以下、本発明に係る種々の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
実施の形態1.
図1は、本発明に係る実施の形態1の画像表示システム10の概略構成を示すブロック図である。この画像表示システム10は、移動体1の内部空間に配置されている。移動体1としては、たとえば、道路を走行する乗用車両、線路を走行する鉄道車両、海域を航行する船舶、もしくは、空域を飛行する航空機が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
移動体1の内部には、画像表示システム10に原画像信号Soを供給する信号源11と、移動体1の速度(単位:メートル/秒)、加速度(速度の時間変化率)または角速度(単位:ラジアン/秒)を検出するセンサを有する移動検出部12とが配設されている。
移動検出部12は、その速度、加速度または角速度もしくはこれらのうちの1または2以上の組み合わせを示す移動検出情報MDを画像表示システム10に供給する。なお、角速度検出センサとしては、ジャイロセンサを使用すればよい。移動体1が地表面に対して角度のついた移動を行う場合には、ジャイロセンサを使用することが有効である。
なお、本実施の形態では、移動検出部12は、移動体1の内部に組み込まれているが、これに限定されるものではない。移動検出部12が、移動体1の外部から内部に持ち込まれてもよい。たとえば、画質制御装置40は、加速度センサ及びジャイロセンサを搭載した携帯情報端末(スマートフォンなど)との間で通信リンクを確立し、その加速度センサまたはジャイロセンサの検出出力をその携帯情報端末から取得することも可能である。
信号源11としては、たとえは、HDD(ハードディスクドライブ)、DVD(Digital Versatile Disc)またはブルーレイディスク(登録商標)などの記録媒体から画像信号を読み出す情報再生装置、デジタルテレビジョン放送受信機などの放送受信装置、携帯情報端末(スマートフォンなど)内蔵の記録媒体に保存されている画像信号を読み出す機器、もしくは、特定の情報配信システムから配信された画像信号を受信する通信装置が挙げられる。移動体1が鉄道車両の場合には、駅などの特定地点に設置された情報配信システムの基地局から画像データを受信して記録媒体に蓄積したり、その受信した画像データで古い画像データを更新したりする通信装置を信号源11として使用することができる。
画像表示システム10は、図1に示されるように、移動体1の内部空間に設置された複数台の表示装置21,22,23,24,25,26と、互いに異なる位置に配設された照度センサ31,32,33と、表示装置21〜26の表示画質を個別に制御する画質制御装置40とを備えている。
照度センサ31,32,33は、当該照度センサ31,32,33の設置場所の明るさとして照度値を検出し、それら照度値を示す検出出力L1,L2,L3を画質制御装置40に供給する。照度センサ31,32,33は、たとえば、光信号を電気信号に変換するフォトトランジスタまたはフォトダイオードを有するものとすることができる。また、照度センサ31,32,33は、互いに近接する場所に設置されないことが望ましい。たとえば、移動体1が乗用車両である場合には、外光が差し込む窓を備えた車内壁付近における当該窓の近辺に、もしくは、表示装置21〜26のいずれかの近辺に照度センサ31,32,33を設置することが効果的である。
照度センサ31,32,33と画質制御装置40との間は有線で接続することができる。その有線接続に代えて、WiFi(登録商標)などの無線LAN(Wireless Local Area Network)、もしくは、ブルートゥース(Bluetooth:登録商標)などの短距離無線通信技術を使用して照度センサ31,32,33と画質制御装置40との間を無線で接続することも可能である。
なお、たとえば、テレビ電話または監視などの用途でカメラなどの撮像機器が予め移動体1に設置されている場合には、照度センサ31,32,33の検出出力L1〜L3に代えて、当該撮像機器で撮像された画像の画素値から照度値を換算して利用することも可能である。
画質制御装置40は、信号源11から供給された原画像信号Soと、移動検出情報MDと、照度センサ31〜33の検出出力L1,L2,L3とを入力とし、表示装置21〜26にそれぞれ供給すべき画像信号S1〜S6を生成するとともに、後述するように表示装置21〜26の表示画質(表示輝度、コントラスト、色味、及び/またはシャープネスなど)を個別に制御する制御信号を生成することができる。
図2は、本実施の形態の画質制御装置40の概略構成を示すブロック図である。図2に示されるように、画質制御装置40は、原画像信号Soに高画質化などの画像処理を施して画像信号Saを生成する入力信号処理部43と、画像信号Saで表される画像(静止画像または動画像)の特徴量を検出する特徴解析部44とを有する。
入力信号処理部43は、前述の通り、原画像信号Soに高画質化などの画像処理を施して画像信号Saを生成する機能を有するが、この代わりに、原画像信号Soに画像処理を施さずに原画像信号Soをそのまま画像信号Saとして出力することもできる。
ここで、入力信号処理部43は、信号源11の種類に対応する構成を有する必要がある。たとえば、信号源11から供給される原画像信号Soが変調または符号化されていた場合には、入力信号処理部43は、当該変調または符号化された原画像信号Soを復調または復号する機能を有することが必要である。また、信号源11が、駅などの特定地点に設置された情報配信システムの基地局から画像データを受信する通信装置である場合には、入力信号処理部43は、その受信した画像データを蓄積する記録媒体を有していてもよい。
特徴解析部44は、画像信号Saで表される画像が動画像である場合は、たとえば、その動画像を構成する単一フレームの平均輝度値(単一フレーム内の画素値の平均値)または連続する複数フレームの平均輝度値(各フレームの平均輝度値を複数フレームに亘って平均化した値)を、特徴量として算出することができる。
あるいは、特徴解析部44は、画像信号Saで表される画像の輝度ヒストグラムを算出し、この輝度ヒストグラムの代表値を輝度分布の特徴量としてもよい。たとえば、高輝度側、低輝度側または中間階調の輝度の偏りを示す値を輝度ヒストグラムの代表値とすることができる。もしくは、輝度ヒストグラムの第N分位数(Nは3以上の整数)または最頻値を代表値とすることもできる。ここで、第N分位数とは、輝度ヒストグラムから得られる相対累積度数をN等分したときの点数をいう。十分位数の場合、相対累積度数が全画素数のN/10を超えた画素数となる点を第N十分位数という。
特徴解析部44は、上記の特徴量を示すデータFDを画質制御部45に供給するとともに、画像信号Saをそのまま画像信号Sbとして画質制御部45に供給する。ここで、特徴解析部44は、画像信号Saに対して特徴量に応じた画像処理を施して画像信号Saとは異なる画像信号Sbを生成することも可能である。
一方、画質制御装置40は、図2に示されるように、移動検出情報MDを解析してその解析結果である解析情報MAを出力する移動解析部41と、解析情報MAに基づいて、表示装置毎に照度センサ31〜33の中から利用すべき照度センサを選択する照度選択部42と、当該選択された照度センサの検出出力に基づいて表示装置21〜26の表示画質を個別に制御する画質制御部45とを有する。
