JP6111073B2 - カーテンエアバッグ - Google Patents

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本発明は、車両に装備され、車両の衝突事故時、瞬時に膨出して乗員を保護するカーテンエアバッグに関し、詳細には展開特性に優れたカーテンエアバッグに関する。
近年、車両が衝突したときの衝撃から乗員を保護する乗員保護用の安全装置として、エアバッグ装置が普及している。エアバッグ装置は、衝突時に、乗員と内装構造物との間の空間に瞬時に膨出し、乗員が直接、インパネやサイドドア、ハンドルなどに衝突する際の衝撃を吸収する機能をもつものである。そのため、エアバッグ装置としては、車両の衝突などの衝撃を受けたときの急激な減速を検知するセンサ、センサからの信号を受けて膨出用の高圧ガスを発生するインフレータ、インフレータからの膨出用の高圧ガスにより、膨出展開して乗員の衝撃を緩和するエアバッグ袋体、および、エアバッグシステムが正常に機能しているか否かを判断する診断回路を、通常備えている。
前記エアバッグとして、近年では、側面衝突に対応するサイドエアバッグやカーテンエアバッグの装着が増加しているおり、とくに車両の横転に対応するカーテンエアバッグが注目されている。このカーテンエアバッグは、通常、センターピラー上部のルーフサイド内部に折りたたまれて収納されており、車内の窓側に沿って展開する。しかし、この展開時、センターピラーおよびそのピラーガーニッシュとエアバッグとが干渉し、スムーズに展開することができないという問題があった。
そこで、特許文献1には、センターピラーの車内側に突出部を設け、これによってエアバッグを車内側に誘導して速やかに展開させる方法が記載されている。また、特許文献2および3には、エアバッグ自体の構成を工夫することで、スムーズに展開させる方法が開示されている。具体的には、エアバッグ本体の外部に前記本体とは別の膨張部を設け、この膨張部がエアバッグ本体を車内側に押し出すことにより、センターピラーとの干渉をなくし、スムーズに展開させようとするものである。
しかし、エアバッグ本体の外部に別の膨張部を設けるには、それがエアバッグ本体と一体であるか別体であるかにかかわらず、縫製する必要がある(一体の場合には本体との区分のため、別体の場合には本体との結合のために)。ここで、カーテンエアバッグは、乗員の頭部への衝撃を吸収するために、車両が横転している数秒間という長時間にわたっての内圧保持が求められており、エアバッグの気密性を高めるために、縫製部はシール材によりシールされているのが通常である。しかし、前記した縫製がある場合、その縫製部にどうしてもシワが生じるため凹凸部ができてしまい、均一にシールすることが困難となり、その結果、気密性を保持できないという問題がある。
特開2012−35683号公報 特表2010−513118号公報 特開2012−71719号公報
本発明は、上記課題を解決するものであり、気密性を保持したまま、センターピラーと干渉することなくスムーズに展開することのできるカーテンエアバッグを提供することを目的とする。
すなわち本発明は、ガス流入口付近にインナーチューブを有するカーテンエアバッグであって、該インナーチューブがセンターピラーを横切るように配置され、かつ、該インナーチューブの窓側の一部に別布からなる変則膨張部が設けられ、ガス流入時に該変則膨張部が膨張することにより、該インナーチューブが車内側よりも窓側へより大きく膨張する形状であるカーテンエアバッグに関する。

また、前記インナーチューブのガス流入初期の膨張の幅が、カーテンエアバッグ本体膨張時の幅よりも大きいことが好ましい。
本発明によれば、気密性を保持したまま、センターピラーと干渉することなくスムーズに展開することのできるカーテンエアバッグを提供することができる。
本発明のカーテンエアバッグ1の一例を示した概略平面図である。 本発明で使用するインナーチューブ2の一例を示した概略平面図(a)およびそのA−A線における概略断面図(b)である。 本発明のカーテンエアバッグ1のガス流入初期(a)およびカーテンエアバッグ展開後(b)のB−B線における概略断面図である。 従来のカーテンエアバッグ8の一例を示した概略平面図である。 従来のカーテンエアバッグ8に使用されるインナーチューブ5の一例を示した概略平面図(a)およびそのD−D線における概略断面図(b)である。 従来のカーテンエアバッグ8のガス流入初期(a)および展開後(b)のC−C線における概略断面図である。
本発明は、ガス流入口付近にインナーチューブを有するカーテンエアバッグであって、該インナーチューブがセンターピラーを横切るように配置され、かつ、ガス流入時に窓側へより大きく膨張する形状であるカーテンエアバッグであることを特徴とする。
