以下、本発明に係る車内通信システムについて好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
本発明の一実施形態に係る車内通信システム10は、車両12の内部に配置される複数の車載ユニットを適宜接続して、相互のユニット間で情報通信を行うものである。以下の説明では、図1に示すように、車載ユニットとして、車内に搭載されるエンジン制御装置14とディスプレイオーディオ16(以下、DA16という)の間の通信について代表的に説明する。
なお、図1中では、車両12として自動四輪車を図示しているが、車内通信システム10を利用する車両12は特に限定されるものではない。或いは、本発明では車内通信システム10と称しているが、この車内通信システム10は車両12の他に、運輸に関わる機器(鉄道、船舶、航空機等)に適用することも可能である。
車両12は、車内通信システム10により車内で情報通信を行う他に、車両12から外部にアクセスを図る車外通信システム18を備える。車外通信システム18は、DA16に外部通信装置20を接続することで構成され、外部通信装置20から基地局22(BS)に無線通信を行い、ネットワーク24を介して外部アクセス群26に対し情報通信を行う。例えば、車外通信システム18は、外部アクセス群26のうち所定のサービスセンタ28に対し通信回線を開くことで、エンジン制御装置14の情報をサービスセンタ28に送信する。特に、車内通信システム10及び車外通信システム18は、車両12に異常が生じた場合に、サービスセンタ28に車両12の異常に関する情報を自動送信する通報システムを構築している。
エンジン制御装置14は、点火系、燃料系、又はトランスミッションを含むパワートレイン全体を制御する電子制御装置(コンピュータ)であり、演算処理部、記憶部、入出力部等を有する。特に、燃料噴射装置を制御するためFI−ECU(Fuel Injection−Electric Contorol Unit)と呼ばれており、以下の説明でもFI−ECU14と呼称する。FI−ECU14は、上記の各系統を適切に制御することにより、エンジンの性能向上、燃費向上、排気ガスのクリーン化、運転性の向上等を図っている。
図2に示すように、FI−ECU14は、車内通信システム10の通信線36により他の車載ユニットである複数のECU、複数のセンサ、スイッチ又は計器類に接続されている。通信線36としては、CAN(Controller Area Network)やLIN(Local Interface Network)等の規格に対応したバスを適用することができる。
また、FI−ECU14は、自己診断部30を内部に備えることで、点火系や燃料系等の自己診断(状態把握、異常検出)を実施している。車両12に生じた異常の内容によっては、車両12の走行に影響を及ぼすことがあるからである。
FI−ECU14に接続される他のECUは、特に限定されるものではないが、例えば、ABS−ECU、パワーステアリングECU、イモビライザーECU、ボディECU、エアコンECU、メーターECU、エアバッグECU等が挙げられる。以下、単にECU32(第1ECU32a、第2ECU32b、…)と称した場合には、FI−ECU14以外のECUを指すものとする。所定のECU32も、それぞれ内部に自己診断部を有し、各々の制御機能に応じた自己診断を実施している。
FI−ECU14に接続されるセンサも、特に限定されず、時間的に変化する温度、圧力、回転速度、燃焼ガス等の物質の状態を、電圧変化に置き換えてFI−ECU14やECU32に出力する種々の検出器を適用し得る。センサとしては、例えば、車速センサ、クランク角センサ、カム角センサ、スロットルポジションセンサ、バキュームセンサ(吸入空気量センサ)、O2センサ、ノックセンサ、冷却水温度センサ等が挙げられる。以下、単にセンサ34(第1センサ34a、第2センサ34b、…)と称する。
FI−ECU14に接続されるスイッチも、特に限定されず、例えば、イグニションスイッチ、エアコンスイッチ、シフトポジションスイッチ等が挙げられる。なお、図2中ではスイッチの図示を省略している。
FI−ECU14は、エンジン制御に関わる所定のセンサ34の検出信号を受信して、FI−ECU14の記憶部に一時的に記憶する。具体的には、複数のセンサ34の各検出信号を順次記憶していき一定容量記憶すると、古い記憶データから新たに上書きしていく処理(所謂リングバッファ領域への記憶)を行う。
