以下に添付図面を参照して、この発明に係る撮像ユニット、測色装置、画像形成装置、測色システムおよび距離測定方法の実施形態を詳細に説明する。なお、以下で説明する実施形態では、本発明を適用した画像形成装置の一例としてインクジェットプリンタを例示するが、本発明は、記録媒体に画像を出力する様々なタイプの画像形成装置に対して広く適用可能である。
<画像形成装置の機械的構成>
まず、図1乃至図4を参照しながら、本実施形態の画像形成装置100の機械的構成について説明する。図1は、本実施形態の画像形成装置100内部を透視して示す斜視図、図2は、本実施形態の画像形成装置100内部の機械的構成を示す上面図、図3は、キャリッジ5を昇降させる昇降機構の一例を説明する図、図4は、キャリッジ5に搭載される記録ヘッド6の配置例を説明する図である。
図1に示すように、本実施形態の画像形成装置100は、主走査方向(図中矢印A方向)に往復移動して、副走査方向(図中矢印B方向)に間欠的に搬送される記録媒体Pに対して画像を形成するキャリッジ5を備える。キャリッジ5は、主走査方向に沿って延設された主ガイドロッド3により支持されている。また、キャリッジ5には連結片5aが設けられている。連結片5aは、主ガイドロッド3と平行に設けられた副ガイド部材4に係合し、キャリッジ5の姿勢を安定化させる。
キャリッジ5には、図2に示すように、イエロー(Y)インクを吐出する記録ヘッド6y、マゼンタ(M)インクを吐出する記録ヘッド6m、シアン(C)インクを吐出する記録ヘッド6c、およびブラック(Bk)インクを吐出する複数の記録ヘッド6k(以下、記録ヘッド6y,6m,6c,6kを総称する場合は、「記録ヘッド6」という。)が搭載されている。記録ヘッド6は、その吐出面(ノズル面)が下方(記録媒体P側)に向くように、キャリッジ5に搭載されている。
記録ヘッド6にインクを供給するためのインク供給体であるカートリッジ7は、キャリッジ5には搭載されず、画像形成装置100内の所定の位置に配置されている。カートリッジ7と記録ヘッド6とは図示しないパイプで連結されており、このパイプを介して、カートリッジ7から記録ヘッド6に対してインクが供給される。
キャリッジ5は、駆動プーリ9と従動プーリ10との間に張架されたタイミングベルト11に連結されている。駆動プーリ9は、主走査モータ8の駆動により回転する。従動プーリ10は、駆動プーリ9との間の距離を調整する機構を有し、タイミングベルト11に対して所定のテンションを与える役割を持つ。キャリッジ5は、主走査モータ8の駆動によりタイミングベルト11が送り動作されることにより、主走査方向に往復移動する。キャリッジ5の主走査方向の移動は、たとえば図2に示すように、キャリッジ5に設けられたエンコーダセンサ13がエンコーダシート14のマークを検知して得られるエンコーダ値に基づいて制御される。
また、本実施形態の画像形成装置100は、記録ヘッド6の信頼性を維持するための維持機構15を備える。維持機構15は、記録ヘッド6の吐出面の清掃やキャッピング、記録ヘッド6からの不要なインクの排出などを行う。
記録ヘッド6の吐出面と対向する位置には、図2に示すように、プラテン16が設けられている。プラテン16は、記録ヘッド6から記録媒体P上にインクを吐出する際に、記録媒体Pを支持するためのものである。本実施形態の画像形成装置100は、キャリッジ5の主走査方向の移動距離が長い広幅機である。このため、プラテン16は、複数の板状部材を主走査方向(キャリッジ5の移動方向)に繋いで構成している。記録媒体Pは、後述の副走査モータ12(図7参照)によって駆動される搬送ローラにより挟持され、プラテン16上を、副走査方向に間欠的に搬送される。
記録媒体Pが腰の強い用紙や折れ用紙などの場合、プラテン16から記録媒体Pが浮き上がって搬送される場合がある。このとき、記録媒体Pが記録ヘッド6の吐出面に接触すると記録ヘッド6の破損に繋がる虞がある。そこで、画像形成装置100は、プラテン16からの浮きが発生しやすい記録媒体Pへの対策として、キャリッジ5を昇降させる昇降機構を備えており、浮きが発生しやすい記録媒体Pを使用する際には記録媒体Pから記録ヘッド6の吐出面との間の距離を大きく取ることができるようにしている。なお、キャリッジ5の昇降とは、記録媒体Pに対して近接離間する方向へのキャリッジ5の移動をいう。
昇降機構は、たとえば図3に示すように、キャリッジ昇降モータ17の駆動により偏心カム18を変位させてキャリッジ5を昇降させる構成である。すなわち、キャリッジ昇降モータ17の回転により、キャリッジ昇降モータ17の回転軸に取り付けられたギア17aが偏心カム18の軸18aを回転させる。軸18aは偏心カム18の中心から変位した位置に設けられているため、軸18aが回転すると偏心カム18が変位する。キャリッジ5は、偏心カム18に当接しているため、偏心カム18の変位に伴って図中矢印で示す方向に昇降する。なお、図3に示す昇降機構はあくまで一例であり、キャリッジ5を昇降できる機能であればどのような構成であってもよい。
記録ヘッド6は、複数のノズル列を備えており、プラテン16上を搬送される記録媒体P上にノズル列からインクを吐出することで、記録媒体Pに画像を形成する。本実施形態では、キャリッジ5の1回の走査で記録媒体Pに形成できる画像の幅を多く確保するため、図4に示すように、キャリッジ5に、上流側の記録ヘッド6と下流側の記録ヘッド6とを搭載している。また、ブラックのインクを吐出する記録ヘッド6kは、カラーのインクを吐出する記録ヘッド6y,6m,6cの2倍の数だけキャリッジ5に搭載している。また、記録ヘッド6y,6mは左右に分離して配置されている。これは、キャリッジ5の往復動作で色の重ね順を合わせ、往路と復路とで色が変わらないようにするためである。なお、図4に示す記録ヘッド6の配列は一例であり、図4に示す配列に限定されるものではない。
本実施形態の画像形成装置100を構成する上記の各構成要素は、外装体1の内部に配置されている。外装体1にはカバー部材2が開閉可能に設けられている。画像形成装置100のメンテナンス時やジャム発生時には、カバー部材2を開けることにより、外装体1の内部に設けられた各構成要素に対して作業を行うことができる。
本実施形態の画像形成装置100は、記録媒体Pを副走査方向に間欠的に搬送し、記録媒体Pの副走査方向の搬送が停止している間に、キャリッジ5を主走査方向に移動させながら、キャリッジ5に搭載された記録ヘッド6のノズル列からプラテン16上の記録媒体P上にインクを吐出して、記録媒体Pに画像を形成する(画像形成部)。
特に、画像形成装置100の色調整を行う調整時には、キャリッジ5に搭載された記録ヘッド6のノズル列から実際にプラテン16上の記録媒体Pにインクを吐出して、多数の測色対象パッチCPが並ぶテストパターンを形成する。そして、このテストパターンに含まれる各測色対象パッチCPに対する測色を行う。テストパターンに含まれる各測色対象パッチCPは、それぞれ基準色のパッチを画像形成装置100が出力することで得られる画像であり、画像形成装置100に固有の出力特性を反映している。したがって、これらの測色対象パッチCPの測色値を用いて、画像形成装置100に固有の特性を記述したデバイスプロファイルを生成、あるいは修正することができる。そして、このデバイスプロファイルに基づいて標準色空間と機器依存色との間の色変換を行うことで、画像形成装置100は再現性の高い画像を出力することができる。
本実施形態の画像形成装置100は、記録媒体Pに形成したテストパターンに含まれる各測色対象パッチCPに対する測色を行うための測色カメラ(撮像ユニット、測色装置)20を備える。測色カメラ20は、画像形成装置100により記録媒体Pに形成されたテストパターンに含まれる測色対象パッチCPを被写体とし、この測色対象パッチCPと後述する基準チャート400とを同時に撮像する。そして、測色カメラ20は、撮像によって得られる測色対象パッチCPのRGB値および基準チャート400に含まれる各基準パッチのRGB値を用いて、測色対象パッチCPの測色値を算出する。
測色カメラ20は、図2および図3に示すように、キャリッジ5に対して固定されて設けられ、キャリッジ5と一体となって主走査方向に往復移動する。そして、測色カメラ20は、プラテン16上の記録媒体Pに形成されたテストパターンに含まれる各測色対象パッチCPと対向する位置に移動したときに、各測色対象パッチCPを基準チャート400と同時に撮像する。なお、ここでの同時に撮像とは、測色対象パッチCPと基準チャート400とを含む1フレームの画像データを取得することを意味する。つまり、画素ごとのデータ取得に時間差があっても、1フレーム内に測色対象パッチCPと基準チャート400とを含む画像データを取得すれば、測色対象パッチCPと基準チャート400とを同時に撮像したことになる。
<測色カメラの具体例>
次に、図5−1乃至図5−4を参照しながら、測色カメラ20の具体例について詳細に説明する。図5−1乃至図5−4は、測色カメラ20の具体例を示す図であり、図5−1は、測色カメラ20の縦断面図(図5−3中のX1−X1線断面図)、図5−2は、測色カメラ20の縦断面図(図5−3中のX2−X2線断面図)、図5−3は、測色カメラ20の内部を透視して示す上面図、図5−4は、筐体の底面部を図5−1中のX3方向から見た平面図である。
測色カメラ20は、枠体21と基板22とを組み合わせて構成された筐体23を備える。枠体21は、筐体23の上面となる一端側が開放された有底筒状に形成されている。基板22は、枠体21の開放端を閉塞して筐体23の上面を構成するように、締結部材24によって枠体21に締結され、枠体21と一体化されている。
筐体23は、その底面部23aが所定の間隙dを介してプラテン16上の記録媒体Pと対向するように、キャリッジ5に固定される。記録媒体Pと対向する筐体23の底面部23aには、記録媒体Pに形成された被写体(色調整では測色対象パッチCP)を筐体23の内部から撮影可能にするための開口部25が設けられている。
筐体23の内部には、画像を撮像するセンサ部26が設けられている。センサ部26は、CCDセンサまたはCMOSセンサなどの2次元イメージセンサ27と、センサ部26の撮像対象領域の光学像を2次元イメージセンサ27のセンサ面に結像する結像レンズ28とを備える。2次元イメージセンサ27は、センサ面が筐体23の底面部23a側に向くように、たとえば、基板22の内面(部品実装面)に実装されている。結像レンズ28は、その光学特性に応じて定められる位置関係を保つように2次元イメージセンサ27に対して位置決めされた状態で固定されている。
