ここでは、下記の順序に従って本発明の実施の形態について説明する。
(1)地点登録システムの構成:
(1−1)ナビゲーション端末の構成:
(1−2)地点登録システムの構成:
(2)事象情報送信処理:
(3)地点登録処理:
(4)他の実施形態:
(1)地点登録システムの構成:
図1は、本実施形態にかかる地点登録システムの構成を示すブロック図である。本実施形態における地点登録システム10は車両Cに備えられたナビゲーション端末100と協働する。
(1−1)ナビゲーション端末の構成:
ナビゲーション端末100は道路を走行する複数の車両Cに搭載されている。ナビゲーション端末100は、CPU,RAM,ROM等を備える制御部200と記録媒体300とを備える。制御部200は、記録媒体300やROMに記憶されたプログラムを実行する。本実施形態において制御部200は、このプログラムの一つとしてナビゲーションプログラム210を実行する。
車両Cは、通信部220とGPS受信部410と車速センサ420とジャイロセンサ430とECU(Electronic Control Unit)440とユーザI/F部450とを備えている。通信部220は、無線通信を行うための回路にて構成され、制御部200は通信部220を制御して地点登録システム10と通信を行うことができる。GPS受信部410は、GPS衛星からの電波を受信し、図示しないインタフェースを介して車両Cの現在位置を算出するための信号を制御部200に出力する。車速センサ420は、車両Cが備える車輪の回転速度に対応した信号を出力する。制御部200は、図示しないインタフェースを介してこの信号を取得し、車速を取得する。ジャイロセンサ430は、車両Cの水平面内の旋回についての角加速度を検出し、車両Cの向きに対応した信号を出力する。制御部200は、この信号を取得して車両Cの進行方向を取得する。
記録媒体300には、地図情報300aが記録されている。地図情報300aには車両Cが走行する道路上に設定されたノードの位置等を示すノードデータ、ノード間の道路の形状を特定するための形状補間点の位置等を示す形状補間データ、ノード同士の連結を示すリンクデータ等が含まれている。また、リンクデータには、リンクに相当する道路区間上に設けられた停止地点の位置を示す情報が対応づけられている。停止地点とは、法令上、一時停止が義務づけられている停止線、踏切、信号機(赤点滅)等が設けられた地点であり、本発明の原因地点に相当する。
制御部200は、車速センサ420やジャイロセンサ430やGPS受信部410等の出力信号に基づいて車両Cの走行軌跡を取得するとともに、地図情報300aのノードデータやリンクデータに基づいて道路区間の形状を取得する。そして、制御部200は、車両Cの走行軌跡とマッチする形状を有する道路区間を車両Cが走行している道路区間として特定し、当該道路区間上にて車両Cの現在位置を特定する。
ECU440は、車両Cを制御するための回路である。本実施形態のECU440は、ブレーキ制御回路からブレーキペダルの踏み込み量を示す信号を取得するとともに、当該ブレーキ制御回路からアンチロックブレーキシステムが作動したことを示す信号を取得する。なお、アンチロックブレーキシステムは、進行方向においてタイヤがスリップ(ロック)していることをトリガーとして作動する。ECU440は、ブレーキペダルの踏み込み量を示す信号とアンチロックブレーキシステムが作動したことを示す信号とを制御部200に出力する。
ユーザI/F部450は、運転者の指示を入力し、また運転者に各種の情報を提供するためのインタフェース部であり、図示しないタッチパネルディスプレイからなる入力部を兼ねた表示部やスピーカー等の出力音の出力部を備えている。制御部200は、ナビゲーションプログラム210の機能により、ユーザI/F部450に対して車両Cの現在位置および現在位置周辺の地図を表示させることができる。すなわち、制御部200は、車両Cの現在位置を取得し、地図情報300aに基づいて現在位置周辺の地図を示す画像を生成してユーザI/F部450に対して出力する。この結果、ユーザI/F部450の表示部は、現在位置を含む地図を表示する。
ナビゲーションプログラム210は、事象情報送信部210aと注意喚起部210bとを含む。事象情報送信部210aは、注意事象が車両Cにて生じた地点である事象地点を示す事象情報を地点登録システム10に送信する機能を制御部200に実行させるモジュールである。本実施形態において、注意事象とは、原因地点を走行するための準備操作が遅れていることである。すなわち、原因地点としての停止地点を走行するにあたり、予め行っておく必要がある減速操作が、理想的なタイミングよりも遅れていることが注意事象である。
事象情報送信部210aの機能により制御部200は、車両Cが停止地点の手前を走行している場合、当該停止地点にて停止するための理想的な車速の推移を示す注意車速データ(図1にて不図示)を取得する。図2Aは、車両Cが停止地点Sの手前を走行している様子を示す模式図である。図2Aにおいて、リンクに相当する道路区間を太線で示し、ノードに相当する交差点Nを白丸で示す。図2Aの例では、車両Cが走行している道路区間R1の終点である交差点Nの手前の位置に停止地点Sが存在している。通常、交差点Nの近傍に停止地点Sが設けられるため、本実施形態では交差点Nの位置を停止地点Sの位置と見なすこととする。制御部200は、車両Cが現在位置から道なりに走行できる道なり経路を取得するとともに、当該道なり経路において車両Cが次に走行する停止地点Sを取得する。さらに、制御部200は、道なり経路上における車両Cから停止地点Sまでの残距離Tを取得する。残距離Tは、車両Cの現在位置から停止地点Sまで道なり経路上を走行する場合の走行距離であってもよいし、車両Cの現在位置から停止地点Sまでの直線距離であってもよい。
