JP5201622B2 - 酵母のリンゴ酸生産性を向上させる方法 - Google Patents

酵母のリンゴ酸生産性を向上させる方法 Download PDF

Info

Publication number
JP5201622B2
JP5201622B2 JP2007320389A JP2007320389A JP5201622B2 JP 5201622 B2 JP5201622 B2 JP 5201622B2 JP 2007320389 A JP2007320389 A JP 2007320389A JP 2007320389 A JP2007320389 A JP 2007320389A JP 5201622 B2 JP5201622 B2 JP 5201622B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
fis1
yeast
gene
malic acid
strain
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2007320389A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2009142161A (ja
Inventor
浩志 北垣
仁 下飯
重明 三上
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
National Research Institute of Brewing
Original Assignee
National Research Institute of Brewing
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by National Research Institute of Brewing filed Critical National Research Institute of Brewing
Priority to JP2007320389A priority Critical patent/JP5201622B2/ja
Publication of JP2009142161A publication Critical patent/JP2009142161A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5201622B2 publication Critical patent/JP5201622B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Preparation Of Compounds By Using Micro-Organisms (AREA)
  • Micro-Organisms Or Cultivation Processes Thereof (AREA)
  • Alcoholic Beverages (AREA)

Description

本発明は、酵母のリンゴ酸生産性を向上させる方法、該方法によりリンゴ酸生産性が向上された醸造酵母、及び該酵母を用いて発酵を行なうことを含む、リンゴ酸の含有量が高い酒類の製造方法に関する。
清酒の味わいは、発酵過程において酵母により産生される有機酸の組成に左右される。有機酸のうち、リンゴ酸はさわやかな酸味を与え、コハク酸はごく味(コク)を与えることが知られている。ごく味を与えるコハク酸は、濃厚な味わいの清酒においては好ましい旨味成分ともなり得るが、くどさ、しつこさ、苦味のもとにもなるため、軽い口当たりですっきりとした味わいの清酒を製造したい場合には、コハク酸を減少させることが望まれる。
リンゴ酸を高生産する酵母の開発はいくつか報告があるが、非特許文献1ないし3に記載の方法はリンゴ酸と同時にコハク酸も増やしてしまう。非特許文献4に記載の方法は、リンゴ酸を増大させ且つコハク酸を減少させるという目的を達成しているが、該方法はランダム胞子分離と交雑を組み合わせた育種方法であり、また交雑の過程において変異処理を行なっているため増殖速度も緩慢であることから、極めて多くの工程と時間を必要とする。しかも、製造される清酒の総酸度が大きく増加してしまい、消費者の嗜好によっては好まれない可能性もある。特許文献1には、コハク酸デヒドロゲナーゼ遺伝子を破壊することにより、リンゴ酸の生産性が向上し、かつ、コハク酸の生産性が低下した酵母を得ることができる旨が記載されている。しかしながら、特許文献1の方法は、ミトコンドリア分裂に機能するミトコンドリア外膜タンパク質Fis1をコードするFis1遺伝子を破壊する方法ではない。
非特許文献5により、清酒醸造において酵母ミトコンドリアは醸造過程の最後まで存在することが明らかとなった。このことから、酵母ミトコンドリアによる物質代謝は、酒類醸造過程において物質代謝上一定の役割を占めている可能性が考えられる。しかしながら、従来までに、ミトコンドリアに着目して酵母のリンゴ酸生産性を高める手段は一切報告されていない。
特開平11−225737号公報 醗酵工学、70,6,473-477 (1992) 醸造協会誌、97,3,228-233 (2002) JBB, 92, 5, 429-433 (2001) 醸造協会誌、90,10,751-758 (1995) Kitagaki and Shimoi, J. Biosci. Bioeng, 104, 227-230 (2007)
従って、本発明の目的は、酵母のコハク酸生産性を高めることなくリンゴ酸生産性を向上させることができる手段を提供することにある。
本願発明者らは、鋭意研究の結果、ミトコンドリア分裂に機能するミトコンドリア外膜蛋白質Fis1をコードする遺伝子を破壊した酵母では、Fis1非破壊酵母よりもリンゴ酸の生産性が高まることを見出し、本願発明を完成した。
すなわち、本発明は、ミトコンドリア外膜タンパク質Fis1をコードするFis1遺伝子が破壊された醸造酵母を用いてアルコール発酵を行うことを含む、リンゴ酸の含有量が高い酒類の製造方法を提供する。