筐体23の底面部23aのセンサ部26と対向する内面側には、底面部23aに設けられた開口部25と隣り合うようにして、基準チャート400が配置されている。基準チャート400は、測色対象パッチCPを測色する際に、センサ部26の2次元イメージセンサ27により測色対象パッチCPとともに撮像されるものである。つまり、基準チャート400は、筐体23の外部の測色対象パッチCPとともに、センサ部26の撮像対象領域に含まれるように、筐体23の底面部23aに配置されている。センサ部26の撮像対象領域のうち、開口部25を介して撮像される筐体23の外部の領域を、ここでは被写体領域という。なお、基準チャート400の詳細については後述する。
また、筐体23の内部には、センサ部26の撮像対象領域を照明する照明光源30が設けられている。照明光源30としては、たとえばLED(Light Emitting Diode)が用いられる。本実施形態においては、照明光源30として2つのLEDを用いる。照明光源30として用いるこれら2つのLEDは、たとえば、センサ部26の2次元イメージセンサ27とともに、基板22の内面に実装される。ただし、照明光源30は、被写体(測色対象パッチCP)と基準チャート400とを照明できる位置に配置されていればよく、必ずしも基板22に直接実装されていなくてもよい。また、本実施形態では、照明光源30としてLEDを用いているが、光源の種類はLEDに限定されるものではない。例えば、有機ELなどを照明光源30として用いるようにしてもよい。有機ELを照明光源30として用いた場合は、太陽光の分光分布に近い照明光が得られるため、測色精度の向上が期待できる。
また、本実施形態では、図5−3に示すように、照明光源30として用いる2つのLEDを基板22側から筐体23の底面部23a側に垂直に見下ろしたときの底面部23a上の投影位置が、開口部25と基準チャート400との間の領域内となり、且つ、センサ部26を中心として対称となる位置となるように、これら2つのLEDが配置されている。換言すると、照明光源30として用いる2つのLEDを結ぶ線がセンサ部26の結像レンズ28の中心を通り、且つ、この2つのLEDを結ぶ線に対して線対称となる位置に、開口部25と基準チャート400とが配置される。照明光源30として用いる2つのLEDをこのように配置することにより、筐体23の外部の測色対象パッチCPと筐体23の内部の基準チャートKCとを、概ね同一の条件にて照明することができる。
ところで、筐体23の内部に配置された基準チャート400と同一の照明条件により筐体23の外部の測色対象パッチCPを照明するには、センサ部26による撮像時に外光が測色対象パッチCPに当たらないようにして、照明光源30からの照明光のみで測色対象パッチCPを照明する必要がある。測色対象パッチCPに外光が当たらないようにするには、筐体23の底面部23aと記録媒体Pとの間の間隙dを小さくし、測色対象パッチCPに向かう外光が筐体23によって遮られるようにすることが有効である。ただし、筐体23の底面部23aと記録媒体Pとの間の間隙dを小さくしすぎると、記録媒体Pが筐体23の底面部23aに接触してしまい、画像の撮像を適切に行えなくなる虞がある。そこで、筐体23の底面部23aと記録媒体Pとの間の間隙dは、記録媒体Pの平面性を考慮して、記録媒体Pが筐体23の底面部23aに接触しない範囲で小さな値に設定することが望ましい。たとえば、筐体23の底面部23aと記録媒体Pとの間の間隙dを1mm〜2mm程度に設定すれば、記録媒体Pが筐体23の底面部23aに接触することなく、記録媒体Pに形成された測色対象パッチCPに外光が当たることを有効に防止できる。
また、筐体23の内部には、開口部25を内面側から塞ぐようにして、光路長変更部材31が配置されている。光路長変更部材31は、照明光源30の光(照明光)に対して十分な透過率を有する屈折率n(nは任意の数)の光学素子(光透過部材)である。光路長変更部材31は、筐体23の外部の測色対象パッチCPとセンサ部26との間の光路中に配置され、測色対象パッチCPの光学像の結像面を基準チャート400の光学像の結像面に近づける機能を持つ。つまり、本実施形態の測色カメラ20では、測色対象パッチCPとセンサ部26との間の光路中に光路長変更部材31を配置することによって、筐体23の外部の測色対象パッチCPの光学像の結像面と、筐体23の内部の基準チャート400の結像面とを、ともにセンサ部26の2次元イメージセンサ27のセンサ面に合わせるようにしている。
光路長変更部材31を光が通過すると、光路長変更部材31の屈折率nに応じて光路長が延び、画像が浮き上がって見える。画像の浮上がり量Cは、光路長変更部材31の光軸方向の長さをLpとすると、以下の式で求めることができる。
C=Lp(1−1/n)
また、センサ部26の結像レンズ28の主点と基準チャート400との間の距離をLcとすると、結像レンズ28の主点と光路長変更部材31を透過する光学像の前側焦点面(撮像面)との間の距離Lは、以下の式で求めることができる。
L=Lc+Lp(1−1/n)
ここで、光路長変更部材31の屈折率nを1.5とした場合、L=Lc+Lp(1/3)となり、光路長変更部材31を透過する光学像の光路長を光路長変更部材31の光軸方向の長さLpの約1/3だけ長くすることができる。この場合、例えばLp=9[mm]とすれば、L=Lc+3[mm]となるので、センサ部26から基準チャート400までの距離と測色対象パッチCPまでの距離との差が3mmとなる状態で撮像すれば、基準チャートKCの光学像の後側焦点面(結像面)と、測色対象パッチCPの光学像の後側焦点面(結像面)とを、ともにセンサ部26の2次元イメージセンサ27のセンサ面に合わせることができる。
本実施形態の画像形成装置100は、上述したように、キャリッジ5に搭載された記録ヘッド6のノズル列からプラテン16上の記録媒体P上にインクを吐出して、記録媒体Pに画像を形成する構成である。このため、記録ヘッド6のノズル列からインクを吐出する際に、霧(ミスト)状の微小なインク粒子(以下、このような微小なインク粒子を「ミスト」という。)が発生する。そして、画像形成時に発生したミストが、キャリッジ5に固定して設けられた測色カメラ20の筐体23の外部から開口部25を介して筐体23の内部に入り込むと、筐体23内部に入り込んだミストがセンサ部26や照明光源30、光路長変更部材31などに付着して、測色対象パッチCPの測色を行う調整時などに正確なRGB値が得られなくなる懸念がある。そこで、本実施形態の測色カメラ20では、筐体23の底面部23aに設けられた開口部25にミスト防止ガラス32を配置することにより、画像形成時に発生したミストが筐体23の内部に入り込むことを防止している。
ミスト防止ガラス32は、照明光源30の光(照明光)に対して十分な透過率を有する透明な光学素子(光透過部材)であり、開口部25の全体を覆うことができる大きさの板状に形成されている。ミスト防止ガラス32は、筐体23の底面部23aに沿って形成されたスリットに装着され、筐体23の底面部23aに設けられた開口部25の全面を閉止する。ミスト防止ガラス32が装着されるスリットは、筐体23の側面部にて開口している。ミスト防止ガラス32は、この筐体23の側面部から挿入されてスリットに装着することができる。また、ミスト防止ガラス32は、筐体23の側面部から取り外すこともでき、適宜交換が可能である。
本実施形態の測色カメラ20では、上述した光路長変更部材31に、距離測定用マーク部35が設けられている。距離測定用マーク部35は、光路長変更部材31よりも照明光の透過率が低い。例えば、距離測定用マーク部35は、光路長変更部材31にブラックのインクを付着させる、あるいは、光路長変更部材31よりも照明光の透過率が低い他の部材を光路長変更部材31に貼り付けるといった方法で、光路長変更部材31に設けることができる。距離測定用マーク部35は、照明光源30からの照明光が通過する光路長変更部材31のいずれかの位置に配置される。なお、図5−1および図5−2では、光路長変更部材31の開口部25側の面である下面に距離測定用マーク部35を設けた例を図示しているが、距離測定用マーク部35は、照明光源30からの照明光が通過する位置に設けられていればよい。例えば、光路長変更部材31のセンサ部26側の面である上面に、距離測定用マーク部35を設けるようにしてもよい。
光路長変更部材31に距離測定用マーク部35を設けることで、照明光源30がセンサ部26の撮像対象領域を照明すると、この照明された撮像対象領域に含まれる被写体領域に、距離測定用マーク部35の影が現れる。この距離測定用マーク部35の影の位置や大きさは、距離測定用マーク部35と被写体領域との間の距離に応じて変化する。換言すると、距離測定用マーク部35とセンサ部26との位置関係は固定であるため、センサ部26と撮像対象領域に含まれる被写体領域との間の距離が変化すると、照明光源30による照明下で被写体領域に現れる距離測定用マーク部35の影の位置や大きさが変化する。本実施形態の測色カメラ20は、この性質を利用して、センサ部26により距離測定用マーク部35の影が映り込んだ画像を撮像し、この距離測定用マーク部35の影の画像に基づいて、距離測定用マーク部35から被写体領域までの距離、すなわち、センサ部26から被写体領域までの距離(以下、この距離を「被写体距離」という。)を測定する。なお、被写体距離を測定する方法の具体例については、詳細を後述する。
なお、距離測定用マーク部35は、照明光源30と被写体領域との間に配置された、照明光に対して十分な透過率を有する光透過部材に設けられていればよい。したがって、光路長変更部材31に距離測定用マーク部35を設けるのではなく、ミスト防止ガラス32に距離測定用マーク部35を設ける構成としてもよい。
ただし、距離測定用マーク部35は、被写体領域の中央部付近の予め定められた領域(以下、この領域を「測色対象領域」という。)に、当該距離測定用マーク部35の影が映り込まない位置に配置されていることが望ましい。つまり、距離測定用マーク部35は、被写体領域の測色対象領域を除く周辺部分に影が映り込むように、光路長変更部材31(あるいはミスト防止ガラス32)の適切な位置に設けられていることが望ましい。
本実施形態では、測色対象パッチCPなどの被写体の測色値を算出する際に、後述するように、センサ部26が出力する撮像画像に含まれる測色対象領域の画像データを平均化して、測色対象パッチCPのRGB値を求める。この際、測色対象領域に距離測定用マーク部35の影が映り込んでいると、測色対象パッチCPの正しいRGB値が得られず、測色値に誤差が生じる懸念がある。上記のように、距離測定用マーク部35を、その影が測色対象領域に映り込まない位置に配置するようにすれば、このような問題を未然に回避することができる。
<基準チャートの具体例>
