以下、図面を参照して本発明の実施形態に係るコイル製造システムおよびコイル製造方法について説明する。ここで、互いに同一または類似の部分には、共通の符号を付して、重複説明は省略する。
図1は、本発明の実施形態に係る回転電機のコイル製造システム・方法におけるコイルを示す斜視図である。コイル10は、導体100を厚み方向に積層した積層導体101を有し、積層導体101のそれぞれの上下に隣接する導体100の相互間には絶縁物が介在している。
また、コイル10は、直線部11と角部12およびエンド部16を有する。回転電機の性能を向上させるには、直線部11の長さをより長くとることが望ましく、性能という点では、角部12の曲げ半径はできるだけ小さい方が好ましい。
図2は、ロータシャフトにコイルを取り付けた回転子の概念的な斜視図である。ロータシャフト14の半径方向の表面には図示しないスロット部が形成されており、このスロットにコイル10が挿入され絶縁物で強固に固定され組み立てられ、回転子が製作される。コイル10は2つが一組となってコイルの機能を発揮する。
このために、コイル10の端面が付き合わされるロウ付け接合部69a、69bにおいてそれぞれの導体100が互いに接合される。一方のロウ付け接合部69aでは同一層同士の導体100が接合され、他方のロウ付け接合部69bでは、一層ずれた導体100同士が接合される。このようにして、全体でコイル機能が確保される。
図3は、本発明の実施形態に係る回転電機のコイル製造システム・方法におけるコイル製造過程での導体の形状の変化を示す斜視図である。図3(a)は、多数の導体100が積層状態になった積層導体101の最初の状態を示している。
1枚の導体100は、厚みよりも横幅が長い横長の長方形の横断面を有し、長手方向に延びている。また、それぞれの導体100の幅広面の片面の中央には導体100の長手方向に延びる溝が形成されており、導体100を2枚溝の方向を向い合せることにより長手方向の通風穴23が形成される。
図3(b)は、積層導体101の両側を、同じ方向に90°の角度で曲げるEW曲げにより角部12およびエンド部16を両側に形成した結果を示す。図3(b)に示すように曲げ方向は導体100の厚み方向ではなく横幅方向である。横幅方向に曲げるため、図の角部12に示すように、導体100の内側が厚く、外側が薄くなることからこれを矯正する必要が生ずる。
図3(c)は、ロータシャフトの表面のスリットの曲面に沿う円弧状に、エンド部16を曲げるFW曲げを行った結果を示す。両方のエンド部16が同じ方向に円弧状に曲げられている。この段階で、エンド部16の各導体100が横幅方向に不揃いとなる状況が出てくるため、これを矯正する必要が生じる。
図3(d)は、エンド部16の端の部分で、図2に示すように導体100間を接合する必要があるため、一括切断することを示している。ただし、切断面は接合するためには十分表面がそろっていないために、切断面の仕上げを行う必要が生ずる。
4極機の場合のように積層導体101を構成する導体100の積層数が多いために、以上のように、EW曲げ、FW曲げ、切断の各加工工程で、単に通常の曲げ、切断をしてもコイル成形上必要な加工精度とはならず、矯正あるいはさらに仕上げ加工を行う必要がある。
図4は、本発明の実施形態に係る回転電機のコイル製造システム・方法におけるコイル一括曲げシステムの片側の外形を示す平面図である。また、図5は、本発明の実施形態に係る回転電機のコイル製造システム・方法におけるコイル一括曲げシステムの片側の外形を示す正面図である。
以降の説明を分かり易くするために、図中のようにX、Y、Z方向をとる。X方向、Y方向は水平面内で互いに垂直方向であり、Z方向は鉛直上向きである。
本実施形態によるコイル一括曲げシステムは、積層導体101の両側で、それぞれEW曲げ、FW曲げ、切断、切断面仕上げの各加工を行う。このため、2組のユニット化した機構が、積層導体101の両側に配されている。
具体的には、EW曲げ装置18、FW曲げ装置19、切断装置21、切断面仕上げ装置105がそれぞれ設けられている。EW曲げ装置18は、積層導体101の両側にEW曲げを行う。FW曲げ装置19は、EW曲げにより生成されたエンド部16にFW曲げを行う。切断装置21は、エンド部16の端面の切断を、切断面仕上げ装置105は、切断装置21による切断面の仕上げ加工を行う。
