JP2020140504A - 数値制御装置と制御方法 - Google Patents

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弦 寺田
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Teruhisa Kojima
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裕昭 野村
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Ryuta Sato
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Taisuke Hokazono
泰介 外薗
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Abstract

【課題】加工中の周波数特性を精度良く検出できる数値制御装置と制御方法を提供する。【解決手段】数値制御装置のCPUは加振タイミングを判断する(S11〜S13)。CPUは加振タイミングと判断した時、工作台をY軸方向に移動するY軸モータに対し、工作台をY軸方向に加振する為の加振トルクを出力する(S14、S15)。CPUは加工中に工作台に生じるトルク由来の振動を測定し(S16)、測定した振動と加振トルクに基づき、加工中の周波数特性を解析する(S17)。CPUは周波数特性の解析結果の情報である解析情報を操作パネルの表示部に出力する(S18)。作業者は出力した解析情報から加工中の周波数特性を得ることができるので、工作機械による被削材の加工において、例えばびびらない加工条件等、最適な加工条件を算出できる。【選択図】図7

Description

本発明は、数値制御装置と制御方法に関する。
工作機械停止中に工具、治具、若しくは被削材をハンマで加振し、工作機械の周波数特性を得る方法は周知である。工作機械の周波数特性は、加工中のびびり振動を抑制する加工条件の決定に有益である。加工中の周波数特性は、工作機械停止中の周波数特性と異なり、工具と被削材との接触により変化する。被削材加工中にハンマで加振するのは困難なので、上記方法は、加工中の周波数特性を得ることができない。特許文献1の動特性算出装置は、断続的な切削加工で回転工具が加振した場合、振動状態の回転工具の変位量を検出すると共に、回転工具の切削抵抗を算出し、回転工具の変位量と切削抵抗に基づき、切削加工中の回転工具の動特性を算出する。
特開2013−132706号公報
特許文献1に記載の動特性算出装置は、回転工具には加振せず、断続的な切削加工による回転工具の変位量を検出するが、切削による回転工具に対する加振力は極めて小さく、検出は困難である。動特性算出装置は高速度カメラで回転工具の変位量を検出するが、加工中は切粉や切削油の影響で精度よく検出するのは困難である。
本発明の目的は、加工中の周波数特性を精度良く検出できる数値制御装置と制御方法を提供することである。
請求項1の数値制御装置は、被削材を固定する工作台、又は工具を装着する主軸を送り軸によって送り軸方向に移動し、前記被削材に前記工具を接触することにより、前記被削材の加工を行う工作機械の動作を制御する数値制御装置において、加振タイミングを判断する加振タイミング判断部と、前記加振タイミング判断部の判断に基づく前記加振タイミングに、前記工作台又は前記主軸を前記送り軸方向に移動するモータに対し、前記工作台又は前記主軸を前記送り軸方向に加振する為のトルクを出力するトルク出力部と、前記トルク出力部が前記トルクを出力した時、加工中に前記工作台又は前記主軸に生じる前記トルク由来の振動を測定する振動測定部と、前記振動測定部が測定した前記振動と前記トルクに基づき、加工中の周波数特性を解析する解析部と、前記解析部の解析結果の情報である解析情報を出力する情報出力部とを備えたことを特徴とする。数値制御装置は加振タイミングを判断する。数値制御装置は判断に基づく加振タイミングに、送り軸方向に移動するモータに対してトルクを出力することで、送り軸方向に加振する。数値制御装置は工作台又は主軸に生じるトルク由来の振動を測定する。数値制御装置は測定した振動とモータに出力したトルクに基づき周波数特性を解析し、その解析情報を出力する。作業者は出力した解析情報から加工中の周波数特性を得ることができるので、びびり振動を抑制できる加工条件等、最適な加工条件を求めることができる。