そして、FI−ECU14の自己診断部30は、所定のセンサ34の検出信号を受信する際にその信号値を適宜判断することで、車両12に生じる異常を検出する。自己診断部30は、検出した異常の種類に応じてコードを設定し、コードに基づく処理を実施する。例えばコードに応じて、自己診断部30は、ユーザ(運転者や搭乗者)に対し異常の報知を行う。
また、自己診断部30は、異常の発生をトリガとして、コードに応じた特定のセンサ34の記憶データ(FI−ECU14の記憶部に記憶されている検出信号)を診断データとして抽出する。この診断データは、異常の発生前の時々刻々と変化するセンサ34の連続的な値であり、OBS(On Board Snapshot)とも呼ばれる。OBS情報は、後に修理工場やディーラー等に車両12を持ち込んだ際に、専用の読取装置が接続されることで読み出される。そして、車両12のメンテナンスや修理、品質改善、異常の原因究明等に使用される。なお、OBS情報には、異常の発生後のセンサ34の検出信号を含んでもよい。
図3に示すように、OBS情報Xは、OBS識別符号XAと、OBS診断データXBとを含む。OBS識別符号XAは、一のトリガに基づいて生成されるOBS情報Xを識別するためのものである。OBS識別符号XAは上記のコードを含んでもよい。一方、OBS診断データXBは、上述した所定のセンサ34の連続的な検出値を含むデータであり、比較的大きなデータ量を有し、例えば車載用のCANで送信する場合には数分から20分程度要する。
このため、自己診断部30は、OBS情報Xを送信する際にOBS情報Xを複数のデータフレームに分割する。OBS情報Xの複数のデータフレームのうち最初のデータフレーム#0には、OBS識別符号XAが入れられる。そして、OBS診断データXBは、以降のデータフレーム#1〜#nに入れられる。
図1に戻り、車内通信システム10及び車外通信システム18は、走行時等に異常の発生を検出すると、自己診断部30が構築したOBS情報Xをサービスセンタ28に無線送信する構成となっている。これにより、サービスセンタ28側では、車両12の異常の対処を早期に行うことが可能となる。そのため、車内通信システム10は、トリガに基づくOBS情報XをFI−ECU14からDA16に送信する処理を行う。なお、他のECU32のOBS情報XもFI−ECU14とパラレルに(又は重要度順にシリアルに)DA16に送信される。そして車外通信システム18は、DA16からサービスセンタ28にOBS情報Xを送信する処理を行う。
FI−ECU14とDA16の間は、上述したように通信線36により接続されている。CAN規格の通信線36は、シリアル通信を行うためデータ転送速度が低くなるものの、ノイズに強く通信を確実に行うことができる。また、車内通信システム10は、FI−ECU14(及びECU32)からDA16に向けてOBS情報Xを送信するのみの一方向通信を行うように構成されている。これにより、FI−ECU14やECU32が、車両制御に関与しない構成要素から情報を受けることがなく、車両制御を良好に行うことが可能となる。また、車内通信システム10の一方向通信機能により、車内ネットワークの信頼性を担保する、又は車内ネットワークの通信線36の負荷を低減する等の効果を得ることもできる。
一方、第2車載ユニットであるDA16は、図示しない演算処理部、記憶部及び入出力部を有するコンピュータとして構成され、同じく車内に搭載される図示しないスピーカを介して、音コンテンツを出力する機能を有する。音コンテンツとしては、ユーザが持ち込んだコンパクトディスク等や記憶部に予め記憶した楽音が挙げられる。また、音コンテンツは、外部アクセス群26からネットワーク24及び外部通信装置20(或いはアンテナ)を介して受信したコンテンツ(例えば、ラジオ、ダウンロードした楽音等)でもよい。
さらに、DA16は、車両12のナビゲーションを実施するために、GNSS(Global Navigation Satellite System)衛星の信号を受信して車両12の現在位置を測位するGNSS測位部38(図2参照)を有する。これによりDA16は、走行時等に、GNSS測位部38が測位した車両12の位置情報を地図情報に重畳して車載タッチパネル16aに表示し、さらにユーザが入力した目的地の経路を表示すると共に車載スピーカから音声案内を出力してナビゲーションを行う。このようなナビゲーションの機能は公知であるため、詳細な説明については省略する。なお、FI−ECU14から情報を受信する車載ユニットは、DA16に限定されず、例えばナビゲーション装置を適用してもよい。