コイル一括曲げシステムは、それぞれX方向に延びる複数のレール113を備えており、EW曲げ装置18、FW曲げ装置19、切断装置21はそれぞれレール113上を走行し移動可能な図示しない施工台座を有する。切断面仕上げ装置105は切断装置21の施工台座上に搭載されている。
また、コイル一括曲げシステムは、コイル搬送装置31を備えている。コイル搬送装置31は、直線部11を保持しEW曲げ装置18とFW曲げ装置19間でコイル10を搬送する。
コイル10は基本的にX方向に沿って置かれ、X方向の中心基準で位置決めを行う。EW曲げ、FW曲げ、切断装置は、基本的にX方向すなわちコイル長手方向中心を基準に移動する。ただし、コイル10の直線部11が短い場合は、2組が中心に寄ると干渉するため、片側基準に動作してもよい。すなわち、設定次第でコイル10の長手方向基準に装置が移動することも、コイル10を移動することも可能である。
2極機用の一括曲げ装置をそのまま4極機用に適用しても、作業中心が高くなってしまう問題を解決するために、直線部11を固定せずにコイル10のエンド部16の半径中心を基準としてコイル10を製造する。またコイル10の重心が下方となり転倒しづらい様にFW曲げを水平方向で行うように装置が構成されている。
この様にコイルが大型化しても、装置姿勢を変更することにより、作業者がアクセス可能で各工程間で成形やコイル搬送を行うことが可能となる。
図6は、本発明の実施形態に係る回転電機のコイル製造システム・方法におけるEW曲げ装置の外形を示す平面図である。また、図7は、本発明の実施形態に係る回転電機のコイル製造システム・方法におけるEW曲げ装置の外形を示す正面図である。
EW曲げ装置18は、中央にEW曲げ軸106を有する。また、EW曲げの際に積層導体101がずれるのを防止するために積層導体101を拘束するコイル拘束ガイド49を有する。
また、EW曲げ加工のための荷重を加えるための油圧シリンダ48、油圧シリンダ48を回転移動させるための旋回レール104を有する。旋回レール104は、(X−Y)平面内で環状に延びている。
また、EW曲げ装置18は、EW曲げされた後のエンド部16の角度を確認するためEW曲げ装置18のコイルクランプ部37に設けられた角度計測部38を有する。角度計測部38は、たとえば、光電センサでもよい。あるいは、機械的にエンド部に沿って動く機構により位置を計測する装置でもよい。
図8は、本発明の実施形態に係る回転電機のコイル製造システム・方法におけるEW曲げコイル拘束機構のコイル拘束ガイド部分を示す図6の第VIII-VIII線矢視側面図である。
図8に示すように、コイル拘束ガイド49は、積層導体101の上下面および一方の側面を囲むような形状を有する。また、積層導体101がEW曲げ軸106と当たる部分においては、積層導体101はコイル拘束ガイド49とEW曲げ軸106により、変形して逃げる先がないように上下左右を拘束される。
このように構成された本実施形態のEW曲げ装置においては、まず、積層導体101が予め加工されている通風穴23を利用して装置に予め設置されているテンプレート24と図示しない位置決めピンにより所定の位置に固定される。
固定された積層導体101は、コイル拘束ガイド49により拘束される。ここで、油圧シリンダ48は、コイル拘束ガイド49に横方向から、理論寸法に対応する寸法に至るまで荷重を掛ける。
油圧シリンダ48は、コイル拘束ガイド49に横方向から荷重を掛けた状態のままで、旋回レール104上を旋回する。この結果、コイル拘束ガイド49は、積層導体101を拘束しながらEW曲げ軸106の周囲を約90°回転する。この回転角度は、油圧シリンダ48の旋回レール104上を旋回する角度によって制御される。
その後、コイル拘束ガイド49を開放しコイル10は取外され、次工程のFW曲げ装置19までコイル搬送装置31により搬送される。
積層導体101を一括曲げする場合、多数の導体100が積層されて成形されるため、積層導体101に荷重が加わった場合に開放した方向に導体100の材料の塑性は流動し、結果的に導体100の断面を矩形に保つことができなかったり、角部12が正確な形状とならない場合がある。
この事象を防止する機構としてEW曲げコイル拘束機構107は、コイル拘束ガイド49、油圧シリンダ48を有する。これによりコイル成形中にコイル拘束ガイド49よりコイル10は膨らむことができず、コイル10の塑性流動が抑制され、精密な曲げ加工が可能になる。
