(第1の実施の形態)
以下、第1の実施の形態に係る半導体装置について、添付図面を参照して説明する。
1.半導体装置を使用した装置
(構成)
第1の実施の形態に係る半導体装置を使用した装置の構成について説明する。図1は、本実施の形態に係る半導体装置を使用した装置の構成例を示すブロック図である。この図は、本実施の形態に係る半導体装置としての電力補償(バイパス)回路140を使用した装置100の構成例を示している。ここでは、装置100として自動車を例にして説明する。
この装置100は、電装システムとして、駆動系ブロック(120)と、制御系ブロック(130)と、電力補償回路(140)と、通知装置(150)とを具備している、と見ることができる。ただし、駆動系ブロック(120)は、主電源(111)から第1電源線(114a+121)経路で電力を供給される。制御系ブロック(130)は、主電源(111)から第2電源配線(114b+131)経路で電力を供給される。電力補償回路(140)は、駆動系ブロック(120)と制御系ブロック(130)との間に設けられている。電力補償回路(140)は、第2電源線(131)の電圧が、第1電源線(121)の電圧より所定値以上低下した場合、第1電源線(121)から第2電源線(131)へ電流を流すことで電力を供給し、電流が流れたとき、検出信号(SE)を出力する。通知装置(150)は、電力補償回路(140)から出力される検出信号(SE)に基づく信号に応答して、(ユーザ等へ)異常を通知する。
このような電装システムは、本実施の形態に係る半導体装置としての電力補償(バイパス)回路140を使用しているので、第2電源線(131)の電圧が、第1電源線(121)の電圧より所定値以上低下した場合、第1電源線(121)から第2電源線(131)へ電流を流すことで電力を供給することができる。そして、電流が流れたことを示す検出信号(SE)により、通知装置(150)を介して(ユーザ等へ)異常を通知することができる。それにより、電力補償時に、装置の使用者が認識できない電源断故障の発生を通知することができる。以下、装置100について説明する。
この装置100は、詳細には、バッテリー111と、電源端子盤(ヒューズボックス)112と、コネクタ113と、ハーネス114(114a、114b)と、駆動系ブロック120と、制御系ブロック130と、ユーザーインターフェース(U.I.)ブロック150と、電力補償回路140とを備えている。
バッテリー(主電源)111は、充放電可能な二次電池であり、単一の電池または複数の電池を一まとめにした一つの電池群であり、電位の高い正極端子(+)と電位の低い負極端子(−)とを有している。例えばマイナスアース車では、負極端子(−)はシステムグランドGNDに接続される。以下では、システムグランドGNDを基準電源GNDと呼ぶ。また、基準電源GNDの電圧を基準電源電圧または基準電源電圧GNDと呼ぶ。正極端子(+)からの配線は、電源端子盤112に接続される。
電源端子盤112は、過電流防止用のヒューズと、コネクタ113に接続される接続端子とを備えている。電源端子盤112は、ヒューズを介して、接続端子から電力を出力する。ヒューズおよび接続端子は複数あり、電力の使用形態ごとに分類し、統合される。特に、駆動系ブロック120への電力供給経路と、制御系ブロック130への電力供給経路とは、ヒューズおよび接続端子を別々にした複数の電源配線(第1電源線、第2電源線、等)で構成するのが一般的である。駆動系ブロック120は、動作電流が大きく、容量性負荷による突入電流、誘導性負荷による逆起電圧および大電流による電圧降下等の電源ノイズを発生することがあり、制御系ブロック130は、動作電流が小さく、比較的ノイズに弱いからである。
ハーネス(電源配線ケーブル)114は、電源端子盤112の接続端子ごとに設けられ、両端にコネクタ113を有している。ハーネス114の一端のコネクタ113は電源端子盤112の接続端子に接続され、他端のコネクタは駆動系ブロック120や制御系ブロック130のコネクタ端子に接続される。電源端子盤112は、ハーネス114を介して、駆動系ブロック120や制御系ブロック130へ電力を供給する。例えば、電源端子盤112は、ハーネス114aを介して駆動系ブロック120へ電力を供給し、ハーネス114bを介して制御系ブロック130へ電力を供給する。
駆動系ブロック120は、ハーネス114a(コネクタ113を含む)で構成される電源配線を通して供給される正電圧と、基準電源電圧GNDとで動作する。また、駆動系ブロック120は、内部に、ハーネス114aの他端のコネクタに接続する駆動系電源線121を有している。したがって、駆動系ブロック120は、ハーネス114aおよび駆動系電源線121(第1電源線)を介して供給される電力で、駆動制御回路(図示されず)および駆動装置(図示されず)を駆動する。駆動制御回路は、半導体チップ(例示:MOSFETやIGBT等のパワーデバイスおよび制御ICや、パワーデバイスと制御ICの両方の機能を備えるLSI)を搭載した回路基板を含む電子回路(図示されず)に例示される。駆動装置は、モーター、ソレノイド、電球、ビデオカメラ、カーオーディオ装置に例示される。モーター、ソレノイドおよび電球は誘導性負荷であり、起動および停止時に逆起電圧ノイズを電源線に返す。ビデオカメラおよびカーオーディオ装置は容量性負荷であり、起動時に突入電流ノイズを発生する。また、駆動系ブロック120は、制御系ブロック130と比較して、動作時の消費電流が大きい。
制御系ブロック130は、ハーネス114b(コネクタ113を含む)で構成される電源配線を通して供給される正電圧と、基準電源電圧GNDとで動作する。また、制御系ブロック130は、内部に、ハーネス114bの他端のコネクタに接続する制御系電源線131を有している。したがって、制御系ブロック130は、ハーネス114bおよび制御系電源線131(第2電源線)から供給される電力で、制御回路(図示されず)を動作させる。制御回路は、半導体チップ(例示:ICまたはLSI)を搭載した回路基板を含む電子回路(図示されず)に例示される。制御系ブロック130は、制御信号Scntを駆動系ブロック120へ送信して、駆動系ブロック120の動作を制御する。同時に、制御系ブロック130は、駆動系ブロック120の動作情報を、制御信号Scntとして駆動系ブロック120から受信して、電子回路の制御演算にフィードバックする。また、制御系ブロック130は、制御系ブロック130内の電子回路に電力を供給する電源回路132を持つ。電源回路132は、バッテリー111からの供給電圧を降圧させてロジック電源VLを生成する。ロジック電源VLは、制御系ブロック130内の半導体チップ(例示:ICまたはLSI)を動作させるために必要であり、制御系ブロック130に搭載した電子回路、特に論理演算回路(MPU等)に供給される。また、ロジック電源VLは、ケーブルまたは回路内配線の電源線131a(第3電源線)を通して、電力補償回路140に供給される。
ユーザーインターフェースブロック150は、ハーネスとコネクタとで構成される電源配線(図示されず)を通して供給される正電圧と、基準電源電圧GNDとで動作する。この電源配線は、駆動系ブロック120と別であれば、他の制御回路に接続する電源配線と共通であってもよい。さらに、ユーザーインターフェースブロック150の信号入力回路は、この正電圧を降圧して、基準電源電圧を基準とした別のロジック電源にして使用する。そのため、ユーザーインターフェースブロック150に入力する信号は、基準電源電圧を基準とした信号である必要がある。また、ユーザーインターフェースブロック150は、表示デバイス(図示されず)を有する。表示デバイスは、液晶表示器、メーター、ランプ等で構成される。表示デバイスは、装置100の使用者に装置100の各種情報を表示する。装置100の各種情報としては、走行速度、燃料残量、エンジン冷却液温度等の保安情報が挙げられる。さらに他の情報として、エンジン回転数、走行距離、各種インフォメーションやアラーム等を表示する。