本発明の実施形態の一例であるカーテンエアバッグ1の概略平面図を図1に示す。インフレータからのガスが流入するガス流入口6付近のエアバッグ内部には、エアバッグを熱から保護し、かつ、ガスの流れを規制するためのインナーチューブ2が配置されている。従来、このインナーチューブは、図5に示すように、1枚の裁断布7を折りたたみ、上部を縫合したチューブに似た形状を有している。前記従来のインナーチューブ5の両端は開放しており、ガス流入口6から流入したガスは、ここからエアバッグ本体内部へと流れ込み、エアバッグを展開させる。本発明においては、インナーチューブ2をセンターピラーを横切るように配置し、ガス流入初期にこのインナーチューブ2を窓側へより大きく膨張する形状とすることにより、エアバッグ本体を車内側へと誘導し、センターピラーあるいはそのピラーガーニッシュと干渉することなくスムーズに展開させるものである。本発明で使用するインナーチューブ2の一例を図2に示す。
図2(b)に示すように、本発明で使用するインナーチューブ2は、窓側の一部に変則膨張部3を有している。ここでは、この変則膨張部3は、インナーチューブ2を形成する裁断布7aに別の裁断布7bを結合して形成されている。なお、裁断布7aには、変則膨張部3内にガスが流入するよう、裁断布7bと重なる部分に内部排気孔4が形成されている。ガス流入口6からインナーチューブ2内に流入したガスは、インナーチューブの開放した両端からエアバッグ本体内部に流れ込むと同時に、前記内部排気孔4から変則膨張部3へと流れ込み、変則膨張部3を膨張させる。変則膨張部3の膨張は、エアバッグ本体の膨張よりも早く完了するため、変則膨張部3により、膨張途中のエアバッグ本体は車内側に押し出されることになる。そのため、エアバッグ本体はセンターピラーあるいはピラーガーニッシュと干渉することなく、膨張を完了することができるのである。
また、図3に示すように、この変則膨張部3の膨張により、裁断布7cにより構成されインナーチューブ2を覆うエアバッグ本体の一部分も厚み方向の幅L1(図示せず)が一時的に大きくなる(L2)。エアバッグ本体が膨張するにつれ、変則膨張部3の膨張は小さくなり、幅はL3となる。換言すれば、ガス流入初期の変則膨張部3の膨張による幅L2は、エアバッグ本体膨張完了時における幅L3よりも大きいことが、センターピラー等との干渉を小さくする点で好ましい。参考のため、図6には従来のインナーチューブの展開時の断面図を示している。符号7は、エアバッグ本体を構成する裁断布を示す。
また、前記インナーチューブ2の形状はこれに限定されるものではなく、ガス流入初期にインナーチューブを窓側へより大きく膨張することのできる形状であればよい。
本発明では、インナーチューブの構造に変更を加えたものであるため、エアバッグ本体の製造等に与える影響は小さく、カーテンエアバッグに通常施されるシール材塗布も問題なく行うことが可能である。
本発明のカーテンエアバッグの裁断布に使用される基布には、インフレータの性能やバッグ容量、使用部位などによって、ゴムや樹脂などを積層塗布して不通気性加工を施したものを使用してもよい。
前記基布としては繊維布帛が用いられる。ここで繊維布帛とは、繊維糸条を用いて製織される織物、繊維糸条を用いて製編される編物および不織布を意味する。
繊維布帛を構成する繊維は、天然繊維、化学繊維、無機繊維など、とくに限定するものではない。たとえば、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46、ナイロン610、ナイロン612などの単独またはこれらの共重合、混合により得られる脂肪族ポリアミド繊維、ナイロン6T、ナイロン6I、ナイロン9Tに代表される脂肪族アミンと芳香族カルボン酸の共重合ポリアミド繊維、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどの単独またはこれらの共重合、混合によって得られるポリエステル繊維、超高分子量ポリオレフィン系繊維、ビニリデン、ポリ塩化ビニルなどの含塩素系繊維、ポリテトラフルオロエチレンを含む含フッ素系繊維、ポリアセタール系繊維、ポリサルフォン系繊維、ポリフェニレンサルファイド系繊維(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン系繊維(PEEK)、全芳香族ポリアミド系繊維、全芳香族ポリエステル系繊維、ポリイミド系繊維、ポリエーテルイミド系繊維、ポリパラフェニレンベンズビスオキサゾール系繊維(PBO)、ビニロン系繊維、アクリル系繊維、セルロース系繊維、炭化珪素系繊維、アルミナ系繊維、ガラス系繊維、カーボン系繊維、スチール系繊維などから適宜、1種または2種以上を選定すればよい。なかでも、汎用性があり、基布の製造工程、基布物性などの点から、合成繊維フィラメントが好ましい。とくには、物理特性、耐久性、耐熱性などの点からナイロン66繊維が好ましい。また、リサイクルの観点からは、ポリエステル系繊維、ナイロン6繊維も好ましい。