図9は、本発明の実施形態に係る回転電機のコイル製造システム・方法におけるコイルプレス機構の外形を示す正面図である。また、図10は、本発明の実施形態に係る回転電機のコイル製造システム・方法におけるコイルプレス機構の導体との関係を示す部分的平面図である。
コイルプレス機構53は、下方プレス部54を有し、EW曲げ軸106と相まってEW曲げ後の角部12の各積層導体101の歪みを成形する。
下方プレス部54は、EW曲げ軸106と同心に設けられている。下方プレス部54は、EW曲げ軸106とは独立に上下に移動可能であり、たとえば油圧シリンダにより駆動される。
下方プレス部54は上下方向に延びた円柱状であって、上下に貫通する穴が形成されている。その外径はコイル10の角部12の外側を十分にカバーできる寸法であり、その内径はEW曲げ軸106の外径にほぼ等しい。
積層導体101の各導体100は、EW曲げにより、横幅方向に曲げられることから、EW曲げの内側は板厚が増加し、EW曲げの外側は板厚が減少する。このため、EW曲げにより板厚方向に影響のある角部12および、直線部11およびエンド部16のうちEW曲げにより影響を受けた部分の積層導体101を、下方プレス部54により上部から下方に圧縮することによりEW曲げの内側と外側の板厚方向の不揃いが矯正される。
図11は、本発明の実施形態に係る回転電機のコイル製造システム・方法におけるEW曲げテンプレート補正機構の外形を示す平面図である。また、図12は、本発明の実施形態に係る回転電機のコイル製造システム・方法におけるEW曲げテンプレート補正機構の外形を示す正面図である。
EW曲げされた結果のエンド部16の角度は、角度計測部38により計測される。コイル拘束ガイド49が90°回転しても、荷重解放後のエンド部16の直線部11からの曲げ角度θは、スプリングバックのために90°とはならず、たとえば2度程度小さい角度となる。このため、角度計測部38による角度計測結果にもとづきさらにこの差に相当する角度程度、油圧シリンダ48を旋回レール104上に旋回させコイル拘束ガイド49を回転させ、仕上がりの角度を調整する。
図13は、本発明の実施形態に係る回転電機のコイル製造方法におけるEW修正曲げステップを示すフロー図である。
まず、製造対象とするコイル10の諸元、仕様を登録する(S101)。諸元、仕様としては、コイル10の横幅、厚さ、直線部などの寸法、積層導体101の層数などがある。コイル10曲げ時のスプリングバック量は、コイル10の横幅、厚さ、積層数により多少の相違があるためである。
ステップS101の後に、データベースにアクセスして、対象とするコイル10の諸元、仕様に対してコイル製造に必要なデータを取得する(S102)。
予め構造解析によって、90°曲げた際のスプリングバック量に対する、スプリングバック後のコイルをスプリングバックの何倍オーバベンドさせれば良いかの値のオーバベンド係数を評価し、この比のデータベースを構築しておく。
たとえば、あるコイルを成形した際に90°成形すると2°のスプリングバックが発生した場合、この時にオーバベンドさせる角度はコイル諸元データに基づきデータベースデータから抽出する。オーバベンド係数2倍であった場合、2回目の曲げでスプリングバック量の2倍の4°のオーバベンド曲げを行うことにより、正確に90°曲げを行うことが可能となる。
ステップS102の後に、取得したデータに基づきEW曲げ目標値の角度を決定する(S103)。ステップS103で決定したEW曲げ目標値を設定してEW曲げを行う(S104)。
ステップS104の後に、油圧シリンダ48によるコイル拘束ガイド49への荷重を開放しコイル10への荷重がない状態にする(S105)。ステップS105の後に、再度、コイル10に近接させ電動機のトルクの変化により接触位置を確認する(S106)。
エンド部16の回転の角度の角度計測部38による計測結果、たとえばエンコーダ信号情報を取り込む(S107)。
ステップS107で取り込んだ回転角度計測結果が、規定の許容値の幅内であるか否かを判定する(S108)。規定された許容値内であると判定された場合は、EW曲げは終了する(S109)。また、規定された許容値内にない場合は、ステップS102以降を繰り返す。
