のコピー数の定量にはプライマー3(配列番号12)及びプライマー4(配列番号13)を用いた。酵母接合体の倍数性から1を減じた値を、対象とする酵母株の倍数性として算出した。
Figure 0006112548
(実施例1)接合型識別のためのレポーターの発現例
(1−1)a型細胞特異的GFP発現プラスミドの構築
a型特異的プロモーターであるSTE2プロモーターをプライマー5(配列番号14)及びプライマー6(配列番号15)を用いて、PCRによりBY4741株の染色体DNAを鋳型として増幅した。続いてGFP遺伝子(配列番号16)をプライマー7(配列番号17)及びプライマー8(配列番号18)を用いて、PCRによりpNHK12(文部科学省NBRP「酵母」より提供された)を鋳型として増幅した。さらにADH1遺伝子のターミネーター(配列番号19)をプライマー9(配列番号20)及びプライマー10(配列番号21)を用いて、PCRによりBY4741株の染色体DNAを鋳型として増幅した。オーバーラップPCRを用いて、STE2プロモーター、GFP遺伝子、ADH1ターミネーターを連結して、プラスミドpYO323(文部科学省NBRP「酵母」より提供された)のSacII−XhoI部位間に挿入し、プラスミドpHY−2GAとした。
(1−2)α型細胞特異的GFP発現プラスミドの構築
α型特異的プロモーターであるSTE3プロモーターをプライマー11(配列番号22)及びプライマー12(配列番号23)を用いて、PCRによりBY4741株の染色体DNAを鋳型として増幅した。続いてGFP遺伝子をプライマー7及びプライマー8を用いて、PCRによりpNHK12を鋳型として増幅した。さらにCYC1遺伝子のターミネーター(配列番号24)をプライマー13(配列番号25)及びプライマー14(配列番号26)を用いて、PCRによりBY4741株の染色体DNAを鋳型として増幅した。オーバーラップPCRを用いて、STE3プロモーター、GFP遺伝子、CYC1ターミネーターを連結して、プラスミドpYO325(文部科学省NBRP「酵母」より提供された)のSacII−XhoI部位間に挿入し、プラスミドpLY−3GCとした。
(1−3)接合型特異的GFP発現プラスミドを有する各接合型の酵母細胞が発する蛍光強度の測定
a型細胞としてBY4741を、α型細胞としてBY4742を、a/α型細胞としてBY4743を選択し、それぞれpHY−2GAあるいはpLY−3GCを酢酸リチウム法(参考文献7参照)により導入した形質転換体を創製した。またそれぞれの接合型の酵母細胞にpYO323あるいはpYO326(文部科学省NBRP「酵母」より提供された)を導入した形質転換体を創製してMOCK細胞とした。各形質転換体の蛍光強度の測定結果を図2に示す(図2中のエラーバーは、3度の独立した実験結果における標準偏差を示す。
この結果、pHY−2GAを導入した場合、a型細胞のみがGFPを発現して蛍光を示した(図2A)。一方で、pLY−3GCを導入した場合、α型細胞のみがGFPを発現して蛍光を示した(図2B)。以上のように、a型特異的プロモーターあるいはα型特異的プロモーターをGFP遺伝子と連結したプラスミドを酵母細胞に導入することで、緑色蛍光を指標に、a型細胞あるいはα型細胞の識別が可能であることが確認された。
(実施例2)接合制御遺伝子の導入による接合抑制例
(2−1)a1構成発現プラスミドの構築
a1遺伝子(配列番号27)をプライマー15(配列番号28)及びプライマー16(配列番号29)を用いて、PCRによりBY4741株の染色体DNAを鋳型として増幅し、プラスミドpHY−2GAのSalI−BamHI部位間に挿入して、プラスミドpH2Y−a1とした。続いて接合型に影響を受けないPGK1プロモーターをプライマー17(配列番号30)及びプライマー18(配列番号31)を用いて、PCRによりBY4741株の染色体DNAを鋳型として増幅し、pH2Y−a1のSacII−NotI部位間に挿入し、プラスミドpHPY−a1とした。さらにPGK1プロモーター−a1−ADH1ターミネーターをプライマー17(配列番号30)及びプライマー19(配列番号32)を用いて、PCRによりpHPY−a1を鋳型として増幅し、pHY−2GA及びpLY−3GCのSacI−SacII部位間に挿入して、それぞれプラスミドpH2G−Pa1、pL3G−Pa1とした。
(2−2)α2構成発現プラスミドの構築
α2遺伝子(配列番号33)をプライマー20(配列番号34)及びプライマー21(配列番号35)を用いて、PCRによりBY4741株の染色体DNAを鋳型として増幅し、プラスミドpLY−3GCのSalI−BamHI部位間に挿入して、プラスミドpL3Y−α2とした。続いて接合型に影響を受けないPGK1プロモーターをプライマー17(配列番号30)及びプライマー18(配列番号31)を用いて、PCRによりBY4741株の染色体DNAを鋳型として増幅し、pL3Y−α2のSacII−NotI部位間に挿入し、プラスミドpLPY−α2とした。さらにPGK1プロモーター−α2−CYC1ターミネーターをプライマー17(配列番号30)及びプライマー22(配列番号36)を用いて、PCRによりpHPY−a1を鋳型として増幅し、pHY−2GA及びpLY−3GCのSacI−SacII部位間に挿入して、それぞれプラスミドpH2G−Pα2、pL3G−Pα2とした。
(2−3)a1あるいはα2構成発現によるa型及びα型酵母のGFPレポーター発現量及び接合能の評価
