JP6085558B2 - ウェ−ハ支持ピン - Google Patents

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Description

本発明は半導体ウェ−ハの熱処理時にウェ−ハを水平に支持するウェ−ハ支持ピン先端部の形状と表面粗さを合理的に設定し、支持ピン先端部の消耗の一様かつ安定化を促し、接触面積の低減を長期間維持して寿命の向上と熱処理の生産性の向上を図るとともに、支持ピン先端部の消耗を安定させて支持ピン先端部の接触面積と熱容量の低減を長期間維持し、熱応力によるウェ−ハのスリップ欠陥の発生を抑制するとともに、長期間の高温連続処理を実現し、ウェ−ハの品質の安定化と生産コストの低減を図れる、ウェ−ハ支持ピンに関する。
半導体ウェ−ハの製造工程において、例えばウェ−ハの表面に酸化膜を形成する際、その合理的な熱処理方法として、ウェ−ハを急速に加熱し冷却する急速昇降温熱処理(Rapid Thermal Process;以下、RTP処理という)が行われている。
このRTP処理は、RTP処理炉のチャンバ内にウェ−ハを収容し、該ウェ−ハを裏面側から石英製の3個の支持ピンで水平に3点支持し、またはSiC製のリングを用いてウェ−ハ裏面側の外周部を支持し、或いはSiC若しくは石英等の耐熱材を用いてウェ−ハ裏面側の外周部を複数箇所支持し、1150〜1350℃の高温で数秒から数十秒ウェ−ハを熱処理して行っている
しかし、熱処理工程では、ウェ−ハ面内の温度勾配が大きくなると、熱応力に起因する結晶転位(スリップ)の発生を避けられず、特に近時のようなウェ−ハの大口径化に伴なって、ウェ−ハの自重が増加し自重による曲げ応力によってスリップが発生し易くなってきている。
このようなスリップがウェ−ハ表面に存在すると、半導体素子の製造工程で漏洩電流による歩留まり低下の原因になり、スリップが発生したウェ−ハは不良品として扱われるため、半導体製造工程ではスリップの低減が大きな課題になっており、その解決手段として支持ピンの先端形状に関する種々の提案がなされている。
例えば支持ピンの先端部をウェ−ハと平行な平面形状の平坦面に形成した場合は、ウェ−ハとの接触面積が大きくなり接触部の熱容量が大きくなって、ウェ−ハから熱量が支持ピンに逃げてウェ−ハ面内の温度差が大きくなり、スリップを生じ易くなる問題がある。
また、支持ピンの先端部を半球面状若しくは尖端形状に形成した場合は、ウェ−ハとの接触面積が小さくなり接触部の熱容量が低減されて、ウェ−ハ面内の温度差が低減され、スリップの発生を抑制できるが、使用回数が増えると上端部が消耗してウェ−ハとの接触面積が大きくなるため、小さい接触面積を確保するために支持ピンを頻繁に交換する必要が生じて生産性が低下する問題がある(例えば、特許文献1参照)。
しかも、これらの支持ピンは先端部周面を平滑に形成しているため、ウェ−ハの接触部が消耗すると、先端部近傍が異状に消耗ないし剥離して消耗が助長され、短期間で支持ピンを交換したり使用できなくなるという問題があった。
このような問題を解決するものとして、支持ピンの上端部に平面形状の上面を形成し、この上面をウェ−ハの裏面に対し傾斜させた状態で支持ピンを垂直に支持し、または傾斜させて支持させたものがある(例えば、特許文献1参照)。
しかし、これらのものはウェ−ハの裏面に支持ピンの上端部の尖端部を接触させるため、前述と同様に使用回数が増えると尖端部が磨耗してウェ−ハとの接触面積が大きくなるため、小さい接触面積を確保するために支持ピンを頻繁に交換する必要が生じて生産性が低下し、また支持ピンを傾斜させて支持する場合は、ピンホルダの大形化と支持ピンの設置スペ−スの大形化を招く問題があった。