請求項2の数値制御装置の前記トルク出力部は、トルク波形を設定する設定部を備え、前記設定部が設定した前記波形に基づき前記トルクを出力するとよい。故に数値制御装置は、工作機械に発生する振動の性質に応じて適切なトルク波形を設定でき、該設定した波形に基づきトルクを生成できる。
請求項3の数値制御装置の前記トルクはインパルス状の前記トルク波形を有し、前記設定部は、前記トルク波形を形成する最大出力値と出力時間を設定し、前記トルク出力部は、前記設定部が設定した前記最大出力値、前記出力時間に基づき前記トルクを出力するとよい。故に数値制御装置はインパルス状のトルク波形を形成する最大出力値と出力時間を設定できる。
請求項4の数値制御装置の前記加振タイミング判断部は、前記工作機械が前記被削材を加工中である時、前記主軸が所定回転数で回転している時、前記主軸が所定角度である時、前記送り軸が所定位置である時、のうち少なくとも一つの条件又は複数の特定の条件の組合せに該当する時、前記加振タイミングであると判断するとよい。故に数値制御装置は、送り軸方向に移動するモータに対し、所定のタイミングで、工作台又は主軸を送り軸方向に精度よく加振できる。
請求項5の数値制御装置の前記所定角度は、前記被削材の加工中において、前記主軸と共に回転する前記工具の刃の逃げ面が前記送り軸方向に向いた角度であるとよい。故に数値制御装置は送り軸方向に精度よく加振できるので、加工中の送り軸方向における周波数特性を解析できる。
請求項6の数値制御装置の前記振動測定部は加速度ピックアップで前記振動を測定するとよい。故に数値制御装置は、加速度ピックアップで工作台又は主軸に生じる振動を精度よく測定できるので、周波数特性を簡単に測定できる。例えば加速度ピックアップを工作機械に取り付けることで、インパルスハンマ等の外付けの装置を用いずに周波数特性を解析できる。
請求項7の制御方法は、被削材を固定する工作台、又は工具を装着する主軸を送り軸によって送り軸方向に移動し、前記被削材に前記工具を接触することにより、前記被削材の加工を行う工作機械の動作を制御する数値制御装置の制御方法において、加振タイミングを判断する加振タイミング判断ステップと、前記加振タイミング判断ステップでの判断に基づく前記加振タイミングに、前記工作台又は前記主軸を前記送り軸方向に移動するモータに対し、前記工作台又は前記主軸を前記送り軸方向に加振する為のトルクを出力するトルク出力ステップと、前記トルク出力ステップで前記トルクを出力した時、加工中に前記工作台又は前記主軸に生じる前記トルク由来の振動を測定する振動測定ステップと、前記振動測定ステップで測定した前記振動と前記トルクに基づき、加工中の周波数特性を解析する解析ステップと、前記解析ステップでの解析結果の情報である解析情報を出力する情報出力ステップとを備えたことを特徴とする。数値制御装置は上記ステップを実行することで、請求項1に記載の効果を得ることができる。
工作機械1の斜視図。 数値制御装置30と工作機械1の電気的構成を示すブロック図。 駆動回路54Aのサーボ制御系を示す図。 加振トルク指令のトルク波形を示す図。 被削材3に工具4で穴空け加工を行う時の図。 被削材3に刃400が切り込んだ時の図。 周波数特性解析処理の流れ図。 加工開始から4.7秒後にY軸方向に加振した時のX、Y、Z軸方向の切削力を示した図表。 加工開始から4.7秒後にY軸方向に加振した時の工作台13のY軸方向の加速度の時間変化を示す図表。 加工以外の時の周波数特性(1)と加工中の時の周波数特性(2)を比較した図表。
本発明の実施形態を説明する。以下説明は、図中に矢印で示す左右、前後、上下を使用する。工作機械1の左右方向、前後方向、上下方向は夫々工作機械1のX軸方向、Y軸方向、Z軸方向である。図1に示す工作機械1は主軸9に装着した工具4を回転し、工作台13上面に保持した被削材3に切削加工を施す機械である。数値制御装置30(図2参照)は工作機械1の動作を制御する。