a型細胞としてBY4741を選択し、酢酸リチウム法によりpH2G−Pa1あるいはpH2G−Pα2を導入した形質転換体を創製した。またα型細胞としてBY4742を選択し、酢酸リチウム法によりpL3G−Pa1あるいはpL3G−Pα2を導入した形質転換体を創製した。各形質転換体の蛍光強度の測定結果を図3Aに示す。図3A中のエラーバーは、3度の独立した実験結果における標準偏差を示す。
a型特異的プロモーター及びα型特異的プロモーターによる遺伝子発現は、a1−α2複合体を有するa/α型細胞内において抑制されることが知られている(参考文献8参照)。a型細胞にα2を発現させた場合、及びα型細胞にa1を発現させた場合は、a1−α2複合体が形成されることにより、疑似的にa/α型細胞内環境が創出されることになる。図3Aに示されるように、BY4741(MATa)にpH2G−Pα2を導入した場合にはα2の強制発現により、図2Aと比較してGFPレポーターの発現量が著しく低下することが確認された。またBY4742(MATα)にpL3G−Pα2を導入した場合にはa1の強制発現により、図2Bと比較してGFPレポーターの発現量が著しく低下することが確認された。以上の結果は両細胞においてa1−α2複合体が想定通りに形成されたことを示唆している。一方、a型細胞にa1を過剰発現させた場合、及びα型細胞にα2を過剰発現させた場合は、それぞれa型特異的プロモーター及びα型特異的プロモーターによる遺伝子発現は抑制されないと予想される。実際に、a1型細胞の場合は、図3Aに示されるように、pH2G−Pa1を導入したBY4741では図2Aと同等の蛍光が観察され、a1過剰発現の影響を受けなかった。しかしながらα2型細胞の場合は、pL3G−Pα2を導入したBY4742では、pH2G−Pa1導入の場合と比較すれば、GFPレポーターの発現量は数倍高いものの、図2Bと比較してみると、α2過剰発現の影響によりGFPレポーターの発現量が著しく低下することが確認された。
上記の形質転換体の接合能を野生型のBY4741及びBY4742と比較して評価した(図3B)。左の写真ではメチオニン及びリジンを含まず、20mg/Lのヒスチジン、30mg/Lのロイシンおよび20mg/Lウラシルを含む二倍体選択用SD固体培地(SD−Met、Lysプレート)を用いた。野生型のa型及びα型酵母株をそれぞれ初期菌体濃度OD600=0.1で1mLのYPD培地に播種し、30℃にて1.5時間共培養した。菌体を回収して洗浄したのち、滅菌蒸留水に再懸濁した。OD600=1.0、0.1および0.001の酵母懸濁液を調製し、寒天培地上に10μLずつスポットして、30℃で2日間培養した。野生型のa型およびα型細胞では通常の接合が生じるため、二倍体のコロニーが形成された。
図3Bの中央の写真では二倍体選別に加え、導入したプラスミドの脱落を抑制するため、メチオニン、リジン及びヒスチジンを含まず、30mg/Lのロイシンおよび20mg/Lウラシルを含むSD固体培地(SD−Met、Lys、Hisプレート)を用いた。上述のように、酵母懸濁液を寒天培地上にスポットして培養した結果、α2を発現させることでa型細胞の接合抑制が可能であることが確認された。一方、右の写真では二倍体選別に加え、導入したプラスミドの脱落を抑制するため、メチオニン、リジン及びロイシンを含まず、20mg/Lのヒスチジンおよび20mg/Lウラシルを含むSD固体培地(SD−Met、Lys、Hisプレート)を用いた。上述のように、酵母懸濁液を寒天培地上にスポットして培養した結果、a1を発現させることでα型細胞の接合抑制が可能であることが確認されたが、α2を過剰発現させることでもα型細胞の接合能が若干低下することが明らかとなった。以上のように、構成的にa1あるいはα2発現する手法は共にα型あるいはa型細胞の接合抑制に有効であることが確認された。一方、α型細胞におけるα2の過剰発現は、接合型識別のためのレポーター発現を阻害してしまうことから、所望の接合型を持つ酵母の単離に労力を要すると予想される。なおα型特異的プロモーター制御下でのレポーター発現量の低下については、a1−α2複合体が結合するDNA配列に対して、α2が単独でも低い親和性を有している(参考文献9参照)ことから、過剰発現したα2がかかる配列に集積してプロモーター活性を低下させたと推察される。そこでレポーター発現の阻害を回避するために、以下の発現様式を試験した。
(2−4)a型細胞特異的α2発現プラスミドの構築
α2遺伝子をプライマー20(配列番号34)及びプライマー21(配列番号35)を用いて、PCRによりpL3Y−α2を鋳型として増幅し、プラスミドpHY−2GAのSalI−BamHI部位間に挿入して、プラスミドpH2Y−α2とした。さらにSTE2プロモーター−α2−ADH1ターミネーターをプライマー5(配列番号14)及びプライマー19(配列番号32)を用いて、PCRによりpH2Y−α2を鋳型として増幅し、pLY−3GCのSacI−SacII部位間に挿入して、プラスミドpL3G−2αとした。
(2−5)a型細胞特異的α2発現によるa型及びα型酵母のGFPレポーター発現量及び接合能の評価
a型細胞としてBY4741を、α型細胞としてBY4742を選択し、酢酸リチウム法によりpL3G−2αを導入した形質転換体を創製した。各形質転換体の細胞内におけるGFP、α2、及び接合を誘導するhsgの発現の概略を図4Aに示す。導入したpL3G−2α上でコードされるGFP遺伝子はα型細胞特異的に、α2遺伝子はa型細胞特異的に発現する。すなわちa型細胞ではGFPは発現せず、α2の発現によりa1−α2複合体が形成されることで、hsgの発現を抑制して接合能を欠失させる。一方、α型細胞ではα2が過剰発現しないためにGFPの発現が阻害されず、またa1−α2複合体を形成しないため接合能が保持されることになる。
