JP6106947B2 - 浄水処理方法 - Google Patents

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本発明は、浄水処理方法に関するものである。
近年では、通常の浄水処理では十分に対応できない臭気物質やトリハロメタン生成物質、陰イオン界面活性剤、アンモニア態窒素などを処理するために、いわゆる高度浄水処理が採用されている。高度浄水処理としては、オゾン処理法、活性炭処理法及び生物処理方法等があり、被処理水の状況によってこれらの処理方法が単独又はいくつか組み合わされて用いられている。
このうち、活性炭処理法には、浄水場の急速ろ過池の上流側又は下流側に、粒状活性炭層によるろ過を行う活性炭ろ過池を設けるものの他、図2及び図12に示すように、活性炭ろ過池を設けず、着水井6又はその上流の導水路5において原水RWに粉末活性炭DC,WCを添加するものが知られている。後者は、乾燥状態のドライ粉末活性炭DCを攪拌槽17で給水SWに混合してスラリーにした後、エジェクタからなる添加装置16を用いて原水RWに添加する(ドライ粉末活性炭利用)タイプの他、水分を含有するウエット粉末活性炭を攪拌槽17で給水SWに混合してスラリーにした後、このスラリーをポンプ18により原水RWに混合する(ウエット粉末活性炭利用)タイプがある。図中の符号15は定量供給装置を示している。これらはいずれも既設浄水場への付加が容易なものであるが、ウエット粉末活性炭利用タイプでは活性炭供給制御をスラリーの供給ポンプ18により行うこととなるため、添加量の制御範囲が比較的に狭いという問題点があるのに対して、ドライ粉末活性炭利用タイプでは粉末の定量供給制御のため、添加量の制御範囲が比較的に広いという利点がある。
特開平10−309567号公報 特許4468895号公報 特開平9−155334号公報 特開2000−296320号公報 特開2003−275568号公報
しかしながら、従来の粉末活性炭添加方法は、水源水質・浄水量によっては活性炭の消費量が多く、付帯設備も大規模なため、イニシャルコスト及びランニングコストが嵩むという問題点の他、活性炭消費量が多い場合は沈殿池排泥及び排水処理汚泥量が増加するという問題点もある。
この問題点のうち活性炭の消費量を改善するものとして、平均粒度が0.01〜10μm程度の微粉末を用い、吸着性能の向上により活性炭消費量を低減するものが提案されている(特許文献1,2参照)。しかし、これらの微粉末を用いた場合、1μm以下の微粉末活性炭がろ過池で回収できずに漏出するおそれがあるため、膜分離が必須となる。特に、オンサイトでの湿式粉砕を用いる特許文献2記載の方法では、特に1μm以下を目標とする場合には循環粉砕(活性炭を粉砕機に繰り返し通して行う粉砕)を行うこととなるため処理時間が長く、粒径分布の安定性に乏しく、粒径1μm以下の超微粉末を多く含むものとなる。よって、この従来方法では、付帯設備の大規模化、イニシャルコストの高騰、活性炭の安定供給の困難性は解決できない。また、特許文献2記載の方法では、前述のウエット粉末活性炭利用タイプと同様に、活性炭供給制御をスラリーの供給ポンプ18により行うこととなるため、添加量の制御範囲が比較的に狭いという問題点もある。
他方、スラリー化を省略するものとして、特許文献3〜5記載のものも提案されているが、粉末活性炭の消費量等、他の問題点を解決するものではない。
そこで、本発明の主たる課題は、活性炭の消費量を低減しつつ、微粉末活性炭のろ過池からの漏出を防止すること、等にある。
上記課題を解決した本発明は次記のとおりである。
<請求項1記載の発明>
活性炭原料を粉砕することにより、D10が2.1〜2.4μm、D50が4.1〜5.9μm、かつD90が7.4〜14.1μmの粒度分布を有する粉末活性炭を製造し、この製造した粉末活性炭を、浄水場における着水井又はその上流側で被処理水に添加し、沈澱池及びろ過池で被処理水から粉末活性炭を除去することにより被処理水を浄化し、被処理水から粉末活性炭を膜分離により分離除去しない、ことを特徴とする浄水処理方法。
(作用効果)
このように被処理水に添加する粉末活性炭の粒度分布をシャープにすることにより、吸着性能の向上により活性炭消費量(ひいては沈殿池排泥及び排水処理汚泥量)を低減しつつ、ろ過池で回収できないような超微粉を殆ど含まないことにより、ろ過池からの超微粉の漏出のおそれも低減できるようになる。また、活性炭消費量の低減化により付帯設備の縮小化を図ることができる。