本発明により、酵母のリンゴ酸生産性を向上させることができる新規な方法が提供された。本発明によれば、コハク酸の生産性を高めることなく、リンゴ酸の生産性を高めることができる。特に、本発明のリンゴ酸生産性向上方法によれば、清酒に刺激味を与える酢酸の生産性を低下させることもできる。消費者の多様な嗜好に対応するためには、清酒中の有機酸組成を多様に変化させることができる様々な手法の開発が必要となる。本発明の方法でリンゴ酸生産性を高めた酵母は、公知の手法で得られる酵母とは異なり、酢酸の生産性も低下させることができる等の特徴を有する。従って、本発明は、醸造分野での実用上非常に有意義である。
本発明の方法は、酵母のゲノム上に存在するミトコンドリア外膜タンパク質Fis1をコードするFis1遺伝子を破壊することにより行なわれる。Fis1(mitochondrial fission protein)とは、ミトコンドリア外膜に存在するタンパク質であり、ミトコンドリアの分裂に関与することが知られている。酵母のFis1の遺伝子配列及びアミノ酸配列をそれぞれ配列表の配列番号1及び2に示す。該遺伝子は、サッカロミセスゲノムデータベース(http://www.yeastgenome.org/)にYIL065Cとして登録されており、酵母ゲノム第9番染色体の241772〜241305の座位に存在する遺伝子である(座標はサッカロミセスゲノムデータベースの基準による)。なお、酵母のFis1の塩基配列及びアミノ酸配列は、実験室酵母でも醸造酵母でも100%一致している。
「Fis1遺伝子を破壊する」とは、酵母ゲノム上のFis1遺伝子のコード領域を欠失又は変異させることをいう。Fis1遺伝子の欠失は、コード領域の全体を欠失させてもよく、また一部を欠失させてもよい。全体を欠失させる場合には、Fis1遺伝子に隣接する領域も合わせて広く欠失させてもよい。一部を欠失させる場合には、特に限定されないが、Fis1遺伝子のコード領域の半分以上を欠失させることが好ましい。コード領域の変異によりFis1遺伝子を破壊する場合には、該コード領域の好ましくは中央よりも上流の部位にナンセンス変異又はフレームシフト変異を導入して、それよりも下流の領域によりコードされるアミノ酸配列を欠失させ又は全く無関係なアミノ酸配列とすることが好ましい。あるいは、Fis1遺伝子中に無関係な配列(Fis1とは無関係な他の遺伝子配列やマーカー遺伝子等)を挿入することによりFis1遺伝子を変異させ破壊することもできる。
Fis1遺伝子を破壊する方法としては、例えば、正常なFis1遺伝子を含まない相同DNA断片を酵母細胞中に導入し、該相同DNA断片と、酵母ゲノムDNA間で相同組換えを行わせる方法が挙げられる。ここで、「相同DNA断片」とは、相同組換えによりゲノム中の標的領域と組み換えられ得るDNA断片のことを言う。相同組換え法自体は周知の常法であり、当業者であれば配列番号3に記載される塩基配列をもとにして、所望の相同DNA断片を容易に調製することができる。配列番号3は、酵母ゲノム上のFis1遺伝子及びその近傍領域の塩基配列であり、1001nt〜1468ntがFis1コード領域である。例えば、正常なFis1をコードしない変異Fis1配列の上流及び下流に、ゲノム上のFis1遺伝子の上流領域と相同な領域及び下流領域と相同な領域をそれぞれ連結して相同DNA断片を構築し、これを用いて相同組換えを行えば、ゲノム上のFis1遺伝子配列を変異Fis1配列と入れ替えることができるので、酵母ゲノム上のFis1遺伝子を破壊することができる。この場合、上記した相同な領域は、例えば配列番号3の1nt〜1000ntの領域及び1469nt〜2468ntの領域を参照して容易に調製可能である。上記各相同領域の鎖長は特に限定されず、一般に鎖長が長い方が相同組換えの効率が高まるが、出芽酵母では相同組換え活性が強いため、50bp程度の相同領域を設ければ十分である。なお、配列番号3の領域のさらに上流及び下流の領域のゲノム塩基配列は、上記したサッカロミセスゲノムデータベースより容易に取得することができる。
