JP6107306B2 - 数値制御装置及び駆動制御方法 - Google Patents

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Description

本発明は、ワークを支持するテーブルを交差する2軸方向へ軸毎に設けたモータにより駆動する制御を行う数値制御装置及び駆動制御方法に関する。
工作機械は種々の加工を行う。工作機械は工具を収容して搬送するマガジンから取り出した工具を主軸に装着し、ワークに対して目的の加工を行う。ワークを支持するテーブルは駆動機構によって例えば水平2軸方向への移動が可能である。テーブルを駆動する駆動機構はサーボモータを有する。数値制御装置はサーボモータを駆動制御することによりテーブルを各軸方向に移動させる。
特許文献1は、工作機械の動きを測定する測定器を備え、測定結果に基づいて各軸駆動に係るパラメータを調整する数値制御装置を開示する。数値制御装置は、各軸駆動に係る加速度、位置ループゲイン、フィードフォワードゲイン、加減速フィルタ、コーナ速度の5つのパラメータを個別に調整する。数値制御装置は、機械振動を表す数学モデル上でシミュレーションを行いつつパラメータ調整を実施する。数学モデルは、調整始めに測定器を使って諸定数を同定する。数値制御装置は、加減速フィルタの調整方法に関して、各軸に発生する許容できない振動のうち最も低い周波数を求める。数値制御装置は、周波数の逆数を求めて加減速フィルタのフィルタ時定数とする。
特開2004−188541号公報
しかし、従来の数値制御装置は、加減速フィルタは各軸で発生する振動のうち最も低い周波数の振動を除去するが、それよりも高い周波数の振動が発生する軸では、振動が残ってしまう蓋然性があった。軸毎に加減速フィルタの時定数を異なる値に設定することも考え得る。しかし、時定数によって各軸の加減速性能が異なる値に設定することになり、所定の経路に沿ってテーブルを駆動する場合に、加減速性能による補正を行う必要が生じ、駆動制御が複雑化してしまうという問題点があった。
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、ワークを支持するテーブルを交差する2軸方向へ軸毎に設けたモータにより駆動し、各軸における振動を抑制することができ、更には各軸の駆動制御が簡潔である数値制御装置及び駆動制御方法を提供することにある。
本発明に係る数値制御装置は、ワークを支持するテーブルを交差する2軸方向へ軸毎に設けたモータにより駆動する制御を行う数値制御装置において、前記2軸方向のうち一方の軸方向に発生する振動の周波数の逆数を時定数とする第1低域通過フィルタと、前記2軸方向のうち他方の軸方向に発生する振動の周波数の逆数を時定数とする第2低域通過フィルタとを備え、前記モータ夫々を変速する変速信号を前記第1及び第2低域通過フィルタに通過させて平滑化するようにしてあることを特徴とする。
本発明にあっては、ワークを支持するテーブルを交差する2軸方向へ軸毎に設けたモータにより駆動する制御を行う。第1低域通過フィルタは、2軸方向のうち一方の軸方向に発生する振動の周波数の逆数を時定数とする。第2低域通過フィルタは、2軸方向のうち他方の軸方向に発生する振動の周波数の逆数を時定数とする。モータ夫々を変速する変速信号を第1及び第2低域通過フィルタに通過させて平滑化する。これにより、2軸方向の振動を抑制することができる。また、2軸方向ともに第1及び第2低域通過フィルタで変速信号をフィルタ処理することで駆動制御が簡潔になる。
本発明に係る数値制御装置は、第3低域通過フィルタを更に備え、該第3低域通過フィルタに前記変速信号を通過させるようにしてあることを特徴とする。
本発明にあっては、第3低域通過フィルタを更に備え、第3低域通過フィルタに変速信号を通過させるようにしてあるので、第3低域通過フィルタの時定数によってモータの最大トルクを超えない範囲内に変速信号の加速度を調整できる。
本発明に係る数値制御装置は、前記第1、第2及び第3低域通過フィルタ夫々は時定数が可変であり、ワークの種類に対応する前記第1、第2及び第3低域通過フィルタ夫々の時定数を記憶する記憶部と、前記テーブルに支持するワークの種類に対応する時定数を前記記憶部から読み出す読出手段と、該読出手段が読出した時定数を前記第1、第2及び第3低域通過フィルタに設定する設定手段とを備えることを特徴とする。