図1を参照し工作機械1の構造を説明する。工作機械1は、基台2、コラム5、主軸ヘッド7、主軸9、工作台装置10、工具交換装置20、制御箱6、操作パネル15(図2参照)等を備える。基台2は金属製の略直方体状の土台である。コラム5は基台2上部後方に立設する。主軸ヘッド7はコラム5前面に沿ってZ軸方向に移動可能に設ける。主軸ヘッド7は内部に主軸9を回転可能に支持する。主軸9は主軸ヘッド7下部に装着穴(図示略)を有する。主軸9は該装着穴に工具4を装着し、主軸モータ52(図2参照)の駆動で回転する。主軸モータ52は主軸ヘッド7に設ける。主軸ヘッド7はコラム5前面に設けたZ軸移動機構(図示略)でZ軸方向に移動する。数値制御装置30はZ軸モータ51(図2参照)の駆動を制御することで、主軸ヘッド7をZ軸方向に移動制御する。
工作台装置10は、Y軸移動機構(図示略)、Y軸工作台12、X軸移動機構(図示略)、工作台13等を備える。Y軸移動機構は基台2上面前側に設け、一対のY軸レール、Y軸ボール螺子、Y軸モータ54(図2参照)等を備える。一対のY軸レールとY軸ボール螺子はY軸方向に延びる。一対のY軸レールは上面にY軸工作台12をY軸方向に案内する。Y軸工作台12は略直方体状に形成し、底部外面にナット(図示略)を備える。該ナットはY軸ボール螺子に螺合する。Y軸モータ54がY軸ボール螺子を回転すると、Y軸工作台12はナットと共に一対のY軸レールに沿って移動する。故にY軸移動機構はY軸工作台12をY軸方向に移動可能に支持する。
X軸移動機構はY軸工作台12上面に設け、一対のX軸レール(図示略)、X軸ボール螺子(図示略)、X軸モータ53(図2参照)等を備える。X軸レールとX軸ボール螺子はX軸方向に延びる。工作台13は平面視矩形板状に形成し、Y軸工作台12上面に設ける。工作台13は底部にナット(図示略)を備える。該ナットはX軸ボール螺子に螺合する。X軸モータ53がX軸ボール螺子を回転すると、工作台13はナットと共に一対のX軸レールに沿って移動する。故にX軸移動機構は工作台13をX軸方向に移動可能に支持する。故に工作台13は、Y軸移動機構、Y軸工作台12、X軸移動機構により、基台2上をX軸方向とY軸方向に移動可能である。
工具交換装置20は主軸ヘッド7の前側に設け、円盤型の工具マガジン21を備える。工具マガジン21は外周に複数の工具(図1では省略)を放射状に保持し、工具交換指令が指示する工具を工具交換位置に位置決めする。工具交換指令はNCプログラムで指令する。工具交換位置は工具マガジン21の最下部位置である。工具交換装置20は主軸9に装着する工具4と工具交換位置にある工具とを入れ替え交換する。
制御箱6は数値制御装置30(図2参照)を格納する。数値制御装置30は、工作機械1に設けたZ軸モータ51、主軸モータ52、X軸モータ53、Y軸モータ54(図2参照)を夫々制御し、工作台13上に保持した被削材3と主軸9に装着した工具4を相対移動することで各種加工を被削材3に施す。各種加工とは、例えばドリル、タップ等を用いた穴空け加工、エンドミル、フライス等を用いた側面加工等である。
操作パネル15は、例えば工作機械1を覆うカバー(図示略)の外壁に設ける。操作パネル15は入力部16と表示部17(図2参照)を備える。入力部16は各種情報、操作指示等の入力を受け付け、後述する数値制御装置30に出力する。表示部17は後述する数値制御装置30からの指令に基づき、各種画面を表示する。
図2を参照し、数値制御装置30と工作機械1の電気的構成を説明する。数値制御装置30と工作機械1は、CPU31、ROM32、RAM33、記憶装置34、入出力部35、駆動回路51A〜55A等を備える。CPU31は数値制御装置30を統括制御する。ROM32は、メインプログラム、周波数特性解析プログラムを含む各種プログラム等を記憶する。メインプログラムはメイン処理を実行する。メイン処理は、NCプログラムを一行ずつ読み込んで各種動作を実行する。NCプログラムは各種制御指令を含む複数行で構成し、工作機械1の軸移動、工具交換等を含む各種動作を行単位で制御するものである。周波数特性解析プログラムは、後述する周波数特性解析処理(図7参照)を実行する。RAM33は各種情報を一時的に記憶する。記憶装置34は不揮発性であり、NCプログラム、各種情報を記憶する。CPU31は作業者が操作パネル15の入力部16で入力したNCプログラムに加え、外部入力で読み込んだNCプログラム等を記憶装置34に記憶できる。
