JP6101181B2 - タービン油の寿命予測方法 - Google Patents
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Description
しかし、適用範囲は、フェノール系酸化防止剤を含むフェノール系タービン油のみであり、フェノール系+アミン系のコンプレックス系、あるいは複数のアミンを含むアミン系タービン油には基礎データがなく適用が難しい。
前述のTSOTと比べて極めて短い試験時間であり、使用中の潤滑油の残存寿命の推定や品質の把握のような品質管理試験として一般に使用されているが、TOSTと比較して潤滑油に添加されている酸化防止剤の種類や錆止め剤の有無によっては、評価結果が実機性能と相関しない場合がある。
これら手法による寿命評価は、潤滑油の動粘度の劣化速度や分子量分布を求めなければならず工数を要し、評価精度としては充分とは言えない。
その後に、第2段階として、RPVOT残存率の低下速度の温度依存性を求めてRPVOT残存率低下速度の温度補正を行う。
すなわち、これら高温部では熱によるタービン油の劣化が顕著に現れるため、これら部位におけるとRPVOT残存率低下速度を算出することで、実機における寿命判定を精度よく行うことが可能になる。
図1は、本発明の第1実施例に係るタービン油の寿命予測方法の手順を示すフローチャートである。
図1において、まず、ステップS1で、判定しようとする未使用のタービン油新油を、酸化安定度試験装置にかけて、酸化させて劣化タービン油を生成する。
そして、本実施形態においては、鉄、銅触媒9の存在下で試料のタービン油11に300mLに酸素(流量3.0±0.1L/h)を吹き込み、120±0.5℃(JIS規格では、95±0.2℃)の温度で酸化劣化させる。
また、劣化時間としては任意の時間に設定することができるが、100〜200時間毎に設定することが好ましい。
具体的には、タービン油の酸化安定性を、回転ボンベ内のタービン油が加圧封入した酸素を急激に吸収し始める間までの時間で評価する。詳細はJIS規格によるが、一例として試験装置の概要を図4に示す。ボンベ15に酸素を630KPa(室温25℃)まで圧入し、これを150℃に保った恒温槽17中に入れ、ボンベ保持器19に取り付け、ボンベ15を電動機21で回転させる。ボンベ15を恒温槽17に装着した時が試験開始時になり、毎分100±5回転の速度で回転を継続し、ボンベに取り付けた圧力計23の読みが最高圧力より175KPa降下したら試験を終了する。
図5の縦軸のRPVOT残存率(%)が25%となる時間T0を、本明細書ではDry−TOST寿命と定義する。Dry−TOSTとは、JIS規格に規定されているTOSTの試験条件と相違するところがあり、特に120℃の試験条件(油浴槽の温度)であるため「Dry−TOST」と定義する。
アレニウスの法則とは、化学反応速度の温度依存性を予測するものであり、部品の経年劣化の主因が温度である場合、部品の寿命はアレニウスの式「τ=A・exp(Ea/kT)」(A、Ea:故障モードごとに固有の定数、T:絶対温度、k:ボルツマン定数)で近似できる。
本実施形態では120℃でのRPVOT残存率低下速度(%/h)を基にしているが、他の温度における試験結果より算出したRPVOT残存率低下速度を基にしてもよく、要はラインXの傾きがアレニウスの法則に従えばよい。
従って、酸化安定度試験を行う際の油浴槽の温度を異ならせて、複数温度における試験を実施しなくても、異なる温度におけるRPVOT残存率低下速度を簡単に算出することができる。従って、寿命評価時間を短縮することができる。
例えば、タービン発電機のシステムにおいて、ガスタービンに使用されるタービン油は、油タンク31に溜められており、オイル供給ポンプ33によって圧送され、オイルクーラ35によって45℃程度に冷却され、その後、給油通路37を通ってタービン回転軸を支持する#1ジャーナル軸受(第1高温部)39、#2ジャーナル軸受(第2高温部)41、スラスト軸受(第3高温部)43を通過し、これら軸受を通過することでタービン油の温度上昇を生じ90〜110℃になり、さらに、排油通路(第4高温部)45を通過して油タンク31に循環されるようになっている。排油通路45においては、60〜70℃になっている。
次に、ステップS7では、各高温部においてタービン油が高温に晒される時間を設定する。例えば、単位時間(1h)として設定する。
ステップS8では、第1高温部39におけるRPVOT残存率低下量ΔR1(%)を算出し、ステップS9では、第2高温部41におけるRPVOT残存率低下量ΔR2(%)を算出し、ステップS10では、第3〜第5高温部を含めて第n高温部におけるRPVOT残存率低下量ΔRn(%)を算出する。
ΔR1'(%/h)=ΔR1(%)×V1(L/h)/V0(L)…(1)
ΔR2'(%/h)=ΔR2(%)×V2(L/h)/V0(L)…(2)
ΔRn'(%/h)=ΔRn(%)×Vn(L/h)/V0(L)…(3)
ΔR'(%/h)=ΣΔRn'(%/h)=ΔR1'+ΔR2'+…ΔRn'…(4)
この図7において、全油量V0に対して、第n高温部に流れる流量Vn(L/h)に対して、該高温部での暴露時間(h)を考慮して、RPVOT残存率低下量ΔRn(%)を、油量比で希釈する状態を示している。
すなわち、式(4)によって求めた最終的なRPVOT残存率の低下速度ΔR'(%/h)を用いて、RPVOT残存率が25%に低下するまでの時間を算出して、該時間を寿命として予測することができる。