本発明にあっては、第1、第2及び第3低域通過フィルタ夫々は時定数が可変である。記憶部は、ワークの種類に対応する第1、第2及び第3低域通過フィルタ夫々の時定数を記憶する。読出手段はテーブルに支持するワークの種類に対応する時定数を記憶部から読み出し、設定手段は読出手段が読出した時定数を第1、第2及び第3低域通過フィルタに設定する。これにより、ワークの重量等に応じて第1、第2及び第3低域通過フィルタの時定数を設定することができ、振動を抑制することができる。
本発明に係る数値制御装置は、前記記憶部はワークの種類毎に該ワークの重量を記憶し、前記テーブルに支持されたワークが前記記憶部に記憶されていない場合、前記記憶部に記憶されているワークの重量の内、前記テーブルに支持されたワーク重量より重く、且つ、最も近い重量のワークの種類に対応する第1、第2及び第3低域通過フィルタと時定数の和が一致するように第1、第2及び第3低域通過フィルタを調整することを特徴とする。
本発明にあっては、記憶部はワークの種類毎に該ワークの重量を記憶する。テーブルに支持されたワークが記憶部に記憶されていない場合、支持されたワーク重量より重く、且つ、最も近い重量の記憶部に記憶されているワークの種類に対応する第1、第2及び第3低域通過フィルタと時定数の和が一致するように第1、第2及び第3低域通過フィルタを調整する。これにより、モータ加速時の駆動制御が記憶部に記憶されていないワークに対しても対応できる。
本発明に係る数値制御装置は、前記2軸方向夫々に発生する振動の波形を測定する測定手段を備えることを特徴とする。
本発明にあっては、測定手段が2軸方向夫々に発生する振動の波形を測定するので、測定した振動の波形から振動の周波数が求めることができる。
本発明に係る数値制御装置は、前記測定手段が測定した波形に基づいて各軸方向の振動周波数を算出する算出手段を備えることを特徴とする。
本発明にあっては、算出手段は測定手段が測定した波形に基づいて各軸方向の振動周波数を算出するので、算出した振動周波数から時定数を求めることができる。
本発明に係る駆動制御方法は、ワークを支持するテーブルを交差する2軸方向へ軸毎に設けたモータにより駆動する制御を行う駆動制御方法において、前記2軸方向のうち一方の軸方向に発生する振動の周波数の逆数を第1低域通過フィルタの時定数に設定する第1時定数設定ステップと、前記2軸方向のうち他方の軸方向に発生する振動の周波数の逆数を第2低域通過フィルタの時定数に設定する第2時定数設定ステップと、前記第1及び第2時定数設定ステップによって夫々時定数を設定した前記第1及び第2低域通過フィルタに前記モータ夫々を変速する変速信号を通過させて平滑化する平滑化処理ステップとを備えることを特徴とする。
本発明にあっては、ワークを支持するテーブルを交差する2軸方向へ軸毎に設けたモータにより駆動する制御を行う。第1時定数設定ステップは、2軸方向のうち一方の軸方向に発生する振動の周波数の逆数を第1低域通過フィルタの時定数に設定する。第2時定数設定ステップは、2軸方向のうち他方の軸方向に発生する振動の周波数の逆数を第2低域通過フィルタの時定数に設定する。平滑化処理ステップは、第1及び第2時定数設定ステップによって夫々時定数を設定した第1及び第2低域通過フィルタにモータ夫々を変速する変速信号を通過させて平滑化する。これにより、2軸方向の振動を抑制することができる。また、2軸方向ともに第1及び第2低域通過フィルタで変速信号をフィルタ処理することで駆動制御が簡潔になる。
本発明によれば、ワークを支持するテーブルを交差する2軸方向へ軸毎に設けたモータにより駆動する制御を行う。第1低域通過フィルタは、2軸方向のうち一方の軸方向に発生する振動の周波数の逆数を時定数とする。第2低域通過フィルタは、2軸方向のうち他方の軸方向に発生する振動の周波数の逆数を時定数とする。モータ夫々を変速する変速信号を第1及び第2低域通過フィルタに通過させて平滑化する。このため、2軸方向の振動を抑制することができる。
