本発明の実施の形態の一例について、図面を用いて以下に説明する。但し、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨およびその範囲から逸脱することなくその形態および詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
なお、図面等において示す各構成の、位置、大きさ、範囲などは、理解の簡単のため、実際の位置、大きさ、範囲などを表していない場合がある。このため、開示する発明は、必ずしも、図面等に開示された位置、大きさ、範囲などに限定されない。
なお、本明細書等における「第1」、「第2」、「第3」などの序数は、構成要素の混同を避けるために付すものであり、数的に限定するものではないことを付記する。
(実施の形態1)
本実施の形態では、開示する発明の一態様に係るプロセッサの構成および動作について、図1乃至図12を用いて説明する。
本実施の形態に示すプロセッサは、パワーゲーティング機能を有しており、以下のような方法で、演算部の停止と起動を行う。
プロセッサの演算部を停止させる際に行うデータの退避において、演算部の停止命令が与えられる前に当該停止命令を予測して、当該停止命令が与えられるまで使用されない演算部の一部で揮発記憶素子から不揮発記憶素子にデータを退避させ、並行して演算部の他部で演算処理を行う。演算部の停止命令が与えられると、演算部の他部で揮発記憶素子から不揮発記憶素子にデータを退避させ、演算部でデータの退避が完了すると、少なくとも演算部の電源をオフ状態とする。
また、プロセッサの演算部を起動させる際に行うデータの復帰において、演算部の起動命令が与えられると、少なくとも演算部の電源をオン状態とし、演算部の電源がオン状態となると、当該起動命令が与えられた後に使用される演算部の一部で不揮発記憶素子から揮発記憶素子にデータを復帰させる。演算部の一部でデータを復帰させると、演算部の一部で演算処理を行い、並行して演算部の他部で不揮発記憶素子から揮発記憶素子にデータを復帰させる。
このようなパワーゲーティングの駆動方法を用いることができる、プロセッサの構成について以下で説明する。
開示する発明の一態様に係る、プロセッサの構成を図1のブロック図に示す。図1に示すプロセッサ100は、命令解析部101と、n個(nは2以上の整数)の論理回路ブロック103_1乃至103_nを含む演算部102と、退避復帰制御部106と、フラグ格納部107と、電源制御部108と、を有する。また、複数の論理回路ブロック103_1乃至103_nには、それぞれ、揮発記憶ブロック104_1乃至104_nと不揮発記憶ブロック105_1乃至105_nが設けられている。なお、論理回路ブロック103_1乃至103_n、揮発記憶ブロック104_1乃至104_n、および不揮発記憶ブロック105_1乃至105_nは、各ブロックの番号の後ろに、_1乃至_nのように番号を付しているが、以下ブロックの番号を付す必要がない場合は、論理回路ブロック103、揮発記憶ブロック104および不揮発記憶ブロック105と表記する場合がある。
命令解析部101は、演算部102の各論理回路ブロック103_1乃至103_nと、退避復帰制御部106と、電源制御部108と電気的に接続されている。命令解析部101は、プロセッサ100の外部、例えばキャッシュメモリやメインメモリなどの記憶装置、からの命令を受けて、演算部102の複数の論理回路ブロック103_1乃至103_n、退避復帰制御部106、または電源制御部108に、命令に対応する制御信号を発信する。なお、本明細書等において、「命令」という用語は命令に対応する制御信号という意味も含み、「命令を与える」という用語は命令に対応する制御信号を発信するという意味も含む。
命令解析部101は例えば、演算部102の複数の論理回路ブロック103_1乃至103_nには演算処理の命令を与え、退避復帰制御部106には、演算部102の各論理回路ブロック103において揮発記憶ブロック104と不揮発記憶ブロック105の間でデータの退避または復帰を行わせる命令を与え、電源制御部108には、演算部102の複数の論理回路ブロック103_1乃至103_nの電源をオン状態とする命令を与える。
このような命令解析部101は、例えば、プロセッサ100の外から与えられる命令を一時的に格納するフェッチ回路、当該フェッチ回路に格納された命令をデコードして制御信号を生成するデコーダなどを含む構成とすることができる。
演算部102は、命令解析部101と、退避復帰制御部106と、電源制御部108と電気的に接続されている。演算部102では、命令解析部101から命令を受けて複数の論理回路ブロック103_1乃至103_nで演算処理を行う。論理回路ブロック103は、複数の論理回路を含んでおり、当該複数の論理回路からなる演算回路(ALU:Arithmetic logic unit)などを有する。
また、論理回路ブロック103に設けられた揮発記憶ブロック104は、少なくとも揮発記憶素子を有し、例えばレジスタを含んで構成される。揮発記憶ブロック104は、論理回路ブロック103の演算処理においてデータの書き込みおよび読み出しを行うので、少なくとも不揮発記憶ブロック105よりアクセス速度が速いものとする。
また、揮発記憶ブロック104を構成するトランジスタに用いる半導体材料は特に限定されないが、後述する不揮発記憶ブロック105に用いるオフ電流が低減されたトランジスタに用いる半導体材料とは、異なる禁制帯幅を持つ材料とすることが好ましい。このような半導体材料としては、例えば、シリコン、ゲルマニウム、シリコンゲルマニウム、またはガリウムヒ素等を用いることができ、単結晶半導体を用いることが好ましい。情報の読み出し速度を向上させるという観点からは、例えば、単結晶シリコンを用いたトランジスタなど、スイッチング速度の高いトランジスタを適用するのが好適である。
また、論理回路ブロック103に設けられた不揮発記憶ブロック105は、少なくとも上記揮発記憶素子よりデータの保持時間が長い不揮発記憶素子を有する。不揮発記憶ブロック105は、揮発記憶ブロック104のデータに対応する電荷が保持されたノードと電気的に接続されており、パワーゲーティングの駆動方法において演算部102をオフ状態としたときに、揮発記憶ブロック104のデータを退避させるために用いる。よって、不揮発記憶ブロック105は、少なくとも揮発記憶ブロック104よりデータ保持時間が長いものとする。
ここで、不揮発記憶ブロック105の構成例について、図2(A)乃至図2(C)に示す回路図を用いて説明する。
図2(A)に示す不揮発記憶ブロック105は、トランジスタ110と、容量素子111と、を有しており、トランジスタ110を介して揮発記憶ブロック104と電気的に接続されている。なお本実施の形態において、トランジスタ110は、nチャネル型トランジスタであるものとして説明するが、適宜pチャネル型トランジスタを用いてもよく、その場合は適宜ゲート電極に与える電位を入れ替えて用いればよい。
具体的には、トランジスタ110のソース電極(またはドレイン電極)と、揮発記憶ブロック104のデータに対応する電荷が保持されたノードとが電気的に接続されている。また、トランジスタ110のドレイン電極(またはソース電極)と、容量素子111の一方の電極と、が電気的に接続されている(以下、当該ノードをノードM1と呼ぶ場合がある)。また、トランジスタ110のゲート電極には、制御信号S1が与えられており、トランジスタ110は制御信号S1の電位に応じてオン状態またはオフ状態となる。また、容量素子111の他方の電極には、所定の電位が与えられている。ここで、所定の電位とは、例えば接地電位(GND)などである。このように、容量素子111を設けることにより、ノードM1に多くの電荷を保持することができ、データの保持特性を向上させることができる。
トランジスタ110としては、オフ電流が極めて低いトランジスタを用いることが好ましい。オフ電流が極めて低いトランジスタは、単結晶シリコン半導体よりもバンドギャップが広く、真性キャリア密度が単結晶シリコンよりも低い、ワイドバンドギャップ半導体を、チャネル形成領域に含むことが好ましい。例えば、当該ワイドバンドギャップ半導体のバンドギャップは、1.1eVより大きく、好ましくは2.5eV以上4eV以下、より好ましくは3eV以上3.8eV以下とすればよい。このようなワイドバンドギャップ半導体の一例として、炭化珪素(SiC)、窒化ガリウム(GaN)などの化合物半導体、In−Ga−Zn−O酸化物半導体などの金属酸化物でなる酸化物半導体などを適用することができる。また、アモルファスシリコンや微結晶シリコンなどを用いたトランジスタは、単結晶シリコンを用いたトランジスタよりオフ電流が低いので、アモルファスシリコンや微結晶シリコンなどをトランジスタ110に用いる構成としても良い。
ここで、単結晶シリコンのバンドギャップは1.1eV程度であり、ドナーやアクセプタによるキャリアが全く存在しない状態(真性半導体)であっても、熱励起キャリアの濃度は1×1011cm−3程度である。それに対して、上記のワイドバンドギャップ半導体であるIn−Ga−Zn−O酸化物半導体のバンドギャップは、3.2eV程度であり、熱励起キャリア濃度は1×10−7cm−3程度となる。トランジスタのオフ抵抗(トランジスタがオフ状態の時における、ソースとドレイン間の抵抗をいう。)は、チャネル形成領域における熱励起キャリアの濃度に反比例するので、In−Ga−Zn−O酸化物半導体のオフ時の抵抗率は、シリコンと比較して18桁も大きいことになる。
このようなワイドバンドギャップ半導体をトランジスタ110に用いることにより、例えば、室温(25℃)でのオフ電流(ここでは、単位チャネル幅(1μm)あたりの値)は100zA(1zA(ゼプトアンペア)は1×10−21A)以下、より好ましくは10zA以下となる。
例えば、トランジスタ110の室温(25℃)でのオフ電流(ここでは、単位チャネル幅(1μm)あたりの値)が10zA(1zA(ゼプトアンペア)は1×10−21A)以下である場合には、104秒以上のデータ保持を行うことも可能である。なお、当該保持時間が、トランジスタ110の特性やトランジスタ110の電極に接続された容量111の容量値、温度などによって変動することはいうまでもない。
本実施の形態において、トランジスタ110に用いるオフ電流の極めて低いトランジスタとしては、酸化物半導体を含むトランジスタを用いる。
揮発記憶ブロック104からデータの退避を行う際は、制御信号S1として高電位を与えてトランジスタ110をオン状態とすることにより、揮発記憶ブロック104のデータに対応する電荷が保持されたノードの電位が、ノードM1に与えられる。その後、制御信号S1の電位として低電位を与えてトランジスタ110をオフ状態とすることにより、ノードM1に与えられた電荷が保持される。ここで、トランジスタ110のオフ電流は極めて低いので、ノードM1の電荷は長時間にわたって保持される。
また、揮発記憶ブロック104にデータの復帰を行う際は、制御信号S1として高電位を与えてトランジスタ110をオン状態とすることにより、ノードM1の電位が、揮発記憶ブロック104のデータに対応する電荷が保持されるノードに与えられる。
このように、ワイドバンドギャップ半導体などをトランジスタ110に用いることにより、トランジスタ110におけるオフ電流を極めて小さくすることができる。よって、トランジスタ110をオフ状態とすることで、ノードM1の電位を極めて長時間にわたって保持することが可能である。このような構成とすることにより、不揮発記憶ブロック105を電源の供給なしでデータを保持することができる不揮発型の記憶素子として用いることができる。
また不揮発記憶ブロック105は図2(B)に示すように、図2(A)に示す構成に加えて、さらにトランジスタ112を設けた構成としても良い。トランジスタ112は、ゲート電極とノードM1とが電気的に接続されており、ドレイン電極(またはソース電極)と揮発記憶ブロック104のデータに対応する電荷が保持されたノードとが電気的に接続されており、ソース電極(またはドレイン電極)に所定の電位が与えられている。
図2(B)に示す不揮発記憶ブロック105では、上記データの退避でノードM1に保持された電位に応じてトランジスタ112の状態が異なる。すなわち、上記データの退避で高電位が与えられた場合には、トランジスタ112が「オン状態」となり、低電位が与えられた場合には、トランジスタ112が「オフ状態」となる。
データの復帰においては、トランジスタ112のドレイン電極の電位が、揮発記憶ブロック104のデータに対応する電荷が保持されるノードに与えられる。すなわち、上記データの退避でノードM1に高電位が与えられた場合には、トランジスタ112が「オン状態」となっておりトランジスタ112のソース電極の電位が揮発記憶ブロック104に与えられる。また、上記データの退避でノードM1に低電位が与えられた場合には、トランジスタ112が「オフ状態」となっておりトランジスタ112のソース電極の電位は揮発記憶ブロック104に与えられない。
また、トランジスタ112は、情報の読み出し速度を向上させるという観点から、上述の揮発記憶ブロック104に用いたトランジスタと同様のトランジスタを用いることが好ましい。
なお、トランジスタ112のソース電極と容量素子111の他方の電極とは、同じ電位としても良いし、異なる電位としても良い。トランジスタ112のソース電極と容量素子111の他方の電極とが電気的に接続されている構成としても良い。また、容量素子111は必ずしも設ける必要はなく、例えば、トランジスタ112の寄生容量が大きい場合は、当該寄生容量で容量素子111の代替とすることができる。
ここで、トランジスタ110のドレイン電極およびトランジスタ112のゲート電極、すなわちノードM1は、不揮発性メモリ素子として用いられるフローティングゲート型トランジスタのフローティングゲートと同等の作用を奏する。しかしながら、トランジスタ110のオン・オフで直接的にデータの書き換えを行うことができるので、高電圧を用いてのフローティングゲート内への電荷の注入およびフローティングゲートからの電荷の引き抜きが不要である。つまり、不揮発記憶ブロック105では、従来のフローティングゲート型トランジスタにおいて書き込みや消去の際に必要であった高電圧が不要である。よって、本実施の形態に記載の不揮発記憶ブロック105を用いることにより、データの退避の際に必要な消費電力の低減を図ることができる。
また同様の理由により、データの書き込み動作や消去動作に起因する動作速度の低下を抑制することができるので、不揮発記憶ブロック105の動作の高速化が実現される。また同様の理由により、従来のフローティングゲート型トランジスタにおいて指摘されているゲート絶縁膜(トンネル絶縁膜)の劣化という問題が存在しない。つまり、本実施の形態に記載の不揮発記憶ブロック105は、従来のフローティングゲート型トランジスタと異なり、原理的な書き込み回数の制限が存在しないことを意味する。以上により、不揮発記憶ブロック105は、レジスタなどの多くの書き換え回数や高速動作を要求される記憶装置としても十分に用いることができる。
また不揮発記憶ブロック105は図2(C)に示すように、図2(B)に示す構成に加えて、さらにトランジスタ113を設けた構成としても良い。トランジスタ113は、ゲート電極に制御信号S2が与えられており、ドレイン電極(またはソース電極)と揮発記憶ブロック104のデータに対応する電荷が保持されたノードとが電気的に接続されており、ソース電極(またはドレイン電極)とトランジスタ112のドレイン電極とが電気的に接続されている。
ここで制御信号S2は、上記データの復帰を行う際にトランジスタ113のゲート電極に高電位を与える信号であり、高電位のS2を与えることで、トランジスタ113をオン状態とすることができる。これにより、データの復帰を行う際にトランジスタ112のオン状態またはオフ状態に応じた電位を、揮発記憶ブロック104のデータに対応する電荷が保持されるノードに与えることができる。
なお、トランジスタ113は、情報の読み出し速度を向上させるという観点から、上述の揮発記憶ブロック104に用いたトランジスタと同様のトランジスタを用いることが好ましい。
なお、不揮発記憶ブロック105は、図2(A)乃至図2(C)に示す構成に限られるものではない。例えば、相変化メモリ(PCM:Phase Change Memory)や抵抗変化型メモリ(ReRAM:Resistance Random Access Memory)などを用いることができる。
ここで、図2(C)に示す構成を用いた、揮発記憶ブロック104および不揮発記憶ブロック105を有する記憶装置の具体的な構成例について、図3に示す回路図を用いて説明する。
図3に示す記憶装置は、揮発記憶ブロック104と、不揮発記憶ブロック105と、トランジスタ113と、トランジスタ114と、スイッチ115と、論理素子116と、容量素子117と、を有する。なお、論理素子116は、論理(値)を反転させる機能を有する素子である。不揮発記憶ブロック105は、トランジスタ110、容量素子111およびトランジスタ112を有する。ここで、揮発記憶ブロック104、不揮発記憶ブロック105およびトランジスタ113は、上記において図2(C)を用いて説明したものと同様の構成とすることができる。
図3では、トランジスタ113は、一導電型(例えば、nチャネル型)のトランジスタであり、トランジスタ114は、一導電型とは異なる導電型(例えば、pチャネル型)のトランジスタである例を示す。