図14は、本発明の実施形態に係る回転電機のコイル製造システム・方法におけるFW曲げ装置およびコイル修正固定機構の外形を示す正面図である。また、図15は、本発明の実施形態に係る回転電機のコイル製造システム・方法におけるFW曲げ装置およびコイル修正固定機構の外形を示す側面図である。なお、コイル修正固定機構については、後に説明する。
FW曲げ装置19は、FW曲げ成形型20、成形ローラ36(図16参照)、油圧シリンダ57、面盤56を有する。FW曲げ成形型20は、図14の紙面の背後からX方向に延びた積層導体101を、図14の左側すなわち(−Y)方向にEW曲げされた積層導体101のエンド部16を、FW曲げする際に円弧状に成形するための型となる。
成形ローラ36は、上側から積層導体101をFW曲げ成形型20に押し付けFW曲げを行う。油圧シリンダ57は、面盤56の移動に使用する。FW曲げ成形型20とコイル10との位置関係は、調整可能となっている。
また、FW曲げに先立って、あるいはFW曲げ後に切断のためにエンド部16の積層導体101の不揃いを修正するFWクランプ補正機構95、積層導体101の乱れを修正するコイル修正固定機構103を有する。
コイル材料には導電性を向上させるために銀入り銅の引抜材が多く使用されるが、これに冷却穴等の加工を施すため加工硬化する傾向がある。このため冷却穴等の加工の後にコイル材を焼鈍して残留応力を除去し、その後、コイル表面をホーニングした後に、一括曲げコイル材として使用する。
コイル10は焼鈍により微少変形し、またEW曲げにより微少な角度誤差を生じて曲がっている。この曲がったコイルを真っ直ぐにセットするために、FWクランプ補正機構95が設けられている。
FWクランプ補正機構95は、FW曲げ成形型20、面盤56および油圧シリンダ57を有する。面盤56は、Y−Z方向に広がる長方形の平板形状である。面盤56は、FWクランプ補正機構95の動作時には、図15の位置にあり、コイル10のエンド部16に密着する。面盤56の移動は油圧シリンダ57により行われる。
また、面盤56は、FWクランプ補正機構95の動作時以外は図15の2点鎖線で示す56aの位置に退避している。
FWクランプ補正機構95により、面盤56がコイル10のエンド部16の側面に密着した状態となることから、隙間の存在を確認することができる。隙間が傾斜する傾向がある場合や、局所的に隙間が大きい場合には、コイルが真っ直ぐで無いことを目視できるため、ハンマーで面盤56に叩き込むことにより、コイルを真っ直ぐに修正することができる。
また、図示しないが、プレス機構等により、面盤56に押し付けることにより修正してもよい。FWクランプ補正機構95を使用しての修正は、FW曲げ加工を行う前でも行った後でも機能するが、特にFW曲げ加工を行う前に実施することにより、品質の高い製造が可能となる。
図16は、本発明の実施形態に係る回転電機のコイル製造システム・方法におけるFW曲げ機構の成形部分の外形を示す正面図である。
FW曲げ成形型20の周囲に同心形状のシリンダ旋回用架構109が設けられている。シリンダ旋回用架構109には、シリンダ保持部108が取り付けられており、シリンダ保持部108はシリンダ旋回用架構109に沿って旋回可能である。シリンダ保持部108の旋回は、旋回軸112の回転によってなされる。
旋回軸112は、シリンダ旋回用架構109の回転中心から放射状に延びており、回転中心において、図示しない電動機とギアにより周方向に移動する。旋回軸112は、シリンダ保持部108と結合している。
シリンダ保持部108には、成形シリンダ36a、第1のシリンダ61a、第2のシリンダ62a、第3のシリンダ63a、第4のシリンダ64aが周方向に相互に間隔をあけて取り付け固定されており、それぞれ電動機を有する。成形シリンダ36aの先端には成形ローラ36が取り付けられており、成形シリンダ36aによってエンド部16に押し付けられる。成形ローラ36はエンド部16の幅をカバーできるような幅となっている。
第1のシリンダ61a、第2のシリンダ62a、第3のシリンダ63a、第4のシリンダ64aの先端にはそれぞれ第1のサポートローラ61、第2のサポートローラ62、第3のサポートローラ63、第4のサポートローラ64が取り付けられており、それぞれの電動機により積層導体101に荷重を伝達することができる。