工作機械の外観を示す斜視図。 工作機械の主軸部分の構成を示す正面図。 工作機械の電気的構成を示すブロック図。 駆動制御系の機能構成を示す機能ブロック図。 フィルタの時定数を説明するための模式図。 駆動試験におけるテーブル移動経路を示すグラフ。 P2点通過時の振動を示すグラフ。 P2点通過時のトルクの時間変遷を示すグラフ。 P2点通過時の振動を示すグラフ。 P2点通過時のトルクの時間変遷を示すグラフ。 ワーク情報を示す図表。 工作機械の調整及び加工フェーズを説明するための模式図。 CPUによるフィルタ設定処理の手順の一例を示すフローチャート。
本発明の実施形態の数値制御装置を図面に基づき説明する。以下の説明では図中に矢印で示す上下、左右、前後を使用する。工作機械1の左右方向、前後方向、上下方向は夫々、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向である。作業者は前方で工作機械1を操作し、ワークの着脱を行う。図1及び図2に基づいて工作機械1の構成を説明する。
工作機械1は基台11、コラム12、主軸ヘッド13、工具交換装置14、テーブル15、制御ユニット16等を備える。基台11は床面上に固定する。コラム12は基台11の上部後方寄りに立設する。主軸ヘッド13はコラム12の前面に沿ってZ軸方向(上下方向)に昇降可能である。主軸ヘッド13の主軸13aは工具ホルダ17を装着する。工具ホルダ17は工具17bを保持する。主軸13aは主軸駆動部61(図3参照)の駆動により高速回転する。
工具交換装置14は工具マガジン14a及び工具交換アーム14bを備える。工具マガジン14aは工具17bを保持する工具ホルダ17を複数収納する。工具マガジン14aは、例えば1対のスプロケットに無端状のチェーンを掛け渡し、チェーンに沿ってポッドを設け、該ポッドに工具ホルダ17を保持して搬送する搬送装置(図示略)を有する。搬送装置はマガジン駆動部62(図3参照)によって駆動する。工具交換アーム14bは、主軸13aに装着した工具ホルダ17、及び工具マガジン14aに収納した他の工具ホルダ17を把持して搬送し、工具交換を行う。工具交換アーム14bはアーム駆動モータ(図示略)によって駆動する。
主軸ヘッド13はコラム12の上部に設けたZ軸モータ52の駆動によって上下方向に移動する。主軸13aは主軸ヘッド13の上下移動に伴って上方の工具交換位置と下方の加工位置との間を移動する。工具交換アーム14bは、主軸13aが上方の工具交換位置にあるとき、主軸13aに装着した工具ホルダ17を工具マガジン14aに収納した他の工具ホルダ17に交換する。主軸13aは下方の加工位置へ移動し、テーブル15で支持するワークを加工する。
テーブル15は基台11の上部前方寄りに配置する。テーブル15は主軸ヘッド13の下方に位置する。テーブル15はクランプ治具等によってワークを着脱可能に固定することができる。テーブル15はX軸送り機構18によってX軸方向(左右方向)へ移動可能であり、Y軸送り機構19によってY軸方向(前後方向)へ移動可能である。X軸送り機構18はX軸モータ32(図3参照)によって駆動し、Y軸送り機構19はY軸モータ42(図3参照)によって駆動する。X軸送り機構18及びY軸送り機構19は、例えばリニアガイドとボールネジとで構成する直動機構である。
制御ユニット16はコラム12の背面側に配置する。制御ユニット16は箱状をなし、内部に工作機械1の動作を制御する数値制御装置2(以下、NC装置2と表記する。NC:Numeric Control)等を収容する。
図3を参照し、工作機械1の電気的構成を説明する。NC装置2はCPU21(読出手段、設定手段)、ROM22、RAM23、EEPROM24(記憶部)、LANインタフェース25(以下、LAN I/F25と表記する。)、入出力部26及び操作部27を備え、これらの構成をバス接続する。CPU21はROM22に記憶された制御プログラムをRAM23に読み出して実行することによって、ワークの加工処理及び工具交換処理等を行う。ROM22はマスクROM又はEEPROM等の不揮発性のメモリ素子であり、CPU21にて実行される制御プログラム及び処理に必要な各種のデータ等を予め記憶する。RAM23はSRAM又はDRAM等のメモリ素子であり、ROM22から読み出した制御プログラム及び処理過程で発生した種々のデータ等を一時的に記憶する。EEPROM24はデータ書き換えが可能な不揮発性のメモリ素子であり、処理に必要な各種のデータを記憶する。EEPROM24は、ワークに対する加工手順及び加工条件等が記載された加工プログラム、工具に関する工具情報、ワークに関するワーク情報等を記憶する。EEPROM24に代えて、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリ素子を使用してもよい。