トランジスタ113およびトランジスタ114のゲート電極に制御信号S2が与えられており、制御信号S2が高電位のときはトランジスタ113だけがオン状態となり、制御信号S2が低電位のときはトランジスタ114だけがオン状態となる。
トランジスタ112のソース電極は、電位V1が与えられる配線に電気的に接続され、ドレイン電極は、トランジスタ113のソース電極と電気的に接続される。トランジスタ113のドレイン電極はトランジスタ114のドレイン電極と電気的に接続される。トランジスタ114のソース電極は電位V2が与えられる配線と電気的に接続される。トランジスタ113のドレイン電極と、トランジスタ114のドレイン電極と、論理素子116の入力端子と、容量素子117の一方の電極とは、電気的に接続される(以下、当該ノードをノードM2と呼ぶ場合がある)。ここで、電位V1は接地電位(GND)などの低電位が与えられ、電位V2は高電位(VDD)などが主に与えられる。
また、容量素子111の他方の電極、および容量素子117の他方の電極は、電位V1が与えられる配線と電気的に接続されている。
スイッチ115は、制御信号S1及び制御信号S2とは異なる制御信号S3によって第1の端子と第2の端子の間の導通状態または非導通状態を選択される。
トランジスタ110のソース電極と、揮発記憶ブロック104のデータに対応する電荷が保持されるノードとが電気的に接続される。図3では、揮発記憶ブロック104の出力端子OUTから出力された信号が、トランジスタ110のソース電極に入力される例を示した。トランジスタ113のドレイン電極から出力される信号は、論理素子116によってその位相が反転された反転信号となり、制御信号S3によって第1の端子と第2の端子間が導通状態となったスイッチ115を介して揮発記憶ブロック104に入力される。
なお、図3では、トランジスタ113のドレイン電極から出力される信号は、論理素子116及びスイッチ115を介して揮発記憶ブロック104の入力端子(図3中、INと記載)に入力する例を示したが、本発明の一態様はこの構成に限定されない。トランジスタ113のドレイン電極から出力される信号が、位相を反転させられることなく、揮発記憶ブロック104に入力されてもよい。例えば、揮発記憶ブロック104内に、入力端子から入力された信号の位相が反転した信号が保持されるノードが存在する場合に、トランジスタ113のドレイン電極から出力される信号を当該ノードに入力することができる。
図3において、電位V1と電位V2の電位差に相当する電圧が、記憶装置に電源電圧として供給されている。揮発記憶ブロック104には電位V1と電位V2の電位差に相当する電圧が、電源電圧として供給されていてもよい。揮発記憶ブロック104に電源電圧が供給されない期間では、電位V1と電位V2をほぼ等電位として電源オフの状態にする。この場合、例えば当該期間のみ電位V2を接地電位とすればよい。
なお、スイッチ115は、トランジスタを用いて構成することができる。当該トランジスタはnチャネル型トランジスタであってもよいし、pチャネル型トランジスタであってもよい。また、nチャネル型トランジスタとpチャネル型トランジスタを組み合わせて用いてもよい。例えば、スイッチ115として、アナログスイッチを用いることができる。
図3における揮発記憶ブロック104は、第1の論理素子及び第2の論理素子を有する。そして、第1の論理素子の入力端子は第2の論理素子の出力端子と接続され、第2の論理素子の入力端子は第1の論理素子の出力端子と接続された構成を有する。第1の論理素子及び第2の論理素子は、それぞれ電源電圧が供給されている期間のみ、入力された信号に対応する信号を出力する。
また、第1及び第2の論理素子は、論理(値)を反転させる素子であり、例えばインバータやクロックドインバータ等を用いることができる。
以上に示した、揮発記憶ブロック104および不揮発記憶ブロック105は、例えば、上記ALUの入力データや演算結果を一時的に格納するバッファレジスタや、汎用レジスタとして用いることができる。
図1に示すように、退避復帰制御部106は、命令解析部101と、演算部102の各論理回路ブロック103_1乃至103_nと、フラグ格納部107と、電源制御部108と電気的に接続されている。退避復帰制御部106は、第1の参照命令羅列および第2の参照命令羅列を有しており、これらに従って演算部102の論理回路ブロック103_1乃至103_nの少なくとも一つを選択し、選択した論理回路ブロック103に、データの退避または復帰の命令を与える。なお、第1の参照命令羅列および第2の参照命令羅列は、退避復帰制御部に設けられた記憶部に格納されている。当該記憶部は、上記揮発記憶素子を含んで設けられる揮発記憶ブロック104、または上記不揮発記憶素子を含んで設けられる不揮発記憶ブロック105などと同様の構造とすることができる。
ここで、第1の参照命令羅列とは、演算部停止の命令と、当該演算部停止の命令前の複数の命令と、を含む命令羅列のサンプルである。ただし、第1の参照命令羅列は、少なくとも、演算部停止の命令の前の複数の命令を含んでいればよく、必ずしも演算部停止の命令を含んでいなくても良い。また、第2の参照命令羅列とは、演算部起動の命令と、当該演算部起動の命令後の複数の命令と、を含む命令羅列のサンプルである。ただし、第2の参照命令羅列は、少なくとも、演算部起動の命令の後の複数の命令を含んでいればよく、必ずしも演算部起動の命令を含んでいなくても良い。なお、第1の参照命令羅列および第2の参照命令羅列の詳細は、後述のプロセッサ100の駆動方法において説明する。
退避復帰制御部106は、プロセッサ100の動作中常にプロセッサ100の外から与えられる命令の履歴(以下、命令羅列と呼ぶ。)と第1の参照命令羅列と、を比較している。当該命令羅列と第1の参照命令羅列の少なくとも一部が一致すると、第1の参照命令羅列に従って、演算部102の複数の論理回路ブロック103_1乃至103_nの少なくとも一つに、揮発記憶ブロック104から不揮発記憶ブロック105にデータを退避させる命令を与える。また、退避復帰制御部106は、命令解析部101から命令を受けると、第2の参照命令羅列に従って、演算部102の複数の論理回路ブロック103_1乃至103_nの少なくとも一つに、不揮発記憶ブロック105から揮発記憶ブロック104にデータを復帰させる命令を与える。なお、データの退避および復帰の詳細は、後述のプロセッサ100の駆動方法において説明する。
また、退避復帰制御部106は、揮発記憶ブロック104から不揮発記憶ブロック105にデータの退避が完了した後には、フラグ格納部107に退避済みフラグを書き込む。また、不揮発記憶ブロック105から揮発記憶ブロック104にデータの復帰が完了した後には、フラグ格納部107に復帰済みフラグを書き込む。
また、退避復帰制御部106は、データの退避が完了した後、電源制御部108に、演算部102の複数の論理回路ブロック103_1乃至103_nの電源をオフ状態とする命令を与える。
電源制御部108は、命令解析部101と、退避復帰制御部106と、演算部102の各論理回路ブロック103_1乃至103_nと、電気的に接続されている。また、図示していないが、電源制御部108はプロセッサ100の外部から電源が供給されている。
電源制御部108は、命令解析部101または退避復帰制御部106からの命令を受けて演算部102の複数の論理回路ブロック103_1乃至103_nの電源をオン状態またはオフ状態とする。
ここで、電源制御部108には、図2(A)乃至図2(C)に示すトランジスタ110と同様に、極めてオフ電流の低いトランジスタを設けて、演算部102の電源のオン状態またはオフ状態を選択するスイッチを形成することが好ましい。これにより、演算部102の電源をオフ状態とするときに、電源制御部108と演算部102の各論理回路ブロック103_1乃至103_nとの間のリーク電流を低減し、プロセッサ100の消費電力を低減することができる。
なお電源制御部108は、演算部102以外の電源のオン状態およびオフ状態を制御できる構成としても良い。例えば、退避復帰制御部106の電源のオン状態およびオフ状態を制御できる構成とすることもできる。
なお、命令解析部101、演算部102、退避復帰制御部106、フラグ格納部107および電源制御部108の構成は、上記に限られるものではなく、これらのうち複数を一つにまとめてもよい。例えば、命令解析部101、退避復帰制御部106およびフラグ格納部107を一つにまとめるような構成とすることもできる。
ここで、プロセッサ100のパワーゲーティングの駆動方法について図4(A)乃至図4(C)を用いて説明する。図4(A)乃至図4(C)は、パワーゲーティングによるプロセッサの消費電力のタイミングチャートを表しており、縦軸が消費電力、横軸が時間を示している。図4(A)に示すタイミングチャートは、従来のパワーゲーティングの駆動方法を用いたプロセッサの消費電力を示している。図4(B)に示すタイミングチャートは、図4(A)とは異なる、従来のパワーゲーティングの駆動方法を用いたプロセッサの消費電力を示している。図4(C)に示すタイミングチャートは、本実施の形態のパワーゲーティングの駆動方法を用いたプロセッサの消費電力を示している。
図4(A)に示すように、従来のパワーゲーティングの駆動方法は、演算部で演算処理を行う通常動作期間と、プロセッサに演算部の停止命令が与えられて演算部のデータの退避を行う退避期間と、少なくとも演算部の電源がオフ状態とされる電源オフ期間と、プロセッサに演算部の起動命令が与えられて演算部のデータの復帰を行う復帰期間と、データの復帰後に次の通常動作期間と、を有する。
ここで図4(A)に示すように、退避期間においてプロセッサに演算部の停止命令が与えられてから、演算部の記憶素子のデータをまとめて退避することにより、プロセッサの消費電力が急激に増大する。このため、当該プロセッサにおいて、瞬間的な電圧降下が生じ、プロセッサの誤動作につながるおそれがある。また、復帰期間においても同様に、プロセッサに演算部の起動命令が与えられてから、演算部の記憶素子のデータをまとめて復帰させることにより、プロセッサの消費電力が急激に増大し、瞬間的な電圧降下が生じ、プロセッサの誤動作につながるおそれがある。
これに対して、例えば、図4(B)に示すように、退避期間において、プロセッサに演算部の停止命令が与えられてから、演算部の記憶素子のデータをブロックごとに逐次退避させることにより、プロセッサの消費電力の急激な増大を抑え、瞬間的な電圧降下を防ぐことができる。ただしこのようにデータの退避を行うことにより、図4(B)に示すように、退避期間が増大されるため、当該プロセッサの処理速度が低下してしまう。復帰期間においても、同様の方法で消費電力の急激な増大を抑え、瞬間的な電圧降下を防ぐことができるが、復帰期間の増大を招くことになる。
そこで図4(C)に示すように、本実施の形態のパワーゲーティングの駆動方法では、データの退避の一部を演算処理と並行して行い、且つデータの復帰の一部を演算処理と並行して行う。これにより、データの退避期間および復帰期間に消費電力が急激に増大し、瞬間的な電圧降下が発生するのを防ぎ、且つデータの退避期間および復帰期間の増大を抑制する。
つまり、本実施の形態のプロセッサのパワーゲーティングは、演算部で演算処理を行う通常動作期間と、演算部の一部におけるデータの退避と演算部の他部における演算処理とを並行して行う一次退避期間と、プロセッサに演算部の停止命令が与えられて演算部の他部におけるデータの退避を行う二次退避期間と、少なくとも演算部の電源がオフ状態とされる電源オフ期間と、プロセッサに演算部の起動命令が与えられて演算部の一部におけるデータの復帰を行う一次復帰期間と、演算部の他部におけるデータの復帰と演算部の一部における演算処理とを並行して行う二次復帰期間と、データの完全復帰後に次の通常動作期間と、を有する。
本実施の形態に示すプロセッサ100のパワーゲーティングの駆動方法では、図4(C)に示すように、演算部102を停止させるためのデータの退避を、演算部102の停止命令の前に演算部102の一部の論理回路ブロック103で揮発記憶ブロック104から不揮発記憶ブロック105にデータの退避を行い、並行して演算部102の他部の論理回路ブロック103で演算処理を行う一次退避と、演算部102の停止命令の後に、演算部102の他部の論理回路ブロック103で揮発記憶ブロック104から不揮発記憶ブロック105にデータの退避を行う二次退避と、に分割して行う。
上記のように、一次退避で演算部102の一部の論理回路ブロック103のデータの退避を行い、二次退避で演算部102の他部の論理回路ブロック103のデータの退避を行うことにより、データの退避が分割して行われるので、当該データの退避に必要となる電力も分割される。これにより、図4(A)で示したように演算部102の停止命令の後にプロセッサ100の消費電力が急激に増大するのを、防ぐことができる。よって、データ退避における、消費電力の急激な増大による瞬間的な電圧降下と、それに伴うプロセッサ100の誤動作の発生を抑制することができる。
さらに上記のように、一次退避において、演算部102の一部の論理回路ブロック103のデータの退避と、演算部102の他部の論理回路ブロック103の演算処理と、を並行して行うことにより、演算部停止の命令後(二次退避期間)に退避させなければならないデータの量を、図4(B)に示す退避処理より低減させることができる。これにより、演算部停止の命令が与えられた後のデータの退避(二次退避)に必要な時間を短縮することができる。よって、演算部停止の命令が与えられてから実際に演算部102の電源がオフ状態にされるまでの時間を短縮することができるので、プロセッサ100の処理速度の向上を図ることができる。
さらに本実施の形態に示すプロセッサ100のパワーゲーティングの駆動方法では、図4(C)に示すように、演算部102を起動させるためのデータの復帰を、演算部の起動命令に従って、演算部102の一部の論理回路ブロック103で不揮発記憶ブロック105から揮発記憶ブロック104にデータの復帰を行う一次復帰と、当該一次復帰の完了後に、演算部102の他部の論理回路ブロック103で不揮発記憶ブロック105から揮発記憶ブロック104にデータの復帰を行い、並行して演算部102の一部の論理回路ブロック103で演算処理を行う二次復帰と、に分割して行う。
上記のように、一次復帰で演算部102の一部の論理回路ブロック103のデータの復帰を行い、二次復帰で演算部102の他部の論理回路ブロック103のデータの復帰を行うことにより、データの復帰が分割して行われるので、当該データの復帰に必要となる電力も分割される。これにより、図4(A)で示したように演算部の起動命令の後にプロセッサ100の消費電力が急激に増大するのを、防ぐことができる。よって、データ復帰における、消費電力の急激な増大による瞬間的な電圧降下と、それに伴うプロセッサ100の誤動作の発生を抑制することができる。
さらに上記のように、一次復帰において、少なくとも最低限の演算処理に必要な、一部の論理回路ブロック103のデータの復帰を行い、二次復帰において、演算部102の他部の論理回路ブロック103のデータの復帰と、演算部102の一部の論理回路ブロック103の演算処理と、を並行して行うことにより、演算部起動の命令直後(一次復帰期間)に復帰させなければならないデータの量を、図4(B)に示す復帰処理より低減させることができる。これにより、演算部起動の命令が与えられた後のデータの復帰(一次復帰)に必要な時間を短縮することができる。よって、演算部起動の命令が与えられてから実際に演算部102で演算処理を行うまでの時間を短縮することができるので、プロセッサ100の処理速度の向上を図ることができる。
以上のようにして、プロセッサ100においてパワーゲーティングの駆動方法を用いることにより、データの退避期間および復帰期間に消費電力が急激に増大し、瞬間的な電圧降下が発生するのを防ぎ、且つデータの退避期間および復帰期間を短縮することができる。これにより、消費電力の低減が図られたパワーゲーティングの駆動方法において、プロセッサの誤動作を抑制し、且つプロセッサの処理速度の向上を図ることができる。
次に、パワーゲーティングを行うためのプロセッサ100の駆動方法の具体的な例について、図5乃至図8に示すブロック図および図9乃至図12に示すフローチャートを用いて説明する。図5乃至図8に示すブロック図は、プロセッサ100のパワーゲーティングの駆動方法における、命令を与える制御信号やデータ処理の流れを点線で表しており、図5は一次退避に、図6は二次退避に、図7は一次復帰に、図8は二次復帰に、それぞれ対応している。また、図9乃至図12に示すフローチャートは、プロセッサ100のパワーゲーティングの駆動方法の各ステップを示しており、図9は一次退避に、図10は二次退避に、図11は一次復帰に、図12は二次復帰に、それぞれ対応している。なお、図5乃至図8のブロック図中の点線の符号は、図9乃至図12のフローチャートの同符号のステップと対応している。
はじめに、図5に示すブロック図と図9に示すフローチャートを用いて、一次退避の詳細について説明する。なお、一次退避を開始するまで、プロセッサ100は外部から与えられる命令に従って、演算部102を用いて通常の演算処理を行っているものとする。
まず、退避復帰制御部106が第1の参照命令羅列120と命令羅列130とを比較して少なくとも一部が一致するのを確認すると、一次退避が開始される(ステップ151)。
ここで、命令羅列130は、プロセッサ100の外部から与えられる命令の履歴を羅列したものである。図5では、一次退避開始直前までに与えられた命令A乃至命令Dを命令羅列130としている。