また、この他の支持ピンとして、支持ピンの上端部を扁平または湾曲面状にラウンド処理し、その下側周面を2〜17mmの先細のテ−パ状に形成し、その直径を0.2〜1.5mmまたは0.5〜1.5mmに形成したものがある(例えば、特許文献2参照)。
しかし、支持ピンの上端部を扁平状に形成したものは、前述の平坦面に形成した場合と同様な問題があり、また支持ピンの上端部を湾曲面状にラウンド処理したものは、ウェ−ハの裏面に点接触することになるため、前述と同様に使用回数が増えると接触部が消耗してウェ−ハとの接触面積が大きくなるため、小さい接触面積を確保するために支持ピンを頻繁に交換する必要が生じて生産性が低下する問題がある。
そして、支持ピンの上端部の扁平部またはラウンド処理部の直径を所定寸法に形成したり、テ−パ状部を所定の長さに形成しても前記問題の根本的な解決を図れない等の問題があった。
ところで、支持ピンの代わりに、縦型ボ−トのウェ−ハ支持体のウェ−ハ接触部の表面粗さをレジン砥石で研削し、またはサンドブラスト加工して所定の表面粗さに形成し、ウェ−ハとウェ−ハ支持体との接着を防止するとともに、ウェ−ハのスリップの発生を防止するようにしたものがある(例えば、特許文献3参照)。
しかし、ウェ−ハ支持体の使用回数が増えるとウェ−ハ接触部が消耗し、その接触面積が大きくなるため、小さい接触面積を確保するためにウェ−ハ支持体を頻繁に交換する必要が生じて生産性が低下する問題がある。また、ウェ−ハ支持体の表面粗さRaが0.05μm〜50μmの広範囲に設定されているため、設定範囲に亘って一様なスリップの発生防止効果を得られないという問題があった。
また、支持ピンの代わりの別のものとして、縦型ボ−トの熱処理用冶具のウェ−ハ接触部の表面をアルカリエッチング処理し、その表面粗さRMSを0.3μm〜100μmに形成し、ウェ−ハのスリップの発生を低減するようにしたものがある(例えば、特許文献4参照)。
しかし、この熱処理用冶具も使用回数が増えるとウェ−ハ接触部が消耗し、その接触面積が大きくなるため、小さい接触面積を確保するためにウェ−ハ支持体を頻繁に交換する必要が生じて生産性が低下するという問題がある また、ウェ−ハ支持体の表面粗さRMSが0.3μm〜100μmの広範囲に設定されているため、設定範囲に亘って一様なスリップの発生低減効果を得られないという問題があった。
特開2011−29225号公報 特開2008−166763号公報 特開平10−321543号公報 特開2004−63617号公報
本発明はこのような問題を解決し、半導体ウェ−ハの熱処理時にウェ−ハを水平に支持するウェ−ハ支持ピン先端部の形状と表面粗さを合理的に設定し、支持ピン先端部の消耗の一様かつ安定化を促し、接触面積の低減を長期間維持して寿命の向上と熱処理の生産性の向上を図るとともに、支持ピン先端部の消耗を安定させて支持ピン先端部の接触面積と熱容量の低減を長期間維持し、熱応力によるウェ−ハのスリップ欠陥の発生を抑制するとともに、長期間の高温連続処理を実現し、ウェ−ハの品質の安定化と生産コストの低減を図れる、ウェ−ハ支持ピンを提供することを目的とする。
請求項1の発明は、半導体ウェーハの熱処理時に、ウェーハを底面から支持する支持ピンの先端部側に、先細円錐台形状の第1および第2テーパ軸部を上下に隣接して形成し、その平坦な先端面を所定の表面粗さに形成したウェーハ支持ピンにおいて、先端側の第1テーパ軸部の長さないし高さを第2テーパ軸部よりも長くないし高く形成するとともに、第1テーパ軸部のテーパ面を所定の表面粗さに形成し、第1テーパ軸部の先端部の接触面積を低減し、その長期に亘る使用を確保し寿命の向上を図るとともに、第1テーパ軸部の熱容量の低減を図り、ウェーハからピンへ逃げる熱量を低減して、ウェーハ内の温度低下ないし熱応力によるスリップの発生を防止し、また接触部近傍のテーパ面を一様かつ安定して消耗させ、過剰な消耗や剥離を防止して接触面積と熱容量の低減を長期間維持し、寿命の向上を図るとともに、熱応力によるウェーハのスリップ欠陥の発生を抑制し、長期間の高温連続処理を実現し、ウェーハの品質の安定化と生産コストの低減を図ようにしている。