移動解析部41は、移動検出情報MDを解析して移動体1の動きに関する状態を示す解析情報MAを生成し、この解析情報MAを照度選択部42に供給する。移動解析部41は、たとえば、移動体1が動いていないことを示す静止状態、すばやく動いていることを示す高速移動状態、及び、移動体1がゆっくり動いていることを示す低速移動状態という3種類の状態のいずれかを示す情報(速さの強度を示す情報)を解析情報MAとして生成することが可能である。なお、解析情報MAは、移動体1の種類及び構造に応じて決められるべきものであり、それら3種類の状態を示す情報に限定されるものではない。
次に、図3を参照しつつ照度選択部42について説明する。図3は、照度選択部42による処理手順を概略的に示すフローチャートである。照度選択部42は、まず、照度センサ31〜33の検出出力L1〜L3を取得し(ステップS10)、次いで、移動解析部41から解析情報MAを取得する(ステップS11)。
その後、照度選択部42は、不揮発性メモリであるデータ記憶部46に記憶されたルックアップテーブル(LUT)47を参照して、表示装置毎に照度センサ31〜33の中から利用すべき照度センサを選択する(ステップS12)。ルックアップテーブル47には、解析情報MAに応じた照度センサ31〜33の利用条件を定めるデータが格納されている。たとえば、上記したように解析情報MAが3種類の状態(静止状態、低速移動状態及び高速移動状態)のいずれかを示す情報である場合、3種類の状態のそれぞれに応じて選択されるべき照度センサを指定するデータをルックアップテーブル47に格納することができる。画像表示システム10を構築する者は、たとえば、表示装置21〜26及び照度センサ31〜33の設置状況、表示装置21〜26及び照度センサ31〜33の性能、及び、移動体1の走行路または航行路の想定状況に応じて、ルックアップテーブル47に格納されるデータの内容を適宜定めることができる。
ここで、照度選択部42は、照度センサ31,32,33の検出出力L1,L2,L3に係数α1,α2,α3をそれぞれ重み付けすることで、表示装置毎に利用すべき照度センサを選択してもよい。たとえば、係数α1が零のときは、重み付けされた検出出力L1×α1は零になり、照度センサ31は選択されない。一方、係数α1が非零(たとえば、α1=1)のときは、照度センサ31は選択されることとなる。
上記ステップS12で照度センサが選択された後、照度選択部42は、表示装置毎に選択された照度センサの検出出力に基づいて、表示装置21,22,23,24,25,26にそれぞれ対応する照度推定値Lin(1),Lin(2),Lin(3),Lin(4),Lin(5),Lin(6)を算出する(ステップS13)。たとえば、表示装置毎に選択された照度センサの検出出力の平均値、最大値、最小値または中間値を照度推定値Lin(1)〜Lin(6)として算出することができる。ここで、「最大値」は、選択された複数個の照度センサの検出出力の値のうちの最大値を意味し、「最小値」は、選択された複数個の照度センサの検出出力の値のうちの最小値を意味する。また、「中間値」は、選択された複数個の照度センサが奇数個のときは、これら照度センサの検出出力の値を小さい順に並べたときの中央に位置する値を意味し、選択された複数個の照度センサが偶数個のときは、これら照度センサの検出出力の値を小さい順に並べたときの中央に近い2つの値の算術平均値を意味する。
次に、照度選択部42は、表示装置21〜26を指定する制御情報Ctと照度推定値Lin(1)〜Lin(6)とを画質制御部45に出力する(ステップS14)。制御情報Ctとしては、たとえば、表示装置21〜26にそれぞれ割り当てられた固有の番号(MACアドレスなど)が挙げられる。その後、処理が終了するとの判定(ステップS15のYES)がなされるまで、照度選択部42は、上記ステップS10〜S14を繰り返し実行する(ステップS15のNO)。
次に、画質制御部45について説明する。画質制御部45は、照度推定値Lin(1)〜Lin(6)と、特徴量を表すデータFDと画像信号Sbとを入力として動作する。画質制御部45は、画像信号Sbに基づいて6系統の画像信号S1〜S6を生成し、これら画像信号S1〜S6を表示装置21〜26にそれぞれ供給する。表示装置21〜26は、画像信号S1〜S6で表される画像をそれぞれ表示する。
また、画質制御部45は、照度推定値Lin(1)〜Lin(6)とデータFDとに基づいて、表示装置21〜26の表示画質(表示輝度、コントラスト、色味、及び/またはシャープネスなど)をそれぞれ制御する制御信号QC1〜QC6を生成する。表示装置21〜26は、制御信号QC1〜QC6で指定された表示画質となるように表示画像の画質を調整する機能を有している。
たとえば、図4(A),(B)は、データFDで示される特徴量が平均輝度(256階調値)の場合の当該平均輝度と表示輝度との間の関係の例を示すグラフである。図4(A),(B)のグラフにおいて、横軸は、画像の平均輝度を表し、縦軸は、表示装置21〜26のいずれかの表示輝度を表している。画質制御部45は、図4(A)に例示されるように、平均輝度が低いときは表示輝度を最大輝度100%とし、平均輝度が高いときは表示輝度をC1%とする制御信号QC1〜QC6を生成する。たとえば、明るい画像の場合は、表示輝度を低下させて視認性を向上させることができる。
また、画質制御部45は、照度推定値Lin(1)〜Lin(6)が低いほど、図4(B)の矢印で示されるように、表示輝度を全体的に低下させる制御信号QC1〜QC6を生成する。逆に、画質制御部45は、照度推定値Lin(1)〜Lin(6)が高いほど、表示輝度を全体的に上昇させる制御信号QC1〜QC6を生成することができる。たとえば、晴天時などの高照度環境下では、照度センサ31〜33の検出出力L1〜L3の値は大きくなるため、その際には表示輝度を高く設定する必要がある。これにより、外光の明るさによって表示画像を暗く感じてしまうことを抑制することができる。
表示装置21〜26がバックライトを備えた液晶表示装置の場合は、表示輝度を制御するためにバックライトの特性を予め把握し、バックライトに供給されるべき駆動電流または駆動電圧と表示輝度との間の関係を把握しておくことが望ましい。たとえば、PWM信号(パルス幅変調信号:Pulse Width Modulated signal)を用いてバックライトの発光強度を制御することができる。また、バックライトの特性に応じてその発光輝度の制御可能な範囲は異なる。本実施の形態では、移動体1の周辺環境の照度範囲が広いことが想定されるため、高輝度出力のバックライトを備えた液晶表示装置を使用することが望ましい。
また、液晶表示装置のバックライトの中には、ローカルディミング制御を受けることができるものも存在する。ローカルディミング制御可能なバックライトの発光領域は、複数の分割領域に分割されており、分割領域毎に発光輝度を局所的に制御することができる。ローカルディミング制御では、バックライトの最大発光輝度値を基準とし、暗い画像領域に対応する分割領域の発光輝度を局所的に低下させて表示画像のコントラストを向上させることができる。ローカルディミング制御を受けるバックライトを備えた液晶表示装置を表示装置21〜26として使用する場合は、画質制御部45は、表示装置21〜26のバックライトに対してローカルディミング制御のための制御信号QC1〜QC6を生成することが好ましい。
また、表示装置21〜26の中に互いに表示特性の異なる複数種類の表示装置が含まれる場合は、画質制御部45は、表示装置の種類毎に異なる画質制御を行うことが望ましい。具体例としては、表示装置21,22が12インチサイズの液晶表示装置であり、表示装置23〜26が20インチサイズの有機ELパネルである場合が挙げられる。このような例は、たとえば、表示装置21,22が運転席FLのために備えられたカーナビゲーションシステムに利用される表示装置であり、表示装置23〜26がRSE(リアシートエンターテイメント)用途の表示装置であるときに想定されるものである。
