図1は、本発明を適用可能な補助動力付車椅子の一例を示す左側面図である。図2は、図1に例示した補助動力付車椅子を後方から見た背面図である。両図および以下に示す図面では、車椅子1に着座した乗員から見て、前方向に符号Dfを、後方向に符号Dbを、左方向に符号Dlを、右方向に符号Drを適宜付する。本実施形態で例示する補助動力付車椅子(以下、単に「車椅子」と適宜称する)1は、パイプで構成された車体フレーム2に対して、左右一対の車輪3と、左右一対のハンドリム4と、左右一対のキャスタCとを取り付けた概略構成を備え、車輪3とキャスタCとで地面に立つ。そして、乗員は、車椅子1の中央部に設けられたシート11に着座した状態でハンドリム4を操作することで、車輪3を回転させて車椅子1を運転することができる。この際、各車輪3に設けられた動力補助機構10が車輪3に補助動力を与えて、乗員による車輪3の駆動をアシストする。
車体フレーム2は左右一対のサイドフレーム20を有し、各サイドフレーム20は複数のアームで構成されている。具体的には、各サイドフレーム20は、後方部に立設されたハンドルアーム21と、ハンドルアーム21から前方に延びるシート支持アーム22と、ハンドルアーム21とシート支持アーム22を接続する接続アーム23とを有する。各ハンドルアーム21の上方部は後方に屈曲しており、当該上方部それぞれに介助者用のグリップ21aが取り付けられている。左右一対のシート支持アーム22の間には、乗員が着座するための布製のシート11が架設されており、左右一対のハンドルアーム21の間には、着座した乗員用の背もたれ12が架設されている。各シート支持アーム22の前方部22aは下方に屈曲しており、当該前方部22aの下端に設けられたフットレスト取付部22bに対して図示を省略するフットレストが着脱自在となっている。さらに、各サイドフレーム20は、シート支持アーム22の前方部22aから後方に延びるキャスタ支持アーム24を有しており、キャスタ支持アーム24に設けられたキャスタ取付部24aに対してキャスタCが取り付けられる。
左右一対のサイドフレーム20のうち右側のサイドフレーム20には、バッテリ13が取り付けられている。バッテリ13は、各車輪3に設けられた動力補助機構10に電力を供給するものであり、ハンドルアーム21の後方に配置されている。なお、このバッテリ13は、左側の車輪3に設けられた動力補助機構10に対しては、ケーブル14を介して電力を供給する。
車体フレーム2の左右両側には車軸30が取り付けられており、各車軸30に対して車輪3およびハンドリム4がそれぞれ回転自在に取り付けられている。具体的には、車軸30を中心とする円環状の車輪3の内周側に配置された円形のホイールハブ5が、各車軸30に対して回転自在に取り付けられており、ホイールハブ5の周縁部から外周側に延びる複数のスポーク31が車輪30に接続されている。これによって、車輪3は、ホイールハブ5と一体的に車軸30の周りを回転自在となっている。さらに、車軸30を中心とする円環状のハンドリム4の内周側であってホイールハブ5の外側に配置されたリムベース6が、各車軸30に対して回転自在に取り付けられており、リムベース6の周縁部から外周側へ放射状に延びる3本のスポーク41がハンドリム4に接続されている。これによって、ハンドリム4は、リムベース6と一体的に車軸30の周りを回転自在となっている。なお、リムベース6はホイールハブ5から独立して回転自在に設けられており、ハンドリム4は、車軸30の周りで車輪3とは個別に回転できる。
各ハンドリム4は、弾性部材(後述するスプリング)を介して隣接する車輪3に当接しており、乗員がハンドリム4に加えたトルクは、弾性部材を介して車輪3に伝達されて、車輪3を回転させる。この際、乗員からのトルクを受けて弾性部材が変形する量に応じた分だけ、ハンドリム4が車輪3に対して変位する。そして、車椅子1が備える動力補助機構10は、車輪3に対するハンドリム4の変位量を測定した結果に基づいてハンドリム4に加えられたトルクを検出するとともに、検出されたトルクに応じた補助動力を車輪3に与える。続いては、この動力補助機構10について詳述する。
図3は、動力補助機構の周囲の構成を拡大して示す正面断面図である。同図および以下の図面では、車軸30が延びる左右方向に車軸方向Daを適宜付する。動力補助機構10は、車輪3に補助動力を与えるパワーユニット9を、ホイールハブ5の車軸方向Daの内側に備える。パワーユニット9は、モータ91が発生する駆動力を、複数のギアの配列で構成される動力伝達系95を介してホイールハブ5へ与えて、車輪3を回転させる。
モータ91は、ベアリング911を介して車軸30に回転自在に取り付けられたモータ軸912と、モータ軸912に取り付けられたロータ913と、車軸方向Daの外側からロータ913に対向するステータ914とを有する。ロータ913は、モータ軸912に取り付けられて車軸30を中心とする円環状のバックヨーク913aと、バックヨーク913aの車軸方向Da外側に取り付けられて車軸30を中心とする円環状の磁石913bとで構成されている。そして、ロータ913の磁石913bがステータ914に対向する。ステータ914は、車軸30を中心とする円環状に複数のコイルを配列した構成を具備しており、車軸30に固定されている。したがって、ステータ914の各コイルに電流が印加されることで、ロータ913がモータ軸912を伴って車軸30の周りで回転する。そして、モータ軸912のトルクが、動力伝達系95のギア951〜955を介して、ホイールハブ5へ伝わる。こうして、モータ91が生成した動力(補助動力)を受けて、ホイールハブ5と共に車輪3が回転する。
ホイールハブ5は、ボールベアリング51を介して車軸30に対して取り付けられている。ホイールハブ5の周縁部52は車軸方向Da内側に屈曲されてスポーク31が取り付けられている一方、ホイールハブ5の中央部53は車軸方向Daに肉厚に形成されている。ホイールハブ5の中央部53の外側面は、車軸方向Daの外側に突出して、リムベース取付部54を構成する。ホイールハブ5のリムベース取付部54には、ボールベアリング61を介してリムベース6が取り付けられている。このように、リムベース6は、ホイールハブ5のリムベース取付部54を介して車軸30に取り付けられており、ホイールハブ5から独立して車軸30の周りを回転することができる。また、ホイールハブ5およびリムベース6の外側面は、円形カバーJ1と、当該円形カバーJ1を囲む環状カバーJ2とで覆われている。
リムベース6からホイールハブ5へは、動力補助機構10が有するスプリングS1、S2(コイルスプリング)を介して、トルクを伝達できるように構成されている。つまり、ホイールハブ5において周縁部52と中央部53の間に設けられたスプリング保持面55には、円筒形状のスプリングカバー56が取り付けられており、スプリングカバー56内にスプリングS1、S2(圧縮バネ)が概ねホイールハブ5の周方向に配置されている。スプリングS1の径はスプリングS2の径よりも大きく、スプリングS1の中にスプリングS2が挿入されている。また、スプリングS1、S2の少なくとも一方は、予め縮んだ状態(つまり、与圧された状態)でスプリングカバー56に収容されている。