Fis1遺伝子を破壊する他の方法としては、例えばAritomiらのBiosci. Biotechnol. Biochem., 68(1), 206-214, 2004に記載されるようなセルフクローニング法を利用することができる。該方法は、遺伝子導入用の薬剤耐性マーカーとカウンターセレクション用の生育抑制マーカーとを含むプラスミドベクターを利用して、ゲノム中の正常遺伝子を変異遺伝子に置き換える方法である。該方法によれば、遺伝子導入のためだけに必要な外来DNA配列を変異遺伝子の導入後に除去できるため、食品産業で用いられる醸造酵母の育成に好ましい。該方法を利用してFis1遺伝子を破壊する方法は、具体的には以下のようにして行なうことができる。
用いる上記2種類のマーカーは特に限定されず、例えば、薬剤耐性マーカーとしてはYAP1等、生育抑制マーカーとしてはGIN11等の公知のマーカーを用いることができる。これら2種類のマーカーを含むプラスミドベクター中に変異Fis1遺伝子(例えば、第18塩基のTをAに変異させることによりストップコドンを導入した変異遺伝子)を挿入し、該Fis1遺伝子中の適当な制限酵素部位(例えばHphIサイト)で切断してリニア化したものを酵母細胞中に導入すれば、相同組換えにより該リニア化プラスミドがゲノム中のFis1遺伝子座に組み込まれる。その結果、ゲノム中にはプラスミド配列を介して正常Fis1遺伝子と変異Fis1遺伝子が縦列して存在するようになる。薬剤耐性マーカーにより、リニア化プラスミドがゲノム中に組み込まれた酵母を容易に選択することができる。
その後、ゲノム中で縦列して存在する正常Fis1遺伝子と変異Fis1遺伝子との間で相同組換えが生じると、生育抑制マーカーを含むプラスミド配列が脱落する。そのため、生育抑制マーカーを発現させる条件下で(例えば、生育抑制マーカーがガラクトース誘導性過剰発現プロモーターの制御下にある場合には、ガラクトース培地上で)選択を行なえば、プラスミド配列が残存する酵母は生育抑制マーカーの作用により生育することができず、一方、相同組換えによりプラスミド配列が脱落した酵母は生育することができるので、プラスミド配列が脱落し正常Fis1遺伝子又は変異Fis1遺伝子のみがゲノム中に残存する酵母を得ることができる。ゲノム中に残存したFis1遺伝子が所期の変異を有するか否かは、例えば変異を含む領域をPCR増幅してシークエンス解析を行なうことにより容易に調べることができる。また、Fis1遺伝子が破壊されると、ミトコンドリアの形態がネット状に変化するので、かかる形態変化を指標としてFis1遺伝子の破壊を確認することができる。ミトコンドリアはマイナスイオンが蓄積しているので、プラスイオンを有する染色試薬(例えばローダミン123等)で好ましく染色することができる。ミトコンドリアを染色した酵母を蛍光顕微鏡下で観察することで、ミトコンドリアの形態を観察することができる。
また、Fis1遺伝子破壊株は、変異処理を行なった酵母の中から選択して得ることもできる。すなわち、本発明の方法においては、変異処理によりFis1遺伝子を破壊してもよい。変異処理の方法は特に限定されず、紫外線照射、放射線照射等の物理的変異処理、及びエチルメタンスルフォン酸等の変異剤で処理する化学的変異処理のいずれであってもよい。変異処理により得られた変異株の中から、上述したミトコンドリアの形態変化を指標として、Fis1遺伝子破壊株を選択することができる。