LAN I/F25は外部入力装置60との間で通信を行う。外部入力装置60は、例えばパーソナルコンピュータであり、加工プログラムの作成及び保存が可能な装置である。外部入力装置60は、作成した加工プログラムをNC装置2へ出力する。NC装置2は外部入力装置60からの加工プログラムをLAN I/F25により取得し、EEPROM24に記憶する。
工作機械1は、X軸アンプ31、Y軸アンプ41、Z軸アンプ51、主軸駆動部61及びマガジン駆動部62を備える。各アンプ及び各駆動部はNC装置2の入出力部26に接続する。X軸アンプ31、Y軸アンプ41及びZ軸アンプ51は夫々X軸モータ32、Y軸モータ42及びZ軸モータ52に電流を流し、各モータを動作させる。X軸モータ32及びY軸モータ42はテーブル15をX軸方向及びY軸方向へ移動駆動する。NC装置2のCPU21は入出力部26を介して各モータを動作すべく指令信号を出力する。Z軸モータ52は主軸ヘッド13をZ軸方向へ昇降駆動する。主軸駆動部61はアンプ及びモータを有し、主軸13aを回転駆動する。マガジン駆動部62はアンプ及びモータを有し、工具マガジン14aに設けた搬送装置を駆動する。NC装置2のCPU21は入出力部26を介して主軸駆動部61及びマガジン駆動部62を動作すべく指令信号を出力する。
X軸エンコーダ33、Y軸エンコーダ43及びZ軸エンコーダ53は夫々X軸モータ32、Y軸モータ42及びZ軸モータ52の回転角度を検出する角度検出器である。X軸エンコーダ33、Y軸エンコーダ43及びZ軸エンコーダ53は夫々、検出した回転角度をX軸アンプ31、Y軸アンプ41及びZ軸アンプ51へ入力する。X軸エンコーダ33、Y軸エンコーダ43及びZ軸エンコーダ53は検出した回転角度を入出力部26へ入力する。入出力部26はX軸エンコーダ33、Y軸エンコーダ43及びZ軸エンコーダ53が入力した回転角度をCPU21に与える。X軸アンプ31、Y軸アンプ41及びZ軸アンプ51は夫々、モータの駆動電流値を入出力部26へ入力する。入出力部26はX軸アンプ31、Y軸アンプ41及びZ軸アンプ51が入力した駆動電流値をCPU21に与える。
操作部27は、表示パネル、データ入力キー、制御キー等(図示略)を備え、加工プログラムの手入力、及び工作機械1の手動操作を受け付ける。表示パネルは、操作に係る画面を表示する。作業者はデータ入力キーを操作することで、表示パネルに表示される情報を確認しながらプログラムの作成が行える。また、表示パネルにワーク情報を表示し、作業者が表示を確認しながら、加工制御に必要なパラメータ(例えば、後述するフィルタ時定数など)の選択、及び手入力が行える。制御キーは、例えば主軸ヘッド13の上昇、下降、マガジン駆動などの単発動作を受け付け、作業者による工作機械1の手動操作を可能とする。
図4を参照し、各モータの駆動制御系を説明する。NC装置2のCPU21は、EEPROM24に記憶された加工プログラムに基づいて、ワークを位置決めするためにテーブル15をX軸及びY軸方向に移動させる指令信号をX軸アンプ31及びY軸アンプ41へ出力する。CPU21は、X軸モータ32及びY軸モータ42夫々の回転速度の目標速度Vx及びVyを加工プログラムに応じて決定する。CPU21は、速度0(ゼロ)から目標速度をVx及びVyとするステップ状の変速信号である速度指令信号(図5A参照)夫々を3段構成の低域通過フィルタ28a〜28c及び低域通過フィルタ29a〜29cを通過させることで、目標速度に到達するまでの加速を行うための傾きを持った速度指令信号(図5B参照)に変換する。低域通過フィルタ28a(第1低域通過フィルタ)、低域通過フィルタ28b(第2低域通過フィルタ)及び低域通過フィルタ28c(第3低域通過フィルタ)は夫々時定数T1、T2及びT3の移動平均フィルタである。低域通過フィルタ29a(第1低域通過フィルタ)、低域通過フィルタ29b(第2低域通過フィルタ)及び低域通過フィルタ29c(第3低域通過フィルタ)は夫々低域通過フィルタ28a、28b及び28cと同じフィルタである。