図4は、円形カバーおよび環状カバーを外した際の動力補助機構の周囲の構成を示す側面図であり、ハンドリム4にトルクが印加されていない状態を示している。図5は、ホイールハブに取り付けられたスプリングカバー、スプリングおよびリムベースの位置関係を示す部分断面図であり、スプリングの伸縮方向から見た状態を示している。図3に図4および図5を加えて、動力補助機構10について説明を続ける。なお、図4に示すように、3個のスプリングカバー56が周方向に等ピッチで設けられているが、各スプリングカバー56に関する構成はいずれも同一であるので、ここでは、1個のスプリングカバー56に対して設けられた構成を中心に説明を行う。
ホイールハブ5に取り付けられたスプリングカバー56内には、一対のスライダ57がスプリングS1、S2の伸縮方向(概ねホイールハブ5の周方向)に互いに対向した状態で収容されている。各スライダ57は、一方面が開口して他方面が閉塞した中空の円筒形状を有しており、各スライダ57の開口が向き合っている。そして、これらスライダ57の間にスプリングS1、S2が挿入されており、各スライダ57は、スプリングS1、S2によって相互に離間する方向に付勢されつつ、スプリングS1、S2の伸縮方向へ移動自在となっている。その結果、図4に示す状態では、各スライダ57がスプリングS1、S2の付勢力で外側に押し遣られて、スプリングカバー56の各端に当接している。
一方、リムベース6は、一対のスライダ57をスプリングS1、S2の伸縮方向から挟むように配置された一対の押圧部62を有する。図5に示すように、スプリングS1、S2の伸縮方向から見て、ホイールハブ5およびスプリングカバー56はスライダ57の中心部から両端に外れており、各スライダ57の中心部は、隣接する押圧部62に対して露出している。また、図4に示すように、両押圧部62の間の距離は、スプリングカバー56の各端の間の距離に等しい。その結果、図4に示す状態では、各押圧部62は、スプリングカバー56の各端に当接する各スライダ57に、当該スライダ57の中心部で接している。このような構成では、前進方向Dfあるいは後進方向Db(方向Df、Dbは互いに逆向き)に向かうトルクがハンドリム4に印加されると、リムベース6は、スプリングS1、S2の弾性力に抗しつつ、ホイールハブ5に対してトルクの印加方向へ変位する。
図6は、ハンドリムに印加されたトルクに応じてリムベースがホイールハブに対して変位した様子を示す側面図であり、後進方向Dbに向かうトルクが印加された状態を示している。図3〜図5に図6を加えて、動力補助機構10について説明を続ける。後進方向Dbに向かうトルクがハンドリム4に印加されると、リムベース6において対を成す押圧部62のうち、前進方向Df側の押圧部62は、それが接するスライダ57に対して後進方向Dbへ向かうトルクを与える。そして、前進方向Df側の押圧部62からスライダ57へ与えられたトルクが、スプリングS1、S2の与圧を超えると、前進方向Df側の押圧部62は、スプリングS1、S2の弾性力に抗してスライダ57を後進方向Dbへ押し遣り、その結果、ハンドリム4は車輪3に対して後進方向Dbに回転する。そして、ハンドリム4に与えられたトルクによってスライダ57に働く力と、スプリングS1、S2の弾性力との合力がゼロとなるまで、ハンドリム4は車輪3に対して変位する。この際、車輪3に対するハンドリム4の後進方向Dbへの変位量は、乗員がハンドリム4に与えるトルクの大きさに応じた(比例した)ものとなる。
なお、ここでは、後進方向Dbに向かうトルクがハンドリム4に与えられた場合を例示したが、前進方向Dfに向かうトルクがハンドリム4に与えられた場合についても、車輪3に対するハンドリム4の変位方向が逆である点を除き、同様の動作が実行される。つまり、乗員がハンドリム4に与えるトルクの大きさに応じた(比例した)変位量だけ、ハンドリム4は、車輪3に対して前進方向Dfへ変位する。
また、図3および図6に特に示されるように、車輪3に対するハンドリム4の変位を制限する構成が設けられている。具体的には、リムベース6に形成された環状溝63には環状部材64が嵌入されており、当該環状部材64は2本のボルト65によってリムベース6にネジ止めされている。したがって、これらのボルト65はハンドリム4に伴って、車輪3に対して回転方向Df、Dbに変位する。一方、ホイールハブ5に対しては円弧状の溝58が形成されており、リムベース6にネジ止めされた各ボルト65のボス部65aは、当該溝58の内側を移動する。したがって、車輪3に対するハンドリム4の前進方向Dfへの変位は、前進方向Dfのボルト65のボス部65aが溝58の前進方向Df端部に当接するまでの範囲に制限される。同様に、車輪3に対するハンドリム4の後進方向Dbへの変位は、後進方向Dbのボルト65のボス部65aが溝58の後進方向Db端部に当接するまでの範囲に制限される。
ちなみに、ホイールハブ5には、溝58の内側に設けられた円弧状の貫通孔59が形成されている。そして、貫通孔59には、コア部材70の係合部70aが嵌入している。これら貫通孔59やコア部材70の係合部70aの役割については、図7などを用いて後述する。
上述したように、ハンドリム4は、乗員が与えたトルクに応じた量だけ、車輪3に対して変位する。そこで、動力補助機構10は、車輪3に対するハンドリム4の変位量を測定し、その結果に基づいてハンドリム4に加えられたトルクを検出する。このようなハンドリム4の変位量の具体的な測定手法は、例えばポテンショメータを用いたものなど種々の手法を採用できるが、ここでは磁気センサを用いた手法について説明する。
図7は、動力補助機構が備える変位量検出器の周囲を拡大して示す正面断面図である。図8は、変位量検出器を構成する各部材の関係を示す側面図である。変位量検出器7では、車軸30を中心とする円環状に構成された環状磁石72が、ホイールハブ5の内側に固定板720を介して取り付けられている。環状磁石72は、N極721とS極722とを交互に所定の配列ピッチPmで環状に配列した構成を具備する(図8の例では、18個の磁極721、722が20度の配列ピッチPmで配列されている)。そして、環状磁石72は、ホイールハブ5に伴って車軸30の周りを回転する。
さらに、変位量検出器7では、車軸30を中心とする円環状に構成された環状プレート73が設けられている。環状プレート73は磁性体(例えば、強磁性体である鉄)であり、車軸方向Daにおいて、内側から環状磁石72に隣接する。環状プレート73は、径方向の外側に突出して車軸方向Daから環状磁石72に対向する複数の凸部731を所定の配列ピッチPpで環状に配列した構成を具備する(図8の例では、9個の凸部731が40度の配列ピッチPpで配列されている)。この際、環状プレート73における凸部731の配列ピッチPpは、環状磁石72における各磁極721、722の配列ピッチPmの偶数倍(図8では2倍)に設定されており、磁極721、722に対する凸部731の位置関係が、各凸部731について同一となるように構成されている。その結果、各凸部731は、環状磁石72が作り出す磁界の影響を同様に受けて、同程度に磁化する。なお、周方向に隣接する各凸部731の間の各凹部732では、環状プレート73は、環状磁石72から外れている。