また、本発明では、ろ過池で回収できないような超微粉を殆ど含まない粉末活性炭を添加するため、膜分離を用い無くて済み、その結果、付帯設備の減少及びそれに伴うイニシャルコストの低減がより一層のものとなる。
なお、周知のように、D10、D90とは、粒度分布における累積体積分布の小径側から累積10%、累積90%に相当する粒径をそれぞれ意味し、粒径はレーザー回折散乱法により測定される粒径を意味する。
以上のとおり、本発明によれば、活性炭の消費量並びに沈殿池排泥及び排水処理汚泥量を低減しつつ、微粉末活性炭のろ過池からの漏出を防止できる、等の利点がもたらされる。
浄水処理設備のフロー図である。 従来のドライ粉末活性炭利用浄水処理設備のフロー図である。 粒度D50と2−MIB価との関係を示すグラフである。 粒度D10と2−MIB価との関係を示すグラフである。 粒度D90と2−MIB価との関係を示すグラフである。 粒度と2−MIB価との関係を示すグラフである。 粒度D50と2−MIB価(原料比)との関係を示すグラフである。 粒度D10と2−MIB価(原料比)との関係を示すグラフである。 粒度D90と2−MIB価(原料比)との関係を示すグラフである。 粒度と2−MIB価(原料比)との関係を示すグラフである。 粒度D10、D50及びD90の関係を示すグラフである。 従来のウエット粉末活性炭利用浄水処理設備のフロー図である。
以下、本発明の一実施形態について添付図面を参照しながら詳説する。
図1は浄水場における浄水処理設備のフロー図であり、導水路5を経て着水井(又は原水槽)6に供給された河川水などの原水(被処理水)RWを、凝集剤等を添加混合するための混和池1、フロックを形成するためのフロック形成池2、フロックを沈殿させるための沈殿池3、及び砂層等で水をろ過するろ過池4を経て浄化する一般的な浄水形態を基本として、原水RWの混和池1への供給に先立ち、粉末活性炭添加設備10により着水井6又はその上流の導水路5等で原水RWに粉末活性炭FCを添加するようにしたものである。
粉末活性炭添加設備10は、粉末状の活性炭原料CCを貯留する活性炭貯留槽11と、この活性炭貯留槽11に貯留された活性炭原料が定量供給され、D10が2〜4μm、かつD90が4〜20μmの粒度分布の粉末活性炭FCが排出される粉砕機14と、この粉砕機14から排出される粉末活性炭FCを原水RWに添加するための添加装置16とを備えている。
活性炭貯留槽11から粉砕機14への原料供給路にはロータリーバルブ12及びスクリューフィーダ13を組み合わせた原料供給装置12,13が設けられている。この原料供給装置12,13としては、ロータリーフィーダ等の他の定量供給装置を用いることもできる。
また、粉砕機14から添加装置16までの粉砕品供給路にはスクリューフィーダ13からなる粉砕品定量供給装置15が設けられている。この粉砕品供給装置15としては、ロータリーフィーダ等の他の定量供給装置を用いることもできる。
粉砕機14としては、湿式粉砕機14を用いることもできるが、安定的にシャープな粒度分布が得られにくいため、一回の粉砕処理により本発明のシャープな粒度分布が得られる点で、乾式ビーズミル、ジェットミル等の乾式粉砕機が好ましく、中でも乾式ビーズミルが特に好ましい。また、粉砕機14としてはバッチ式のものより、連続式のものが好ましい。
添加装置は16、特許文献1,2に例示されるように攪拌槽及び活性炭スラリーの供給ポンプを用いることもできるが、特許文献3〜5に例示されるようにエジェクタを用いるのが好ましい。図示例はエジェクタを用いる場合を示している。エジェクタを用いる場合、直前に粉砕粉末に水を添加しても良いが、粉砕粉末を乾燥状態のままエジェクタを通る水流に吸引させるのが好ましい。
運転に際しては、活性炭貯留槽11の活性炭原料CCが原料供給装置12,13により切り出されて粉砕機14に定量供給され、粉砕機14においてD10が2.1〜2.4μm、D90が7.4〜14.1μmの粒度分布まで粉砕がなされる。D50(周知のように、粒度分布における累積体積分布の小径側から累積50%に相当する粒径を意味し、一般に平均粒径ともいわれている。粒径はレーザー回折散乱法により測定される粒径を意味する。)は、4.1〜5.9μmである。一方、活性炭原料としては、市販品を用いることができる。