また、第1の参照命令羅列120とは、退避復帰制御部106が有する、演算部停止の命令と、当該演算部停止の命令の前の複数の命令と、を含む命令羅列のサンプルである。ただし、第1の参照命令羅列120は、少なくとも、演算部停止の命令の前の複数の命令を含んでいればよく、必ずしも演算部停止の命令を含んでいなくても良い。図5では、演算部停止の命令の前の命令A乃至命令Gと演算部停止の命令を第1の参照命令羅列120としている。なお、第1の参照命令羅列120は、退避復帰制御部106に予め用意しておいても良いし、過去にパワーゲーティングを行ったときの命令の履歴から取得しても良い。
通常演算処理を行っているとき、退避復帰制御部106は、第1の参照命令羅列120と、プロセッサ100の外部から与えられた命令羅列130とを常に比較しており、第1の参照命令羅列120と命令羅列130とを比較して少なくとも一部が一致するのを確認すると、一次退避を開始する。図5では、第1の参照命令羅列120の命令A乃至命令Dと、命令羅列130の命令A乃至命令Dとが一致している。
退避復帰制御部106は、第1の参照命令羅列120と命令羅列130の少なくとも一部が一致すると、第1の参照命令羅列120に従って、当該ステップから演算部停止の命令がプロセッサ100に与えられるまで使用されない論理回路ブロック103を、選択する。本実施の形態では、命令Dの後の命令E乃至命令Gを参照して、当該命令で使用されない論理回路ブロック103_1乃至103_k(kは1以上n未満の整数)を選択する。
退避復帰制御部106は、選択した論理回路ブロック103_1乃至103_kに、揮発記憶ブロック104から不揮発記憶ブロック105にデータを退避させる命令を与える(ステップ152)。
このように第1の参照命令羅列120を退避復帰制御部106に有せしめることで、プロセッサ100の外部から演算部停止の命令を実際に与えられる前に、演算部102の一部の論理回路ブロック103のデータの退避を開始することができる。
論理回路ブロック103_1乃至103_kは、退避復帰制御部106の命令を受けて、それぞれ揮発記憶ブロック104から不揮発記憶ブロック105にデータを退避させる(ステップ153a)。
ここで、例えば、揮発記憶ブロック104および不揮発記憶ブロック105が図2(C)に示すような構造の場合、トランジスタ110に制御信号S1として高電位が与えられ、揮発記憶ブロック104のデータに対応する電荷が保持されたノードの電位が、不揮発記憶ブロック105のノードM1に与えられる。その後、制御信号S1の電位として低電位を与えてトランジスタ110をオフ状態とすることにより、ノードM1に与えられた電位が保持される。このようにして論理回路ブロック103_1乃至103_kにおいて、揮発記憶ブロック104から不揮発記憶ブロック105にデータが退避される。
またステップ153aと並行して、退避復帰制御部106に選択されなかった論理回路ブロック103_k+1乃至103_nは、命令解析部101の命令に従って演算処理を行う(ステップ153b)。
このように、演算部102の一部の論理回路ブロック103のデータの退避と、演算部102の他部の論理回路ブロック103の演算処理と、を並行して行うことにより、演算部停止の命令後(二次退避期間)に退避させなければならないデータの量を低減させることができる。これにより、演算部停止の命令が与えられた後のデータの退避(二次退避)に必要な時間を短縮することができる。よって、演算部停止の命令が与えられてから実際に演算部102の電源がオフ状態にされるまでの時間を短縮することができるので、プロセッサ100の処理速度の向上を図ることができる。
退避復帰制御部106は、論理回路ブロック103_1乃至103_kのデータの退避に応じて、当該論理回路ブロックの退避済みフラグをフラグ格納部107に書き込む(ステップ154)。
ただし、論理回路ブロック103_1乃至103_kの退避済みフラグの書き込みは、必ずしもステップ153aの後に行わなくてもよい。例えば、ステップ153aまたはステップ153bと並行して行っても良いし、ステップ152と並行して行っても良い。
論理回路ブロック103_1乃至103_kのデータの退避および当該論理回路ブロックの退避済みフラグの書き込みが終了すれば、一次退避が完了する。
ただし、上記データの退避において、第1の参照命令羅列120に従って演算部停止の命令がプロセッサ100に与えられるまで使用されないと判断された論理回路ブロック103も、プロセッサ100の外部から与えられる命令によっては、演算処理に使用される場合がある。すなわち、データの退避をすでに行った論理回路ブロック103_1乃至103_kのいずれかに新たなデータが書き込まれる場合がある(ステップ161)。なお、ステップ161と次のステップであるステップ162は、図5のブロック図には図示していない。
このように、データの退避をすでに行った論理回路ブロック103_1乃至103_kのいずれかに新たなデータが書き込まれた場合、新たなデータが書き込まれた論理回路ブロック103に対応する退避済みフラグを、フラグ格納部107から消去する(ステップ162)。これにより、新たなデータが書き込まれた論理回路ブロック103のデータの退避は、一次退避ではなく、二次退避において行われることになる。
例えば、ステップ153aにおいて論理回路ブロック103_1でデータの退避を行った後で、論理回路ブロック103_1に新たなデータが書き込まれた場合、論理回路ブロック103_1に対応する退避済みフラグをフラグ格納部107から消去する。論理回路ブロック103_1のデータの退避は、後述する二次退避において論理回路ブロック103_k+1乃至103_nのデータの退避とともに行う。
上記のように、論理回路ブロック103_1乃至103_kのデータの退避に応じて、当該論理回路ブロックの退避済みフラグをフラグ格納部107に書き込んでおくことにより、第1の参照命令羅列120と異なる命令が与えられた場合も、当該命令に対応する退避済みフラグを消去するだけで一次退避を続行することができる。
次に、図6に示すブロック図と図10に示すフローチャートを用いて、二次退避の詳細について説明する。
まず、命令解析部101に、プロセッサ100の外部から演算部102に停止の命令が与えられて、二次退避が開始される(ステップ155)。なお、プロセッサ100の外部から演算部102に停止の命令を受けた時点で、論理回路ブロック103_1乃至103_kのデータの退避が終わってない場合、継続して論理回路ブロック103_1乃至103_kのデータの退避を行えばよい。
命令解析部101は、当該演算部停止の命令を受けて、退避復帰制御部106に、演算部102の論理回路ブロック103のデータを退避させる命令を与える(ステップ156)。
退避復帰制御部106は、一次退避においてフラグ格納部107に書き込まれた退避済みフラグに従って、論理回路ブロック103_k+1乃至103_nに、揮発記憶ブロック104から不揮発記憶ブロック105にデータを退避させる命令を与える(ステップ157)。
本実施の形態では、上述の一次退避において、論理回路ブロック103_1乃至103_kは退避済みフラグがフラグ格納部107に書き込まれているので、データの退避が行われていない論理回路ブロック103_k+1乃至103_nにデータを退避させる命令を与える。また、上述の一次退避において、ステップ162において退避済みフラグを消去した論理回路ブロック103がある場合、当該論理回路ブロック103にもデータを退避させる命令を与える。
論理回路ブロック103_k+1乃至103_nは、退避復帰制御部106の命令を受けて、それぞれ揮発記憶ブロック104から不揮発記憶ブロック105にデータを退避させる(ステップ158)。
ここで、例えば、揮発記憶ブロック104および不揮発記憶ブロック105が図2(C)に示すような構造の場合、トランジスタ110に制御信号S1として高電位が与えられ、揮発記憶ブロック104のデータに対応する電荷が保持されたノードの電位が、不揮発記憶ブロック105のノードM1に与えられる。その後、制御信号S1の電位として低電位を与えてトランジスタ110をオフ状態とすることにより、ノードM1に与えられた電位が保持される。このようにして論理回路ブロック103_k+1乃至103_nにおいて、揮発記憶ブロック104から不揮発記憶ブロック105にデータが退避される。
以上のように、一次退避で演算部102の一部の論理回路ブロック103のデータの退避を行い、二次退避で演算部102の他部の論理回路ブロック103のデータの退避を行うことにより、データの退避が分割して行われるので、当該データの退避に必要となる電力も分割される。これにより、演算部の停止命令の後にプロセッサ100の消費電力が急激に増大するのを防ぐことができる。よって、データ退避における、消費電力の急激な増大による瞬間的な電圧降下と、それに伴うプロセッサ100の誤動作の発生を抑制することができる。
論理回路ブロック103_k+1乃至103_nのデータの退避が完了した後に、退避復帰制御部106は、電源制御部108に、演算部102の複数の論理回路ブロック103_1乃至103_nの電源をオフ状態とする命令を与える(ステップ159)。
電源制御部108は、演算部102の電源をオフ状態とする命令を受けて、演算部102の複数の論理回路ブロック103_1乃至103_nの電源をオフ状態とし、二次退避が完了する(ステップ160)。
ここで、電源制御部108に、極めてオフ電流の低いトランジスタを設けて、演算部102の電源のオン状態またはオフ状態を選択するスイッチを形成することにより、演算部102の電源をオフ状態としたときに、電源制御部108と演算部102の各論理回路ブロック103_1乃至103_nとの間のリーク電流を低減し、プロセッサの消費電力を低減することができる。
ここで、電源制御部108は、少なくとも演算部102の複数の論理回路ブロック103_1乃至103_nの電源をオフ状態とすればよく、プロセッサ100の他の部分の電源をオフ状態とすることもできる。例えば、演算部102に加えて退避復帰制御部106の電源をオフ状態とすることもできる。ただし、退避復帰制御部106の電源をオフ状態とする場合、第1の参照命令羅列120、および後述する一次復帰において用いる第2の参照命令羅列122が電源をオフ状態としたときに消去されないようにする必要がある。そのため、第1の参照命令羅列120および第2の参照命令羅列122が格納された上述の記憶部に少なくとも不揮発記憶素子が設けられている必要がある。
なお、本実施の形態では、一次退避において、演算部102の一部の論理回路ブロック103で一括してデータの退避を行う構成としたが、これに限られることなく、当該演算部102の一部の論理回路ブロック103をさらに分割し、一次退避をさらに分割して行う構成としても良い。例えば、上記論理回路ブロック103_1乃至103_kをさらに二つに分割し、それぞれについてステップ152乃至154を行う構成とすることもできる。このような構成とすることにより、データの退避に必要となる電力もさらに分割される。よって、データ退避における、消費電力の急激な増大による瞬間的な電圧降下と、それに伴うプロセッサ100の誤動作の発生をさらに抑制することができる。
次に、図7に示すブロック図と図11に示すフローチャートを用いて、一次復帰の詳細について説明する。なお、一次復帰を開始するまで、二次退避で論理回路ブロック103_1乃至103_nの電源をオフ状態として演算部102を停止させているものとする。
まず、命令解析部101に、プロセッサ100の外部から演算部起動の命令が与えられて、一次復帰が開始される(ステップ171)。
命令解析部101は、当該演算部起動の命令を受けて、電源制御部108に、演算部102の複数の論理回路ブロック103_1乃至103_nの電源をオン状態とする命令を与える(ステップ172)。
また、命令解析部101は、当該演算部起動の命令を受けて、退避復帰制御部106に、演算部102の論理回路ブロック103のデータを復帰させる命令を与える(ステップ173)。
なお、図11に示すフローチャートでは、ステップ172、ステップ173の順番で処理を行っているが、必ずしもこのように処理を行う必要はなく、例えば、ステップ172とステップ173を並行して処理しても良い。
電源制御部108は、演算部102の電源をオン状態とする命令を受けて、演算部102の複数の論理回路ブロック103_1乃至103_nの電源をオン状態とする(ステップ174)。
退避復帰制御部106は、演算部102の論理回路ブロック103のデータを復帰させる命令を受けて、第2の参照命令羅列122に従って、演算部起動の命令が与えられた後に使用される論理回路ブロック103を選択する。
ここで、第2の参照命令羅列122とは、退避復帰制御部106が有する、演算部起動の命令と、当該演算部起動の命令の後の複数の命令と、を含む命令羅列のサンプルである。ただし、第2の参照命令羅列122は、少なくとも、演算部起動の命令の後の複数の命令を含んでいればよく、必ずしも演算部起動の命令を含んでいなくても良い。図7では、演算部起動の命令と演算部起動の命令の後の命令H乃至命令Nを第2の参照命令羅列122としている。なお、第2の参照命令羅列122は、退避復帰制御部106に予め用意しておいても良いし、過去にパワーゲーティングを行ったときの命令の履歴から取得しても良い。
退避復帰制御部106が第2の参照命令羅列122を解析すると、演算部起動の命令の後で論理回路ブロック103_1乃至103_nがどのような順番で使用されるか分かるので、論理回路ブロック103のデータ復帰の優先順位を決定することができる。本実施の形態では、演算部起動の命令の後の命令H乃至命令Nを参照して、当該命令で使用される論理回路ブロック103_1乃至103_m(mは1以上n未満の整数)を選択する。なお、第2の参照命令羅列122の解析は、演算部102の論理回路ブロック103のデータを復帰させる命令を受けてから行っても良いし、予め第2の参照命令羅列122が用意されている場合には通常動作期間中などに行ってもよい。
退避復帰制御部106は、選択した論理回路ブロック103_1乃至103_mに、不揮発記憶ブロック105から揮発記憶ブロック104にデータを復帰させる命令を与える(ステップ175)。
このように第2の参照命令羅列122を退避復帰制御部106に有せしめることで、一次復帰において、少なくとも最低限の演算処理に必要な一部の論理回路ブロック103を選択してデータの復帰を行うことができ、その他の論理回路ブロック103のデータの復帰は、後の二次復帰のときに演算処理と並行して行うことができる。
これにより、演算部起動の命令が与えられた後のデータの復帰(一次復帰)に必要な時間を短縮することができる。よって、演算部起動の命令が与えられてから実際に演算部102で演算処理を行うまでの時間を短縮することができるので、プロセッサ100の処理速度の向上を図ることができる。
論理回路ブロック103_1乃至103_mは、退避復帰制御部106の命令を受けて、それぞれ不揮発記憶ブロック105から揮発記憶ブロック104にデータを復帰させる(ステップ176)。
ここで、例えば、揮発記憶ブロック104および不揮発記憶ブロック105が図2(C)に示すような構造の場合、トランジスタ113に制御信号S2として高電位が与えられ、トランジスタ112のオン状態またはオフ状態に応じた電位を、揮発記憶ブロック104のデータに対応する電荷が保持されるノードに与えることができる。このようにして論理回路ブロック103_1乃至103_mにおいて、不揮発記憶ブロック105から揮発記憶ブロック104にデータが復帰される。
退避復帰制御部106は、論理回路ブロック103_1乃至103_mのデータの復帰に応じて、当該論理回路ブロックの復帰済みフラグをフラグ格納部107に書き込む(ステップ177)。
ただし、論理回路ブロック103_1乃至103_mの復帰済みフラグの書き込みは、必ずしもステップ176の後に行わなくてもよい。例えば、ステップ175と並行して行っても良いし、ステップ176と並行して行っても良い。
論理回路ブロック103_1乃至103_mのデータの復帰が完了した後に、退避復帰制御部106は、論理回路ブロック103_1乃至103_mのデータ復帰完了の信号を命令解析部101に送る(ステップ178)。これにより、一次復帰が完了し、二次復帰が開始される。
最後に、図8に示すブロック図と図12に示すフローチャートを用いて、二次復帰の詳細について説明する。
上記論理回路ブロック103_1乃至103_mのデータ復帰完了の信号を受けて、命令解析部101は、演算部起動の命令後にプロセッサ100の外部から与えられていた命令に従って、演算部102の論理回路ブロック103_1乃至103_mに演算処理の命令を与える(ステップ179a)。
ステップ179aと並行して、退避復帰制御部106は、一次復帰においてフラグ格納部107に書き込まれた復帰済みフラグに従って、論理回路ブロック103_m+1乃至103_nに、不揮発記憶ブロック105から揮発記憶ブロック104にデータを復帰させる命令を与える(ステップ179b)。
上記命令解析部101の命令を受けて、上記一次復帰において不揮発記憶ブロック105から揮発記憶ブロック104に復帰させたデータを用いて、演算部102の論理回路ブロック103_1乃至103_mは演算処理を行う(ステップ180a)。
またステップ180aと並行して、論理回路ブロック103_m+1乃至103_nは、退避復帰制御部106の命令を受けて、それぞれ不揮発記憶ブロック105から揮発記憶ブロック104にデータを復帰させる(ステップ180b)。