次に、図6を参照しながら、測色カメラ20の筐体23の内部に配置される基準チャート400について詳細に説明する。図6は、基準チャート400の具体例を示す図である。
図6に示す基準チャート400は、測色用のパッチを配列した複数の基準パッチ列401〜404、ドット径計測用パターン列406、距離計測用ライン405およびチャート位置特定用マーカ407を有する。
基準パッチ列401〜404は、YMCKの1次色の基準パッチを階調順に配列した基準パッチ列401と、RGBの2次色の基準パッチを階調順に配列した基準パッチ列402と、グレースケールの基準パッチを階調順に配列した基準パッチ列(無彩色の階調パターン)403と、3次色の基準パッチを配列した基準パッチ列404と、を含む。ドット径計測用パターン列406は、大きさが異なる円形パターンが大きさ順に配列された幾何学形状測定用のパターン列であり、記録媒体Pに記録された画像のドット径の計測に用いることができる。
距離計測用ライン405は、複数の基準パッチ列401〜404やドット径計測用パターン列406を囲む矩形の枠として形成されている。チャート位置特定用マーカ407は、距離計測用ライン405の四隅の位置に設けられていて、各基準パッチの位置を特定するためのマーカとして機能する。センサ部26により撮像される基準チャート400の画像データから、距離計測用ライン405とその四隅のチャート位置特定用マーカ407を特定することで、基準チャート400の位置および各基準パッチやパターンの位置を特定することができる。
測色用の基準パッチ列401〜404を構成する各基準パッチは、測色カメラ20の撮像条件を反映した色味の基準として用いられる。なお、基準チャート400に配置されている測色用の基準パッチ列401〜404の構成は、図5に示す例に限定されるものではなく、任意の基準パッチ列を適用することが可能である。例えば、可能な限り色範囲が広く特定できる基準パッチを用いてもよいし、また、YMCKの1次色の基準パッチ列401や、グレースケールの基準パッチ列403は、画像形成装置100に使用されるインクの測色値のパッチで構成されていてもよい。また、RGBの2次色の基準パッチ列402は、画像形成装置100で使用されるインクで発色可能な測色値のパッチで構成されていてもよく、さらに、Japan Color等の測色値が定められた基準色票を用いてもよい。
なお、本実施形態では、一般的なパッチ(色票)の形状の基準パッチ列401〜404を有する基準チャート400を用いているが、基準チャート400は、必ずしもこのような基準パッチ列401〜404を有する形態でなくてもよい。基準チャート400は、測色に利用可能な複数の色が、それぞれの位置を特定できるように配置された構成であればよい。
基準チャート400は、測色カメラ20の筐体23の底面部23aに、開口部25と隣り合うように配置されているため、センサ部26によって測色対象パッチCPと同時に撮像することができる。
なお、以上説明した測色カメラ20の機械的構成はあくまで一例であり、この構成に限られるものではない。本実施形態の測色カメラ20は、少なくとも2次元イメージセンサ27を用いて画像を撮像する構成であればよく、上記の構成に対して様々な変形や変更が可能である。
<画像形成装置の制御機構の概略構成>
次に、図7を参照しながら、本実施形態の画像形成装置100の制御機構の概略構成について説明する。図7は、画像形成装置100の制御機構の概略構成を示すブロック図である。
本実施形態に係る画像形成装置100は、図7に示すように、CPU101、ROM102、RAM103、記録ヘッドドライバ104、主走査ドライバ105、副走査ドライバ106、制御用FPGA(Field-Programmable Gate Array)110、記録ヘッド6、測色カメラ20、エンコーダセンサ13、主走査モータ8、および副走査モータ12を備える。CPU101、ROM102、RAM103、記録ヘッドドライバ104、主走査ドライバ105、副走査ドライバ106、および制御用FPGA110は、メイン制御基板120に搭載されている。記録ヘッド6、エンコーダセンサ13、および測色カメラ20は、上述したようにキャリッジ5に搭載されている。
CPU101は、画像形成装置100の全体の制御を司る。例えば、CPU101は、RAM103を作業領域として利用して、ROM102に格納された各種の制御プログラムを実行し、画像形成装置100における各種動作を制御するための制御指令を出力する。
記録ヘッドドライバ104、主走査ドライバ105、副走査ドライバ106は、それぞれ、記録ヘッド6、主走査モータ8、副走査モータ12を駆動するためのドライバである。
制御用FPGA110は、CPU101と連携して画像形成装置100における各種動作を制御する。制御用FPGA110は、機能的な構成要素として、例えば、CPU制御部111、メモリ制御部112、インク吐出制御部113、センサ制御部114、およびモータ制御部115を備える。
CPU制御部111は、CPU101と通信を行って、制御用FPGA110が取得した各種情報をCPU101に伝えるとともに、CPU101から出力された制御指令を入力する。
メモリ制御部112は、CPU101がROM102やRAM103にアクセスするためのメモリ制御を行う。
インク吐出制御部113は、CPU101からの制御指令に応じて記録ヘッドドライバ104の動作を制御することにより、記録ヘッドドライバ104により駆動される記録ヘッド6からのインクの吐出タイミングを制御する。
センサ制御部114は、エンコーダセンサ13から出力されるエンコーダ値などのセンサ信号に対する処理を行う。
モータ制御部115は、CPU101からの制御指令に応じて主走査ドライバ105の動作を制御することにより、主走査ドライバ105により駆動される主走査モータ8を制御して、キャリッジ5の主走査方向への移動を制御する。また、モータ制御部115は、CPU101からの制御指令に応じて副走査ドライバ106の動作を制御することにより、副走査ドライバ106により駆動される副走査モータ12を制御して、プラテン16上の記録媒体Pの副走査方向への移動を制御する。
なお、以上の各部は、制御用FPGA110により実現する制御機能の一例であり、これら以外にも様々な制御機能を制御用FPGA110により実現する構成としてもよい。また、上記の制御機能の全部または一部を、CPU101または他の汎用のCPUにより実行されるプログラムにより実現する構成であってもよい。また、上記の制御機能の一部を、制御用FPGA110とは異なる他のFPGAやASIC(Application Specific Integrated Circuit)などの専用のハードウェアにより実現する構成であってもよい。
記録ヘッド6は、CPU101および制御用FPGA110により動作制御される記録ヘッドドライバ104により駆動され、プラテン16上の記録媒体Pにインクを吐出し、画像の形成を行う。
測色カメラ20は、上述したように、画像形成装置100の色調整を行う調整時に、テストパターンに含まれる測色対象パッチCPを基準チャート400とともに撮像し、撮像画像から得られる測色対象パッチCPのRGB値と基準チャート400の各基準パッチのRGB値とに基づいて、測色対象パッチCPの測色値(標準色空間における表色値であり、例えばL*a*b*色空間におけるL*a*b*値(以下、L*a*b*を「Lab」と表記する。))を算出する。測色カメラ20が算出した測色対象パッチCPの測色値は、制御用FPGA110を介してCPU101に送られる。
エンコーダセンサ13は、エンコーダシート14のマークを検知して得られるエンコーダ値を制御用FPGA110に出力する。このエンコーダ値は制御用FPGA110からCPU101へと送られて、例えば、キャリッジ5の位置や速度を計算するために用いられる。CPU101は、このエンコーダ値から計算したキャリッジ5の位置や速度に基づき、主走査モータ8を制御するための制御指令を生成して出力する。
<測色カメラの制御機構の構成>
次に、図8を参照しながら、測色カメラ20の制御機構について具体的に説明する。図8は、測色カメラ20の制御機構の一構成例を示すブロック図である。
測色カメラ20は、図8に示すように、2次元イメージセンサ27、照明光源30、光源駆動制御部40、タイミング信号発生部41、フレームメモリ42、平均化処理部43、測色演算部44、不揮発性メモリ45、距離演算部46、および距離調整部47を備える。これらの各部は、例えば、測色カメラ20の筐体23の上面部を構成する基板22に実装されている。
2次元イメージセンサ27は、照明光源30により照明された撮像対象領域から結像レンズ28を介して入射した光をアナログ信号に変換し、撮像対象領域の撮像画像を出力する。2次元イメージセンサ27は、光電変換により得られたアナログ信号をデジタルの画像データにAD変換し、その画像データに対してシェーディング補正やホワイトバランス補正、γ補正、画像データのフォーマット変換などの各種の画像処理を行う機能を内蔵し、画像処理によって得られる画像を撮像画像として出力する。なお、画像データに対する各種の画像処理は、その一部あるいは全部を2次元イメージセンサ27の外部で行うようにしてもよい。
光源駆動制御部40は、照明光源30を駆動するための光源駆動信号を生成して、照明光源30に供給する。本実施形態では、上述したように、センサ部26を間に挟んで配置された2つのLEDを、照明光源30として用いている。光源駆動制御部40は、測色対象パッチCPの測色を行う際には、2つのLEDの双方が点灯するように、照明光源30を駆動する。また、光源駆動制御部40は、上述した被写体距離を測定する際には、2つのLEDのうちの一方(距離測定用マーク部35の影が撮像面に映り込むときの入射角θが大きくなる方)が点灯するように、照明光源30を駆動する。
タイミング信号発生部41は、2次元イメージセンサ27による撮像開始のタイミングを制御するタイミング信号を生成し、2次元イメージセンサ27に供給する。本実施形態では、測色対象パッチCPの測色を行う場合だけでなく、上述した被写体距離を測定する場合にも、センサ部26の2次元イメージセンサ27による撮像を行う。タイミング信号発生部41は、これら測色対象パッチCPの測色時および被写体距離の測定時に、2次元イメージセンサ27による撮像開始のタイミングを制御するタイミング信号を生成し、2次元イメージセンサ27に供給する。
フレームメモリ42は、2次元イメージセンサ27から出力された撮像画像を一時的に格納する。