各形質転換体の蛍光強度の測定結果を図4Bに示す。図4B中のエラーバーは、3度の独立した実験結果における標準偏差を示す。この結果、α型細胞におけるレポーター発現は阻害されないことが確認された。また各形質転換体の接合能を評価した結果を図4Cに示す。この結果、a型細胞特異的α2発現によってa型細胞の接合を抑制可能であることが確認された。また当発現様式において、α型細胞の接合能は低減されないことが確認された。したがって、図1Cに示すように、a型細胞の接合を抑制するにはa型細胞特異的にα2を発現する方法を、α型細胞の接合を抑制するには構成的にa1を発現する方法を用いることが効果的である。
(実施例3)接合型変換遺伝子の導入による酵母の接合型変換例(α型→a型)
(3−1)HO発現プラスミドの構築
ガラクトースの存在下で誘導が可能なGAL1プロモーターをプライマー23(配列番号37)及びプライマー24(配列番号38)を用いて、PCRによりBY4741株の染色体DNAを鋳型として増幅し、pHY−2GAのSacII−NotI部位間に挿入し、プラスミドpHY−GGAとした。次にGAL1プロモーター−GFP−ADH1ターミネーターをプライマー23及びプライマー19を用いて、PCRによりpHY−GGAを鋳型として増幅し、pYO326のSacII−XhoI部位間に挿入して、それぞれプラスミドpUY−GGAとした。続いてHO遺伝子(配列番号39)をプライマー25(配列番号40)及びプライマー26(配列番号41)を用いて、PCRによりBYP5166(文部科学省NBRP「酵母」より提供された)を鋳型として増幅し、pUY−GGAのNotI−SalI部位間に挿入して、プラスミドpUYG−HO−gとした。さらにADH1ターミネーターをプライマー27(配列番号42)及びプライマー28(配列番号43)を用いて、PCRによりpHY−GGAを鋳型として増幅し、pUYG−HO−gのSalI−KpnI部位間に挿入し、プラスミドpUYG−HOとした。
(3−2)HO認識配列を含むHMRaを有するHR42−K株の創製
(3−2−1)HMRa置換のためのプラスミドの構築
本発明の上記各実施例でa型細胞として用いてきたBY4741株は、HO認識配列に変異を有しており、HO認識能を失っていたため、本実施例では、まず、HO認識配列を含む領域の変異を取り除き、本来のHO認識能を回復させる。
HMRaはX(配列番号44)、Ya(配列番号45)、Z1(配列番号46)領域から構成され、HOの認識部位はZ1領域に存在する。配列番号47に示すHMRa上流配列(以降、「HMR5’」とも表示する)、及び配列番号48に示すHMRa下流配列(以降、「HMR3’」とも表示する)を相同領域として用いて、染色体DNAの相同組換えを行うために以下のプラスミドを作製した。
アンピシリン耐性遺伝子及び大腸菌の複製起点配列を含む配列番号49に示すDNAを、PCRによりpNHK12を鋳型として、それぞれプライマー29(配列番号50)及びプライマー30(配列番号51)、プライマー31(配列番号52)及びプライマー32(配列番号53)、プライマー33(配列番号54)及びプライマー34(配列番号55)、プライマー35(配列番号56)及びプライマー36(配列番号57)、プライマー37(配列番号58)及びプライマー38(配列番号59)を用いて、5つの断片に分割して増幅した。続いてloxP(配列番号60)とkanMX4遺伝子から成るloxP−kanMX4−loxPをプライマー39(配列番号61)及びプライマー40(配列番号62)を用いて、PCRによりpUC57−LKL(Genescript社製)を鋳型として増幅した。上述の5つのDNA断片とloxP−kanMX4−loxPをIn-Fusion HD Cloning Kit(タカラバイオ社製)を用いて連結し、プラスミドpUG-LKLとした。
さらにloxP−kanMX4−loxPをプライマー41(配列番号63)及びプライマー42(配列番号64)を用いて、PCRによりpUG-LKLを鋳型として増幅し、pUG006のPvuII−SpeI部位間に挿入して、プラスミドpK6とした。次にHMR5’−X−Yaをプライマー43(配列番号65)及びプライマー44(配列番号66)を用いて、PCRによりBY4742株の染色体DNAを鋳型として増幅した。続いてZ1をプライマー45(配列番号67)及びプライマー46(配列番号68)を用いて、PCRによりBY4742株の染色体DNAを鋳型として増幅した。オーバーラップPCRを用いて、HMR5’−X−Ya、及びZ1を連結して、プラスミドpK6のBamHI−SpeI部位間に挿入し、プラスミドpK−R5’とした。さらにHMR3’をプライマー47(配列番号69)及びプライマー48(配列番号70)を用いて、PCRによりBY4742株の染色体DNAを鋳型として増幅し、プラスミドpK−R5’のSpeI−SacII部位間に挿入し、HO認識能が回復したHMRaを含むプラスミドpK−R11Tとした。
Creリコンビナーゼ遺伝子(配列番号71)をプライマー49(配列番号72)及びプライマー50(配列番号73)を用いて、PCRによりpUC57-Cre(Genescript社製)を鋳型として増幅し、In-Fusion HD Cloning Kit(タカラバイオ社製)を用いて、プラスミドpUY−GGAをNotI及びBamHIで消化したDNA断片と連結してプラスミドpUYG−Creとした。