これら繊維には、紡糸性や、加工性、耐久性などを改善するために通常使用されている各種の添加剤、たとえば、耐熱安定剤、酸化防止剤、耐光安定剤、老化防止剤、潤滑剤、平滑剤、顔料、撥水剤、撥油剤、酸化チタンなどの隠蔽剤、光沢付与剤、難燃剤、可塑剤などの1種または2種以上を使用してもよい。また、カラミ織を製織する上で望ましい場合には、加撚、嵩高加工、捲縮加工、捲回加工、糊付け加工などの加工を施してもよい。さらに、糸条の形態は、長繊維フィラメント以外に、短繊維の紡績糸、これらの複合糸などを用いてもよい。
たとえば、前記繊維布帛が織物の場合は、平織、斜子織(バスケット織)、格子織(リップストップ織)、綾織、畝織、絡み織、模紗織、あるいはこれらの複合組織などいずれでもよい。必要に応じて、経糸、緯糸の二軸以外に、斜め60度を含む多軸設計としてもよく、その場合の糸の配列は、経糸または緯糸と同じ配列に準じればよい。なかでも構造の緻密さ、物理特性や性能の均等性が確保できる点で、平織が好ましい。
織物の製造は、通常の工業用織物を製織するのに用いられる各種織機から適宜選定すればよく、たとえば、シャトル織機、ウォータージェット織機、エアージェット織機、レピア織機、プロジェクタイル織機などから選定すればよい。
前記繊維布帛が編物の場合は、シングルトリコット編、シングルコード編、シングルアトラス編などのたて編や、平編、ゴム編、パール編などのよこ編、などの編組織を単独またはそれらを組み合わせた二重組織などからなるものがあげられる。また、前記繊維布帛が不織布の場合は、ケミカルボンド、サーマルボンド、ニードルパンチ、スパンレース、ステッチボンド、スパンボンド、メルトブロー、湿式などにより製造されるものがあげられる。
前記基布を構成する糸の単糸太さは、同じでも異なってもいずれでもよく、たとえば、0.5〜8dtexの範囲であることが好ましい。また、単糸の強度も、5.4cN/dtex以上であることが好ましく、8cN/dtex以上であることがより好ましい。また、これら繊維の単糸の断面形状も、円形、楕円、扁平、多角形、中空、その他の異型など、布帛の製造、得られた布帛の物性に支障のない範囲で適宜選定すればよい。また、太さや断面形状などが異なる複数の糸を、合糸、撚り合わせなどにより一体化したものを用いてもよい。
前記繊維の総繊度は、150〜1000dtexであることが好ましく、235〜700dtexであることがより好ましい。150dtex未満ではエアバッグに求められる強度が得られにくい傾向にあり、1000dtexより大きくなると、重量が大きくなりすぎると同時に、基布の厚みが増大しバッグの収納性が悪くなるおそれがある。
前記基布は、目付が190g/m2以下、引張強力が600N/cm以上であることが好ましい。目付と引張強力がこの範囲であれば、軽くて物理特性に優れているといえる。なお、ここでいう目付は、後述する不通気処理剤を塗布する前の未加工の状態の基布重量をいう。
前記基布が織物である場合のカバーファクターは、1500〜2500であることが好ましい。カバーファクターが1500より小さいと、織物の開口部が大きくなるためバッグの気密性を得ることが困難となり、またカバーファクターが2500より大きいと、織物の厚みが増大し、バッグの収納性が悪くなるおそれがある。ここで、カバーファクターとは基布のタテ糸総繊度をD1(dtex)、タテ糸密度をN1(本/2.54cm)とし、ヨコ糸総繊度をD2(dtex)、ヨコ糸密度をN2(本/2.54cm)とすると(D×0.9)1/2×N+(D×0.9)1/2×Nで表される。
また、前記基布は精練および熱処理を施されたものであってもよい。
前記したように、基布は、耐熱性の向上および通気度の低下を目的として、樹脂層を有していてもよい。また、その目的から、前記樹脂層は、少なくとも基布の片面全面に付着しているが、基布表面、基布を構成する糸束の間隙部、または、繊維単糸の間隙部など、いずれに介在していてもよい。耐熱性、および、基布に外力が加わっても被膜の損傷が抑えられるという理由により、樹脂層を有する面同士を接合して、被覆面が内側になるようにエアバッグを作製することが好ましい。