請求項2の発明は、第1テーパ軸部のテーパ面の表面粗さRaを、0.5μm≦Ra≦3.0μmに形成し、適度な表面粗さによって一様かつ安定した消耗を促し、過剰な消耗や剥離を防止して寿命の向上を図るとともに、熱応力によるウェーハのスリップ欠陥の発生を抑制し得るようにしている。
請求項3の発明は、第1および第2テーパ軸部の略全域を所定の表面粗さに形成し、第1および第2テーパ軸部に分けて別々の表面粗さに加工する不合理と手間を解消し、これを容易かつ安価に製作するようにしている。
請求項4の発明は、第2テーパ軸部のテーパ角度を第1テーパ軸部のテーパ角度よりも大きく形成し、ウェーハに対する接触面積の低減と機械的強度の向上を図るようにしている。
請求項5の発明は、第1および第2テーパ軸部の境界部に微小な凹状の湾曲部を形成し、境界部における応力集中を回避し機械的強度を向上して、折損を防止するようにしている。
請求項6の発明は、ウェーハ支持ピンの先端の接触部外径を、0.1mmφ〜0.3mmφに形成し、ウェーハに対する接触面積の低減と熱容量の低減を図り、熱応力によるウェーハのスリップ欠陥の発生を抑制し得るようにしている。
請求項1の発明は、先端側の第1テーパ軸部の長さないし高さを第2テーパ軸部よりも長くないし高く形成するとともに、第1テーパ軸部のテーパ面を所定の表面粗さに形成したから、第1テーパ軸部の先端部の接触面積を低減し、その長期に亘る使用を確保し寿命の向上を図るとともに、第1テーパ軸部の熱容量の低減を図り、ウェーハからピンへ逃げる熱量を低減して、ウェーハ内の温度低下ないし熱応力によるスリップの発生を防止し、また接触部近傍のテーパ面を一様かつ安定して消耗させ、過剰な消耗や剥離を防止して接触面積と熱容量の低減を長期間維持し、寿命の向上を図るとともに、熱応力によるウェーハのスリップ欠陥の発生を抑制し、長期間の高温連続処理を実現し、ウェーハの品質の安定化と生産コストの低減を図ることができる。
請求項2の発明は、第1テーパ軸部のテーパ面の表面粗さRaを、0.5μm≦Ra≦3.0μmに形成したから、適度な表面粗さによって一様かつ安定した消耗を促し、過剰な消耗や剥離を防止して寿命の向上を図るとともに、熱応力によるウェーハのスリップ欠陥の発生を抑制することができる。
請求項3の発明は、第1および第2テーパ軸部の略全域を所定の表面粗さに形成したから、第1および第2テーパ軸部に分けて別々の表面粗さに加工する不合理と手間を解消し、これを容易かつ安価に製作することができる。
請求項4の発明は、第2テーパ軸部のテーパ角度を第1テーパ軸部のテーパ角度よりも大きく形成したから、ウェーハに対する接触面積の低減と機械的強度の向上を図ることができる。
請求項5の発明は、第1および第2テーパ軸部の境界部に微小な凹状の湾曲部を形成したから、境界部における応力集中を回避し機械的強度を向上して、折損を防止することができる。
請求項6の発明は、ウェーハ支持ピンの先端の接触部外径を、0.1mmφ〜0.3mmφに形成したから、ウェーハに対する接触面積の低減と熱容量の低減を図り、熱応力によるウェーハのスリップ欠陥の発生を抑制することができる。
本発明のウェ−ハ支持ピンを使用してウェ−ハを支持し、ウェ−ハを熱処理している状況を示す断面図である。 図1のウェ−ハの熱処理に使用したウェ−ハ支持ピンの正面図である。 図2のウェ−ハ支持ピンの先端部を拡大して示す正面図である。 図3の要部を示す正面図で、第1および第2テ−パ軸部の境界部を拡大して示している。 図2のウェ−ハ支持ピンの応用形態を示す正面図で、第1テ−パ軸部の長さを若干短く形成している。 図5のウェ−ハ支持ピンの先端部を拡大して示す正面図である。