道なり経路とは、交差点Nにて直進方向に退出できる道路区間を、車両Cが走行している道路区間から順に接続した道路区間群で構成される経路である。直進方向に退出できる道路区間とは、交差点Nにて当該道路区間に退出する際の進行方向の変化角(操舵角)が所定角度(例えば30度)以下である道路区間であってもよいし、当該進行方向の変化角が最小の道路区間であってもよい。制御部200は、地図情報300aの形状補間データを参照することにより、交差点Nにおける進行方向の変化角を取得できる。なお、道なり経路は、車両Cが走行している道路区間と同一路線(道路名やレーン数等が同一)の道路区間で構成されてもよい。残距離Tを取得すると、制御部200は、記録媒体300に記録されている注意減速データを参照することにより、残距離Tに対応する注意車速を取得する。
図2Bは、停止地点Sの手前における車速を示すグラフである。同図において、横軸は走行予定経路上における車両Cの現在位置を示し、縦軸は車速を示す。同図において、車両Cの実際の車速W(実線)と、注意車速I(破線)とが示されている。図2Bに示すように、注意車速Iは、所定の注意減速度G1で減速をし、かつ、停止地点S(T=0)にて車速が0となるように減速する場合の車速である注意車速Iを残距離Tごとに示す。なお、減速度とは、負の加速度の絶対値を意味する。注意減速度G1は、一定値であってもよいし、残距離Tに応じて変化する値であってもよい。注意減速度G1は、車両Cにて生じ得る最大の減速度に相当する値(例えば最大の減速度に係数(0.9等)を乗じた値)に設定されている。注意減速度G1は、車両Cの制動性能に応じて設定され、タイヤのスリップ(ロック)が生じない減速度の上限値(以下、上限減速度)が注意減速度G1として設定されている。従って、注意減速度G1は、車両Cによって異なる。また、注意減速度G1は、運転者の制動履歴に応じて設定されてもよく、例えば制動履歴における最大の減速度に基づいて設定されてもよい。制御部200は、車両Cの実際の車速Wを車速センサ420からの出力信号に基づいて取得し、当該車速Wが残距離Tに対応する注意車速Iよりも大きい場合に、注意事象としての減速操作の遅れが車両Cにて生じていると判定する。
さらに、制御部200は、車両Cが急制動を行っている場合にも、注意事象としての減速操作の遅れが車両Cにて生じていると判定する。具体的に、制御部200は、ブレーキペダルの踏み込み量を示す信号をECU440から取得し、ブレーキペダルの踏み込み量が閾値以上である場合に、車両Cが急制動を行っており、注意事象としての減速操作の遅れが車両Cにて生じていると判定する。また、制御部20は、アンチロックブレーキシステムが作動したことを示す信号がECU440から出力された場合に、車両Cが急制動を行っており、注意事象としての減速操作の遅れが車両Cにて生じていると判定する。むろん、制御部200は、車速センサ420が示す車輪の回転速度の単位時間あたりの減少量が閾値以上となった場合に、車両Cが急制動を行っており、注意事象としての減速操作の遅れが車両Cにて生じていると判定してもよい。
制御部200は、注意事象としての減速操作の遅れが生じていると判断した時刻における現在位置を事象地点Zの位置として取得するとともに、当該時刻における実際の車速Wを事象車速として取得する。ただし、アンチロックブレーキシステムが作動したことを示す信号がECU440から出力された場合、アンチロックブレーキシステムが作動した時刻から微小期間(例えば0.5秒)だけ前の時刻における車速(車速センサ420の出力信号に基づく車速W)を事象車速として取得する。タイヤがロックした状態では、車速に応じて車輪が回転しないため、車速センサ420が正確に車速を取得できないからである。図2Bの場合、車両Cの実際の車速Wが注意車速Iよりも大きくなった地点が事象地点Zとして取得される。図2Cの場合、車両Cの実際の車速Wが注意車速Iよりも大きくなることはないが、実際の車速Wが急激に減少する急制動が生じた地点が事象地点Zとして取得される。
事象情報送信部210aの機能により制御部200は、事象地点Zと事象車速とを取得すると、少なくとも事象地点Zと事象車速とを示す事象情報を生成し、当該事象情報を地点登録システム10に送信する。本実施形態において、制御部200は、事象地点Zと事象車速のほかに、注意事象が生じた際に車両Cが走行していた道路区間および注意事象の発生時刻を示す事象情報を地点登録システム10に送信する。
注意喚起部210bの機能により制御部200は、注意事象を防止するための注意喚起をユーザI/F部450に行わせる。制御部200は、地点登録システム10から送信された注意情報を取得し、当該注意情報が示す事象地点Zを取得する。そして、制御部200は、事象地点Zが存在する道路区間において、事象地点Zの所定距離(例えば10m)手前の位置を車両Cが走行する場合に、注意喚起のためのメッセージ(音声または画像)をユーザI/F部450に出力させる。ここで、注意情報において、事象地点Zに原因地点としての停止地点Sが対応付けられている場合と、事象地点Zに停止地点Sが対応付けられていない場合とがあり得る(詳細は後述する)。制御部200は、事象地点Zに停止地点Sが対応付けられている場合、停止地点Sとの関連性を示す注意喚起のメッセージ『この先の交差点"X"に一時停止があります、車速に注意して下さい』を出力させる。
これにより、運転者は、なぜ減速しなければならないかを理解できる。なお、"X"は、停止地点Sが設けられた交差点の名称を意味し、地図情報300aのノードデータから取得できる。一方、制御部200は、事象地点Zに停止地点Sが対応付けられていない場合、停止地点Sとの関連性を示さない注意喚起のメッセージ『車速に注意して下さい』を出力させる。
(1−2)地点登録システムの構成:
次に、地点登録システム10について説明する。地点登録システム10は、CPU,RAM,ROM等を備える制御部20と記録媒体30とを備えている。制御部20は、記録媒体30やROMに記録されたプログラムを実行する。さらに、地点登録システム10は通信部22を備えている。通信部22は、無線通信を行うための回路にて構成され、制御部20は通信部22を制御して車両Cおよび交通情報提供サーバ50と通信を行う。制御部20は、地点登録プログラム21を実行する。交通情報提供サーバ50は、多数の車両Cから送信されたプローブ情報や、道路に設置された感知器から送信された車両感知情報等に基づいて渋滞情報を生成し、当該渋滞情報を地点登録システム10に送信するサーバである。渋滞情報とは、道路区間ごとに渋滞度(渋滞度が大きい順に"渋滞"→"混雑"→"空き")を示すデータである。