図7に示すように、変位量検出器7は、本体70a、70bによって凹部732で環状プレート73を保持した概略構成を具備するコア部材70有する。コア部材70は、非磁性部材(例えば、樹脂)からなる本体70a、70bに環状プレート73を鋳込んで構成されており、車軸方向Daに延設された係合部70aと、係合部70aの車軸方向Daの内側端部から車輪30の径方向の中心側へ向かって延設された保持部70bとを有する。係合部70aは、ホイールハブ5に設けられた円弧状の貫通孔59から車軸方向Daの外側へ突出して、環状部材64に設けられた係合孔64aに係合する。環状部材64の係合孔64aは、コア部材70の係合部70aに対して同径あるいは若干大径に構成されている。上述のとおり、環状部材64はハンドリム4のリムベース6に固定されているため、ハンドリム4が回転すると、環状部材64の係合孔64aは係合するコア部材70を伴って回転し、その結果、コア部材70の本体70a、70bに保持される環状プレート73も回転する。ちなみに、コア部材70の係合部70aが嵌入するホイールハブ5の貫通孔59は、周方向に長さを有する円弧状に形成されているため、コア部材70は、貫通孔59に妨げられることなく、環状プレート73を伴って回転できる。このように、コア部材70の係合部70aの機能によって、環状プレート73は、ハンドリム4に伴って車輪3に対して変位する。
コア部材70の保持部70bは、車軸方向Daの内側で環状磁石72を車輪3の径方向に跨ぐように設けられており、この保持部70bに環状プレート73が鋳込まれている。こうして、環状プレート73は、コア部材70の保持部70bの機能によって、環状磁石72の車軸方向Daの内側で、環状磁石72に対して所定のクリアランスを空けて保持される。
さらに、変位量検出器7は、車軸方向Daにおいて環状プレート73を挟んで環状磁石72の反対側(換言すれば、環状プレート73の車軸方向Daの内側)に配置された磁気ヘッド76を有する。磁気ヘッド76は車軸30に固定されており、回転しない。磁気ヘッド76は、環状プレート73に対向する金属プレート761(例えば、鉄製)と、車軸方向Daの内側から金属プレート761に対向する磁気検出素子762と、車軸方向Daの内側から磁気検出素子762に対向するバックアップ部材763とを有する。このように磁気ヘッド76は、車軸方向Daにおいて金属プレート761とバックアップ部材763とで磁気検出素子762を挟んだ構成を具備する。金属プレート761は、環状磁石72によって磁化された環状プレート73が発生する磁界を集める集磁部材として機能する。一方、バックアップ部材763は、金属(例えば、鉄)で構成され、金属プレート761との間で磁界の経路を形成する機能を果たす。磁気検出素子762は、例えばホール素子などの磁気センサにより構成され、金属プレート761からバックアップ部材763へ到る磁界を検出して電気信号(電圧信号)を出力する。
上述したような構成を具備する変位量検出器7では、ハンドリム4に印加されたトルクに応じた大きさの電気信号が、磁気検出素子762から出力される。つまり、変位量検出器7では、トルクの印加によってハンドリム4が車輪3に対して変位すると、ハンドリム4に取り付けられた環状プレート73が、車輪3に取り付けられた環状磁石72に対して変位する。その結果、環状磁石72による環状プレート73の磁化の程度がハンドリム4の変位量に応じて変化し、磁気検出素子762が出力する電気信号が変化する。この点について、図9を追加して詳述する。ここで、図9は、変位量検出器を構成する各部材の関係を示す側面図であり、図8に示された部材と同様の部材が示されている。ただし、図8は、ハンドリム4にトルクが印加されていない状態に対応し、図9は、ハンドリム4に後進方向Dbへ向かうトルクが印加された状態に対応する。
図8に示すように、ハンドリム4にトルクが印加されていない状態では、環状プレート73の各凸部731は、N極721とS極722の境界に位置するため、両磁極721、722よる各凸部731の磁化が相殺して、環状プレート73は磁化しない。したがって、磁気検出素子762は、基準電圧に等しい電圧の電気信号を出力する。これに対して、例えば図9に示すように、ハンドリム4に後進方向Dbへ向かうトルクが印加された状態では、環状プレートの各凸部731は、N極721とS極722の境界よりもN極721側(後進方向Db側)にずれるため、環状プレート73は、S極722よりもN極721の影響を強く受けて、N極に磁化する。したがって、磁気検出素子762は、基準電圧より大きい電圧の電気信号を出力する。具体的には、電気信号は、N極721とS極722の境界に対する各凸部731の変位量に応じた大きさを有する。そして、かかる変位量は、上で詳述した理由からハンドリム4に印加されたトルクの大きさに応じたものとなる。その結果、磁気検出素子762は、後進方向Dbに加えられたトルクに応じた大きさの電気信号を出力する。
なお、ここでは、後進方向Dbに向かうトルクがハンドリム4に与えられた場合を例示したが、前進方向Dfに向かうトルクがハンドリム4に与えられた場合についても、磁気検出素子762からの電気信号の極性が逆(基準電圧より小さい電圧)である点を除き、同様の動作が実行される。つまり、磁気検出素子762は、前進方向Dbに加えられたトルクに応じた大きさの電気信号を出力する。
ところで、上記のような変位量検出器7を用いた場合、車輪3に対するハンドリム4の変位に時間的変化が無い場合は、変位量検出器7は、車輪3に対するハンドリム4の変位量に応じた一定の大きさの電気信号を出力し続ける。しかしながら、環状プレート73の複数の凸部731それぞれの長さが、製造誤差などに起因してばらつくことで、車輪3に対するハンドリム4の変位に時間的変化が無いにも関わらず、変位量検出器7が出力する電気信号の大きさが時間的に揺らぐことがある。
つまり、車輪3に対するハンドリム4の変位に時間的変化が無い状態で車椅子1が走行している場合は、車輪3とハンドリム4とは一定の変位量を維持しながら、車軸30の周りを回転する。その結果、車輪3側の環状磁石72とハンドリム4の環状プレート73とは、一定の位相差を維持しながら磁気ヘッド76の前を通過する。この際、環状磁石72と環状プレート73の位相差が一定であることから、環状プレート73は、当該位相差に応じた一定量だけ磁化する。しかしながら、環状プレート73において周方向に並ぶ複数の凸部731の長さがばらついていると、環状プレートの磁化の程度が周方向の位置によって変動してしまい、磁気ヘッド76が出力する電気信号が、これに応じて揺らいでしまう(磁気ノイズ)。