以下、本発明を半導体ウェ−ハの製造工程において、例えばウェ−ハの表面に酸化膜を形成する熱処理に適用した図示の実施形態について説明すると、図1乃至図3において1はRTP処理場に設置された石英製のRTP処理炉で、その上方に複数のハロゲンランプ2または赤外線ランプが設置され、該ハロゲンランプ2によってRTP処理炉1のチャンバ3内の温度を1150〜1350℃の間で急速に加熱・冷却可能にしている。
前記RTP処理炉1の側壁に雰囲気ガスのガス導入口4とガス排出口5とが設けられ、これらによってチャンバ3にアルゴンガス、酸素、窒素ガス、アンモニウムガスまたはそれらを混合した雰囲気ガス等を流通させ、またガス導入口4とガス排出口5にロボットハンド(図示略)を挿入し、チャンバ3内のウェ−ハWを取り出し可能にしている。
前記チャンバ3の底部に3個のピン孔6が同心円上の等角度度位置に形成され、該ピン孔6に石英製の3本のウェ−ハ支持ピン7が立設され、該ピン7の先端部に大口径(直径300mm)の鏡面加工した単結晶シリコン製のウェ−ハWが水平に支持されている。
前記ウェ−ハ支持ピン7は周面を研削して略細長円柱状に形成され、その大半部を細長円柱状の直胴部7aで構成し、その先端部に円錐台形状の第1および第2テ−パ軸部8,9を隣接して形成し、第2テ−パ軸部9の基部外径を直胴部7aと同径に形成している。
前記直胴部7aの周面と第2テ−パ軸部9の周面は、適宜粒度の研削用砥石によって平滑に研削され、それらのテ−パ角度θ,θは、ウェ−ハWに対する接触面積の低減と機械的強度向上のため、θ<θに形成し、その高さないし長さB,Cは第1テ−パ軸部8の長期間使用を意図してB>Cに形成している。
この場合、前記第1テ−パ軸部8の高さないし長さBは、発明者の数々の実験と試験およびそれらの知見を基に1.2mm以上に設定し、先端部の消耗によって接触面積が増大し、ウェ−ハWにスリップが発生するまでの十分な使用期間を確保するため、第1テ−パ軸部8の熱容量を低減し、ウェ−ハWからウェ−ハ支持ピン7へ逃げる熱量を低減して、ウェ−ハW内の温度低下ないし熱応力によるスリップの発生を防止するようにしている。
また、第1テ−パ軸部8の先端の直径Aとθ、θは、発明者の数々の実験と知見を基に0.3φmm以下に設定し、ウェ−ハWの裏面に対する接触面積の低減を図り、またθを10〜25°、θを10〜120°として、第1テ−パ軸部8のウェ−ハWに対する接触面積の低減と機械的強度の向上を図っている。
この場合、先端部の直径Aとテ−パ角度θを更に小さくすると、ウェ−ハWに対する接触面積は低減できるが、高温熱処理時にウェ−ハ支持ピン7に生じる応力によって折損し易くなり、ウェ−ハ支持ピン7が折損するとウェ−ハWの支持のバランスが崩れてスリップが発生する惧れがある。
一方、第1テ−パ軸部8の高さないし長さBを1.2mm以下とし、かつテ−パ角度θを拡大すると、ウェ−ハWと接触するウェ−ハ支持ピン7の先端部の熱容量が増大し、ウェ−ハWに生ずる熱応力が増加して、スリップが発生する確率が上昇するだけでなく、ウェ−ハ支持ピン7が小径なため、第1および第2テ−パ軸部8,9の後述する境界部に生じる応力集中によって、ウェ−ハ支持ピン7が折損する惧れがある。
前記直胴部7aの周面と第2テ−パ軸部9の周面は、適宜粒度の研削用砥石によって平滑に研削され、第1テ−パ軸部8の側周面と先端面を表面粗さ制御している。
この表面粗さ制御については、前述の文献の縦型ボ−トの支持体において、ウェ−ハと接触するウェ−ハ支持体の表面粗さを制御し、ウェ−ハに対する接触面積を低減して、熱容量の低減を図ることが知られている。