(3−2−2)HR42−K株の創製
図5Aに示すBY4742株からHR42−K株の創製は以下の手順で行った。pK−R11TをSpeIで消化して作成したDNA断片を用いて、BY4742株を酢酸リチウム法により形質転換した。形質転換体は、0.2mg/mLのジェネティシン(G418)を含むYPD培地で選択し、HR42−11T株(表1)を得た。HR42−11Tの染色体DNA内のloxP−kanMX4−loxPからkanMX4を脱落させるために、酢酸リチウム法を用いてCreリコンビナーゼ遺伝子を含むプラスミドpUYG−CreをHR42−11T株に導入した形質転換体を創製した。SGal培地で形質転換体を一晩培養して、Creリコンビナーゼを発現させることでkanMX4を脱落させた後、選択圧のないYPD培地でさらに一晩培養してプラスミドpUYG−Creを脱落させ、HR42−K株(表1)を得た。プライマー51(配列番号74)及びプライマー52(配列番号75)を用いて、HR42−K株の染色体DNAを鋳型としてHMRaをPCRにより増幅した。PCR産物の配列を3130ジェネティックアナライザ(Applied Biosystems社製)により、プライマー53(配列番号76)を用いて解読し、図5Aに示すようにZ1領域がHOに認識される配列へと置換されていることを確認した。
以下、HO認識能が回復したHR42−K株を、「a型酵母」創製のための親株として用いる。
(3−3)HR42−K株の接合型変換
次いで、HR42−K株にHO遺伝子を作用させて接合型変換を行った。HR42−Kの接合型変換(図5A)は以下の手順で行った。酢酸リチウム法を用いてpH2G−Pa1及びpUYG−HOをHR42−Kに導入した形質転換体を創製した。形質転換体を初期菌体濃度OD600=0.3でSGal培地に播種し、18時間培養した後に培養液の希釈液を20mg/Lのリジン、20mg/Lのウラシルおよび30mg/Lのロイシンを含むSD固体培地(SD−Hisプレート)に塗布して、30℃で2日間培養することでコロニーを形成させた。
各コロニーをSD−His培地で一晩培養した後、蛍光強度の測定を行った結果を図5Bに示す。表1に示すようにpH2G−Pa1にコードされるGFP遺伝子はa型細胞で特異的に発現される。図5Bに示すように、α型のHR42−Kに上述の接合型変換操作を施すことで、緑色蛍光を発するa型細胞が出現した。このうち最も蛍光強度の高いコロニーを選択して、YPD培地で一晩培養したのち、酵母を回収し、洗浄後、蒸留水に再懸濁した。YPD固体培地上に希釈した酵母懸濁液を塗布して、30℃で2日間培養することにより形成したコロニーの中から、プラスミドpH2G−Pa1及びpUYG−HOが脱落したものを選択してHR41−K株(表1)とした。具体的には、ヒスチジンを含まない培地及びウラシルを含まない培地のどちらにおいても生育できないものを、両プラスミドが脱落したコロニーであると判別した。
創製したHR41−K株の接合能を評価した結果を図5Cに示す。比較対象として、既存のa型酵母BY4741株を利用した。酢酸リチウム法により、a型のBY4741又はHR41−K株にプラスミドpYO323を導入した形質転換体を創製した。また同様にして、α型のHR42−11T株にプラスミドpYO325を導入した形質転換体を創製した。a型の形質転換体と、α型の形質転換体とをそれぞれ混合培養したのち、ヒスチジン及びロイシンを含まず、20mg/Lのウラシル、20mg/Lのリジンを含む二倍体選択用SD固体培地(SD−His、Leuプレート)に塗布して30℃で2日間培養した。この結果、既知創製したHR41−K株が、既知a型のBY4741株と同様に、α型酵母と接合して二倍体酵母を形成することが確認され、HR41−K株が確かにa型の接合能を獲得したことが示された。
定量PCRにより、HR43−kan株の倍数性を測定した結果を図5Dに示す。一倍体のHR42−11T株の染色体DNA上には1コピーのkanMX4遺伝子(遺伝子組換えにより導入)と1コピーのPGK1遺伝子(内在遺伝子;配列番号53)が存在する。また二倍体酵母BY43−kan株の2セットの染色体DNA上には1コピーのkanMX4遺伝子(HR42−11T株由来)と2コピーのPGK1遺伝子が存在する。すなわち、HR42−11T株を創製したa型酵母と接合させた酵母接合体の染色体DNAにおいて、kanMX4遺伝子のコピー数を1として相対定量したPGK遺伝子のコピー数が、対象酵母の倍数性を示すことになる。図5Dより、HR43−kan株におけるPGK遺伝子のコピー数が2であると推定されることから、HR43−kan株は二倍体であると判別できる。したがって創製したHR41−K株が一倍体であることが示され、接合型変換の際の自己倍数化を回避していることが確認された。
(実施例4)接合型変換遺伝子の導入による酵母の接合型変換例(a型→α型)
(4−1)HR41−K株の接合型変換
図6に示すa型のHR41−K株の接合型変換は以下の手順で行った。酢酸リチウム法を用いてpL3G−2α及びpUYG−HOをHR41−Kに導入した形質転換体を創製した。形質転換体を初期菌体濃度OD600=0.3でSGal培地に播種し、18時間培養した後に培養液の希釈液を20mg/Lのヒスチジン、20mg/Lのウラシルおよび30mg/Lのロイシンを含むSD固体培地(SD−Leuプレート)に塗布して、30℃で2日間培養することでコロニーを形成させた。