そこで、車椅子1では、複数(具体的には2個)の変位量検出器7が各車輪3に対して設けられている(図10)。ここで、図10は、変位量検出器の配置態様を例示する側面図である。同図では、車軸30の中心を通り鉛直方向に延びる仮想直線Dと、車軸30の中心を通り水平方向に延びる仮想直線Gとが併記されている。さらに、仮想直線D、Gの交点を中心として、各変位量検出器7の磁気検出素子762から仮想直線Dに到る角度E、Fが併記されている。角度E、Fはいずれも70度に設定されており、両磁気検出素子762の間の角度(=E+F)は140度となっている。このように変位量検出器7を配置した構成では、上述のとおり環状プレート73での凸部731の配列ピッチPpが40度であるため、凸部731が一方の磁気検出素子762に径方向から対向するタイミングでは、凹部732が他方の磁気検出素子762に径方向から対向する。したがって、磁気検出素子762へ径方向から対向する位置を凸部731が順に通過する周期をT731としたとき、径方向から対向する凸部731による磁界を検出するタイミングは、両磁気検出素子762の間で半周期(=T731/2)だけずれる。その結果、両磁気検出素子762の間で、磁気ノイズの位相が概ね反転する。よって、両磁気検出素子762の電気信号を加算することで、磁気ノイズの影響が抑制された検出信号Spを生成することができる。
そして、動力補助機構10は、内蔵する制御基板8に搭載されたコントローラ80(図3)によって、車輪3に与える補助動力を制御する。図11は、補助動力付車椅子が備える電気的構成を部分的に示すブロック図である。なお、図11では、左輪3に対して設けられた動力補助機構10が装備するコントローラ80に符号80Lが付され、右輪3に対して設けられた動力補助機構10が装備するコントローラ80に符号80Rが付されている。さらに、図11では、動力補助機構10が備えるコントローラ80L、80Rのほか、車椅子1に設けられたユーザI/F87や、車椅子1に対する後述の設定作業に使用可能な制御端末装置100も併記されている。
左輪3に対して取り付けられた動力補助機構10の制御基板8には、左輪コントローラ80Lが搭載されている。左輪コントローラ80Lは、補助動力の制御を統括的に管理する主制御ユニット81と、補助動力の制御に必要な情報を記憶する不揮発性メモリ82とを有する。主制御ユニット81は、CPU(Central Processing Unit)810、ROM(Read Only Memory)811およびメモリ812で構成されたマイクロコンピュータである。
さらに、左輪コントローラ80Lは、各種ハードウェアとの間で信号を送受信するためのI/F(インターフェース)を有しており、具体的には、通信I/F83、モータ出力I/F84、エンコーダI/F85およびセンサI/F86を有する。通信I/F83は、右輪コントローラ80Lとの間で通信を行うものである。モータ出力I/F84は、モータ91に接続されており、主制御ユニット81は、モータ出力I/F84を介して駆動信号Sdをモータ91へ与える。これによって、モータ91は、駆動信号Sdに応じたトルクを生じる。エンコーダI/F85は、モータ91に設けられたエンコーダ91aに接続されており、主制御ユニット81は、エンコーダI/F85を介してエンコーダ91aの出力信号を受信し、モータ91の回転位置を把握する。
センサI/F86は、変位量検出器7に接続されており、主制御ユニット81は、センサI/F86を介して変位量検出器7の出力する電圧信号Svを受信する。なお、センサI/F86は、2個の変位量検出器7それぞれについて設けられており、主制御ユニット81には、各変位量検出器7からの電圧信号Svが入力される。また、上述のとおり、主制御ユニット81は、磁気ノイズの影響を抑制するために、各電圧信号Svを加算して、車輪3に対するハンドリム4の変位量を示す検出信号Spを取得する。そして、主制御ユニット81は、左側のハンドリム4について求められた検出信号Spに基づいて駆動信号Sdを生成し、この駆動信号Sdを左輪3に設けられた動力補助機構10のモータ91に与えることで、左側のハンドリム4に印加されたトルクに応じた補助動力を左輪3に与える。
右輪3に対して取り付けられた動力補助機構10の制御基板8には、右輪コントローラ80Rが搭載されている。右輪コントローラ80Rは、制御端末装置100との通信を行う通信I/F88をさらに備える点を除き、基本的に左輪コントローラ80Lと同一の構成を具備する。つまり、右輪コントローラ80Rにおいては、主制御ユニット81は、右側のハンドリム4について求められた検出信号Spに基づいて駆動信号Sdを生成し、この駆動信号Sdを右輪3に設けられた動力補助機構10のモータ91に与えることで、右側のハンドリム4に印加されたトルクに応じた補助動力を右輪3に与える。
さらに、右輪コントローラ80Rの主制御ユニット81は、車椅子1に設けられたユーザI/F87に接続されている。つまり、ユーザI/F87は、右輪コントローラ80Rの主制御ユニット81によって制御される。具体的には、主制御ユニット81は、ユーザI/F87の入力内容に応じた演算を実行したり、演算結果をユーザI/F87に表示したりする。
制御端末装置100は、CPUなどで構成された主制御ユニット110や不揮発性メモリ120などで構成されたパーソナルコンピュータ、携帯電話あるいはスマートフォンなどである。この制御端末装置100は通信I/F130を有しており、通信I/F130を介して車椅子1の右輪コントローラ80Rと通信することができる。さらに、制御端末装置100は、操作入出力I/F140と操作パネル150とを有しており、主制御ユニット110は、操作パネル150の入力内容に応じた演算を実行したり、演算結果を操作パネル150に表示したりする。
このように車椅子1では、ハンドリム4にトルクTが印加されると、ハンドリム4が車輪3に対して変位する。そして、コントローラ80L、80Rは、車輪3に対するハンドリム4の変位量Xに応じた大きさの検出信号Spを生成し、さらに検出信号Spの大きさに応じた駆動信号Sdを生成する。つまり、ハンドリム4に印加されたトルクTに基づいて、変位量X、検出信号Sp、駆動信号Sdが順に生成される。続いては、こうして実行される信号生成の詳細について説明する。
図12は、ハンドリムに印加されたトルクから各信号を生成する様子を模式的に示す図である。同図において、関数f1は、ハンドリム4に印加されたトルクTとハンドリム4の変位量Xとの関係を例示し、関数f2は、ハンドリム4の変位量Xと検出信号Spの関係を例示し、関数f3は、検出信号Spと駆動信号Sdとの関係を例示し、関数fm1は、ハンドリム4の操作方向により中立点の位置に違いが生じた場合におけるトルクTと変位量4との関係を例示する。
関数f1に示すように、車輪3に対するハンドリム4の変位量Xは、ハンドリム4に印加されるトルクTの増大に応じて増大する。つまり、前進方向Df(横軸右方向)へのトルクTが印加されると、トルクTの大きさに応じた変位量Xが前進方向Df(縦軸上方向)に発生し、後進方向DbへのトルクTが印加されると、トルクTの大きさに応じた変位量Xが後進方向Db(縦軸下方向)に発生する。ただし、上述のとおり、ハンドリム4から車輪3へトルクを伝達するスプリングS1、S2は与圧されている。そのため、トルクTがスプリングS1、S2の与圧を超えない与圧領域ΔT0にトルクTがある間は、ハンドリムTの変位量Xは生じず、トルクTが与圧領域ΔT0から外れると、トルクTの増大に比例してハンドリムTの変位量Xが増大する。なお、車輪3に対するハンドリム4の変位は、上述したボス部65aと溝58によって、前進方向Dfおよび後進方向Dbの両方向において制限されている。そのため、トルクTが値Tlfに達すると変位量Xは値Xlfで一定となりそれ以上変化しない。同様に、トルクTが値Tlbに達すると変位量Xは値Xlbで一定となりそれ以上変化しない。