ここで、例えば、揮発記憶ブロック104および不揮発記憶ブロック105が図2(C)に示すような構造の場合、トランジスタ113に制御信号S2として高電位が与えられ、トランジスタ112のオン状態またはオフ状態に応じた電位を、揮発記憶ブロック104のデータに対応する電荷が保持されるノードに与えることができる。このようにして論理回路ブロック103_m+1乃至103_nにおいて、不揮発記憶ブロック105から揮発記憶ブロック104にデータが復帰される。
以上のように、一次復帰で演算部102の一部の論理回路ブロック103のデータの復帰を行い、二次復帰で演算部102の他部の論理回路ブロック103のデータの復帰を行うことにより、データの復帰が分割して行われるので、当該データの復帰に必要となる電力も分割される。これにより演算部の起動命令の後にプロセッサ100の消費電力が急激に増大するのを、防ぐことができる。よって、データ復帰における、消費電力の急激な増大による瞬間的な電圧降下と、それに伴うプロセッサ100の誤動作の発生を抑制することができる。
退避復帰制御部106は、論理回路ブロック103_m+1乃至103_nのデータの復帰に応じて、当該論理回路ブロックの復帰済みフラグをフラグ格納部107に書き込む(ステップ181)。
ただし、論理回路ブロック103_m+1乃至103_nの復帰済みフラグの書き込みは、必ずしもステップ180bの後に行わなくてもよい。例えば、ステップ180aまたはステップ180bと並行して行っても良いし、ステップ179aまたはステップ179bと並行して行っても良い。
論理回路ブロック103_m+1乃至103_nのデータの復帰および当該論理回路ブロックの復帰済みフラグの書き込みが終了すれば、二次復帰が完了する。
ただし、上記データの復帰において、第2の参照命令羅列122に従って演算部起動の命令がプロセッサ100に与えられてから二次復帰期間中に使用されないと判断された論理回路ブロック103_m+1乃至103_nも、プロセッサ100の外部から与えられる命令によっては、二次復帰期間中に演算処理に使用される場合がある。すなわち、データの復帰がまだ行われていない、論理回路ブロック103_m+1乃至103_nのいずれかを用いて演算処理を行う命令が与えられる場合がある(ステップ182)。なお、ステップ182と次のステップであるステップ183は、図8のブロック図には図示していない。
このように、データの復帰がまだ行われていない、論理回路ブロック103_m+1乃至103_nのいずれかを用いて演算処理を行う命令が与えられた場合、当該論理回路ブロック103のデータが復帰されるまで当該演算処理を待機させる(ステップ183)。またより好ましくは、当該論理回路ブロック103において、不揮発記憶ブロック105から揮発記憶ブロック104にデータを優先的に復帰させる。
例えば、ステップ180bにおいて論理回路ブロック103_nでデータの復帰を行う前に、論理回路ブロック103_nを用いた演算処理の命令がプロセッサ100の外部から与えられた場合、論理回路ブロック103_nでデータの復帰を行うまで当該演算処理を待機させる。またより好ましくは、当該論理回路ブロック103_nにおいて、不揮発記憶ブロック105_nから揮発記憶ブロック104_nにデータを優先的に復帰させる。
上記のように、論理回路ブロック103_m+1乃至103_nのデータの復帰に応じて、当該論理回路ブロックの復帰済みフラグをフラグ格納部107に書き込んでおくことにより、第2の参照命令羅列122と異なる命令が与えられた場合も、当該復帰済みフラグと比較することで、当該命令で使用する論理回路ブロック103のデータが復帰済みかどうか容易に判断することができる。
以上のようにして、論理回路ブロック103_m+1乃至103_nのデータの復帰が完了すれば、二次復帰が完了する。二次復帰完了後、プロセッサ100は外部から与えられる命令に従って演算部102を用いて通常の演算処理を行う、通常動作に移行する。
なお、本実施の形態では、一次復帰において、演算部102の一部の論理回路ブロック103で一括してデータの復帰を行う構成としたが、これに限られることなく、当該演算部102の一部の論理回路ブロック103をさらに分割し、一次復帰をさらに分割して行う構成としても良い。例えば、上記論理回路ブロック103_1乃至103_mをさらに二つに分割し、それぞれについてステップ175乃至177を行う構成とすることもできる。このような構成とすることにより、データの復帰に必要となる電力もさらに分割される。よって、データ復帰における、消費電力の急激な増大による瞬間的な電圧降下と、それに伴うプロセッサ100の誤動作の発生をさらに抑制することができる。
以上のようにして、パワーゲーティングの駆動方法を用いることにより、データの退避期間および復帰期間に消費電力が急激に増大し、瞬間的な電圧降下が発生するのを防ぎ、且つデータの退避期間および復帰期間を短縮することができる。これにより、消費電力の低減が図られたパワーゲーティングの駆動方法において、プロセッサの誤動作を抑制し、且つプロセッサの処理速度の向上を図ることができる。
以上、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
(実施の形態2)
本実施の形態においては、先の実施の形態に示すプロセッサの不揮発記憶ブロックの作製方法の一例について、図13乃至図17を用いて説明する。例として図2(B)に示す不揮発記憶ブロック105のトランジスタ110およびトランジスタ112の作製方法について説明する。なお、図13乃至図16において、A−Bに示す断面図は、ワイドバンドギャップ半導体として酸化物半導体を有するトランジスタ110、n型のトランジスタ112が形成される領域の断面図に相当し、C−Dに示す断面図は、酸化物半導体膜を有するトランジスタ110のドレイン電極(またはソース電極)とn型のトランジスタ112のゲート電極とが接続されたノードFGにおける断面図に相当する。
なお、図2(B)に示す揮発記憶ブロック104を構成するトランジスタは、トランジスタ112と同様の材料および同様の方法で形成することができる。また、図2(C)に示す構造とする場合、トランジスタ113も、トランジスタ112と同様の材料および同様の方法で形成することができる。
まず、図13(A)に示すように、p型の半導体基板201に素子分離領域203を形成する。
p型の半導体基板201としては、p型の導電型を有する単結晶シリコン基板(シリコンウェハー)、化合物半導体基板(SiC基板、GaN基板等)を用いることができる。
また、p型の半導体基板201の代わりに、SOI(Silicon On Insulator)基板として、鏡面研磨ウェハーに酸素イオンを注入した後、高温加熱することにより、表面から一定の深さに酸化層を形成させるとともに、表面層に生じた欠陥を消滅させて作られた所謂SIMOX(Separation by IMplanted OXygen)基板や、水素イオン注入により形成された微小ボイドの熱処理による成長を利用して半導体基板を劈開するスマートカット法や、ELTRAN法(Epitaxial Layer Transfer:キャノン社の登録商標)等を用いて形成したSOI基板を用いてもよい。
素子分離領域203は、LOCOS(Local Oxidation of Silicon)法またはSTI(Shallow Trench Isolation)法等を用いて形成する。
また、同一基板上にp型のトランジスタを形成する場合、p型の半導体基板201の一部にnウェル領域を形成してもよい。nウェル領域は、リン、ヒ素等のn型を付与する不純物元素を添加して形成される。
なお、ここでは、半導体基板201としてp型半導体基板を用いているが、n型の半導体基板を用いて、p型のトランジスタを形成してもよい。その場合、n型の半導体基板にp型を付与するホウ素等の不純物元素が添加されたpウェル領域を形成して、同一基板上にn型のトランジスタを形成してもよい。
次に、図13(B)に示すように、半導体基板201上にゲート絶縁膜207およびゲート電極209を形成する。
熱処理を行い半導体基板201の表面を酸化した酸化シリコン膜を形成する。または、熱酸化法により酸化シリコン膜を形成した後に、窒化処理を行うことによって酸化シリコン膜の表面を窒化させることにより、酸化シリコン膜と酸素と窒素を有するシリコン膜(酸化窒化シリコン膜)との積層構造で形成する。次に、酸化シリコン膜または酸窒化シリコン膜の一部を選択的にエッチングして、ゲート絶縁膜207を形成する。若しくは、厚さ5〜50nmの酸化シリコン、酸化窒化シリコン、高誘電率物質(high−k材料ともいう)であるタンタル酸化物、酸化ハフニウム、酸化ハフニウムシリケート、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化チタンなどの金属酸化物、または酸化ランタンなどの希土類酸化物等を、CVD法、スパッタリング法等を用いて形成した後、選択的に一部をエッチングして、ゲート絶縁膜207を形成する。
ゲート電極209は、タンタル、タングステン、チタン、モリブデン、クロム、ニオブ等から選択された金属、またはこれらの金属を主成分とする合金材料若しくは化合物材料を用いることが好ましい。また、リン等の不純物を添加した多結晶シリコンを用いることができる。また、金属窒化物膜と上記の金属膜の積層構造でゲート電極209を形成してもよい。金属窒化物としては、窒化タングステン、窒化モリブデン、窒化チタンを用いることができる。金属窒化物膜を設けることにより、金属膜の密着性を向上させることができ、剥離を防止することができる。
ゲート電極209は、導電膜をスパッタリング法、CVD法等により形成した後、該導電膜の一部を選択的にエッチングして形成される。
ここでは、熱処理を行い、半導体基板201の表面を酸化した酸化シリコン膜を形成し、該酸化シリコン膜上に窒化タンタル膜及びタングステン膜が積層された導電膜をスパッタリング法により形成した後、酸化シリコン膜及び導電膜のそれぞれ一部を選択的にエッチングして、ゲート絶縁膜207およびゲート電極209を形成する。
なお、高集積化を実現するためには、ゲート電極209の側面にサイドウォール絶縁層を有しない構成とすることが望ましい。一方で、トランジスタの特性を重視する場合には、ゲート電極209の側面にサイドウォール絶縁層を設けることもできる。
次に、図13(C)に示すように、半導体基板201にn型を付与する不純物元素を添加して、n型の不純物領域211a、n型の不純物領域211bを形成する。また、同一基板上にnウェル領域を形成している場合、当該領域にp型を付与する不純物元素を添加してp型の不純物領域を形成する。n型の不純物領域211a、n型の不純物領域211bおよびp型の不純物領域におけるn型を付与する不純物元素及びp型を付与する不純物元素の濃度は、1×1019atoms/cm3以上1×1021atoms/cm3以下とすることが好ましい。n型を付与する不純物元素及びp型を付与する不純物元素は、イオンドーピング法、イオン注入法等を適宜用いて、半導体基板201及びnウェル領域に添加する。
また、ゲート電極209の側面にサイドウォール絶縁層を設ける場合、当該サイドウォール絶縁層と重畳する領域に、n型の不純物領域211a、n型の不純物領域211bおよびp型の不純物領域とは異なる不純物濃度の不純物領域を形成することができる。
次に、図13(D)に示すように、半導体基板201、素子分離領域203、ゲート絶縁膜207およびゲート電極209上に、スパッタリング法、CVD法等により、絶縁膜215および絶縁膜217を形成する。
絶縁膜215および絶縁膜217は、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、窒化酸化アルミニウム、窒化アルミニウムなどを用いればよく、積層または単層で設ける。なお、絶縁膜215をCVD法により形成することで、絶縁膜215の水素含有量が高まる。このような絶縁膜215を用いて加熱処理を行うことにより、半導体基板を水素化し、水素によりダングリングボンドを終端させ、当該半導体基板中の欠陥を低減することができる。
また、絶縁膜217として、BPSG(Borophosphosilicate Glass)などの無機材料、または、ポリイミド、アクリルなどの有機材料を用いて形成することで、絶縁膜217の平坦性を高めることができる。
絶縁膜215または絶縁膜217を形成した後、n型の不純物領域211a、n型の不純物領域211bおよびp型の不純物領域に添加された不純物元素を活性化するための熱処理を行う。
以上の工程により、図13(D)に示すように、n型のトランジスタ112を作製することができる。ここで、トランジスタ112は、単結晶シリコンなどの酸化物半導体とは異なる半導体を用いて形成されるので、十分な高速動作が可能となる。これにより、十分高速なアクセスが可能なプロセッサの記憶ブロックを形成することができる。
次に、絶縁膜215および絶縁膜217の一部を選択的にエッチングして、開口部を形成する。次に、開口部にコンタクトプラグ219aおよびコンタクトプラグ219bを形成する。代表的には、スパッタリング法、CVD法等により導電膜を形成した後、CMP(Chemical Mechanical Polishing)法やエッチングなどにより平坦化処理を行い、導電膜の不要な部分を除去して、導電膜を形成する。
コンタクトプラグ219aおよびコンタクトプラグ219bとなる導電膜は、WF6ガスとSiH4ガスからCVD法でタングステンシリサイドを形成し、開口部に埋め込むことで形成される。
次に、絶縁膜217及びコンタクトプラグ219aおよびコンタクトプラグ219b上に、スパッタリング法、CVD法等により絶縁膜を形成した後、該絶縁膜の一部を選択的にエッチングし、溝部を有する絶縁膜221を形成する。次に、スパッタリング法、CVD法等により導電膜を形成した後、CMP法やエッチングなどにより平坦化処理を行い、該導電膜の不要な部分を除去して、配線223aおよび配線223bを形成する(図14(A)参照)。
絶縁膜221は、絶縁膜215と同様の材料を用いて形成することができる。
配線223aおよび配線223bとして、アルミニウム、チタン、クロム、ニッケル、銅、イットリウム、ジルコニウム、モリブデン、銀、タンタル、またはタングステンからなる単体金属、またはこれを主成分とする合金を単層構造または積層構造として用いる。例えば、シリコンを含むアルミニウム膜の単層構造、アルミニウム膜上にチタン膜を積層する二層構造、タングステン膜上にチタン膜を積層する二層構造、銅−マグネシウム−アルミニウム合金膜上に銅膜を積層する二層構造、チタン膜と、そのチタン膜上に重ねてアルミニウム膜を積層し、さらにその上にチタン膜を形成する三層構造などがある。なお、酸化インジウム、酸化錫または酸化亜鉛を含む透明導電材料を用いてもよい。
次に、絶縁膜221、配線223aおよび配線223b上にスパッタリング法、CVD法等により絶縁膜220を形成して、当該絶縁膜220上に、スパッタリング法、CVD法等により絶縁膜を形成した後、該絶縁膜の一部を選択的にエッチングし、溝部を有する絶縁膜222を形成する。次に、スパッタリング法、CVD法等により導電膜を形成した後、CMP法やエッチングなどにより平坦化処理を行い、該導電膜の不要な部分を除去して、電極224を形成する(図14(B)参照)。
ここで、絶縁膜220および絶縁膜222は、絶縁膜215と同様の材料を用いて形成することができる。ただし、絶縁膜220は絶縁膜222のエッチングに対して選択性が高い材料とすることが好ましい。
ここで、電極224は、後述するトランジスタ110のバックゲート電極として機能する電極である。このような電極224を設けることにより、トランジスタ110のしきい値電圧の制御を行うことができる。電極224は、電気的に絶縁しているフローティングの状態であっても良いし、電位が他から与えられている状態であっても良い。トランジスタ110のしきい値電圧の制御に応じて適宜設定することができる。なお、電極224の材料としては、後述するゲート電極233と同様の材料を用いることができる。
なお、本実施の形態では、電極224を配線223aおよび配線223b上に設ける構成としているが、これに限られることなく、例えば、電極224を配線223aおよび配線223bと同じ導電層で形成する構成としても良い。
平坦化された絶縁膜222、電極224を用いることで、後に形成する酸化物半導体膜を有するトランジスタにおける電気特性のばらつきを低減することができる。また、酸化物半導体膜を有するトランジスタを歩留まり高く形成することができる。
次に、加熱処理またはプラズマ処理により、絶縁膜221、配線223a、配線223b、絶縁膜220、絶縁膜222および電極224に含まれる水素を脱離させることが好ましい。この結果、後の加熱処理において、後に形成される絶縁膜及び酸化物半導体膜中に水素が拡散することを防ぐことができる。なお、加熱処理は、不活性雰囲気、減圧雰囲気または乾燥空気雰囲気にて、100℃以上基板の歪み点未満で行う。また、プラズマ処理は、希ガス、酸素、窒素または酸化窒素(亜酸化窒素、一酸化窒素、二酸化窒素など)を用いる。
次に、絶縁膜222および電極224上に、スパッタリング法、CVD法等により、絶縁膜225を形成する。絶縁膜225としては、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、酸化ガリウム、酸化ハフニウム、酸化イットリウム、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウムを単層または積層して形成する。また、絶縁膜225として、加熱により酸素の一部が脱離する酸化絶縁膜を用いて形成することが好ましい。加熱により酸素の一部が脱離する酸化絶縁膜としては、化学量論比を満たす酸素よりも多くの酸素を含む酸化絶縁膜を用いる。加熱により酸素の一部が脱離する酸化絶縁膜は、加熱により酸素が脱離するため、後の工程で行う加熱により酸化物半導体膜に酸素を拡散させることができる。