図5に示すように、フィルタ通過後の速度指令信号における目標速度に達するまでの加速時間Tsは、各フィルタの時定数T1、T2及びT3の和となる。加速時間Tsが短いと加速度が大きくなって、X軸モータ31及びY軸モータ32の最大トルクを超えてしまい、速度指令信号に各モータが追従できなくなる。一方、加速時間Tsが長いとワークを位置決めするために時間を要し、加工効率が落ちる。したがって、加速時間Tsは、ワーク重量に依存して、最大トルクを超えない値に実験的に調整される。
NC装置2のCPU21は、フィルタ通過後のX軸及びY軸の速度指令信号を夫々位置変換部28d及び29dにより位置指令信号に変換する。NC装置2のCPU21は、変換後のX軸及びY軸の位置指令信号を夫々X軸アンプ31及びY軸アンプ41へ入力する。X軸アンプ31は位置制御部31a、速度制御部31b及び電流制御部31cを有する。位置制御部31aはCPU21からの位置指令信号にX軸エンコーダ33が出力する回転角度をフィードバックして追従するように制御する。速度制御部31bは位置指令信号の微分によって得られる速度指令信号に追従するようにモータ回転速度を加減速する制御を行う。電流制御部31cはモータ回転速度を加減速すべく電流値を増減させる制御を行う。電流制御部31cがX軸モータ32を駆動する駆動電流値によってX軸モータ32の出力トルクが決まる。Y軸アンプ41はX軸アンプ31と同様に構成しており、簡潔化のため説明を省略する。
低域通過フィルタ28a〜28c及び低域通過フィルタ29a〜29cの時定数は可変である。各時定数は時定数設定部72によりワークの種類に応じて設定する。時定数設定部72が設定する時定数は時定数解析部71(測定手段、算出手段)によってX軸及びY軸の振動を解析することにより算出する。テーブル15をX軸及びY軸方向へ駆動したとき、加速後に機械の振動によって速度が波打ち、経路が乱れる。図6〜図8を参照し、駆動によって速度が波打つような場合について説明する。図6に示すようにXY平面内でP0から出発し、P1、P2、P3を通ってP0に戻る菱形の経路でテーブル15を動かす(実線矢印)。例えば、P2では、Y軸方向の速度は一定のまま通過するが、X軸方向の速度は負から正に反転し、機械振動が発生する。
図7を参照し、P2における座標系を45°時計回りに回転させたグラフで見ると、実際のテーブル15の移動経路が大きく波打って振動していることがわかる。図8に示すようにP2を通過する際の機械振動のためにX軸モータ32の出力トルクが振動してしまう。時定数解析部71は、テーブル15の駆動によって生じるX軸及びY軸の振動の周波数を解析により求め、周波数の逆数をフィルタの時定数とする。時定数解析部71はX軸の振動周波数の逆数を低域通過フィルタ28a及び低域通過フィルタ29aの時定数T1とする。時定数解析部71はY軸の振動周波数の逆数を低域通過フィルタ28b及び低域通過フィルタ29bの時定数T2とする。
時定数解析部71は算出した時定数T1及びT2を時定数設定部72へ入力する。時定数設定部72は、加速時間Tsを所定値として有しており、TsからT1及びT2を減じてT3を算出する。時定数設定部72は、時定数T1、T2及びT3を各低域通過フィルタに設定する。図9及び図10を参照し、X軸及びY軸の振動周波数に基づく時定数を設定した低域通過フィルタによって駆動した場合について説明する。図9に示すようにP2における座標系を45°時計回りに回転させたグラフで見ると、実際のテーブル15の移動経路の振動が抑制できていることがわかる。図10に示すようにP2を通過する際のX軸モータ32の出力トルクに生じる振動が抑制できていることがわかる。