駆動回路51AはZ軸モータ51とエンコーダ51Bに接続する。駆動回路52Aは主軸モータ52とエンコーダ52Bに接続する。駆動回路53AはX軸モータ53とエンコーダ53Bに接続する。駆動回路54AはY軸モータ54とエンコーダ54Bに接続する。駆動回路55Aは工具マガジン21を駆動するマガジンモータ55とエンコーダ55Bに接続する。Z軸モータ51、主軸モータ52、X軸モータ53、Y軸モータ54、マガジンモータ55は何れもサーボモータである(以下総称する場合は単にモータと呼ぶ)。駆動回路51A〜55AはCPU31から指令を受け、対応する各モータ51〜55に駆動電流を夫々出力する。駆動回路51A〜55Aはエンコーダ51B〜55Bからフィードバック信号を受け、位置と速度のフィードバック制御を行う。入出力部35は操作パネル15と加速度ピックアップ18に夫々接続する。加速度ピックアップ18は、周知のものであり、例えば工作台13に固定する。加速度ピックアップ18は、工作台13の加速度を計測することで、工作台13に発生する振動を測定可能である。
図3を参照し、駆動回路54Aのサーボ制御系を説明する。駆動回路51A〜55Aのサーボ制御系は同一の構成であるので、駆動回路54Aのサーボ制御系を一例として説明する。Y軸モータ54のエンコーダ54B(図2参照)は、Y軸モータ54の現在の位置情報を位置フィードバック信号として、加算器62に出力する。数値制御装置30はNCプログラムの制御指令に基づき位置指令を生成し、駆動回路54Aに出力する。駆動回路54Aは位置指令に従い、Y軸モータ54が動作するようにY軸モータ54に出力する駆動電流を制御する。
駆動回路54Aの加算器62は、位置指令と実際の位置の信号である位置フィードバック信号の位置偏差を算出し、該位置偏差に位置比例ゲインを乗ずることで速度指令を算出する。加算器63は、算出した速度指令と実際の速度、即ち位置フィードバック信号を微分器64で微分して得た速度フィードバック信号との速度偏差を算出する。加算器67は、加算器63が算出した速度偏差に速度比例ゲインを乗ずることで得た電流指令(比例)と、上記速度偏差を積分器65で積分してその積分結果に速度積分ゲインを乗ずることで得た電流指令(積分)を加算し、トルク指令を生成する。電流制御部68は、電流指令に基づき、Y軸モータ54に流れる電流の通電制御を行う。
後述するように、数値制御装置30は、工作機械1の加工中の周波数特性を解析する為、例えば、加算器67が生成したトルク指令に対し、後述するインパルス状の加振トルク指令を加算し、Y軸モータ54に出力することで、工作台13をY軸方向に加振する。工作台13にトルク由来の振動が発生する。数値制御装置30は、工作台13に発生した振動を加速度ピックアップ18で測定し、加工中の周波数特性を算出する。数値制御装置30は、算出した加工中の周波数特性を解析情報として出力する。
図4を参照し、加振トルク指令を説明する。加振トルク指令は、送り軸方向(例えばY軸方向)に駆動するモータを駆動し、工作台13を加振する為のトルク指令(電流)である。数値制御装置30のCPU31は、加工開始をトリガとし、後述する加振条件を満たしたt1において、インパルス状の加振トルク指令を、Y軸モータ54に出力するトルク指令に加算する。t1は加振タイミングに相当する。加振トルク指令のトルク波形は、最大出力値と出力時間で形成する。最大出力値はトルク値(Nm)であり、出力時間は、t1の加振タイミングから加振トルク指令を出力する時間である。最大出力値と出力時間は、操作パネル15の入力部16で入力して設定可能であり、記憶装置44に予め記憶する。図4に示すトルク波形の最大出力値は31.8(Nm)、出力時間は1.5(ms)であり、インパルス状のトルク波形を形成する。
図5、図6を参照し、加振条件を説明する。加振条件は、加振トルク指令を出力する加振タイミングに必要な条件である。本実施形態の加振条件は、例えば以下の内容である。
(1)被削材3の加工中であること
(2)主軸9が所定回転数で回転すること
(3)主軸9が所定角度であること
本実施形態は、工具4と被削材3が連続的に接触するように、例えば、図5に示す加工試験を想定した。加工試験は、被削材3の上面に対し、回転する工具4を−Z軸方向に移動し、被削材3の上面に穴空け加工を行うものである。切削条件は、以下の通りである。