平均化処理部43は、測色対象パッチCPの測色を行う際に、センサ部26の2次元イメージセンサ27から出力され、フレームメモリ42に一時的に格納された撮像画像から、被写体領域の中央部付近に設定された測色対象領域と、基準チャート400の各基準パッチを映した領域とを抽出する。そして、平均化処理部43は、抽出した測色対象領域の画像データを平均化して、得られた値を測色対象パッチCPのRGB値として測色演算部44に出力するとともに、各基準パッチを映した領域の画像データを各々平均化して、得られた値を各基準パッチのRGBとして測色演算部44に出力する。
測色演算部44は、平均化処理部43の処理によって得られた測色対象パッチCPのRGB値と、基準チャート400の各基準パッチのRGB値とに基づいて、測色対象パッチCPの測色値を算出する。測色演算部44が算出した測色対象パッチCPの測色値は、メイン制御基板120上のCPU101へと送られる。測色演算部44が測色対象パッチCPの測色値を算出する処理の具体例については、詳細を後述する。
不揮発性メモリ45は、測色演算部44が測色対象パッチCPの測色値を算出するために必要な各種データや、距離演算部46が被写体距離を算出するために必要な各種データを格納する。
距離演算部46は、被写体距離の測定を行う際に、センサ部26の2次元イメージセンサ27から出力され、フレームメモリ42に一時的に格納された撮像画像に含まれる距離測定用マーク部35の影の画像(以下、「影画像」という。)に基づいて、被写体距離を算出する。以下、距離演算部46が被写体距離を算出する方法の具体例について説明する。
<第1の方法>
距離演算部46は、例えば、被写体距離を予め定めた基準距離(以下、この距離を「基準被写体距離」という。)としたときの撮像画像における影画像の位置と、被写体距離の測定時にセンサ部26の2次元イメージセンサ27から出力される撮像画像における影画像の位置とに基づいて、被写体距離を算出することができる。
図9は、距離演算部46による被写体距離の算出方法の一例を説明する説明図であり、被写体距離の変動によりセンサ部26による撮像面(上述した被写体領域が存在する面)が撮像面IA_rから撮像面IA_aへと変動したときの影画像の位置の変動を示している。撮像面IA_rは、被写体距離が基準被写体距離Drである場合のセンサ部26による撮像面を表し、撮像面IA_aは、測定しようとしている被写体距離Daのときのセンサ部26による撮像面を表している。図9中のα点は撮像面IA_r上の影画像の重心位置であり、β点は撮像面IA_a上の影画像の重心位置、つまり被写体距離Daの測定時に2次元イメージセンサ27から出力される撮像画像における影画像の重心位置である。
撮像面が撮像面IA_rから撮像面IA_aへと変動(つまり、被写体距離が基準被写体距離Drから被写体距離Daに変動)することによる影画像の重心位置の変化量a(α点とβ点とを同一撮像面上に投影したときのα−β間の距離)は、下記式(1)の関係が成り立つ。
tanθ=a/(|Da−Dr|) ・・・(1)
ただし、θは、撮像面IA_r,IA_aに対する照明光の入射角である。
なお、図9では、ミスト防止ガラス32の図示を省略しているが、光路長変更部材31とセンサ部26による撮像面との間にミスト防止ガラス32が介在していても、原理としては変わらない。このため、ここではミスト防止ガラス32を考慮しないものとする。
上記式(1)から、測定しようとしている被写体距離Daが変化しても、tanθと基準被写体距離Drおよび撮像画像におけるα点の座標が分かっていれば、2次元イメージセンサ27から出力される撮像画像に含まれる影画像の重心位置(図9のβ点)の座標に基づき、被写体距離Daを算出することができる。また、被写体距離Daが算出できれば、基準被写体距離Drに対する実際の被写体距離Daの変化量(|Da−Dr|)を求めることもできる。
そこで、画像形成装置100の工場出荷時などに、例えば以下の方法により、tanθとα点の座標とを求めておく。なお、基準被写体距離Drは、上述した測色カメラ20の筐体23の底面部23aと記録媒体Pとの間の間隙dが最適値(例えば1mm〜2mm程度)となる距離を予め定めておけばよい。
まず、キャリッジ昇降モータ17を駆動して被写体距離を基準被写体距離Drに設定する。そして、照明光源30(2つのLEDのうちの一方)を点灯し、照明光源30からの照明光により、2次元イメージセンサ27の撮像対象領域を照明する。この状態で、2次元イメージセンサ27で画像を撮像することにより、被写体領域に距離測定用マーク部35の影が映り込んだ撮像画像が得られる。この撮像画像から影画像を検知してその重心位置(α点)の座標を求める。なお、影画像の重心位置の座標を求める具体例は後述する。
次に、キャリッジ昇降モータ17を駆動して被写体距離を、基準被写体距離Drに既知の値を加算(もしくは減算)した距離Da’に設定する。そして、上記と同様に2次元イメージセンサ27で画像を撮像し、その撮像画像から影画像の重心位置の座標(β’点の位置)を求める。そして、得られたα点の位置(x1,y1)とβ’点の位置(x2,y2)とを用い、上記式(1)により、tanθを算出する。
画像形成装置100の工場出荷時などに上記の処理を行って得られたtanθおよびα点の座標を、予め定めた基準被写体距離Drとともに、測色カメラ20の不揮発性メモリ45などに格納しておく。そして、被写体距離Daの測定時には、距離演算部46が、2次元イメージセンサ27から出力される撮像画像から影画像の重心位置(β点)の座標を求め、求めたβ点の座標と、不揮発性メモリ45などに予め格納されたtanθと基準被写体距離Drおよびα点の座標とを用いて、上記式(1)により、被写体距離Daを算出する。
図10は、被写体距離Daの測定時にセンサ部26の2次元イメージセンサ27から出力される撮像画像の一例を示す図である。図中のI_taはセンサ部26の撮像対象領域全体の画像を表し、I_400は基準チャート400の画像、I_oaは被写体領域の画像をそれぞれ表している。
被写体距離Daの測定時には、上述したように、照明光源30(2つのLEDのうちの一方)を点灯し、照明光源30からの照明光により、2次元イメージセンサ27の撮像対象領域を照明する。この状態で、2次元イメージセンサ27で画像を撮像することにより、被写体領域の画像I_oaに距離測定用マーク部35の影画像I_saが映り込んだ、図10に示すような撮像画像が得られる。なお、図10では、影画像I_saの比較対象として、基準被写体距離Drのときの撮像画像において観測される影画像I_srも図示しているが、実際には、被写体領域の画像I_oaに映り込むのは影画像I_saのみである。
距離演算部46は、2次元イメージセンサ27から出力されてフレームメモリ42に一時的に格納された図10に示す撮像画像から、例えば、下記に示す方法により、影画像I_saの重心位置(β点)の座標を求める。
まず、距離演算部46は、被写体領域の画像I_oaを二値化し、その値をf(x,y)とする。そして、得られたf(x,y)を用いて、影画像I_saの重心位置(β点)の座標β(x2,y2)を求める。ただし、解像度から距離に変換する。なお、影画像I_srの重心位置(α点)の座標α(x1,y1)についても、画像形成装置100の工場出荷時などに同様の手法により求めることができる。
ちなみに、n×m画素の画像範囲における重心位置(α点)の座標α(x1,y1)は、下記式(2)および式(3)により求められる。
x1=Ix/M ・・・(2)
y1=Iy/M ・・・(3)
ただし、
である(Ix,Iyは一次モーメント、Mは質量)。
したがって、上記のn,mは、被写体領域の画像内でn×m画素の画像範囲にα点(β点)が含まれることとなる適当な値を使用すればよい。
距離演算部46は、以上の方法で求めたβ点の座標β(x2,y2)と、不揮発性メモリ45などに予め格納されているtanθ、基準被写体距離Drおよびα点の座標α(x1,y1)とに基づいて、上記式(1)により、被写体距離Daを算出する。なお、距離演算部46は、測色カメラ20の水平方向の位置を変えながら撮像された複数の撮像画像からそれぞれβ点の座標β(x2,y2)の座標を求め、その平均値を用いて被写体距離Daを算出するようにしてもよい。
次に、図11を参照して、上記の方法により被写体距離Daを算出する際の一連の処理の流れを説明する。図11は、被写体距離Daを算出する手順の一例を示すフローチャートである。
被写体距離Daを算出する場合、まずステップS101において、光源駆動制御部40が、照明光源30(2つのLEDのうちの一方)を点灯させる。そして、タイミング信号発生部41が2次元イメージセンサ27にタイミング信号を入力し、2次元イメージセンサ27による撮像を開始させる。
次にステップS102において、距離演算部46が、2次元イメージセンサ27から出力され、フレームメモリ42に一時的に格納された撮像画像から、被写体領域の画像I_oaを抽出する。そして、ステップS103において、距離演算部46が、ステップS102で抽出した被写体領域の画像I_oaに対して、上述した方法により影画像I_saの重心位置(β点)の座標β(x2,y2)を求める。
そして、ステップS104において、距離演算部46が、不揮発性メモリ45などに格納されたtanθ、基準被写体距離Dr、および影画像I_srの重心位置(α点)の座標α(x1,y1)を読み出す。そして、ステップS103で求めたβ点の座標(x2,y2)と、不揮発性メモリ45などから読み出したtanθ、基準被写体距離Dr、およびα点の座標α(x1,y1)とに基づいて、上記式(1)により被写体距離Daを算出し、処理を終了する。
<第2の方法>
上記の方法は、距離演算部46が、被写体距離が基準被写体距離Drのときの距離測定用マーク部35の影画像I_srの位置と、被写体距離Daの測定時の距離測定用マーク部35の影画像I_saの位置とに基づいて、被写体距離Daを算出するようにしている。しかし、距離演算部46は、被写体距離が基準被写体距離Drのときの距離測定用マーク部35の影画像I_srの大きさ(面積)と、被写体距離Daの測定時の距離測定用マーク部35の影画像I_saの大きさ(面積)とに基づいて、被写体距離Daを算出することもできる。
図12は、距離演算部46による被写体距離の算出方法の他の例を説明する説明図であり、被写体距離の変動による撮像面での距離測定用マーク部35の影画像の面積の変動を示している。図12中のIA_r,IA_aは、図9と同様の撮像面を表している。また、図12中のS_rは撮像面IA_r上の距離測定用マーク部35の影画像の面積を表し、S_a点は撮像面IA_a上の距離測定用マーク部35の影画像の面積、つまり被写体距離Daの測定時に2次元イメージセンサ27から出力される撮像画像における影画像の面積を表している。