第1のサポートローラ61、第2のサポートローラ62、第3のサポートローラ63、第4のサポートローラ64はそれぞれ第1のシリンダ61a、第2のシリンダ62a、第3のシリンダ63a、第4のシリンダ64aによってエンド部16に押し付けられる。
第1のサポートローラ61、第2のサポートローラ62、第3のサポートローラ63、第4のサポートローラ64はエンド部16の幅をカバーできるような幅となっている。
図17ないし図22は、本発明の実施形態に係る回転電機のコイル製造方法におけるFW曲げ荷重調整に関する各ステップにおけるコイル端部の第1ないし第6の状態を示す正面図である。第1の状態から第6の状態まで、番号順に推移する。
成形ローラ36はコイル10の直線部11の左右の中心位置の上部から成形シリンダ36aによってエンド部16に押し付けられ、エンド部16を加圧する(図17参照)。
この状態で旋回軸が回転し、第1のシリンダ61aがコイル10の直線部11の左右の中心位置の上部にきたときに、第1のシリンダ61aが第1のサポートローラ61を押し出す。第1のサポートローラ61は第1のシリンダ61aによってエンド部16に押し付けられ、エンド部16を加圧する(図18参照)
成形ローラ36は、旋回軸の回転とともにエンド部16を加圧し、FW曲げを行う。第1のサポートローラ61も、成形ローラ36と間隔を保ち、エンド部16を押し付けながら旋回する。
同様に、第2のシリンダ62a、第3のシリンダ63a、第4のシリンダ64aがコイル10の直線部11の左右の中心位置の上部にきたときに、それぞれ、第2のサポートローラ62、第3のサポートローラ63、第4のサポートローラ64を押し出す。第2のサポートローラ62、第3のサポートローラ63、第4のサポートローラ64は、エンド部16に押し付けられ、エンド部16を加圧する(それぞれ、図19ないし図21参照)
最後に、第1のサポートローラ61、第2のサポートローラ62、第3のサポートローラ63、第4のサポートローラ64の全てがエンド部16を加圧した状態で、成形ローラ36が旋回しながら残りのエンド部16のFW曲げを行う(図22参照)。
成形ローラ36および第1のサポートローラ61、第2のサポートローラ62、第3のサポートローラ63、第4のサポートローラ64の加圧は、電動機の負荷トルクを電流値で検出し、たとえば、定格の100%に対して5Aの出力が出る様に予め設定しておく。
図23は、本発明の実施形態に係る回転電機のコイル製造方法におけるFW曲げ荷重調整に関するステップを示すフロー図である。
まず、コイル10の直線部11の中心線の上部に成形シリンダ36a位置を設定し、成形シリンダ36aを加圧し、成形ローラ36を押し出す(S201)。成形ローラ36が、積層導体101上に着座したことを検知する(S202)。検知手段は、たとえば、トルクの変化による方法でもよいし、または、着座する位置に対応する位置に設けたリミットスイッチによってもよい。検知手段は、サポートローラについても同様である。
ステップS202の後に旋回軸112を回転させる(S203)。この間、旋回軸112の回転が、15°になったか否かを確認する(S204)。旋回軸112の回転角度が15°になったら、旋回軸112の回転を停止する(S205)。
ステップS205の後に、第1のシリンダ61aを加圧する。第1のサポートローラ61が押し出される(S206)。第1のサポートローラ61が、積層導体101上に着座したことを検知する(S207)。
この状態から、旋回軸112を回転させる(S208)。この間、旋回軸112の回転が、30°になったか否かを確認する(S209)。旋回軸112の回転角度が30°になったら、旋回軸112の回転を停止する(S210)。
ステップS210の後に、第2のシリンダ62aを加圧する。第2のサポートローラ62が押し出される(S211)。第2のサポートローラ62が、積層導体101上に着座したことを検知する(S212)。
この状態から、旋回軸112を回転させる(S213)。この間、旋回軸112の回転が、45°になったか否かを確認する(S214)。旋回軸112の回転角度が45°になったら、旋回軸112の回転を停止する(S215)。
ステップS215の後に、第3のシリンダ63aを加圧する。第3のサポートローラ63が押し出される(S216)。第3のサポートローラ63が、積層導体101上に着座したことを検知する(S217)。