・被削材の材質:JIS S45C
・工具4の種類:φ50のフェイスミル
・刃数:一枚
・切り込み量K:2.5mm
・主軸の回転速度:180rpm
・送り速度:18mm/min
なお、工具4のフェイスミルは本来5枚刃であるが、刃の接触による影響をより明確に評価する為、一枚を残してインサートチップを外し、一枚刃の工具4として使用した。
上記(3)の主軸9の所定角度は、被削材3の加工中において、主軸9と共に回転する工具4の刃400の逃げ面が送り軸方向(本実施形態ではY軸方向)に向いた角度である。図6は、該穴空け加工を工具4の軸方向上方から見た図である。工具4は一枚の刃400を備える。刃400は、すくい面401と逃げ面402を備える。すくい面401は、被削材3に対し、所定の切り込み量Kで切り込んだ時にすくい上げる面である。逃げ面402は、被削材3の仕上げ面301側に向く面である。このような状態で、主軸9の所定角度とは、被削材3の加工中において、工具4の刃400の逃げ面402が送り軸方向(Y軸方向)に向いた角度である。より具体的には、図6に示す切削方向とY軸方向とのなす角度が45°〜135°の間である任意の角度である。CPU31は工作機械1が上記加振条件(1)〜(3)を全て満たした時、加振タイミングと判断し、インパルス状の加振トルク指令を、Y軸モータ54に出力するトルク指令に加算する。
図7〜図10を参照し、周波数特性解析処理を説明する。作業者は、工作機械1の加工中の周波数特性を解析する為、例えば図5に示す上記穴空け加工の試験を行う。作業者は穴空け加工を実行するNCプログラムのプログラム番号を操作パネル15に入力する。CPU31は、操作パネル15に入力されたプログラム番号に対応するNCプログラムを記憶装置34から読み出し、表示部17に表示する。作業者は、周波数解析の実行指示を操作パネル15に入力する。操作パネル15に実行指示が入力されると、CPU31は、ROM32から周波数特性解析プログラムを読み出し、本処理を実行する。
図7に示すように、CPU31はNCプログラムに基づき、穴空け加工の動作を開始する(S10)。CPU31は主軸9を被削材3の加工開始位置に移動し、主軸9の回転を開始する。CPU31は被削材3の加工中か否か判断する(S11)。加工中とは、被削材3に工具4が接触して切削加工を実際に行っている状態を意味する。加工中か否かの判断について、例えばNCプログラム内の切削加工を行っている箇所にMコマンド等を記載し、CPU31はそのMコマンドを読み込んだ場合に加工中と判断してもよい。この他に、CPU31は、NCプログラム中の制御コマンドに基づき加工中か否かを判断してもよい。また、主軸9のトルクを監視して所定の閾値を超えたときに加工中と判断してもよい。また、作業者が工具4と被削材3の状態を見て「加工中」と判断し、所定操作を行った場合、CPU31は加工中と判断してもよい。また、外部機器から切削中であることを知らせる信号を受信した場合、CPU31は加工中と判断してもよい。S11の判断処理は、上記加振条件(1)を判断する処理である。加工中となるまで(S11:NO)、CPU31はS11に戻って待機する。
加工中と判断した場合(S11:YES)、CPU31は主軸モータ52のエンコーダ52Bからの信号に基づき、主軸9の回転数が所定回転数に到達したか否か判断する(S12)。所定回転数は、作業者が操作パネル15で予め設定し、記憶装置34に記憶するとよい。S12の判断処理は、上記加振条件(2)を判断する処理である。主軸9の回転数が所定回転数に到達するまで(S12:NO)、CPU31はS12に戻って待機する。主軸9の回転数が所定回転数に到達した場合(S12:YES)、CPU31は主軸9が所定角度に到達したか否か判断する(S13)。S13の判断処理は、上記加振条件(3)を判断する処理である。主軸9が所定角度に到達するまで(S13:NO)、CPU31はS13に戻って待機する。
主軸9が所定角度に到達した場合(S13:YES)、図6に示すように、工具4の刃400の逃げ面402はY軸方向に向いた状態となる。この時、工作機械1は、上記加振条件(1)〜(3)を全て満たした状態となる。CPU31は加振タイミングと判断し、記憶装置44に記憶した加振トルク指令の最大出力値と出力時間に基づき、トルク波形を設定する(S14)。CPU31は駆動回路54Aにおいて加算器67が生成したトルク指令に対し、設定したトルク波形に対応する加振トルク指令を加算し、Y軸モータ54に出力する(S15)。故にCPU31は工作台13をY軸方向に加振する。工作台13にトルク由来の振動が発生する。