前記樹脂としては、たとえば、クロロプレンゴム、ハイバロンゴム、フッ素ゴムなどの含ハロゲンゴム、シリコーンゴム、エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレン三元共重合ゴム、ニトリルブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、イソブチレンイソプレンゴム、ウレタンゴムおよびアクリルゴムなどのゴム類、および、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂およびフッ素樹脂などの含ハロゲン樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、エステル樹脂、アミド樹脂、オレフィン樹脂およびシリコーン樹脂などの樹脂類があげられ、これらは単独または併用して使用される。なかでも、可撓性、耐熱性および耐候性に優れる点で、シリコーンゴムおよびシリコーン樹脂が好ましい。
被覆方法としては、1)コーティング法(ナイフ、キス、リバース、コンマ、スロットダイおよびリップなど)、2)浸漬法、3)印捺法(スクリーン、ロール、ロータリーおよびグラビアなど)、4)転写法(トランスファー)、5)ラミネート法、および6)スプレーなどにて噴霧する方法などがあげられる。なかでも、設定できる付与量の幅が大きい点で、コーティング法が好ましい。
また、塗布量としては、5〜60g/m2が好ましい。塗布量が5g/m2より少ないと、基布の通気性が高くなるため、バッグの気密性に問題が発生するおそれがあり、また塗布量が60g/m2より多いと、基布の厚みが厚くなってバッグの収納性に問題が発生するおそれがある。
また、各乗員側布とインフレータ側布との結合、あるいは補強布の結合は、縫製、接着、溶着、製織、製編あるいはこれらの併用など、いずれの方法によってもよく、エアバッグとしての堅牢性、展開時の耐衝撃性、乗員の耐衝撃性能などを満足するものであればよい。
縫製は、本縫い、二重環縫い、片伏せ縫い、かがり縫い、安全縫い、千鳥縫い、扁平縫いなどの通常のエアバッグに適用されている縫い目により行えばよい。また、縫い糸の太さは、235dtex(50番手相当)〜2800dtex(0番手相当)、運針数は2〜10針/cmとすればよい。複数列の縫い目線が必要な場合は、縫い目線間の距離は2.2mm〜8mm程度として、多針型ミシンを用いればよいが、縫製部距離が長くない場合には、1本針ミシンで複数回縫合してもよい。
さらに、必要に応じて、外周縫製部などの縫い目からのガス抜けを防ぐために、シール材、接着剤または粘着材などを、縫い目の上部および/または下部、縫い目の間、縫い代部などに塗布、散布または積層してもよい。
縫合に使用する縫い糸は、一般に化合繊縫い糸と呼ばれるものや工業用縫い糸として使用されているものの中から適宜選定すればよい。たとえば、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46、ポリエステル、高分子ポリオレフィン、含フッ素、ビニロン、アラミド、カーボン、ガラス、スチールなどがあり、紡績糸、フィラメント合撚糸またはフィラメント樹脂加工糸のいずれでもよい。
また、前記の通り、使用するインフレータの特性に応じて、インフレータ取付口周囲に熱ガスから保護するための耐熱保護布や力学的な補強布を設けてもよい。これらの保護布や補強布は、布自体が耐熱性の材料、たとえば、全芳香族ポリアミド繊維、全芳香族ポリエステル繊維、PBO繊維、ポリイミド繊維、含フッ素系繊維などの耐熱性繊維材料を用いてもよいし、エアバッグ本体と同じか本体用基布より太い糸を用いて別途作成した織物を用いてもよい。また、織物に耐熱性被覆材を施したものを用いてもよい。
1 カーテンエアバッグ
2 インナーチューブ
3 変則膨張部
4 内部排気孔
5 従来のインナーチューブ
6 ガス流入口
7、7a、7b インナーチューブ用裁断布
7c 本体用裁断布
8 従来のカーテンエアバッグ

Claims (2)

  1. ガス流入口付近にインナーチューブを有するカーテンエアバッグであって、該インナーチューブがセンターピラーを横切るように配置され、かつ、該インナーチューブの窓側の一部に別布からなる変則膨張部が設けられ、ガス流入時に該変則膨張部が膨張することにより、該インナーチューブが車内側よりも窓側へより大きく膨張する形状であるカーテンエアバッグ。
  2. 前記インナーチューブのガス流入初期の膨張の幅が、カーテンエアバッグ本体膨張時の幅よりも大きい請求項1記載のカーテンエアバッグ。
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