また、たとえば、種類の異なる表示装置が同じ表示輝度で画像を表示したとき、視聴者がこれら表示装置から感じるまぶしさ感には違いが生じる。具体的には、表示装置の表示サイズが互いに異なると、大きな表示サイズの表示装置は、視聴者の視野に占める表示画像の面積も大きくなるため視聴者にまぶしさを感じさせやすい。このような状況下では、表示サイズの小さい表示装置よりも、表示サイズの大きな表示装置の方の表示輝度を低くすることが適当である。
画質制御部45は、画像信号Sbと同じ内容の6系統の画像信号S1〜S6を生成することができる。画像信号Sbに解像度向上などの画質補正を施して画像信号S1〜S6を生成することも可能である。
次に、上記画像表示システム10を移動体1の一種である乗用車両2に適用した例について説明する。
図5は、画像表示システム10の表示装置21〜26及び照度センサ31〜33を有する乗用車両2の内部空間を概略的に示す図である。通常、乗用車両2は、速度計を搭載しているため、この速度計を移動検出部12として利用することができる。この場合、移動解析部41は、速度計から得られた速度情報を移動検出情報MDとして利用する。
たとえば、乗用車両2の進行方向前方に対して右側の前部座席FRを運転席とし、左側の前部座席FLを助手席とすることができる。乗用車両2の内部空間の前方に表示装置21,22が配置されており、前部座席FL,FRに着席する者は、これら表示装置21,22を視ることができる。表示装置21,22は、主に、カーナビゲーションシステムの表示装置として使用することができる。また、乗用車両2の進行方向前方における窓の近傍には、照度センサ31が配置されている。
一方、乗用車両2の前部座席FL,FRの背面にはRSE用途の表示装置23,24がそれぞれ配置されており、中部座席MLに着席する者は、表示装置23を視ることができ、中部座席MRに着席する者は、表示装置24を視ることができる。他方、中部座席ML,MRの背面にもRSE用途の表示装置25,26がそれぞれ配置されており、後部座席BLに着席する者は、表示装置25を視ることができ、後部座席BRに着席する者は、表示装置26を視ることができる。また、乗用車両2の後方の左側窓の近傍に照度センサ32が配置され、乗用車両2の後方の右側窓の近傍に照度センサ33が配置されている。
上述した通り、照度センサ31,32,33の設置場所は、外光が差し込む窓を備えた車内壁付近における当該窓の近辺もしくは表示装置21〜26のいずれかの近辺とすることが効果的である。図5の例では、後方の窓付近には照度センサが設置されていない。その理由は、後方の窓から入射する光は、後部座席BL,BRで遮られるため、表示装置25,26の表示画面に与える影響は弱いと考えられるためである。このように、表示装置周辺の構造の設計上の理由により外光の影響が少ないと考えられる箇所に照度センサを配置することを省くことができる。
照度センサは、視聴者の視覚が受ける明るさを測定することを目的とするものであるから、その照度センサの受光面を向ける方向(以下「受光面方向」とも呼ぶ。)は、できるだけ視聴者の目線方向に近い方向と一致させることが望ましい。たとえば、照度センサ32の受光面方向を、後部座席BLに着席する視聴者の目線方向に近い方向(後部座席BLから表示装置25への方向)と一致させることができ、照度センサ33の受光面方向を、後部座席BRに着席する視聴者の目線方向に近い方向(後部座席BRから表示装置26への方向)と一致させることができる。
また、乗用車両2の内部構造に起因して、照度センサの受光面方向を視聴者の目線方向(たとえば、後部座席BRから表示装置26への方向)と一致させることができない場合がある。このような場合は、照度センサの受光面方向の次の候補として、当該表示装置付近の位置に照度センサを配置し、この照度センサの受光面方向を当該表示装置から視聴者に向かう方向にすることができる。たとえば、照度センサ32の受光面方向を、後部座席BLに着席する視聴者の目線とは逆方向(表示装置25から後部座席BLへの方向)と一致させることができ、照度センサ33の受光面を、後部座席BRに着席する視聴者の目線とは逆方向(表示装置26から後部座席BRへの方向)と一致させることができる。このように照度センサ32,33を設置することで、視聴者の視線が向かう先である表示装置付近に入射する光の明るさを測定することができるため、視聴者の視覚が受ける明るさを推定することが可能となる。
図6は、乗用車両2に搭載された画質制御装置40の照度選択部42で参照されるルックアップテーブル47の一例を示す図である。解析情報ADは、移動体1の静止状態、低速移動状態及び高速移動状態のいずれかを示す情報を含む。ルックアップテーブル47においては、乗用車両2が静止状態、低速移動状態または高速移動状態である場合に表示装置21〜26の各々について選択されるべき照度センサを特定するデータが格納されている。ここで、「静止状態」,「低速移動状態」及び「高速移動状態」は、乗用車両2の速度をvとするとき、閾値th1,th2(th1<th2)を用いて、以下に示す3種類の速度域に応じて定められるものとする。
静止状態:0≦v<th1、
低速移動状態:th1≦v<th2、
高速移動状態:th2≦v。
ここで、閾値th1は、零に近い値であり、振動などによる数値の揺らぎを吸収することができる値に設定される。
なお、本実施の形態では、乗用車両2の速度vは、方向を持たないスカラー量(絶対値)である。この代わりに、乗用車両2の速度vを、乗用車両2の進行方向を示すベクトル量として検出してもよい。この場合、移動解析部41は、乗用車両2の進行方向に基づく解析結果を生成し、照度選択部42は、その解析結果を示す解析情報MAを利用することも可能である。
乗用車両2が静止状態であるとき、表示輝度の制御のために利用すべき照度センサとしては、その照度環境に最も近似した環境に配置された照度センサを選択することが望ましい。このため、図6のルックアップテーブルによれば、表示装置21,22に対して最も近い照度センサ31が選択され、乗用車両2の左側に配置された表示装置23,25に対しては照度センサ32が選択され、乗用車両2の右側に配置された表示装置24,26に対しては照度センサ33が選択される。このときの照度推定値Lin(1)〜Lin(6)は、たとえば、以下の式に従って算出される。
Lin(1)=Lin(2)=L1、
Lin(3)=Lin(5)=L2、
Lin(4)=Lin(6)=L3。
次に、乗用車両2が低速移動状態であるときは、図6のルックアップテーブルによれば、表示装置21,22に対しては照度センサ31が選択され、表示装置23,24,25,26に対しては照度センサ32,33が選択される。このように選択する理由は、移動体1が比較的低速で移動するとき、その進行方向前方に配置された照度センサ31付近の照度値は、後方の照度センサ32,33付近の照度値と比べると安定した値となる傾向にあるためである。このときの照度推定値Lin(1)〜Lin(6)は、たとえば、以下の式に従って算出される。
Lin(1)=Lin(2)=L1、
Lin(3)=Lin(4)=Lin(5)=Lin(6)=(L2+L3)/2。
次に、乗用車両2が高速移動状態であるときは、図6のルックアップテーブルによれば、全ての表示装置21〜26に対して前方の照度センサ31が選択される。このとき、たとえば、建物の密集する都市部では、比較的高速で移動する乗用車両2の周辺環境の明るさの変化は激しくなる傾向にあり、細かい制御をするための十分な精度の照度値を得ることが難しい。そのため、乗用車両2の進行方向前方位置の照度を最も反映する値を出力する照度センサ31のみを選択することが望ましい。このときの照度推定値Lin(1)〜Lin(6)は、全て、照度センサ31の検出出力L1の値となる。