実用される醸造酵母は通常二倍体である。従って、本発明の方法によりリンゴ酸生産性が向上された酵母を酒類製造に用いる場合には、特に限定されないが、二倍体でFis1アリルが共に破壊されたFis1遺伝子破壊株を用いることが好ましい。二倍体の遺伝子破壊株は、周知の常法により得ることができる。具体例を挙げると、例えば、接合型の異なる一倍体(a型及びα型)でFis1遺伝子破壊株を作製し、両者を接合させて二倍体のFis1遺伝子破壊株を得ることができる。また、二倍体でFis1アリルの一方が破壊された酵母を作製し、次いで、該酵母に対し再度Fis1破壊処理を行なうことによっても、二倍体のFis1遺伝子破壊株を得ることができる。上記した相同DNA断片を用いる方法によりFis1遺伝子を破壊する場合には、例えば、1回目の遺伝子破壊処理と2回目の遺伝子破壊処理とで異なる薬剤耐性マーカーを用いればよい。上記したセルフクローニング法を用いる場合であれば、Fis1アリルの一方が破壊された二倍体酵母は、ゲノム中にマーカー遺伝子を有さないため、2回目でも1回目と同一の遺伝子破壊用プラスミドベクターを用いることができる。なお、取得の頻度は落ちるが、二倍体の酵母に対して上記した遺伝子破壊方法を実施した場合には、Fis1アリルが同時に破壊された株も生じ得るので、選択培地上での生育速度の違い(同時に破壊された株では生育が早い)や、Fis1遺伝子領域の塩基配列に基づいて、Fis1アリルが同時に破壊された株を選択することもできる。
なお、二倍体の酵母から一倍体を得る方法は、この分野で周知の常法により行なうことができる。例えば、下記実施例に具体的に記載される通り、酵母を特開平5−317035号公報等に記載されるような公知の胞子形成用培地中にて培養することにより胞子形成させて胞子を得て、該胞子を発芽させて一倍体を得ることができる。
下記実施例に具体的に示される通り、Fis1遺伝子が破壊された酵母は、正常なFis1遺伝子を有する酵母野生株と比較して、リンゴ酸の生産性が有意に高い。そのうえ、非特許文献1ないし3に記載される公知のリンゴ酸高生産性酵母とは異なり、本発明の方法によればコハク酸の産生量を増大させることはなく、むしろコハク酸は減少傾向にある。また、本発明の方法によれば、酢酸の産生量も減少させることができる。特許文献1に記載の酵母では、清酒を醸造したときに酢酸の生産が増加している一方、本発明の方法では、酢酸の生産は低下している。
本発明のリンゴ酸生産性の向上方法は、アルコール発酵を行なういかなる酵母にも適用でき、特に限定されないが、清酒酵母、ワイン酵母、ビール酵母、焼酎酵母等の醸造酵母が好ましい。また、本発明の方法の対象となる酵母は、野生株、変異株及び形質転換株のいずれに由来するものであってもよい。酵母のFis1破壊株としては、ミトコンドリアの分裂機構を調べる目的で作出された実験室酵母のFis1破壊株が知られている(J Cell Biol. 2000 Oct 16;151(2):367-80、Genes Dev. 2004 Nov 15;18(22):2785-97)。しかしながら、Fis1破壊酵母において産生される有機酸組成が変動すること、特にリンゴ酸の生産性が向上することは知られておらず、また、Fis1が破壊された醸造酵母も知られていない。本発明は、Fis1遺伝子の破壊によりリンゴ酸の生産性が向上された醸造酵母をも新規に提供するものである。好ましくは、本発明の醸造酵母は、コハク酸及び/又は酢酸の生産性がFis1非破壊の親株よりも低下した醸造酵母である。
本発明の方法によりリンゴ酸生産性が向上された醸造酵母は、アルコール発酵により製造される種々の酒類の製造に用いることができる。そのような酒類としては、清酒、ワイン、ビール、焼酎等が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の醸造酵母を用いて製造される酒類は、リンゴ酸の含有量が高く、好ましくは、コハク酸及び/又は酢酸の含有量が低い。ここで、「含有量が高い(低い)」という語は、本発明の醸造酵母を用いて製造される酒類の所定の有機酸含有量が、Fis1非破壊の親株を用いて製造される酒類と比較して高い(低い)ことを意味するものとする。