地点登録プログラム21は、事象地点取得部21aと事象車速取得部21bと基準距離設定部21cと登録部21dと注意情報送信部21eとを含む。
事象地点取得部21aは、注意事象が車両Cにて生じた事象地点Zを取得する機能を制御部20に実行させるモジュールである。具体的に、制御部20は、車両Cから送信された事象情報を取得し、当該事象情報が示す事象地点Zを取得する。事象車速取得部21bは、事象地点Zにおける車両Cの車速である事象車速を取得する機能を制御部20に実行させるモジュールである。具体的に、制御部20は、車両Cから送信された事象情報が示す事象車速を取得する。
なお、図示しないが、制御部20は、複数の車両Cから送信された事象情報を取得できる。制御部20は、複数の事象情報のそれぞれが示す事象地点Z同士が同一の道路区間上における所定距離以内に存在する場合、これらの事象地点Zを示す事象情報を統合してもよい。例えば、制御部20は、同一の道路区間上における所定距離以内に存在する複数の事象地点Zを平均した地点を統合後の事象地点Zとして取得してもよい。この場合、制御部20は、同一の道路区間上における所定距離以内に存在する複数の事象地点Zに対応する事象車速を平均した車速を統合後の事象車速として取得すればよい。さらに、制御部20は、同一の道路区間上における所定距離以内に存在する複数の事象地点Zに対応する注意事象の発生時刻を平均した時刻を統合後の注意事象の発生時刻として取得してもよい。
登録部21dは、注意事象の原因となる属性を有する原因地点が、事象地点Zの前方基準距離以内に存在する場合、当該停止地点Sを事象地点Zに対応付けて注意情報DB30bに登録する機能を制御部20に実行するモジュールである。注意事象の原因となる属性とは、原因地点を走行するにあたり、当該原因地点の手前の位置にて注意を要する属性であり、本実施形態において車両Cの停止が義務づけられている地点に対応付けられた属性である。つまり、本実施形態において停止地点Sが注意事象の原因となる属性を有する原因地点に相当する。停止地点Sの手前の位置においては、停止地点Sにて停止するための減速操作に遅れが生じ得るとともに、当該減速操作に遅れに対して運転者は注意を要することとなる。
登録部21dの機能により制御部20は、地図情報30aを参照することにより、事象地点Zの前方に存在する停止地点Sを抽出し、当該停止地点Sのうち事象地点Zに最も近い停止地点Sを取得する。なお、地図情報30aは、ナビゲーション端末100の地図情報300aと同様である。ここで、事象地点Zの前方とは、事象地点Zの走行後に車両Cが走行する方向であり、事象地点Zが存在する道路区間と道なりに接続する道なり経路における前方である。制御部20は、事象地点Zが存在する道路区間を含む道なりの道路区間群を道なり経路として取得し、当該道なり経路のうち、事象地点Zよりも前方に存在する停止地点Sを抽出する。
登録部21dの機能により制御部20は、道なり経路上における事象地点Zの前方において、当該事象地点Zに最も近い停止地点Sを取得すると、当該事象地点Zから当該停止地点Sまでの残距離Tを取得し、当該残距離Tが基準距離以内であるか否かを判定する。制御部20は、残距離Tが基準距離以内である場合、事象地点Zに対して、当該事象地点Zに最も近い前方の停止地点Sを対応付けた注意情報を生成し、当該注意情報を注意情報DB30bに登録する。その結果、当該事象地点Zの手前を走行する車両Cにおいて、注意喚起のメッセージ『この先の交差点"X"に一時停止があります、車速に注意して下さい』を出力させることができる。これにより、運転者は、なぜ減速しなければならないかを理解できる。なお、注意情報には、事象地点Zが存在する道路区間R1および注意事象の発生時刻を示す情報が含まれる。
一方、制御部20は、残距離Tが基準距離以内でない場合、事象地点Zに対して停止地点Sが対応付けられていない注意情報を生成し、当該注意情報を注意情報DB30bに登録する。その結果、注意喚起のメッセージ『車速に注意して下さい』を出力させることができる。これにより、停止地点Sとは無関係に減速操作の遅れ(急制動)が生じた場合に、停止地点Sとの関連性を示唆しない注意喚起を行うことができ、運転者が不必要に停止地点Sを意識することを防止できる。
基準距離設定部21cは、事象車速に応じて基準距離を設定する機能を制御部20に実行させるモジュールである。具体的に、基準距離設定部21cの機能により制御部20は、事象車速が大きいほど基準距離を大きく設定する。すなわち、事象地点Zに最も近い停止地点Sが事象地点Zに対応付けられるためには、事象地点Zとの距離が基準距離以内であることが要件となるが、事象地点Zにおける事象車速が大きいほど基準距離を大きくして前記要件を緩和する。
事象車速が大きいほど基準距離を大きくするための手法として、本実施形態では以下の手法を採用する。すなわち、基準距離設定部21cの機能により制御部20は、事象車速から所定減速度G2で減速を行った場合に車両Cが停止するまでに走行する距離である停止距離Kを取得し、当該停止距離Kに基づいて基準距離を設定する。停止距離Kは、初速としての事象車速から単位時間ごとに所定減速度G2ずつ減少する速度関数を、車速が0となる時刻までの積分期間について積分した値であるため、事象車速が大きいほど大きい値となる。
所定減速度G2は、注意減速度G1と同様に、タイヤのスリップ(ロック)が生じない減速度の上限値である上限減速度である。ただし、上述したように、上限減速度は車両Cに応じて異なるため、最も上限減速度が小さい車両Cの上限減速度が所定減速度G2として設定されている。図2Bでは、ある車両Cにおいて、停止地点Sまでに注意減速度G1で停止できる注意車速Iに基づいて事象地点Zが設定された場合を示すが、基本的に注意減速度G1よりも小さい所定減速度G2に基づいて停止距離Kが設定されることとなる。従って、ある車両Cにおいて、停止地点Sまでに注意減速度G1で停止できる注意車速Iに基づいて事象地点Zを設定されたにもかかわらず、当該事象地点Zに対して当該停止地点Sが対応付けられなくなることを防止できる。図2B,2Cの場合、事象地点Zと当該事象地点Zに最も近い停止地点Sまでの距離である残距離Tが、所定減速度G2で減速した場合の停止距離K以内となっており、当該事象地点Zに対して当該停止地点Sが対応付けられることとなる。