各コロニーをSD−Leu培地で一晩培養した後、蛍光強度の測定を行った結果を図6Aに示す。表1に示すようにpL3G−2αにコードされるGFP遺伝子はα型細胞で特異的に発現される。図6Aに示すように、a型のHR41−Kに上述の接合型変換操作を施すことで、緑色蛍光を発するα型細胞が出現した。このうち最も蛍光強度の高いコロニーを選択して、YPD培地で一晩培養したのち、酵母を回収し、洗浄後、蒸留水に再懸濁した。YPD固体培地上に希釈した酵母懸濁液を塗布して、30℃で2日間培養することにより形成したコロニーの中から、プラスミドpL3G−2α及びpUYG−HOが脱落したものを選択してHR42−K’株とした。HR42−K’株は図5Aおよび図6Aが示すように、HR42−K株(表1)に2度の接合型変換を施して作製された株であるため、自己倍数化を回避できた場合は、HR42−K株と一致することになる。以下の手順により、HR42−K’株がHR42−K株と同一のものであることを確認した。
(4−2)kanMX4配列を染色体DNA上に有するMCF4741株の創製
(4−2−1)kanMX4導入のためのプラスミドの構築
配列番号77に示すFIG1上流配列(以降、「FIG5’」とも表示する)、及び配列番号78に示すFIG1下流配列(以降、「FIG3’」とも表示する)を相同領域として用いて、染色体DNAのFIG1(配列番号79)座位にkanMX4を導入するために、以下のプラスミドを作製した。FIG3’をプライマー54(配列番号80)及びプライマー55(配列番号81)を用いて、PCRによりBY4741株の染色体DNAを鋳型として増幅し、pUG-LKLのSpeI−SacII部位間に挿入して、プラスミドpUG−F1tとした。次にFIG5’−FIG1をプライマー56(配列番号82)及びプライマー57(配列番号83)を用いて、PCRによりBY4741株の染色体DNAを鋳型として増幅し、PvuII及びBamHIで消化した。続いてGFP遺伝子をプライマー58(配列番号84)及びプライマー59(配列番号85)を用いて、PCRによりpNHK12を鋳型として増幅し、BamHI及びSalIで消化した。FIG5’−FIG1及びGFP遺伝子をpUG−F1tのPvuII−SalI部位間に挿入して、プラスミドpUG−pF1tとした。
(4−2−2)MCF4741株の創製
pUG−pF1tをPvuIIおよびSacIIで消化して、FIG5’−FIG1−GFP−loxP−kanMX4−loxP−FIG3’から成るDNA断片を作製し、BY4741株を酢酸リチウム法により形質転換した。形質転換体は、0.2mg/mLのジェネティシン(G418)を含むYPD培地で選択し、MCF4741株(表1)を得た。
(4−3)HR42−K’株の接合能及び倍数性の評価
創製したHR42−K’株の接合能を評価した結果を図6Bに示す。比較対象として、既存のα型酵母HR42−K株を利用した。a型のMCF4741株と、創製したHR42−K’株又は既知α型酵母を混合培養したのち、メチオニン及びリジンを含まず、20mg/Lのウラシル、20mg/Lのヒスチジン、及び30mg/Lのロイシンを含む二倍体選択用SD固体培地(SD−Met、Lysプレート)に塗布して30℃で2日間培養した。この結果、二倍体酵母MCF43−kan株(表1)、及びMCF43−kan’(MCF4741/HR42−K’)株が共に形成されることが確認され、HR42−K’株がα型の接合能を有することが示された。
定量PCRにより、MCF43−kan’株の倍数性を測定した結果を図6Cに示す。一倍体のMCF4741株の染色体DNA上には1コピーのkanMX4遺伝子(遺伝子組換えにより導入)と1コピーのPGK1遺伝子(内在遺伝子)が存在する。また二倍体酵母MCF43−kan株の2セットの染色体DNA上には1コピーのkanMX4遺伝子(MCF4741株由来)と2コピーのPGK1遺伝子が存在する。すなわち、MCF4741株を創製したα型酵母と接合させた酵母接合体の染色体DNAにおいて、kanMX4遺伝子のコピー数を1として相対定量したPGK遺伝子のコピー数が、対象酵母の倍数性を示すことになる。図6Cより、MCF43−kan’株におけるPGK遺伝子のコピー数が2であると推定されることから、MCF43−kan’株は二倍体であると判別できる。したがって創製したHR42−K’株が一倍体であることが示され、HR42−K株と同一の株がa型からα型への接合型変換により得られることが確認された。すなわちa型からα型への接合型変換においても自己倍数化を回避していることが確認された。
(実施例5)二倍体酵母の接合型変換例(a/α型→a/a型、及びa/α型→α/α型)
(5−1)HR43−K株の創製
酢酸リチウム法により、a型のHR41−K株にプラスミドpYO325を導入した形質転換体を創製した。また同様にして、α型のHR42−K株にプラスミドpYO326を導入した形質転換体を創製した。a型の形質転換体と、α型の形質転換体とをそれぞれ混合培養したのち、ロイシン及びウラシルを含まず、20mg/Lのヒスチジン、20mg/Lのリジンを含む二倍体選択用SD固体培地(SD−Ura、Leuプレート)に塗布して30℃で2日間培養した。この結果、創製した二倍体酵母をYPD培地で一晩培養したのち、酵母を回収し、洗浄後、蒸留水に再懸濁した。YPD固体培地上に希釈した酵母懸濁液を塗布して、30℃で2日間培養することにより形成したコロニーの中から、プラスミドpYO325及びpYO326が脱落したものを選択してHR43−K株とした。具体的には、ロイシンを含まない培地及びウラシルを含まない培地のどちらにおいても生育できないものを、両プラスミドが脱落したコロニーであると判別した。