テーブル15の機械振動の周波数は、テーブル15が支持するワークの重量によって変化する。このため、ワークの種類に応じて時定数T1、T2、T3を設定するようにする。図11を参照しワーク情報について説明する。ワーク情報は、ワークの種類を示すワーク型番に対応するワークの重量、時定数T1、T2、T3の値を有する。EEPROM24はワーク情報を記憶する。
図12を参照し、工作機械1の調整及び加工フェーズについて説明する。工作機械調整フェーズでは、A.駆動試験モードによって、ワーク型番対応で低域通過フィルタ28a〜28c及び低域通過フィルタ29a〜29cに与える時定数T1、T2、T3を解析する。駆動試験モードでは、ワークを型番毎にテーブル15に固定して、テーブル15をX軸及びY軸方向へ駆動する初期駆動を行う。テーブル15の移動経路は例えば図6に示す経路とする。初期駆動における時定数は、時定数T3の値を加速時間Tsとし、時定数T1、T2を0(ゼロ)としてもよい。また、時定数T1及びT2は、設計上解析した値(例えば振動周波数40Hzの逆数である0.025秒)に設定し、時定数T3を加速時間TsからT1及びT2を減じた値に設定してもよい。
NC装置2のCPU21は、初期駆動によってX軸エンコーダ33及びY軸エンコーダ43から各モータの回転角度の時間変遷データ(図7参照)を、X軸アンプ31及びY軸アンプ41夫々から各モータの駆動電流値の時間変遷データ(図8参照)を取得する。時定数解析部71は、振動周波数の解析をするために、回転角度の時間変遷データ、及び駆動電流値の時間変遷データのいずれを用いてもよい。時定数解析部71は、時間変遷データ、及び時間変遷データをスペクトル解析した結果を操作部27等に設けた表示パネルに表示する。作業者は、表示パネルに表示されたスペクトル解析結果に基づいて、スペクトルパワー密度がピークとなる複数の周波数の中から最も低い周波数をX軸及びY軸毎に選んで、周波数の値を操作部27等に設けたデータ入力キーにより入力する。時定数解析部71は作業者が入力した周波数の逆数により時定数T1及びT2を算出し、時定数設定部72へ出力する。時定数設定部72は加速時間Tsから時定数T1及びT2を減じて時定数T3を設定する。
初期駆動によって設定した時定数T1、T2、T3を用いて確認駆動を行う。初期駆動と同様に、時定数解析部71は、確認駆動で取得した時間変遷データ、及び時間変遷データをスペクトル解析した結果を操作部27等に設けた表示パネルに表示する。作業者は時間変遷データ等に基づいて振動が抑制できているかを確認し、抑制できていれば、時定数を記憶するべく操作部27を操作するようにする。CPU21は、作業者の操作に基づいて時定数設定部72で設定した時定数T1、T2、T3をワーク型番に対応してEEPROM24上のワーク情報に記憶させる。駆動試験モードでは、加工するワークのワーク型番毎に行いワーク情報として蓄積する。
加工フェーズでは、B1.時定数手動設定モード、B2.時定数自動設定モード等を設けて、ワーク交換によってワーク重量が変わる場合に低域通過フィルタの時定数T1、T2、T3を設定変更する。時定数手動設定モードでは、CPU21はワーク交換時に操作部27等の表示パネルにEEPROM24に記憶しているワーク情報を表示し、作業者が表示を見て、ワーク交換後のワーク重量に対応する時定数T1、T2、T3を入力する。時定数自動設定モードでは、CPU21はワーク交換後のワーク重量に対応する時定数T1、T2、T3をEEPROM24に記憶しているワーク情報から検索によって取得し、時定数設定部72に与えて低域通過フィルタの時定数T1、T2、T3を設定する。CPU21は、ワーク交換工程でワークの重量を取得してもよいし、作業者の操作によって取得してもよい。またCPU21は、テーブル15に固定したワークの重量測定値を取得し、EEPROM24に記憶しているワーク情報中のワーク重量と比較して最も近い重量を有するワーク型番に対応する時定数T1、T2、T3を時定数設定部72に与えるようにしてもよい。