また、本実施形態において、基準距離設定部21cの機能により制御部20は、事象地点Zと当該事象地点Zに最も近い停止地点Sとの間における渋滞の発生状況に応じて基準距離を設定する。具体的に、基準距離設定部21cの機能により制御部20は、事象地点と当該事象地点Zに最も近い停止地点Sとの間において渋滞が発生している場合、事象地点と当該事象地点Zに最も近い停止地点Sとの間において渋滞が発生していない場合よりも、基準距離を大きく設定する。本実施形態において、基準距離設定部21cの機能により制御部20は、交通情報提供サーバ50から送信された渋滞情報に基づいて、注意事象の発生時刻において、事象地点Zと当該事象地点Zに最も近い停止地点Sとの間の区間において渋滞が発生していたか否かを判定する。そして、事象地点Zと当該事象地点Zに最も近い停止地点Sとの間の区間において渋滞が発生していなかった場合には、制御部20は、上述した停止距離Kを基準距離として設定する。なお、事象地点Zと当該事象地点Zに最も近い停止地点Sとの間の区間とは、事象地点Zを含む道なり経路上の区間である。
一方、事象地点Zと当該事象地点Zに最も近い停止地点Sとの間の区間において渋滞が発生していた場合、基準距離設定部21cの機能により制御部20は、事象車速から注意減速度G1で減速を行った場合に車両Cが停止するまでに走行する距離である停止距離Kを取得し、事象地点Zと当該事象地点Zに最も近い停止地点Sとの間において発生していた渋滞の長さJを取得し、停止距離Kと渋滞の長さJとを合計した距離(K+J)を基準距離として設定する。すなわち、事象地点と当該事象地点Zに最も近い停止地点Sとの間において渋滞が発生している場合、当該渋滞が発生していない場合よりも、当該渋滞の長さJ分だけ大きい距離が基準距離として設定される。
図2Dは、道路において渋滞が発生している様子を示す模式図である。同図においては、道路区間R4上に事象地点Zが存在し、当該事象地点Zと当該事象地点Zに最も近い停止地点Sとの間に存在する道路区間R1〜R3(太破線)において渋滞が発生している。なお、渋滞が発生しているとは、渋滞情報が示す渋滞度が"渋滞"であることを意味する。制御部20は、事象地点Zと当該事象地点Zに最も近い停止地点Sとの間において渋滞が発生している道路区間R1〜R3の区間長を合計することにより、渋滞の長さJを取得する。図2Eの場合、事象地点Zと当該事象地点Zに最も近い停止地点Sまでの距離である残距離Tが、停止距離K以内とはならないが、停止距離Kに渋滞の長さJを合計した基準距離以内となる。従って、図2Eの場合も、事象地点Zに対して当該事象地点Zに最も近い停止地点Sが対応付けられることとなる。
本実施形態では、ノードで区切られた道路区間ごとに渋滞度が特定されているが、道路区間と異なる区間単位で渋滞度が特定されてもよい。この場合も、制御部20は、渋滞が発生している区間の長さを合計することにより、渋滞の長さJを取得すればよい。図2A,図2Dにおいては、停止地点Sが道路区間の終点(停止線をともなう交差点N)に存在すると見なせるが、停止地点Sは道路区間の終点以外に存在してもよい。この場合、制御部20は、停止地点Sが存在する道路区間全体の長さではなく、停止地点Sが存在する道路区間のうち当該停止地点Sよりも手前側(事象地点Z側)の部分の長さを渋滞の長さJに合計すればよい。なお、停止地点Sが存在する道路区間よりも道なり経路の前方の道路区間まで渋滞が続いている場合や、停止地点Sが存在する道路区間よりも手前の道路区間にて渋滞が開始している場合には、当該停止地点Sが渋滞の原因でないとして、停止距離Kに渋滞の長さJを合計しないようにしてもよい。
注意情報送信部21eは、注意情報を車両Cに送信する機能を制御部20に実行させるモジュールである。注意情報送信部21eの機能により制御部20は、すべての車両Cに注意情報を送信してもよいし、当該注意情報が示す事象地点Zから所定距離以内に存在する車両Cのみに注意情報を送信してもよい。本実施形態において、制御部20は、現在の時刻が、注意情報に対応付けられている注意事象の発生時刻と同一の時間帯である場合に、注意情報が示す事象地点Zから所定距離以内に存在する車両Cに注意情報を送信する。
以上説明した実施形態において、事象地点Zと当該事象地点Zに最も近い停止地点Sとの距離が小さいほど、事象地点Zにおいて生じた減速操作の遅れが当該停止地点Sを原因としている可能性が高いと言える。事象地点Zと停止地点Sとの距離が小さいほど、注意事象の発生から停止地点Sの通過までの期間が短くなるからである。従って、事象地点Zと当該事象地点Zに最も近い停止地点Sとの距離が基準距離以内の場合、事象地点Zにて生じた減速操作の遅れの原因となる停止地点Sを、当該事象地点Zに対応付けることができる。
また、事象車速は、事象地点Zと当該事象地点Zに最も近い停止地点Sとの間を走行する際の初速を意味するため、事象車速が大きいほど事象地点Zと当該事象地点Zに最も近い停止地点Sとの間を走行する期間が短くなる可能性が高い。また、当該事象地点Zに最も近い停止地点Sが減速操作の遅れの原因となる可能性は、事象地点Zと当該事象地点Zに最も近い停止地点Sとの間を走行する期間の長さに依存する。例えば、事象地点Zの通過直後に停止地点Sを通過する場合、当該事象地点Zにて生じた減速操作の遅れは当該停止地点Sを原因としている可能性が高い。従って、事象車速に応じて基準距離を設定することにより、減速操作の遅れの原因となる停止地点Sを事象地点Zに対応付けることができる。