DA16は、自己診断部30からOBS情報Xを受信すると、記憶部にデータを一時的に蓄積する。また、DA16は、電波受信により正確な時刻を計測しており、図3に示すように、OBS情報Xに時間情報XCを付加する。さらに、DA16は、内部のGNSS測位部38で測位した車両12の位置情報XDをOBS情報Xに付加する。これにより、OBS情報Xは、付属情報α(時間情報XC、位置情報XD)が付加された状態で外部に送信される。OBS情報Xに付加される付属情報αは、車両12が移動性を有することから、時間的に値が変化する情報と言うことができる。以下の説明では、車内通信時のOBS情報Xと区別するため、外部送信用の付属情報αを含むOBS情報Xを単に外部送信情報Yという。
DA16は、OBS情報Xに対し、付属情報αを新たなデータフレーム(例えば、時間情報XCを#n+1、位置情報XDを#n+2〜#n+m)として付加する。これにより外部送信情報Yは、外部通信装置20を介して、データフレーム毎に分割されて外部に送信される。
DA16に接続される外部通信装置20は、車外の基地局22にアクセス可能な図示しない無線用アンテナを有する。外部通信装置20は、データフレームをパケット通信方式により無線送信する。外部通信装置20は、コスト低減のため、符号データのみを送受信する簡易な装置を適用することが好ましい。
また、外部通信装置20は、自己診断部30が異常を検出しない通常時に、DA16の処理下に通信回線を開くことで、ネットワーク24を介して無線通信を行い、走行に利用可能なサービス情報を外部アクセス群26から受信してもよい。受信するサービス情報としては、例えば、道路の渋滞情報、駐車場の位置情報XD、地図の更新情報、気象情報、防災情報、観光スポット等のドライブ情報、システムの更新情報等が挙げられる。
また、DA16と外部アクセス群26との間で情報通信を行う通信手段は、上記の外部通信装置20に限定されるものではなく、種々の装置を適用することができる。例えば、通信手段としてユーザが車内に持ち込む携帯端末40を適用することができる。携帯端末40は、外部への通信機能を有するものであれば特に限定されず、スマートフォンを含む携帯電話、携帯型情報端末(PDA、タブレット端末等)、ラップトップコンピュータ、ウェアラブルコンピュータ或いは他の情報通信機器等を適用し得る。
この場合、携帯端末40は、外部アクセス群26への無線接続の他に、車内のDA16との間でデータを送受信可能なものが適用される。これにより、携帯端末40は、DA16の情報を受信して使用する、又は携帯端末40の情報をDA16に提供することができる。DA16と携帯端末40間の接続は、例えば、bluetooth(登録商標)等の通信規格で知られる近距離無線通信を適用することができる。なお、DA16と携帯端末40の接続は、近距離無線通信に限らず、例えばUSBやHDMI(登録商標)等による有線通信でもよい。
車両12からアクセスされるネットワーク24としては、例えば、インターネットプロトコルを利用する無線アクセスシステムが挙げられる。無線アクセスシステムの基地局22は、通信インフラとして公道付近に多数設けられており、外部通信装置20からのデータ通信を比較的容易に行うことができる。なお、ネットワーク24は、車両12と外部アクセス群26の間を情報通信可能なものであれば、その経路や通信方式については特に限定されず、例えば、プライベートネットワークに対応するように構成されてもよい。これにより、ネットワーク24の混雑による通信遅延の防止及び接続率の向上が可能となる。
外部送信情報Yの受信先であるサービスセンタ28は、外部送信情報Yを受信するサーバ28aを有する。サービスセンタ28のサーバ28aは、複数の外部送信情報Yを適宜なデータ保存形式(例えば、異常のコード毎にデータベース化する等)により管理する。車両12を製造する工場の品質管理部門42等は、このサーバ28aにアクセスして保存した外部送信情報Yを利用することで、不具合の原因究明や品質改善に役立てることができる。