粉砕機14から排出される粉砕品(粉末活性炭FC)は、上流側に戻さずにそのまま(つまり一回だけ粉砕機14に通す)粉砕品供給装置15により移送されて添加装置16に対して定量供給され、添加装置16において、原水RWの一部を取り出す等により定流量で供給される給水SWに対して混合された後、そのまま活性炭添加位置である着水井6又はその上流の導水路5等で原水RWに添加される。原水RWに対する混合量は水源水質や浄水量に応じて適宜定めることができる。着水井6又はその上流の導水路5等で粉末活性炭FCが添加された原水RWは、粉末活性炭FCに臭気物質やトリハロメタン生成物質が吸着されることにより浄化されつつ、混和池1、フロック形成池2、沈殿池3、及びろ過池4の順に通され、沈殿池3及びろ過池4において粉末活性炭FCが除去されて、処理済み水CWとなる。
この際、原水RWに添加する粉末活性炭FCの粒度分布がシャープであるため、吸着性能の向上により活性炭消費量(ひいては沈殿池3排泥及び排水処理汚泥量)を低減しつつ、ろ過池4で回収できないような超微粉を殆ど含まないことにより、ろ過池4からの超微粉の漏出のおそれも低減できるようになる。その結果、粉末活性炭FCの除去のために膜分離を用い無くて済み、その分だけ付帯設備の減少及びそれに伴うイニシャルコストの低減を図ることができる。
また、図示形態の場合、乾燥状態の活性炭原料CCを乾式粉砕し、粉砕品(粉末活性炭FC)を乾燥状態のまま添加装置16に対して定量供給するため、付帯設備が少なくて済み、それによってイニシャルコストも低く抑えることができる。さらに、粉末活性炭FCの供給制御が乾燥粉末の定量供給制御となるため、活性炭の供給をより高精度に行うことができる。
<吸着性能試験>
一般的に粉末活性炭の性能指標として知られる項目のうち、微粉化することで飛躍的にその効果が向上するのは、臭気物質である2−MIBに対する吸着性能を表す2−MIB価が主な指標あり、その他指標は原料と同等の値を示す。そこで、種々の粉砕方式により種々の粒度分布の粉砕品を得て、原料及び各粉砕品について2−MIB価を測定し、粉砕方式や粒度分布の違いが2−MIB価に及ぼす影響を調べた。この試験では、D50=3μmを目標に粉砕を行った。なお、表1中の湿式ビーズミルを用いたものは循環粉砕を行い、その他のものは湿式・乾式ともに循環粉砕ではなく一回だけ粉砕機に通して粉砕を行った。
表1に試験結果を示す。また、図3〜6に粒度D10、D50、D90と2−MIB価との関係を示し、図7〜11に粒度D10、D50、D90と2−MIB価(原料比)との関係を示す。なお、図中の用語「原料粉末炭」は原料を意味し、「粉末炭」は粉砕品を意味する。
この結果から、粒度分布の小径化に対して2−MIB価は減少していくが、その減少はある程度で底打ちする傾向があり、超微粉は吸着性能向上への寄与が少ないことが判明した。この試験結果から判明したこと及び考察を以下に列挙する。
・ 2−MIB価に関して、原料が同等品であれば、各粉砕品の粒度D50との間に相関が認められた(図3〜6)。
・ 粒度D50が小さいほど、2−MIB価が小さくなる(吸着性能が向上する)傾向が認められた。
・ 原料の値で基準化すると、原料が違ってもプロットが重なった。(図7)
・ 粒度D50原料比が0.2程度で2−MIB価が下げ止まりつつある傾向にあることが認められた。よって原料に対する性能向上効果の限界粒度D50は原料粒度D50の0.2倍程度と考えられ、粉砕を行うにあたり、粉砕品の目標粒度D50としては原料粒度D50の0.1〜0.2倍程度がひとつの目安になることが判明した。ただし、原料粒度にばらつきがあるため性能安定性を考慮すると、目標粒度をD50=3〜4μmとすることが望ましい。
・ なお、一般的な浄水場ではろ過池等の出口濁度を0.1度以下に維持するろ過設備が整備されている。クリプトは3〜8μm程度の大きさを示す原虫であり、上記3μmを目標粒度とした粉砕品と同等な大きさである。よって、クリプトを濁質と見なせば、D10が2〜3μm程度の粉砕品はろ過池にておおよそ現状の濁度管理下で補足可能であることは容易に推測される。逆に、現状濁度管理下では、クリプトの大きさでも極僅かなリークは許容されていることからも明らかなように、必要以上に微細な粉砕品が多くなるとろ過池から漏出することも容易に推測される。