事象車速が大きいほど早期に、当該事象地点Zに最も近い停止地点Sを走行する可能性が高くなるため、当該停止地点Sを走行するための準備操作(当該停止地点Sにて停止するための減速操作)を早期(停止地点Sから手前側に離れた地点)に実施する必要がある。従って、事象地点Zから当該事象地点Zに最も近い停止地点Sまでの距離が大きくても、事象車速が大きければ当該停止地点Sにて停止するための減速操作が遅れていたと見なすことができる。従って、事象車速に応じて基準距離を設定することにより、停止地点Sにて停止するための減速操作に遅れていたと見なせる場合に、当該事象地点Zに当該停止地点Sを対応付けることができる。
事象車速が大きいほど、事象地点Zと当該事象地点Zに最も近い停止地点Sとの間を走行する期間が短くなる可能性が大きい。従って、事象車速が大きければ、事象地点Zから当該事象地点Zに最も近い停止地点Sまでの距離が大きくても、当該事象地点Zにて生じた減速操作の遅れが当該停止地点Sを原因としていると見なすことができる。そのため、事象車速が大きいほど基準距離を大きく設定することにより、減速操作の遅れの原因となる停止地点Sを事象地点Zに対応付けることができる。
さらに、事象車速から所定減速度で減速を行った場合に車両Cが停止するまでに走行する停止距離Kよりも、事象地点Zから当該事象地点Zに最も近い停止地点Sまでの距離が小さい場合、事象車速から所定減速度G2で減速を行っても車両Cが当該事象地点Zに最も近い停止地点Sまでに停止できないことを意味する。つまり、停止距離Kが事象地点Zから当該事象地点Zに最も近い停止地点Sまでの距離よりも小さい場合、停止地点Sにて停止するための減速操作が遅れていたと見なすことができる。従って、停止距離Kに基づいて基準距離を設定することにより、停止地点Sにて停止するための減速操作(所定減速度G2での減速操作)が遅れていたか否かを判定できる。
また、事象地点Zと当該事象地点Zに最も近い停止地点Sとの間における渋滞は、停止地点Sを原因とする渋滞であると見なすことができる。ここで、渋滞が発生していない場合には停止地点Sまでに車両Cが停止すればよいが、渋滞が発生している場合には渋滞の末尾までに車両Cが停止する必要が生じる。つまり、渋滞が発生している場合、減速操作を行うべき地点が手前側に移動することとなる。すなわち、渋滞が発生しているか否かに応じて、減速操作に遅れが生じる地点が変化することとなる。従って、渋滞の発生状況に応じて基準距離を設定することにより、停止地点Sを原因とする渋滞に備えた減速操作が遅れていたか否かを判定できる。
上述のように、渋滞が発生している場合、減速操作を行うべき地点が手前側(停止地点Sまでの距離が大きくなる側)に移動することとなる。従って、事象地点Zと当該事象地点Zに最も近い停止地点Sとの間において渋滞が発生している場合、当該渋滞が発生していない場合よりも、基準距離を大きく設定することにより、停止地点Sを原因とする渋滞に備えた減速操作が遅れていたか否かを判定できる。
事象地点Zと当該事象地点Zに最も近い停止地点Sとの間に渋滞が発生している場合、車両Cは渋滞の末尾の地点までに停止すべきこととなる。停止地点Sに起因して生じた渋滞の末尾の地点は、停止地点Sから渋滞の長さJだけ手前側の地点であると見なすことができる。さらに、渋滞の末尾の地点から停止距離Kだけ手前の地点よりも停止地点Sに近い地点にて注意事象が生じた場合、渋滞の末尾の地点にて停止するための減速操作が遅れていたと見なすことができる。また、停止距離Kと渋滞の長さJとを合計した距離を基準距離として設定することにより、渋滞の末尾の地点から停止距離Kだけ手前の地点よりも近い地点にて、減速操作の遅れが生じていたか否かを判定できる。従って、停止地点Sに起因する渋滞の末尾の地点にて停止するための減速操作が遅れていた場合に、当該減速操作が遅れていた事象地点Zに停止地点Sを対応付けることができる。
(2)事象情報送信処理:
次に、車両Cにて実行される事象情報送信処理について説明する。事象情報送信処理は、所定の時間周期または走行距離周期ごとに実行される処理である。まず、ナビゲーション端末100の制御部200は、車両情報を取得する(ステップS100)。車両情報とは、車両Cに注意事象としての減速操作の遅れが生じているか否かを判定するための情報である。具体的に、車両Cの現在位置と、車両Cが走行している道路区間を含む道なり経路と、当該道なり経路の前方において車両Cに最も近い停止地点Sと、実際の車速Wと、アンチロックブレーキシステムが作動有無と、ブレーキペダルの踏み込み量とを車両情報として取得する。
次に、事象情報送信部210aの機能により制御部200は、車両Cにて注意事象としての減速操作の遅れが生じているか否かを判定する(ステップS110)。減速操作が遅れいるとは、走行中の道路区間を含む道なり経路の前方において車両Cに最も近い停止地点Sまでに停止できる注意車速Iよりも実際の車速Wが大きいことと(図2B)、ブレーキペダルの踏み込み量が閾値以上であることと、アンチロックブレーキシステムが作動していることとのいずれかに該当することを意味する。
車両Cにて減速操作の遅れが生じていると判定しなかった場合(ステップS110:N)、制御部200は、事象情報送信処理の最初(ステップS100)にリターンする。すなわち、次の周期にて車両情報が取得されるまで待機する。
一方、車両Cにて減速操作の遅れが生じていると判定した場合(ステップS110:Y)、制御部200は、事象地点Zと事象車速とを取得する(ステップS120)。具体的に、制御部200は、車両Cにて注意事象としての減速操作の遅れが生じていると判定した時刻における現在位置を事象地点Zとして取得する。また、走行中の道路区間を含む道なり経路の前方において車両Cに最も近い停止地点Sまでに停止できる注意車速Iよりも実際の車速Wが大きい場合、または、ブレーキペダルの踏み込み量が閾値以上である場合、制御部200は、現在における実際の車速Wを事象車速として取得する。一方、アンチロックブレーキシステムが作動した場合、制御部200は、現在から微小期間(例えば0.5秒)だけ前の時刻における実際の車速Wを事象車速として取得する。