次に、図2を参照して、車内通信システム10の具体的な構成を説明していく。自己診断部30は、FI−ECU14に記憶されている自己診断プログラム(図示せず)の実行に基づき動作し、OBS情報生成部50及びOBS送信部60を機能的に構築する。
OBS情報生成部50は、車両12の異常の発生(トリガの検出)に基づくOBS情報Xを生成する機能部である。OBS情報生成部50は、2つの異常が発生した場合でも、第1のトリガに基づく第1のOBS情報X1(第1のデータ、以下OBS1ともいう)と、第2のトリガに基づく第2のOBS情報X2(第2のデータ、以下OBS2ともいう)を並列的に生成する。OBS情報生成部50の内部には、トリガ検出部52と、識別符号生成部54と、診断データ生成部56とが設けられる。
トリガ検出部52は、自己診断部30の動作状態で、センサ34から送信される信号を定常的に監視して、FI−ECU14の異常を判断する。トリガ検出部52は、異常の種類(コード)に対応したレジスタを内部に有し、車両12の異常を検出すると、異常の検出箇所や種類に応じてフラグを立てることで、OBS情報Xの生成用のトリガとする。
識別符号生成部54は、トリガ検出部52のトリガの検出に基づき、OBS情報XのOBS識別符号XAを割りふる。OBS識別符号XAは、他のOBS情報Xと識別できればよく、車両12の購入時から異常が発生した順に符号をふってもよく、ランダムに符号をふってもよい。
診断データ生成部56は、トリガ検出部52のトリガに基づき、FI−ECU14に記憶されている所定(複数又は1つ)のセンサ34の検出信号を抽出する。抽出される検出信号は、トリガの検出時を基準に、それよりも前にリングバッファ領域に一時記憶されたもの全て(又は直近の一部)が取り出される。そして、診断データ生成部56は、センサ34個別の検出信号をまとめてOBS診断データXBを生成する。OBS情報生成部50は、OBS識別符号XAとOBS診断データXBを生成すると、これらの情報を一体化してOBS情報Xとする。
自己診断部30のOBS送信部60は、OBS情報生成部50が生成したOBS情報XをDA16に送信する。特に、本実施形態に係るOBS送信部60は、2以上のOBS情報X(OBS1、OBS2)を送信する場合でも、OBS情報Xを効果的に送信することができる。具体的に、OBS送信部60の内部には、データフレーム生成部62及び送信タイミング設定部64が設けられる。
データフレーム生成部62は、OBS情報生成部50で生成されたOBS情報Xを、パケット通信方式で送信するために分割してデータフレームを複数形成する。
送信タイミング設定部64は、トリガ検出部52のレジスタを監視し、DA16に送信するOBS情報Xの送信タイミングを設定する。具体的に、送信タイミング設定部64は、送信ステータス(図4及び図5参照)を管理しており、2以上のOBS情報Xを送信する場合は、トリガ検出部52のフラグに基づき送信ステータスを変化させることで、DA16に送信するOBS情報Xの切替等を行う。例えば、送信タイミング設定部64は、第1のトリガに基づくOBS1の送信中に、トリガ検出部52により第2のトリガを検出した場合、OBS1の送信を中断して第2のトリガに基づくOBS2の送信に切り替える処理を行う。この処理については、後に詳述する。
一方、受信側であるDA16の内部には、DA16内に記憶されている送信用プログラム(図示せず)の動作に基づき、OBS受信部70、送信情報生成部72及び外部送受信部74を機能的に構築する。OBS受信部70は、自己診断部30のOBS送信部60から送信されるOBS情報Xを受信する。OBS情報Xはデータフレーム単位で受信されて、OBS受信部70において一連のOBS情報Xに構成される。
送信情報生成部72は、OBS受信部70が受信したOBS情報Xに対し、DA16内で計測している時間情報XC、GNSS測位部38が測位した車両12の位置情報XDを付加し、外部送信情報Yを生成する。
外部送受信部74は、車外通信システム18の一部を構成し、送信情報生成部72が生成した外部送信情報Yを、外部通信装置20を用いて無線送信する。外部送信情報Yは、送信時に外部送受信部74によって、外部の無線アクセスシステムに対応したデータフレームに分割されるとよい。従って、DA16では、自己診断部30のデータフレーム生成部62が生成したデータフレームを維持し、そのまま外部送受信部74に送信してもよい。