上記の通り、乗用車両2が高速移動状態であるときは、前方の照度センサ31のみが選択され、他の照度センサ32,33は選択されない。このとき、照度センサ32,33への電力供給を一時的に停止して照度センサ32,33を動作させないことも可能である。また、このとき、照度選択部42は、照度センサ31の検出出力L1のみを取得し、照度センサ32,33の検出出力L2,L3を取得しないことも可能である。これにより、画像表示システム10の電力消費量を抑制することができる。
また、上記の通り、照度選択部42は、乗用車両2の速度vが高速となる程、乗用車両2の周辺環境の明るさの変化は激しくなると推定して、利用すべき照度センサの個数を減らすことができる。一方で、周辺に建物がほとんど存在しない過疎地域では、たとえ乗用車両2がその過疎地域を高速で移動しても、その周辺環境の明るさの変化が激しくならない状況もあり得る。このような状況に対処するために、移動解析部41は、照度センサ31,32,33の検出出力L1〜L3の値(照度値)を監視し、それらの値の変動がいずれも一定範囲内にあるときは、乗用車両2の周辺環境の明るさの変化は緩やかであると判定し、その判定結果を解析情報MAに含めて照度選択部42に出力することもできる。この場合には、照度選択部42は、たとえ乗用車両2が高速移動状態であるときでも、全ての表示装置21〜26に対して全ての照度センサ31,32,33を選択し、これら照度センサ31,32,33の検出出力の算術平均値(=(L1+L2+L3)/3)を照度推定値Lin(1)〜Lin(6)として算出することができる。
なお、乗用車両2の内部構造に起因して、照度センサ31〜33を図5に示したように設置することが難しい場合には、その設置位置を適宜変更し、その変更に合わせてルックアップテーブル47に格納されているデータを変更すればよい。この場合は、どの位置に照度センサを配置するときでも、乗用車両2内に外光が入射する位置に受光面を向けた照度センサを設置することが望ましい。このとき、太陽光の影響を考慮して、乗用車両2の窓の近くに照度センサを配置してもよい。
また、画像表示システム10の設計上の理由(たとえば、表示装置25,26の設置場所の窓からの距離は互いに同じであるが、照度センサ32,33の壁面からの距離が互いに異なっていたり、遮蔽物が存在したりする理由)により、似た条件の外光環境下であっても、照度センサ32,33の検出出力L2,L3の値が互いに異なることがある。このような場合には、照度センサ32,33の検出出力L2,L3の値に補正用の重み係数で重み付けして検出出力L2,L3の値を個別に調整してもよい。
本実施の形態の画像表示システム10は、乗用車両2以外の車両にも適用され得る。図7(A)は、画像表示システム10の表示装置21〜24及び2個の照度センサ31,32を有する鉄道車両の内部空間の一例を概略的に示す図である。図7(A)に示されるように、一対の表示装置21,22が鉄道車両の一対の開閉ドア51,52の直上の壁面に設けられている。また、他の一対の表示装置21,22も鉄道車両の一対の開閉ドア53,54の直上の壁面に設けられている。ここで、一対の表示装置21,22は互いに隣り合う位置に配置され、他の一対の表示装置23,24も互いに隣り合う位置に配置されている。さらに、表示装置21,22と開閉ドア51,52との間の壁面には1個の照度センサ31が設けられ、表示装置23,24と開閉ドア53,54との間の壁面にも1個の照度センサ32が設けられている。開閉ドア51,52,53,54は、窓51w,52w,53w,54wをそれぞれ有し、鉄道車両自体も大きな面積の窓55,56を有している。このため、鉄道車両の移動速度に応じて、周辺環境の明るさの変化の程度は異なる。たとえば、その鉄道車両が低速移動状態または静止状態のときは、照度選択部42は、表示装置21,22に対しては照度センサ31のみを選択し、表示装置23,24に対しては照度センサ32のみを選択する(割り当てる)ことができる。一方、その鉄道車両が高速移動状態のとき、照度選択部42は、表示装置21,22,23,24に対して照度センサ31,32を選択する(割り当てる)ことができる。
一方、図7(B)は、画像表示システム10の表示装置21〜24及び4個の照度センサ31,32,33,34を有する鉄道車両の内部空間の他の例を概略的に示す図である。図7(B)に示される内部空間の構成は、照度センサ31,32,33,34の配置を除いて、図7(A)に示した内部空間の構成と同じである。図7(B)では、表示装置21と開閉ドア51との間の壁面に照度センサ31が、表示装置22と開閉ドア52との間の壁面に照度センサ32が、表示装置23と開閉ドア53との間の壁面に照度センサ33が、表示装置24と開閉ドア54との間の壁面に照度センサ34がそれぞれ設けられている。このため、照度センサ31〜34の個数は、表示装置21〜24の個数と同じである。
図7(B)に示した構成において、仮に、表示装置21に対して当該表示装置21に最も近い照度センサ31のみが常に選択され、表示装置22に対しては当該表示装置22に最も近い照度センサ32のみが常に選択されるとすれば、表示装置21,22に照射される光の量が互いに異なり、表示装置21,22間に表示輝度の不均衡が生じたとき、両方の表示装置21,22を同時に視る視聴者が違和感を受けるという問題がある。このような問題を回避するには、本実施の形態の照度選択部42が周辺環境の明るさの変化に合わせて表示装置21,22に対して2個の照度センサ31,32を選択し、これら照度センサ31,32の出力を利用(たとえば、照度センサ31,32の出力の平均を利用)すればよい。また、必ずしも4個の照度センサ31〜34を設ける必要は無く、図7(A)に示したように表示装置21〜24の個数の半分の数の照度センサ31,32のみを設けるだけで足りる。
以上に説明したように実施の形態1の画像表示システム10は、移動体1の移動検出情報MDに基づいて、表示装置毎に照度センサ31〜33の中から利用すべき照度センサを選択し、当該選択された照度センサの検出出力に基づいて表示装置21〜26の表示画質を個別に制御する。このため、移動体1の内部空間に複数台の表示装置21〜26が設置されたときでも、複数台の表示装置21〜26の表示画質を周辺環境の変化に合わせて適切に制御することができ、照度センサの必要個数を抑制することもできる。
特に、移動解析部41が移動体1の速度情報を移動検出情報MDとして解析する場合は、移動体1の周辺環境の明るさの変化の頻度に応じた解析結果を得る(推定する)ことができるため、細かい画質制御を行うことができる。
また、照度センサの必要個数を抑制することができるため、照度センサにかかる費用が低くなり、照度センサの設置場所が少なくなるため、画像表示システム10の設計の自由度が向上する。このため、移動体1内に画像表示システム10を構築するために要する全体のコストを低くすることができる。
また、表示装置21〜26の表示輝度を周辺環境の明るさに合わせて適切なものとすることができるため、視認性の向上とともに、消費電力量を抑制することができる。
なお、照度センサ31〜33の個数及び設置場所は、3個及び3箇所に限られるものではない。移動体1(乗用車両または鉄道車両など)の形状及び面積に応じて、照度センサの個数と設置場所とを適宜決めればよい。図5の例では、照度センサ32,33は、中部座席ML,MRと後部座席BL,BRとの間の空間に設置されているが、これに限定されるものではない。たとえば、前部座席FL,FRと中部座席ML,MRとの間の空間に照度センサ32,33を設置してもよいし、後部座席BL,BRよりも後方に照度センサ32,33を設置することも可能である。さらに、座席FL,FR,ML,MRの中間点に照度センサを追加で設置することも可能である。
実施の形態2.