撮像面が撮像面IA_rから撮像面IA_aへと変動(つまり、被写体距離が基準被写体距離Drから被写体距離Daに変動)すると、距離測定用マーク部35の影画像の面積は、S_rからS_aへと変化する。このとき、被写体距離と影画像の面積との関係は下記式(7)のようになるため、基準被写体距離DrおよびS_rが分かっていれば、被写体距離Daの測定時に得られる撮像画像における影画像の面積S_aに基づき、被写体距離Daを算出することができる。
また、被写体距離Daが算出できれば、基準被写体距離Drに対する実際の被写体距離Daの変化量(|Da−Dr|)を求めることもできる。
そこで、画像形成装置100の工場出荷時などに、基準被写体距離Drのときの撮像画像における影画像の面積S_rを求め、不揮発性メモリ45などに格納しておく。なお、基準被写体距離Drは、上述した例と同様に、間隙dが最適値(例えば1mm〜2mm程度)となる距離を予め定めておけばよい。
被写体距離Daの測定時には、上述したように、照明光源30(2つのLEDのうちの一方)を点灯し、照明光源30からの照明光により、2次元イメージセンサ27の撮像対象領域を照明する。この状態で、2次元イメージセンサ27で画像を撮像することにより、被写体領域の画像I_oaに距離測定用マーク部35の影画像I_saが映り込んだ、図10に示すような撮像画像が得られる。
距離演算部46は、2次元イメージセンサ27から出力されてフレームメモリ42に一時的に格納された図10に示す撮像画像から、被写体領域の画像I_oaを抽出する。そして、この被写体領域の画像I_oaを二値化し、得られた二値画像の黒の部分の合計値(影画像を含むn×m画素の画像範囲における黒画素の個数)を、影画像I_saの面積S_aとして求める。なお、影画像I_srの面積S_rについても、画像形成装置100の工場出荷時などに同様の手法により求めることができる。
距離演算部46は、以上の方法で求めた影画像I_saの面積S_aと、不揮発性メモリ45などに予め格納されている基準被写体距離Drおよび影画像I_srの面積S_rとに基づいて、上記式(7)により、被写体距離Daを算出する。なお、距離演算部46は、測色カメラ20の水平方向の位置を変えながら撮像された複数の撮像画像からそれぞれ影画像I_saの面積S_aを求め、その平均値を用いて被写体距離Daを算出するようにしてもよい。
次に、図13を参照して、上記の方法により被写体距離Daを算出する際の一連の処理の流れを説明する。図13は、被写体距離Daを算出する手順の一例を示すフローチャートである。
被写体距離Daを算出する場合、まずステップS201において、光源駆動制御部40が、照明光源30(2つのLEDのうちの一方)を点灯させる。そして、タイミング信号発生部41が2次元イメージセンサ27にタイミング信号を入力し、2次元イメージセンサ27による撮像を開始させる。
次にステップS202において、距離演算部46が、2次元イメージセンサ27から出力され、フレームメモリ42に一時的に格納された撮像画像から、被写体領域の画像I_oaを抽出する。そして、ステップS203において、距離演算部46が、ステップS202で抽出した被写体領域の画像I_oaに対して、上述した方法により影画像I_saの面積S_aを求める。
そして、ステップS204において、距離演算部46が、不揮発性メモリ45などに格納された基準被写体距離Drおよび影画像I_srの面積S_rを読み出す。そして、ステップS203で求めた影画像I_saの面積S_aと、不揮発性メモリ45などから読み出した基準被写体距離Drおよび影画像I_srの面積S_rとに基づいて、上記式(7)により被写体距離Daを算出し、処理を終了する。
図8に戻って、距離調整部47は、距離演算部46により算出された被写体距離Daに基づいてキャリッジ昇降モータ17を駆動することにより、被写体距離を調整する。例えば、距離調整部47は、距離演算部46により算出された被写体距離Daの基準被写体距離Drに対する変化量(|Da−Dr|)に基づき、被写体距離Daが基準被写体距離Drとなる位置に測色カメラ20が配置されるように、キャリッジ昇降モータ17を駆動する。
本実施形態の測色カメラ20は、距離調整部47によって被写体距離が調整された状態で、測色対象パッチCPの測色を行う。すなわち、測色対象パッチCPを含むテストパターンが形成された記録媒体Pがプラテン16上にセットされ、距離調整部47によってキャリッジ昇降モータ17が駆動されて被写体距離が調整された後に、照明光源30(2つのLEDの双方)を点灯し、照明光源30からの照明光により、2次元イメージセンサ27の撮像対象領域を照明する。この状態で、2次元イメージセンサ27で画像を撮像することにより、測色対象パッチCPと基準チャート400とを含む撮像画像が得られる。
そして、この撮像画像から、平均化処理部43によって測色対象パッチCPのRGB値と基準チャート400の各基準パッチのRGB値とが求められる。そして、測色演算部44により、測色対象パッチCPのRGB値と基準チャート400の各基準パッチのRGB値とに基づいて、測色対象パッチCPの測色値が算出される。
このように、本実施形態の測色カメラ20では、測色対象パッチCPの測色を行う前に被写体距離Daを算出し、被写体距離が例えば基準被写体距離Drとなるように調整した上で、測色対象パッチCPを含む画像を撮像する。そして、撮像画像から得られる測色対象パッチCPの基準チャート400の各基準パッチのRGB値とに基づいて、測色対象パッチCPの測色値を算出する。したがって、本実施形態の測色カメラ20によれば、被写体距離の変動によって算出される測色値が変化してしまう不都合を未然に防止して、測色対象パッチCPの正しい測色値を算出することができる。
なお、本実施形態の測色カメラ20は、距離演算部46が算出した被写体距離Daを用いて測色対象パッチCPを測色する際の被写体距離を調整することで、測色対象パッチCPの正しい測色値を得られるようにしている。しかし、これに代えて、距離演算部46が算出した被写体距離Daに基づき、測色演算部44が算出した測色値を補正する補正部を備える構成とすることで、正しい測色値が得られるようにしてもよい。
この構成の場合、被写体距離Daに応じて測色値を補正するための補正パラメータを予め求めて、不揮発性メモリ45などに格納しておく。補正部は、距離演算部46により算出された被写体距離Daに対応する補正パラメータを読み出して、この補正パラメータを用いて測色演算部44が算出する測色値を補正する。また、補正部は、測色演算部44が算出する測色値を補正するのではなく、平均化処理部43から出力される測色対象パッチCPのRGB値や基準チャート400の各基準パッチのRGB値を、距離演算部46が算出した被写体距離Daに応じて補正するようにしてもよい。
<パッチの測色方法>
次に、図14乃至図20を参照しながら、本実施形態に係る画像形成装置100による測色対象パッチCPの測色方法の具体例について詳細に説明する。以下で説明する測色方法は、画像形成装置100が初期状態のとき(製造やオーバーフォールなどによって初期状態となっているとき)に実施される前処理と、画像形成装置100の色調整を行う調整時に実施される測色処理とを含む。
図14は、基準測色値および基準RGB値を取得する処理と基準値線形変換マトリックスを生成する処理を説明する図である。図14に示すこれらの処理は、前処理として実施される。前処理では、複数の基準パッチKPが配列形成された基準シートKSが用いられる。基準シートKSの基準パッチKPは、測色カメラ20が備える基準チャート400のパッチと同等のものである。
まず、基準シートKSの複数の基準パッチKPの測色値であるLab値とXYZ値のうち、少なくともいずれか(図14の例では、Lab値とXYZ値の双方)が、それぞれのパッチ番号に対応させて、例えば測色カメラ20の基板22に実装された不揮発性メモリ45などに設けられるメモリテーブルTb1に格納される。基準パッチKPの測色値は、分光器BSなどを用いた測色により事前に得られる値である。基準パッチKPの測色値が既知であれば、その値を用いればよい。以下、メモリテーブルTb1に格納された基準パッチKPの測色値を「基準測色値」という。
次に、基準シートKSがプラテン16上にセットされ、キャリッジ5の移動を制御することで、基準シートKSの複数の基準パッチKPを被写体として、測色カメラ20による撮像が行われる。そして、測色カメラ20の撮像により得られた基準パッチKPのRGB値が、不揮発性メモリ45のメモリテーブルTb1に、パッチ番号に対応して格納される。つまり、メモリテーブルTb1には、基準シートKSに配列形成された複数の基準パッチKPそれぞれの測色値とRGB値が、各基準パッチKPのパッチ番号に対応して格納される。以下、メモリテーブルTb1に格納された基準パッチKPのRGB値を「基準RGB値」という。基準RGB値は、測色カメラ20の特性を反映した値である。
画像形成装置100のCPU101は、基準パッチKPの基準測色値および基準RGB値が不揮発性メモリ45のメモリテーブルTb1に格納されると、同じパッチ番号の基準測色値であるXYZ値と基準RGB値との対に対して、これらを相互に変換する基準値線形変換マトリックスを生成し、不揮発性メモリ45に格納する。メモリテーブルTb1に基準測色値としてLab値のみが格納されている場合は、Lab値をXYZ値に変換する既知の変換式を用いてLab値をXYZ値に変換した後に、基準値線形変換マトリックスを生成すればよい。
また、測色カメラ20が基準シートKSの複数の基準パッチKPを撮像する際には、測色カメラ20に設けられた基準チャート400も同時に撮像される。この撮像により得られた基準チャート400の各パッチのRGB値も、パッチ番号に対応させて、不揮発性メモリ45のメモリテーブルTb1に格納される。この前処理によりメモリテーブルTb1に格納された基準チャート400のパッチのRGB値を「初期基準RGB値」という。図15は、初期基準RGB値の一例を示す図である。図15(a)は初期基準RGB値(RdGdBd)をメモリテーブルTb1に格納した様子を示し、初期基準RGB値と(RdGdBd)ともに、初期基準RGB値(RdGdBd)をLab値に変換した初期基準Lab値(Ldadbd)やXYZ値に変換した初期基準XYZ値(XdYdZd)も対応付けて格納されることを示している。また、図15(b)は基準チャート400の各パッチの初期基準RGB値をプロットした散布図である。