この状態から、旋回軸112を回転させる(S218)。この間、旋回軸112の回転が、60°になったか否かを確認する(S219)。旋回軸112の回転角度が60°になったら、旋回軸112の回転を停止する(S220)。
ステップS220の後に、第4のシリンダ64aを加圧する。第4のサポートローラ64が押し出される(S221)。第4のサポートローラ64が、積層導体101上に着座したことを検知する(S222)。
この状態から、旋回軸112を回転させる(S223)。旋回角度が、予め設定された旋回終了角に到達したら旋回を終了する(S224)。
従来の既設機におけるFW曲げ機構では1対のローラユニットで曲げを行っていたため、曲げローラが通過した部分のコイル材が浮き上り正確な曲げができないという問題があった。また浮き上った部分を外付け治具で密着させとしても完全に密着せず、コイル切断時に誤差が生じることがあった。
本実施形態においては、電流値と荷重との関係が把握された上で、成形ローラ36および第1のサポートローラ61、第2のサポートローラ62、第3のサポートローラ63、第4のサポートローラ64の加圧は電動機負荷トルクを電流値で検出している。
このため、コイルの諸元、仕様に応じて適切な荷重が負荷され成形される。これにより成形が終了した部分も常時一定の間隔で積層導体101が拘束され、FW曲げ成形型20から浮き上がること無く密着させることが可能となる。
FW曲げにおいては、適正荷重以上の曲げ力を加えるとコイル表層だけが押し潰され、またコイル積層がずれる傾向を示すため、最適な荷重を付加して曲げることが望ましく、またコイル表面の損傷が少なくできる。
FW曲げにおいては、コイル厚さ、コイル幅、コイル積層数の3条件により曲げ荷重が影響を受ける。この関係を事前に構造解析により評価し、3条件による荷重を近似式で求めておく。製品仕様、諸元データよりコイル厚さ、コイル幅、コイル積層数を入力することにより、コイル加圧力を計算する。
この結果により、相当電流を成形シリンダ36aおよび第1のシリンダ61a、第2のシリンダ62a、第3のシリンダ63a、第4のシリンダ64aの駆動電動機に励磁することにより適正な荷重を負荷することが可能となる。
このように、本実施形態により、積層導体101の表面に加わるダメージも少なく表面の損傷が少ないコイル10の製造が可能となる。
図24は、本発明の実施形態に係る回転電機のコイル製造システム・方法におけるFW曲げコイル幅拘束ガイドの外形を示す正面図である。図25は、本発明の実施形態に係る回転電機のコイル製造システム・方法におけるFW曲げコイル幅拘束ガイドの外形を示す側面図である。また、図26は、本発明の実施形態に係る回転電機のコイル製造システム・方法におけるFW曲げコイルガイド機構の外形を示す図24の第XXI-XXI線矢視平断面図である。
FW曲げコイルガイド機構115は、2枚のコイルガイド68、ホルダー66を有する。これらのコイルガイド68は、成形ローラ36の旋回方向の前方、すなわち、第1のサポートローラ61等と反対側に、エンド部16の積層導体101の両側面を挟むように設けられている。それぞれのコイルガイド68は、上下に延びる平板状である。
コイルガイド68を収納するようホルダー66が設けられている。ホルダー66は、2枚のコイルガイド68のそれぞれの隣接する2側面に接するように形成されており、上下に延びている。
コイルガイド68の上端には、コイルガイド68がホルダー66から落下しないようにストッパ67が設けられている。コイルガイド68の積層導体101側の側面には、進行方向と後退する方向に30°程度の面取りが施され、積層導体101に食い込まない様になっている。
多数の層からなる積層導体101は、前工程のEW曲げにおける変形やコイル曲げ加工を行う前に行われる焼鈍の影響によりコイル断面が平坦でない場合が多い。
このように、コイル成形前に既に多少前工程の成形の影響やコイル曲げ加工を行う前に行われる焼鈍の影響により、不揃いなコイルに対して成形開始位置の位置決めを行った後、成形ローラ36をコイル10に接触する位置まで移動させる。
この時コイルガイド68がコイルに対して均等に入る位置に、成形ローラ36の位置を微調整し、コイル10の中心でガイドされる状態とする。この状態でFW曲げを行うことにより、FW曲げ方向の側面に発生する横荷重の発生を抑制し、コイルを真っ直ぐに整形することが可能となる。