図8は、加工開始から4.7秒後にY軸方向に加振したときのX、Y、Z軸方向の切削力を示した図表である。実線はX軸方向の切削力、破線はY軸方向の切削力、細かい破線はZ軸方向の切削力を示す。切削力は、水晶圧電式の切削動力計(キスラー社製)で測定した。切削動力計は、工作台13と被削材3の間に固定した。切削力波形において、各軸方向の切削力の一周期分が工具4の一回転分に相当する。切削力波形をみると、4.7秒でX軸方向の切削力が急激に増大している。これはY軸方向への押付けによって切込み量が増大したからである。切削力波形はその後急激に減衰している。
CPU31は、工作台13に発生した振動を加速度ピックアップ18で測定する(S16)。CPU31は所定周期毎に振動の測定値を記憶装置34に記憶する。図9は、加工開始から4.7秒後にY軸方向に加振したときの工作台13のY軸方向の加速度の時間変化を示す図表である。Y軸方向に加振した4.7秒において、大きな振動が生じ、その後、時間が経つにつれて次第に減衰している。つまり、4.7秒で生じた振動は約0.2秒間持続していることが分かる。CPU31は記憶装置34に記憶した振動の測定値を、Y軸方向への加振力で除することによって、加工中の周波数特性を算出する(S17)。Y軸方向への加振力は、加振トルク指令の最大出力値と出力時間の積である。
図10(1)は、加工以外の時に測定した工作台13のY軸方向の加速度から算出した周波数特性である。図10(2)は、加工中の時に測定した工作台13のY軸方向の加速度から算出した周波数特性である。図10(1)では、50Hzで振動のピークが発生し、その大きさ(Magnitude)は、1.55(m/s)/Nであった。図10(2)では、52Hzで振動のピークが発生し、その大きさは、0.95(m/s)/Nであった。これらを比較すると、加工中は、加工以外のときと比べ、振動のピークが大きく下がり、振動の周波数は2Hzほど高くなっている。これは、加工中の工具4と被削材3との接触により、工作機械1における剛性と減衰が増加したことを意味する。CPU31は、例えば図10(2)の図表を、加工中の周波数特性の解析情報として、操作パネル15の表示部17に表示する(S18)。作業者は、表示部17に表示した加工中の周波数特性を確認することで、工具4の刃400と被削材3との接触により、剛性と減衰がどれほど増加したかを確認できる。そして、刃400と被削材3との接触が工作機械1の周波数特性に及ぼす影響を定量的に把握できる。CPU31は送り軸の移動を終了し(S19)、本処理を終了する。
以上説明したように、本実施形態の数値制御装置30は、被削材3を固定する工作台13と工具4を装着する主軸9を、X軸移動機構、Y軸移動機構、Z軸移動機構によってX、Y、Z軸方向に相対的に移動し、被削材3に工具4を接触することにより、被削材3の加工を行う工作機械1の動作を制御する。数値制御装置30のCPU31は、加振タイミングを判断する。例えば、CPU31は判断に基づく加振タイミングに、工作台13をY軸方向に移動するY軸モータ54に対し、工作台13をY軸方向に加振する為の加振トルクを出力する。CPU31は加振トルクを出力した時、加工中に工作台13に生じるトルク由来の振動を測定する。CPU31は、測定した振動と加振トルクに基づき、加工中の周波数特性を解析する。CPU31は周波数特性の解析結果の情報である解析情報を操作パネル15の表示部17に出力する。これにより、作業者は出力した解析情報から加工中の真の周波数特性を得ることができるので、例えばびびらない加工条件等、最適な加工条件を算出できる。本実施形態は、加工中の周波数特性について、インパルスハンマ等の外付け装置を用いずに容易且つ精度良く測定できる。
CPU31は、操作パネル15の入力部16で、加振トルクのトルク波形を設定できる。故に数値制御装置30は、工作台13を加振することによって発生する振動の大きさを自由に調整できる。なお、加振トルクのトルク波形は、インパルス状であるのが好ましい。トルク波形を形成する最大出力値と出力時間は、操作パネル15の入力部16で設定できる。故に数値制御装置30は操作パネル15で設定した最大出力値と出力時間に基づき、インパルス状の加振トルクを容易に形成できる。