(5−2)HR43−K株の接合型変換(a/α型→a/a型)
酢酸リチウム法を用いて、HR43−K株にプラスミドpUYG−HO及びプラスミドpH2G−Pa1を導入した形質転換体を創製した。形質転換体を初期菌体濃度OD600=0.3でSGal培地に播種し、18時間培養した後に培養液の希釈液を20mg/Lのリジン、20mg/Lのウラシルおよび30mg/Lのロイシンを含むSD固体培地(SD−Hisプレート)に塗布して、30℃で2日間培養することでコロニーを形成させた。
各コロニーをSD−His培地で一晩培養した後、蛍光強度の測定を行った。このうち最も蛍光強度の高いコロニーを選択して、YPD培地で一晩培養したのち、酵母を回収し、洗浄後、蒸留水に再懸濁した。YPD固体培地上に希釈した酵母懸濁液を塗布して、30℃で2日間培養することにより形成したコロニーの中から、プラスミドpH2G−Pa1及びpUYG−HOが脱落したものを選択してHR43K−A株とした。具体的には、ヒスチジンを含まない培地及びウラシルを含まない培地のどちらにおいても生育できないものを、両プラスミドが脱落したコロニーであると判別した。
酢酸リチウム法を用いて、HR43−K株、及びHR43K−A株にプラスミドpHY−2GAを導入した形質転換体を創製した。形質転換体をSD−His培地で一晩培養した後、蛍光強度の測定を行った結果を図7Aに示す。表1に示すようにpHY−2GAにコードされるGFP遺伝子はa型細胞で特異的に発現される。図7Aに示すように、a/α型のHR43−Kに上述の接合型変換操作を施すことで、緑色蛍光を発するa/a型細胞が創製されたことを確認した。
(5−3)HR43−K株の接合型変換(a/α型→α/α型)
酢酸リチウム法を用いて、HR43−K株にプラスミドpUYG−HO及びプラスミドpL3G−2αを導入した形質転換体を創製した。形質転換体を初期菌体濃度OD600=0.3でSGal培地に播種し、18時間培養した後に培養液の希釈液を20mg/Lのリジン、20mg/Lのウラシルおよび20mg/Lのヒスチジンを含むSD固体培地(SD−Leuプレート)に塗布して、30℃で2日間培養することでコロニーを形成させた。
各コロニーをSD−Leu培地で一晩培養した後、蛍光強度の測定を行った。このうち最も蛍光強度の高いコロニーを選択して、YPD培地で一晩培養したのち、酵母を回収し、洗浄後、蒸留水に再懸濁した。YPD固体培地上に希釈した酵母懸濁液を塗布して、30℃で2日間培養することにより形成したコロニーの中から、プラスミドpL3G−2α及びpUYG−HOが脱落したものを選択してHR43K−AL株とした。具体的には、ロイシンを含まない培地及びウラシルを含まない培地のどちらにおいても生育できないものを、両プラスミドが脱落したコロニーであると判別した。
酢酸リチウム法を用いて、HR43−K株、及びHR43K−AL株にプラスミドpLY−3GCを導入した形質転換体を創製した。形質転換体をSD−Leu培地で一晩培養した後、蛍光強度の測定を行った結果を図7Bに示す。表1に示すようにpLY−3GCにコードされるGFP遺伝子はα型細胞で特異的に発現される。図7Aに示すように、a/α型のHR43−Kに上述の接合型変換操作を施すことで、緑色蛍光を発するα/α型細胞が創製されたことを確認した。
(5−4)接合効率の評価
本技術により創製した酵母株の接合効率を図7Cに示すように評価した。自己倍数化を抑制する工程を含まない従来技術では、接合型変換により生成したa/a型又はα/α型酵母を単離することは困難であるため、先の特許文献1に記されるように、同一の培養液内で接合型変換と接合を行って接合体を形成させる。一方、本技術では創製及び単離したa/a型及びα/α型酵母を混合培養して接合体を形成させる。
従来技術の接合効率を以下のように測定した。酢酸リチウム法を用いて、HR43−K株にプラスミドpHY−2GA及びプラスミドpUYG−HOを導入した形質転換体を創製した。同様にして、HR43−K株にプラスミドpLY−3GC及びプラスミドpUYG−HOを導入した形質転換体を創製した。両形質転換体をYPGal培地で混合培養したのち、ヒスチジン及びロイシンを含まず、20mg/Lのウラシル、20mg/Lのリジンを含む二倍体選択用SD固体培地(SD−His、Leuプレート)に酵母懸濁液を塗布して30℃で2日間培養した。形成したコロニー数を計測し、菌体濃度OD600=1.0の酵母懸濁液1mL中に生成した接合体数を定量した結果を図7Cに示す。
本技術の接合効率を以下のように測定した。上述のHR43K−A株にプラスミドpHY−2GAを導入した形質転換体と、HR43K−AL株にプラスミドpLY−3GCを導入した形質転換体とを、YPD培地で混合培養したのち、ヒスチジン及びロイシンを含まず、20mg/Lのウラシル、20mg/Lのリジンを含む二倍体選択用SD固体培地(SD−His、Leuプレート)に酵母懸濁液を塗布して30℃で2日間培養した。形成したコロニー数を計測し、菌体濃度OD600=1.0の酵母懸濁液1mL中に生成した接合体数を定量した結果を図7Cに示す。この結果、本技術を用いることで、従来技術に比べて約10,000倍の効率で接合体を生成可能であることを確認した。
(参考文献)
参考文献6:Brachmann CB,et.al.,1998,Yeast.Vol14: 115-132.