しかし、ウェ−ハを支持するウェ−ハ支持ピン7では、その接触部表面の表面粗さを制御するだけでは、当該部が消耗すると接触面積が増加して熱容量が増加し、ウェ−ハWにスリップが発生し易くなる。
また、従来のウェ−ハ支持ピンは接触部近傍の側周面が平滑に形成されているため、接触部の消耗に伴なって近傍の側周面が過剰に剥離ないし消耗し、ウェ−ハ支持ピンの寿命が短くなる上に、1組のウェ−ハ支持ピンが区々に消耗する結果、ウェ−ハWに対する接触面積が区々になって安定した使用が損なわれ、熱処理の生産性が低下する懸念がある。
そこで、発明者は、ウェ−ハ支持ピン7の先端面とその側周面の表面粗さの制御に着目し、ウェ−ハ支持ピン7の先端部の消耗を安定かつ継続的に実現するため、次の実験を行なった。
すなわち、ウェ−ハ支持ピン7の先端面と側周面に対し、ダイヤモンド砥粒を固着し粒度が#320〜#1200(最大粒子径98μm〜39μm:JIS R6001)の1または複数の研削用砥石を選択して研削し、研削後、これを例えば20℃の15%の酸性のHF(フッ化水素酸)溶液に0〜300分間浸漬し、表面から0〜10μmをエッチングして、第1テ−パ軸部8の側周面と先端面の表面粗さを制御するとともに、加工歪と加工汚染を除去した。
この場合、前記研削用砥石の粒度が粗い場合、またはエッチング量が多すぎる場合は、ウェ−ハ支持ピン7の先端部の表面粗さが粗くなり、ウェ−ハWとの接触面積は低減できるが、ウェ−ハ支持ピン7の機械的強度が弱くなり折損を生じ易くなる。
一方、エッチングをしない、またはエッチング量が不十分の場合は、研削加工によるダメ−ジや歪が残存し、ウェ−ハ支持ピン7が折損し易くなるばかりか、ウェ−ハ支持ピン7表層の金属不純物濃度が高く、ウェ−ハWとの接触部近傍において金属不純物がウェ−ハW側へ転写ないし拡散され、熱処理後のウェ−ハWが不良品となる。
前記境界部11に微小な凹状湾曲部Rが形成され、境界部11における切欠効果を防止している。前記凹状湾曲部Rは意図的または意図せず加工工具による加工条件によって形成され、0.1mm〜0.5mmの半径に形成されている。
なお、この実施形態では、表面粗さ制御部10を第1テ−パ軸部8の先端と側周面の略全域に形成しているが、表面粗さ制御部10の下端を第1および第2テ−パ軸部8,9の境界部11から離間して配置し、その離間距離を第1テ−パ軸部8の長さないし高さBの約10%〜20%に形成すれば、境界部11の切欠効果による応力集中と、表面粗さ制御部10の微視的な切欠効果による応力集中との重畳作用を回避し、当該部の折損と機械的強度の低下を防止し得る。
発明者は以上のような知見を基に、前述のウェ−ハ支持ピン7の先端形状において、A<0.3mmφ、B>1.2mm、10°<θ<25°、10°<θ<120°、エッチング量を0〜10μmの条件の下で、各部の形状寸法A、B、θ、θを種々設定したウェ−ハ支持ピン7を複数製作し、これらに対し研削用砥石を選択し、かつエッチング量を調整して加工し、ウェ−ハ支持ピン7の最適な先端形状と、最適な表面粗さを求める実験をした。
表1は、ウェ−ハ支持ピン7の各種先端形状とその加工条件を示す実験例1〜13と、実験例と別個にウェ−ハ支持ピン7を製作し、その各部先端形状とその加工条件を示す比較例1〜11を示している。表中、FPはファイヤ ポリッシュ(Fire Polish)で、研削砥粒の表面を炎で炙って平滑化し、パ−ティクルの発生を抑制している。
Figure 0006085558
次に、発明者は、前記実験例と比較例の各ウェ−ハ支持ピン7を使用し、同一形状で同一加工条件の1組3本のウェ−ハ支持ピン7を用意し、その下端をピン孔6に挿入して立設し、その先端に直径300mmの鏡面加工した単結晶シリコンウェ−ハを載せて3点支持した。