CPU31は、加振タイミングの判断について、工作機械1が被削材3を加工中である時、主軸9が所定回転数で回転している時、主軸9が所定角度である時の条件を全て満たすとき、加振タイミングであると判断する。故に数値制御装置30はY軸モータ54に対し、所定のタイミングで工作台13をY軸方向に精度よく加振できる。なお、主軸9の所定角度は、被削材3の加工中において、主軸9と共に回転する工具4の刃400の逃げ面402がY軸方向に向いた角度とするのがよい。故に数値制御装置30はY軸方向に精度よく加振できるので、加工中、Y軸方向における真の周波数特性を解析できる。
CPU31は加速度ピックアップ18で工作台13に発生する振動を測定するので、周波数特性を簡単に測定できる。例えば加速度ピックアップ18を工作機械1に取り付けることで、インパルスハンマ等の外付けの装置を用いずに周波数特性を解析できる。
本発明は上記実施形態に限らず各種変形が可能である。上記実施形態は、記憶装置34に記憶した振動の測定値とY軸方向への加振力とに基づき、加工中の周波数特性を算出し、解析情報として、操作パネル15の表示部17に表示するが、加振トルク又はY軸方向への加振力を入力、工作台13の振動を出力とした周波数伝達関数を求め、解析情報として出力してもよい。この場合、加振トルクは、加振時の加振トルク指令(インパルス状の波形)、加振時のトルク出力(電流出力値)、加振時のモータの角速度×モータイナーシャのうち何れかにするとよい。また、加振力は、加振トルク/(ボールネジの長さ×2π)で算出してもよい。また、加振力は、工作台13をインパルス状の加振トルク指令で加振した時の加速度波形と、インパルスハンマで加振した時の加速度波形との関係から推定してもよい。また、加振力は、工作台13の加速度×送り軸系(X軸移動機構、Y軸移動機構、Z軸移動機構)の等価質量から算出してもよい。工作台13の加速度は、加速度ピックアップ、又はリニアスケール(リニアエンコーダ)等で計測するとよい。工作台13の振動は、加振時の工作台13の加速度変動、加振時の主軸加速度変動、加振時の切削動力変動、加振時のトルク出力(電流出力)変動のうち何れかにするとよい。加振時の工作台13の加速度変動、加振時の主軸加速度変動は、加速度ピックアップ、又はリニアスケール(リニアエンコーダ)等で計測するとよい。加振時の切削動力変動は、切削動力計等で計測するとよい。
上記実施形態は、加工中の周波数特性の図表を解析情報として、操作パネル15の表示部17に表示するが、周波数特性の図表以外のデータとして出力してもよい。例えば、解析情報を外部機器に出力してもよい。出力したデータは記憶するとなおよい。解析情報は、周波数特性ではなく、周波数特性の計算に必要な情報(例えば、振動の測定値、Y軸方向への加振力等)であってもよい。数値制御装置30は、加工中の周波数特性の図表に加え、加工以外の時の周波数特性の図表(図10(1)参照)を同時に操作パネル15の表示部17に表示してもよい。その際、加工中の周波数特性の図表と、加工以外の時の周波数特性の図表とを重ねて表示してもよい。
上記実施形態のCPU31は、図7に示す周波数特性解析処理の中で、工作機械1が被削材の加工中であり(S11:YES)、主軸9の回転数が所定回転数に到達し(S12:YES)、主軸9の角度が所定角度である時(S13:YES)、加振タイミングと判断するが、上記三つの判断処理に加え、送り軸が所定位置であるか否かの判断処理を加えてもよい。また、これら四つの判断処理のうち何れか一つの条件を満たす時、又は複数の特定の条件の組み合わせの条件を満たす時に、加振タイミングと判断してもよい。
上記実施形態は、図7の周波数特性解析処理を分かり易く説明する為、送り軸方向であるY軸方向への加振を一例としたが、X軸方向、Z軸方向においても同様に加振し、周波数特性を求めればよい。
上記実施形態の工作機械1は、工具4を装着する主軸9がZ軸方向に移動可能であり、工作台13がX軸とY軸方向に移動可能であるが、工作台13に対してX軸、Y軸、Z軸方向に相対的に移動する工具の移動機構の仕組みは上記実施形態に限定しない。例えば主軸はX、Y、Z軸方向の三軸に駆動するもので、工作台は固定若しくは回転可能であってもよい。