次に、本発明に係る実施の形態2について説明する。図8は、実施の形態2の画像表示システム10Bの概略構成を示すブロック図である。この画像表示システム10Bは、移動体1Bの内部空間に配置されている。移動体1Bとしては、たとえば、乗用車両、鉄道車両、船舶もしくは航空機が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
移動体1Bの内部には、画像表示システム10Bに原画像信号Soを供給する信号源11と、移動体1の現在位置を示す位置検出情報PDを供給する移動検出部12Bとが配設されている。図8に示した信号源11の構成は、図1に示した信号源11の構成と同じである。本実施の形態の移動検出部12Bは、衛星測位システムである全地球測位システム(GPS:グローバル・ポジショニング・システム)を利用して地球上における当該移動体1Bの現在位置(緯度、経度及び高度)を一定の誤差範囲内で検出するGPS受信機を搭載している。また、移動検出部12Bは、GPS衛星からの受信信号から高精度の時刻情報を取得することも可能である。
なお、本実施の形態では、移動検出部12Bは、移動体1Bの内部に備え付けられているが、これに限定されるものではない。移動検出部12Bが、移動体1Bの外部から内部に持ち込まれてもよい。たとえば、画質制御装置40Bは、GPS受信機を搭載した携帯情報端末(スマートフォンなど)との間で通信リンクを確立し、そのGPS受信機の出力を携帯情報端末から取得することも可能である。
画像表示システム10Bは、図8に示されるように、移動体1Bの内部空間に設置された複数台の表示装置210〜260と、互いに異なる位置に配設された照度センサ31,32,33と、表示装置210〜260の表示画質を個別に制御する画質制御装置40Bとを備えている。
図8に示した照度センサ31,32,33の構成は、図1に示した照度センサ31,32,33の構成と同じである。照度センサ31,32,33は、照度値を示す検出出力L1,L2,L3を画質制御装置40Bに供給する。実施の形態1の場合と同様に、照度センサ31,32,33と画質制御装置40Bとの間を有線または無線で接続することができる。
画質制御装置40Bは、信号源11から供給された原画像信号Soと、位置検出情報PDと、照度センサ31〜33の検出出力L1,L2,L3とを入力とし、表示装置210〜260にそれぞれ供給すべき画像信号S1〜S6を生成するとともに、表示装置210〜260の表示画質(表示輝度、コントラスト、色味、及び/またはシャープネスなど)を個別に制御する制御信号を生成する。
図9は、本実施の形態の画質制御装置40Bの概略構成を示すブロック図である。図9に示されるように、画質制御装置40Bは、上記実施の形態1の画質制御装置40と同様に入力信号処理部43、特徴解析部44及び画質制御部45を有する。図9に示した入力信号処理部43、特徴解析部44及び画質制御部45の構成及び動作は、図2に示した入力信号処理部43、特徴解析部44及び画質制御部45の構成及び動作と同じである。
本実施の形態の画質制御装置40Bは、位置検出情報PDを解析してその解析結果である解析情報PAを出力する移動解析部41Bと、解析情報PAに基づいて、表示装置毎に照度センサ31〜33の中から利用すべき照度センサを選択する照度選択部42Bとを有する。
移動解析部41Bは、位置検出情報PDを解析して解析情報PAを生成し、この解析情報PAを照度選択部42Bに供給する。解析情報PAは、移動体1Bの現在位置を示す位置情報の他、移動体1Bの位置の時間変化を示す速度情報と、移動体1Bの進行方向の方位を示す方位情報と、現在の年月日及び時間を示す時刻情報とを含む。なお、移動体1Bに搭載された速度計から速度情報を取得することも可能であり、また、移動体1Bに搭載された時計から時刻情報を取得することも可能である。方位情報については、移動体1Bが地磁気センサを搭載している場合には、その地磁気センサの検出出力に基づいて方位情報を得ることもできる。
次に、図10を参照しつつ照度選択部42Bについて説明する。図10は、照度選択部42Bによる処理手順を概略的に示すフローチャートである。照度選択部42Bは、先ず、照度センサ31〜33の検出出力L1〜L3を取得し(ステップS10)、次いで、移動解析部41から解析情報PAを取得する(ステップS11B)。
その後、照度選択部42Bは、解析情報PAを用い、不揮発性メモリであるデータ記憶部46に記憶されたルックアップテーブル(LUT)47Bを参照して、表示装置毎に照度センサ31〜33の中から利用すべき照度センサを選択する(ステップS12B)。ルックアップテーブル47Bには、解析情報PAに応じた照度センサ31〜33の利用条件を定めるデータが格納されている。画像表示システム10Bを構築する者は、たとえば、表示装置210〜260及び照度センサ31〜33の設置状況、表示装置210〜260及び照度センサ31〜33の性能、及び、移動体1Bの走行路または航行路の想定状況に応じて、ルックアップテーブル47Bに格納されるデータの内容を適宜定めることができる。
また、照度選択部42Bは、上記実施の形態1の照度選択部42と同様に、表示装置毎に選択された照度センサの検出出力に基づいて、表示装置210,220,230,240,250,260にそれぞれ対応する照度推定値Lin(1),Lin(2),Lin(3),Lin(4),Lin(5),Lin(6)を算出する(ステップS13)。
そして、照度選択部42Bは、表示装置210〜260を指定する制御情報Ctと照度推定値Lin(1)〜Lin(6)とを画質制御部45に出力する(ステップS14)。制御情報Ctとしては、たとえば、表示装置210〜260にそれぞれ割り当てられた固有の番号(MACアドレスなど)が挙げられる。その後、処理が終了するとの判定(ステップS15のYES)がなされるまで、照度選択部42Bは、上記ステップS10,S11B,S12B,S13,S14Bを繰り返し実行する(ステップS15のNO)。