本実施形態に係る車内通信システム10は、基本的には以上のように構成されるものであり、以下その作用効果について説明する。
図4は、図1の自己診断部30(FI−ECU14)からDA16に複数のOBS情報X(OBS1、OBS2)を送信する際の送信制御を示すタイムチャートである。車内通信システム10の自己診断部30は、図4中の時点t1において、トリガ検出部52により車両12の異常を最初に検出する。これにより、トリガ検出部52は、最初のフラグ(以下、OBS1フラグという)を立てて第1のトリガとする。
OBS1フラグが立つと、OBS情報生成部50の識別符号生成部54は、第1のトリガに基づくOBS1識別符号を生成する。同時に、診断データ生成部56は、所定のセンサ34の記憶されている検出値を抽出してOBS1診断データを生成する。OBS情報生成部50で生成されたOBS1(OBS1識別符号、OBS1診断データ)は、OBS送信部60からDA16に送信される。この場合、送信タイミング設定部64は、第1のトリガに基づきOBS送信ステータスを1に設定し、OBS1の送信を管理する。
OBS送信部60は、OBS1識別符号を含むデータフレーム#0を最初に送信する。よって、受信側であるDA16も、このOBS1識別符号を最初に受信する。DA16の送信情報生成部72は、認識したOBS1識別符号に対しその時点での時間情報XC(タイムスタンプ)と位置情報XD(GNSS情報)を紐付けする。これにより、OBS1を有する外部送信情報Y1には、車両12の異常が発生したタイミングでのリアルタイムな時間情報XCと位置情報XDが付加される。
その後、車内通信システム10は、自己診断部30からDA16にOBS1診断データを継続的に送信し、DA16側にOBS1のデータを蓄積していく。OBS1の送信時に、例えば車両12のイグニションスイッチが操作される等して電源が停止された場合には、OBS送信部60は、電源が停止された際に送信していたデータフレームを記憶しておく。再起動された際には、停止されたデータフレームを最初から送信を再開する、又は停止されたデータフレームよりも幾つか前のデータフレームから送信を行うとよい。これによりデータフレームの抜けを防ぐことができる。
図4中の時点t2において、OBS1の送信中に、トリガ検出部52により新たな車両12の異常を検出すると、トリガ検出部52は、別のフラグ(以下、OBS2フラグという)を立てて第2のトリガとする。
OBS2フラグが立つと、OBS情報生成部50の識別符号生成部54は、第2のトリガに基づくOBS2識別符号を生成する。同時に、診断データ生成部56は、所定のセンサ34の記憶されている検出値を抽出してOBS2診断データを生成する。
そして、OBS送信部60の送信タイミング設定部64は、OBS2フラグに基づき、OBS送信ステータスを1から2に変更する。これにより、OBS送信部60は、DA16へのOBS1の送信を中断して、OBS2の送信に切り替える。この切替に伴い、OBS情報生成部50で生成されたOBS2(OBS2識別符号、OBS2診断データ)をDA16に送信する。
OBS送信部60は、OBS1の送信を中断する際に、送信途中のデータフレームを送りきり、そのEOF(End of Frame)の前等に中断を示す中断指示データを付与するとよい。OBS送信部60は、OBS1の送信再開時に、中断指示データに照合するデータフレーム(中断したデータフレームの次のデータフレーム)を送信して、OBS1の送信を途中から再開することができる。また、送信中のOBS1のデータフレームを送りきるまでの時間は僅かであるため、OBS2識別符号に付属情報αを付加するタイミングが大きく遅れることはない。
OBS送信部60は、OBS2を送る際も、OBS2識別符号を含むデータフレーム#0を最初に送信する。よってDA16も、このOBS2識別符号を最初に受信する。そして、DA16の送信情報生成部72は、OBS2識別符号を受信した時点での時間情報XCと位置情報XDを紐付ける。これにより、OBS2を有する外部送信情報Y2も、車両12の異常が発生したタイミングのリアルタイムな時間情報XCと位置情報XDを有する。
その後、車内通信システム10は、自己診断部30からDA16にOBS2診断データを継続的に送信し、DA16側にOBS2のデータを蓄積していく。OBS2の送信は、図4中の時点t3においてOBS2診断データの送信が全て完了するまで継続される。