参考文献7:Gietz D,et.al.,1992,Nucleic Acids Res.Vol20: 1425.
参考文献8:Gelfand B et.al.,2011,Mol Biol Cell.Vol31: 1701-1709.
参考文献9:Li T et.al.,1998,Nucleic Acids Res.Vol26: 5707-5718.
本発明は、従来法では実用的な交雑育種ができなかった又は困難であった酵母の交雑育種の効率性を著しく高めることを可能とするものであり、飲料・食品等の製品の製造などの産業上有用な用途に用い得る酵母(実用酵母)の交雑育種の分野において非常に有効に利用することができる。
[配列表フリーテキスト]
配列番号1:a1タンパク質(Saccharomyces cerevisiae)
配列番号2:α2タンパク質(Saccharomyces cerevisiae)
配列番号3:HOタンパク質(Saccharomyces cerevisiae)
配列番号4:PGK1プロモーター
配列番号5:STE2プロモーター
配列番号6:GAL1プロモーター
配列番号7:STE3プロモーター
配列番号8:kanMX4マーカー遺伝子
配列番号9:PGK1遺伝子(内在性遺伝子)
配列番号10:プライマー1(F)KanMX4遺伝子コピー数定量
配列番号11:プライマー2(R)KanMX4遺伝子コピー数定量
配列番号12:プライマー3(F)PGK1遺伝子コピー数定量
配列番号13:プライマー4(R)PGK1遺伝子コピー数定量
配列番号14:プライマー5(F)STE2プロモーター増幅
配列番号15:プライマー6(R)STE2プロモーター増幅
配列番号16:GFP遺伝子
配列番号17:プライマー7(F)GFP遺伝子増幅
配列番号18:プライマー8(R)GFP遺伝子増幅
配列番号19:ADH1ターミネーター
配列番号20:プライマー9(F)ADH1ターミネーター増幅
配列番号21:プライマー10(R)ADH1ターミネーター増幅
配列番号22:プライマー11(F)STE3プロモーター増幅
配列番号23:プライマー12(R)STE3プロモーター増幅
配列番号24:CYC1ターミネーター
配列番号25:プライマー13(F)CYC1ターミネーター増幅
配列番号26:プライマー14(R)CYC1ターミネーター増幅
配列番号27:a1遺伝子(Saccharomyces cerevisiae)
配列番号28:プライマー15(F)a1遺伝子増幅
配列番号29:プライマー16(R)a1遺伝子増幅
配列番号30:プライマー17(F)PGK1プロモーター増幅
配列番号31:プライマー18(R)PGK1プロモーター増幅
配列番号32:プライマー19(R)PGK1−a1−ADH1ターミネーター増幅
配列番号33:α2遺伝子
配列番号34:プライマー20(F)α2遺伝子の増幅
配列番号35:プライマー21(R)α2遺伝子の増幅
配列番号36:プライマー22(R)PGK1−α2−CYC1ターミネーター増幅
配列番号37:プライマー23(F)GAL1プロモーター増幅
配列番号38:プライマー24(R)GAL1プロモーター増幅
配列番号39:HO遺伝子
配列番号40:プライマー25(F)HO遺伝子増幅
配列番号41:プライマー26(R)HO遺伝子増幅
配列番号42:プライマー27(F)ADH1ターミネーター増幅
配列番号43:プライマー28(R)ADH1ターミネーター増幅
配列番号44:X領域(HMRa)
配列番号45:Ya領域(HMRa)
配列番号46:Z1領域(HMRa)
配列番号47:HMR5’(HMRa上流配列)
配列番号48:HMR3’(HMRa下流配列)
配列番号49:アンピシリン耐性遺伝子及び複製起点からなるDNA配列
配列番号50:プライマー29(F)配列49の第一断片増幅
配列番号51:プライマー30(R)配列49の第一断片増幅
配列番号52:プライマー31(F)配列49の第二断片増幅
配列番号53:プライマー32(R)配列49の第二断片増幅
配列番号54:プライマー33(F)配列49の第三断片増幅
配列番号55:プライマー34(R)配列49の第三断片増幅
配列番号56:プライマー35(F)配列49の第四断片増幅
配列番号57:プライマー36(R)配列49の第四断片増幅
配列番号58:プライマー37(F)配列49の第五断片増幅
配列番号59:プライマー38(R)配列49の第五断片増幅
配列番号60:loxP遺伝子
配列番号61:プライマー39(F)loxP−kanMX4−loxP増幅配列番号62:プライマー40(R)loxP−kanMX4−loxP増幅
配列番号63:プライマー41(F)loxP−kanMX4−loxP増幅
配列番号64:プライマー42(R)loxP−kanMX4−loxP増幅
配列番号65:プライマー43(F)HMR5’−X−Ya増幅
配列番号66:プライマー44(R)HMR5’−X−Ya増幅
配列番号67:プライマー45(F)Z1増幅
配列番号68:プライマー46(R)Z1増幅
配列番号69:プライマー47(F)HMR3’増幅
配列番号70:プライマー48(R)HMR3’増幅
配列番号71:Creリコンビナーゼ遺伝子
配列番号72:プライマー49(F)Cre増幅
配列番号73:プライマー50(R)Cre増幅
配列番号74:プライマー51(F)HMRa増幅
配列番号75:プライマー52(R)HMRa増幅
配列番号76:プライマー53(F)Z1領域(HMRa)のシーケンシング
配列番号77:FIG5’(FIG1上流配列)
配列番号78:FIG3’(FIG1下流配列)
配列番号79:FIG1遺伝子
配列番号80:プライマー54(F)FIG3’増幅
配列番号81:プライマー55(R)FIG3’増幅