図8は、横軸に実機タービンの運転時間(h)をとり、縦軸にRPVOT残存率(%)をとり、実測値として示したデータ点は、RPVOT残存率の低下状態を示している。実機に用いられたタービン油を実際に抽出した試験した結果を表している。
予測値は、本実施形態の寿命予測方法によって導出した寿命時間である。その比較結果より、実機におけるタービン油の劣化に大きな誤差なく寿命を予測できたことが確認できた。
次に、図6、9を参照して寿命予測方法の第2実施形態を説明する。
第1実施形態においては、タービン油新油の酸化安定度試験を行って時間の経過とともに酸化させて劣化タービン油を生成するステップとして、前記Dry−TOSTの手法によって酸化劣化させている。すなわち、120℃の油浴に浸された試験管1へ、酸素吹込み管3から酸素を供給して酸化させていたが、実機においては酸素雰囲気下での酸化劣化ではなく、空気雰囲気下での酸化劣化であるが、酸化劣化のタービン油を迅速に生成できることから、酸素の吹きこみが行われている。
図1のフローチャートのステップS1における劣化タービン油の生成においては、第1実施形態と同様に酸素雰囲気で酸化させるが、空気雰囲気の状態におけるRPVOT残存率低下速度を求めるために、図6に示すマップのようにラインXは、酸素雰囲気条件での補正RPVOT低下速度と温度との関係を示し、このラインXの値に対して、係数αを乗じてラインYを生成し、空気雰囲気条件での補正RPVOT残存率低下速度と温度との関係を得るようにする。
酸素雰囲気条件下で温度範囲を拡大して得られたラインXの関係を維持しつつ、係数α分だけ低下速度を悪化させる方向に移動させる補正をする。
次のステップS20で、ラインXを係数α分だけ低下速度を小さくさせる方向に移動させる補正をして、空気雰囲気条件での補正RPVOT残存率低下速度と温度との関係を示すラインYを得る。
その後は、このラインYの関係を基に、判定対象のタービン油の寿命を予測する手法は第1実施形態と同様である。
3 酸素吹込み管
7 酸化器
9 鉄、銅触媒
15 ボンベ
17 恒温槽
23 圧力計
30 タービン油の循環系
31 油タンク
33 オイル供給ポンプ
35 オイルクーラ
37 給油通路
39 #1ジャーナル軸受(第1高温部)
41 #2ジャーナル軸受(第2高温部)
43 スラスト軸受(第3高温部)
45 排油通路(第4高温部)
47 排気キャビティー(第5高温部)
49a〜49e 温度センサ
51a〜51 流量センサ
X 酸素雰囲気条件での補正RPVOT低下速度と温度との関係を示すライン
Y 空気雰囲気条件での補正RPVOT低下速度と温度との関係を示すライン
Claims (6)
- タービン油新油の酸化安定度試験を行って時間の経過とともに酸化させて劣化タービン油を生成するステップと、
前記時間の経過とともに劣化する劣化タービン油を、JIS K2514に規定されるRPVOT試験によってRPVOT残存率を算出するステップと、
算出された前記RPVOT残存率の低下よりRPVOT残存率低下速度を算出するステップと、
RPVOT残存率低下速度の温度依存性を求めて、前記RPVOT残存率低下速度の温度補正を行うステップと、
前記タービン油の循環系における高温部を選定し、前記温度補正後のRPVOT残存率低下速度を用いて、各高温部での暴露時間及び温度を基に各高温部におけるRPVOT残存率低下量を算出するステップと、
各高温部でのRPVOT残存率低下量を前記循環系の全油量に対する各高温部の油量比で希釈した希釈RPVOT残存率低下量を算出するステップと、
各高温部における希釈RPVOT残存率低下量を総和して総和RPVOT残存率低下量を算出するステップと、
該総和RPVOT残存率低下量が所定値に達するまでの時間を基にタービン油の残存寿命を算出するステップと、
を備えたことを特徴とするタービン油の寿命予測方法。 - 前記RPVOT残存率低下速度は、タービン油新油の時を100%のRPVOT残存率とし、時間の経過とともに低下して25%のRPVOT残存率に至る時間を基に算出することを特徴とする請求項1に記載のタービン油の寿命予測方法。
- 前記RPVOT残存率低下速度の温度補正は、前記タービン油新油の酸化安定度試験を行う際の油浴槽の温度を基準温度として、該温度において算出された前記RPVOT残存率低下速度を、アレニウスの法則を用いて他の温度における補正RPVOT残存率低下速度を算出することを特徴とする請求項1記載のタービン油の寿命予測方法。
- 前記タービン油新油の酸化安定度試験は、試験管に試験用のタービン油と、銅と鉄の触媒を入れ、略120℃の一定温度の油浴槽に浸しながら酸素または空気を吹き込んで酸化させることを特徴とする請求項3に記載のタービン油の寿命予測方法。
- 前記酸素雰囲気で行った場合には、算出したRPVOT残存率低下速度に係数を乗じて空気雰囲気でのRPVOT残存率低下速度に換算した後に、前記アレニウスの法則を適用して前記補正RPVOT残存率低下速度を算出することを特徴とする請求項4に記載のタービン油の寿命予測方法。
- 前記タービン油の循環系における高温部は、タービン油が通過するタービン軸のジャーナル軸受、スラスト軸受、及びタービン油タンクに接続された排気通路部を含むことを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載のタービン油の寿命予測方法。
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