以下、本発明を実施例に基づきより具体的に説明する。
1.酵母Fis1遺伝子破壊株の作製
(1) K7株一倍体の選抜
ランダム胞子分離法により、実用醸造酵母株きょうかい7号(K7株)二倍体から、二倍体と同等の醸造能力を示す一倍体を選抜した。具体的方法は以下のとおりである。
K7株(二倍体)から特開平5−317035号公報に記述された方法により胞子を形成させて熱処理し、一倍体を約100株取得した。これらの一倍体について、総米83gのスケールで清酒の仕込みを行ない、炭酸ガス減量、エタノール濃度及び香気成分等を指標として醸造能力を評価した。これにより、醸造能力が二倍体と同等である株が選抜された(868株)。該868株を用いて以下の実験を行なった。
(2) 868株を親株としたFis1破壊株の作製
抗生物質nourseothricin(商品名cloNAT)耐性遺伝子を用いた公知の薬剤耐性遺伝子カセットnatMX4(Yeast, 15(14):1541-1553 (1999))を用いて、Fis1遺伝子破壊カセットを調製し、これを用いて868株のFis1遺伝子を破壊した。
natMX4を含む公知のプラスミドpAG25(Yeast, 15(14):1541-1553 (1999))を鋳型とし、プライマーFis1natfw(配列番号4)及びfis1natrv(配列番号5)を用いてPCRを行ない(94℃−60秒、46℃−60秒、68℃−120秒を40サイクル、KOD+ポリメラーゼ及び添付のバッファー(Toyobo社)を使用)、Fis1遺伝子破壊カセットを調製した。該カセットは、natMX4の上流側にFis1遺伝子ORFの5'側隣接領域(50bp)を、下流側にFis1遺伝子ORFの3'側隣接領域(50bp)を連結させた構造を有するものであり、これを用いて相同組換えを行うことにより、酵母ゲノム中のFis1遺伝子ORFをnatMX4に置き換えることができる。
上記の通りに調製したFis1遺伝子破壊カセットを常法により868株細胞内に導入し、相同組換えを行わせることにより、Fis1遺伝子をnatMX4に置き換えて破壊した。常法により、100μg/mlのnourseothricin培地上で選抜を行ない、複数の独立したFis1遺伝子破壊株を得た。取得した破壊株については、Fis1遺伝子ORF内に設計したプライマーセットを用いたPCRによる増幅の有無、及びミトコンドリアの形態観察により、Fis1遺伝子が欠失していることを確認した。ミトコンドリアの形態は、50nMローダミン123(Invitrogen社)を用いてミトコンドリアを染色後、蛍光顕微鏡下で観察して、ネット状の形態になっていることを確認した。
2.Fis1遺伝子破壊株を用いた小仕込み試験
60gのアルファ化米、23gの乾燥麹、200mlの水、45μLの乳酸に、2×109個のFis1遺伝子破壊酵母を添加して、15℃で15日間発酵させることにより、清酒を製造した。比較として、Fis1非破壊の親株868株を同様に用いて清酒を製造した。清酒中の各種有機酸含有量を調べた結果を図1に示す。試験は、3つの独立したFis1遺伝子破壊株を用いて行ない、有機酸の含有量は3回の実験の平均値として示した(図1)。
図1に示される通り、Fis1破壊株を用いて製造された清酒(fis1)では、親株を用いて製造された清酒(WT)と比較して、リンゴ酸が多く、コハク酸や酢酸は少ないことが分かった。
リンゴ酸はさわやかな酸味を与えるが一方コハク酸は苦味やゴク味を与え、酢酸は刺激味を与えることから、リンゴ酸は増やすことが好ましく、コハク酸や酢酸は減少させることが好ましいと考えられている。これらのことからfis1破壊株は好ましい醸造特性を持つと考えられる。
Fis1遺伝子破壊株を用いて製造された清酒における有機酸組成を示す。WT: 868株非形質転換体、fis1: Fis1遺伝子破壊株