次に、事象情報送信部210aの機能により制御部200は、事象情報を生成する(ステップS130)。事象情報とは、事象地点Zと、事象車速と、注意事象の発生時刻と、事象地点Zが存在する道路区間とを対応付けて示す情報である。次に、事象情報送信部210aの機能により制御部200は、事象情報を地点登録システム10に送信する(ステップS140)。以上説明した事象情報送信処理が道路上を走行する各車両Cにて実行されることにより、地点登録システム10は事象情報を収集することができる。ただし、事象情報は、注意事象としての減速操作の遅れが生じた事象地点Zと停止地点Sとを対応付けて示す情報ではなく、事象情報のみに基づいて、減速操作の遅れがどの停止地点Sを原因とするものであるか、あるいは、減速操作の遅れがいずれの停止地点Sとも無関係であるかを特定することができない。
(3)地点登録処理:
次に、地点登録システム10にて実行される地点登録処理について説明する。地点登録処理は、事象情報が示す事象地点Zにて生じた減速操作の遅れが停止地点Sを原因とする場合、当該停止地点Sを対応付けて当該事象地点Zを登録し、事象情報が示す事象地点Zにて生じた減速操作の遅れがいずれの停止地点Sを原因しない場合、停止地点Sを対応付けることなく当該事象地点Zを登録する処理である。地点登録処理は、事象情報が所定数蓄積されるごとに実行されてもよいし、所定の時間周期(例えば1日)ごとに実行されてもよい。
まず、事象地点取得部21aと事象車速取得部21bとの機能により制御部20は、事象地点と事象車速とを取得する(ステップS200)。すなわち、制御部20は、処理対象の事象情報を取得し、当該事象情報が示す事象地点と事象車速とを取得する。
次に、登録部21dの機能により制御部20は、事象地点Zの前方に停止地点Sがあるか否かを判定する(ステップS210)。具体的に、制御部20は、地図情報30aを参照することにより、事象地点Zが存在する道路区間と道なりに接続する道なり経路の前方に存在する停止地点Sを抽出し、当該停止地点Sのうち事象地点Zに最も近い停止地点Sを取得する。ここで、事象地点Zが存在する道路区間を含む道なり経路の前方に停止地点Sが1個も存在しない場合、または、当該道なり経路上における当該事象地点Zと当該事象地点Zに最も近い停止地点Sとの距離が所定の上限距離(例えば40km)以上である場合、制御部20は、事象地点Zの前方に停止地点Sがないと判定する。
事象地点Zの前方に停止地点Sがあると判定された場合(ステップS210:Y)、基準距離設定部21cの機能により制御部20は、事象地点Zから当該事象地点Zに最も近い停止地点Sまでの残距離Tを取得する(ステップS220)。残距離Tとは、事象地点Zが存在する道路区間を含む道なり経路上の距離である。
次に、基準距離設定部21cの機能により制御部20は、事象車速に基づいて停止距離Kを取得する(ステップS230)。具体的に、制御部20は、初速としての事象車速から単位時間ごとに所定減速度G2ずつ減少する速度関数を、車速が0となる時刻までの積分期間について積分することにより停止距離Kを取得する。
次に、基準距離設定部21cの機能により制御部20は、事象地点Zと当該事象地点Zに最も近い停止地点Sとの間において発生していた渋滞の長さJを取得する(ステップS240)。制御部20は、交通情報提供サーバ50から送信された渋滞情報に基づいて、注意事象の発生時刻において、事象地点Zと当該事象地点Zに最も近い停止地点Sとの間の区間において渋滞が発生していたか否かを判定する。そして、事象地点Zと当該事象地点Zに最も近い停止地点Sとの間の区間において渋滞が発生していなかった場合には、制御部20は、渋滞の長さJとして0を取得する。一方、事象地点Zと当該事象地点Zに最も近い停止地点Sとの間の区間において渋滞が発生していなかった場合には、制御部20は、渋滞が発生している道路区間の区間長を合計することにより、渋滞の長さJ(>0)を取得する。
次に、基準距離設定部21cの機能により制御部20は、停止距離Kと渋滞の長さJとを合計した距離を基準距離として設定する(ステップS250)。なお、事象地点Zと当該事象地点Zに最も近い停止地点Sとの間において渋滞が発生していない場合、渋滞の長さJは0となるため、実質的に、停止距離Kに対して渋滞の長さJを合計しない停止距離Kそのものが基準距離として設定されることとなる。
そして、登録部21dの機能により制御部20は、事象地点Zから当該事象地点Zに最も近い停止地点Sまでの残距離Tが基準距離以内であるか否かを判定する(ステップS260)。残距離Tが基準距離以内であると判定した場合(ステップS260:Y)、登録部21dの機能により制御部20は、事象地点Zに対して、当該事象地点Zに最も近い前方の停止地点Sを対応付けた注意情報を生成し、当該注意情報を注意情報DB30bに登録する(ステップS270)。その結果、当該事象地点Zの手前を走行する車両Cにおいて、注意喚起のメッセージ『この先の交差点"X"に一時停止があります、車速に注意して下さい』を出力させることができる。これにより、運転者は、なぜ減速しなければならないかを理解できる。
一方、残距離Tが基準距離以内であると判定しなかった場合(ステップS260:N)、登録部21dの機能により制御部20は、事象地点Zに対して、停止地点Sを対応付けていない注意情報を生成し、当該注意情報を注意情報DB30bに登録する(ステップS280)。また、事象地点Zの前方に停止地点Sがあると判定されなかった場合も(ステップS210:N)、登録部21dの機能により制御部20は、事象地点Zに対して、停止地点Sを対応付けていない注意情報を生成し、当該注意情報を注意情報DB30bに登録する(ステップS280)。これらの場合、当該事象地点Zの手前を走行する車両Cにおいて、注意喚起のメッセージ『車速に注意して下さい』を出力させることができる。これにより、停止地点Sとは無関係に減速操作の遅れ(急制動)が生じた場合に、停止地点Sとの関連性を示唆しない注意喚起を行うことができ、運転者が不必要に停止地点Sを意識することを防止できる。
(4)他の実施形態:
前記実施形態においては、事象地点Zと当該事象地点Zに最も近い停止地点Sとの間における渋滞の有無に応じて基準距離を設定することとしたが、必ずしも渋滞の有無に応じて基準距離を設定しなくてもよい。例えば、渋滞が発生している場合に、事象地点Zにおける減速操作の遅れが停止地点Sを原因としているか否かが正確に判断できないとして、注意情報の登録を回避する構成を採用してもよい。また、制御部20は、事象車速に応じて基準距離を設定すればよく、必ずしも停止距離Kに基づいて基準距離を設定しなくてもよい。例えば、制御部20は、事象車速についての単調増加関数によって基準距離を設定してもよい。さらに、前記実施形態では車両Cから通信を介して事象情報を取得する地点登録システム10にて事象地点Zを登録する構成を採用したが、車両Cにおいて事象地点Zを登録する地点登録処理が実行されてもよい。むろん、注意情報DB30bに記録された注意情報は、逐次、車両Cに送信されなくてもよく、注意情報DB30bが車両Cのナビゲーション端末10にインストールされてもよい。
以上の実施形態は本発明を実施するための一例であり、他にも種々の実施形態を採用可能である。事象地点取得手段は、注意事象が車両にて生じた事象地点を取得すればよく、前記実施形態以外の注意事象が生じた事象地点を取得してもよい。注意事象は、ある属性の原因地点との間に因果関係を有する事象であればよく、原因地点を走行するにあたり、当該原因地点の手前の位置にて注意を要する事象であればよい。事象地点取得手段は、注意事象が生じるごとに車両から送信された事象情報に基づいて事象地点を取得しなくてもよく、車両から事象情報が送信されるタイミングも特に限定されない。むろん、事象情報は車両から直接送信されなくてもよく、車両と通信可能な他のサーバから事象情報を取得してもよい。また、注意事象が生じた車両にて当該注意事象が生じたことを検出してもよいし、道路上を走行する車両が他の車両にて注意事象が生じたことを検出してもよいし、道路上に設定された各種感知器が車両にて注意事象が生じたことを検出してもよい。事象地点とは、注意事象が生じた地点であればよく、車両にて注意事象が生じたことを検出した時刻における車両の現在位置であってもよい。
事象車速取得手段は、事象地点における車両の車速である事象車速を取得すればよく、前記実施形態と異なる手法で事象車速が取得されてもよい。すなわち、事象車速は、事象地点を示す事象情報に基づいて取得されてもよいし、車両から送信される事象情報とは別の情報に基づいて取得されてもよい。例えば、事象車速取得手段は、車両にて注意事象が生じた時刻において、当該車両が走行する道路上に設置された感知器が感知した車速(多数の車両の平均車速)を事象車速として取得してもよい。
登録手段は、注意事象の原因となる属性を有する原因地点が、事象地点の前方基準距離以内に存在する場合、当該原因地点を事象地点に対応付けてデータベースに登録すればよい。注意事象の原因となる属性とは、原因地点を走行するにあたり、当該原因地点の手前の位置にて注意を要する属性である。例えば、原因地点は、道路形状が変化することによって車両が走行可能な領域の大きさや車両の向き(水平方向、鉛直方向における向き)等が変化する地点であってもよいし、法令上、車両の走行状態を所定の走行状態とすることが義務づけられている地点であってもよい。事象地点の前方とは、事象地点の走行後に車両が走行する経路が存在する方向であり、事象地点が存在する道路と道なりに接続する道路の方向であってもよい。
基準距離設定手段は、事象車速に応じて基準距離を設定すればよく、事象車速を入力変数とする関数によって基準距離を設定してもよいし、事象車速と基準距離との対応関係を規定したテーブルを参照して基準距離を設定してもよい。基準距離設定手段は、事象車速の大きさに応じて基準距離を設定してもよいし、事象車速のばらつきに応じて基準距離を設定してもよい。例えば、複数の車両における事象車速のばらつきが大きい場合に、注意事象の原因が原因地点であるか否かが正確に判断できないとして、事象地点に原因地点を対応付けないようにしてもよい。複数の車速にて注意事象が生じた場合、基準距離設定手段は、複数の車両における事象車速の平均値に基づいて基準距離を設定してもよい。
また、注意事象は、原因地点を走行するための準備操作が遅れていることであってもよい。すなわち、ある原因地点を走行するにあたり、予め行っておく必要がある準備操作が、理想的なタイミングよりも遅れていることを注意事象としてもよい。事象車速が大きいほど早期に原因地点を走行する可能性が高いため、原因地点を走行するための準備操作を早期(原因地点から手前側に離れた地点)に実施する必要がある。従って、事象地点から原因地点までの距離が大きくても、当該原因地点を走行するための準備操作が遅れていたと見なすことができる。従って、事象車速に応じて基準距離を設定することにより、原因地点を走行するための準備操作に遅れていたと見なせる場合に、当該事象地点に当該原因地点を対応付けることができる。例えば原因地点が急カーブの区間である場合の準備操作として、減速操作が挙げられる。また、例えば原因地点がトンネル区間である場合の準備操作として、前照灯の点灯操作が挙げられる。さらに、例えば原因地点が進路変更(右左折、レーン変更)を行う地点である場合の準備操作として、方向指示器の点灯操作が挙げられる。さらに、例えば原因地点が道路上に障害物(合流車両等)が生じる地点である場合の準備操作として、減速操作や障害物を避ける方向への操舵が挙げられる。さらに、例えば原因地点が一般道路から高速道路へと合流する合流地点である場合の準備操作として、加速操作が挙げられる。
さらに、原因地点は、車両が停止する停止地点であってもよい。事象車速が大きいほど車両が停止するまでに減少させなければならない車速が大きくなるため、減速操作を早期(原因地点から手前側に離れた地点)に実施する必要がある。従って、事象地点から原因地点までの距離が大きくても、当該原因地点を走行するための減速操作が遅れていたと見なすことができる。従って、事象車速に応じて基準距離を設定することにより、原因地点までに停止するための減速操作が遅れていたと見なせる場合に、当該事象地点に当該原因地点を対応付けることができる。種々の理由によって車両が停止する地点を停止地点として採用でき、法令上、一時停止が義務づけられている停止線、踏切、信号機(赤点滅)等が設けられた地点を停止地点としてもよい。なお、停止とは、厳密に車速が0となることに限らず、車速が0よりも大きい閾値(例えば5km/時)以下となることであってもよい。例えば、法令上、徐行が義務づけられている地点を停止地点とみなしてもよい。