電力補償回路140は、駆動系電源線121と、制御系電源線131とに接続される。また、電力補償回路140は、ロジック電源VLと、基準電源GNDとを電源として供給される。電力補償回路140は電子回路であるため、制御系ブロック130に含まれてもよい。また、制御系ブロック130に搭載された半導体チップに内蔵されてもよい。さらに、駆動系ブロック120に含まれても良い。また、駆動系ブロック120に搭載された半導体チップに内蔵されていても良い。電力補償回路140は、第2電源線の電圧が、第1電源線の電圧より所定値以上低下した場合、第1電源線から第2電源線へ電流を流すことで電力を供給する。そして、電流が流れたことを示す検出信号(SE)またはその検出信号SEに基づく信号としてエラー信号Serrをユーザーインターフェースブロック150に出力する。
(動作)
次に、本実施の形態に係る半導体装置としての電力補償(バイパス)回路140を使用した装置100(図1)の動作について説明する。
電力を供給する電源線、例えばハーネス114やその両端のコネクタが、何らかの原因で断線故障した場合を考える。何らかの原因としては、小さな事故、整備不良、経時劣化等の不具合が考えられる。小さな事故とは、例えば路面の小石等を跳ね上げて、その小石が電源配線に衝突したような場合である。これらの不具合が、さらに大きな2次事故を引き起こさないようにすることが要求される。
まず、駆動系ブロック120への電力供給が絶たれた場合を考える。その故障は、駆動系ブロック120が動作をしなくなることで、装置100の使用者に検知される故障になる。そのため、使用者が適切な処置をすることで、2次事故が発生することはない。また、装置100の使用者に検知され難く、かつ重要な故障については、装置100のシステム(図示されず)が監視している。そして、そのような故障が発生したときは、装置100のシステムは、ユーザーインターフェースブロック150にアラームを表示して、装置100の使用者に通知する。そのため、この場合にも、使用者が適切な処置をすることで、2次事故が発生することはない。
次に、制御系ブロック130への電力供給が絶たれた場合を考える。すなわち、駆動系ブロック120への電力供給が正常で、その駆動系ブロック120を制御する制御系ブロック130への電力供給が絶たれた場合を考える。その場合、駆動系ブロック120は正常に動作するため、使用者の感覚や、装置100のシステムの監視ではこの故障を検知できない場合が考えられる。その場合は、駆動系ブロック120が正常であっても、制御系ブロック130が動作しなければ、期待する動作をすることができないため、2次事故を起こす可能性が高くなる。この問題を避けるために、電力補償回路140は、緊急処置として、生きている駆動系ブロック120の駆動系電源線121から、制御系ブロック130の制御系電源線131に電力を供給する。これにより、制御系ブロック130への電力供給が絶たれたことによる2次事故の発生を防ぐことができる。もちろん、駆動系電源線121からのノイズによって制御系ブロック130が一時的に誤動作する可能性はある。しかし、制御系ブロック130が全く動作しないよりは、使用者が期待する動作をすることが期待できる。特に、制御系ブロック130内の半導体チップの電源として、制御系電源線131の電圧を電源回路132で降圧したロジック電源VLを使用する場合、この降圧処理回路のPSRR(Power Supply Rejection Ratio;電源電圧変動除去比)を比較的高く設計できるため、緊急処置としては十分に役に立つ。
このとき問題になるのは、駆動系ブロック120が、一応正常に制御系ブロック130に制御された動作をすることにより、制御系ブロック130への電力供給を行うコネクタまたはハーネスの断線を、装置100の使用者が検知できないということである。緊急時はともかく、中長期的にみると、駆動系電源線121のノイズによって制御系ブロック130の誤動作が発生する可能性を排除しないでおくことは安全上問題である。また、駆動系ブロック120と制御系ブロック130とでは消費電流が大きく異なるため、同じヒューズでの電流制限では制御系ブロック130のショート系故障を発見できないおそれもある。
この問題を解決するために、本実施の形態の半導体装置としての電力補償回路140は、以下の動作を行う。すなわち、制御系ブロック130への電力供給が絶たれたときに、一時的に駆動系電源線121から制御系電源線131に電力を供給するのと同時に、電力の供給を示す検出信号SEまたはそれに基づくエラー信号Serrをユーザーインターフェースブロック150に出力する。ただし、電力補償回路140が例えばエラー信号Serrを出力するとき、そのエラー信号Serrを制御系ブロック130のマイクロコンピュータ(例示:後述のマイクロコンピュータ134)に通知してもよい。その場合、そのマイクロコンピュータがエラー信号Serrまたはそれに基づく通知信号をユーザーインターフェースブロック150に出力する。あるいは、電力補償回路140がエラー信号Serrを他のマイクロコンピュータ160に通知し、そのマイクロコンピュータがエラー信号Serrをユーザーインターフェースブロック150に出力しても良い。
(効果)
本実施の形態に係る半導体装置としての電力補償回路140を使用した装置100(図1)は、装置100の使用者が検知できない制御系ブロック130の電源配線の故障を、早期に、確実に使用者に伝えて故障の修理を促すことができる。それにより、装置100で起こり得る隠れた安全上の問題を回避することができる。
2.半導体装置としての電力補償回路
(構成)
第1の実施の形態に係る半導体装置の構成について説明する。図2は、本実施の形態に係る半導体装置の構成例を示すブロック図である。この図は、本実施の形態に係る半導体装置としての電力補償(バイパス)回路140の構成例を示している。
本実施の形態に係る半導体装置としての電力補償回路140は、整流回路(141)と、オン検出回路(142)とを備えている。整流回路(141)は、第1電源線(121)と第2電源線(131)との間に接続されたとき、第2電源線(131)の電圧が、第1電源線(121)の電圧より所定値以上低下した場合、第1電源線(121)から第2電源線(131)へ電流を流すことで電力を供給する。検出回路(142)は、整流回路(141)に電流が流れたとき、検出信号(SE)を出力する。
このような電力補償(バイパス)回路140は、第2電源線(131)の電圧が、第1電源線(121)の電圧より所定値以上低下した場合、第1電源線(121)から第2電源線(131)へ電流を流すことで電力を供給し、その電流が流れたことを示す検出信号(SE)を出力できる。それにより、その検出信号(SE)に基づく信号により、(ユーザ等へ)異常を通知することができる。その結果、電力補償時に、装置の使用者が認識できない電源断故障の発生を通知することができる。以下、電力補償回路140について説明する。
この電力補償回路140は、詳細には、駆動系電源線121と制御系電源線131とに接続され、ロジック電源VLと基準電源GNDとで動作して、エラー信号Serrを出力する。電力補償回路140は、整流回路141と検出回路142とを備え、レベルシフタ(レベル変換回路)143を備えていることが好ましい。レベル変換回路の出力をレベル変換信号という。
整流回路141は、高電圧端子と低電圧端子の2つの入力端子(図示されず)を有している。そして、高電圧端子に駆動系電源線121(第1電源線)を接続され、低電圧端子に制御系電源線131(第2電源線)を接続されている。制御系電源線131の電圧が、駆動系電源線121の電圧より所定値以上低下した場合、駆動系電源線121から制御系電源線131へ電流を流すことで電力を供給する。