関数f2に示すように、検出信号Spは、ハンドリム4に印加されるトルクTに比例して変化する。つまり、変位量Xが無い間は、基準電圧Vrと等しい電圧の検出信号Spが出力され、前進方向Df(縦軸上方向)への変位量Xが生じると、前進方向Dfに対応して基準電圧Vrより高い(横軸右方向)電圧の検出信号Spが発生し、後進方向Db(縦軸下方向)への変位量Xが生じると、後進方向Dbに対応して基準電圧Vrより低い(横軸左方向)電圧の検出信号Spが発生する。この際、検出信号Spの電圧値Vと基準電圧Vrとの差の絶対値(=|V−Vr|)で与えられる検出信号Spの大きさは、変位量Xの大きさに比例する。なお、関数f2を示すグラフでは、変位量Xが前進方向Dfの最大値Xlfであるときの検出信号Spの電圧が値Vlfと示され、変位量Xが後進方向Dbの最大値Xlfであるときの検出信号Spの電圧が値Vlbと示されている。
関数f3に示すように、駆動信号Sdは、検出信号Spの増大に応じて増大する。つまり、前進方向Df(横軸右方向)に対応する検出信号Spが発生すると、検出信号Spの大きさに応じた駆動信号Sd(縦軸上側の極性を有する)が発生して、前進方向Dfへ向かう補助動力が車輪3に与えられる。また、後進方向Db(横軸左方向)に対応する検出信号Spが発生すると、検出信号Spの大きさに応じた駆動信号Sd(縦軸下側の極性を有する)が発生して、後進方向Dbへ向かう補助動力が車輪3に与えられる。ただし、検出信号Spを駆動信号Sdに変換する関数f3(入出力特性)には不感帯Z3が設けられている。この不感帯Z3は、電圧値Vzbから電圧値Vzfに渡って設けられており、ハンドリム4が後述する中立点にあるときの検出信号Spの電圧値Vmf、Vmbを含むように設定されている。そのため、検出信号Spの電圧値が不感帯Z3にある間は、駆動信号Sdは生じず、モータ91は補助動力を生成しない。これに対して、検出信号Spの電圧値が不感帯Z3から外れると、検出信号Spの大きさの増大に応じて、駆動信号Sdの大きさが増大し、モータ91は検出信号Spの大きさに応じた補助動力を生成する。
このように、検出信号Spに対する駆動信号Sdの出力に不感帯Z3を設けることは、変位量Xに対する駆動信号Sdの出力、あるいはトルクTに対する駆動信号Sdの出力に不感帯Z2、Z1を設けることと実質的に同じである。つまり、関数f2、f3を合成した変換特性(以後、f3・f2と表記)によれば、変位量Xzbから変位量Xzfに渡る不感帯Z2に変位量Xがある間は、駆動信号Sdは生じず、モータ91は補助動力を生成しない。これに対して、変位量Xが不感帯Z2から外れると、変位量Xの大きさの増大に応じて、駆動信号Sdの大きさが増大し、モータ91は変位量Xの大きさに応じた補助動力を生成する。ここで、変位量Xzbは、検出信号Spの電圧値がVzbとなるときの変位量Xであり、変位量Xzfは、検出信号Spの電圧値がVzfとなるときの変位量Xである。また、関数f1、f2、f3を合成した変換特性によれば、トルクTzbからトルクTzfに渡る不感帯Z1にトルクTがある間は、駆動信号Sdは生じず、モータ91は補助動力を生成しない。これに対して、トルクTが不感帯Z3から外れると、トルクTの大きさの増大に応じて、駆動信号Sdの大きさが増大し、モータ91はトルクTの大きさに応じた補助動力を生成する。ここで、トルクTzbは、検出信号Spの値がVzbとなるときのトルクTであり、トルクTzfは、検出信号Spの電圧値がVzfとなるときのトルクTである。ちなみに、同図に示すように、不感帯Z1は与圧領域ΔT0を含む。
このような車椅子1では、乗員がハンドリム4を操作してハンドリム4にトルクTを印加すると、車輪3に対してハンドリム4が操作方向へ変位して、前進方向Dfにおいて印加されたトルクTがトルクTzfを超え、あるいは後進方向Dbにおいて印加されたトルクTの絶対値がトルクTzbの絶対値を超えると、車輪3を操作方向へ駆動する補助動力が生じる。また、乗員がハンドリム4へのトルクTの印加を止めると、ハンドリム4がスプリングS1、S2の弾性力によって中立点にまで戻るため、車輪3へ与えられていた補助動力は消失する。
ただし、ハンドリム4に対しては摩擦力が働くため、操作方向に変位した後に弾性力によって戻るハンドリム4は、弾性力と摩擦力を含む合力がゼロとなった位置に静止することとなる。その結果、ハンドリム4の静止位置、すなわち中立点は、ハンドリム4の静止前にハンドリム4が変位していた方向(操作方向)へ偏る傾向にある。しかも、車椅子3のハンドリム4は、乗員によって前進方向Dfおよび後進方向Dbの双方向へ操作されるため、前進方向Dfと後進方向Dbとの間で中立点Xmf、Xmbが異なって(Xmb<0<Xmf)、トルクTに対する変位量Xの出力は、関数fm1に示すようになる場合がある。これに対して、変位量Xを駆動信号Sdに変換する変換特性f3・f2の不感帯Z2は、中立点Xmf、Xmbの両方を含むように設定されている(Xzb<Xmb<0<Xmf<Xzf)。
なお、図12において、トルクTmfはハンドリム4が中立点Xmfにある状態におけるスプリングS1、S2の弾性力に起因するトルクであり、ハンドリム4が中立点Xmfで静止している状態において摩擦力と拮抗している。トルクTmbはハンドリム4が中立点Xmbにある状態におけるスプリングS1、S2の弾性力に起因するトルクであり、ハンドリム4が中立点Xmbで静止している状態において摩擦力と拮抗している。
以上のような車椅子に対しては、検出信号Spを駆動信号Sdに変換する変換特性(関数f3)のゲインGsや不感帯Z3がオペレータによって予め設定される。続いては、車椅子1に対するこれらの設定作業の一例について説明する。図13は、車椅子に対して実行される設定作業の一例を示すフローチャートである。図14は、図13のフローチャートで実行されるゲイン調整の一例を示すフローチャートである。図15は、図13のフローチャートで実行される不感帯設定の一例を示す図である。
図13に示すように、オペレータは、ゲイン調整(ステップS100)を行った後に、不感帯設定(ステップS200)を行う。図14に示すゲイン調整では、ステップS101〜S106が、右輪3および左輪3のそれぞれに対して順番に(例えば、右輪、左輪の順番に)実行される。つまり、ステップS101では、オペレータが可変範囲(Xlb〜Xlf)の前方端Xlfまで、ハンドリム4を車輪3に対して変位させる。そして、オペレータがステップS101を完了した旨をユーザI/F87を介して入力すると、右輪コントローラ80Rの主制御ユニット81が検出信号Spの電圧値Vlfを取得する(ステップS102)。続いて、ステップS103では、オペレータが可変範囲(Xlb〜Xlf)の後方端Xlbまで、ハンドリム4を車輪3に対して変位させる。そして、オペレータがステップS103を完了した旨をユーザI/F87を介して入力すると、右輪コントローラ80Rの主制御ユニット81が検出信号Spの電圧値Vlbを取得する(ステップS104)。