また、絶縁膜225を積層構造とする場合、下側の絶縁膜を下層から拡散される不純物の混入を防ぐ、バリア膜として機能する絶縁膜とすることが好ましい。特に半導体基板201として単結晶シリコン基板、SOI基板、またはシリコンなどの半導体素子が設けられた基板などを用いる場合、基板に含まれる水素などが拡散して後に形成される酸化物半導体膜に混入するのを防ぐことができる。このような絶縁膜としては、例えば、プラズマCVD法またはスパッタリング法等を用いて成膜した、窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜、または酸化アルミニウム膜などを用いることができる。
また、絶縁膜225は、CMP処理などを行って平坦化を図ることが望ましい。絶縁膜225の表面の平均面粗さ(Ra)は、1nm以下、好ましくは0.3nm以下、より好ましくは0.1nm以下とする。
なお、本明細書などにおいて平均面粗さ(Ra)とは、JISB0601:2001(ISO4287:1997)で定義されている算術平均粗さ(Ra)を、曲面に対して適用できるよう三次元に拡張したものであり、基準面から指定面までの偏差の絶対値を平均した値で表現される。
平均面粗さ(Ra)は、測定データの示す面である指定面をZ=F(X,Y)で表すとき、基準面から指定面までの偏差の絶対値を平均した値で表現され、次の式で与えられる。
ここで、指定面とは、粗さ計測の対象となる面であり、座標(x1,y1,f(x1,y1)),(x1,y2,f(x1,y2)),(x2,y1,f(x2,y1)),(x2,y2,f(x2,y2))の4点で表される四角形の領域とし、指定面をxy平面に投影した長方形の面積をS0、基準面の高さ(指定面の平均の高さ)をZ0とする。平均面粗さ(Ra)は原子間力顕微鏡(AFM:Atomic Force Microscope)にて測定可能である。
上記CMP処理は、1回行ってもよいし、複数回行ってもよい。複数回に分けてCMP処理を行う場合は、高い研磨レートの一次研磨を行った後、低い研磨レートの仕上げ研磨を行うのが好ましい。このように研磨レートの異なる研磨を組み合わせることによって、絶縁膜225の表面の平坦性をさらに向上させることができる。
また、絶縁膜225を平坦化させる処理としては、プラズマ処理を用いることもできる。プラズマ処理は、真空のチャンバーに不活性ガス、例えばアルゴンガスなどの希ガスを導入し、被処理面を陰極とする電界をかけて行う。その原理としてはプラズマドライエッチ法と同等であるが、不活性ガスを用いて行う。すなわち、このプラズマ処理は、被処理面に不活性ガスのイオンを照射して、スパッタリング効果により表面の微細な凹凸を平坦化する処理である。このことから、当該プラズマ処理を「逆スパッタ処理」と呼ぶこともできる。
このプラズマ処理時、プラズマ中には電子とアルゴンの陽イオンが存在し、陰極方向にアルゴンの陽イオンが加速される。加速されたアルゴンの陽イオンは被処理面をスパッタする。このとき、該被処理面の凸部から優先的にスパッタされる。被処理面からスパッタされた粒子は、被処理面の別の場所に付着する。このとき、該被処理面の凹部に優先的に付着する。このように凸部を削り、凹部を埋めることで被処理面の平坦性が向上する。なお、プラズマ処理とCMP処理と併用することにより絶縁膜225のさらなる平坦化を図ることができる。
なお、当該プラズマ処理によって、絶縁膜225表面に付着した酸素、水分、有機物などの不純物をスパッタリングの効果で除去することも可能である。
なお、酸化物半導体の成膜を行う前に、処理室の加熱および排気を行って、処理室中の水素、水、水酸基、水素化物などの不純物を除去しておくことが好ましい。特に処理室の内壁に吸着して存在するこれらの不純物を除去することが重要である。ここで、加熱処理は、例えば、100℃以上450℃以下で行えばよい。また、処理室の排気は、ドライポンプなどの粗引きポンプと、スパッタイオンポンプ、ターボ分子ポンプ及びクライオポンプなどの高真空ポンプとを適宜組み合わせて行うとよい。ターボ分子ポンプは大きいサイズの分子の排気が優れる一方、水素や水の排気能力が低い。さらに、水の排気能力の高いクライオポンプまたは水素の排気能力の高いスパッタイオンポンプを組み合わせることが有効となる。またこのとき、不活性ガスを導入しながら不純物の除去を行うと、排気するだけでは脱離しにくい水などの脱離速度をさらに大きくすることができる。このような処理を行って酸化物半導体の成膜前に処理室の不純物を除去することにより、酸化物半導体への水素、水、水酸基、水素化物などの混入を低減することができる。
また、酸化物半導体膜をスパッタリング装置で成膜する前に、スパッタリング装置にダミー基板を搬入し、ダミー基板上に酸化物半導体膜を成膜して、ターゲット表面、または防着板に付着した水素、水分を取り除く工程を行ってもよい。
次に、絶縁膜225上に、スパッタリング法、塗布法、印刷法、蒸着法、PCVD法、PLD法、ALD法またはMBE法等を用いて酸化物半導体膜227を形成する(図14(C)参照)。ここでは、酸化物半導体膜227として、スパッタリング法により、1nm以上50nm以下、好ましくは3nm以上20nm以下の厚さで酸化物半導体膜を形成する。酸化物半導体膜227の厚さを上記厚さとすることで、トランジスタの微細化に伴って発生するおそれのある短チャネル効果を抑制することができる。
酸化物半導体膜227に用いる酸化物半導体としては、少なくともインジウム(In)あるいは亜鉛(Zn)を含むことが好ましい。特にInとZnを含むことが好ましい。また、該酸化物半導体を用いたトランジスタの電気特性のばらつきを減らすためのスタビライザーとして、それらに加えてガリウム(Ga)を有することが好ましい。また、スタビライザーとしてスズ(Sn)を有することが好ましい。また、スタビライザーとしてハフニウム(Hf)を有することが好ましい。
また、他のスタビライザーとして、ランタノイドである、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)のいずれか一種あるいは複数種を有してもよい。
例えば、酸化物半導体として、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、In−Zn酸化物、Sn−Zn酸化物、Zn−Mg酸化物、Sn−Mg酸化物、In−Mg酸化物、In−Ga酸化物、In−Ga−Zn酸化物(IGZOとも表記する)、In−Sn−Zn酸化物、Sn−Ga−Zn酸化物、In−Hf−Zn酸化物、In−La−Zn酸化物、In−Ce−Zn酸化物、In−Pr−Zn酸化物、In−Nd−Zn酸化物、In−Sm−Zn酸化物、In−Eu−Zn酸化物、In−Gd−Zn酸化物、In−Tb−Zn酸化物、In−Dy−Zn酸化物、In−Ho−Zn酸化物、In−Er−Zn酸化物、In−Tm−Zn酸化物、In−Yb−Zn酸化物、In−Lu−Zn酸化物、In−Sn−Ga−Zn酸化物、In−Hf−Ga−Zn酸化物、In−Sn−Hf−Zn酸化物を用いることができる。また、上記酸化物半導体に酸化シリコンを含んでもよい。ここで、例えば、In−Ga−Zn酸化物とは、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、亜鉛(Zn)を主成分として有する酸化物という意味であり、InとGaとZnの比率は問わない。また、InとGaとZn以外の金属元素が入っていてもよい。このとき、上記酸化物半導体においては、化学量論比に対し、酸素を過剰にすると好ましい。酸素を過剰にすることで酸化物半導体膜の酸素欠損に起因するキャリアの生成を抑制することができる。
また、酸化物半導体として、InMO3(ZnO)m(m>0、且つ、mは整数でない)で表記される材料を用いてもよい。なお、Mは、Ga、Fe、Mn及びCoから選ばれた一の金属元素または複数の金属元素を示す。また、酸化物半導体として、In2SnO5(ZnO)n(n>0、且つ、nは整数)で表記される材料を用いてもよい。
なお、酸化物半導体膜227において、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の濃度は、1×1018atoms/cm3以下、さらに好ましくは2×1016atoms/cm3以下であることが望ましい。アルカリ金属及びアルカリ土類金属は、酸化物半導体と結合するとキャリアが生成されることがあり、トランジスタのオフ電流の上昇の原因となるためである。
また、酸化物半導体膜227には、5×1018atoms/cm3以下の窒素が含まれてもよい。
なお、酸化物半導体膜227に用いることが可能な酸化物半導体は、シリコン半導体よりもバンドギャップが広く、真性キャリア密度がシリコンよりも低い、ワイドバンドギャップ半導体とする。例えば、当該ワイドバンドギャップ半導体のバンドギャップは、2.5eV以上4eV以下、好ましくは3eV以上3.8eV以下とすればよい。このように、エネルギーギャップの広い酸化物半導体を用いることで、トランジスタのオフ電流を低減することができる。
酸化物半導体膜227は、単結晶構造であってもよいし、非単結晶構造であってもよい。後者の場合、アモルファス構造でも、多結晶構造でもよい。また、アモルファス中に結晶性を有する部分を含む構造でも、非アモルファス構造でもよい。
アモルファス状態の酸化物半導体は、比較的容易に平坦な表面を得ることができるため、これを用いてトランジスタを作製した際の界面散乱を低減でき、比較的容易に、比較的高い移動度を得ることができる。
また、結晶性を有する酸化物半導体では、よりバルク内欠陥を低減することができ、表面の平坦性を高めればアモルファス状態の酸化物半導体以上の移動度を得ることができる。表面の平坦性を高めるためには、平坦な表面上に酸化物半導体を形成することが好ましく、上述のように、絶縁膜225の表面の平均面粗さ(Ra)を、1nm以下、好ましくは0.3nm以下、より好ましくは0.1nm以下とし、その上に酸化物半導体膜227を形成することが好ましい。
ここでは、酸化物半導体膜227をスパッタリング法により形成する。ターゲットとしては、上記酸化物に対応したものを用いることができる。
酸化物半導体としてIn−Ga−Zn−O系の材料を用いる場合、ターゲットは上記の酸化物半導体膜227の材料およびその組成に合わせて適宜設定すればよい。例えば、In:Ga:Zn=1:1:1、In:Ga:Zn=1:3:2、In:Ga:Zn=3:1:2、あるいはIn:Ga:Zn=2:1:3の原子数比のIn−Ga−Zn酸化物やその組成の近傍の酸化物をターゲットとして用いるとよい。ただし、ターゲットは、これらの材料及び組成に限定されるものではない。
しかし、これらに限られず、必要とする半導体特性(移動度、しきい値、ばらつき等)に応じて適切な組成のものを用いればよい。また、必要とする半導体特性を得るために、キャリア濃度や不純物濃度、欠陥密度、金属元素と酸素の原子数比、原子間距離、密度等を適切なものとすることが好ましい。また、組成に代表されるこれらの条件が互いに異なる酸化物半導体膜を、積層する構成としても良いし、チャネル形成領域とソース領域およびドレイン領域とに適宜設ける構成としても良い。
なお、スパッタリングガスは、希ガス(代表的にはアルゴン)雰囲気、酸素雰囲気、希ガス及び酸素の混合ガスを適宜用いる。なお、希ガス及び酸素の混合ガスの場合、希ガスに対して酸素のガス比を高めることが好ましい。また、スパッタリングガスは、酸化物半導体膜への水素、水、水酸基、水素化物などの混入を防ぐために、水素、水、水酸基、水素化物などの不純物が十分に除去された高純度ガスを用いた雰囲気とすることが望ましい。
スパッタリング法において、プラズマを発生させるための電源装置は、RF電源装置、AC電源装置、DC電源装置等を適宜用いることができる。
なお、酸化物半導体膜を成膜する処理室は、リークレートを1×10−10Pa・m3/秒以下とすることが好ましく、それによりスパッタリング法により成膜する際、膜中への不純物の混入を低減することができる。このように、酸化物半導体膜の成膜工程において、更に好ましくは酸化絶縁膜の成膜工程において、処理室の圧力、処理室のリークレートなどにおいて、不純物の混入を極力抑えることによって、酸化物半導体膜に含まれる水素を含む不純物の混入を低減することができる。また、酸化絶縁膜から酸化物半導体膜への水素などの不純物の拡散を低減することができる。
また、酸化物半導体膜227として、結晶部分を有するCAAC−OS(C Axis Aligned Crystalline Oxide Semiconductor)膜を用いてもよい。
酸化物半導体膜227は、例えば非単結晶を有してもよい。非単結晶は、例えば、CAAC(C Axis Aligned Crystal)、多結晶、微結晶、非晶質を有する。非晶質は、微結晶、CAACよりも欠陥準位密度が高い。また、微結晶は、CAACよりも欠陥準位密度が高い。なお、CAACを有する酸化物半導体を、CAAC−OS(C Axis Aligned Crystalline Oxide Semiconductor)と呼ぶ。
また、酸化物半導体膜227は、例えばCAAC−OSを有してもよい。CAAC−OSは、例えば、c軸配向し、a軸または/およびb軸はマクロに揃っていない。
酸化物半導体膜227は、例えば微結晶を有してもよい。なお、微結晶を有する酸化物半導体を、微結晶酸化物半導体と呼ぶ。微結晶酸化物半導体膜は、例えば、1nm以上10nm未満のサイズの微結晶(ナノ結晶ともいう。)を膜中に含む。
酸化物半導体膜227は、例えば非晶質を有してもよい。なお、非晶質を有する酸化物半導体を、非晶質酸化物半導体と呼ぶ。非晶質酸化物半導体膜は、例えば、原子配列が無秩序であり、結晶成分を有さない。または、非晶質酸化物半導体膜は、例えば、完全な非晶質であり、結晶部を有さない。
なお、酸化物半導体膜227が、CAAC−OS、微結晶酸化物半導体、非晶質酸化物半導体の混合膜であってもよい。混合膜は、例えば、非晶質酸化物半導体の領域と、微結晶酸化物半導体の領域と、CAAC−OSの領域と、を有する。また、混合膜は、例えば、非晶質酸化物半導体の領域と、微結晶酸化物半導体の領域と、CAAC−OSの領域と、の積層構造を有してもよい。
なお、酸化物半導体膜227は、例えば、単結晶を有してもよい。
酸化物半導体膜227は、複数の結晶部を有し、当該結晶部のc軸が被形成面の法線ベクトルまたは表面の法線ベクトルに平行な方向に揃っていることが好ましい。なお、異なる結晶部間で、それぞれa軸およびb軸の向きが異なっていてもよい。そのような酸化物半導体膜の一例としては、CAAC−OS膜がある。
CAAC−OSに含まれる結晶部は、一辺が100nm未満の立方体内に収まる大きさであることが多い。また、透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)による観察像では、CAAC−OS膜に含まれる非晶質部と結晶部との境界、結晶部と結晶部との境界は明確ではない。また、TEMによってCAAC−OS膜には明確な粒界(グレインバウンダリーともいう。)は確認できない。そのため、CAAC−OS膜は、粒界に起因する電子移動度の低下が抑制される。
CAAC−OS膜に含まれる結晶部は、例えば、c軸がCAAC−OS膜の被形成面の法線ベクトルまたは表面の法線ベクトルに平行な方向になるように揃い、かつab面に垂直な方向から見て金属原子が三角形状または六角形状に配列し、c軸に垂直な方向から見て金属原子が層状または金属原子と酸素原子とが層状に配列している。なお、異なる結晶部間で、それぞれa軸およびb軸の向きが異なっていてもよい。本明細書において、単に垂直と記載する場合、80°以上100°以下、好ましくは85°以上95°以下の範囲も含まれることとする。また、単に平行と記載する場合、−10°以上10°以下、好ましくは−5°以上5°以下の範囲も含まれることとする。
なお、CAAC−OS膜において、結晶部の分布が一様でなくてもよい。例えば、CAAC−OS膜の形成過程において、酸化物半導体膜の表面側から結晶成長させる場合、被形成面の近傍に対し表面の近傍では結晶部の占める割合が高くなることがある。また、CAAC−OS膜へ不純物を添加することにより、当該不純物添加領域において結晶部が非晶質化することもある。
CAAC−OS膜に含まれる結晶部のc軸は、CAAC−OS膜の被形成面の法線ベクトルまたは表面の法線ベクトルに平行な方向になるように揃うため、CAAC−OS膜の形状(被形成面の断面形状または表面の断面形状)によっては互いに異なる方向を向くことがある。なお、結晶部のc軸の方向は、CAAC−OS膜が形成されたときの被形成面の法線ベクトルまたは表面の法線ベクトルに平行な方向になるように揃っている。結晶部は、成膜することにより、または成膜後に加熱処理などの結晶化処理を行うことにより形成される。
CAAC−OS膜を用いたトランジスタは、可視光や紫外光の照射による電気特性の変動が小さい。よって、当該トランジスタは、信頼性が高い。
なお、酸化物半導体膜を構成する酸素の一部は窒素で置換されてもよい。
また、CAAC−OSのように結晶部を有する酸化物半導体では、よりバルク内欠陥を低減することができ、表面の平坦性を高めればアモルファス状態の酸化物半導体以上の移動度を得ることができる。表面の平坦性を高めるためには、平坦な表面上に酸化物半導体を形成することが好ましく、具体的には、平均面粗さ(Ra)が1nm以下、好ましくは0.3nm以下、より好ましくは0.1nm以下の表面上に形成するとよい。