検出回路142は、整流回路141から、高電圧端子に対応する信号SHと、低電圧端子に対応する信号SLとを受信する。検出回路142は、信号SHと信号SLとに基づいて、整流回路141に電流が流れたとき、検出信号SEを出力する。検出回路142は、駆動系電源線121と、制御系電源線131とを電源として動作する。そのため、検出信号SEの出力電圧は、駆動系電源線121の電圧と、制御系電源線131の電圧との間の電圧になる。より具体的には、検出信号SEは、その出力電圧に関わりなく、電流値ISEの電流信号である。
レベルシフタ143は、検出回路142から、電流信号である検出信号SEを受信する。レベルシフタ143は、受信した検出信号SEを、ロジック電源VLと基準電源GNDとの間の電圧信号に変換して、エラー信号Serrとして出力する。レベルシフタ143の出力電源であるロジック電源VLは、電源回路132で生成され、第3電源線131aから供給される。電源回路132は、基準電源GNDを基準電圧として、制御系電源131から、制御系電源131より低い電圧である、ロジック電源VLの電圧を生成して出力するため、電源電圧変動除去比を高く設計することができる。レベルシフタ143は、このロジック電源VLを使用してエラー信号Serrを生成するので、電源回路131が、制御系電源131として駆動系ブロック120から整流回路141を通して得られる電源電圧を用いてロジック電源VLを生成しても、エラー信号Serrの安定性や信頼性を損なうことは最小限に抑えられる。
(動作)
次に、本実施の形態に係る半導体装置としての電力補償(バイパス)回路140(図2)の動作について説明する。
整流回路141は、駆動系電源線121の電圧より、制御系電源線131の電圧が一定値以上低くなった場合、駆動系電源線121から制御系電源線131に電流を流すことで電力を供給する。それ以外の時は、駆動系電源線121と制御系電源線131とを電気的に絶縁する。
検出回路142は、信号SHと信号SLとを入力され、整流回路141が駆動系電源線121からの電力を制御系電源線131に供給しているか(整流回路141がオンしているか/整流回路141に電流が流れているか)を判定する。例えば、信号SHと信号SLとが電圧信号の場合、両者の差、すなわち電圧差の大きさに基づいて上記判定を行う。そして、検出回路142は、整流回路141がオンした(整流回路141に電流が流れた)と判定した場合、検出信号SEをアクティブにする(出力する)。
レベルシフタ143は、検出信号SEがアクティブになった(または出力された)とき、検出信号SEをレベル変換して、ロジック電源VLと基準電源GNDとの論理信号であるエラー信号Serrを出力する。
(効果)
本実施の形態に係る半導体装置としての電力補償回路140は、制御系ブロック130の電源配線の故障が発生し、駆動系ブロック120から制御系ブロック130へ電力が供給される場合、それを検出して、検出信号として外部へ出力することができる。その検出信号を利用することで、制御系ブロック130の電源配線の故障を外部に通知することが可能となる。それにより、装置100で起こり得る隠れた安全上の問題を回避することができる。
(半導体装置のLSI搭載例)
本実施の形態に係る半導体装置としての電力補償回路140は、様々な形でLSIチップ(半導体チップ)に搭載することができる。図3A〜図3Dは、本実施の形態に係る半導体装置としての電力補償回路140に関するLSIチップ搭載例を示すブロック図である。図3Aは、一つのLSIチップ401に、駆動系ブロック120の駆動回路122と、電力補償回路140と、制御系ブロック130の電源(降圧)回路132および制御回路133とが搭載されている例を示している。一つのLSIチップ401に各回路を統合することで、全体的なチップ面積を削減でき、処理速度が向上でき、部品点数を削減でき、配線作業も容易にすることができる。ここで、駆動系ブロック120では、駆動回路122の信号が外部の駆動装置123へ出力されて、駆動装置123が動作する。電力補償回路140では、整流回路141で電力が供給されたことを検出回路142が検出し、検出信号SEをレベルシフタ143へ出力し、レベルシフタ143が検出信号SEをレベル変換してエラー信号Serrを外部(例示:ユーザーインターフェースブロック150)へ出力する。制御系ブロック130では、駆動系ブロック120から供給された電力を、電源回路132で降圧してロジック電源電圧VLとし、制御回路133や電力補償回路140に供給する。制御回路133と外部のマイクロコンピュータ134とは、双方向通信を行いつつ、駆動系ブロック120(例示:駆動回路122)を制御する。なお、マイクロコンピュータ134は、半導体チップを搭載した回路基板であってもよいし、LSIチップ401に含まれていても良い。
なお、レベルシフタ143がエラー信号Serrをフィルタ回路144へ出力し、フィルタ回路144が所定の条件でフィルタリングされたエラー信号Serrを外部(例示:ユーザーインターフェースブロック150)へ出力してもよい。ここで、フィルタ回路144は、サージやAC的揺れで駆動系電源線121と制御系電源線131との間の電圧差が一時的に開いたときにエラー信号Serrが電力補償回路140から出力されないように、レベルシフタ143からのエラー信号Serrをフィルタリングする。例えば、所定時間継続して出力されるエラー信号Serrを、タイマーを使って検出して出力する回路に例示される。
図3Bは、一つのLSIチップ402に駆動系ブロック120の駆動回路122が搭載され、他の一つのLSIチップ403に電力補償回路140と制御系ブロック130の電源回路132および制御回路133とが搭載されている例を示している。この場合、機能ごとにLSIチップを分けることで、設計や配線の自由度が向上する。なお、マイクロコンピュータ134は、LSIチップ403に含まれていても良い。また、駆動系ブロック120のLSIチップ402は、パワーデバイスと制御ICを搭載したシングルチップ構成でも良いし、それぞれが別チップのマルチチップ構成でも良い。
図3Cは、一つのLSIチップ404に駆動系ブロック120の駆動回路122と電力補償回路140とが搭載され、他の一つのLSIチップ405に制御系ブロック130の電源回路132および制御回路133が搭載されている例を示している。この場合、回路面積の大きい駆動回路122が搭載されたLSIチップ404に電力補償回路140を搭載することで、電力補償回路140の追加による回路面積の増加の影響を低減できる。なお、マイクロコンピュータ134は、LSIチップ405に含まれていても良い。
図3Dは、一つのLSIチップ406に駆動系ブロック120の駆動回路122が搭載され、他の一つのLSIチップ407に電力補償回路140が搭載され、さらに他の一つのLSIチップ408に制御系ブロック130の電源回路132および制御回路133が搭載されている例を示している。この場合、機能ごとにLSIチップを分けることで、設計や配線の自由度が向上する。なお、マイクロコンピュータ134は、LSIチップ408に含まれていても良い。また、駆動系ブロック120のLSIチップ406は、パワーデバイスと制御ICを搭載したシングルチップ構成でも良いし、それぞれが別チップのマルチチップ構成でも良い。
(第2の実施の形態)
以下、第2の実施の形態に係る半導体装置について、添付図面を参照して説明する。本実施の形態では、第1の実施の形態における電力補償回路(半導体装置)の具体例について説明する。
(構成)
図4Aは、本実施の形態に係る半導体装置としての電力補償回路の構成例を示す回路図である。電力補償回路140は、整流回路141と、検出回路142と、レベルシフタ143とを備えている。