そして、前記ウェ−ハを1250℃で10秒間保持する熱処理を施し、この熱処理は、700℃から1250℃の間の昇温速度を50℃/secとした。熱処理後、ウェ−ハWの表面をレーザ散乱式パ−ティクルカウンタSP2(KLA Tencor社製)で検査し、ピン支持部のスリップ欠陥の有無を判定した。
また、熱処理後のウェ−ハWのライフタイム(支持ピンによる汚染評価)測定を行い、ウェ−ハ支持ピン7の支持部における異常なライフタイムの低下の有無を確認した。これは、3箇所の支持部のうち、1箇所でもスリップ欠陥が検出されたウェ−ハWは、スリップ欠陥発生としてカウントし、スリップ欠陥発生率が1%を超えるまで連続してウェ−ハWを熱処理し、スリップ欠陥発生率が1%を超えた時点で処理枚数をカウントし、また使用後のウェ−ハ支持ピン7の先端形状を観察し、折損および異常消耗の有無を確認した。
表2はその実験結果を示している。表中、ウェ−ハWの処理枚数のランクは、7001枚以上をAランク、5001〜7000枚をBランク、3001〜5000枚をCランク、3000枚以下をDランクとした。
Figure 0006085558
表2の汚染レベルの合否判定は、μ−PCD法によって計測し、キャリアライフタイムが500μS以上の場合は合格とし、それ未満は不合格とした
また、ウェ−ハ支持ピン7の消耗量の合否判定は、ウェ−ハWの1枚当りの平均消耗量が0.2μm以下であれば正常、0.2μm以上は不合格とした。更に、3本のウェ−ハ支持ピン7の消耗量が多い場合は「多め」、消耗量が多くそのバラツキが目立つ場合は「3本差」とし、3本のウェ−ハ支持ピン7の平均消耗量の最大および最小の差が0.1μm以上の場合は異常と判定した。
以上のような表2の結果を基に、最適の先端形状と加工条件のウェ−ハ支持ピン7を判定した。
先ず、処理枚数がAランクで、汚染レベルが合格、消耗量にバラツキがなく正常のウェ−ハ支持ピン7は、実験例2、3、5、9、13であるが、実験例5は第1および第2テ−パ軸部8,9のテーパ角度が同一で、それらのテ−パ部の長さが長くなり、先端部からのテ−パ加工の長さが長くなるから、加工費が高くなる。また、実験例13はエッチング量が非常に多いから、加工費が高くなり、これらのウェ−ハ支持ピン7を削除すると、実験例2、3、9が残る。
このうち、実験例2はウェ−ハWに接触する先端外径Aが大きく、熱容量の増加が懸念され、実験例9は第2テ−パ軸部9のテ−パ角度θが非常に大きく(120°)、第1および第2テ−パ軸部8,9の境界部11の角度が実験例3に比べて鋭くなり、当該部における切欠効果ないし応力集中の発生が懸念されるから、結局、最適の先端形状と加工条件のウェ−ハ支持ピン7は実験例3のものと判定した。
前記実験例3のウェ−ハ支持ピン7の先端形状は表1のように、先端外径A:0.15mm、第1テ−パ軸部8長さ:2.5mm、第1および第2テ−パ軸部8,9のテ−パ角度:θ=15°、θ=60°で、加工条件は砥粒粒度#600の研削砥石を用いて研削し、エッチング量は1.5μmである
こうして製作したウェ−ハ支持ピン7は図2、3のようで、その第1テ−パ軸部8の側周面の表面粗さ制御部10の表面粗さをレーザ顕微鏡によって測定したところ、その表面粗さRaは、0.5μm≦Ra≦3.0μmであった。また、前記ウェ−ハ支持ピン7の第2テ−パ軸部9の長さCは0.55mmであった。
また、ウェ−ハ支持ピン7の先端形状について、前記表1および2から次のことが確認された。
先ず、先端外径Aについては0.1〜0.3mmφで良好な効果を得られ、第1テ−パ軸部8の長さBについては、1.2mmを下限とし、その大半が2.5mm以上で良好な効果を得られ、第1テ−パ軸部8のテ−パ角度θについては、10〜25°の範囲で良好な結果が得られ、特に15°で安定した結果が得られ、第2テ−パ軸部9のテ−パ角度θについては、10〜60°の範囲で良好な結果を得られることが確認された。