本実施の形態の画質制御部45は、上記実施の形態1の画質制御部45と同様に、画像信号Sbに基づいて6系統の画像信号S1〜S6を生成し、これら画像信号S1〜S6を表示装置210〜260にそれぞれ供給する。表示装置210〜260は、画像信号S1〜S6で表される画像をそれぞれ表示する。また、画質制御部45は、照度推定値Lin(1)〜Lin(6)と画像の特徴量を示すデータFDとに基づいて、表示装置210〜260の表示画質(表示輝度、コントラスト、色味、及び/またはシャープネスなど)をそれぞれ制御する制御信号QC1〜QC6を生成する。表示装置210〜260は、制御信号QC1〜QC6で指定された表示画質となるように表示画像の画質を調整する機能を有している。
次に、上記画像表示システム10Bを移動体1Bの一種である鉄道車両に適用した例について説明する。
図11は、画像表示システム10Bの表示装置210〜260及び照度センサ31〜33を有する鉄道車両(先頭車両)3Fの内部空間を概略的に示す図である。なお、図11の例では、先頭車両3Fが一両だけ示されているが、実際には、この先頭車両3Fに後続列車が連結されている。
図11に示されるように、先頭車両3Fの内部空間において、進行方向前方に照度センサ31が設置され、後方左側に照度センサ32が設置され、後方右側に照度センサ33が設置されている。また、先頭車両3Fの右側の内壁には、一対の表示画面22A,22Bを有する表示装置220と、一対の表示画面24A,24Bを有する表示装置240と、一対の表示画面26A,26Bを有する表示装置260とが設置されている。右側に視線を向けた乗客は、これら表示装置220,240,260に表示された画像を視ることができる。一方、先頭車両3Fの左側の内壁には、一対の表示画面21A,21Bを有する表示装置210と、一対の表示画面23A,23Bを有する表示装置230と、一対の表示画面25A,25Bを有する表示装置250とが設置されている。左側に視線を向けた乗客は、これら表示装置210,230,250に表示された画像を視ることができる。
ここで、先頭車両3Fの乗客の視線は、主に、先頭車両3Fの中心から外側に向けられる。これに対し、照度センサ32,33の受光面は、先頭車両3Fの内部の照度を検出することができるように先頭車両3Fの内部に向けられている。
図12は、先頭車両3Fに搭載された画質制御装置40Bの照度選択部42Bで参照されるルックアップテーブル47Bの一例を示す図である。ルックアップテーブル47Bにおいては、先頭車両3Fが静止状態、低速移動状態または高速移動状態である場合に表示装置210〜260の各々について選択されるべき照度センサを特定するデータが格納されている。ここで、「静止状態」,「低速移動状態」及び「高速移動状態」は、先頭車両3Fの速度をVとするとき、閾値Th1,Th2(Th1<Th2)を用いて、以下に示す3種類の速度域に応じて定められるものとする。
静止状態:0≦V<Th1、
低速移動状態:Th1≦V<Th2、
高速移動状態:Th2≦V。
ここで、閾値Th1は、零に近い値であり、GPS受信機の検出精度などによる数値の揺らぎを吸収することができる値に設定される。
先頭車両3Fが静止状態であるとき、表示輝度の制御のために利用すべき照度センサとしては、その照度環境に最も近似した環境に配置された照度センサを選択することが望ましい。このため、図12のルックアップテーブルによれば、先頭車両3Fの左側に配置された表示装置210,230,250に対して照度センサ32が選択され、先頭車両3Fの右側に配置された表示装置220,240,260に対しては照度センサ33が選択される。このときの照度推定値Lin(1)〜Lin(6)は、たとえば、以下の式に従って算出される。
Lin(1)=Lin(3)=Lin(5)=L2、
Lin(2)=Lin(4)=Lin(6)=L3。
次に、先頭車両3Fが低速移動状態または高速移動状態であるときは、全ての表示装置21〜26に対して前方の照度センサ31が選択される。このとき、移動する乗用車両2の周辺環境の明るさの変化は激しくなる傾向にあり、細かい制御をするための十分な精度の照度値を得ることが難しい。そのため、先頭車両3Fの進行方向前方位置の照度を最も反映する値を出力する照度センサ31のみを選択することが望ましい。このときの照度推定値Lin(1)〜Lin(6)は、全て、照度センサ31の検出出力L1の値となる。
図11に示したシステム環境では、座席などの遮蔽物が少ない。また、先頭車両3Fが鉄道車両であるという特性上、先頭車両3Fの内部空間は高さ方向に広く、且つ、内部空間の左右内壁の間隔は先頭車両3Fの長手方向の長さと比べて狭い。このような構造では、先頭車両3Fが静止状態のとき、左側に設置された表示装置210,230,250に対しては、その反対側(右側)に設置された照度センサ33を選択し、右側に設置された表示装置220,240,260に対しては、その反対側(左側)に設置された照度センサ32を選択した方が好ましい場合がある。たとえば、右側から直射日光が先頭車両3Fの内部に入射している状況が想定される場合、その直射日光の照射を受ける照度センサは、先頭車両3Fの内部に受光面を向けて設置された照度センサ33ではなく、車両内部に受光面を向けて設置された照度センサ32である。このとき、表示装置210,230,250にもその直射日光が照射される。
このような場合は、図12に示したルックアップテーブルに代えて、図13に示したルックアップテーブルを使用することが好ましい。よって、照度選択部42Bは、照度センサ31〜33の検出出力L1〜L3に基づいて先頭車両3Fの内部に差し込む光の分布を推定し、当該推定された光の分布に応じて図12及び図13に示したルックアップテーブルを切り替えて使用することが好ましい。