整流回路141は、PchMOSトランジスタMP21と、ダイオードD21とを備えている。PchMOSトランジスタMP21は、ソース(および基板電位)を駆動系電源線121に接続され、ゲートをドレインに接続され、いわゆるダイオード接続されている。ダイオードD21は、カソードをPchMOSトランジスタMP21のドレインに接続され、アノードを制御系電源線131に接続されている。この実施の形態では、高電圧端子に対応する信号SHをPchMOSトランジスタMP21のソースから、低電圧端子に対応する信号SLをPchMOSトランジスタMP21のドレインとゲートの接続点からそれぞれ取っている。ダイオード接続のPchMOSトランジスタMP21とダイオードD21に流れる電流を電流Idとする。また、この実施の形態では、ダイオードD21を1段にしているが、2段以上の段数で使用するように設計することができる。この段数で、駆動系電源線121から制御系電源線131に電力供給しはじめる電圧差を調整することができる。つまり、ダイオードD21の直列接続が1段のときは、駆動系電源線121から制御系電源線131への電圧差が−(|VTP|+VF)で電力供給が始まるが、n段のときは、その電圧差が−(|VTP|+nVF)で電力供給が始まる。ただし、電圧VFは、ダイオードD21の順方向電圧降下の値である。電圧レベルVTPは負の値であり、PchMOSトランジスタMP21、MP22の閾値電圧である。
検出回路142は、整流回路141のPchMOSトランジスタMP21と、PchMOSトランジスタMP22とを備えている。PchMOSトランジスタMP22は、ソース(および基板電位)を駆動系電源線121に接続され、ゲートをPchMOSトランジスタMP21のゲートとドレインの接続点に接続されている。すなわち、PchMOSトランジスタMP22は、ソースを高電圧端子に対応する信号SHに接続され、ゲートを低電圧端子に対応する信号SLに接続されている。このとき、検出回路142は、PchMOSトランジスタMP21とPchMOSトランジスタMP22とにより、いわゆるカレントミラー回路を構成している。ここで、ゲートとドレインを接続したPchMOSトランジスタMP21をカレントミラー回路の入力段といい、入力段PchMOSトランジスタMP21とゲートおよびソースを共通にするPchMOSトランジスタMP22をカレントミラー回路の出力段という。また、カレントミラー回路の入力段は、ソース−ドレイン電流を、ソース−ゲート電圧に変換する、電流−電圧変換回路の役割を果たす。そして、カレントミラー回路の出力段は、入力段から受けた電圧信号を電流に変換して出力する、電圧−電流変換回路の役割を果たす。このとき、カレントミラー回路の入力段と出力段とのソース−ドレイン電流の値は、トランジスタの増幅率(hfe)比で比例する。そのため、例えば、カレントミラー回路の入力段のトランジスタと、カレントミラー回路の出力段とのトランジスタの種類が同一で、ディメンジョン(チャネル幅w、チャネル長l)が同じであれば、増幅率も同じになるため、ソース−ドレイン電流値が同じになる。PchMOSトランジスタMP22のドレインは、検出信号SEを出力する。この実施の形態では、検出信号SEおよびその電流ISEは、整流回路241がオフのときには0であり、オンのときにはカレントミラー回路の入力段に流れる電流Idに比例した値になる。
レベルシフタ143は、抵抗R11(第1抵抗)と、抵抗R12(第2抵抗)と、NchMOSトランジスタMN11(第1MOSトランジスタ)と、抵抗R13(第3抵抗)と、NchMOSトランジスタMN12(第2MOSトランジスタ)と、コンパレータCMPとを備えている。抵抗R11と抵抗R12とNchMOSトランジスタMN11は、検出回路142の検出信号SEの出力ノードと基準電源GNDとの間に直列接続される。抵抗R11は、一端を検出信号SEの出力ノードと接続され、他端を抵抗R12の一端と接続される。抵抗R12は、他端をNchMOSトランジスタのドレインに接続される。NchMOSトランジスタは、ゲートをドレインに接続され、ソースと基板を基準電源GNDに接続される。抵抗R13とNchMOSトランジスタMN12とは、ロジック電圧VLを供給する電源線131aと基準電源GNDの間に直列接続される。抵抗R13は、一端を電源線131aに接続され、他端をNchMOSトランジスタMN12のドレインに接続される。NchMOSトランジスタMN12は、ゲートをドレインに接続され、ソースと基板を基準電源GNDに接続される。コンパレータCMPは、ロジック電源VLと基準電源GNDとで動作する。コンパレータCMPは、正転入力(+端子)を抵抗R11と抵抗R12との接続点に接続されて入力信号Vinを入力され、反転入力(−端子)を抵抗R13とNchMOSトランジスタMN12のドレインとの接続点に接続されて基準信号Vrefを入力され、エラー信号Serrを出力する。
このとき、抵抗R12の値は、電圧降下(=R12×ISE)の値が、コンパレータCMPの入力オフセット電圧の最大値より大きくなるように設定する。また、コンパレータCMPは、少なくとも、基準電源GND側のレール特性(基準電源電圧GND近くの電圧で正しく動作する)を有する必要がある。これは、コンパレータとして既存のレールツーレール特性のオペアンプを、帰還なしで使用することで実現できる。
ただし、レベルシフタ143は、他の構成を有していても良い。図4Bは、本実施の形態に係る半導体装置としての電力補償回路の他の構成例を示す回路図である。この図では、電力補償回路140aは、レベルシフタ143aが図4Aのレベルシフタ143と相違している。具体的には、レベルシフタ143aは、さらに、抵抗R13とNchMOSトランジスタMN12との間に抵抗R14を備えている。コンパレータCMPは、反転入力(−端子)を抵抗R13と抵抗R14との接続点に接続されて基準信号Vrefを入力される。抵抗R14は、コンパレータCMPの最大オフセット電圧以上の電圧降下が起きる抵抗値を選択する。抵抗R12は、検出信号SEがアクティブのときに、例えばR14の2倍の電圧降下が起きる抵抗値を選択する。これにより、コンパレータCMPに入力オフセットがある場合でも、検出信号SEがイナクティブのときには確実にエラー信号Serrをオフにし、検出信号SEがアクティブのときには確実にエラー信号Serrをオンさせることができる。
(動作)
図5は、本実施の形態に係る半導体装置としての電力補償回路の信号電圧を示す波形図である。以下では、図4Aの構成の動作について説明するが、図4Bの構成の場合も同様である。ここで、(a)の信号「駆動系電源(SH)」は、駆動系電源線121の電圧値であり、高電圧端子に対応する信号SHと同じである。(b)の信号「制御系電源」は、制御系電源線131の電圧値である。(c)の信号「検出信号(ISE)」は、検出回路142の出力である検出信号SEの電流波形である。(d)の信号CMPp(Vin)は、コンパレータCMPの正転入力端子の入力信号Vinである。(e)の信号CMPn(Vref)は、コンパレータCMPの反転入力端子の入力信号Vrefである。(f)の信号「エラー信号(Serr)」は、レベルシフタ143の出力であり、電力補償回路140の出力であるエラー信号Serrである。
電圧VBattのレベルは、バッテリー111の電圧レベルである。電圧VFは、ダイオードD21の順方向電圧降下の値である。電圧レベルVTPは負の値であり、PchMOSトランジスタMP21、MP22の、ソースと基板が同電位のときの閾値電圧である。電圧レベルVTPは、バッテリー電圧VBattを基準の電圧とする。電圧レベルGNDは、基準電源GNDの電圧レベルである。電圧レベルVLは、ロジック電源VLの電圧レベルである。電圧レベルVTNは、NchMOSトランジスタMN11およびMN12のソースと基板が同電位のときのNchMOSトランジスタMN11、MN12の閾値電圧である。電圧レベルVTNは、基準電源GNDを基準の電圧とする。ここで、例えば、電圧VFの値は、シリコンダイオードの場合0.7V程度であり、電圧VTPと電圧VTNの値は、1V前後である。
時刻t0は、制御系電源線131が駆動系電源線121と同じ電圧Vbattである時刻である。時刻t1は、制御系電源線131が断線(オープン)に変化する時刻である。時刻t2は、その後の修理等により、制御系電源線131が駆動系電源線121と同じ電圧Vbattに戻る時刻である。通常は、主電源を切断した状態で修理を行うが、この波形図では、主電源を接続したままで修理(復旧)しても問題がないことを示す。