そして、OBS2の送信が完了したことにともない、トリガ検出部52はOBS2フラグを倒す。これにより送信タイミング設定部64は、OBS送信ステータスを1に戻し、OBS送信部60はOBS1の送信を再開する。OBS送信部60は、OBS1のデータフレームを途中(或いは中断したフレームよりも多少前)から送信再開することで、OBS1及びOBS2全体の送信時間を短くすることができ、省電力化を図ることができる。
OBS1の送信を継続して、図4中の時点t4において完了すると、トリガ検出部52は、OBS1フラグを倒す。これにより送信タイミング設定部64は、OBS送信ステータスを0に戻し、OBS情報Xの送信を終了する。
なお、車内通信システム10は、3つ(或いは4以上)のトリガを並行的に検出した場合でも上記と同様の処理を行うことができる。例えば、OBS2の送信中に第3のトリガが発生した場合には、OBS2から第3のトリガに基づくOBS3に切り替えて送信を行うことで、異常検出時の時間情報XC及び位置情報XDをOBS3に付加することができる。OBS3の送信完了後は、OBS1又はOBS2のいずれかの送信を再開すればよい。
以上のように、本実施形態に係る車内通信システム10は、OBS1の送信中に第2のトリガが発生した場合に、OBS1の送信を中断してOBS2の送信を開始する。これにより、DA16では、第1のトリガの発生時点における時間情報XC及び位置情報XDをOBS1に付加し、且つ第2のトリガの発生時点における時間情報XC及び位置情報XDをOBS2に付加する。そのため、OBS1、OBS2各々の情報の精度が向上する。そして、付属情報αを含む外部送信情報Yは、後に車両12の異常の原因を究明する際等に有効に活用される。
この場合、自己診断部30は、OBS2の送信が完了した後に、OBS1の送信を再開することで、自己診断部30におけるOBS1、OBS2のデータの送信制御をより簡単に行うことができる。
なお、本実施形態に係る車内通信システム10は、上記の実施形態に限定されるものではなく、種々の変形例及び応用例をとり得る。例えば、携帯端末40が測位機能を有している構成では、車内通信システム10は、自己診断部30のOBS情報Xを携帯端末40に送信し、携帯端末40において位置情報XDや時間情報XCを付加する構成としてもよい。すなわち、本発明に係る車載ユニットは、ユーザが車内に持ち込む機器を含むものとする。この場合、携帯端末40には、上記のDA16と同様の処理を行うアプリケーションを予めインストールしておけばよい。
また、車内通信システム10は、OBS1の送信を中断した場合、OBS1識別符号のデータフレームと付属情報αを残してOBS1診断データを削除し、OBS2の送信後にOBS1診断データを再び最初から送信してもよい。これにより、自己診断部30は、OBS1のデータフレームをどこまで送信したかを認識しなくてもよくなるため、送信制御を一層簡単化することができる。
以下、変形例に係る車内通信システム10Aの送信制御について、図5を参照して説明する。
図5に示す変形例に係る車内通信システム10A(図1参照)は、OBS送信部60がOBS識別符号XAとOBS診断データXBとを個別に送信している点で、車内通信システム10と異なる。この場合、車内通信システム10Aの自己診断部30A(図2参照)は、図5中の時点t11において、トリガ検出部52により最初に車両12の異常を検出する。これにより、トリガ検出部52は、OBS1フラグを立てて第1のトリガとする。
OBS1フラグが立つと、OBS情報生成部50の識別符号生成部54は、第1のトリガに基づくOBS1識別符号を生成する。同時に、診断データ生成部56は、所定のセンサ34の記憶されている検出値を抽出してOBS1診断データを生成する。そして、OBS送信部60の送信タイミング設定部64は、OBS送信ステータスを1に設定し、OBS1の送信を管理する。
OBS送信部60は、OBS1の送信を開始すると、識別符号生成部54で生成されたOBS1識別符号をDA16に送信する。受信側であるDA16は、このOBS1識別符号を受信すると、送信情報生成部72において受信時点の時間情報XC(タイムスタンプ)と位置情報XD(GNSS情報)を紐付ける。これにより、OBS1を有する外部送信情報Yには、車両12の異常が発生したタイミングでの時間情報XCと位置情報XDが付加される。
次に、OBS送信部60は、診断データ生成部56で生成したOBS1診断データを継続的に送信する。DA16は、OBS1識別符号とOBS1診断データを関連付けて記憶し、OBS1としてデータを蓄積していく。
そして、図5中の時点t12において、OBS1診断データの送信中に、トリガ検出部52により新たな車両12の異常を検出すると、トリガ検出部52は、OBS2フラグを立てて第2のトリガとする。
OBS2フラグが立つと、OBS情報生成部50の識別符号生成部54は、第2のトリガに基づくOBS2識別符号を生成する。同時に、診断データ生成部56は、所定のセンサ34の記憶されている検出値を抽出してOBS2診断データを生成する。
そして、OBS送信部60の送信タイミング設定部64は、OBS2フラグに基づき、OBS送信ステータスを一時的に1から2に変更する。これにより、OBS送信部60は、DA16へのOBS1の送信を中断して、OBS2の送信に一時的に切り替える。この一時的な切替に伴い、OBS送信部60は、識別符号生成部54で生成されたOBS2識別符号をDA16に送信する。換言すれば、変形例に係る自己診断部30Aの送信タイミング設定部64は、OBS2識別符号を含むデータフレームのみを送信させる送信トリガを発生させる。
受信側であるDA16は、OBS2識別符号を受信すると、送信情報生成部72において受信時点の時間情報XC(タイムスタンプ)と位置情報XD(GNSS情報)を紐付ける。その結果、OBS2を有する外部送信情報Yには、車両12の異常が発生したタイミングでの時間情報XCと位置情報XDが付加される。
送信タイミング設定部64がOBS送信ステータスを1に戻すと、OBS1診断データの送信を再開する。そして、OBS1診断データの送信が完了するまで、OBS1の送信を継続する。仮に、新たなトリガ(第3のトリガ)が発生した場合には第2のトリガ発生時と同様の処理を行い、OBS1の送信に戻る。
図5中の時点t13においてOBS1の送信が完了すると、トリガ検出部52はOBS1フラグを倒す。これにより、送信タイミング設定部64はOBS送信ステータスを1から2に変更して、OBS2の送信に切り替え、OBS送信部60がOBS2診断データの送信を行う。受信側であるDA16は、先に受信したOBS2識別符号にOBS2診断データを関連付けることで、OBS2としてデータを蓄積していく。
そして、図5中の時点t14においてOBS2の送信が完了すると、トリガ検出部52は、OBS2フラグを倒す。これにより送信タイミング設定部64は、OBS送信ステータスを0に戻し、OBS情報Xの送信を終了する。
以上のように、変形例に係る車内通信システム10Aの送信制御でも、第1のトリガの発生時点における付属情報αをOBS1に付加し、且つ第2のトリガの発生時点における付属情報αをOBS2に付加することができる。よって、車内通信システム10と同様の効果を得ることができる。特に、この車内通信システム10Aは、OBS2の一部のみを送信した後にOBS1の送信を再開することで、OBS1のデータ送信を発生したトリガの順にデータ送信を完了することができる。従って、DA16からサービスセンタ28にOBS1、OBS2を送信する際に、OBSの発生順に簡単に送信することができ、サービスセンタ28においてスムーズな対処をとることができる。
なお、車内通信システム10Aは、OBS識別符号XAに、発生した異常に関する重要度のパラメータを設けておき、OBS識別符号XAに含まれる重要度が高い順にデータ送信を行う構成としてもよい。例えば、OBS1識別符号の重要度よりもOBS2識別符号の重要度が高い場合には、OBS2診断データの送信を優先する。これにより、DA16は、重要度が高いOBS情報Xを直ぐにサービスセンタ28に送信することができる。また、車内通信システム10Aでも、OBS2識別符号を送信するためにOBS1の送信を中断した場合に、OBS1診断データを最初から送信し直してもよい。
上記において、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改変が可能なことは言うまでもない。例えば、車内通信システム10、10Aによる通信は、FI−ECU14とDA16の間に限定されるものではなく、車両12内に配される2つの異なる装置の間(例えば、ECU32同士)の通信にも適用することができる。