以上の前処理が終了した後、画像形成装置100は、外部から入力される画像データや印刷設定等に基づいて、CPU101による制御のもとで、主走査モータ8や副走査モータ12、記録ヘッド6を駆動して、記録媒体Pを副走査方向に間欠的に搬送させつつ、キャリッジ5を主走査方向に移動させながら、記録ヘッド6からインクを吐出させて、記録媒体Pに画像を形成する。このとき、記録ヘッド6からのインクの吐出量が、機器固有の特性や経時変化などによって変化することがあり、このインクの吐出量が変化すると、ユーザが意図する画像の色とは異なった色で画像形成されることとなって、色再現性が劣化する。そこで、画像形成装置100は、色調整を行う所定のタイミングで、記録媒体Pに形成された測色対象パッチCPの測色値を求める測色処理を実施する。そして、測色処理により得られた測色対象パッチCPの測色値に基づいてデバイスプロファイルの生成あるいは修正を行って、このデバイスプロファイルに基づいて色調整を行うことにより、出力画像の色再現性を高める。
図16は、測色処理の概要を説明する図である。画像形成装置100は、色調整を行う調整時に、まず、プラテン16上にセットされた記録媒体P上に記録ヘッド6からインクを吐出して、多数の測色対象パッチCPが並んだテストパターン形成する。以下、テストパターンが形成された記録媒体Pを「調整シートCS」という。この調整シートCSには、画像形成装置100の調整時における出力特性、特に、記録ヘッド6の出力特性を反映した測色対象パッチCPが形成されている。なお、テストパターンを形成するための画像データは、不揮発性メモリ45などに予め格納されている。
次に、画像形成装置100は、図16に示すように、この調整シートCSがプラテン16上にセットされるか、調整シートCSを作成した段階で排紙することなくプラテン16上に保持された状態において、この調整シートCS上でキャリッジ5を主走査方向に移動させながら、測色カメラ20の2次元イメージセンサ27で画像の撮像を行う。そして、2次元イメージセンサ27から出力される撮像画像から平均化処理部43による処理によって測色対象パッチCPのRGB値が求められる。また、2次元イメージセンサ27は、測色対象の測色対象パッチCPと同時に基準チャート400を撮像しているため、基準チャート400に含まれる各パッチのRGB値も得られる。以下、測色対象の測色対象パッチCPのRGB値を「測色対象RGB値」といい、基準チャート400のパッチのRGB値を「測色時基準RGB値(RdsGdsBds)」という。「測色時基準RGB値(RdsGdsBds)」は、不揮発性メモリ45などに格納される。
測色カメラ20の測色演算部44は、後述する基準RGB間線形変換マトリックスを用いて、測色対象RGB値を初期化測色対象RGB値(RsGsBs)に変換する処理を行う(ステップS10)。初期化測色対象RGB値(RsGsBs)は、測色対象RGB値から、前処理を行った初期状態のときから測色処理を行う調整時に至るまでの間に生じる測色カメラ20の撮像条件の経時変化、例えば、照明光源30の経時変化や2次元イメージセンサ27の経時変化の影響を排除したものである。
その後、測色演算部44は、測色対象RGB値から変換された初期化測色対象RGB値(RsGsBs)を対象として、後述する基本測色処理を実行することにより(ステップS20)、測色対象の測色対象パッチCPの測色値であるLab値を取得する。
図17は、基準RGB間線形変換マトリックスを生成する処理を説明する図であり、図18は、初期基準RGB値と測色時基準RGB値との関係を示す図である。測色演算部44は、測色対象RGB値を初期化測色対象RGB値(RsGsBs)に変換する処理(ステップS10)を行う前に、この変換に用いる基準RGB間線形変換マトリックスを生成する。すなわち、測色演算部44は、図17に示すように、画像形成装置100が初期状態のときに前処理として得られた初期基準RGB値(RdGdBd)と、調整時において得られる測色時基準RGB値(RdsGdsBds)とを不揮発性メモリ45から読み出し、測色時基準RGB値RdsGdsBdsを初期基準RGB値RdGdBdに変換する基準RGB間線形変換マトリックスを生成する。そして、測色演算部44は、生成した基準RGB間線形変換マトリックスを不揮発性メモリ45に格納する。
図18において、図18(a)で薄く描かれている点が初期基準RGB値RdGdBdをrgb空間でプロットした点であり、塗りつぶし点が、測色時基準RGB値RdsGdsBdsをrgb空間でプロットした点である。図18(a)から分かるように、測色時基準RGB値RdsGdsBdsの値が初期基準RGB値RdGdBdの値から変動しており、これらのrgb空間上での変動方向は、図18(b)に示すように概ね同じであるが、色相によってずれの方向が異なる。このように、同じ基準チャート400のパッチを撮像してもRGB値が変動する要因としては、照明光源30の経時変化、2次元イメージセンサ27の経時変化などがある。
このように、測色カメラ20による撮像によって得られるRGB値が変動している状態で、測色対象パッチCPを撮像することで得られる測色対象RGB値を用いて測色値を求めると、変動分だけ測色値に誤差が発生する虞がある。そこで、初期基準RGB値RdGdBdと測色時基準RGB値RdsGdsBdsとの間で、最小2乗法などの推定法を用いて、測色時基準RGB値RdsGdsBdsを初期基準RGB値RdGdBdに変換する基準RGB間線形変換マトリックスを求め、この基準RGB間線形変換マトリックスを用いて、測色カメラ20で測色対象パッチCPを撮像することにより得られる測色対象RGB値を、初期化測色対象RGB値RsGsBsに変換し、変換した初期化測色対象RGB値RsGsBsを対象として、後述する基本測色処理を実行することで、測色対象パッチCPの測色値を精度よく取得できるようにしている。
この基準RGB間線形変換マトリックスは、1次だけでなく、さらに高次の非線形マトリックスであってもよく、rgb空間とXYZ空間間で非線形性が高い場合には、高次のマトリックスとすることで、変換精度を向上させることができる。
測色演算部44は、上述したように、測色対象パッチCPの撮像により得られる測色対象RGB値を、基準RGB間線形変換マトリックスを用いて初期化測色対象RGB値(RsGsBs)に変換した後(ステップS10)、この初期化測色対象RGB値(RsGsBs)を対象として、ステップS20の基本測色処理を行う。
図19および図20は、基本測色処理を説明する図である。測色演算部44は、まず、前処理において生成して不揮発性メモリ45に格納した基準値線形変換マトリックスを読み出し、基準値線形変換マトリックスを用いて初期化測色対象RGB値(RsGsBs)を第1XYZ値に変換し、不揮発性メモリ45に格納する(ステップS21)。図19では、初期化測色対象RGB値(3、200、5)が基準値線形変換マトリックスにより第1XYZ値(20、80、10)に変換された例を示している。
次に、測色演算部44は、ステップS21で初期化測色対象RGB値(RsGsBs)から変換された第1XYZ値を、既知の変換式を用いて第1Lab値に変換し、不揮発性メモリ45に格納する(ステップS22)。図19では、第1XYZ値(20、80、10)が既知の変換式により第1Lab値(75、−60、8)に変換された例を示している。
次に、測色演算部44は、前処理において不揮発性メモリ45のメモリテーブルTb1に格納された複数の基準測色値(Lab値)を検索し、該基準測色値(Lab値)のうち、Lab空間上において第1Lab値に対して距離の近い基準測色値(Lab値)を持つ複数のパッチ(近傍色パッチ)の組を選択する(ステップS23)。距離の近いパッチを選択する方法としては、例えば、メモリテーブルTb1に格納されたすべての基準測色値(Lab値)に対して、第1Lab値との距離を算出し、第1Lab値に対して距離の近いLab値(図19では、ハッチングの施されているLab値)を持つ複数のパッチを選択するといった方法を用いることができる。
次に、測色演算部44は、図20に示すように、メモリテーブルTb1を参照して、ステップS23で選択した近傍色パッチのそれぞれについて、Lab値と対になっているRGB値(基準RGB値)とXYZ値を取り出して、これら複数のRGB値とXYZ値のなかから、RGB値とXYZ値との組み合わせを選択する(ステップS24)。そして、測色演算部44は、選択した組み合わせ(選択組)のRGB値をXYZ値に変換するための選択RGB値線形変換マトリックスを、最小二乗法などを用いて求め、求めた選択RGB値線形変換マトリックスを不揮発性メモリ45に格納する(ステップS25)。
次に、測色演算部44は、ステップS25で生成した選択RGB値線形変換マトリックスを用いて、初期化測色対象RGB値(RsGsBs)を第2XYZ値に変換する(ステップS26)。さらに、測色演算部44は、ステップS26で求めた第2XYZ値を、既知の変換式を用いて第2Lab値に変換し(ステップS27)、得られた第2Lab値を、測色対象パッチCPの最終的な測色値とする。画像形成装置100は、以上の測色処理により得られた測色値に基づいてデバイスプロファイルを生成あるいは修正し、このデバイスプロファイルに基づいて色調整を行うことにより、出力画像の色再現性を高めることができる。
なお、上述した測色カメラ20は、筐体23に基準チャート400を設けて、センサ部26の2次元イメージセンサ27によって測色対象パッチCPと基準チャート400とを同時に撮像する構成となっている。しかし、上述したように、基準チャート400の撮像により得られる初期基準RGB値や測色時基準RGB値は、測色対象パッチCPの撮像により得られる測色対象RGB値に対して、測色カメラ20の撮像条件の経時変化、例えば、照明光源30の経時変化や2次元イメージセンサ27の経時変化の影響を排除するために用いられる。つまり、基準チャート400の撮像により得られる初期基準RGB値や測色時基準RGB値は、上述した基準RGB間線形変換マトリックスを算出し、この基準RGB間線形変換マトリックスを用いて、測色対象RGB値を初期化測色対象RGB値(RsGsBs)に変換するために用いられる。
したがって、要求される測色の精度に対して測色カメラ20の撮像条件の経時変化が無視できるレベルであれば、基準チャート400が省略された構成の測色カメラ20を用いて測色対象パッチCPの測色値を算出するようにしてもよい。この場合、測色対象RGB値を初期化測色対象RGB値に変換する処理(図16のステップS10)が省略され、測色対象RGB値を対象として、基本測色処理(図16のステップS20、図19および図20)が行われる。
<測色カメラの変形例>
次に、本実施形態の測色カメラ20の変形例(第1乃至第8変形例)について説明する。以下では、第1変形例の測色カメラ20を測色カメラ20A、第2変形例の測色カメラ20を測色カメラ20B、第3変形例の測色カメラ20を測色カメラ20C、第4変形例の測色カメラ20を測色カメラ20D、第5変形例の測色カメラ20を測色カメラ20E、第6変形例の測色カメラ20を測色カメラ20F、第7変形例の測色カメラ20を測色カメラ20G、第8変形例の測色カメラ20を測色カメラ20Hとそれぞれ表記する。なお、各変形例において、上述した測色カメラ20と共通の構成要素には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