信号SHの電圧値は、時刻によらず、動作ノイズが発生するときを除けば、ほぼバッテリー電圧Vbattと等しく、一定である。コンパレータCMPの反転入力端子CMPnの電圧(Vref)も、時刻によらず、より安定に、基準電源GNDの値とロジック電源VLの値の間の電圧値である電圧レベルVTNの値をとる。
時刻t0では、制御系電源線131の電圧と駆動系電源線121の電圧とが等しい。そのため、整流回路141はオフしている。このとき、駆動系電源(SH)が動作をして電圧降下が起きたとしても、ダイオードD21に掛かる電圧は逆バイアスのままであるので、PchMOSトランジスタMP21はオフのままであり、この状態は安定している。このとき、検出信号(ISE)の電流値は0であり、それに直列に接続する、抵抗R11、R12およびNchMOSトランジスタMN11には電流が流れない。そのため、抵抗R11と抵抗R12の両端の電圧はすべて等しくなる。NchMOSトランジスタMN11のソースの電圧とドレインの電圧は、時刻t2の説明で述べるように、基準電源GNDに近い値を取るため、それと同電位の反転入力端子CMPpの信号もGNDに近い値を取る。コンパレータCMPの正転入力端子CMPpの信号がほぼGND電圧で、反転入力端子CMPnには一定の電圧Vref(電圧VTN)が入力されているため、コンパレータCMPはローレベルを出力する。つまり、エラー信号Serrはローレベル(エラーなし)になる。
時刻t1で、制御系電源線131が断線して電力供給が止まる。すると、制御系ブロック130の負荷が電流を引くため、制御系電源線131の電圧が下がる。その電圧がVBatt−(|VTP|+VF)以下の値になると、PchMOSトランジスタMP21とダイオードD21がともにオンする。すると、駆動系電源線121から制御系電源線131に、オンしたPchMOSトランジスタMP21とダイオードD21とを通して、電流Idが流れ、電力が供給される。PchMOSトランジスタMP21とダイオードD21を通った電圧は、駆動系電源線121より、PchMOSトランジスタの閾値電圧降下|VTP|とダイオードの順方向電圧降下VFの分だけ低い電圧になり、制御系電源線131の電圧はVbatt−(|VTP|+VF)の値になる。したがって、駆動系電源線121から制御系電源線131に、(Vbatt−(|VTP|+VF))×Idの電力が供給される。このとき、PchMOSトランジスタMP21とカレントミラーを構成するPchMOSトランジスタMP22はオンになり、電流を流す。オンしたPchMOSトランジスタMP22と抵抗R11、R12を通して、NchMOSトランジスタMN11のゲートに駆動系電源線121の電圧が印加され、電圧が高くなる。その電圧がGND+VTN以上になると、NchMOSトランジスタMN11がオンになる。その結果、PchMOSトランジスタMP22は、PchMOSトランジスタMP21とPchMOSトランジスタMP22との増幅率比の電流ISEを出力する。これが検出信号SEになる。NchMOSトランジスタMN11は、ドレインとゲートを接続した、いわゆるダイオード接続のため、そのソースドレイン電圧は、ほぼNchMOSトランジスタの閾値電圧VTNの値になる。コンパレータCMPの正転入力端子CMPpの電圧は、他端でNchMOSトランジスタMN11と直列接続した抵抗R12の一端の電圧信号Vinであるため、コンパレータCMPの正転入力端子CMPpの電圧Vinは、電流ISEが正の値のため、Vin=VTN+R12×ISE>VTNになる。コンパレータCMPの反転入力端子CMPnの電圧Vrefの値はVTNのため、コンパレータCMPはハイレベルを出力する。これにより、電力補償回路140は、エラー信号Serrとしてハイレベル(エラーあり)の信号を出力する。
時刻t2は、制御系ブロック130への電源配線(例示:ハーネス114b)の断線が修理されて、バッテリー111と接続された時刻を表す。制御系電源(SL)の電圧がバッテリーの電圧VBattに戻るため、PchMOSトランジスタMP21のソースの電圧と、ダイオードD21のアノードの電圧とが等しくなり、整流回路141はオフする。そして、駆動系電源線121から制御系電源線131への電力供給が停止する。また、これにより、カレントミラー入力段のPchMOSトランジスタMP21がオフするため、カレントミラー出力段のPchMOSトランジスタMP22もオフする。そのため、抵抗R11、R12に流れる電流が0になり、NchMOSトランジスタMN11のゲートの電圧が急速に低下していく。NchMOSトランジスタMN11のソース−ドレイン電圧は、NchMOSトランジスタの閾値電圧VTNになるが、時間が経つと、NchMOSトランジスタMN11のサブスレッショルド電流により、次第に基準電源GNDに近づいていく。これに伴い、抵抗R11と抵抗R12の両端の電圧はすべて基準電源GNDに近づいていく。つまり、コンパレータCMPの正転入力端子CMPpの信号VinもGNDに近づいていく。コンパレータCMPは、信号Vinの電圧が、信号Vrefの電圧より低くなったときに、ローレベルを出力する。すなわち、電力補償回路140は、エラー信号Serrとしてローレベル(エラーなし)の信号を出力する。なお、先に述べたように、この例では、主電源(例示:バッテリー111)を接続したまま制御系電源線131の修理(復旧)が行われた場合を示したが、主電源を切断して修理を行えば、最初から電圧Vinは基準電源GNDになっている。そのため、修理後に主電源を接続すると最初からこの状態になっている。これにより、電力補償回路140は、エラー信号Serrとしてローレベル(エラーなし)の信号を出力する。
本実施の形態においても、上記実施の形態と同様の効果を奏することができる。
また、本実施の形態では、低電圧端子に対応する信号SLとして、PchMOSトランジスタMP21のドレインとゲートの接続点の電圧を使用している。そのため、制御系電源線131が正しく接続されているときにはダイオードD21がオフして、検出回路142が制御系電源線131と分離されている。そのため、駆動系電源線121や制御系電源線131に瞬間的に大きな電源ノイズが乗ったときに、検出回路142が誤動作する可能性をより小さくすることができる。
<第1バリエーション>
レベルシフタ143は、他の構成を有していても良い。図6は、レベルシフタのバリエーションの構成例を示す回路図である。このレベルシフタ143bとレベルシフタ143(図4A)との相違は、コンパレータCMPの入力信号Vinおよび基準電圧信号Vrefを生成するダイオード接続のNchMOSトランジスタの段数である。このレベルシフタ143bは、ダイオード接続のNchMOSトランジスタを2段直列の構成にしている。もちろん、直列接続の段数は2段に限るものではなく、3段以上のn(nは3以上の自然数)段であってもよい。
具体的に説明する。ダイオード接続のNchMOSトランジスタMN23は、ドレインをダイオード接続のNchMOSトランジスタMN21のソースに接続され、ソースを基準電源GNDに接続されている。また、ダイオード接続のNchMOSトランジスタMN24は、ドレインをダイオード接続のNchMOSトランジスタMN22のソースに接続され、ソースを基準電源GNDに接続されている。
この構成により、コンパレータCMPの入力信号Vinのアクティブ時の電圧および基準電位Vrefの電圧を、NchMOSトランジスタの閾値電圧VTN分だけさらに高くすることができる。コンパレータCMPの基準電源GND側のレール特性がない安価なコンパレータでも、図4Aや図4Bの場合と同様の効果を奏することができる。
<第2バリエーション>
レベルシフタ143は、さらに他の構成を有していても良い。図7は、レベルシフタの他のバリエーションの構成例を示す回路図である。このレベルシフタ143cとレベルシフタ143b(図6)との相違は、直列接続されたダイオード接続のNchMOSトランジスタのうち、上のトランジスタの基板電位を、そのトランジスタのソースから取る点である。もちろん、直列接続の段数は2段に限るものではなく、3段以上のn段であってもよい。
