JP6099044B2 - 医療用組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、内視鏡的粘膜切除術または内視鏡的粘膜下層剥離術において粘膜下層に注入するための医療用組成物に関する。
近年、消化器の早期癌に対する治療法として、開腹せずに内視鏡を用いて病変部を切除する内視鏡的粘膜切除術(EMR)が広く行われてきた。しかし、EMRで一度に切除できる病変は比較的小さなものに限定され、大きな病変を切除しようとすると2回以上の分割切除が必要となる場合があり、EMR後の遺残再発が問題となっていた。その後、根治性を損なわず、より大きな病変に対しても一括切除を可能とする内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)が開発され、急速に普及しつつある。しかし、ESDは高度な技術が要求されるとともに、より大きな病変が対象となるため、施行時間の延長や出血・穿孔のリスクが高くなる可能性がある。これらの観点から、ESDをより容易かつ安全に施行することを目的として、切除を予定する部位の粘膜下層に高粘性の物質の溶液を注入して、粘膜の隆起を形成させた後、病変部を切除するという試みが行われている。
例えば特許文献1には、高粘性物質のヒアルロン酸ナトリウムを用いることにより形成された隆起の持続的な維持が可能になった旨が示されている。また特許文献2にはコンドロイチン硫酸ナトリウムとヒアルロン酸ナトリウムを組み合わせた上皮膨隆用の医療用組成物が記載されている。
しかしながらヒアルロン酸ナトリウムは生体適合性に優れるものの、生物由来のものが多いため、大量生産が難しく高価であるという問題があった。そのため、より安価な代替品の開発が求められていた。
そのような物質として、アルギン酸の塩が注目されており、すでにアルギン酸の塩を適用した例としていくつかの報告がある。例えば非特許文献1には、ブタ摘出胃を用いて1%アルギン酸ナトリウム溶液の粘膜隆起能を評価し、EMRに用いた旨が記載されている。また非特許文献2では、ブタ摘出胃を用いて2〜4%アルギン酸ナトリウム溶液の粘膜隆起能を評価した上で、3%アルギン酸ナトリウム溶液を用いてESDを実施した旨が記載されている。しかしこれらの検討は、アルギン酸塩がヒアルロン酸ナトリウムの代替品として使用できる可能性を示しつつも粘膜隆起能は不十分であり、改善が望まれていた。また非特許文献2の検討においては、ESDに用いたアルギン酸ナトリウム溶液の粘性が高く、排出力に関する問題、即ち溶液が内視鏡用穿刺針内から排出されにくいという問題もあった。
特開2001−192336号公報 特許第4607842号公報
Eun SH et al., Effectiveness of Sodium Alginate as a Submucosal Injection Material for Endoscopic Mucosal Resection in Animal, Gut and Liver, vol. 1 No.1, 2007:p27−32 Akagi T et al., Sodium alginate as an ideal submucosal injection material for endoscopic submucosal resection: preliminary experimental and clinical study, Gastrointestinal Endoscopy, Vol.74, No.5, 2011: p1026−1032
上述のように、上記特許文献1または2で用いられるヒアルロン酸ナトリウムは高価であり、代替物としてアルギン酸塩の使用の可否が検討されてきた。アルギン酸塩の粘膜隆起能はヒアルロン酸ナトリウムに匹敵しうることは非特許文献1及び2でも報告されているが、内視鏡的粘膜切除術(EMR)又は内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)を行う上で、粘膜隆起能は高いほど癌組織の切除が容易になることから、より高い粘膜隆起能を有する材料が求められていた。
また現在、上部あるいは下部消化管のEMRまたはESDの施行において、粘膜の隆起形成を目的とした局注材の投与の際には25Gの内視鏡用穿刺針が標準的に使用されており、これら内視鏡用穿刺針を容易に通過できることが粘膜下注入用組成物に求められる特性の一つである。これまでの知見によれば、粘膜隆起能を高めるためにヒアルロン酸ナトリウムやアルギン酸塩の溶液としては高濃度の溶液を使用することが推奨されてきたが(特許文献2、あるいは特許第4761921号公報、特開2003−201257号公報等を参照)、溶液の濃度が高くなるにつれて粘度も上昇するため、例えば上述したような3%アルギン酸ナトリウム溶液は内視鏡用穿刺針から排出されにくいことが問題であった。
このように、安価で、優れた粘膜隆起能を有し、好ましくは内視鏡用穿刺針内から排出されやすい、粘膜下注入用の医療用組成物を提供することが本発明の課題である。
本発明者らは前述の課題を解決するために鋭意検討を行った。その結果、本発明者らは、組成物の粘膜隆起能が、その組成物に含まれるアルギン酸又はその医学的に許容される塩の重量平均分子量に依存することを見出した。その知見に基づきさらに検討し、分子量が一定値以上のアルギン酸又はその医学的に許容される塩を主成分として用いることにより、粘膜下層に注入するのに好適な医療用組成物が提供できることを見出した。
即ち本発明は、内視鏡的粘膜切除術(EMR)または内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)において粘膜下層に注入するための医療用組成物であって、重量平均分子量が20万以上のアルギン酸又はその医学的に許容される塩と、溶媒とを含有し、液状である組成物に関する。
限定されないが、好ましい実施形態においては、上記組成物中のアルギン酸又はその医学的に許容される塩の濃度が0.4w/v%以上1.0w/v%以下である。
本発明の医療用組成物は、粘膜下層への注入の際、内視鏡用穿刺針(特に標準的に使用されている25Gの内視鏡用穿刺針)から迅速かつ容易に排出することができ、また従来品よりも優れた隆起能を発揮することができる。従って、本発明の医療用組成物はEMR又はESDの治療の際の操作性、確実性、安全性の向上、及び患者負担の軽減に寄与するものである。さらに、入手が容易なアルギン酸又はその医学的に許容される塩は、高価なヒアルロン酸塩の代替品として十分に役割を果たすものであることから、本発明の医療用組成物は、医療経済上の観点からも極めて有用である。
評価例1において、重量平均分子量の異なるアルギン酸ナトリウムを用いて同程度の粘度の溶液を調製し、その溶液を用いて粘膜隆起能を評価した時の、重量平均分子量と粘膜隆起能の相関関係を表したグラフである。
本発明は、EMR又はESDにおいて粘膜下層に注入するための医療用組成物に関する。本発明の組成物は、重量平均分子量が20万以上のアルギン酸又はその医学的に許容される塩と、溶媒とを含有し、液状である。
上記アルギン酸としては、医療用として適したものであり、かつ重量平均分子量が20万以上のものである、という条件を満たすものであれば特に限定されない。アルギン酸の医学的に許容される塩としては特に限定されないが、例えばアルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩等)、アルカリ土類金属塩(カルシウム塩、マグネシウム塩等)、無機塩基との塩(アンモニウム塩等)、有機塩基との塩(プロピレングリコール塩等)のうち医学的に許容される塩が挙げられる。これらの塩のなかでもアルギン酸のアルカリ金属塩が好ましく、アルギン酸ナトリウムが特に好ましい。
本発明の組成物に含まれるアルギン酸又はその医学的に許容される塩は高分子であり、重量平均分子量が20万以上である。EMR又はESDに適用可能かどうかの判断基準である、粘膜下注入後の粘膜隆起能について、従来はアルギン酸塩の溶液濃度を高くし、粘度の高い溶液を注入することが粘膜隆起能を高めるものと理解されてきた(例えば特許第4761921号公報、特開2003−201257号公報等を参照)。しかしながら本発明者らは溶液の濃度や粘度よりも、アルギン酸又はその医学的に許容される塩の分子量と粘膜隆起能との相関の方が大きいことを検討により見出した。すなわち、低分子量のアルギン酸又はその医学的に許容される塩よりも、高分子量のものの方が粘膜隆起性に優れている。本発明者らの検討においては実用的に使用できるか否かを判断するための一つの基準として注入10分後に5mm以上の隆起を保持できるかどうかを確認したが、注入10分後に5mm以上の隆起を保持するためには重量平均分子量を20万以上とすることが必要であった。
分子量の上限は特に制限はないが、分子量が高すぎる場合、具体的には重量平均分子量が35万を超えると内視鏡用穿刺針を通過しにくい傾向があることから、内視鏡的手術におけるハンドリングが難しい場合がある。また生産効率の観点から現実的には重量平均分子量が35万を超えるようなアルギン酸又はその塩を使用することは現在のところ現実的ではない。従って通常は、アルギン酸又はその医学的に許容される塩の重量平均分子量の上限は35万である。
本願明細書中において、アルギン酸又はその医学的に許容される塩の重量平均分子量は、特に断りの無い限り、SEC−MALLS(Size Exclusion Chromatography with Multiple Angle Laser Scattering Detection)により算出される重量平均分子量である。実際の詳細な測定条件の例としては、下記実施例において説明したような条件が挙げられる。
本発明の組成物に含まれる上記溶媒は、医学的に許容される溶媒である限り特に限定されない。例としては、水(好ましくは注射用水)、生理食塩水が挙げられる。また組成物のpHを調製する、好ましくはpHを7.0〜8.0に調整するために、緩衝剤としてリン酸緩衝液等を含んでいてもよい。
本発明の組成物の調製方法は特に限定されず、例えば公知の方法に従って必要な成分を混合すればよい。
本発明の組成物に含まれるアルギン酸またはその医学的に許容される塩の濃度は適宜選択できる。溶液の濃度が高すぎると粘度も高くなり、内視鏡用穿刺針を通過しにくくなることから、濃度及び粘度は低い方が好ましい。一方、濃度が低すぎると所望の粘膜隆起能を発揮しない場合がある。従って本発明の組成物に含まれるアルギン酸またはその医学的に許容される塩の濃度は、好ましくは0.4w/v%以上1.0w/v%以下、より好ましくは0.4w/v%以上1.0w/v%未満、更に好ましくは0.4w/v%以上0.9w/v%以下である。
本発明の組成物は、発明の効果に悪影響を与えない範囲において、他の医薬活性成分や、慣用の安定化剤、乳化剤、緩衝剤、等張化剤、保存剤、無痛化剤、着色剤、結合剤、滑沢剤、懸濁化剤、抗酸化剤、pH調整剤、分散剤、可溶化剤、溶解剤、溶解補助剤等、通常医薬に用いられる成分を含んでもよい。
また本発明の組成物は、医学的に許容される色素成分、例えばインジゴカルミンのような視認性を向上させるための色素を含有していてもよい。組成物を着色することで、それが粘膜下に注入された範囲がよくわかるうえ、組成物が確実に粘膜下層に注入されていることも容易に視認することが可能となり、EMRやESDにおける操作性と安全性の向上に寄与することができる。
本発明の組成物は、EMR又はESDにおいて粘膜の下層に注入される。上記粘膜としては特に限定されず、例えば消化器粘膜(例えば口腔粘膜、消化管粘膜等)、呼吸器粘膜(例えば鼻中隔粘膜等)、泌尿生殖器粘膜(例えば膀胱粘膜、膣粘膜、子宮粘膜等)などが挙げられるが、消化器粘膜であることが好ましい。
消化器粘膜のなかでも消化管粘膜が好ましい。消化管粘膜としては、食道粘膜、胃粘膜、十二指腸粘膜、大腸粘膜等が例示される。
本発明の組成物は、内視鏡的粘膜下層剥離術(EMR)または内視鏡的粘膜切除術(ESD)に適用するための組成物である。手術においては、上記組成物を上皮の隆起を望む箇所の粘膜下層に注入する。本発明の組成物を粘膜下層に注入すると、上述のアルギン酸又はその医学的に許容される塩が注入箇所に滞留し、これによって粘膜部分が隆起する。組成物の漏出を防ぐため、かつ所望の箇所に注入するために、注入は注射器(シリンジ)を用いて行なうのが好ましい。上記組成物を注入し、病変部周囲の粘膜を隆起させることによって病変部に対する医学的処置が施しやすくなることから、より迅速かつ確実に病変部を除去することができる。
本発明の組成物の投与量は、病変部の大きさや部位等によって適宜設定されるものであり限定されないが、ヒトのEMR又はESDに適用する場合は概ね5〜60mL程度注入される。
本発明の組成物は、その構成成分の一部または全部を注射器内に充填した状態で、あるいは使用直前にこれらを希釈・混合できるようなパッケージ型の注射剤として提供してもよい。このような状態で供給することで、手術時には、内視鏡注射針をこの注射器の先端に装着するだけで直ちに注射することが可能となる。添加成分により、アルギン酸又はその医学的に許容される塩の安定性が損なわれる場合、該当する成分を施術直前に現場で混合できるような剤形として提供することもできる。
本発明を詳細に説明するために、以下に実施例を挙げる。ただし本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。なお下記実施例及び比較例中の「SA」はアルギン酸ナトリウムを意味する。また特に表記がない限り、溶液濃度を表す「%」は「w/v%」を意味する。
<分子量測定>
一般に天然物由来の高分子物質の代表的な測定方法にサイズ排除クロマトグラフィ(SEC,Size Exclusion Chromatography)があるが、サイズ排除クロマトグラフィに多角度光散乱検出器(MALLS, Multiple Angle Laser Light Scattering Detection)を併用したSEC−MALLS(Size Exclusion Chromatography with Multiple Angle Laser Light Scattering Detection)による分子量の評価がより有効であることが知られている(Chikako YOMOTA et al., Evaluation of Molecular Weights of Hyaluronate Preparations by Multi−Angle Laser Light Scattering, Bull. Natl. Inst. Health Sci., 121, 2003: p30−33)。また、SA溶液における粘膜隆起能は、分子量の大きい分子種の寄与が大きいと考えられる。これらの理由により、分子量の指標としてSEC−MALLSによる重量平均分子量を用いることとした。
具体的には、本発明の組成物に含まれるアルギン酸又はその医学的に許容される塩の分子量の測定は以下の方法により行った。
1.手法
SEC−MALLS(Size Exclusion Chromatography with Multiple Angle Laser Light Scattering Detection)法
2.測定条件
装置:ゲル浸透クロマトグラフ−多角度光散乱光度計
カラム:TSKgel GMPWXL(φ7.8mm×300mm×2本、東ソー株式会社製)
カラム温度:40℃
溶離液:0.2M 硝酸ナトリウム水溶液
試料濃度:0.06%(水溶液)
流速:0.7mL/min
注入量:200μL
検出器:DAWN HELEOS(Wyatt Technology社製)
検出器温度:23℃
示差屈折率計:Optilab rEX(Wyatt Technology社製)
(評価例1)
同程度の溶液粘度条件下における、SAの重量平均分子量と粘膜隆起能の比較
これまでの知見では粘度が粘膜隆起能を高める上でキーファクターを占めるものと思われていたが、それに対し、本願発明者らは分子量の方がより粘膜隆起能との相関が高いのではないかと想定した。この想定に基づき、以下の様な実験を行った。
試料:
(1)0.6%SA19.7:0.6%SA溶液(粘度:54.2mPa・s、SAの重量平均分子量197,000、pH:7.6、溶媒:リン酸緩衝生理食塩液)
(2)0.7%SA18.8:0.7%SA溶液(粘度:58.0mPa・s、SAの重量平均分子量188,000、pH:7.4、溶媒:リン酸緩衝生理食塩液)
(3)0.8%SA15.7:0.8%SA溶液(粘度:55.4mPa・s、SAの重量平均分子量157,000、pH:7.2、溶媒:リン酸緩衝生理食塩液)
これらの試料はSAの重量平均分子量は異なるものの、粘度は55.0±3.0mPa・s程度となるよう調製したものである。また試料の粘度の測定にはRE−85L形粘度計とコーンロータ(3°×R14)(東機産業株式会社製)を用い、ロータの回転速度20rpmにて25℃の条件下で測定した。
(胃標本)
本試験の胃標本としてはブタ摘出胃を用い、摘出後、できる限り2時間以内に試験を開始した。
(方法)
上記試料を2.5mLの注射筒(テルモシリンジ(R);株式会社テルモ製)に充填し、23Gの注射針(テルモカテラン針(R);株式会社テルモ製)を用い、胃標本(ブタ摘出胃)の辺縁から粘膜下へ水平に1.2mLずつ注入した。注入部位は人の胃壁の厚さに近いと報告されている胃上部1/3を使用し(Fujishiro M et al, Comparison of various submucosal injection solutions for maintaining mucosal elevation during endoscopic mucosal resection, Endoscopy,Vol.36,No.7,2004:p579−583)、胃標本は約7×7cmの正方形とした。撮影距離と角度が同一になるように、胃標本とデジタルカメラ(Nikon D5000;株式会社ニコン製)をXYZステージ付水平架台(株式会社エス・エフ・シー製)に固定し、注入から30分間、5分毎に撮影した。撮影後のデジタル画像をパソコンに取り込み、画像解析ソフト(Image−Pro(R) PLUS Version 7.0;Media Cybernetics社製)を用いて粘膜隆起高を測定した。粘膜隆起高は非投与部位の粘膜表面を基準として、隆起頂点までの高さとした。結果を「平均値±標準偏差(mm)(各群5回の繰り返し)」として図1に示す。
図1から分かるように、上記試料の粘膜隆起能は、0.6%SA19.7≧0.7%SA18.8>0.8%SA15.7であり、粘度が同様であっても、分子量の大きいSAを配合した方が優れた粘膜隆起高が形成されることが分かった。従って、SA溶液による粘膜隆起能はSAの分子量の大きさに依存していることが示された。
(評価例2)SAの粘膜隆起能の評価
用いた試料は以下のものである。
SA1:非特許文献2に用いられたSA(Lamina G, Taejoon Pharm, Korea)
SA2:従来品SA(シグマアルドリッチジャパン合同会社製)
SA3:被験物質として用いたSA(キミカアルギン 100cp、株式会社キミカ製)
SA4:被験物質として用いたSA(キミカアルギン 200cp、株式会社キミカ製)
SA5:被験物質として用いたSA(キミカアルギン 400cp、株式会社キミカ製)
これらの試料について、上述の方法(SEC−MALLS法)によって重量平均分子量
を求めた結果は以下の通りであった。
Figure 0006099044
<粘膜隆起能の評価>
上記SA1〜5を含有する溶液を調製し、以下の方法により粘膜隆起能の評価を行った。この試験では、SA溶液を注入する対象としてブタ摘出胃を用い、摘出後2時間以内に試験を開始した。
(方法)
上記試料を2.5mLの注射筒(テルモシリンジ(R);株式会社テルモ製)に充填し、23Gの注射針(テルモカテラン針(R);株式会社テルモ製)を用い、胃標本の辺縁から粘膜下へ水平に1mLずつ注入した。注入部位は人の胃壁の厚さに近いと報告されている胃上部1/3を使用し(Fujishiro M et al, Comparison of various submucosal injection solutions for maintaining mucosal elevation during endoscopic mucosal resection, Endoscopy, Vol.36, No 7, 2004: p579−583)、胃標本は約7×7cmの正方形とした。撮影距離と角度が同一になるように、胃標本とデジタルカメラ(Nikon D5000;株式会社ニコン製)をXYZステージ付水平架台(株式会社エス・エフ・シー製)に固定し、注入から10分後に撮影した。撮影後のデジタル画像をパソコンに取り込み、画像解析ソフト(Image−Pro(R) PLUS Version 7.0; Media Cybernetics社製)を用いて粘膜隆起高を測定した。粘膜隆起高は非投与部位の粘膜表面を基準として、隆起頂点までの高さとした。結果を「平均値±標準偏差(mm)(各群5回の繰り返し)」として示す。
(試料)
試料は以下の表に記載のものを用いた。なお、試料の溶媒にはリン酸緩衝生理食塩液を用い、pHを7.2〜7.6に調整した。
Figure 0006099044
(結果)
結果を以下の表に示す。
Figure 0006099044
粘膜の隆起が大きいほど患部の切除を容易かつ確実・安全に行うことができることから、本評価においては、組成物を注入してから10分後における粘膜隆起高が5mmを超えるか否かが組成物の粘膜隆起能を判断するための一つの指標とした。以上の結果から分かるように、従来品である1.0%SA6.5の粘膜隆起高(mm)の平均値は3.44であり、4.0%SA13.0のそれは4.39であり、いずれも5mmを下回った。
これに対し、重量平均分子量の大きいSA、具体的には重量平均分子量が217,000〜310,000のSAを用いた場合には、組成物を注入してから10分後における粘膜隆起高が5mmを超えるものが認められた。特に濃度が0.4%以上の溶液を用いた場合にはいずれも粘膜隆起高が5mmを超えていた。
また同一濃度の試料間で比較した場合、粘膜隆起高は分子量に依存して高くなることが示された。同一の分子量の場合には、濃度に依存して粘膜隆起高も大きくなることが確認された。
(評価例3)内視鏡用穿刺針からの排出力の検討
試料:
評価例2で使用した試料に以下の試料を追加して評価を行った。
比較例3:2.0%SA13.0:従来品SA(シグマアルドリッチジャパン合同会社製)から調製した2.0%SA溶液
比較例4:3.0%SA13.0:従来品SA(シグマアルドリッチジャパン合同会社製)から調製した3.0%SA溶液
(方法)
上記試料10mLを以下の内視鏡用穿刺針が保持されている10mLの注射筒(テルモシリンジ(R);株式会社テルモ製)に充填して、この注射筒のピストンを1mm/秒の一定速度で押すことによって前記試料を内視鏡用穿刺針(商品名:トップ内視鏡用穿刺針スーパーグリップ、カテーテル長:1600mm、針径:25G、株式会社トップ製)の先端から排出させるために要する力を25℃の条件下で小型卓上試験機(EZ Test / EZ−LX、株式会社島津製作所製)を用いて測定した。測定はそれぞれ3回繰り返した。結果を「平均値±標準偏差(kgf)」として以下に示す。なお、表中の「Err」は排出させるために要する力が測定システムの能力の上限(40kgf)を上回り、測定不可能であったことを示す。
(結果)
評価結果を表4に示す。
Figure 0006099044
実用性の観点から、排出力は20kgf程度を上限とするのが好ましい。しかしながら表に示した結果の通り、従来品のSAから調製された2−4%SA溶液は、40kgfを超える排出力が必要であった。これは手でピストンを押して試料を排出させることが極めて困難な排出力であり、実用的ではないことが示された。評価例2では、比較例2の4%SA溶液は、注入10分後の粘膜隆起高が4.39±0.20mmと比較的高い値を示したものの、このような濃度の高い溶液は排出力の観点から実用するのは難しい。
これに対し、本願発明の組成物を用いた実施例においては排出力は概ね基準となる20kgfを下回った。このことから、本願発明の組成物が手術時の取り扱い性に優れることが分かる。ただし、実施例15のように排出力が20kgfを超える場合もあることから、排出力の観点からは、溶液濃度が1.0w/v%以下であるのが好ましく、評価例2の結果も考慮すれば、溶液濃度は0.4〜1.0w/v%の範囲が好ましいのがわかる。
上記評価例1〜3の結果から、EMR又はESDにおいて本発明の組成物が有用であることが示された。特に、アルギン酸又はその医学的に許容される塩の分子量は20万以上である場合に粘膜隆起能が十分に確保でき、好ましくは溶液濃度を0.4〜1.0w/v%にすることで粘膜隆起能と排出力の面でバランスがとれた効果を発揮することができる。
上述のように、本発明の医療用組成物は、重量平均分子量が20万以上のアルギン酸又はその医学的に許容される塩を含有することで粘膜隆起能にすぐれ、特にEMR又はESDに適した組成物である。本発明の組成物を使用することで、より安全かつ確実な手術を行うことができる。

Claims (2)

  1. 内視鏡的粘膜切除術または内視鏡的粘膜下層剥離術において粘膜下層に注入して粘膜部分を隆起させるための医療用組成物であって、
    重量平均分子量が20万以上のアルギン酸又はその医学的に許容される塩と、溶媒とを含有し、
    液状である
    組成物。
  2. 前記組成物中のアルギン酸又はその医学的に許容される塩の濃度が0.4w/v%以上1.0w/v%以下である請求項1に記載の組成物。
JP2013064360A 2013-03-26 2013-03-26 医療用組成物 Active JP6099044B2 (ja)

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