そして、右輪コントローラ80Rの主制御ユニット81は、検出信号Spの電圧値Vlf、Vlbを通信I/F88、130を介して制御端末装置100に送信する。そして、制御端末装置100は、主制御ユニット110の演算機能によって、次の演算式
Gs=Vtyp/(Vlf−Vlb)
に従ってゲインGsを算出する(ステップS105)。ここで、電圧Vtypは、右輪コントローラ82の不揮発性メモリ82に予め記憶されている正規化電圧である。ちなみに、ここでは、制御端末装置100がステップS105の演算を行う場合を示したが、制御端末装置100を用いずに車椅子1の設定を行うような場合には、右輪コントローラ80RがステップS105の演算を行っても良い。ステップS106では、ステップS105で求められたゲインGsが不揮発性メモリ82に記憶される。こうして、検出信号Spを駆動信号Sdに変換する変換特性(関数f3)のゲインGsの設定が、右輪3について完了する。
続いて、左輪3についても、同様にステップS101〜S106が実行されて、検出信号Spを駆動信号Sdに変換する変換特性(関数f3)のゲインGsの設定が、左輪3について完了する。両輪3についてゲインGsの設定が完了すると(ステップS107で「YES」)、図14に示すゲイン調整が完了して、図15に示す不感帯設定が行われる。
図15に示す不感帯設定では、ステップS201〜S211が、右輪3および左輪3のそれぞれに対して順番に(例えば、右輪、左輪の順番に)実行される。つまり、ステップS201では、オペレータは、右側のハンドリム4を車輪3に対して前進方向Dfへ、例えば変位量Xlfだけ変位させる。続くステップS202では、オペレータは、スプリングS1、S2の弾性力により、ハンドリム4を後進方向Dbへ戻す。この際、オペレータは、スプリングS1、S2の弾性力に抗したトルクをハンドリム4に与えつつ、ステップS202を実行することができる。換言すれば、オペレータは、自身がハンドリム4に与えるトルクとスプリングS1、S2の弾性力を含む合力がゼロとなる状態を維持しつつ、スプリングS1、S2の弾性力によってハンドリム4を準静的に後進方向Dbへ戻すことができる。このステップS202は、オペレータがハンドリム4にトルクを印加しない状態でハンドリム4が静止するまで継続される(ステップS203)。こうして静止した際のハンドリム4の変位量Xmfが、ハンドリム4の前進方向Dfにおける中立点の位置に対応する。そして、オペレータが右側のハンドリム4が静止した旨をユーザI/F87を介して入力すると、右輪コントローラ80Rの主制御ユニット81が検出信号Spの電圧値Vmfを取得する(ステップS204)。
続いて、ステップS205では、オペレータは、右側のハンドリム4を車輪3に対して後進方向Dbへ、例えば変位量Xlbだけ変位させる。続くステップS206では、オペレータは、スプリングS1、S2の弾性力により、ハンドリム4を前進方向Dfへ戻す。この際も、オペレータは、スプリングS1、S2の弾性力によってハンドリム4を準静的に前進方向Dfへ戻すことができる。このステップS205は、オペレータがハンドリム4にトルクを印加しない状態でハンドリム4が静止するまで継続される(ステップS207)。こうして静止した際のハンドリム4の変位量Xmbが、ハンドリム4の後進方向Dbにおける中立点の位置に対応する。そして、オペレータが右側のハンドリム4が静止した旨をユーザI/F87を介して入力すると、右輪コントローラ80Rの主制御ユニット81が検出信号Spの電圧値Vmbを取得する(ステップS208)。
そして、右輪コントローラ80Rの主制御ユニット81は、検出信号Spの電圧値Vmf、Vmbを通信I/F88、130を介して制御端末装置100に送信する。そして、制御端末装置100は、主制御ユニット110の演算機能によって、次の演算式
V0=(Vmf+Vmb)/2
に従って中点電位V0を算出する(ステップS209)。ちなみに、ここでは、制御端末装置100がステップS209の演算を行う場合を示したが、制御端末装置100を用いずに車椅子1の設定を行うような場合には、右輪コントローラ80RがステップS209の演算を行っても良い。ステップS210では、ステップS209で求められた中点電位V0が不揮発性メモリ82に記憶される。そして、ステップS211では、不感帯Z3の中央が中点電位V0に一致しつつ不感帯Z3が電圧値Vmf、Vmbを含むように、不感帯Z3が設定されて、不揮発性メモリ82に記憶される。こうして、検出信号Spを駆動信号Sdに変換する変換特性(関数f3)の不感帯Z3の設定が、右輪3について完了する。これによって、変位量Xを駆動信号Sdに変換する変換特性f3・f2において、不感帯Z2の中央が中立点Xzf、Xzbの中央に一致しつつ、不感帯Z2が中立点Xzf、Xzbを含むように、右輪3について不感帯Z2が設定される。
続いて、左輪3についても、同様にステップS201〜S211が実行されて、検出信号Spを駆動信号Sdに変換する変換特性(関数f3)の不感帯Z3の設定が、左輪3について完了する。これによって、変位量Xを駆動信号Sdに変換する変換特性f3・f2において、不感帯Z2の中央が中立点Xzf、Xzbの中央に一致しつつ、不感帯Z2が中立点Xzf、Xzbを含むように、左輪3について不感帯Z2が設定される。
以上に説明したように、本実施形態では、前進方向Dfおよび後進方向Dbの双方向へ車輪3に対して回転自在なハンドリム4が設けられており、車輪3とハンドリム4との間が、ハンドリム4に印加されたトルクTに応じて変形するスプリングS1、S2により接続されている。そのため、ハンドリム4は、ハンドリム4に印加されたトルクTに応じた変位量Xだけ、車輪3に対して変位する。さらに、車椅子1は、車輪3に対するハンドリム4の変位量Xを駆動信号Sdに変換するコントローラ80L、80Rと、駆動信号Sdに応じた補助動力を車輪3に与えるモータ91とを備えている。これによって、ハンドリム4に印加されたトルクTに応じた補助動力が車輪に与えられることとなる。
また、本実施形態では、ハンドリム4の変位量Xを駆動信号Sdに変換する変換特性f3・f2が、変位量Xに対して不感帯Z2を有する。したがって、乗員がハンドリム4を操作した場合であっても、ハンドリム4の変位量Xが不感帯Z2の範囲にある期間は、補助動力は生成されない。一方、ハンドリム4の変位量Xが不感帯Z2の端に差し掛かると補助動力が効き始め、ハンドリム4の変位量Xが不感帯Z2から抜け出した後は、この変位量Xに応じた補助動力が車輪3に与えられる。
そして、本実施形態では、変換特性f3・f2の不感帯Z2がハンドリム4の中立点Xmf、Xmbに基づいて設定されている。具体的には、車輪3に対して前進方向Dfに変位したハンドリム4がスプリングS1、S2の弾性力によって後進方向Dbに戻って静止する中立点Xmfと、車輪3に対して後進方向Dbに変位したハンドリム4がスプリングS1、S2の弾性力によって前進方向Dfに戻って静止する中立点Xmbとを含むように、変換特性f3・f2の変位量Xに対する不感帯Z2が設定されている。このように、操作方向によって位置の異なる中立点Xmf、Xmbを変換特性f3・f2の不感帯Z2に含めることで、操作方向によって中立点Xmf、Xmbの位置が異なることが操作感覚に及ぼす影響を緩和して、良好な運転感覚の実現を図ることが可能となっている。