上記の通り、先頭車両3Fが移動状態(低速移動状態または高速移動状態)のときは、前方の照度センサ31のみが選択され、他の照度センサ32,33は選択されない。このとき、照度センサ32,33への電力供給を一時的に停止して照度センサ32,33を動作させないことも可能である。また、このとき、照度選択部42Bは、照度センサ31の検出出力L1のみを取得し、照度センサ32,33の検出出力L2,L3を取得しないことも可能である。これにより、画像表示システム10Bの電力消費量を抑制することができる。
なお、図11の例では、照度センサ31〜33は3箇所に設置されているが、これに限定されるものではない。照度センサの個数は4個以上にしてもよい。鉄道車両のような進行方向に細長い乗り物には、その長手方向に一定間隔で照度センサを設けることが望ましい。
本実施の形態の画像表示システム10Bは、先頭車両3Fに後続する鉄道車両(後続車両)にも組み込むことができる。図14は、画像表示システム10Bの表示装置210〜260及び照度センサ32,33を有する後続車両3Nの内部空間を概略的に示す図である。先頭車両3Fとは異なり、後続車両3Nの進行方向前方には照度センサ31は設置されていない。その理由は、後続車両3Nの前方には窓が設けられておらず、先頭車両3Fと連結されており、後続車両3Nの前方領域の照度を得てもこの照度を使用することが難しいからである。
一般に、鉄道車両3F,3Nは、数分〜数十分の間隔で駅舎のプラットホームの近傍に停車する。鉄道車両3F,3Nが駅舎内に停車しているときに日光を遮られた場合には、鉄道車両3F,3Nが移動中の場合と比べて、周辺の照度環境が大きく異なる。また、連結された多数の鉄道車両が運行されている場合、駅舎の中央部に停車する車両は日光を遮られるため、その車両の内部空間の照度は、室内照度程度となる。一方、その中央部から離れた場所に停車する車両には直接日光が照射されて、その車両の内部空間の照度は、屋外晴天時の照度に近くなることがある。このような場合でも、各車両に画像表示システム10Bを組み込むことで、各車両内の表示装置の表示画質を周辺環境の明るさに合わせて適切に調整することができる。
ところで、照度選択部42Bは、鉄道車両3F,3Nの前端が向いている方位を示す方位情報と時刻情報とを解析情報PAから取得して利用してもよい。具体的には、照度選択部42Bは、その方位情報と時刻情報とに基づいて太陽の位置を推定し、さらに鉄道車両3F,3Nの窓などの配置情報に基づいてその太陽から鉄道車両3F,3Nの内部に差し込む太陽光の入射方向を推定することも可能である。照度選択部42Bは、その推定結果を利用して照度センサを選択することにより、より精度の高い照度推定値Lin(1)〜Lin(6)を算出することが可能となる。
図11に示した構成例では、鉄道車両3Fが高速移動状態のとき、照度選択部42Bは、全ての表示装置210〜260に対して鉄道車両3Fの前方の照度センサ31のみを選択することが説明された。この例において、さらに方位情報及び時刻情報を利用して太陽光などの極めて強い影響を与える光源の方角を検出できる場合、照度選択部42Bは、全ての表示装置210〜250に対して照度センサ31のみを選択する代わりに、鉄道車両3Fが静止状態のとき(図12または図13)と同様に照度センサを選択させるデータをルックアップテーブル47Bに格納することができる。
また、このような場合を検知した照度選択部42Bは、表示装置210〜260のうち太陽光の影響を受けることが予想される表示装置の表示輝度に一定値が加算されるように照度推定値Lin(1)〜Lin(6)を生成してもよい。これにより、当該表示装置での明るい表示が可能となる。
また、表示装置210〜260は、外光の影響を極力受けない箇所に設置されることが好ましい。しかしながら、たとえば、太陽光が右側から鉄道車両3Fの内部に差し込むことが予想される場合、右側の表示装置220,240,260は、当該太陽光の直接照射を受けずに逆光を受けて画像を表示する一方、左側の表示装置210,230,250のいずれかは、当該太陽光の直接照射を受けて画像を表示することが予想される。かかる場合を検知した照度選択部42Bは、当該太陽光の直接照射を受ける表示装置の表示輝度と、当該逆光を受ける表示装置の表示輝度とがそれぞれ比較的高い輝度となるように照度推定値Lin(1)〜Lin(6)に補正値を加算または補正係数を乗算してもよい。それら補正値または補正係数は、予め用意された演算式、参照テーブルまたはパラメータ値を用いて取得され得る。
さらに、照度選択部42Bは、時刻情報に基づいて、照度センサ31〜33の中から利用すべき照度センサを選択することもできる。たとえば、移動体1Bが移動している時間帯が夜間であるとき、照度選択部42Bは、外部から移動体1Bの内部に入射する外光の量が極めて小さいと推定して、表示装置210〜260の全てについて特定の照度センサのみを選択することができる。図11に示した構成例では、鉄道車両3Fが走行する時間帯が夜間のとき、照度選択部42Bは、表示装置210〜260の全てに対して照度センサ31のみを選択することができる。
以上に説明したように実施の形態2の画像表示システム10Bは、移動体1Bの位置検出情報PDに基づいて、表示装置毎に照度センサ31〜33の中から利用すべき照度センサを選択し、当該選択された照度センサの検出出力に基づいて表示装置21〜26の表示画質を個別に制御する。このため、移動体1Bの内部空間に複数台の表示装置21〜26が設置されたときでも、複数台の表示装置21〜26の表示画質を周辺環境の変化に合わせて適切に制御することができ、照度センサの必要個数を抑制することもできる。
また、表示装置21〜26の表示輝度を周辺環境の明るさに合わせて適切なものとすることができるため、視認性の向上とともに、消費電力量を抑制することができる。
なお、上記実施の形態1の場合と同様に、照度センサ31〜33の個数及び設置場所は、3個及び3箇所に限られるものではない。
実施の形態3.