この場合、θ=10°とすると、第1テ−パ軸部8と第2テ−パ軸部9のテ−パ角度が同じになるので、第2テ−パ軸部9は第1テ−パ軸部8に隣接して同形に形成される。
更に、先端外径Aが0.15〜0.25mmφで、第1テ−パ軸部8の長さBが2.5mm以上で、かつ第1テ−パ軸部8のテ−パ角度θが15〜25°では、良好な結果を得られることが確認された。
また、加工条件については砥粒粒度#600の研削砥石による研削で良好な結果を得られ、エッチング量は1.5μmで安定した結果を得られることが確認された。
前記実験例3の応用形態として、前述のウェ−ハ支持ピン7の先端形状のうち、第1テ−パ軸部8長さBを2.5mmから1.5mmに変更し、第2テ−パ軸部9の長さCを0.55mmから0.77mmに変更し、その他の先端形状と加工条件は前述と同様にした。
こうして製作したウェ−ハ支持ピン7は図5、6のようで、第1および第2テ−パ軸部8,9の先端部の長さが若干短くなり、それだけ加工が容易になるとともに、当該部の熱容量が低減されてウェ−ハWのスリップの発生を抑制し得る。
この場合の第1テ−パ軸部8の側周面の表面粗さ制御部10の表面粗さRaは、前述と同様に0.5μm≦Ra≦3.0μmで、その測定方法は前述と同様である。
なお、前述の実施形態では表面粗さ制御部10を第1テ−パ軸部8の略全域に形成しているが、第1および第2テ−パ軸部8,9の略全域に形成しても良く、そのようにすることで第1および第2テ−パ軸部8,9に分けて加工する不合理と手間から解消され、これを容易かつ安価に製作し得る。
このように本発明のウェ−ハ支持ピン7は、石英を研削して細長円柱状に形成し、その先端部に大小異径の円錐台形状の第1および第2テ−パ軸部8,9を形成しているから、先端部に単一の円錐または円錐台形状のテ−パ軸部を形成した従来のものに比べて、第2テ−パ軸部9を所望の位置に形成することによって、先端部の長さを短めに形成でき、それだけ加工の手間が軽減されて容易かつ安価に製作し得る。
そして、第1テ−パ軸部8の先端部の外径を0.3mmφ以下に形成し、該先端部側周面を表面粗さ制御したから、ウェ−ハWに対する接触面積と熱容量の低減を増進し、熱処理時におけるウェ−ハWの温度低下によるスリップの発生を防止し得る。
また、第1テ−パ軸部8の長さBを1.2mm〜2.5mmに形成し、従来の支持ピンに比べ短く形成したから、当該部の加工の手間が軽減され容易かつ安価に製作し得る。
しかも、第1テ−パ軸部8の側周面の略全域を表面粗さ制御し、この表面粗さ制御部10に微細な凹凸状部を形成したから、接触部の消耗によってその近傍側周面が凹凸状部を境に一様かつ安定して円滑に剥離ないし消耗し、先端部側周面が平滑面の従来の支持ピンのように、接触部の消耗によってその近傍周面が過剰かつ不規則に消耗し、ウェ−ハ支持ピンによる水平かつ安定した支持機能が損なわれ、その寿命が低下して熱処理の生産性が低下する事態を防止し得る。
そして、第1テーパ軸部8のテーパ角度θ1を10〜25°に形成したから、従来のものに比べ機械的強度が向上し先端部の折損を防止し得る。
また、第1および第2テーパ軸部8,9の境界部11に微小な凹状湾曲部Rを設けたから、境界部11の切欠効果による応力集中を防止し得る。
更に、第2テーパ軸部9のテーパ角度θ2を10〜120°に形成したから、第2テーパ軸部9の長さを低減して加工の手間を軽減し、ウェーハ支持ピン7を容易かつ安価に製作し得る。
このようなウェ−ハ支持ピン7を使用してウェ−ハWを熱処理する場合は、同形かつ同一条件で加工した3本のウェ−ハ支持ピン7を用意し、それらの下端部をRTP処理炉1の底部のピン孔6に挿入して立設し、その表面粗さ制御した先端部に大口径(直径300mm)の鏡面加工した単結晶シリコン製のウェ−ハWを載置し、これを水平に3点支持する。