次に、図14および図15により、本発明の実施形態に係る回転電機のコイル製造システム・方法におけるコイル修正固定機構について説明する。
コイル修正固定機構103は、FW曲げ成形型20、面盤56、締め板71を有する。締め板71は、エンド部16の積層導体101を挟んで面盤56と対向する位置に設けられている。
締め板71にはネジ穴70が設けられている。また、面盤56にも対応する位置に図示しないネジ穴が設けられている。締め板71は、図示しないネジにより、面盤56に固定されるように形成されている。
なお、締め板71は、図22のような部分的にエンド部16の積層導体101を覆う場合は、複数を使用して、全体をカバーしてもよい。あるいは、1枚で全体をカバーしてもよい。
FW曲げ工程で成形された積層導体101は、成形により発生する塑性変形やスプリングバックの影響により、FW曲げ成形型20に完全に密着していない。この状態のままコイル成形を終了し次工程の切断作業を行おうとすると、コイル組立を行う際にコイル10はロータに対して完全に密着されるため、コイル長さが正確ではないためロウ付け接合部69が一致せず、ロウ付け接合不良が発生する。
本実施形態により、FW曲げ後、面盤56を積層導体101の側部に移動させ積層導体101に密着させる。ネジの締め付けにより面盤56と複数の締め板71で積層導体101を面盤56側に締め込み、完全に密着させることにより、エンド部16の積層導体101の横幅方向の不揃いを更生することができる。
図27は、本発明の実施形態に係る回転電機のコイル製造システム・方法におけるコイル切断装置・切断部仕上げ装置の外形を示す正面図である。図28は、本発明の実施形態に係る回転電機のコイル製造システム・方法におけるコイル切断装置・切断部仕上げ装置の外形を示す側面図である。
切断装置21は、切断ヘッド72、回転機構74、ブレーキ付電動機75、切断用電動機77、上下軸79を有する。回転機構74はブレーキ付電動機75により駆動され、切断ヘッド72を切断位置と非切断位置間で回転移動させる。
切断ヘッド72は、円板状のチップソー78を有する。なお、チップソー78には限定されずノコ刃の付いたバンドソーなどでもよい。切断用電動機77は、切断ヘッド72のソーを回転駆動する。また、上下軸79は、切断ヘッド72を上下に駆動する。
切断部仕上げ装置110は、仕上げ加工ヘッド73、回転機構74、ブレーキ付電動機75、切り替え用電動機114を有する。仕上げ加工ヘッド73は、エンドミル76を有しており、切断ヘッド72と同軸上に設けられている。
切断ヘッド72の回転中心と切断用電動機77の回転中心間の軸上の中間点近くに図示しない切り替え用の回転軸があり、切り替え用の回転軸は切り替え用電動機114により回転動作を行う。切り替え用の回転軸の軸方向に垂直の方向に切断ヘッド72および仕上げ加工ヘッド73がそれぞれ結合しており、切断装置21と切断部仕上げ装置110間の切り替えは切り替え用電動機114による切り替え用の回転軸の回転動作により行われる。また、仕上げ位置と非仕上げ位置間での移動は、回転機構74によりなされる。
回転機構74は、切断や仕上げ加工時の切削負荷の影響を受けないように十分な保持トルクを有するものを選定する。
切断時には、エンドミル76は積層導体101や周囲の構造物と干渉しない位置に回転して切断装置21がコイルを切断する状態となる。切断ヘッド72は切断用電動機77を回転することにより、チップソー78を回転し、上下軸79により切れ刃80が上下移動し積層導体101を削ることにより切断される。
切断装置21による切断が完了した後、切断装置21は一度積層導体101と反対方向に退避する。回転機構74の電動機が回転することにより、周囲の構造物と干渉しない状態で、仕上げ加工ヘッド73が回転して積層導体101方向を向き、仕上げ加工を行うことができる。仕上げ加工ヘッド73に用いるエンドミル76は、仕上げ加工時に振動が発生しない程度に積層導体101の横幅の2倍以上の直径のエンドミル76を採用する。
また、エンドミル76の刃数が多く連続切削を行える工具を選定することが望ましい。
切断装置21による切断は、コイル10を迅速に切削できるソーによる切断である。一般的に、ソーの厚みは薄いため剛性が低いので、コイル10の切断時に曲がって切断される場合がある。この切断による曲がりを加味して切断すると、切断後のコイル10の仕上をグラインダ等で行う必要が生じ多大な仕上げ工数が必要となる。