配列番号82:プライマー56(F)FIG5’−FIG1増幅
配列番号83:プライマー57(R)FIG5’−FIG1増幅
配列番号84:プライマー58(F)GFP増幅
配列番号85:プライマー59(R)GFP増幅

Claims (12)

  1. 任意の接合型を有する酵母から、所望の接合型を有する酵母を製造する方法であって、
    (1)前記酵母の接合型を変換する工程、
    (2)前記酵母の自己倍数化を抑制する工程、
    を含み、
    前記接合型を変換する工程が、プロモーターの下流に接合変換遺伝子を連結した構築物又はベクターを利用して、該遺伝子を前記酵母の細胞内で発現させる方法により構成され、前記接合型変換遺伝子が、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)属酵母由来のHO遺伝子であり、
    前記自己倍数化を抑制する工程が、プロモーターの下流に接合を制御する遺伝子を連結した構築物又はベクターを利用して、該遺伝子を前記酵母の細胞内で発現させる方法により構成され、前記接合を制御する遺伝子が、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)属酵母由来のa1遺伝子又はα2遺伝子である、
    方法。
  2. 前記酵母が、醸造用酵母又はパン酵母である、請求項1に記載の方法。
  3. 前記接合を制御する遺伝子に対して用いるプロモーターが、PGK1プロモーターである、請求項又はに記載の方法。
  4. 前記所望の接合型がα型であるとき、前記接合を制御する遺伝子に対して用いるプロモーターがa型特異的に発現する遺伝子のプロモーターである、請求項又はに記載の方法。
  5. 前記a型特異的に発現する遺伝子のプロモーターが、STE2プロモーターである、請求項に記載の方法。
  6. 前記接合変換遺伝子に対して用いるプロモーターが、酵母の接合型に依存した発現特性を示さないプロモーターである、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
  7. 前記プロモーターが、GAL1プロモーターである、請求項に記載の方法。
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載した方法により製造したa型又はα型の接合型を有する酵母であって、プロモーターの下流に接合を制御する遺伝子を連結した構築物又はベクター、並びに、プロモーターの下流に接合変換遺伝子を連結した構築物又はベクターの両方を含む酵母、もしくは、酵母の接合型を変換する工程の後、プロモーターの下流に接合変換遺伝子を連結した構築物又はベクターが取り除かれたことにより、プロモーターの下流に接合を制御する遺伝子を連結した構築物又はベクターのみを含む酵母を、少なくとも片方の親株として、酵母の交雑株を製造する方法。
  9. さらに交雑株から、前記少なくとも片方の親株として用いた請求項1〜7のいずれかに記載した方法により製造したa型又はα型の接合型を有する酵母に由来する、プロモーターの下流に接合を制御する遺伝子を連結した構築物又はベクター、並びに、プロモーターの下流に接合変換遺伝子を連結した構築物又はベクターの両方、もしくは、プロモーターの下流に接合を制御する遺伝子を連結した構築物又はベクターを取り除くことを特徴とする、請求項8に記載の酵母の交雑株を製造する方法。
  10. 請求項1〜7のいずれかに記載した方法により製造したa型又はα型の接合型を有する酵母から、プロモーターの下流に接合を制御する遺伝子を連結した構築物又はベクター、並びに、プロモーターの下流に接合変換遺伝子を連結した構築物又はベクターの両方を除去し、得られたa型又はα型の接合型を有する酵母を少なくとも片方の親株として、酵母の交雑株を製造する方法。
  11. 請求項1〜7のいずれかに記載した方法により製造された、プロモーターの下流に接合を制御する遺伝子を連結した構築物又はベクター、並びに、プロモーターの下流に接合変換遺伝子を連結した構築物又はベクターの両方、もしくは、酵母の接合型を変換する工程の後、プロモーターの下流に接合変換遺伝子を連結した構築物又はベクターが取り除かれたことにより、プロモーターの下流に接合を制御する遺伝子を連結した構築物又はベクターのみを含む、酵母。
  12. 請求項8に記載した方法により製造された、請求項1〜7のいずれかに記載した方法により製造されたa型又はα型の接合型を有する酵母に由来する、プロモーターの下流に接合を制御する遺伝子を連結した構築物又はベクター、並びに、プロモーターの下流に接合変換遺伝子を連結した構築物又はベクターの両方、もしくは、前記酵母の接合型を変換する工程の後、プロモーターの下流に接合変換遺伝子を連結した構築物又はベクターが取り除かれたことにより、プロモーターの下流に接合を制御する遺伝子を連結した構築物又はベクターのみを含む、酵母交雑株。
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WO2019068152A1 (pt) * 2017-10-04 2019-04-11 Universidade Estadual De Campinas - Unicamp Vetor para expressar proteínas fluorescentes em células haploides, cassetes de expressão e método de obtenção de haploides de saccharomyces cerevisiae em larga escala

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