<第1変形例>
図21−1および図21−2は、第1変形例の測色カメラ20Aの縦断面図であり、図5−2に示した測色カメラ20の縦断面図と同じ位置の断面図である。図21−1は、被写体距離の測定時における第1光路変更ミラー51および第2光路変更ミラー52の位置を示し、図21−2は、測色対象パッチCPの測色を行う際の第1光路変更ミラー51および第2光路変更ミラー52の位置を示している。
上述したように、本実施形態の測色カメラ20は、距離測定用マーク部35の影画像の位置(重心位置の座標)や大きさ(面積)の変動に基づいて被写体距離を算出する。ここで、被写体距離の変動に対する影画像の位置や大きさの変動は、センサ部26の撮像面に対する照明光の入射角が大きいほど大きくなる。つまり、被写体距離の測定時に、撮像面に対する照明光の入射角を大きくすることで、被写体距離の測定精度向上が期待できる。そこで、第1変形例の測色カメラ20Aでは、筐体23の内部に第1光路変更ミラー51および第2光路変更ミラー52を設け、被写体距離の測定時には、照明光源30からの照明光をこれら第1光路変更ミラー51および第2光路変更ミラー52により反射させることで、撮像面に対する照明光の入射角を大きくできるようにしている。
第1光路変更ミラー51は、回転軸51aを支点として回転可能な構造であり、一方の面が光を反射するミラー面とされている。また、ミラー面の逆側の面は、光を吸収する黒色とされている。同様に、第2光路変更ミラー52は、回転軸52aを支点として回転可能な構造であり、一方の面が光を反射するミラー面とされている。また、ミラー面の逆側の面は、光を吸収する黒色とされている。
第1変形例の測色カメラ20Aでは、被写体距離の測定時には、第1光路変更ミラー51および第2光路変更ミラー52を、それぞれ回転軸51a,52aを支点とし回転させて、図21−1に示す位置とする。ここで、第1光路変更ミラー51および第2光路変更ミラー52の照明光源30側に向いている面がミラー面である。これにより、照明光源30からの照明光は、第1光路変更ミラー51により反射された後、さらに第2光路変更ミラー52により反射されて、撮像面に入射する。このときの照明光の入射角は、照明光源30が第2光路変更ミラー52の位置に設けられている場合と同等となり、上述した測色カメラ20と比べて、照明光の入射角を大きくすることができる。
また、第1変形例の測色カメラ20Aでは、測色対象パッチCPの測色を行う際には、第1光路変更ミラー51および第2光路変更ミラー52を、それぞれ回転軸51a,52aを支点とし反転させて、図21−2に示す位置とする。これにより、照明光源30からの照明光は、第1光路変更ミラー51や第2光路変更ミラー52で反射されることなく撮像面に入射する。
以上のように、第1変形例の測色カメラ20Aでは、被写体距離の測定時には、照明光源30からの照明光を第1光路変更ミラー51および第2光路変更ミラー52で反射させて撮像面に入射させるようにしているので、撮像面に対する照明光の入射角を大きくして、被写体距離の測定精度を向上させることができる。
<第2変形例>
図22は、第2変形例の測色カメラ20Bの縦断面図であり、図5−2に示した測色カメラ20の縦断面図と同じ位置の断面図である。
第2変形例の測色カメラ20Bは、測色対象パッチCPの測色を行う際に点灯させる照明光源30(第1光源)とは別に、被写体距離の測定時に点灯させる距離測定用照明光源53(第2光源)を設けた例である。距離測定用照明光源53は、例えば図22に示すように、枠体21側面部の光路長変更部材31に比較的近い位置に設けられる。
第2変形例の測色カメラ20Bでは、被写体距離の測定時には、照明光源30を点灯させずに、距離測定用照明光源53を点灯させる。距離測定用照明光源53は、上述したように、枠体21側面部の光路長変更部材31に比較的近い位置に設けられているため、距離測定用照明光源53からの照明光の入射角は、上述した測色カメラ20と比べて大きくなる。
以上のように、第2変形例の測色カメラ20Bでは、被写体距離の測定時には、照明光源30とは別に設けた距離測定用照明光源53を点灯させ、撮像面に対する照明光の入射角を大きくしているので、第1変形例の測色カメラ20Aと同様に、被写体距離の測定精度を向上させることができる。
<第3変形例>
図23は、第3変形例の測色カメラ20Cの縦断面図であり、図5−1に示した測色カメラ20の縦断面図と同じ位置の断面図である。
第3変形例の測色カメラ20Cでは、筐体23の底面部23aに、測色対象パッチCPを撮像するための開口部25とは別の開口部54が設けられている。そして、この開口部54を筐体23の外側から閉塞するように、基準チャート400が配置されている。つまり、上述した測色カメラ20では、基準チャート400が筐体23の底面部23aのセンサ部26と対向する内面側に配置されていたのに対して、第3変形例の測色カメラ20Cでは、基準チャート400が筐体23の底面部23aの記録媒体Pと対向する外面側に配置されている。
具体的には、たとえば、筐体23の底面部23aの外面側に、基準チャート400の厚みに相当する深さの凹部が、開口部54と連通するように形成されている。そして、基準チャート400は、各基準パッチが形成された面をセンサ部26側に向けた状態で、その端部が上記凹部内に装着され、例えば、接着剤などによって筐体23の底面部23aに接合されている。
以上のように構成される第3変形例の測色カメラ20Cでは、基準チャート400を筐体23の底面部23aの外面側に配置することにより、上述した測色カメラ20に比べて、センサ部26から測色対象パッチCPまでの光路長とセンサ部26から基準チャート400までの光路長との差を小さくすることができる。
<第4変形例>
図24は、第4変形例の測色カメラ20Dの縦断面図であり、図5−1に示した測色カメラ20の縦断面図と同じ位置の断面図である。
第4変形例の測色カメラ20Dでは、第3変形例の測色カメラ20Cと同様に、筐体23の底面部23aの外面側に基準チャート400が配置されている。ただし、第3変形例の測色カメラ20Cでは、基準チャート400が接着剤などによって筐体23の底面部23aに接合され、筐体23と一体化されていたのに対して、第4変形例の測色カメラ20Dでは、基準チャート400が筐体23に対して着脱可能に保持されている。
具体的には、たとえば、第3変形例の測色カメラ20Cと同様に、筐体23の底面部23aの外面側に開口部54と連通する凹部が形成され、この凹部内に基準チャート400の端部が装着されている。また、第4変形例の測色カメラ20Dは、凹部内に端部が装着された基準チャート400を筐体23の底面部23aの外面側から押さえ込んで保持する保持部材55を備える。保持部材55は、筐体23の底面部23aに対して取り外し可能に装着されている。したがって、第4変形例の測色カメラ20Dでは、保持部材55を筐体23の底面部23aから取り外すことにより、基準チャート400を取り出すことができる。
以上のように、第4変形例の測色カメラ20Dでは、基準チャート400が筐体23に対して着脱可能に保持され、基準チャート400を取り出すことができるので、基準パッチの汚れなどにより基準チャート400が劣化した場合に、基準チャート400を交換する作業を簡単に行うことができる。また、第4変形例の測色カメラ20Dでは、上述したシェーディング補正用の補正データを得る際に、基準チャート400を取り出して代わりに白基準板を配置し、この白基準板をセンサ部26の2次元イメージセンサ27で撮像すれば、シェーディング補正用の補正データの取得を簡便に行うことができる。
<第5変形例>
図25は、第5変形例の測色カメラ20Eの縦断面図であり、図5−1に示した測色カメラ20の縦断面図と同じ位置の断面図である。
第5変形例の測色カメラ20Eでは、筐体23の開口部25を塞ぐミスト防止ガラス32が省略され、光路長変更部材31により、筐体23の開口部25を塞ぐ構成となっている。
第5変形例の測色カメラ20Eでは、筐体23の開口部25が光路長変更部材31により塞がれているため、ミスト防止ガラス32を設けた場合と同様に、筐体23の内部にミストが進入することを防止できる。本変形例の場合、開口部25から外部に露出している光路長変更部材31の露出部にミストや埃が付着することが懸念されるため、測色対象パッチCPの測色を行う前に、光路長変更部材31の露出部に付着した汚れを拭き取るなどして、光路長変更部材31を清浄な状態に保つことが望ましい。
<第6変形例>
図26は、第6変形例の測色カメラ20Fの縦断面図であり、図5−1に示した測色カメラ20の縦断面図と同じ位置の断面図である。
第6変形例の測色カメラ20Fでは、筐体23の内部の光路長変更部材31が省略されている。そして、上述した距離測定用マーク部35が、ミスト防止ガラス32に設けられている。
光路長変更部材31は、上述したように、センサ部26から測色対象パッチCPまでの光路長を変更し、センサ部26から基準チャート400までの光路長に合わせる機能を持つ。しかし、これらの光路長の差がセンサ部26の被写界深度の範囲内であれば、光路長に差が生じていても、測色対象パッチCPと基準チャート400との双方に焦点の合った画像を撮像することができる。
センサ部26から測色対象パッチCPまでの光路長とセンサ部26から基準チャート400までの光路長との差は、概ね、筐体23の底面部23aの厚みに間隙dを加えた値となる。したがって、間隙dを十分に小さな値とすれば、センサ部26から測色対象パッチCPまでの光路長とセンサ部26から基準チャート400までの光路長との差を、センサ部26の被写界深度の範囲内とすることができ、光路長変更部材31を省略して部品コストの削減を図ることができる。
なお、センサ部26の被写界深度は、センサ部26の絞り値や結像レンズ28の焦点距離、センサ部26と被写体との間の距離などに応じて定まる、センサ部26に固有の特性である。本変形例の測色カメラ20Fにおいては、筐体23の底面部23aと記録媒体Pとの間の間隙dをたとえば1mm〜2mm程度の十分に小さな値としたときに、センサ部26から被写体(測色対象パッチCP)までの光路長と、センサ部26から基準チャート400までの光路長との差が被写界深度の範囲内となるように、センサ部26が設計されている。
<第7変形例>