一方、このような本実施形態では、積層導体101を効率良く切断し、仕上げを行うことにより、その後の調整や手入れ等の手動作業を大幅に削減できる。
図29は、本発明の実施形態に係る回転電機のコイル製造システム・方法におけるコイル搬送機構の外形を示す正面図である。また、図30は、本発明の実施形態に係る回転電機のコイル製造システム・方法におけるコイル搬送機構の外形を示す側面図である。
コイル搬送装置31は、ホルダー88、エアーシリンダ90、幅方向の移動軸91、長手方向の移動軸92、上下移動軸93a、93bを有する。ホルダー88は、積層導体101の上面、下面および一方の側部に対応する3面で構成され、直線部11の積層導体101を保持する。エアーシリンダ90は、ホルダー88の側面に面していない側の積層導体101の側面をクランプ固定する。
幅方向の移動軸91は装置幅方向、長手方向の移動軸92はコイル長手方向、上下移動軸93は上下方向に積層導体101を移動させ、各場面で積層導体101の適当な姿勢を保ったり、積層導体101の搬送を行うように形成されている。
積層導体101の搬送は通常クレーンで行うが、各装置間のコイルの移動もクレーンで行うと、クレーン待ちや吊り治具の着脱等に時間を要するが、本実施形態により、各装置間のコイル搬送を行うことにより、クレーン待ちや吊り治具の着脱を不要とし、各装置間のコイルの行き来を自由とすることで運搬時間を削減できる。
以上のように、本実施形態によれば、4極機のように積層導体の層数が多く、また、エンド部の長さが長い場合においても、一括曲げが可能となる。
図31は、本発明の実施形態に係る回転電機のコイル製造方法における製品仕様データによる自動製造システムの構成を示すブロック図である。
自動製造システムは、データベース111、製品情報抽出部82、製品仕様情報展開部84、進行制御部86、EW曲げ装置18、FW曲げ装置19、切断装置21、切断部仕上げ装置110、コイル搬送装置31を備える。
データベース111は、各回転電機の仕様データとコイル製造のためのデータを収納する。製品情報抽出部82は、対象とする回転電機についての図面、仕様書などの図書情報から当該回転電機のコイル製造に必要な情報に関連した製品情報を抽出する。
製品仕様情報展開部84は、対象とする回転電機の仕様データを入力とし、前記データベース111から各加工プロセスに必要なコイル製造に係るデータを取得する。進行制御部86は、各ステップの条件設定および進行を管理しながら各加工ステップを自動的に進行する。
ここで、製品仕様情報データは、コイル全長、コイルスロット数、スロットピッチ角度、コイル幅、コイル厚さ、積層数、FW曲げ半径、ポール角度などである。
これらの製品仕様情報に基づいて、コイル製造に必要なパラメータを製品仕様情報展開部84が演算する。
この製品仕様情報は、進行制御部86に集約され、進行制御部86からたとえば通信ケーブルを通じて、各装置が有する駆動制御部にデータ転送され、これにより仕様情報が装置間で共有される。
また、各装置の位置をはじめとする各装置に関する情報は、進行制御部86に集約され、進行制御部86からたとえば通信ケーブルを通じて、各装置が有する駆動制御部にデータ転送され、これにより各装置に関する情報が各装置間で共有される。
以上のように構成された本実施形態により、対象とする製品すなわち回転電機に関する情報を入力することにより、コイル製造のために必要なデータが、データベース111に蓄積されたデータを活用しながら自動的に生成される。
さらに、進行制御部86により、EW曲げ装置18、FW曲げ装置19、切断装置21、切断部仕上げ装置110における加工ステップが自動的に進められ、コイル10が製造される。
[その他の実施形態]
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。
また、各実施形態の特徴を組み合わせてもよい。
さらに、これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。
これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。