なお、停止地点にて停止するための減速操作が遅れているとは、事象車速が停止地点にて停止可能な車速よりも大きいことであってもよいし、車両が急制動を行うことあってもよい。運転者が停止地点にて停止するには車速が大きすぎると判断した場合、すなわち運転者が減速操作が遅れていると判断した場合に、急制動を行うからである。また、車両の減速度(負の加速度の絶対値)が閾値以上となった場合や、ブレーキペダルの踏み込み量が閾値以上となった場合に、車両が急制動を行ったと見なしてもよい。さらに、タイヤが路面に対してスリップした場合に、車両が急制動を行ったと見なしてもよい。さらに、タイヤのスリップ(ロック)をトリガーとする車両制御(アンチロックブレーキシステム等)が実施された場合に、車両が急制動を行ったと見なしてもよい。
さらに、基準距離設定手段は、事象車速が大きいほど前記基準距離を大きく設定してもよい。事象車速が大きいほど、事象地点と原因地点との間を走行する期間が短くなる可能性が大きい。従って、事象車速が大きければ、事象地点から原因地点までの距離が大きくても、当該事象地点にて生じた注意事象が原因地点を原因としていると見なすことができる。そのため、事象車速が大きいほど基準距離を大きく設定することにより、注意事象の原因となる原因地点を事象地点に対応付けることができる。
さらに、原因地点は、車両が停止する停止地点であるとともに、基準距離設定手段は、事象車速から所定減速度で減速を行った場合に車両が停止するまでに走行する距離である停止距離を取得し、当該停止距離に基づいて基準距離を設定してもよい。事象車速から所定減速度で減速を行った場合に車両が停止するまでに走行する停止距離よりも、事象地点から原因地点までの距離が小さい場合、事象車速から所定減速度で減速を行っても車両が原因地点までに停止できないことを意味する。つまり、停止距離が事象地点から原因地点までの距離よりも小さい場合、停止地点にて停止するための減速操作が遅れていたと見なすことができる。従って、停止距離に基づいて基準距離を設定することにより、停止地点にて停止するための減速操作(所定減速度での減速操作)が遅れていたか否かを判定できる。所定減速度は、車両の制動性能に応じて設定されてもよいし、運転者の制動履歴に応じて設定されてもよい。
また、原因地点は、車両が停止する停止地点であり、基準距離設定手段は、事象地点と原因地点との間における渋滞の発生状況に応じて基準距離を設定してもよい。事象地点と原因地点との間における渋滞は、停止地点を原因とする渋滞であると見なすことができる。ここで、渋滞が発生していない場合には停止地点までに車両が停止すればよいが、渋滞が発生している場合には渋滞の末尾までに車両が停止する必要が生じる。つまり、渋滞が発生している場合、減速操作を行うべき地点が手前側に移動することとなる。すなわち、渋滞が発生しているか否かに応じて、減速操作に遅れが生じる地点が変化することとなる。従って、渋滞の発生状況に応じて基準距離を設定することにより、停止地点を原因とする渋滞に備えた減速操作が遅れていたか否かを判定できる。
さらに、基準距離設定手段は、事象地点と原因地点との間において渋滞が発生している場合、事象地点と原因地点との間において渋滞が発生していない場合よりも、基準距離を大きく設定してもよい。上述のように、渋滞が発生している場合、減速操作を行うべき地点が手前側(停止地点までの距離が大きくなる側)に移動することとなる。従って、事象地点と原因地点との間において渋滞が発生している場合、当該渋滞が発生していない場合よりも、基準距離を大きく設定することにより、停止地点を原因とする渋滞に備えた減速操作が遅れていたか否かを判定できる。
また、基準距離設定手段は、事象車速から所定減速度で減速を行った場合に車両が停止するまでに走行する距離である停止距離を取得し、事象地点と原因地点との間において発生していた渋滞の長さを取得し、停止距離と渋滞の長さとを合計した距離を基準距離として設定してもよい。事象地点と原因地点との間に渋滞が発生している場合、車両は渋滞の末尾の地点までに停止すべきこととなる。停止地点に起因して生じた渋滞の末尾の地点は、停止地点から渋滞の長さだけ手前側の地点であると見なすことができる。さらに、渋滞の末尾の地点から停止距離だけ手前の地点よりも停止地点に近い地点にて注意事象が生じた場合、渋滞の末尾の地点にて停止するための減速操作が遅れていたと見なすことができる。また、停止距離と渋滞の長さとを合計した距離を基準距離として設定することにより、渋滞の末尾の地点から停止距離だけ手前の地点よりも近い地点にて、減速操作の遅れが生じていたか否かを判定できる。従って、停止地点に起因する渋滞の末尾の地点にて停止するための減速操作が遅れていた場合に、当該減速操作が遅れていた事象地点に停止地点を対応付けることができる。
さらに、本発明のように、事象地点に原因地点を対応付ける手法は、プログラムや方法としても適用可能である。また、以上のようなシステム、プログラム、方法は、単独の装置として実現される場合もあれば、車両に備えられる各部と共有の部品を利用して実現される場合もあり、各種の態様を含むものである。例えば、以上のような装置を備えたナビゲーションシステム、走行履歴情報の管理システムや方法、プログラムを提供することが可能である。また、一部がソフトウェアであり一部がハードウェアであったりするなど、適宜、変更可能である。さらに、装置を制御するプログラムの記録媒体としても発明は成立する。むろん、そのソフトウェアの記録媒体は、磁気記録媒体であってもよいし光磁気記録媒体であってもよいし、今後開発されるいかなる記録媒体においても全く同様に考えることができる。