酸化物半導体膜227をCAAC−OSとする場合は、酸化物半導体膜227を成膜する際に、基板温度が200℃を超えて700℃以下、好ましくは300℃を超えて500℃以下、より好ましくは400℃以上450℃以下となるように、基板を加熱する。このように、基板を加熱しながら酸化物半導体膜227を成膜することにより、酸化物半導体膜227をCAAC−OSとすることができる。
また、上記の温度範囲で加熱しながら、一原子層以上10nm以下、好ましくは2nm以上5nm以下の薄い膜厚の第1の酸化物半導体膜を成膜したのち、同様の方法で加熱しながらさらに厚い膜厚の第2の酸化物半導体膜を成膜し、第1の酸化物半導体膜と第2の酸化物半導体膜を積層して、CAAC−OSの酸化物半導体膜227を形成しても良い。
また、酸化物半導体膜227を非晶質構造とする場合は、酸化物半導体膜227を成膜する際に、基板の加熱を行わない、または基板温度を200℃未満、より好ましくは180℃未満として基板を加熱する。このように、酸化物半導体膜227を成膜することにより、酸化物半導体膜227を非晶質構造とすることができる。
また、上記の方法で酸化物半導体膜を非晶質構造として成膜した後、250℃以上700℃以下、好ましくは400℃以上、より好ましくは500℃以上、さらに好ましくは550℃以上の温度で加熱処理を行って、当該非晶質構造の酸化物半導体膜の少なくとも一部を結晶化し、CAAC−OSの酸化物半導体膜227を形成しても良い。なお、当該熱処理は不活性ガス雰囲気下で行うことができる。不活性ガス雰囲気としては、窒素、または希ガス(ヘリウム、ネオン、アルゴン等)を主成分とする雰囲気であって、水、水素などが含まれない雰囲気を適用するのが望ましい。例えば、熱処理装置に導入する窒素や、ヘリウム、ネオン、アルゴン等の希ガスの純度を、6N(99.9999%)以上、好ましくは7N(99.99999%)以上(すなわち、不純物濃度が1ppm以下、好ましくは0.1ppm以下)とする。また、当該熱処理は、後述する脱水化または脱水素化の熱処理などで兼ねることも可能である。
以上の方法において、成膜時の基板加熱温度が高いほど、得られる酸化物半導体膜227の不純物濃度は低くなる。また、酸化物半導体膜227中の原子配列が整い、高密度化され、多結晶またはCAAC−OSが形成されやすくなる。さらに、酸素ガス雰囲気で成膜することでも、希ガスなどの余分な原子が含まれないため、多結晶またはCAAC−OSが形成されやすくなる。ただし、酸素ガスと希ガスの混合雰囲気としてもよく、その場合は酸素ガスの割合は30体積%以上、好ましくは50体積%以上、さらに好ましくは80体積%以上とする。
酸化物半導体膜227形成後、酸化物半導体膜227に対して、熱処理(第1の加熱処理)を行ってもよい。熱処理を行うことによって、酸化物半導体膜227中に含まれる水素原子を含む物質をさらに除去し、酸化物半導体膜227の構造を整え、エネルギーギャップ中の欠陥準位を低減することができる。当該熱処理は不活性ガス雰囲気下で行い、熱処理の温度は、300℃以上700℃以下、好ましくは450℃以上600℃以下、また、基板が歪み点を有する場合は基板の歪み点未満とする。不活性ガス雰囲気としては、窒素、または希ガス(ヘリウム、ネオン、アルゴン等)を主成分とする雰囲気であって、水、水素などが含まれない雰囲気を適用するのが望ましい。例えば、熱処理装置に導入する窒素や、ヘリウム、ネオン、アルゴン等の希ガスの純度を、6N(99.9999%)以上、好ましくは7N(99.99999%)以上(すなわち、不純物濃度が1ppm以下、好ましくは0.1ppm以下)とする。
当該熱処理は、例えば、抵抗発熱体などを用いた電気炉に半導体基板201を導入し、窒素雰囲気下、450℃、1時間の条件で行うことができる。
また、熱処理装置は電気炉に限られず、加熱されたガスなどの媒体からの熱伝導、または熱輻射によって、被処理物を加熱する装置を用いても良い。例えば、LRTA(Lamp Rapid Thermal Annealing)装置、GRTA(Gas Rapid Thermal Annealing)装置等のRTA(Rapid Thermal Annealing)装置を用いることができる。LRTA装置は、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、キセノンアークランプ、カーボンアークランプ、高圧ナトリウムランプ、高圧水銀ランプなどのランプから発する光(電磁波)の輻射により、被処理物を加熱する装置である。GRTA装置は、高温のガスを用いて熱処理を行う装置である。ガスとしては、アルゴンなどの希ガス、または窒素のような、熱処理によって被処理物と反応しない不活性気体が用いられる。なお、加熱処理装置としてGRTA装置を用いる場合には、その熱処理時間が短いため、650℃〜700℃の高温に加熱した不活性ガス中で基板を加熱してもよい。
また、上記熱処理で酸化物半導体膜227を加熱した後、同じ炉に高純度の酸素ガス、高純度のN2Oガス、又は超乾燥エア(CRDS(キャビティリングダウンレーザー分光法)方式の露点計を用いて測定した場合の水分量が20ppm(露点換算で−55℃)以下、好ましくは1ppm以下、好ましくは10ppb以下の空気)とすることが好ましい。特にこれらのガスには、水、水素などが含まれないことが好ましい。また、同じ炉に導入する酸素ガスまたはN2Oガスの純度を、6N以上好ましくは7N以上(即ち不純物濃度を1ppm以下、好ましくは0.1ppm以下)とすることが好ましい。酸素ガスまたはN2Oガスの作用によって、脱水化または脱水素化処理による不純物の排除工程で低減してしまった酸化物半導体を構成する主成分材料の一つである酸素を供給することができる。
なお、上述の第1の熱処理には水素や水などを除去する効果があるため、当該熱処理を、脱水化または脱水素化などと呼ぶこともできる。当該熱処理は、例えば、酸化物半導体層を島状に加工する前、ゲート絶縁膜の形成後などのタイミングにおいて行うことも可能である。また、このような脱水化または脱水素化の熱処理は、一回に限らず複数回行っても良い。
次に、酸化物半導体膜227の一部を選択的にエッチングして、電極224と重畳するように酸化物半導体膜229を形成する。それから、酸化物半導体膜229上に、スパッタリング法、CVD法等により絶縁膜231を形成する。そして、絶縁膜231上にゲート電極233を形成する(図15(A)参照)。
また、μ波(例えば周波数2.45GHz)を用いた高密度プラズマCVDは、緻密で絶縁耐圧の高い高品質な絶縁層を形成できるので、後にゲート絶縁膜として用いられる絶縁膜231の形成に用いることが好ましい。高純度化された酸化物半導体と高品質ゲート絶縁膜とが密接することにより、界面準位を低減して界面特性を良好なものとすることができるからである。
絶縁膜231は、例えば酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化ガリウムまたはGa−Zn−O系金属酸化物膜などを用いればよく、積層または単層で設ける。また、絶縁膜231は、絶縁膜225に示すような、加熱により酸素が脱離する酸化絶縁膜を用いてもよい。絶縁膜231に加熱により酸素が脱離する膜を用いることで、後の加熱処理により酸化物半導体膜229に生じる酸素欠損を修復することができ、トランジスタの電気特性の劣化を抑制できる。
また、絶縁膜231として、ハフニウムシリケート(HfSiOx)、窒素が添加されたハフニウムシリケート(HfSixOyNz)、窒素が添加されたハフニウムアルミネート(HfAlxOyNz)、酸化ハフニウム、酸化イットリウムなどのhigh−k材料を用いることでゲート絶縁膜の厚さを薄くしてもゲートリークを低減できる。
絶縁膜231の厚さは、10nm以上300nm以下、より好ましくは5nm以上50nm以下、より好ましくは10nm以上30nm以下とするとよい。
ゲート電極233は、アルミニウム、クロム、銅、タンタル、チタン、モリブデン、タングステンから選ばれた金属元素、または上述した金属元素を成分とする合金か、上述した金属元素を組み合わせた合金などを用いて形成することができる。また、マンガン、ジルコニウムのいずれか一または複数から選択された金属元素を用いてもよい。また、ゲート電極233は、単層構造でも、二層以上の積層構造としてもよい。例えば、シリコンを含むアルミニウム膜の単層構造、アルミニウム膜上にチタン膜を積層する二層構造、窒化チタン膜上にチタン膜を積層する二層構造、窒化チタン膜上にタングステン膜を積層する二層構造、窒化タンタル膜上にタングステン膜を積層する二層構造、チタン膜と、そのチタン膜上にアルミニウム膜を積層し、さらにその上にチタン膜を形成する三層構造などがある。また、アルミニウムに、チタン、タンタル、タングステン、モリブデン、クロム、ネオジム、スカンジウムから選ばれた元素の膜、または複数組み合わせた合金膜、もしくは窒化膜を用いてもよい。
また、ゲート電極233は、インジウム錫酸化物、酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物、酸化ケイ素を添加したインジウム錫酸化物などの透光性を有する導電性材料を適用することもできる。また、上記透光性を有する導電性材料と、上記金属元素の積層構造とすることもできる。
ゲート電極233は、印刷法またはインクジェット法により形成される。若しくは、スパッタリング法、CVD法、蒸着法等で導電膜を形成した後、該導電膜の一部を選択的にエッチングして形成される。
なお、ゲート電極233と絶縁膜231との間に、絶縁膜231に接する材料層として、窒素を含むIn−Ga−Zn−O膜や、窒素を含むIn−Sn−O膜や、窒素を含むIn−Ga−O膜や、窒素を含むIn−Zn−O膜や、窒素を含むSn−O膜や、窒素を含むIn−O膜や、金属窒化膜(InN、ZnNなど)を設けることが好ましい。これらの膜は5eV以上、好ましくは5.5eV以上の仕事関数を有し、トランジスタのしきい値電圧をプラスにすることができ、所謂ノーマリーオフのスイッチング素子を実現できる。例えば、窒素を含むIn−Ga−Zn−O膜を用いる場合、少なくとも酸化物半導体膜229より高い窒素濃度、具体的には7原子%以上の窒素を含むIn−Ga−Zn−O膜を用いる。
この後、加熱処理を行うことが好ましい。当該加熱処理により、絶縁膜225及び絶縁膜231から酸化物半導体膜229に酸素を拡散させて、酸化物半導体膜229に含まれる酸素欠陥を補填し、酸素欠陥を低減することができる。
なお、絶縁膜231の成膜後に、不活性ガス雰囲気下、または酸素雰囲気下で熱処理(第2の熱処理)を行ってもよい。熱処理の温度は、200℃以上450℃以下とするのが好ましく、250℃以上350℃以下とするのがより好ましい。このような熱処理を行うことによって、トランジスタの電気的特性のばらつきを軽減することができる。また、酸化物半導体膜229と接する絶縁膜231または絶縁膜225が酸素を含む場合、酸化物半導体膜229に酸素を供給し、該酸化物半導体膜229の酸素欠損を補填することもできる。このように、上述の熱処理には酸素を供給する効果があるため、当該熱処理を、加酸化(加酸素化)などと呼ぶこともできる。
なお、本実施の形態では、絶縁膜231の形成後に加酸化の熱処理を行っているが、加酸化の熱処理のタイミングはこれに限定されず、絶縁膜231の形成後に適宜行えばよい。
上述のように、脱水化または脱水素化の熱処理と加酸化の熱処理を適用し、酸化物半導体膜229中の不純物を低減し、酸素欠損を補填することで、酸化物半導体膜229を、その主成分以外の不純物が極力含まれないように高純度化することができる。
次に、ゲート電極233をマスクとして、酸化物半導体膜229にドーパントを添加する処理を行う。この結果、図15(B)に示すように、ゲート電極233に覆われ、ドーパントが添加されない第1の領域235aと、ドーパントを含む一対の第2の領域235b、第2の領域235cを形成する。ゲート電極233をマスクにしてドーパントを添加するため、セルフアラインで、ドーパントが添加されない第1の領域235a、及びドーパントを含む一対の第2の領域235b、第2の領域235cを形成することができる。なお、ゲート電極233と重畳する第1の領域235aはチャネル領域として機能する。また、ドーパントを含む一対の第2の領域235b、第2の領域235cは、電界緩和領域として機能する。また、第1の領域235a、及びドーパントを含む一対の第2の領域235b、第2の領域235cを酸化物半導体膜235と示す。
酸化物半導体膜229の第1の領域235aは、水素濃度を5×1018atoms/cm3未満、好ましくは1×1018atoms/cm3以下、より好ましくは5×1017atoms/cm3以下、さらに好ましくは1×1016atoms/cm3以下とすることが好ましい。酸化物半導体及び水素の結合により、水素の一部がドナーとなり、キャリアである電子が生じてしまう。これらのため、酸化物半導体膜229の第1の領域235a中の水素濃度を低減することで、しきい値電圧のマイナスシフトを低減することができる。
ドーパントを含む一対の第2の領域235b、第2の領域235cに含まれるドーパントの濃度は、5×1018atoms/cm3以上1×1022atoms/cm3以下、好ましくは5×1018atoms/cm3以上5×1019atoms/cm3未満とする。
ドーパントを含む一対の第2の領域235b、第2の領域235cはドーパントを含むため、キャリア密度または欠陥を増加させることができる。このため、ドーパントを含まない第1の領域235aと比較して導電性を高めることができる。なお、ドーパント濃度を増加させすぎると、ドーパントがキャリアの移動を阻害することになり、ドーパントを含む一対の第2の領域235b、第2の領域235cの導電性を低下させることになる。
ドーパントを含む一対の第2の領域235b、第2の領域235cは、導電率が0.1S/cm以上1000S/cm以下、好ましくは10S/cm以上1000S/cm以下とすることが好ましい。
酸化物半導体膜229において、ドーパントを含む一対の第2の領域235b、第2の領域235cを有することで、チャネル領域として機能する第1の領域235aの端部に加わる電界を緩和させることができる。このため、トランジスタの短チャネル効果を抑制することができる。
酸化物半導体膜229にドーパントを添加する方法として、イオンドーピング法またはイオンインプランテーション法を用いることができる。また、添加するドーパントとしては、ホウ素、窒素、リン、及びヒ素の少なくとも一つを用いることができる。または、ドーパントとしては、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、及びキセノンの少なくとも一つを用いることができる。または、ドーパントとしては、水素がある。なお、ドーパントとして、ホウ素、窒素、リン、及びヒ素の一以上と、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、及びキセノンの一以上と、水素とを適宜組み合わしてもよい。
また、酸化物半導体膜229へのドーパントの添加は、酸化物半導体膜229を覆って、絶縁膜などが形成されている状態を示したが、酸化物半導体膜229が露出している状態でドーパントの添加を行ってもよい。
さらに、上記ドーパントの添加はイオンドーピング法またはイオンインプランテーション法などによる注入する以外の方法でも行うことができる。例えば、添加する元素を含むガス雰囲気にてプラズマを発生させて、被添加物に対してプラズマ処理を行うことによって、ドーパントを添加することができる。上記プラズマを発生させる装置としては、ドライエッチング装置やCVD装置、高密度プラズマCVD装置などを用いることができる。
この後、加熱処理を行ってもよい。当該加熱処理の温度は、代表的には、150℃以上450℃以下、好ましくは250℃以上325℃以下とする。または、250℃から325℃まで徐々に温度上昇させながら加熱してもよい。
当該加熱処理により、ドーパントを含む一対の第2の領域235b、第2の領域235cの抵抗を低減することができる。なお、当該加熱処理において、ドーパントを含む一対の第2の領域235b、第2の領域235cは、結晶状態でも非晶質状態でもよい。
次に、図15(C)に示すように、ゲート電極233の側面にサイドウォール絶縁膜237、及びゲート絶縁膜239、並びに電極241a、電極241bを形成する。
サイドウォール絶縁膜237は、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、窒化酸化アルミニウム、窒化アルミニウムなどを用いればよく、積層または単層で設ける。なお、サイドウォール絶縁膜237として、絶縁膜225と同様に、加熱により酸素の一部が脱離する酸化絶縁膜を用いて形成してもよい。
ここで、サイドウォール絶縁膜237の形成方法について説明する。
まず、絶縁膜231およびゲート電極233上に、後にサイドウォール絶縁膜237となる絶縁膜を形成する。絶縁膜は、スパッタリング法、CVD法等により形成する。また、当該絶縁膜の厚さは特に限定はないが、ゲート電極233の形状に応じる被覆性を考慮して、適宜選択すればよい。
次に、絶縁膜をエッチングすることによりサイドウォール絶縁膜237を形成する。該エッチングは、異方性の高いエッチングであり、サイドウォール絶縁膜237は、絶縁膜に異方性の高いエッチング工程を行うことでセルフアラインに形成することができる。