図27−1は、第7変形例の測色カメラ20Gの縦断面図であり、図5−1に示した測色カメラ20の縦断面図と同じ位置の断面図である。また、図27−2は、筐体23の底面部23aを図27−1中のX4方向から見た平面図である。なお、図27−2では、筐体23の底面部23aにおける照明光源30の垂直投影位置(底面部23aに対して垂直に見下ろしたときに投影される位置)を破線で示している。
第7変形例の測色カメラ20Gでは、筐体23の底面部23aにおいて、センサ部26から該底面部23aに対して垂直に下ろした垂線上(つまり、センサ部26の光軸中心)に位置して開口部25Gが設けられ、この開口部25Gを介して測色対象パッチCPの撮像を行う。すなわち、第7変形例の測色カメラ20Gでは、筐体23の外部の測色対象パッチCPを撮像するための開口部25Gが、センサ部26の撮像対象領域において略中心に位置するように設けられている。
また、第7変形例の測色カメラ20Gでは、センサ部26により測色対象パッチCPとともに撮像される基準チャート400が、開口部25Gの周囲を取り囲むように、筐体23の底面部23aに配置されている。たとえば、基準チャート400は、開口部25Gを中心とする円環状に形成され、基準パッチが形成された面とは逆側の面を接着面として、筐体23の底面部23aの内面側に接着材などにより接着され、筐体23に対して固定された状態で保持されている。
また、第7変形例の測色カメラ20Gでは、照明光源30として、筐体23の側壁を構成する枠体21の内周側の4隅に配置された4つのLEDを用いる。照明光源30として用いるこれら4つのLEDは、たとえば、センサ部26の2次元イメージセンサ27とともに、基板22の内面に実装されている。照明光源30として用いる4つのLEDをこのように配置することにより、被写体である測色対象パッチCPと基準チャートKCとを、概ね同一の条件にて照明することができる。
以上のように構成される第7変形例の測色カメラ20Gでは、筐体23の外部の測色対象パッチCPを撮像するための開口部25Gを、筐体23の底面部23aにおけるセンサ部26からの垂線上に設け、さらにその開口部25Gの周囲を取り囲むように、基準チャート400を配置しているので、測色対象パッチCPおよび基準チャート400の撮像をより適切に行うことができる。
<第8変形例>
図28は、第8変形例の測色カメラ20Hの縦断面図であり、図5−1に示した測色カメラ20の縦断面図と同じ位置の断面図である。
第8変形例の測色カメラ20Hでは、第7変形例の測色カメラ20Gと同様に、照明光源30として、枠体21の内周側の4隅に配置された4つのLEDを用いる。ただし、第8変形例の測色カメラ20Hでは、被写体となる測色対象パッチCPや基準チャート400で正反射される正反射光がセンサ部26の2次元イメージセンサ27に入射しないようにするために、照明光源30として用いるこれら4つのLEDを、第7変形例の測色カメラ20Gと比べて、より筐体23の底面部23aに近い位置に配置している。
センサ部26の2次元イメージセンサ27のセンサ面において、照明光源30の正反射光が入射する位置は、画素値が飽和するために正確な情報が得られない場合がある。このため、測色対象パッチCPや基準チャート400で正反射される正反射光がセンサ部26の2次元イメージセンサ27に入射する位置に照明光源30が配置されていると、測色対象パッチCPの測色に必要な正確なRGB値が得られなくなることが懸念される。そこで、第8変形例の測色カメラ20Hでは、図28に示すように、照明光源30として用いる4つのLEDを筐体23の底面部23aに近い位置に配置することで、測色対象パッチCPや基準チャート400で正反射される正反射光がセンサ部26の2次元イメージセンサ27に入射しないようにしている。なお、図28中の一点鎖線の矢印は、正反射光の光路をイメージしたものである。
以上のように、第8変形例の測色カメラ20Hでは、測色対象パッチCPや基準チャート400で正反射される正反射光がセンサ部26の2次元イメージセンサ27に入射しない位置に照明光源30を配置しているので、2次元イメージセンサ27のセンサ面において測色対象パッチCPや基準チャートKCの光学像が結像する位置の画素値が飽和することを有効に抑制し、測色対象パッチCPおよび基準チャートKCの正確なRGB値を取得することができる。
<その他の変形例>
上述した実施形態では、測色対象パッチCPの測色値を算出する機能を測色カメラ20に持たせるようにしているが、測色カメラ20の外部で測色対象パッチCPの測色値を算出するようにしてもよい。例えば、画像形成装置100のメイン制御基板120に実装されたCPU101や制御用FPGA110が、測色対象パッチCPの測色値を算出するように構成することができる。この場合、測色カメラ20は、測色対象パッチCPの測色値の代わりに、測色対象パッチCPや基準チャート400のRGB値(あるいは撮像データ)を、CPU101や制御用FPGA110に送る構成となる。つまり、測色カメラ20は、測色値を算出する機能を持たない撮像ユニットとして構成される。
また、上述した実施形態では、測色カメラ20が画像形成装置100の機構を利用してテストパターンが形成された記録媒体P上を移動するようにしているが、測色カメラ20を画像形成装置100から分離して、独自の移動機構によりテストパターンが形成された記録媒体P上を移動する構成としてもよい。つまり、上述した実施形態は、画像形成装置100に測色装置としての機能を持たせた例であるが、測色装置を画像形成装置100とは異なる独立した装置として構成し、この測色装置により、画像形成装置100が形成したテストパターンに含まれる測色対象パッチCPの測色値を算出するようにしてもよい。
また、上述した実施形態では、測色対象パッチCPの測色値を算出する機能を、測色カメラ20を含む画像形成装置100に持たせるようにしているが、測色対象パッチCPの測色値の算出は、必ずしも画像形成装置100内部で実行する必要はない。例えば、図29に示すように、画像形成装置100と外部装置500とが通信可能に接続された画像形成システム(測色システム)を構築し、測色対象パッチCPの測色値を算出する測色演算部44の機能を外部装置500に持たせて、外部装置500において測色値の算出を行うようにしてもよい。つまり、測色システムは、画像形成装置100に設けられた撮像ユニット200(上述した測色カメラ20から測色演算部44を除いた構成)と、外部装置500に設けられた測色演算部44と、これら撮像ユニット200と測色演算部44(画像形成装置100と外部装置500)とを接続する通信手段600と、を備えた構成となる。外部装置500は、例えば、DFE(Digital Front End)と呼ばれるコンピュータを用いることができる。また、通信手段600は、有線や無線によるP2P通信のほか、LANやインターネットなどのネットワークを利用した通信などを利用することができる。
上記の構成の場合、例えば、画像形成装置100は、撮像ユニット200の撮像画像から得られる測色対象パッチCPのRGB値および基準チャート400の各基準パッチのRGB値を、通信手段600を利用して外部装置500に送信する。外部装置500は、画像形成装置100から受信した測色対象パッチCPのRGB値や基準チャート400の各基準パッチのRGB値を用いて測色対象パッチCPの測色値を算出し、算出した測色対象パッチCPの測色値に基づいて、画像形成装置100の特性を記述したデバイスプロファイルを生成あるいは修正する。そして、外部装置500は、このデバイスプロファイルを、通信手段600を利用して画像形成装置100に送信する。画像形成装置100は、外部装置500から受信したデバイスプロファイルを保持し、画像形成を行う際には、このデバイスプロファイルに基づいて画像データを補正し、補正後の画像データに基づいて画像形成を行う。これにより、画像形成装置100は色再現性の高い画像形成を行うことができる。
また、外部装置500が、測色対象パッチCPの測色値に基づいて生成した画像形成装置100のデバイスプロファイルを保持し、外部装置500において画像データの補正を行うようにしてもよい。すなわち、画像形成装置100は、画像形成を行う際に、画像データを外部装置500に送信する。外部装置500は、画像形成装置100から受信した画像データを、自身が保持する画像形成装置100のデバイスプロファイルに基づいて補正し、補正した画像データを画像形成装置100に送信する。画像形成装置100は、外部装置500から受信した補正後の画像データに基づいて画像形成を行う。これにより、画像形成装置100は色再現性の高い画像形成を行うことができる。
また、画像形成装置100から外部装置500に対して測色対象パッチCPのRGB値および基準チャート400の各基準パッチのRGB値を送信する代わりに、撮像ユニット200が撮像した撮像画像そのものを送信するようにしてもよい。この場合は、外部装置500は、画像形成装置100から受信した撮像画像から測色対象パッチCPのRGB値や基準チャート400の各基準パッチのRGB値を求め、得られたRGB値を用いて測色対象パッチCPの測色値を算出する。
なお、上述した本実施形態に係る画像形成装置100や測色カメラ20(撮像ユニット200)を構成する各部の制御機能は、ハードウェア、または、ソフトウェア、あるいは、両者の複合構成を用いて実現することができる。本実施形態に係る画像形成装置100や測色カメラ20を構成する各部の制御機能をソフトウェアにより実現する場合は、画像形成装置100や測色カメラ20(撮像ユニット200)が備えるプロセッサが処理シーケンスを記述したプログラムを実行する。プロセッサにより実行されるプログラムは、例えば、画像形成装置100や測色装置内部のROMなどに予め組み込まれて提供される。また、プロセッサが実行するプログラムを、インストール可能な形式または実行可能な形式のファイルでCD−ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD−R、DVD(Digital Versatile Disc)などのコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録されて提供するようにしてもよい。
また、プロセッサにより実行されるプログラムを、インターネットなどのネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成してもよい。また、プロセッサにより実行されるプログラムを、インターネットなどのネットワーク経由で提供または配布するように構成してもよい。
以上、本発明の具体的な実施形態について詳細に説明したが、本発明は上述した実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で様々な変形や変更を加えながら具体化することができる。