具体的に説明する。ダイオード接続のNchMOSトランジスタMN21は、基板電位をNchMOSトランジスタMN21自身のソースから取っている。ダイオード接続のNchMOSトランジスタMN22は、基板電位をNchMOSトランジスタMN22自身のソースから取っている。
この構成により、NchMOSトランジスタMN21、MN22のバックバイアス効果を考慮する必要がなくなる。そのため、レベルシフタ143bよりさらに精度よく、コンパレータCMPの入力信号Vinのアクティブ時の電圧および基準電位Vrefの電圧を、それぞれNchMOSトランジスタの閾値電圧VTN分だけ高くすることができる。コンパレータCMPの基準電源GND側のレール特性がない安価なコンパレータでも、図4Aや図4Bの場合と同様の効果を奏することができる。
<第3バリエーション>
レベルシフタ143は、さらに他の構成を有していても良い。図8は、レベルシフタのさらに他のバリエーションの構成例を示す回路図である。このレベルシフタ143dとレベルシフタ143c(図7)との相違は、抵抗R12の代わりにダイオード接続のNchMOSトランジスタMN25を使用している点である。この例では、ダイオード接続のNchMOSトランジスタMN25を1段で示しているが、もちろん、2段以上の直列接続にしてもよい。
具体的に説明する。ダイオード接続のNchMOSトランジスタMN25は、ドレインとゲートを抵抗R11の他端に接続され、ソースをNchMOSトランジスタMN21のドレインとゲートに接続されている。コンパレータCMPは、入力信号Vinを、抵抗R11とNchMOSトランジスタMN25のドレインとの接続点から取っている。
この構成により、検出信号SEがオンのとき、その電流値にかかわらず、コンパレータCMPの入力信号Vinの値をコンパレータCMPの基準電圧VrefよりNchMOSトランジスタの閾値電圧VTN分だけ高い電圧にすることができるようになる。こうして、図4Aや図4Bの場合と同様の効果を奏することができるようになる。
(第3の実施の形態)
以下、第3の実施の形態に係る半導体装置について、添付図面を参照して説明する。本実施の形態では、電力補償回路のレベルシフタの構成が第2の実施の形態の構成と相違している。以下、主に相違点について説明する。
(構成)
図9Aは、本実施の形態に係る半導体装置としての電力補償回路の構成例を示す回路図である。電力補償回路140bは、整流回路141と、検出回路142と、レベルシフタ243とを備えている。このうち、整流回路141は、第2の実施の形態(図4A、図4B)での整流回路141と同じである。また、検出回路142も、第2の実施の形態(図4A、図4B)での検出回路142と同じである。
レベルシフタ243は、抵抗R32と、ヒステリシスバッファHB31とを備えている。抵抗R32は、一端を検出回路142に接続され、他端を基準電源GNDに接続される。抵抗R32の一端には、検出回路142から検出信号SEが入力される。ヒステリシスバッファHB31は、ロジック電源VLと基準電源GNDとで動作する。ヒステリシスバッファHB31の入力端子は、抵抗R32の一端に接続され、エラー信号Serrを出力する。
(動作)
整流回路141がオフしているときは、ダイオードD21はオフしていて、カレントミラー回路入力段のPchMOSトランジスタMP21に流れる電流は0である。そのため、カレントミラー回路出力段のPchMOSトランジスタMP22に流れる電流も0であり、オフしている。検出信号SEは、電流ISEが0になり、抵抗R32に流れる電流も0になるため、抵抗R32の両端も同電位(基準電源GND)になる。ヒステリシスバッファHB31は入力端子の電位が基準電源GNDになるため、出力はローレベルになる。これにより、電力補償回路340は、エラー信号Serrとして、ローレベル(エラーなし)を出力する。
整流回路141がオンしているときは、ダイオードD21とPchMOSトランジスタMP21はオンして電流Idを出力している。そして、ダイオード接続のPchMOSトランジスタMP21のソース−ドレイン電圧は、ほぼ閾値電圧VTPに、ダイオードD21のカソード−アノード電圧は、ほぼ順方向電圧降下VFになる。したがって、駆動系電源線121から制御系電源線131に、(Vbatt−(|VTP|+VF))×Idの電力が供給される。PchMOSトランジスタMP21とMP22とはカレントミラーを構成しているため、増幅率比に応じた電流が、PchMOSトランジスタMP22に流れる。仮に、PchMOSトランジスタMP21とMP22との増幅率が等しいとすると、検出電流ISEもIdになる。
抵抗R32には検出電流ISEが流れるため、抵抗R32の一端の電圧Vr32は、Vr32=ISE×R32になる。この電圧Vr32が、ヒステリシスバッファHB31の立ち上り時の入力論理閾値より大きくなるように抵抗R32の抵抗値を設計すると、ヒステリシスバッファHB31の出力は、ハイレベルになる。これにより、電力補償回路340は、エラー信号Serrとして、ハイレベル(エラーあり)を出力する。
整流回路141がオン状態からオフ状態に変化したとき、PchMOSトランジスタMP21のソースの電圧と、ダイオードD21のアノードの電圧とが等しくなるので、PchMOSトランジスタMP21がオフして、電流が0になる。同時に、カレントミラー接続しているPchMOSトランジスタMP22もオフして、電流が0になる。その結果、検出信号SEの電流ISEが0(オン検出なし)に変化する。これにより、電力補償回路140bは、エラー信号Serrとして、ローレベル(エラーなし)に変化する。
本実施の形態においても、上記各実施の形態と同様の効果を奏することができる。
また、本実施の形態では、検出信号SEを抵抗R32で電流−電圧変換しているため、検出信号SEが0(オフ)になれば、すぐにコンパレータの入力電圧を0Vにすることができる。つまり、より短い時間でエラー信号Serrをローレベル(エラーなし)にすることができる。また、コンパレータより回路規模が小さいヒステリシスバッファでレベルシフタを構成することができるため、コストダウンになる。
(変形例)
ただし、上記電力補償回路140bは、次のように変形しても良い。図9Bは、本実施の形態に係る半導体装置としての電力補償回路の構成の変形例を示す回路図である。電力補償回路140cは、整流回路141と、検出回路142aと、レベルシフタ243aとを備えている。このうち、整流回路141は、図9Aの整流回路141と同じである。
検出回路142aは、図9Aの検出回路142に加えて、抵抗R31をさらに備えている。抵抗R31は、一端をPchMOSトランジスタMP21のソースに接続され、他端をPchMOSトランジスタMP21のゲートに接続されている。ちなみに、この抵抗R31は、第2の実施の形態(図4A、図4B)の検出回路142にも同様に適用できる。
レベルシフタ243aは、図9Aのレベルシフタ243に加えて、ツェナーダイオードZD31と、抵抗R34とを備えている。ツェナーダイオードZD31は、カソードを抵抗R34の一端に接続され、アノードをヒステリシスバッファHB31の入力端子に接続されている。抵抗R34は、他端を基準電源GNDに接続されている。
(動作)
整流回路141がオフしているときは、ダイオードD21はオフしている。そのため、PchMOSトランジスタMP21は、ソースとゲートが抵抗R31により同電位になり、オフする。PchMOSトランジスタMP22もソースとゲートが抵抗R31に接続しており、同電位になるため、オフする。検出信号SEは、電流ISEが0になり、抵抗R32に流れる電流も0になるため、抵抗R32の両端も同電位(基準電源GND)になる。ヒステリシスバッファHB31は入力端子の電位が基準電源GNDになるため、出力はローレベルになる。これにより、電力補償回路340は、エラー信号Serrとして、ローレベル(エラーなし)を出力する。