また、加工フェーズでは、C.時定数取得設定モードを設け、EEPROM24上のワーク情報に一致したワーク重量がないワークに交換する場合に対応するようにしてもよい。C.時定数取得設定モードでは、CPU21は、テーブル15に固定したワークの重量測定値を取得し、EEPROM24上に記憶されていないワークの重量に交換された場合、固定されたワークの重量より重く、且つ、最も近い重量を有するワーク型番に対応する時定数T1、T2、T3の和をTsとする。以降は、A.駆動試験モードと同様の手法により時定数T1、T2、T3を取得すればよい。CPU21は取得した時定数をEEPROM24上のワーク情報に記憶させる。時定数手動設定モード、時定数自動設定モード及び時定数取得設定モードで低域通過フィルタの時定数T1、T2、T3設定の後、CPU21は、D.ワーク加工モードに移行して加工を行う。
図13を参照し、NC装置2のCPU21によるフィルタ設定処理の手順の一例を説明する。NC装置2のCPU21は、図12に示す加工フェーズにおいて、EEPROM24からワーク情報を読込む(ステップS1)。CPU21は時定数手動設定モードであるか否かを判定する(ステップS2)。時定数手動設定モードであると判定した場合(S2:YES)、CPU21はワーク情報を操作部27等の表示パネルに表示し(ステップS3)、作業者の操作による時定数の手動設定を受付けて低域通過フィルタ28a〜28c及び低域通過フィルタ29a〜29cに設定し(ステップS4)、処理を終了する。
時定数手動設定モードではないと判定した場合(S2:NO)、時定数を自動設定すべく、CPU21はテーブル15に固定したワークの重量を取得し(ステップS5)ワーク情報中のワーク重量と一致するワーク型番があるか否かを判定する(ステップS6)。ワーク重量に一致するワーク型番があると判定した場合(S6:YES)、CPU21はワーク型番に対応する時定数を低域通過フィルタ28a〜28c及び低域通過フィルタ29a〜29cに設定し(ステップS7)、処理を終了する。ワーク重量に対応するワーク型番がないと判定した場合(S6:NO)、CPU21は取得したワークの重量より重く、且つ、最も近い重量を有するワーク型番に対応する時定数T1、T2、T3の和をTsとする(ステップS8)。駆動試験モードに移行して時定数を取得する(ステップS9)。CPU21は駆動試験モードによって時定数を取得した後、取得した時定数を低域通過フィルタ28a〜28c及び低域通過フィルタ29a〜29cに設定し(ステップS7)、処理を終了する。
以上のとおり本実施形態によれば、ワークを支持するテーブル15を交差するX軸方向及びY軸方向へ軸毎に設けたX軸モータ32及びY軸モータ42により駆動する制御を行う。低域通過フィルタ28a及び29aは、2軸方向のうち例えばX軸方向に発生する振動の周波数の逆数を時定数T1とする。低域通過フィルタ28b及び29bは、2軸方向のうち例えばY軸方向に発生する振動の周波数の逆数を時定数T2とする。X軸モータ32を変速する変速信号である速度指令信号Vxを低域通過フィルタ28a及び28bに通過させ、Y軸モータ42を変速する変速信号である速度指令信号Vyを低域通過フィルタ29a及び29bに通過させて平滑化する。これにより、X軸方向及びY軸方向の振動を抑制することができる。また、X軸方向及びY軸方向ともに同じ時定数を有する2つのフィルタによって平滑化処理することで駆動制御が簡潔になる。
また本実施形態によれば、低域通過フィルタ28c及び29cを更に備え、速度指令信号Vx及びVyを夫々低域通過フィルタ28c及び29cに通過させるようにしてあるので、低域通過フィルタ28c及び29cの時定数T3によってモータの最大トルクを超えない範囲内に速度指令信号Vx及びVyの加速度を調整できる。
また本実施形態によれば、低域通過フィルタ28a〜28c及び低域通過フィルタ29a〜29cは夫々時定数が可変である。EEPROM24は、ワークの種類に対応する各低域通過フィルタの時定数T1、T2、T3をワーク情報として記憶する。CPU21はテーブル15に支持するワークの種類に対応する時定数T1、T2、T3をEEPROM24から読み出し、読み出した時定数を低域通過フィルタ28a〜28c及び低域通過フィルタ29a〜29cに設定する。これにより、ワークの種類に応じて各低域通過フィルタの時定数T1、T2、T3を設定することができ、振動を抑制することができる。