上記実施形態の工作台装置10は工作台13をX軸方向とY軸方向に並進可能に支持する機械装置であるが、工作台13を回転可能に支持するようにしてもよい。
上記実施形態の工作機械1は主軸がZ軸方向に対して平行な縦型の工作機械であるが、主軸が水平方向に延びる横型の工作機械であってもよい。
上記実施形態の駆動回路51A〜55Aは工作機械1に設けているが、駆動回路51A〜55Aを数値制御装置30に設けてもよい。
1 工作機械
3 被削材
4 工具
9 主軸
13 工作台
15 操作パネル
18 加速度ピックアップ
30 数値制御装置
31 CPU
300 被削材
400 刃
402 逃げ面

Claims (7)

  1. 被削材を固定する工作台、又は工具を装着する主軸を送り軸によって送り軸方向に移動し、前記被削材に前記工具を接触することにより、前記被削材の加工を行う工作機械の動作を制御する数値制御装置において、
    加振タイミングを判断する加振タイミング判断部と、
    前記加振タイミング判断部の判断に基づく前記加振タイミングに、前記工作台又は前記主軸を前記送り軸方向に移動するモータに対し、前記工作台又は前記主軸を前記送り軸方向に加振する為のトルクを出力するトルク出力部と、
    前記トルク出力部が前記トルクを出力した時、加工中に前記工作台又は前記主軸に生じる前記トルク由来の振動を測定する振動測定部と、
    前記振動測定部が測定した前記振動と前記トルクに基づき、加工中の周波数特性を解析する解析部と、
    前記解析部の解析結果の情報である解析情報を出力する情報出力部と
    を備えたことを特徴とする数値制御装置。
  2. 前記トルク出力部は、トルク波形を設定する設定部を備え、
    前記設定部が設定した前記波形に基づき前記トルクを出力すること
    を特徴とする請求項1に記載の数値制御装置。
  3. 前記トルクはインパルス状の前記トルク波形を有し、
    前記設定部は、前記トルク波形を形成する最大出力値と出力時間を設定し、
    前記トルク出力部は、前記設定部が設定した前記最大出力値、前記出力時間に基づき前記トルクを出力すること
    を特徴とする請求項2に記載の数値制御装置。
  4. 前記加振タイミング判断部は、
    前記工作機械が前記被削材を加工中である時、前記主軸が所定回転数で回転している時、前記主軸が所定角度である時、前記送り軸が所定位置である時、のうち少なくとも一つの条件又は複数の特定の条件の組合せに該当する時、前記加振タイミングであると判断すること
    を特徴とする請求項1に記載の数値制御装置。
  5. 前記所定角度は、前記被削材の加工中において、前記主軸と共に回転する前記工具の刃の逃げ面が前記送り軸方向に向いた角度であること
    を特徴とする請求項4に記載の数値制御装置。
  6. 前記振動測定部は加速度ピックアップで前記振動を測定すること
    を特徴とする請求項1から5の何れかに記載の数値制御装置。
  7. 被削材を固定する工作台、又は工具を装着する主軸を送り軸によって送り軸方向に移動し、前記被削材に前記工具を接触することにより、前記被削材の加工を行う工作機械の動作を制御する数値制御装置の制御方法において、
    加振タイミングを判断する加振タイミング判断ステップと、
    前記加振タイミング判断ステップでの判断に基づく前記加振タイミングに、前記工作台又は前記主軸を前記送り軸方向に移動するモータに対し、前記工作台又は前記主軸を前記送り軸方向に加振する為のトルクを出力するトルク出力ステップと、
    前記トルク出力ステップで前記トルクを出力した時、加工中に前記工作台又は前記主軸に生じる前記トルク由来の振動を測定する振動測定ステップと、
    前記振動測定ステップで測定した前記振動と前記トルクに基づき、加工中の周波数特性を解析する解析ステップと、
    前記解析ステップでの解析結果の情報である解析情報を出力する情報出力ステップと
    を備えたことを特徴とする制御方法。
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