このような操作感覚に対する影響の緩和が見られる一例について具体的に説明するために、例えば中立点Xmf、Xmbが不感帯Z2に対してずれており、一方の中立点、例えば中立点Xmfが不感帯Z2から外れてXmf>Xzfであった場合を考える。ハンドリム4が中立点Xmfにある状態から車輪3を前進させる際、ハンドリム4に操作力を加えるとトルクTzfを超えるまでは車輪3は操作トルクTのみで駆動され、トルクTzfを超えると補助動力が車輪3に付加的に作用する。Xmf>Xzfであるので、操作トルクTと補助動力の両方が車輪3に作用することになるトルクTzfを超える操作トルクTがハンドリム4に加えられても、トルクTmfに、摩擦力(ハンドリム4がスプリングS1、S2の弾性力に抗して中立点Xmfに静止している際に、車輪3側からハンドリム4に作用する摩擦力と逆方向の力)に起因するトルクを加えたトルクを超えるまで、車輪3に対するハンドリム4の変位量Xは中立点Xmfから変化しないままとなる。このため、ハンドリム4が中立点Xmfにある状態から車輪3を前進させる乗員は、車輪3の操作感覚を硬く感じる傾向にある。
これに対してハンドリム4が中立点Xmbにある状態から車輪3を前進させる際には、XmfとXzfとの間の大きさの違いに関係なく、スプリングS1、S2の弾性力にアシストされながら摩擦力に打ち勝つだけの小さなトルクTの付与で、車輪3に対するハンドリム4の変位量XがXmbからゼロまで変化する。ハンドリム4にさらにスプリングS1、S2の弾性力と摩擦力とに打ち勝つ漸増する操作トルクTを加えると、車輪3に対するハンドリム4の変位量Xが0から増加して行く。操作トルクTが、操作トルクTと補助動力の両方が車輪3に作用することになるトルクTzfを超えれば勿論のこと、かなり小さな値から漸増させる操作トルクTに応じ、車輪3に対するハンドリム4の変位量Xが漸増する。その結果、ハンドリム4が中立点Xmbにある状態から車輪3を前進させる乗員は、車輪3の操作感覚を柔らかく感じる傾向にある。
このように、中立点Xmf、Xmbの少なくともいずれかが不感帯Z2から外れていた場合、操作開始時におけるハンドリム4が中立点Xmf、Xmbのいずれにあるかによって、乗員による操作感覚に大きな違いが生じるおそれがあった。これに対して本実施形態では、中立点Xmf、Xmbを含むように不感帯Z2が設定されており、Xmf<Xzfとなっている。したがって上記の例と異なり、操作開始時においてハンドリム4が中立点Xmfにあったとしても、トルクTzfよりも小さなトルクT(トルクTmfに摩擦力に起因するトルクを加えたトルクを超える操作トルクT)の印加によって、ハンドリム4は中立点Xmfから車輪3に対して変位する。そして、トルクTzfを超えるトルクTがハンドリム4に印加されると、車輪3に対するハンドリム4の変位量XがXzfを超えて、補助動力が車輪3に作用する。つまり、上記の例に比較して、ハンドリム4が中立点Xmfにある状態から車輪3を前進させる際の操作感覚の硬さが緩和されることとなる。
このような利点は、左右のそれぞれに車輪3を備えた車椅子1にとって特に好適と言える。この点について具体的に説明するために、左右の両側において上記の例のように中立点Xmfが不感帯Z2から外れてXmf>Xzfであった場合を考える。この際に、例えば左側のハンドリム4が中立点Xmfにあるとともに右側のハンドリム4が中立点Xnbにある状態から車輪3を前進させるとすると、乗員は、左輪3の操作感覚を硬く感じるのに対して右輪3の操作感覚を柔らかく感じるとともに、左側では、ハンドリム4にトルクTzfを超えるトルクが加えられると、左輪3に対するハンドリム4の変位量Xは中立点Xmfから変化しないまま、補助動力が車輪3に作用してしまう。その結果、左右の車輪3の間で乗員の操作感覚が大きく異なり、車椅子1の操作性が低下するおそれがあった。これに対して本実施形態では、中立点Xmf、Xmbを含むように不感帯Z2が設定されており、Xmf<Xzfとなっている。したがって、左右の車輪3の間で操作感覚の違いを緩和して、車椅子1の操作性を向上させることができる。
また、運転感覚の向上という観点からは、乗員がハンドリム4から手を放している際には、補助動力の生成を止めて、車椅子1を確実に停止させておくことが好適となる。これに対して、中立点Xmf、Xmbを含むように不感帯Z2を設定した本実施形態によれば、乗員がハンドリム4から手を放しており、ハンドリム4が中立点Xmfあるいは中立点Xmbにある場合には、補助動力は生成されない。すなわち、車椅子1が停車した後は、乗員がハンドリム4から手を放したままでも車椅子1が停車し続けるといった利点がある。
特に、本実施形態で示した車椅子の設定方法(図15の不感帯設定)は、不感帯Z2の設定をより簡便かつ適切に実行できるという利点を有する。つまり、ハンドリム4の中立点Xmf、Xmbに対する不感帯Z2の調整は、例えばハンドリム4に対する磁気検出素子762の位置を調整することによって実行しても構わない。ただし、磁気検出素子762の位置を高精度に調整することは難しく、中立点Xmf、Xmbに対して不感帯Z2を適切に調整することは容易ではない。これに対して、本実施形態では、磁気検出素子762の位置を調整する代わりに不感帯Z2を調整することで、ハンドリム4の中立点Xmf、Xmbに対する不感帯Z2の調整を行っている。かかる構成は、コントローラ80L、80Rに記憶される不感帯Z2に関する情報を書き換えるだけで、ハンドリム4の中立点Xmf、Xmbに対する不感帯Z2の調整を行える。したがって、不感帯Z2の設定をより簡便かつ適切に実行することが可能となっている。
また、変換特性f3・f2の不感帯Z2の中央が中立点Xmf、Xmbの中央に一致するように変換特性f3・f2が設定されている。このような構成では、中立点Xmfから不感帯Z2の前進方向Dfの端Xzfに到るまでのハンドリム4の変位量と、中立点Xmbから不感帯Z2の後進方向Dbの端Xzbに到るまでのハンドリム4の変位量とが等しくなる。したがって、乗員が中立点Xmfから前進方向Dfにハンドリム4を操作した場合と、中立点Xmbから後進方向Dbにハンドリム4を操作した場合とで、補助動力が効き始めるまでのハンドリム4の操作量が等しくなる。その結果、操作方向によって中立点Xmb、Xmfの位置が異なることが操作感覚に及ぼす影響を効果的に抑制して、極めて良好な運転感覚の実現を図ることが可能となっている。
特に、本実施形態で示した車椅子の設定方法(図15の不感帯設定)では、磁気検出素子762の位置を調整する代わりに不感帯Z2を調整することで、ハンドリム4の中立点Xmf、Xmbに対する不感帯Z2の調整を行っている。そのため、コントローラ80L、80Rに記憶される不感帯Z2に関する情報を書き換えるだけで、ハンドリム4の中立点Xmf、Xmbの中央に不感帯Z2の中央を、簡便かつ確実に一致させることができる。