また、ドーパントを含む一対の第2の領域235b、第2の領域235cにおいて、電界緩和領域として機能する幅は、サイドウォール絶縁膜237の幅に対応し、またサイドウォール絶縁膜237の幅は、ゲート電極233の厚さにも対応することから、電界緩和領域の範囲が、所望の範囲となるように、ゲート電極233の厚さを決めればよい。
また、サイドウォール絶縁膜237の形成工程と共に、異方性の高いエッチングを用いて絶縁膜231をエッチングし、酸化物半導体膜229を露出させることで、ゲート絶縁膜239を形成することができる。
一対の電極241a、電極241bは配線223aおよび配線223bと同様の材料を適宜用いて形成することができる。なお、一対の電極241a、電極241bは配線としても機能させてもよい。
一対の電極241a、電極241bは、印刷法またはインクジェット法を用いて形成される。または、スパッタリング法、CVD法、蒸着法等で導電膜を形成した後、該導電膜の一部を選択的にエッチングして、一対の電極241a、電極241bを形成する。
一対の電極241a、電極241bは、サイドウォール絶縁膜237及びゲート絶縁膜239の側面と接するように、形成されることが好ましい。即ち、トランジスタの一対の電極241a、電極241bの端部がサイドウォール絶縁膜237上に位置し、酸化物半導体膜229において、ドーパントを含む一対の第2の領域235b、第2の領域235cの露出部を全て覆っていることが好ましい。この結果、ドーパントが含まれる一対の第2の領域235b、第2の領域235cにおいて、一対の電極241a、電極241bと接する領域がソース領域及びドレイン領域として機能すると共に、サイドウォール絶縁膜237及びゲート絶縁膜239と重なる領域が電界緩和領域として機能する。また、サイドウォール絶縁膜237の長さにより電界緩和領域の幅が制御できるため、一対の電極241a、電極241bを形成するためのマスク合わせの精度を緩和することができる。よって、複数のトランジスタにおけるばらつきを低減することができる。
なお、本実施の形態では、ゲート電極233の側面に接してサイドウォール絶縁膜237を設けたが、本発明はこれに限られるものではなく、サイドウォール絶縁膜237を設けない構成とすることもできる。また、本実施の形態では、一対の第2の領域235b、第2の領域235cを形成した後でサイドウォール絶縁膜237を設けたが、本発明はこれに限られるものではなく、サイドウォール絶縁膜237を設けた後で一対の第2の領域235b、第2の領域235cを形成しても良い。このような構成とすることにより、第1の領域235aをサイドウォール絶縁膜237と重畳する領域まで広げることができる。
次に、図16(A)に示すように、スパッタリング法、CVD法、塗布法、印刷法等により、絶縁膜243及び絶縁膜245を形成する。
絶縁膜243、絶縁膜245は、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、窒化酸化アルミニウム、窒化アルミニウムなどを用いればよく、積層または単層で設ける。なお、絶縁膜245として、外部への酸素の拡散を防ぐ絶縁膜を用いることで、絶縁膜243から脱離する酸素を酸化物半導体膜に供給することができる。外部への酸素の拡散を防ぐ絶縁膜の代表例としては、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム等がある。また、絶縁膜245として、外部からの水素の拡散を防ぐ絶縁膜を用いることで、外部から酸化物半導体膜への水素の拡散を低減することが可能であり、酸化物半導体膜の欠損を低減することができる。外部からの水素の拡散を防ぐ絶縁膜の代表例としては、窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化アルミニウム、窒化酸化アルミニウム等がある。また、絶縁膜243を、加熱により酸素の一部が脱離する酸化絶縁膜、外部への酸素の拡散を防ぐ絶縁膜と、酸化絶縁膜との3層構造とすることで、効率よく酸化物半導体膜へ酸素を拡散すると共に、外部への酸素の脱離を抑制することが可能であり、温度及び湿度の高い状態でも、トランジスタの特性の変動を低減することができる。
以上の工程により、図16(A)に示すように、酸化物半導体膜を有するトランジスタ110を作製することができる。
上述のように、酸化物半導体膜229は水素などの不純物が十分に除去され、十分な酸素が供給されて酸素が過飽和の状態とされることにより、高純度化されたものであることが望ましい。具体的には、酸化物半導体膜229の水素濃度は5×1019atoms/cm3以下、望ましくは5×1018atoms/cm3以下、より望ましくは5×1017atoms/cm3以下とする。なお、上述の酸化物半導体膜229中の水素濃度は、二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)で測定されるものである。このように、水素濃度が十分に低減されて高純度化され、十分な酸素の供給により酸素欠乏に起因するエネルギーギャップ中の欠陥準位が低減された酸化物半導体膜229をトランジスタ110に用いることにより、例えば、室温(25℃)でのオフ電流(ここでは、単位チャネル幅(1μm)あたりの値)は100zA(1zA(ゼプトアンペア)は1×10−21A)以下、より好ましくは10zA以下となる。このように、i型化(真性化)または実質的にi型化された酸化物半導体膜229を用いることで、極めて優れたオフ電流特性のトランジスタ110を得ることができる。
なお、本実施の形態でトランジスタ110をトップゲート構造としたが、本発明はこれに限られるものではなく、例えばボトムゲート構造としても良い。また、本実施の形態でトランジスタ110は、一対の電極241aおよび電極241bが、一対の第2の領域235bおよび第2の領域235cの上面の少なくとも一部と接する構成としているが、本発明はこれに限られるものではなく、例えば、一対の第2の領域235bおよび第2の領域235cが、一対の電極241aおよび電極241bの少なくとも一部と接する構成としても良い。
次に、絶縁膜215、絶縁膜217、絶縁膜221、絶縁膜225、絶縁膜243、絶縁膜245のそれぞれ一部を選択的にエッチングし、開口部を形成して、ゲート電極209、電極241aおよび電極241bのそれぞれ一部を露出する。次に、開口部に導電膜を成膜した後、該導電膜の一部を選択的にエッチングして、電極241bに接して配線249を、電極241aに接して配線250を形成する。配線249および配線250は、コンタクトプラグ219aおよびコンタクトプラグ219bに示す材料を適宜用いることができる。
ここで、配線249は、トランジスタ110のドレイン電極とトランジスタ112のゲート電極209とを電気的に接続するノードM1として機能する。また、配線250は、トランジスタ110のソース電極として機能し、図2(B)に示す揮発記憶ブロック104と電気的に接続される。なお、図2(B)に示す容量素子111を設ける場合には、例えば、配線250上に絶縁膜と、当該絶縁膜を介して配線250と重畳する導電膜を設ければよい。
また、図16(B)においては、トランジスタ110のドレイン電極と、トランジスタ112のゲート電極209とを配線249を介して接続する構成としているが、本実施の形態に示す構成はこれに限られるものではない。例えば、トランジスタ112上に設けられた絶縁膜の上面にトランジスタ112のゲート電極の上面が露出されるような構造とし、当該ゲート電極の上面に直接接するようにトランジスタ110のソース電極またはドレイン電極の一方を設ける構成としても良い。
以上の工程により、トランジスタ110およびトランジスタ112を有するプロセッサの記憶ブロックを作製することができる。
ここで、図16(B)に示す断面図に対応するプロセッサの記憶ブロックの平面図の一例を図17(A)および図17(B)に示す。図17(A)は絶縁膜225より下層の構成、つまりトランジスタ112の平面図を示しており、図17(B)は絶縁膜225より上層の構成、つまりトランジスタ110の平面図を示している。なお、図17(A)および図17(B)において、図の理解を容易にするため一部の構成(絶縁膜215など)を図示していない。また、図17(A)および図17(B)に示す、一点鎖線A−Bおよび一点鎖線C−Dは、図13乃至図16に示す断面図に対応している。
図17(A)および図17(B)に示すプロセッサの記憶ブロックでは、図16(B)に示すように、一点鎖線C−Dに係る領域においてトランジスタ110と、トランジスタ112とが、電気的に接続される。ここで、トランジスタ110の少なくとも一部と、トランジスタ112の少なくとも一部と、が重畳して設けられる。より好ましくは、酸化物半導体膜235の少なくとも一部と、n型の不純物領域211aまたはn型の不純物領域211bの少なくとも一部と、が重畳して設けられる。このような平面レイアウトを採用することにより、酸化物半導体のようなワイドバンドギャップ半導体を用いたトランジスタを設けることによるプロセッサの記憶ブロックの占有面積の増大を抑制することができる。よって、容易に当該プロセッサの記憶ブロックの大容量化を図ることができる。
以上のように、トランジスタのオフ電流を十分に小さくすることができる材料、例えば、ワイドバンドギャップ半導体である酸化物半導体材料を用いて、不揮発記憶ブロックのトランジスタを形成する。トランジスタのオフ電流を十分に小さくすることができる半導体材料を用いることで、電力供給がなくとも長期間にわたって電位を保持することが可能であるため、演算部の電源がオフ状態の間も、不揮発記憶ブロックにおいてデータを保持することができる。
このような不揮発記憶ブロックを設けたプロセッサにおいて、先の実施の形態に示すパワーゲーティングの駆動方法を用いることにより、データの退避期間および復帰期間に消費電力が急激に増大し、瞬間的な電圧降下が発生するのを防ぎ、且つデータの退避期間および復帰期間を短縮することができる。これにより、消費電力の低減が図られたパワーゲーティングの駆動方法において、プロセッサの誤動作を抑制し、且つプロセッサの処理速度の向上を図ることができる。
以上、本実施の形態に示す構成、方法などは、本実施の形態に示す構成、方法どうしで組み合わせて用いることもできるし、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いることもできる。
(実施の形態3)
上記実施の形態に示すプロセッサの少なくとも一部を利用してCPU(Central Processing Unit)を構成することができる。
図18(A)は、CPUの具体的な構成を示すブロック図である。図18(A)に示すCPUは、基板1190上に、演算回路(ALU:Arithmetic logic unit)1191、ALUコントローラ1192、インストラクションデコーダ1193、インタラプトコントローラ1194、タイミングコントローラ1195、レジスタ1196、レジスタコントローラ1197、バスインターフェース(Bus I/F)1198、書き換え可能なROM1199、およびROMインターフェース(ROM I/F)1189を有している。基板1190は、半導体基板、SOI基板、ガラス基板などを用いる。ROM1199およびROMインターフェース1189は、別チップに設けてもよい。もちろん、図18(A)に示すCPUは、その構成を簡略化して示した一例にすぎず、実際のCPUはその用途によって多種多様な構成を有している。
バスインターフェース1198を介してCPUに入力された命令は、インストラクションデコーダ1193に入力され、デコードされた後、ALUコントローラ1192、インタラプトコントローラ1194、レジスタコントローラ1197、タイミングコントローラ1195に入力される。
ALUコントローラ1192、インタラプトコントローラ1194、レジスタコントローラ1197、タイミングコントローラ1195は、デコードされた命令に基づき、各種制御を行う。具体的にALUコントローラ1192は、ALU1191の動作を制御するための信号を生成する。また、インタラプトコントローラ1194は、CPUのプログラム実行中に、外部の入出力装置や、周辺回路からの割り込み要求を、その優先度やマスク状態から判断し、処理する。レジスタコントローラ1197は、レジスタ1196のアドレスを生成し、CPUの状態に応じてレジスタ1196の読み出しや書き込みを行う。
また、タイミングコントローラ1195は、ALU1191、ALUコントローラ1192、インストラクションデコーダ1193、インタラプトコントローラ1194、およびレジスタコントローラ1197の動作のタイミングを制御する信号を生成する。例えば、タイミングコントローラ1195は、基準クロック信号CLK1を元に、内部クロック信号CLK2を生成する内部クロック生成部を備えており、内部クロック信号CLK2を上記各種回路に供給する。
図18(A)に示すCPUでは、レジスタ1196に、複数のメモリセルが設けられている。レジスタ1196の複数のメモリセルは、上記実施の形態に記載されている揮発記憶ブロックおよび不揮発記憶ブロックを構成している。
図18(A)に示すCPUにおいて、レジスタコントローラ1197は、上記実施の形態に記載の退避復帰制御部106に対応し、レジスタ1196におけるデータの退避と復帰の選択を行う。少なくともレジスタ1196への電源の供給を停止する場合、レジスタ1196において揮発記憶ブロックから不揮発記憶ブロックにデータを退避する。また、少なくともレジスタ1196への電源の供給を開始する場合、レジスタ1196において不揮発記憶ブロックから揮発記憶ブロックにデータを復帰する。
電源停止に関しては、図18(B)または図18(C)に示すように、メモリセル群と、電源電位VDDまたは電源電位VSSの与えられているノード間に、スイッチング素子を設けることにより行うことができる。当該スイッチング素子は上記実施の形態に記載の電源制御部108に含まれる。以下に図18(B)および図18(C)の回路の説明を行う。
図18(B)および図18(C)では、メモリセルへの電源電位の供給を制御するスイッチング素子として、上記実施の形態に開示した、酸化物半導体材料などのワイドバンドギャップ半導体材料を用いたトランジスタを有する記憶回路の構成の一例を示す。
図18(B)に示す構成は、スイッチング素子1141と、メモリセル1142を複数有するメモリセル群1143とを有している。具体的に、各メモリセル1142には、上記実施の形態に記載されているメモリセルを用いることができる。メモリセル群1143が有する各メモリセル1142には、スイッチング素子1141を介して、ハイレベルの電源電位VDDが供給されている。さらに、メモリセル群1143が有する各メモリセル1142には、信号INの電位と、ローレベルの電源電位VSSの電位が与えられている。
図18(B)では、スイッチング素子1141として、上記実施の形態に開示した、酸化物半導体材料などのワイドバンドギャップ半導体材料を用いたトランジスタを用いており、該トランジスタは、そのゲート電極に与えられる信号SigAによりスイッチングが制御される。
なお、図18(B)では、スイッチング素子1141がトランジスタを一つだけ有する構成を示しているが、特に限定されず、トランジスタを複数有していてもよい。スイッチング素子1141が、スイッチング素子として機能するトランジスタを複数有している場合、上記複数のトランジスタは並列に接続されていてもよいし、直列に接続されていてもよいし、直列と並列が組み合わされて接続されていてもよい。
また、図18(B)では、スイッチング素子1141により、メモリセル群1143が有する各メモリセル1142への、ハイレベルの電源電位VDDの供給が制御されているが、スイッチング素子1141により、ローレベルの電源電位VSSの供給が制御されていてもよい。
また、図18(C)には、メモリセル群1143が有する各メモリセル1142に、スイッチング素子1141を介して、ローレベルの電源電位VSSが供給されている構成の一例を示す。スイッチング素子1141により、メモリセル群1143が有する各メモリセル1142への、ローレベルの電源電位VSSの供給を制御することができる。
メモリセル群と、電源電位VDDまたは電源電位VSSの与えられているノード間に、スイッチング素子を設け、一時的にCPUの動作を停止し、電源電位VDDまたは電源電位VSSの供給を停止した場合においてもデータを保持することが可能であり、消費電力の低減を行うことができる。具体的には、例えば、パーソナルコンピュータのユーザーが、キーボードなどの入力装置への情報の入力を停止している間でも、CPUの動作を停止することができ、それにより消費電力を低減することができる。
本実施の形態で示したCPUは、単結晶シリコンなどのワイドバンドギャップ半導体材料以外を用いた第1の半導体素子層の上に酸化物半導体材料などのワイドバンドギャップ半導体材料を用いた第2の半導体素子層を設けた半導体装置で構成される。これにより、高速動作が容易である、単結晶シリコンなどを用いたトランジスタと、オフ電流が極めて小さい、酸化物半導体を用いたトランジスタと、をCPUを構成するトランジスタの役割に合わせて適宜用いることができる。よって、高速動作を維持しつつ、消費電力の低減を図った、CPUを提供することができる。
また、単結晶シリコンなどの酸化物半導体以外を用いた第1の半導体素子層の上に酸化物半導体を用いた第2の半導体素子層を積層することにより、酸化物半導体材料を用いたトランジスタを設けることによる占有面積の増大を防ぐことができるので、CPUの高集積化を図ることができる。