そして、ハロゲンランプ2を点灯し、その光線を照射してRTP処理炉1のチャンバ3を昇温し、該チャンバ3を1350℃に維持するとともに、ガス導入口4から雰囲気ガスを導入し、これをガス排出口5から排出して流通させ、この状況の下で前記ウェ−ハWを加熱して熱処理する。
その際、ウェ−ハWの裏面は熱処理当初、表面粗さ制御したウェ−ハ支持ピン7の先端面と接触し、その接触面積が実質的に低減されるから、ウェ−ハWの裏面からウェ−ハ支持ピン7へ逃げる熱量が減少され、ウェ−ハW内の温度差ないしその熱応力が減少されて、熱応力によるスリップの発生を抑制する。
このようなウェ−ハWに対する熱処理を繰り返し行なう間に、ウェ−ハ支持ピン7の接触部が消耗し、その影響が接触部近傍の先端部側周面に及び、この先端部側周面が前記消耗によって剥離する。
前記表面粗さ制御部10は微視的には多数の微細な凹凸状に形成され、この凹凸部が剥離の起点位置として機能し、円滑かつ安定して微細に剥離する
このため、剥離後もウェ−ハ支持ピン7の接触部の接触面積の低減が維持され、その交換時期を長期化させて寿命を向上し、熱処理の長期間の高温連続処理を実現し、ウェ−ハWの生産性の向上と品質の安定化を図れる。
したがって、先端部側周面が平滑面の従来の支持ピンのように、接触部の消耗によって1組の支持ピンの先端部側周面が区々または過剰に剥離し、ウェ−ハWに対する接触面積が区々になって、安定した3点支持が損なわれ短期間で使用不能に陥ることがない。
このように本発明は、半導体ウェ−ハの熱処理時にウェ−ハを水平に支持するウェ−ハ支持ピン先端部の形状と表面粗さを合理的に設定し、支持ピン先端部の消耗の一様かつ安定化を促し、接触面積の低減を長期間維持して寿命の向上と熱処理の生産性の向上を図るとともに、支持ピン先端部の消耗を安定させて支持ピン先端部の接触面積と熱容量の低減を長期間維持し、熱応力によるウェ−ハのスリップ欠陥の発生を抑制するとともに、長期間の高温連続処理を実現し、ウェ−ハの品質の安定化と生産コストの低減を図れる、ウェ−ハ支持ピンに好適である。
7 ウェ−ハ支持ピン
8 第1テ−パ軸部
9 第2テ−パ軸部
10 表面粗さ制御部
11 境界部
W 半導体ウェ−ハ
B,B第1テ−パ軸部の長さ
C,C第2テ−パ軸部の長さ
θテーパ角度
θテーパ角度
Ra 表面粗さ
R 凹状湾曲部

Claims (6)

  1. 半導体ウェーハの熱処理時に、ウェーハを底面から支持する支持ピンの先端部側に、先細円錐台形状の第1および第2テーパ軸部を上下に隣接して形成し、その平坦な先端面を所定の表面粗さに形成したウェーハ支持ピンにおいて、先端側の第1テーパ軸部の長さないし高さを第2テーパ軸部よりも長くないし高く形成するとともに、第1テーパ軸部のテーパ面を所定の表面粗さに形成したことを特徴とするウェーハ支持ピン。
  2. 前記第1テーパ軸部のテーパ面の表面粗さRaを、0.5μm≦Ra≦3.0μmに形成した請求項1記載のウェーハ支持ピン。
  3. 前記第1および第2テーパ軸部の略全域を所定の表面粗さに形成した請求項1記載のウェーハ支持ピン。
  4. 前記第2テーパ軸部のテーパ角度を第1テーパ軸部のテーパ角度よりも大きく形成した請求項記載のウェーハ支持ピン。
  5. 前記第1および第2テーパ軸部の境界部に微小な凹状の湾曲部を形成した請求項3記載のウェーハ支持ピン。
  6. 前記ウェーハ支持ピンの先端の接触部外径を、0.1mmφ〜0.3mmφに形成した請求項記載のウェーハ支持ピン。
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