また、本実施形態では、変位量検出器7が変位量Xを検出信号Spに変換するゲインに基づいて、コントローラ80L、80Rの主制御ユニット81が検出信号Spを駆動信号Sdに変換するゲインGsが調整されている。したがって、車椅子1の製造現場などにおいて車椅子1に取り付けられる変位量検出器7のゲインが検出器7毎にばらついていても、安定した駆動信号Sdが出力される車椅子1を得ることができる。
このように、本実施形態では、車椅子1が本発明の「補助動力付車椅子」の一例に相当し、車輪3が本発明の「車輪」の一例に相当し、スプリングS1、S2が本発明の「弾性部材」の一例に相当し、コントローラ80L、80Rが本発明の「制御部」の一例に相当し、変位量検出器7が本発明の「検出器」の一例に相当し、モータ91が本発明の「駆動源」の一例に相当し、変換特性f3・f2が本発明の「変換特性」の一例に相当し、中立点Xmf、Xmbが本発明の「第1中立点」あるいは「第2中立点」の一例に相当し、前進方向Dfあるいは後進方向Dbが本発明の「第1方向」あるいは「第2方向」の一例に相当し、主制御ユニット81が構成する回路(CPU810など)が本発明の「制御回路」の一例に相当する。
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したものに対して種々の変更を加えることが可能である。そこで、例えば、次に説明するような異常検知機能をさらに具備するように車椅子1を構成しても良い。図16は、異常検知機能を備える車椅子が実行する動作の一例を示すフローチャートである。当該フローチャートは、例えば図13に示した車椅子の設定が完了した後などに実行することができる。
ステップS301では、可変範囲Xlb〜Xlfの前進方向Dfの端Xlfまでハンドリム4が変位している際の検出信号Spの電圧Vlfと中点電圧V0との差である前側出力レンジRf(検出信号出力レンジ)の絶対値(=|Vlf−V0|)が、主制御ユニット81において求められる。続くステップS302では、可変範囲Xlb〜Xlfの後進方向Dbの端Xlbまでハンドリム4が変位している際の検出信号Spの電圧Vlbと中点電圧V0との差である後側出力レンジRb(検出信号出力レンジ)の絶対値(=|Vlb−V0|)が、主制御ユニット81において求められる。そして、主制御ユニット81は、所定の閾値Rthと比較して、次の条件
Rf≦Rth
Rb≦Rth
の少なくともいずれかが満たされると判断した場合(ステップS303で「YES」の場合)には、異常が生じたと判断して(ステップS304)、ユーザI/F87を介してその旨を報知して(ステップS305)、図16のフローチャートが終了する。また、異常が無いと判断された場合(ステップS303で「NO」の場合)には、図16のフローチャートはそのまま終了する。なお、図16のフローチャートは、右輪3および左輪3のそれぞれについて実行される。
このような構成では、検出信号出力レンジRf、Rbの絶対値が、閾値Rth以下の場合は異常が生じたと判断される。したがって、検出信号出力レンジRf、Rbが十分に確保されていない場合は、異常と判断されるため、検出信号出力レンジRf、Rbを確保するためのメンテナンスを必要に応じて実行することができ、好適である。
さらに、異常が生じたと主制御ユニット81が判断した際に、異常の発生を報知するユーザI/F(報知部)が設けられている。したがって、車椅子の乗員、介助者あるいは車椅子に設定を行うオペレータ等に異常を報知して、必要なメンテナンスの実行を促すことができる。
図17は、異常検知機能を備える車椅子が実行する動作の他の例を示すフローチャートである。当該フローチャートは、例えば図13に示した車椅子の設定が完了した後などに実行することができる。ステップS401では、右輪コントローラ80Rは、自身の前側出力レンジRf1および後側出力レンジRb1を求める。こうして、右輪3についての各出力レンジRf1、Rb1が取得される。また、ステップS402では、右輪コントローラ80Rは、相手(つまり、左輪コントローラ80L)の前側出力レンジRf2および後側出力レンジRb2を、通信I/F83を介して左輪コントローラ80Lから受信する。こうして、左輪3についての各出力レンジRf2、Rb2が取得される。
続くステップS403では、右輪コントローラ80Rは、左輪3と右輪3との間について、前側出力レンジ差ΔRf(=|Rf1−Rf2|)と、後側出力レンジ差ΔRb(=|Rb1−Rb2|)とを求める。そして、右輪コントローラ80Rの主制御ユニット81は、所定の閾値ΔRthと比較して、次の条件
ΔRf≧ΔRth
ΔRb≧ΔRth
の少なくともいずれかが満たされると判断した場合(ステップS404で「YES」の場合)には、異常が生じたと判断し(ステップS405)、ユーザI/F87を介してその旨を報知して(ステップS406)、図17のフローチャートが終了する。また、異常が無いと判断された場合(ステップS404で「NO」の場合)には、図17のフローチャートはそのまま終了する。
このような構成では、右輪3についての検出信号出力レンジRf1、Rb1と、左輪3についての検出信号出力レンジRf2、Rb2とが大きく異なる場合は、異常と判断される。そのため、右輪3と左輪3の間で検出信号出力レンジRf1、Rb1、Rf2、Rb2を揃えるためのメンテナンスを必要に応じて実行することができ、好適である。
さらに、異常が生じたと主制御ユニット81が判断した際に、異常の発生を報知するユーザI/F(報知部)が設けられている。したがって、車椅子の乗員、介助者あるいは車椅子に設定を行うオペレータ等に異常を報知して、必要なメンテナンスの実行を促すことができる。
また、図16や図17に示した以上検知機能を備える以外に、種々の変更を上記実施形態に加えることもできる。具体例を挙げると、上記実施形態では、図15に示した不感帯設定において、スプリングS1、S2の弾性力によりハンドリム4を戻す工程(ステップS202、S206)は、ハンドリム4を準静的に戻すことで実行された。しかしながら、これらの工程(ステップS202、S206)においてハンドリム4を戻す具体的手法はこれに限られない。したがって、準静的な手法以外によってハンドリム4を戻しても構わない。
また、上記実施形態では、図15に示した不感帯設定において、ハンドリム4を変位させる工程(S201、S205)は、ハンドリム4を変位量Xlf、Xlbだけ変位させることで実行された。しかしながら、これらの工程(S201、S205)におけるハンドリム4の変位量はこれらに限られない。
また、上記実施形態では、不感帯Z3の中央と中点電位V0とが一致しており、不感帯Z2の中央は中立点Xmf、Xmbの中央に一致していた。しかしながら、これらがずれていたとしても、中立点Xmf、Xmbを含むように不感帯Z2を設定することで、良好な運転感覚を実現することができる。
また、上記実施形態では、2本のスプリングS1、S2により「弾性部材」が構成されていた。しかしながら、「弾性部材」の具体的構成態様は上記の態様に限られず、弾性力を発揮するように構成されれば足りる。したがって、例えば「弾性部材」は1本のスプリングにより構成されても、スプリング以外の部材(例えばゴム)で構成されても構わない。
また、上記実施形態では、スプリングS1、S2が与圧されていた。しかしながら、スプリングS1、S2を与圧する必要は必ずしも無い。