また本実施形態によれば、EEPROM24に記憶されていないワーク重量に交換する場合、交換されたワークの重量より重く、且つ、最も近い重量を有するワーク型番に対応する時定数T1、T2、T3と時定数の和が一致するように時定数T1、T2、T3を調整する。これにより、モータ加速時の駆動制御が記憶されていないワークにも対応できる。
また本実施形態によれば、時定数解析部71がX軸方向及びY軸方向夫々に発生する振動の波形を測定するので、測定した振動の波形から振動の周波数が求めることができる。
本発明にあっては、時定数解析部71が測定した波形に基づいて各軸方向の振動周波数をスペクトル解析によりスペクトルパワー密度のピーク値として算出するので、算出した振動周波数の逆数を算出することで時定数を求めることができる。
15 テーブル
2 NC装置(数値制御装置)
21 CPU(読出手段、設定手段)
24 EEPROM(記憶部)
28a、29a 低域通過フィルタ(第1低域通過フィルタ)
28b、29b 低域通過フィルタ(第2低域通過フィルタ)
28c、29c 低域通過フィルタ(第3低域通過フィルタ)
32 X軸モータ(モータ)
42 Y軸モータ(モータ)
71 時定数解析部(測定手段、算出手段)

Claims (7)

  1. ワークを支持するテーブルを交差する2軸方向へ軸毎に設けたモータにより駆動する制御を行う数値制御装置において、
    前記2軸方向のうち一方の軸方向に発生する振動の周波数の逆数を時定数とする第1低域通過フィルタと、
    前記2軸方向のうち他方の軸方向に発生する振動の周波数の逆数を時定数とする第2低域通過フィルタと
    を備え、
    前記モータ夫々を変速する変速信号を前記第1及び第2低域通過フィルタに通過させて平滑化するようにしてあることを特徴とする数値制御装置。
  2. 第3低域通過フィルタを更に備え、
    該第3低域通過フィルタに前記変速信号を通過させるようにしてあることを特徴とする請求項1に記載の数値制御装置。
  3. 前記第1、第2及び第3低域通過フィルタ夫々は時定数が可変であり、
    ワークの種類に対応する前記第1、第2及び第3低域通過フィルタ夫々の時定数を記憶する記憶部と、
    前記テーブルに支持するワークの種類に対応する時定数を前記記憶部から読み出す読出手段と、
    該読出手段が読出した時定数を前記第1、第2及び第3低域通過フィルタに設定する設定手段と
    を備えることを特徴とする請求項2に記載の数値制御装置。
  4. 前記記憶部はワークの種類毎に該ワークの重量を記憶し、
    前記テーブルに支持されたワークが前記記憶部に記憶されていない場合、前記記憶部に記憶されているワークの重量の内、前記テーブルに支持されたワーク重量より重く、且つ、最も近い重量のワークの種類に対応する第1、第2及び第3低域通過フィルタと時定数の和が一致するように第1、第2及び第3低域通過フィルタを調整することを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の数値制御装置。
  5. 前記2軸方向夫々に発生する振動の波形を測定する測定手段を備えることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1つに記載の数値制御装置。
  6. 前記測定手段が測定した波形に基づいて各軸方向の振動周波数を算出する算出手段を備えることを特徴とする請求項5に記載の数値制御装置。
  7. ワークを支持するテーブルを交差する2軸方向へ軸毎に設けたモータにより駆動する制御を行う駆動制御方法において、
    前記2軸方向のうち一方の軸方向に発生する振動の周波数の逆数を第1低域通過フィルタの時定数に設定する第1時定数設定ステップと、
    前記2軸方向のうち他方の軸方向に発生する振動の周波数の逆数を第2低域通過フィルタの時定数に設定する第2時定数設定ステップと、
    前記第1及び第2時定数設定ステップによって夫々時定数を設定した前記第1及び第2低域通過フィルタに前記モータ夫々を変速する変速信号を通過させて平滑化する平滑化処理ステップと
    を備えることを特徴とする駆動制御方法。
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