Claims (3)

  1. ミトコンドリア外膜タンパク質Fis1をコードするFis1遺伝子が破壊された醸造酵母を用いてアルコール発酵を行うことを含む、リンゴ酸の含有量が高い酒類の製造方法。
  2. 前記酒類はコハク酸及び/又は酢酸の含有量が低い酒類である請求項1記載の方法。
  3. 前記Fis1遺伝子は配列表の配列番号1に示される塩基配列から成る請求項1又は2記載の方法。
JP2007320389A 2007-12-12 2007-12-12 酵母のリンゴ酸生産性を向上させる方法 Expired - Fee Related JP5201622B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2007320389A JP5201622B2 (ja) 2007-12-12 2007-12-12 酵母のリンゴ酸生産性を向上させる方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2007320389A JP5201622B2 (ja) 2007-12-12 2007-12-12 酵母のリンゴ酸生産性を向上させる方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2009142161A JP2009142161A (ja) 2009-07-02
JP5201622B2 true JP5201622B2 (ja) 2013-06-05

Family

ID=40913536

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2007320389A Expired - Fee Related JP5201622B2 (ja) 2007-12-12 2007-12-12 酵母のリンゴ酸生産性を向上させる方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5201622B2 (ja)

Family Cites Families (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2007082431A (ja) * 2005-09-20 2007-04-05 Gekkeikan Sake Co Ltd 酵母サッカロマイセス・セレビジエのゲノムワイドなdnaマーカー

Also Published As

Publication number Publication date
JP2009142161A (ja) 2009-07-02

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Gibson et al. New yeasts—new brews: modern approaches to brewing yeast design and development
Meijnen et al. Polygenic analysis and targeted improvement of the complex trait of high acetic acid tolerance in the yeast Saccharomyces cerevisiae
Smukowski Heil et al. Loss of heterozygosity drives adaptation in hybrid yeast
Marullo et al. Breeding strategies for combining fermentative qualities and reducing off-flavor production in a wine yeast model
Cebollero et al. Transgenic wine yeast technology comes of age: is it time for transgenic wine?
US20240200103A1 (en) Synthetic yeast cells and methods of making and using the same
EP3224364B1 (en) Causative genes conferring acetic acid tolerance in yeast
Den Abt et al. Genomic saturation mutagenesis and polygenic analysis identify novel yeast genes affecting ethyl acetate production, a non-selectable polygenic trait
Luo et al. Functional improvement of Saccharomyces cerevisiae to reduce volatile acidity in wine
JP2011223951A (ja) 亜硫酸高排出ビール酵母の造成
EP3149165B1 (en) Causative genes conferring acetic acid tolerance in yeast
JP2022502086A (ja) サッカロミセス・ユーバヤヌス(Saccharomyces eubayanus)のマルトトリオース代謝突然変異体
JP5813977B2 (ja) Kluyveromyces属の変異体酵母及びこれを用いたエタノールの製造方法
US20100190223A1 (en) Yeast for transformation, transformation method, and method for producing substance
JP2013169191A (ja) 1,2−ジヒドロキシ−5−メチルスルフィニルペンタン−3−オン生成能が低下した酵母の作出方法
JP6864308B2 (ja) 酢酸イソアミル高生産性、酢酸生産性低生産性かつイソアミルアルコール高生産性の醸造酵母の作出方法
WO2010106813A1 (ja) 酵母に接合能を付与する方法
JP5201622B2 (ja) 酵母のリンゴ酸生産性を向上させる方法
Vigentini et al. Genetic improvement of wine yeasts
Gyurchev et al. Beyond Saccharomyces pastorianus for modern lager brews: Exploring non-cerevisiae Saccharomyces hybrids with heterotic maltotriose consumption and novel aroma profile
Varela et al. Molecular approaches improving our understanding of Brettanomyces physiology
NL2018649B1 (en) Methods for producing novel yeast hybrids
Kim et al. A knockout strain of CPR1 induced during fermentation of Saccharomyces cerevisiae KNU5377 is susceptible to various types of stress
JP7101362B2 (ja) 1,2-ジヒドロキシ-5-(メチルスルフィニル)ペンタン-3-オンの生成能が低い酵母の作出方法
JP5585952B2 (ja) エタノールの製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20101104

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20120904

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20121015

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20130108

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20130206

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20160222

Year of fee payment: 3

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees