図1において、液晶表示装置10は、液晶パネル11と、光源ユニット12とを備えている。液晶パネル11は、液晶セル13と、2枚の偏光板14,15とから構成される。液晶セル13は、透明なガラス基板の間に液晶を封入したものであり、各ガラス基板の内面に形成された透明電極間に電圧を印加することによって、透過する光の偏光状態を変化させる。各偏光板14,15は、互いにクロスニコルの状態に配置してあり、これらの間に液晶セル13を配してある。これにより、偏光板15を透過した直線偏光の照明光の偏光状態を画素ごとに液晶セル13で変化させ、偏光板14を透過する光量を調節して画像を表示する。
偏光板14は、偏光膜14aと、その両面に貼り付けた一対の保護膜14b,14cとから構成してある。偏光板15は、偏光膜15aと、保護膜15bと、プリズムシート16とから構成される。保護膜15bは、偏光膜15aの液晶セル13側の面に貼り付けてある。プリズムシート16は、後述する溶液製膜方法を用いて製造された光学フィルム32(図4参照)からシート状に切り出したものである。このプリズムシート16は、偏光膜15aの光源ユニット12側の面に貼り付けられており、偏光膜15aの保護膜と輝度向上のための全反射型プリズムシート(下向きプリズムシート)として機能する。
光源ユニット12は、液晶パネル11を背後から照明するものであり、光源ランプ17,導光板18,反射フィルム19からなるエッジライト方式のものとしてある。光源ランプ17は、例えば棒状の蛍光管やライン状に並べた多数のLED(発光ダイオード)を用いており、楔形状の導光板18の端部(エッジ)に沿うように配してある。この光源ランプ17から放出される照明光は、直接、またリフレクタ17aに反射されて、導光板18の端部から内部に入射する。導光板18は、入射した照明光を、その内部で反射することにより液晶パネル11とほぼ同じサイズの射出面18aから、液晶パネル11の法線に対して傾きをもった斜め方向に射出する。反射フィルム19は、導光板18の液晶パネル11と反対側の面から射出される照明光を反射して導光板18に戻す。
図2に示すように、プリズムシート16は、一方の面に、断面が三角形の角柱形状のプリズム16aが複数形成されている。複数のプリズム16aは、各プリズム16aの延びた方向と直交する方向に並べて形成されている。プリズムシート16のプリズム16aが形成された面(以下、プリズム面という)の反対側の面は、平坦な平坦面となっている。プリズムシート16は、プリズム面を光源ユニット12側に向けた姿勢で平坦面を偏光膜15aに密着させて貼り付けられる。なお、図2では、プリズム面を上に向けた状態で描いてある。
プリズムシート16は、導光板18から斜め方向に射出される照明光を、液晶パネル11の法線方向となるように偏向させ、液晶パネル11の法線方向に射出される照明光の光量を大きくするように照明光の分布を制御する。具体的には、導光板18から斜め方向に射出された照明光は、プリズム16aの一方の斜面に入射し、プリズム16aの内部を進んで他方の斜面で全反射されることにより、法線方向に偏向される。プリズムシート16は、そのサイズを液晶パネル11の背面とほぼ同じにしてある。
図3において、プリズムシート16の厚みT16は100μm以上200μm以下の範囲内である。プリズム16aの頂角(以下、プリズム頂角と称する)θ1は、40°以上130°以下の範囲内であり、底部の開き角度θ2は70°以上90°以下の範囲内である。プリズム16aの底部から頂部までの高さ(以下、プリズム高さと称する)H16aは10μm以上25μm以下の範囲内である。プリズム16aの底部と底部との距離であるピッチ(以下、プリズムピッチと称する)P16aは50μm以上100μm以下の範囲内である。
図4に示す溶液製膜設備30は、ドープ31から前述の光学フィルム32を製造する。ドープ31は、ポリマーを溶媒に溶かしたものである。この実施形態では、透明な熱可塑性ポリマーとしてのTAC(セルローストリアセテート)を溶媒に溶解したものをドープ31としている。ただし、TACに代えて、他のセルロースアシレートでもよい。すなわち、アセチル基に代えて、他のアシル基でもよい。セルロースアシレートの中でも、セルロースの水酸基(ヒドロキシ基)へのアシル基の置換度が下記式(I)〜(III)を満たす場合に、本発明は特に有効である。式(I)〜(III)において、A及びBは、セルロースの水酸基中の水素原子に対するアシル基の置換度を表し、Aはアセチル基の置換度、Bは炭素原子数が3〜22のアシル基の置換度である。なお、セルロースアシレートの総アシル基置換度Zは、A+Bで求める値である。
(I) 2.7≦A+B≦3.0
(II) 0≦A≦3.0
(III) 0≦B≦2.9
また、TACに代えて、または加えて、セルロースの水酸基へのアシル基の置換度が下記式(IV)を満たすようなDAC(セルロースジアセテート)を用いる場合にも、本発明は特に有効である。
(IV)2.0≦A+B<2.7
レタデーションの波長分散性の観点から、式(IV)を満たしながらも、DACのアセチル基の置換度A、及び炭素数3以上22以下のアシル基の置換度の合計Bは、下記式(V)および(VI)を満たすことが、好ましい。
(V) 1.0<A<2.7
(VI) 0≦B<1.5
セルロースを構成するβ−1,4結合しているグルコース単位は、2位、3位および6位に遊離の水酸基(ヒドロキシル基)を有している。セルロースアシレートは、これらの水酸基の一部または全部を炭素数2以上のアシル基によりエステル化した重合体(ポリマー)である。アシル置換度は、2位、3位及び6位それぞれについて、セルロースの水酸基がエステル化している割合(100%のエステル化の場合を置換度1とする)を意味する。
セルロースアシレートの詳細については、特開2005−104148号公報の段落[0140]から段落[0195]に記載されており、これらの記載も本発明に適用することができる。また、溶媒および可塑剤,劣化防止剤,紫外線吸収剤(UV剤),光学異方性コントロール剤,レタデーション制御剤,染料,マット剤,剥離剤,剥離促進剤などの添加剤についても、同じく特開2005−104148号公報の段落[0196]から段落[0516]に詳細に記載されており、これらの記載も本発明に適用することができる。
ドープ31に用いるポリマーは、セルロースアシレートに限定されず、溶液製膜方法に用いることができる透明な熱可塑性のポリマーであればよい。例えば、PMMA(ポリメチルメタクリレート),PC(ポリカーボネート)などであってもよい。
溶液製膜設備30は、流延装置34、形状付与装置35,乾燥装置36、第1切除装置37、乾燥室40、第2切除装置41、巻取装置42を備えている。
流延装置34は、ドープ31から溶媒を含んだ状態の湿潤フィルム43を形成する。この流延装置34は、ベルト46、一対のバックアップローラ47、流延ダイ48等を備える。ベルト46は、環状にされた無端の流延支持体であり、1対のバックアップローラ47に掛け渡されて、バックアップローラ47間が水平になっている。一対のバックアップローラ47のうちの一方の駆動軸47aに駆動部(図示省略)が接続されており、この駆動部によって、矢線A1で示す周方向に回転する。このバックアップローラ47の回転により、ベルト46が循環走行する。
流延ダイ48は、ドープ31を走行中のベルト46の表面に連続的に吐出する。これによりベルト46の表面に流延膜50を連続的に形成する。減圧チャンバ49は、流延ダイ48の吐出口からベルト46の表面に達するまでの間のドープ31の部分の背面側(ベルト46の走行方向における上流側)を減圧して、その部分の振動、破断を防止する。
温調機51は、温度調節した伝熱媒体を各バックアップローラ47内に供給する。これにより、各バックアップローラ47,ベルト46を介して流延膜50の温度を制御する。この実施形態では、乾燥流延、すなわち流延膜を乾燥のみによりゲル化させており、流延膜50の溶媒の蒸発を促すように温調機51は温度を制御する。乾燥は送風のみでも進むが、送風に加えて加熱してもよい。加熱することにより、ゲル化がより迅速にすすむ。
なお、乾燥流延に代えて、流延膜50を乾燥及び冷却することによりゲル化させる、いわゆる冷却流延であってもよい。この場合には、温調機51は、冷却した伝熱媒体をバックアップローラ47に供給することにより、流延膜50の流動性が、乾燥だけの場合に比べて低下するようにベルト46を冷却する。また、流延支持体としては、ベルト46に限定されない。例えば、ベルト46に代えて、ドラムを用い、ドープ31を回転中のドラムの周面に吐出して流延してもよい。流延膜を乾燥して固化させるいわゆる乾燥流延の場合には、ベルト46を用いることが多く、冷却流延の場合にはドラムを用いることが多いが、乾燥流延にドラムを、また冷却流延にベルトを用いてもかまわない。ドラムを冷却流延での流延支持体として用いて流延膜の温度を制御する場合には、そのドラムに冷却した伝熱媒体を流すことでドラムの周面の温度を下げればよい。
ベルト46による流延膜50の搬送路に沿って、送風機52と、裏面加熱器53とが配されており、これらは流延膜50の乾燥速度を調整する。流延装置34は送風機52と裏面加熱器53との両方を備えるが、いずれか一方を備える態様でもよい。送風機52は、ドープ31が流延されて流延膜50が形成されるベルト46の流延面46a(図5参照)に対向して配され、各ノズル52aから所定の温度に調節された乾燥気体(例えば乾燥した空気)を流延膜50の近傍に流出する。本実施形態では、ベルト46の走行方向に沿って2つの送風機52を設けているが、送風機52の数は特に限定されず、1または3以上であってもよい。裏面加熱器53は、ベルト46の流延面46aとは反対側の面に対向して配され、ベルト46を介して流延膜50を加熱する。本実施形態では、ひとつの裏面加熱器53を設けているが、裏面加熱器53の数は特に限定されず、1または3以上であってもよい。
また、流延装置34は、さらに剥取ローラ56(図5参照)とチャンバ57とを備えている。ベルト46や、流延ダイ48、減圧チャンバ49等は、チャンバ57内に収容されている。チャンバ57内には、ドープ31、流延膜50、湿潤フィルム43のそれぞれから蒸発して気体となった溶媒を凝縮する凝縮器(コンデンサ)が配されている。この凝縮器で液化された溶媒は回収装置に送られて回収される。なお、凝縮器と回収装置との図示は省略する。
流延膜50は、ベルト46による搬送中に乾燥がすすめられて、溶媒を含みながらも流動性が失われたゲル状態でベルト46から剥ぎ取られて下流へ搬送される。ベルト46から流延膜50を剥ぎ取る剥取位置の近傍に形状付与装置35が配されている。また、この形状付与装置35とバックアップローラ47との間に送風機58が配されている。
本実施形態の形状付与装置35は、ベルト46から流延膜50を剥ぎ取る機能と、この機能により溶剤を含んだ状態で剥ぎ取られた流延膜50、すなわち湿潤フィルム43に、プリズム16aを形成する機能を有する。なお、本実施形態では、形状付与装置35を、ベルト46,流延ダイ48.減圧チャンバ49等を囲むチャンバ57の内部に設けているが、チャンバ57の外、すなわち流延装置34と乾燥装置36との間に設けてもよい。形状付与装置35及び送風機58の詳細については後述する。
形状付与装置35からの湿潤フィルム43は、乾燥装置36へ送られる。乾燥装置36は、幅を規制した状態で湿潤フィルム43を搬送しながら、湿潤フィルム43の乾燥をすすめる。乾燥装置36は、複数のクリップ60と、エア供給部61と、エア流出部62とを備える。各クリップ60は、湿潤フィルム43の側部をそれぞれ把持する。複数のクリップ60は、所定の間隔で環状のチェーン(図示無し)に取り付けられており、チェーンは、湿潤フィルム43の搬送路の両側に配されているレールに沿って移動自在に設けられており、その移動方向はレールによって規定される。これにより各クリップ60はレールに沿って移動する。この例では一方のレールと他方のレールとはそれぞれ直線状に配されており、互いの間隔は一定としているがこれに限定されない。例えば搬送路の下流に向って一方のレールと他方のレールの間隔を広げることで湿潤フィルム43を搬送路と直行する方向に延伸することができる。エア供給部61は、各種温度に調整した乾燥気体をエア流出部62に供給し、このエア流出部62から乾燥装置36の内の湿潤フィルム43に乾燥気体を吹き付ける。この乾燥装置36により、幅を一定に保持したまま湿潤フィルム43の乾燥をさらにすすめる。
この例では、クリップ60が湿潤フィルム43を保持する保持部材となっている。しかし、保持部材はクリップ60に限定されず、例えば、湿潤フィルム43の側部に複数のピンを貫通して保持するピンプレートであってもよい。湿潤フィルム43の残留溶媒量が非常に多いために湿潤フィルム43がクリップ60による保持で裂ける場合には、ピンプレートを用いるとよい。
第1切除装置37は、クリップ60による把持跡がある側端部を湿潤フィルム43から切除するためのものである。第1切除装置37は、切断刃としての上刃と下刃とを備え、これらの切断刃が湿潤フィルム43の各側部の通過位置に配されている。
乾燥室40には、複数のローラ63が内部に配されており、加熱された乾燥気体が供給されている。湿潤フィルム43は、乾燥室40を通過する間にさらに乾燥がすすめられて光学フィルム32とされる。第2切除装置41は、光学フィルム32の両側部を連続的に切断して所定の幅にするためのものである。第2切除装置は、第1切除装置37と同じ構成とされている。巻取装置42は、所定幅にされた光学フィルム32をロール状に巻き取るためのものであり、光学フィルム32が巻かれる巻芯64がセットされる。
なお、流延装置34と乾燥装置36との間に、第1切除装置37と同じ構成の切除装置(図示無し)を配してもよい。この切除装置は、変形した両側部を湿潤フィルム43から切除するためのものであり、この切除により、乾燥装置36のクリップ60による保持がより確実になる。
図5に示すように、形状付与装置35は、上述の剥取ローラ56と、形状付与ローラ68とを備える。剥取ローラ56は、その回転軸をバックアップローラ33の回転軸と平行に配してある。剥取ローラ56は、湿潤フィルム43の搬送路に関してベルト46とは反対側に配されており、周面に湿潤フィルム43が巻き掛けられる。剥取ローラ56は、湿潤フィルム43の搬送にともなって従動回転する。湿潤フィルム43を剥取ローラ56に巻き掛けた状態で、溶液製膜設備30の下流に向けて湿潤フィルム43が引っ張られることにより、流延膜50が所定の剥取位置PPでベルト46から剥がれる。なお、剥取ローラ56をモータにより湿潤フィルムの搬送に同期して回転させてもよい。
送風機58は、剥取位置PPから剥取ローラ56へ向かう湿潤フィルム43の搬送路の上方に配され、湿潤フィルム43のベルト46から剥がれた剥ぎ取り面43aに対向している。送風機58は、湿潤フィルム43の一方のフィルム面を乾かすことにより、硬さが10N/m2以上の被膜を形成するための被膜形成手段である。送風機58は、送風口58aから乾燥した乾燥気体を湿潤フィルム43の剥ぎ取り面43aに向けて吹き出す。この送風機58からの乾燥気体の供給により、図6に示すように、湿潤フィルム43の内部43bよりも乾燥して硬い被膜43dを剥ぎ取り面43aに形成する。被膜43dは硬さが10N/m2以上に形成されるように、送風機58からの乾燥気体の温度及び風速が調整される。送風機58からの乾燥気体の風速は、5m/秒以上20m/秒以下の範囲内であることが好ましい。これにより、上記の硬さの被膜43dがより確実に形成される。なお、乾燥気体としては、例えば乾燥空気等を用いることができる。以下、他の乾燥気体についても同様である。
被膜43dの存在は、例えば次の方法で確認することができる。まず、湿潤フィルム43からサンプリングする。サンプリングされた湿潤フィルムサンプルを凍結して厚み方向に沿って切り、断面を光学顕微鏡で観察する。被膜43dは、内部43bよりもポリマー分子鎖が密に絡みあっているから、被膜43dと内部43bとの境界が確認され、これにより被膜43dの存在がわかる。
被膜43dの硬さは、例えば、押し込み硬さの一種であるヌープ硬度測定にて求めることができ、本実施形態でもこれにより求めている。具体的には、以下の通りである。湿潤フィルム43からサンプリングした湿潤フィルムサンプルに、対角線の長さが互いに異なる菱形の四角錐のダイヤモンドを被膜43d側から押し込み、被膜43dの表面に生じた窪みの表面積で押し込みでの加重を除した値(単位はN/m2である)を、被膜43dの硬さとする。上記四角錐は、頂角が172.5°と130°であり、対角線の長さの比が100:711である。
送風機58からの乾燥気体の温度は、ベルト46上でゲル化されて剥ぎ取られた湿潤フィルム43がゲル状態を維持する温度範囲内にする。ゲル状態を維持する温度は、例えば、乾燥気体を吹き付けるタイミングの湿潤フィルム43の残留溶媒量を求めておき、この残留溶媒量の湿潤フィルム43の温度と貯蔵弾性率との関係から、求めることができる。具体的には、荷重を一定にした条件で、湿潤フィルム43のサンプルである湿潤フィルムサンプルの温度を上昇させて温度に対する貯蔵弾性率を求め、貯蔵弾性率が急激に低下し始める温度がゲル状態を維持する温度の上限である。本実施形態では、温度に対する貯蔵弾性率を、動的粘弾性測定装置(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社(TA Instruments Japan Inc.)社製、RSA−G2)によって測定している。なお、本明細書では、残留溶媒量は、残留溶媒量を求めるべき測定対象の湿潤フィルム43の質量をX、この湿潤フィルム43を完全に乾燥した後の質量をYとするときに、{(X−Y)/Y}×100%で求めるいわゆる乾量基準の値(単位は質量%)である。「完全に乾燥」とは溶媒の残留量が厳格に「0」である必要はない。本実施形態では、測定対象の湿潤フィルム43に対して、120℃以上、相対湿度10%以下の恒温槽内で3時間以上の乾燥処理を行った後の質量をYとしている。
形状付与ローラ68は、剥取ローラ56に対向して設けてあり、剥取ローラ56と協働してプリズム16aを形成する。すなわち、剥取ローラ56は、流延膜50を剥ぎ取って湿潤フィルム43を形成するための剥取手段として機能するとともに、湿潤フィルム43に対してプリズム16aを形成するための形状付与手段としても機能する。
形状付与ローラ68の周面には、湿潤フィルム43にプリズム16aを形成するために、断面三角形状の凹部68a、凸部68bがそれぞれ複数形成されている。凹部68a、凸部68bは、形状付与ローラ68の軸方向、すなわち湿潤フィルム43の幅方向に延びており、形状付与ローラ68の周方向に沿って交互に形成されている。この形状付与ローラ68は、剥取ローラ56との間に湿潤フィルム43を狭持した状態で、モータ69により回転する。形状付与ローラ68の回転方向は、湿潤フィルム43を搬送する方向(図中反時計方向)である。この形状付与ローラ68は、搬送中の湿潤フィルム43を、剥取ローラ56上で、被膜43d側から押圧して、剥ぎ取り面43aに凹部68aと凸部68bとの形状を転写して複数のプリズム16aを連続的に形成する。
形状付与ローラ68の周速をV(単位;m/秒)とし、この形状付与ローラ68に向かう湿潤フィルム43の搬送速度をW(単位;m/秒)としたときに、下記の式(1)を満たすことが好ましい。式(1)を満たすことにより、形状及び大きさが均一な複数のプリズム16aを確実に形成することができる。なお、周速Vは、形状付与ローラの凹部68aの最も深い位置におけるものである。
0.9W≦V≦1.1W・・・(1)
残留溶媒量がポリマーとしてのセルローストリアセテートを含む固形成分に対して50質量%以上の湿潤フィルム43に対して、形状付与ローラ68を押圧して凹部68aと凸部68bとの形状を転写して複数のプリズム16aを形成する。すなわち、バックアップローラ47の温度、送風機52,58からの乾燥気体の温度や風速、裏面加熱器53の温度は、流延膜50がベルト46から剥ぎ取り可能な程度にゲル化するように、かつ、形状付与ローラ68に接する間の湿潤フィルム43の残留溶媒量が50質量%以上になるように、それぞれ制御される。この制御の際には、流延膜50の搬送速度や搬送長が考慮される。
なお、上記の固形成分としては、ポリマー成分(セルローストリアセテート)の他に、例えばマット剤、光学制御剤、可塑剤等を含むことができるがこれらに限定されるものではない。また、後述の第2実施形態のようにドープに微粒子を含有させる場合では、微粒子も固形成分となる。
上記のように、形状付与ローラ68に接する間の湿潤フィルム43の残留溶媒量を制御することによってフィルム全体としては柔らかい状態にし、かつ被膜43dを形成することにより、凹部68aと凸部68bとの形状を容易にかつ確実に転写してプリズム16aを形成する。なお、形状及び大きさが均一な複数のプリズム16aを確実に形成する観点では、形状付与ローラ68に接する間の湿潤フィルム43の残留溶媒量が400質量%以下になるようにすることが好ましい。
形状付与ローラ68の凹部68a、凸部68bの形状は、形成すべきプリズムに応じて決められている。周方向で隣り合う凸部68bと凸部68bとの角頂点間の距離であるピッチは、プリズムピッチP16aと同じであり、100μm以下としている。凸部68bの頂角(以下、ローラ頂角と称する)は、プリズム16aの底部の開き角度θ2と同じであり、70°以上110°以下の範囲内である。凹部68aの開き角度は、プリズム頂角θ1と同じであり、40°以上130°以下の範囲内である。
また、形状付与ローラ68には、圧力調整器70が設けられている。この圧力調整器70は、凹部68a、凸部68bの形状を転写する際の湿潤フィルム43に対する形状付与ローラ68の押圧力を調整するものである。この圧力調整器70は押圧力を調整することにより、湿潤フィルム43に対してより確実にプリズム16aを形成する。
圧力調整器70による形状付与ローラ68の押圧力は、湿潤フィルム43に対して押圧力を均一にかける観点からは、湿潤フィルム43の幅方向1mmあたり0.1N以上とすることが好ましい。また、形状付与ローラ68による押圧によって湿潤フィルム43に対してその幅方向に局部的に加わるため、押圧力が高いと、形状付与ローラ68が湿潤フィルム43に接触を開始する部分の上流側に、溶媒を含んだ状態のポリマーが盛り上がった、いわゆる樹脂溜まりが発生しやすくなる。樹脂溜まりが発生すると、形状付与ローラ68の押圧が解除されたときに、湿潤フィルム43に転写された形状が乱れるため、プリズムシート16の形状の精度が悪くなる。樹脂溜まりの発生は、押圧力が湿潤フィルム43の幅方向1mmあたり30N以下にすることで、30Nを超える場合に比べて確実に抑制することができる。
形状付与ローラ68には、本実施形態のように周面温度を調節する温調機73が設けられていることが好ましい。この温調機73は、被膜43dが形成されてゲル化している湿潤フィルム43を、ゲル状態に維持する温度範囲内に、形状付与ローラ68の周面温度を調節する。ゲル状態を維持する温度は、前述の通りである。また、剥取ローラ56にも、本実施形態のように周面温度を調節する温調機74が設けられていることが好ましい。この温調機74も、温調機73と同様に、湿潤フィルム43を、ゲル状態に維持する温度範囲内に、剥取ローラ56の周面温度を調節する。このように、形状付与ローラ68と剥取ローラ56との各周面温度を、湿潤フィルム43のゲル状態を維持する温度範囲内に調節することで、プリズム16aがより容易かつ確実に形成される。
ポリマーがセルローストリアセテートであり、溶媒にジクロロメタンが含まれているドープ31を流延して、残留溶媒量が50%である湿潤フィルムサンプルを乾燥流延で得た場合には、ゲル状態を維持する温度は、30℃以下である。乾燥流延でのゲル状態を維持する温度は、溶媒の種類と残留溶媒量に応じて変わる。ポリマーがセルローストリアセテートであり、溶媒がジクロロメタンを含み、残留溶媒量が50質量%以上である湿潤フィルムを乾燥流延で得た場合には、ゲル状態を維持する温度は10℃以上30℃以下の範囲内である。なお、他のセルロースアシレートについても同様である。
また、ポリマーがセルローストリアセテートであり、溶媒にジクロロメタンが含まれているドープ31を流延して、残留溶媒量が400%である潤フィルムサンプルを冷却流延で得た場合には、ゲル状態を維持する温度は、9℃以下である。冷却流延でのゲル状態を維持する温度は、溶媒の種類と残留溶媒量に応じて変わる。ポリマーがセルローストリアセテートであり、溶媒がジクロロメタンを含み、残留溶媒量が50%以上である湿潤フィルムを冷却流延で得た場合には、ゲル状態を維持する温度は−20℃以上9℃以下の範囲内である。なお、他のセルロースアシレートについても同様である。
上記構成の作用を説明する。流延ダイ48にドープ31が供給され、走行するベルト46に向けて吐出される。これにより、バックアップローラ47で温度が制御されたベルト46上に流延膜50が形成される。流延ダイ48からドープ31の吐出が連続的に行われ、ベルト46が走行を続けるから連続的に流延膜50が形成される。
形成された流延膜50は、ベルト46の走行にともなって搬送される。この搬送中に、バックアップローラ47による加熱と送風機52による乾燥気体の供給と裏面加熱器53による加熱とにより、流延膜50中の溶媒が蒸発して流延膜50の乾燥がすすみ、ゲル化する。なお、冷却流延の場合には、この搬送中に、バックアップローラ47による冷却と送風機52による乾燥気体の供給と裏面加熱器53による冷却とにより、流延膜50は、溶媒が蒸発して乾燥がすすむとともに降温してゲル化する。
乾燥が進められてゲル化した流延膜50は、剥取ローラ56によりゲル状態のまま剥取位置PPでベルト46から剥ぎ取られる。剥ぎ取られた流延膜50、すなわち湿潤フィルム43は、形状付与装置35に向けて搬送される。そして、この搬送中に湿潤フィルム43は、送風機58からの剥ぎ取り面43aへの乾燥気体の供給により、剥ぎ取り面43a側に被膜43dが形成される。この乾燥気体の風速は、5m/秒以上20m/秒以下の範囲内に調整されているから、上記の硬さの被膜43dが確実に形成される。もちろん、送風機58からの乾燥気体の温度は、湿潤フィルム43のゲル状態を維持する温度範囲内にされているから、湿潤フィルム43の内部43b、すなわち被膜43dを除いた反剥ぎ取り面43c側のフィルム部分は、ゲル状態が維持されている。また、剥取ローラ56の周面温度の制御により、湿潤フィルム43は剥取ローラ56に接してもゲル状態は維持される。
湿潤フィルム43が形状付与ローラ68の位置にまで搬送されると、回転中の形状付与ローラ68と剥取ローラ56との間に挟持され、形状付与ローラ68により被膜43d側から押圧される。これにより、挟持された湿潤フィルム43の部分に凹部68aまたは凸部68bの形状は、被膜43dが形成されている剥ぎ取り面43aに転写される。湿潤フィルム43の搬送とともに形状付与ローラ68が回転するから、湿潤フィルム43の剥ぎ取り面43aに複数のプリズム16aが順次形成される。
前述のように、形状付与ローラ68が湿潤フィルム43を押圧する際の湿潤フィルム43の残留溶媒量を50質量%以上にしていることから、被膜43dがあっても湿潤フィルム43は柔らかく、小さい押圧力で容易に湿潤フィルム43を凹部68a,凸部68bの形状にしたがって変形させられる。そして、上記のように所定の硬さを有する被膜43dを変形させているため、凹部68a,凸部68bの形状が恒常的に維持されるので、確実に凹部68a,凸部68bの形状が転写された状態となる。
上記のようにプリズム16aを形成している間では、形状付与ローラ68の周面温度は、湿潤フィルム43のゲル状態を維持する温度範囲内にされているから、湿潤フィルム43の内部43bはゲル状態が維持される。このため、湿潤フィルム43にプリズム16aがより確実かつ容易に形成される。
上記のように形状付与ローラ68でプリズム16aが形成された湿潤フィルム43は、形状付与装置35から乾燥装置36へ送られる。湿潤フィルム43は、乾燥装置36へ案内されると、その両側部をクリップ60で把持され、このクリップ60の移動により幅を一定に保持された状態で搬送される。そして、この搬送中にエア流出部62からの乾燥気体の吹き付けにより、湿潤フィルム43は幅を一定に保持した状態で乾燥がさらにすすめられる。
乾燥装置36で乾燥された湿潤フィルム43は、第1切除装置37により両側部を切除され、乾燥室40へと案内される。湿潤フィルム43は、この乾燥室40を通過する間にさらに乾燥を進められ、これにより光学フィルム32が得られる。光学フィルム32は巻取装置42でロール状に巻かれる。ロール状に巻かれた光学フィルム32は、後工程で所定の大きさに切り取られ、プリズムシート16として使用される。
なお、上記実施形態では、剥取ローラ56上の湿潤フィルム43に対して形状付与ローラ68でプリズム16aの形状を付与しているが、形状を付与する位置は、湿潤フィルム43の残留溶媒量が50%以上、かつプリズムを形成する表面に上記のような被膜43dが形成されている状態であるならば、他の位置であってもよい。例えば、剥取ローラ56と乾燥装置36との間の搬送路に形状付与ローラ68とニップローラ(図示無し)とを配し、これらで湿潤フィルム43に形状を付与してもよい。また、ベルト46やドラムなどの流延支持体上の流延膜50に形状付与ローラ68を押圧して形状を付与してもよい。いずれの場合にも、形状付与ローラ68の上流に、送風機58を配し、この送風機58により被膜を形成してから形状付与ローラ68による押圧を行う。
<第2実施形態>
第2実施形態は、プリズムシート中に球状の微粒子を含有させて光の拡散機能を付与したものである。図7に示すように、プリズムシート80は、バインダ81と、バインダ81内の多数の微粒子82とからなる。バインダ81は、第1実施形態においてプリズムシート16を構成(形成)するポリマーと同じである。プリズム80aは、微粒子82を含む他は、プリズム16aと同様であるのでその詳細な説明を省略する。微粒子82は、入射した光を入射角度に応じた様々な方向に屈折させることにより、プリズム80aによって法線方向に偏向した照明光を拡散させる。なお、上向きプリズムでは、平坦面からプリズムシート80に入射する照明光を微粒子82で拡散させ、拡散した照明光をプリズム80aによって法線方向に偏向させる。セルローストリアセテートをバインダ81として、ガラス製の微粒子82(平均粒子径5μm)をポリマーであるバインダ81の20質量%含有させている。
微粒子82は、照明光を均一に拡散させるためプリズムシート80の内部で均一に分布していることが好ましい。微粒子82としては、例えばガラス製、アクリル製、シリカ製のものが用いられるが、透明であり、また屈折により照明光を拡散させるためバインダ81とは異なる屈折率を有するものであれば、他の材料で作製されたものでもよい。
プリズムシート80の内部の微粒子82の平均粒子径(直径)は、1μm以上30μm以下の範囲内であることが好ましい。微粒子82は、プリズムシート80の内部で分散して存在する一次粒子また複数の粒子が凝集した二次粒子のいずれでも、また両方が混在してもよい。平均粒子径は、一次粒子であれば一次粒子の粒子径による値であり、二次粒子であれば二次粒子の粒子径による値であり、一次粒子、二次粒子が混在している場合には、それぞれの粒子径による値である。平均粒子径は、顕微鏡などを用いて測定された微粒子82の径から求めることができる。また、微粒子82の形状は、球状である必要はない。微粒子82が球状でない場合には、微粒子82の最大の幅を粒子径とする。さらに、微粒子82の含有量は、ポリマーであるバインダ81の質量に対して2質量%以上30質量%以下の範囲内とするのがよい。
図示されるように、微粒子82の一部分がプリズム面から突出した状態となっていても問題はない。一方、プリズムシート80を偏光膜に貼り付ける場合では、平坦面から微粒子82の一部分が突出しないことが好ましい。
このように、プリズムシートに拡散機能を付与することにより、照明光を拡散する拡散シートを省略することできる。
プリズムシートは、JIS K 7105に基づく像鮮明度測定装置を用いて2mmの幅を有する光学櫛を通して測定される像鮮明度の値が5〜60%が好ましく、更に好ましくは10%〜60%であり、最も好ましくは10%〜55%である。この範囲であれば、正面コントラストの低下が少なく、かつ、液晶パネルの模様や色ムラ、輝度ムラ、モアレなどを見難くできる。
プリズムシート80は、ドープ31に代えて、バインダ81となるポリマーが溶媒に溶けた溶液に微粒子82を含むドープを用いて、上記の溶液製膜設備30により製造される光学フィルムから、シート状に切り出すことにより製造される。溶液は、ドープ31と同じ組成とすることができる。湿潤フィルムは形状付与装置35によりプリズム80aが形成された後に、乾燥装置36や乾燥室40により乾燥される。この乾燥の間に、溶媒の蒸発に伴って微粒子82がプリズム80aから突出するようになる。このようにして、プリズムシート80が切り出される光学フィルムが製造される。
この例では、二次粒子の形成がないため、ドープに含まれる微粒子82の平均粒子径を1μm以上30μm以下の範囲内とし、プリズムシート80において微粒子82の平均粒子径を1μm以上30μm以下の範囲内としている。製造された光学フィルム(プリズムシート80)における微粒子82の平均粒子径が1μm以上30μm以下の範囲内とすることが好ましいため、ドープの溶液に微粒子82となる粒子材料を入れることにより、微粒子材料が凝集して二次粒子を形成する場合や、ドープから光学フィルムを製造する過程で二次粒子が形成されたり凝集が進んだりする場合では、製造された光学フィルムにおける微粒子82の平均粒子径が1μm以上30μm以下の範囲内となるように、粒子材料や粒子材料の大きさを選定する。なお、ドープに含まれる微粒子82の平均粒子径は、レーザー回折・散乱法により測定される粒子径分布から求めることが可能である。
なお、図8に示すように、プリズムシート90を、プリズム面側の第1層91と平坦面側の第2層92との2層構造とし、プリズム90aが形成された第1層91にだけ球状の微粒子82を含有させてもよい。図8のプリズムシート90において、図7のプリズムシート80と同じ材料については、同じ符号を付して説明を略す。第1層91は、バインダ81と、微粒子82とからなり、プリズムシート80と同様に、複数のプリズム90aによるプリズム機能に加えて、微粒子82による拡散機能をもつ。第2層92は、第1層91におけるバインダ81と同じポリマーから構成されているが、他の透明なポリマーから構成されていてもよい。
プリズムシート90は、第1層91と第2層92とを備える長尺の光学フィルムからシート状に切り出すことにより製造される。このような光学フィルムは、第1層91を形成するためのドープと、第2層を形成するためのドープとを、公知の共流延または逐次流延で流延する溶液製膜方法で製造することができる。例えば、図4の溶液製膜設備30において流延ダイ48を、2種のドープを共流延する流延ダイに代えるとよい。具体的には以下の通りである。
図9において、流延装置100は、流延装置34における流延ダイ48に代えて、2種のドープを吐出する流延ダイ101を備える。流延装置100のその他の構成は、流延装置34と同じである。第1ドープ102は、微粒子82と、溶液すなわちバインダ81となるポリマー及び溶媒を含む。なお、第2ドープは、第1実施形態におけるドープ31と同じ組成としているので、第1ドープと同じ符号31を付している。すなわち、第2ドープ31は微粒子82を非含有としている。
上記各実施形態では、製造した光学フィルムを全反射型のプリズムシートとして用いる例について説明したが、屈折型プリズムシートとしても用いることができる。
[実施例1]〜[実施例9]
溶液製膜設備30により表1に示す各条件下でそれぞれ光学フィルム32を製造し、実施例1〜9とした。ドープ31は、下記に組成を示す固形成分を溶媒に添加して攪拌しながら溶解し、TACの濃度が23質量%となるようにした。
[固形成分]
セルローストリアセテート(置換度2.8) 89.3質量%
可塑剤A(トリフェニルフォスフェート) 7.1質量%
可塑剤B(ビフェニルジフェニルフォスフェート) 3.6質量%
溶媒は、下記に組成を示す混合液を用いた。
[溶媒]
ジクロロメタン 80質量%
メタノール 13.5質量%
n−ブタノール 6.5質量%
ドープ31は、濾紙(東洋濾紙(株)製,#63LB)にて濾過後、焼結金属フィルタ(日本精線(株)製06N,公称孔径10μm)で濾過し、さらにメッシュフイルタで濾過した後にストックタンクに一旦貯留した。流延時には、ストックタンクからドープ31を流延ダイ48に供給した。
なお、使用したセルローストリアセテートは、残存酢酸量が0.1質量%以下であり、Ca含有率が58ppm、Mg含有率が42ppm、Fe含有率が0.5ppmであり、遊離酢酸40ppm、さらに硫酸イオンを15ppm含むものであった。また6位水酸基の水素に対するアセチル基の置換度は0.91であった。また、全アセチル基中の32.5%が6位の水酸基の水素が置換されたアセチル基であった。また、このTACをアセトンで抽出したアセトン抽出分は8質量%であり、TACの重量平均分子量/数平均分子量比は2.5であった。また、このTACのイエローインデックスは1.7であり、ヘイズは0.08、透明度は93.5%であった。このTACは、綿から採取したセルロースを原料として合成されたものであった。なお、重量平均分子量、数平均分子量、重量平均分子量/数平均分子量は、ゲルパーミエーションションクロマトグラフィ(GPC)による。
[形状付与ローラ]
形状付与ローラ68は、ローラの直径が150mmであり、ローラ頂角が90°であり、ピッチ(角頂点間の距離)が50μmのものを用いた。
表1において、「被膜の硬さ」、「残留溶媒量」、「幅1mmあたりの押圧力」は、それぞれ、形状付与ローラ68で湿潤フィルム43を被膜43d側から押圧する際の被膜43dの硬さ、湿潤フィルム43の残留溶媒量、湿潤フィルム43の幅方向1mmあたりの押圧力である。また、「風速」は送風機58からの乾燥気体の風速である。
上記各実施例で得られた各光学フィルム32につき、プリズムシートの機能として輝度向上の程度を評価した。輝度向上の程度は、以下の方法及び基準で評価した。プリズム16aが形成されていない、両フィルム面が平坦なフラットフィルムを製造した。このフラットフィルムは、形状付与ローラ68が配されていないことのみが溶液製膜設備30と異なる溶液製膜設備(図示無し)により製造した。フラットフィルムを製造するためのドープに用いたポリマーは実施例1〜9と同じセルローストリアセテートである。得られたフラットフィルムにつき下記の方法で輝度を測定し、このフラットフィルムの輝度をB1とした。実施例で製造した各光学フィルム32の輝度をフラットフィルムの輝度と同様の方法で測定し、光学フィルム32の輝度をB2とした。そして、輝度向上の程度は、{(B2−B1)/B1}×100の式により輝度向上率(単位は%)として求めた。各光学フィルム32の輝度向上率は、表1の「輝度向上率」欄に示す。この輝度向上率により、輝度向上の程度は、以下の基準で評価した。評価結果は表1の「評価」欄に示す。なお、フラットフィルムの厚み、及び各光学フィルム32の厚みT16は、いずれも150μmとした。
A:30%以上
B:10%以上30%未満
C:1%以上10%未満
D:1%未満
輝度の測定方法は、以下である。フィルム(フラットフィルム、光学フィルム32)を、ライトテーブル(電通産業株式会社製、面照明装置、光源:市販蛍光灯 Panasonic社製86W/HF管 FHF86EX−D 10本)上に置き、フィルムの上面から350mm離れた場所で輝度計(株式会社トプコンテクノハウス社製、BM−9A)により正面輝度を測定した。このように測定した正面輝度を上記輝度とした。
[比較例1]、[比較例2]
溶液製膜設備30により表1に示す各条件下でそれぞれ光学フィルムを製造し、比較例1、2とした。その他の条件は、上記実施例と同じである。得られた光学フィルムについて、輝度向上の程度を実施例と同じ方法及び基準で評価した、評価結果は表1に示す。
[実施例A]〜[実施例C]
溶液製膜設備30により表2に示す各条件下でそれぞれ微粒子82を含む光学フィルムを製造し、実施例A〜Cとした。製造した光学フィルムは、プリズムシート80の構造を有するものである。また、実施例A〜Cでは、ドープとしては、実施例1などと同じ組成のものに微粒子82を含有させたもの用いて流延した。ドープ中、及び製造したプリズムシート80における微粒子82は、いずれも一次粒子であった。すなわち、ドープに混入した粒子材料が微粒子82となっており、ドープ中、及び製造したプリズムシート80における微粒子82の平均粒子径は、ドープに混入した粒子材料の平均粒子径と同じであった。微粒子82(粒子材料)は、表2の「微粒子」の項に記載してある。微粒子82の詳細は次の通りである。
MX−150:架橋ポリメチルメタクリレート真球状粒子、平均粒子径1.5μm、綜研化学(株)製
MX−1500H:架橋ポリメチルメタクリレート真球状粒子、平均粒子径15μm、綜研化学(株)製
MX−3000:架橋ポリメチルメタクリレート真球状粒子、平均粒子径30μm、綜研化学(株)製
なお、ドープ中の平均粒子径は、レーザー回折・散乱法粒度分布測定装置(BECKMANCOULTER LS13 320)にて測定した微粒子82の粒子径の分布に基づくものである。この微粒子82の粒子径の分布の測定の際には、固形成分の濃度が0.1質量%となるまでドープにジクロロメタンを投入して希釈したものを用いた。また、製造されたプリズムシート80の内部、及び表面に存在する微粒子82の平均粒子径は、デジタルマイクロスコープ(KEYENCE社製 VHX-5000)にて測定した粒子径に基づくものである。平均粒子径は、50mm×50mmのプリズムシート80をサンプルとし、このサンプル中から任意に選んだ3箇所を500倍の観察倍率でそれぞれ観察し、各箇所からそれぞれ任意に抽出した10個の微粒子82、すなわち計30個の微粒子82の粒子径を測定して、平均値を算出することにより求めた。上述の通り、微粒子82が球状でない場合には、微粒子82の最大の幅(長さ)を粒子径として測定した。
微粒子82の含有量が、ポリマーであるバインダ81の質量に対して25質量%となるように、ドープ31に微粒子82を添加した。
製造した光学フィルムの像鮮明度は、JIS K7105(1999)に準拠し、スガ試験機(株)社製ICM-1Tを使用して測定した。像鮮明度の測定際の光学櫛は2.0mmの幅を有するものを用いた。