駆動系電源線121の電圧より、制御系電源線131の電圧がダイオードD21の順方向電圧降下VF以上に低下すると、ダイオードD21はオンし、抵抗R31とダイオードD21を通して、初期電流Id’が流れる。そして、抵抗R31の電圧降下である、抵抗R31の抵抗値と初期電流Id’の積がPチャンネルMOSトランジスタMP21の閾値VTPの絶対値より大きくなると、PチャンネルMOSトランジスタMP21がオンする。PチャンネルMOSトランジスタMP21の増幅率と抵抗R31の抵抗値とを適切に設計すると、抵抗R31の両端の電圧は、PチャンネルMOSトランジスタの閾値VTPでクランプされる。このように、本変形例では、図9Aの整流回路141と異なり、整流回路141の動作開始がダイオードD21の順方向電圧降下VFで決まる。
つまり、駆動系電源線121の電圧より、制御系電源線131の電圧が順方向電圧降下VF以上に低下すると、整流回路141はオンしはじめてしまう。そして、電流Idが増加するとその電圧差が大きくなるが、適切な設計をすれば、最終的に図9Aと同じ|VTP|+VFの電圧差に収まることになる。
整流回路141がオンしているときは、ダイオードD21とPchMOSトランジスタMP21はオンして、整流回路141は電流Idを出力している。そして、ダイオード接続のPchMOSトランジスタMP21のソース−ドレイン電圧は、ほぼ閾値電圧VTPに、ダイオードD21のカソード−アノード電圧は、ほぼ順方向電圧降下VFになる。すると、抵抗R31を流れる電流Ir31は、Ir31=VTP/R31になる。そのため、PchMOSトランジスタMP21のソース−ドレイン電流Imp21は、Imp21=Id−VTP/R31になる。PchMOSトランジスタMP21とMP22とはカレントミラーを構成しているため、増幅率比に応じた電流が、PchMOSトランジスタMP22に流れる。仮に、PchMOSトランジスタMP21とMP22との増幅率が等しいとすると、検出電流ISEもISE=Imp21=Id−VTP/R31になる。
抵抗R32には検出電流ISEが流れるため、抵抗R32の一端の電圧Vr32は、Vr32=ISE×R32になる。この電圧Vr32が、ヒステリシスバッファHB31の立ち上り時入力論理閾値より大きくなるように抵抗R31と抵抗R32の抵抗値を設計すると、ヒステリシスバッファHB31の出力は、ハイレベルになる。これにより、電力補償回路340は、エラー信号Serrとして、ハイレベル(エラーあり)を出力する。
整流回路141がオン状態からオフ状態に変化したとき、抵抗R31の電流も0に変化するため、その両端が同電位に変化する。そして、それに接続するPchMOSトランジスタMP21のゲートとソースも同電位に変化するため、オフする。同時に、カレントミラー接続しているPchMOSトランジスタMP22のゲートとソースも同電位に変化するため、PchMOSトランジスタMP22もオフし、検出信号SEがハイインピーダンス(オン検出なし)に変化する。これにより、電力補償回路340は、エラー信号Serrとして、ローレベル(エラーなし)に変化する。
ツェナーダイオードZD31と抵抗R34を直列接続した部分回路は、ロジック電源VLと基準電源GNDで動作するヒステリシスバッファHB31の入力耐圧を超えないように、入力電圧Vr32の値をクランプする機能を持つ。
本変形例においても、上記各実施の形態と同様の効果を奏することができる。
また、本変形例では、抵抗R31により、整流回路141がオフしているときの整流回路141の出力信号SH、SLを安定してオフ(同電位)にすることができる。また、整流回路141がオンからオフに変化するときは、より短い時間で整流回路241の出力信号SH、SLをオフにすることができる。
(第4の実施の形態)
以下、第4の実施の形態に係る半導体装置について、添付図面を参照して説明する。本実施の形態では、電力補償回路の整流回路と検出回路の構成が第2の実施の形態と相違している。以下、主に相違点について説明する。
(構成)
図10Aは、本実施の形態に係る半導体装置としての電力補償回路の構成例を示す回路図である。電力補償回路140dは、整流回路141aと、検出回路142bと、レベルシフタ143とを備えている。
整流回路141aは、ダイオードD11と、ダイオードD12とを備えている。ダイオードD11とダイオードD12とは直列に接続されている。ダイオードD11は、カソードを駆動系電源線121に接続されている。ダイオードD12は、カソードをダイオードD11のアノードに接続され、アノードを制御系電源線131に接続されている。整流回路141aは、ダイオードD11のカソードから高電圧端子に対応する信号SHを出力し、ダイオードD12のアノードから低電圧端子に対応する信号SLを出力する。この例では、ダイオードの直列接続を2段(D11、D12)にしているが、2段以上の段数で使用するように設計することもできる。この段数で、駆動系電源線121から制御系電源線131に電力供給し始める電圧差を調整することができる。つまり、ダイオードの直列接続が2段のときは、駆動系電源線121から制御系電源線131への電圧差が−2×VFで電力供給が始まる。ダイオードの直列接続がn段の時は、その電圧差が−n×VFで電力供給が始まる。
検出回路142bは、PchMOSトランジスタMP11を備えている。PchMOSトランジスタMP11は、ソースをダイオードD11のカソードに接続され、高電圧端子に対応する信号SHを供給され、ゲートをダイオードD12のアノードに接続され、低電圧端子に対応する信号SLを接続され、ソースを基板電位に接続されている。検出回路142bは、PchMOSトランジスタMP11のドレインから、検出信号SEを出力する。検出信号SEは、PchMOSトランジスタMP11がオフの場合に電流値ISEが0であり、PchMOSトランジスタMP11がオンの場合に電流ISEが正の値になる電流信号である。
レベルシフタ143は、第2の実施の形態(図4A)のレベルシフタ143と同じである。
ただし、レベルシフタ143は、他の構成を有していても良い。図10Bは、本実施の形態に係る半導体装置としての電力補償回路の他の構成例を示す回路図である。この図では、電力補償回路140eは、レベルシフタ143aが図10Aのレベルシフタ143と相違している。このレベルシフタ143aは、第2の実施の形態の他の構成例(図4B)と同じである。
(動作)
図11は、本実施の形態に係る半導体装置としての電力補償回路の信号電圧を示す波形図である。以下では、図10Aの構成の動作について説明するが、図10Bの構成の場合も同じである。ここで、(a)〜(f)の信号については、第2の実施の形態の図5の場合と同様である。ただし、(c)の信号「検出信号(SE)」は、検出回路142bの出力である検出信号SEであり、電圧波形であらわしている。
この図における符号も第2の実施の形態の図5の場合と同様である。ただし、電圧VFは、ダイオードD11、D12の順方向電圧降下の値である。また、PchMOSトランジスタMP11の閾値電圧VTPは、適用製品に許容される製造バラつき範囲内で、その絶対値が最大の値で検討する。この実施の形態では、VF×2=1.4V>|VTP|となるデバイスを採用する。もちろん、VF×2<|VTP|となるデバイスでは、直列接続のダイオードの数をn個に増やして、VF×n>|VTP|とすればよい。
時刻t0では、信号SHと信号SLとが同じ電圧である。そのため、PchMOSトランジスタMP11のソースとゲートが同じ電位になり、PchMOSトランジスタMP11はオフしている。この時、駆動系電源(SH)が動作をして電圧降下が起きたとしても、PchMOSトランジスタMP11のゲート電圧がソース電圧より高くなるだけであるので、PchMOSトランジスタMP11はオフのままであり、この状態は安定している。このとき、オン検出信号(SE)はハイインピーダンスになり、それに直列に接続する、抵抗R11、R12およびNchMOSトランジスタMN11には電流が流れない。そのため、抵抗R11と抵抗R12の両端の電圧はすべて等しくなる。NchMOSトランジスタMN11のソースとドレインの電圧は、基準電源GNDに近い値を取るため、それと同電位の正転入力端子CMPpもGNDに近い値を取る。コンパレータCMPの正転入力端子CMPpの信号がほぼGND電圧で、反転入力端子CMPnの信号には一定の電圧Vref(電圧VTN)が入力されているため、コンパレータCMPはローレベルを出力する。つまり、エラー信号Serrはローレベル(エラーなし)になる。