また、配線層および第2の半導体素子層に酸化物半導体を用いたトランジスタを形成する工程で余計な工程を増やすことなく容量素子を形成することができ、CPUを構成する半導体素子と容量素子を効率的に形成することができる。
ここでは、CPUを例に挙げて説明したが、DSP(Digital Signal Processor)、カスタムLSI、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のLSIにも応用可能である。
ところで、不揮発性のランダムアクセスメモリとして磁気トンネル接合素子(MTJ素子)が知られている。MTJ素子は、絶縁膜を介して上下に配置している強磁性体膜の磁化の向きが並行であれば低抵抗状態、反並行であれば高抵抗状態となることで情報を記憶する素子である。したがって、本実施の形態で示す酸化物半導体材料などのワイドバンドギャップ半導体材料を用いたメモリとは原理が全く異なっている。表1はMTJ素子と、本実施の形態に係る半導体装置との対比を示す。
MTJ素子は磁性材料を使用するためキュリー温度以上にすると磁性が失われてしまうという欠点がある。また、MTJ素子は電流駆動であるため、シリコンのバイポーラデバイスと相性が良いが、バイポーラデバイスは集積化に不向きである。そして、MTJ素子は書き込み電流が微少とはいえメモリの大容量化によって消費電力が増大してしまうといった問題がある。
原理的にMTJ素子は磁界耐性に弱く強磁界にさらされると磁化の向きが狂いやすい。また、MTJ素子に用いる磁性体のナノスケール化によって生じる磁化揺らぎを制御する必要がある。
さらに、MTJ素子は希土類元素を使用するため、金属汚染を嫌うシリコン半導体のプロセスに組み入れるには相当の注意を要する。MTJ素子はビット当たりの材料コストから見ても高価である。
一方、先の実施の形態で示した、酸化物半導体材料などのワイドバンドギャップ半導体材料を用いたトランジスタは、チャネルを形成する半導体材料が金属酸化物であること以外は、素子構造や動作原理がシリコンMOSFETと同様である。また、酸化物半導体を用いたトランジスタは磁界の影響を受けず、ソフトエラーも生じ得ないといった特質を有する。このことからシリコン集積回路と非常に整合性が良いといえる。
また、先の実施の形態において示した、酸化物半導体材料などのワイドバンドギャップ半導体材料を用いたトランジスタとシリコンを用いたトランジスタを組み合わせるメモリは、表1に示したように、スピントロニクスデバイスに比べて、耐熱性、3D化(3層以上の積層構造化)、磁界耐性など多くの点で有利である。なお、表1にあるオーバーヘッドの電力とは、プロセッサ内のメモリ部などに書き込む電力など、所謂オーバーヘッドに消費される電力のことである。
このように、スピントロニクスデバイスに比べて有利な点の多い酸化物半導体を用いたメモリを利用することで、CPUの省電力化が実現可能となる。
以上、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
(実施の形態4)
本明細書に開示するプロセッサを有する半導体装置は、さまざまな電子機器(遊技機も含む)に適用することができる。電子機器としては、テレビ、モニタ等の表示装置、照明装置、デスクトップ型或いはノート型のパーソナルコンピュータ、ワードプロセッサ、DVD(Digital Versatile Disc)などの記録媒体に記憶された静止画または動画を再生する画像再生装置、ポータブルCDプレーヤ、ラジオ、テープレコーダ、ヘッドホンステレオ、ステレオ、コードレス電話子機、トランシーバ、携帯無線機、携帯電話、自動車電話、携帯型ゲーム機、電卓、携帯情報端末、電子手帳、電子書籍、電子翻訳機、音声入力機器、ビデオカメラ、デジタルスチルカメラなどのカメラ、電気シェーバ、電子レンジ等の高周波加熱装置、電気炊飯器、電気洗濯機、電気掃除機、エアコンディショナーなどの空調設備、食器洗い器、食器乾燥器、衣類乾燥器、布団乾燥器、電気冷蔵庫、電気冷凍庫、電気冷凍冷蔵庫、DNA保存用冷凍庫、煙感知器、放射線測定器、透析装置等の医療機器、などが挙げられる。さらに、誘導灯、信号機、ベルトコンベア、エレベータ、エスカレータ、産業用ロボット、電力貯蔵システム等の産業機器も挙げられる。また、石油を用いたエンジンや、非水系二次電池からの電力を用いて電動機により推進する移動体なども、電気機器の範疇に含まれるものとする。上記移動体として、例えば、電気自動車(EV)、内燃機関と電動機を併せ持ったハイブリッド車(HEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、これらのタイヤ車輪を無限軌道に変えた装軌車両、電動アシスト自転車を含む原動機付自転車、自動二輪車、電動車椅子、ゴルフ用カート、小型または大型船舶、潜水艦、ヘリコプター、航空機、ロケット、人工衛星、宇宙探査機や惑星探査機、宇宙船が挙げられる。これらの電子機器の具体例を図19に示す。
図19(A)において、室内機3300および室外機3304を有するエアコンディショナーは、先の実施の形態に記載のプロセッサをCPUに用いた電気機器の一例である。具体的に、室内機3300は、筐体3301、送風口3302、CPU3303等を有する。図19(A)において、CPU3303が、室内機3300に設けられている場合を例示しているが、CPU3303は室外機3304に設けられていてもよい。或いは、室内機3300と室外機3304の両方に、CPU3303が設けられていてもよい。当該CPUは先の実施の形態に記載したように、消費電力を少なくすることができるため、エアコンディショナーの消費電力を低減することができる。
図19(A)において、電気冷凍冷蔵庫3310は、酸化物半導体を用いたCPUを備える電気機器の一例である。具体的に、電気冷凍冷蔵庫3310は、筐体3311、冷蔵室用扉3312、冷凍室用扉3313、野菜室用扉3314、CPU3315等を有する。図19(A)では、CPU3315が、筐体3311の内部に設けられている。先の実施の形態に記載のプロセッサを含むCPUを、電気冷凍冷蔵庫3310のCPU3315に用いることによって電気冷凍冷蔵庫3310の消費電力を低減することができる。
図19(A)において、映像表示装置3320は、酸化物半導体を用いたCPUを備える電気機器の一例である。具体的に、映像表示装置3320は、筐体3321、表示部3322、CPU3323等を有する。図19(A)では、CPU3323が、筐体3321の内部に設けられている。先の実施の形態に記載のプロセッサを含むCPUを、映像表示装置3320のCPU3323に用いることによって、映像表示装置3320の消費電力を低減することができる。
図19(B)に一例である電気自動車の例を示す。電気自動車3330には、二次電池3331が搭載されている。二次電池3331の電力は、制御回路3332により出力が調整されて、駆動装置3333に供給される。制御回路3332は、図示しないROM、RAM、CPU等を有する処理装置3334によって制御される。先の実施の形態に記載のプロセッサを含むCPUを、電気自動車3330のCPUに用いることによって、電気自動車の消費電力を低減することができる。
なお、駆動装置3333は、直流電動機若しくは交流電動機単体、または電動機と内燃機関と、を組み合わせて構成される。処理装置3334は、電気自動車3330の運転者の操作情報(加速、減速、停止など)や走行時の情報(上り坂や下り坂等の情報、駆動輪にかかる負荷情報など)の入力情報に基づき、制御回路3332に制御信号を出力する。制御回路3332は、処理装置3334の制御信号により、二次電池3331から供給される電気エネルギーを調整して駆動装置3333の出力を制御する。交流電動機を搭載している場合は、図示していないが、直流を交流に変換するインバータも内蔵される。
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。
(トランジスタのオフ電流について)
以下において、高純度化された酸化物半導体を用いたトランジスタのオフ電流を求めた結果について説明する。
まず、高純度化された酸化物半導体を用いたトランジスタのオフ電流が十分に小さいことを考慮して、チャネル幅Wが1mと十分に大きいトランジスタを用意してオフ電流の測定を行った。チャネル幅Wが1mのトランジスタのオフ電流を測定した結果を図20に示す。図20において、横軸はゲート電圧VG、縦軸はドレイン電流IDである。ドレイン電圧VDが+1Vまたは+10Vの場合、ゲート電圧VGが−5Vから−20Vの範囲では、トランジスタのオフ電流は、検出限界である1×10−12A以下であることがわかった。また、トランジスタのオフ電流(ここでは、単位チャネル幅(1μm)あたりの値)は1aA(1×10−18A)以下となることがわかった。
次に、高純度化された酸化物半導体を用いたトランジスタのオフ電流をさらに正確に求めた結果について説明する。上述したように、高純度化された酸化物半導体を用いたトランジスタのオフ電流は、測定器の検出限界である1×10−12A以下であることがわかった。そこで、特性評価用素子を作製し、より正確なオフ電流の値(上記測定における測定器の検出限界以下の値)を求めた結果について説明する。
はじめに、電流測定方法に用いた特性評価用素子について、図21を参照して説明する。
図21に示す特性評価用素子は、測定系800が3つ並列に接続されている。測定系800は、容量素子802、トランジスタ804、トランジスタ805、トランジスタ806、トランジスタ808を有する。トランジスタ804、トランジスタ805、トランジスタ806、トランジスタ808には、高純度化された酸化物半導体を用いたトランジスタを適用した。
測定系800において、トランジスタ804のソース端子およびドレイン端子の一方と、容量素子802の端子の一方と、トランジスタ805のソース端子およびドレイン端子の一方は、電源(V2を与える電源)に電気的に接続されている。また、トランジスタ804のソース端子およびドレイン端子の他方と、トランジスタ808のソース端子およびドレイン端子の一方と、容量素子802の端子の他方と、トランジスタ805のゲート端子とは、電気的に接続されている。また、トランジスタ808のソース端子およびドレイン端子の他方と、トランジスタ806のソース端子およびドレイン端子の一方と、トランジスタ806のゲート端子は、電源(V1を与える電源)に電気的に接続されている。また、トランジスタ805のソース端子およびドレイン端子の他方と、トランジスタ806のソース端子およびドレイン端子の他方とは、電気的に接続され、出力端子となっている。
なお、トランジスタ804のゲート端子には、トランジスタ804のオン状態と、オフ状態を制御する電位Vext_b2が供給され、トランジスタ808のゲート端子には、トランジスタ808のオン状態と、オフ状態を制御する電位Vext_b1が供給される。また、出力端子からは電位Voutが出力される。
次に、上記の特性評価用素子を用いた電流測定方法について説明する。
まず、オフ電流を測定するために電位差を付与する初期期間の概略について説明する。初期期間においては、トランジスタ808のゲート端子に、トランジスタ808をオン状態とする電位Vext_b1を入力して、トランジスタ804のソース端子またはドレイン端子の他方と電気的に接続されるノード(つまり、トランジスタ808のソース端子およびドレイン端子の一方、容量素子802の端子の他方、およびトランジスタ805のゲート端子に電気的に接続されるノード)であるノードAに電位V1を与える。ここで、電位V1は、例えば高電位とする。また、トランジスタ804はオフ状態としておく。
その後、トランジスタ808のゲート端子に、トランジスタ808をオフ状態とする電位Vext_b1を入力して、トランジスタ808をオフ状態とする。トランジスタ808をオフ状態とした後に、電位V1を低電位とする。ここでも、トランジスタ804はオフ状態としておく。また、電位V2は電位V1と同じ電位とする。以上により、初期期間が終了する。初期期間が終了した状態では、ノードAとトランジスタ804のソース端子及びドレイン端子の一方との間に電位差が生じ、また、ノードAとトランジスタ808のソース端子及びドレイン端子の他方との間に電位差が生じることになるため、トランジスタ804およびトランジスタ808には僅かに電荷が流れる。つまり、オフ電流が発生する。
次に、オフ電流の測定期間の概略について説明する。測定期間においては、トランジスタ804のソース端子またはドレイン端子の一方の端子の電位(つまりV2)、および、トランジスタ808のソース端子またはドレイン端子の他方の端子の電位(つまりV1)は低電位に固定しておく。一方で、測定期間中は、上記ノードAの電位は固定しない(フローティング状態とする)。これにより、トランジスタ804に電荷が流れ、時間の経過と共にノードAに保持される電荷量が変動する。そして、ノードAに保持される電荷量の変動に伴って、ノードAの電位が変動する。つまり、出力端子の出力電位Voutも変動する。
上記電位差を付与する初期期間、および、その後の測定期間における各電位の関係の詳細(タイミングチャート)を図22に示す。
初期期間において、まず、電位Vext_b2を、トランジスタ804がオン状態となるような電位(高電位)とする。これによって、ノードAの電位はV2すなわち低電位(VSS)となる。なお、ノードAに低電位(VSS)を与えるのは必須ではない。その後、電位Vext_b2を、トランジスタ804がオフ状態となるような電位(低電位)として、トランジスタ804をオフ状態とする。そして、次に、電位Vext_b1を、トランジスタ808がオン状態となるような電位(高電位)とする。これによって、ノードAの電位はV1、すなわち高電位(VDD)となる。その後、Vext_b1を、トランジスタ808がオフ状態となるような電位とする。これによって、ノードAがフローティング状態となり、初期期間が終了する。
その後の測定期間においては、電位V1および電位V2を、ノードAに電荷が流れ込み、またはノードAから電荷が流れ出すような電位とする。ここでは、電位V1および電位V2を低電位(VSS)とする。ただし、出力電位Voutを測定するタイミングにおいては、出力回路を動作させる必要が生じるため、一時的にV1を高電位(VDD)とすることがある。なお、V1を高電位(VDD)とする期間は、測定に影響を与えない程度の短期間とする。
上述のようにして電位差を与え、測定期間が開始されると、時間の経過と共にノードAに保持される電荷量が変動し、これに従ってノードAの電位が変動する。これは、トランジスタ805のゲート端子の電位が変動することを意味するから、時間の経過と共に、出力端子の出力電位Voutの電位も変化することとなる。
得られた出力電位Voutから、オフ電流を算出する方法について、以下に説明する。
オフ電流の算出に先だって、ノードAの電位VAと、出力電位Voutとの関係を求めておく。これにより、出力電位VoutからノードAの電位VAを求めることができる。上述の関係から、ノードAの電位VAは、出力電位Voutの関数として次式のように表すことができる。
また、ノードAの電荷QAは、ノードAの電位VA、ノードAに接続される容量CA、定数(const)を用いて、次式のように表される。ここで、ノードAに接続される容量CAは、容量素子802の容量と他の容量の和である。
ノードAの電流IAは、ノードAに流れ込む電荷(またはノードAから流れ出る電荷)の時間微分であるから、ノードAの電流IAは次式のように表される。
このように、ノードAに接続される容量CAと、出力端子の出力電位Voutから、ノードAの電流IAを求めることができる。
以上に示す方法により、オフ状態においてトランジスタのソースとドレイン間を流れるリーク電流(オフ電流)を測定することができる。
本測定では、チャネル長L=10μm、チャネル幅W=50μmの、高純度化した酸化物半導体を用いてトランジスタ804、トランジスタ805、トランジスタ806、トランジスタ808を作製した。また、並列された各測定系800において、容量素子802の各容量値を、100fF、1pF、3pFとした。
なお、本測定では、VDD=5V、VSS=0Vとした。また、測定期間においては、電位V1を原則としてVSSとし、10secから300secの範囲ごとに、100msecの期間だけVDDとしてVoutを測定した。また、素子に流れる電流Iの算出に用いられるΔtは、約30000secとした。
図23に、上記電流測定に係る経過時間Timeと、出力電位Voutとの関係を示す。図23より、時間の経過にしたがって、電位が変化している様子が確認できる。
図24には、上記電流測定によって算出された室温(25℃)におけるオフ電流を示す。なお、図24は、ソース−ドレイン電圧Vと、オフ電流Iとの関係を表すものである。図24から、ソース−ドレイン電圧が4Vの条件において、オフ電流は約40zA/μmであることが分かった。また、ソース−ドレイン電圧が3.1Vの条件において、オフ電流は10zA/μm以下であることが分かった。なお、1zAは10−21Aを表す。
さらに、上記電流測定によって算出された85℃の温度環境下におけるオフ電流について図25に示す。図25は、85℃の温度環境下におけるソース−ドレイン電圧Vと、オフ電流Iとの関係を表すものである。図25から、ソース−ドレイン電圧が3.1Vの条件において、オフ電流は100zA/μm以下であることが分かった。
以上により、高純度化された酸化物半導体を用いたトランジスタでは、オフ電流が十分に小さくなることが確認された。