次に、本発明に係る実施の形態3について説明する。図15は、実施の形態3の画像表示システム10Cの概略構成を示すブロック図である。この画像表示システム10Cは、移動体1Cの内部空間に配置されている。移動体1Cとしては、たとえば、乗用車両、鉄道車両、船舶もしくは航空機が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
移動体1Bの内部には、画像表示システム10Cに原画像信号Soを供給する信号源11と、移動体1の現在位置を示す位置検出情報PDを供給する移動検出部12Bと、外部の通信システムから気象情報MD及び地図情報TDを取得する情報供給部14とが配設されている。図15に示した信号源11及び移動検出部12Bの構成は、図8に示した信号源11及び移動検出部12Bの構成と同じである。上記実施の形態2と同様に、移動検出部12Bは、移動体1Cの内部に備え付けられているが、これに限定されるものではなく、移動体1Cの外部から内部に持ち込まれてもよい。
画像表示システム10Cは、図15に示されるように、移動体1Cの内部空間に設置された複数台の表示装置210〜260と、互いに異なる位置に配設された照度センサ31,32,33と、表示装置210〜260の表示画質を個別に制御する画質制御装置40Cとを備えている。
図15に示した照度センサ31,32,33の構成は、図1または図8に示した照度センサ31,32,33の構成と同じである。照度センサ31,32,33は、照度値を示す検出出力L1,L2,L3を画質制御装置40Cに供給する。実施の形態1の場合と同様に、照度センサ31,32,33と画質制御装置40Cとの間を有線または無線で接続することができる。
画質制御装置40Cは、信号源11から供給された原画像信号Soと、位置検出情報PDと、照度センサ31〜33の検出出力L1,L2,L3とを入力とし、表示装置210〜260にそれぞれ供給すべき画像信号S1〜S6を生成するとともに、表示装置210〜260の表示画質(表示輝度、コントラスト、色味、及び/またはシャープネスなど)を個別に制御する制御信号を生成する。
図16は、本実施の形態の画質制御装置40Cの概略構成を示すブロック図である。図16に示されるように、画質制御装置40Cの構成は、上記実施の形態2の照度選択部42Bに代えて照度選択部42Cを有し且つルックアップテーブル47Bに代えてルックアップテーブル47Cを有する点と、情報取得部48を有する点とを除いて、上記実施の形態2の画質制御装置40Bの構成と同じである。
図16の移動解析部41Bは、解析情報PAを照度選択部42Bに供給する。上記実施の形態2と同様に、この解析情報PAは、移動体1Cの現在位置を示す位置情報の他、移動体1Cの位置の時間変化を示す速度情報と、移動体1Cの進行方向の方位を示す方位情報と、現在の年月日及び時間を示す時刻情報とを含む。なお、移動体1Cに搭載された速度計から速度情報を取得することも可能であり、また、移動体1Cに搭載された時計から時刻情報を取得することも可能である。方位情報については、移動体1Cが地磁気センサを搭載している場合には、その地磁気センサの検出出力に基づいて方位情報を得ることもできる。
情報取得部48は、移動解析部41Bから解析情報PAの供給を受けると、この解析情報PAで示される移動体1Cの現在位置を含む地域の地図情報を情報供給部14に要求し、当該現在位置の気象情報をも情報供給部14に要求する。
情報供給部14は、通信機能を有し、情報取得部48からの要求に応じて外部の通信システムから気象情報MD及び地図情報TDを取得し、これら気象情報MD及び地図情報TDを情報取得部48に与える。外部の通信システムとしては、たとえば、交通管制システム、鉄道車両制御システムまたはコンピュータネットワークが挙げられる。
次に、図17を参照しつつ照度選択部42Cについて説明する。図17は、照度選択部42Cによる処理手順を概略的に示すフローチャートである。照度選択部42Cは、上記実施の形態2の照度選択部42Bと同様に、先ず、照度センサ31〜33の検出出力L1〜L3を取得し(ステップS10)、次いで、移動解析部41から解析情報PAを取得する(ステップS11B)。
次いで、照度選択部42Cは、情報取得部48から気象情報MD及び地図情報TDのうちの少なくとも一方を取得する(ステップS11C)。その後、照度選択部42Cは、気象情報MD及び地図情報TDのうちの少なくとも一方と解析情報PAとを用い、不揮発性メモリであるデータ記憶部46に記憶されたルックアップテーブル(LUT)47Cを参照して、表示装置毎に照度センサ31〜33の中から利用すべき照度センサを選択する(ステップS12C)。ルックアップテーブル47Cには、気象情報MD、地図情報TD及び解析情報PAの組み合わせに応じた照度センサ31〜33の利用条件を定めるデータが格納されている。画像表示システム10Cを構築する者は、たとえば、表示装置210〜260及び照度センサ31〜33の設置状況、表示装置210〜260及び照度センサ31〜33の性能、及び、移動体1Cの走行路または航行路の想定状況に応じて、ルックアップテーブル47Cに格納されるデータの内容を適宜定めることができる。
また、照度選択部42Cは、上記実施の形態2の照度選択部42Bと同様に、表示装置毎に選択された照度センサの検出出力に基づいて、表示装置210,220,230,240,250,260にそれぞれ対応する照度推定値Lin(1),Lin(2),Lin(3),Lin(4),Lin(5),Lin(6)を算出する(ステップS13)。
そして、照度選択部42Cは、上記実施の形態2の照度選択部42Bと同様に、表示装置210〜260を指定する制御情報Ctと照度推定値Lin(1)〜Lin(6)とを画質制御部45に出力する(ステップS14)。その後、処理が終了するとの判定(ステップS15のYES)がなされるまで、照度選択部42Cは、上記ステップS10,S11B,S11C,S12C,S13,S14を繰り返し実行する(ステップS15のNO)。
本実施の形態の画質制御部45は、上記実施の形態2の画質制御部45と同様に、画像信号Sbに基づいて6系統の画像信号S1〜S6を生成し、これら画像信号S1〜S6を表示装置210〜260にそれぞれ供給する。表示装置210〜260は、画像信号S1〜S6で表される画像をそれぞれ表示する。また、画質制御部45は、照度推定値Lin(1)〜Lin(6)と画像の特徴量を示すデータFDとに基づいて、表示装置210〜260の表示画質(表示輝度、コントラスト、色味、及び/またはシャープネスなど)をそれぞれ制御する制御信号QC1〜QC6を生成する。表示装置210〜260は、制御信号QC1〜QC6で指定された表示画質となるように表示画像の画質を調整する機能を有している。
以上に説明した画像表示システム10Cにおいては、照度選択部42Cは、解析情報PA(位置情報及び時刻情報を含む。)に加えて、気象情報MD及び地図情報TDの少なくとも一方に基づいて、表示装置毎に利用すべき照度センサを選択することができる。これにより、画質制御部45は、移動体1Cの周辺環境に応じてより細かい表示画質の制御を行うことが可能となる。
たとえば、移動体1Cの現在位置の気象状態が雨天または曇りのとき、照度選択部42Cは、外部から移動体1Cの内部に入射する外光の量が少ないと推定して、表示装置210〜260の全てについて特定の照度センサのみを選択することができる。たとえば、図11に示した構成例では、鉄道車両3Fの現在位置の気象状態が雨天または曇りのとき、照度選択部42Cは、表示装置210〜260の全てに対して照度センサ31のみを選択することができる。
また、地図情報TDに基づいて移動体1Cの現在位置が地下またはトンネル内であると判別することができたときも、照度選択部42Cは、外部から移動体1Cの内部に入射する外光の量が常時一定であると推定し、表示装置210〜260の全てについて特定の照度センサのみを選択することができる。たとえば、図11に示した構成例では、照度選択部42Cは、表示装置210〜260の全てに対して照度センサ31のみを選択することができる。もしくは、この場合に、照度選択部42Cは、照度センサ31〜33のいずれも選択しないことも可能である。
また、照度選択部42Cは、気象情報MD、方位情報及び時刻情報の組み合わせに基づいて太陽光の入射方向とその光量とを推定してもよい。たとえば、移動体1Cの現在位置の気象状態が晴天のときは、太陽光の入射光量は高いものと推定することができるため、照度選択部42Cは、上記実施の形態2の照度選択部42Bと同様に、その太陽から移動体1Cの内部に差し込む太陽光の入射方向を推定し、その推定結果を利用して照度センサを選択することができる。一方、移動体1Cの現在位置の気象状態が雨天または曇りのときは、太陽光の入射光量は低いものと推定することができる。この場合は、その推定結果に応じて、照度選択部42Cは、照度センサ31〜33のいずれかを選択しまたは照度センサ31〜33の全てを非選択することが可能である。
以上、図面を参照して本発明に係る種々の実施の形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な形態を採用することもできる。