時刻t1で、制御系電源線131が断線して電力供給が止まる。すると、制御系ブロック130の負荷が電流を引くため、制御系電源線131の電圧が下がる。その電圧がVBatt−2VF以下の値になると、ダイオードD11、D12がともにオンする。すると、駆動系電源線121から制御系電源線131に、オンしたダイオードD11、D12を通して、電力が供給される。ダイオードD11、D12を通った電力は、駆動系電源線121より、ダイオードの順方向電圧降下VFの2倍の電圧だけ低い電圧になる。そのため、信号SLはVbatt−2VFの値になる。したがって、ソースを信号SH(電圧VBatt)に接続し、ゲートを信号SL(電圧VBatt−2VF)に接続するPchMOSトランジスタMP11は、ゲートの電圧がソースの電圧より閾値電圧VTP以上低くなるためオンする。オンしたPchMOSトランジスタMP11と、直列の抵抗R11、R12を通して、NchMOSトランジスタMN11のゲートに駆動系電源線121の電圧が印加され、電圧が高くなる。その電圧がGND+VTN以上になると、NchMOSトランジスタMN11がオンして、検出信号SEの電流ISEが流れる。NchMOSトランジスタMN11は、ドレインとゲートを接続した、いわゆるダイオード接続のため、そのソースドレイン電圧は、ほぼNchMOSトランジスタの閾値電圧VTNの値になる。コンパレータCMPの正転入力端子CMPpの電圧は、他端でNchMOSトランジスタMN11と直列接続した抵抗R12の一端の電圧信号Vinであるため、コンパレータCMPの正転入力端子CMPpの電圧Vinは、電流ISEが正の値のため、Vin=VTN+R12×ISE>VTNになる。コンパレータCMPの反転入力端子CMPnの電圧Vrefの値はVTNのため、コンパレータCMPはハイレベルを出力する。これにより、電力補償回路140dは、エラー信号Serrとしてハイレベル(エラーあり)の信号を出力する。
時刻t2は、制御系ブロック130への電源配線(例示:ハーネス114b)の断線が修理されて、バッテリー111と接続された時刻を表す。制御系電源(SL)の電圧がバッテリーの電圧VBattに戻るため、ダイオードD11、D12のカソードとアノードの電圧が等しくなり、整流回路141aはオフする。そして、駆動系電源線121から制御系電源線131への電力供給が停止する。また、これにより、PchMOSトランジスタMP11のゲートとソースの電圧が等しくなるため、PchMOSトランジスタMP11もオフする。そのため、抵抗R11、R12に流れる電流が0になり、NchMOSトランジスタMN11のゲート電圧が急速に低下していく。NchMOSトランジスタMN11のソース−ドレイン電圧は、NchMOSトランジスタの閾値電圧VTNになるが、時間が経つと、NchMOSトランジスタMN11のサブスレッショルド電流により、次第に基準電源GNDに近づいていく。これに伴い、抵抗R11と抵抗R12の両端の電圧はすべて基準電源GNDに近づいていく。つまり、コンパレータCMPの正転入力端子CMPpの信号VinもGNDに近づいていく。コンパレータCMPは、信号Vinの電圧が、信号Vrefの電圧より低くなったときに、ローレベルを出力する。先に述べたように、この例では、主電源を接続したまま制御系電源線131の修理(復旧)が行われた場合を示したが、主電源を切断して修理を行えば、最初から電圧Vinは基準電源GNDになっている。そのため、修理後に主電源を接続すると最初からこの状態になっている。これにより、電力補償回路140dは、エラー信号Serrとしてローレベル(エラーなし)の信号を出力する。
ところで、第1〜第3の実施の形態の検出回路(142,142a)は、整流回路141の電流で整流回路141が電流を流している(オンしている)ことを検出している。これに対して、本実施の形態の整流回路141bは、PchMOSトランジスタMP11の閾値電圧VTPを整流回路141aに電流が流れているときの電圧(つまり、VF×2)よりも小さくなるように設定することによって、整流回路141aに電流が流れている(オンしている)状態であれば、確実に検出することができる。
ここで、特許文献3は、対象のコントローラの基準電圧からの電源電圧値を、他のコントローラの基準電圧から測定した電源電圧値と比較している。そもそも、特許文献3は、他のコントローラの電源供給路が断線していれば、対象のコントローラの電源電圧値が適正かどうか判断できないが、他のコントローラの電源供給路が正常であるときでも、誤差によって誤報を起こす場合がある。
つまり、特許文献3では、検出対象の電源電圧値と比較対象の電源電圧値との差電圧(検出閾値)を小さくすると、異なるコントローラ間の基準電圧の誤差や、電源電圧測定回路の誤差によって、実際に整流回路がオンしていなくても、整流回路がオンしたという誤報を起こす可能性が高くなる。その誤報を避けるために、差電圧のマージンを大きくすると、整流回路がオンしていても正しく報告をすることができなくなる。そのため、検出閾値となる差電圧の設計が非常に困難になる。
これに対して、本実施の形態では、整流回路の電圧降下そのものを測定している。これにより、異なるブロック間の基準電圧の誤差の影響を受けることがなくなるとともに、コントローラの電圧値に対して値が小さい差電圧そのものを測定すればよいため、その精度を格段にあげることができる。そのため、整流回路が電流を流していれば(オンしていれば)、必ずそれを検出できるようにすることができる。
本実施の形態では、基準電圧に依存しない、所定の差電圧そのものを最大値とする電圧測定を行う構成にしたことで、整流回路が電流を流している(オンしている)ことを高精度に検出して、誤報がない出力を可能にしている。
本実施の形態においても、上記各実施の形態と同様の効果を奏することができる。
以上示されるように、上記各実施の形態に係る半導体装置としての電力補償回路は、制御系ブロックの電源配線の故障が発生したとき、駆動系ブロックから制御系ブロックへ電力を供給すると共に、それを検出して、検出信号として外部へ出力することができる。その検出信号を利用することで、制御系ブロックの電源配線の故障を、早期に、確実に外部に通知することが可能となる。それにより、その半導体装置を適用した装置の使用者は、故障の修理などの対応を取ることができ、その装置で起こり得る隠れた安全上の問題を回避することができる。
また、上記の各実施の形態に係る半導体装置を自動車以外の別の装置に適用した場合でも、自動車に適用した場合と同様に、上記の各実施の形態の効果を奏することができる。ただし、その別の装置は、電源が供給される二つの機能ブロックを備え、一方の機能ブロックの電源が遮断されたとき、他方の機能ブロックの電源を、電源が遮断された機能ブロックへ供給する装置である。
特に自動車に対して上記の各実施の形態に係る半導体装置を適用すると、安全運転の面で著しい効果を発揮することができる。使用者が検知できない制御系ブロック130の電源配線の故障は、自動車の運転において重大な安全上の問題を有している。それに対して、上記の各実施の形態に係る半導体装置を自動車に適用することで、その故障を早期に確実に使用者に伝えることができる。それにより、使用者は、自動車が故障していることを把握できるので、適切な対応を取ることが可能となり、安全上の問題を回避することができる。
上記各実施の形態に記載された各種の技術は、技術的矛盾の発生しない限り、他の実施の形態に適用可能であることはいうまでもない。
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。