<粉砕方式の比較試験>
表2に各種粉砕機の粉砕試験結果を示す。この試験では、吸着性能試験結果からD50=3μmを目標に粉砕を行った。なお、表3中の活性炭処理エネルギーとは活性炭1kg処理するのに要する電力量を意味している。また、表3中の湿式に属するものは循環粉砕を行い、表2中のものは湿式・乾式ともに循環粉砕ではなく一回だけ粉砕機に通して粉砕を行った。
この試験結果からは乾式粉砕機、特に乾式ビーズミルが好適であることが分かる。表3の試験結果から判明したこと及び考察を以下に列挙する。
・ No.1と5との比較から、乾式は安価な5mmビーズを使用しても、少ないエネルギーで同等の粒度D50が得られることが判明した。
・ No.1と2との比較から、高価な微小セラミックビーズを使用しても、粒度D50に顕著な変化は見られないことが判明した。
・ No.2と5との比較から、乾式は安価な5mmビーズを使用しても、同じエネルギーでさほど変わらない粒度D50が得られることが判明した。
・ No.3と7との比較から、乾式は安価な3mmビーズを使用しても、同じエネルギーでほぼ同じ粒度D50が得られることが判明した。
・ 同じエネルギー効率にも関わらず、乾式の方が圧倒的に安価なビーズで所望の粒度の微粉炭を得られることが判明した。
・ No.6と8との比較から、原料粒度に倍半分相違があるため、同じエネルギーではNo.8の方が微粉炭粒度が大きくなる傾向が認められるが、No.7と9との比較から、わずかに小さいビーズにすることで、原料粒度が倍かつ同じエネルギーにも関わらず同等な粒度の微粉炭を得られることが判明した。
・以上より、乾式ビーズミルであれば、安価な2.8mm程度のビーズを使用しても、原料のバラつきに左右されず、低エネルギーにD50=3μm前後の微粉炭を得ることができる。
<原料粒度の粉砕への影響の確認試験>
粒径の異なる原料を用意し、乾式ビーズミルを用いて粒度D50=3μmを目標に粉砕(循環粉砕ではなく一回だけ粉砕機に通して粉砕を行った)し、粉砕品のD10,D50,D90を測定した。測定結果を表4に示す。また、この測定結果をグラフ化したものを図11に示す。図11中の下側の近似直線近辺に集中するプロットがD10であり、上側の近似直線近辺に集中するプロットがD90である。
この試験結果から、原料のバラつきや粉砕条件(粉砕エネルギー効率など)が異なっても、乾式ビーズミルで得られた粉砕品の粒度D50とD10、D90の関係には一貫した傾向が認められた。つまり、乾式ビーズミルで得られる粉砕品の粒度分布は、粒度D50に対して一定の比率でばらついた。図11に示す直線近似より、D10はD50に対して、おおよそ0.4401倍の比率で変動しており、D90はD50に対して、おおよそ2.1162倍の比率で変動していることが分かる。粉砕品の目標粒度D50が3μmの場合、この比率を使用すると、D10・90はそれぞれ下記の数値となり、原料のバラつきや粉砕条件(粉砕エネルギー効率など)が異なっても、得られる粉砕品は下記式からD10〜90=1.3〜6.3μmの範囲の粒度分布を示すことが推測される。
D10 = 0.4401×D50(μm) ≒ 1.3 μm
D90 = 2.1162 × D50(μm) ≒ 6.3 μm
本発明は、河川水、各種工業用水等の被処理水を活性炭により浄化するのに利用される。
1…混和池、2…フロック形成池、3…沈殿池、4…ろ過池、10…粉末活性炭添加設備、RW…原水、SW…給水、11…活性炭貯留槽、12…ロータリーバルブ、13…スクリューフィーダ、12,13…原料供給装置、14…粉砕機、15…粉砕品供給装置、16…添加装置、17…攪拌槽、FC…粉末活性炭、CC…活性炭原料、CW…処理済み水、DC…ドライ粉末活性炭、WC…ウエット粉末活性炭。

Claims (1)

  1. 活性炭原料を粉砕することにより、D10が2.1〜2.4μm、D50が4.1〜5.9μm、かつD90が7.4〜14.1μmの粒度分布を有する粉末活性炭を製造し、この製造した粉末活性炭を、浄水場における着水井又はその上流側で被処理水に添加し、沈澱池及びろ過池で被処理水から粉末活性炭を除去することにより被処理水を浄化し、被処理水から粉末活性炭を膜分離により分離除去しない、ことを特徴とする浄水処理方法。
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