JP6085125B2 - 丸編機 - Google Patents
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Description
なお、「ベアフライス」は、ダブルの丸編機(シリンダ及びダイヤルを備えた丸編機)でベア糸(ポリウレタン等の弾性糸であってカバリングされていない裸糸)を用いてゴム編する編成方法、又はこの編成方法によって編成された生地を言う。ここにおいて、ベアフライスには、ベアスムースやその他の変化組織も含むものとする。
このようなベアフライスのメッシュ編を採り入れたプレーティング編では、目移しを行うとき(シリンダ針からループが脱げるとき)に、シリンダ針のラッチ(針先端のフックを開閉するための揺動爪のことでベラとも呼称される)が閉じられるようになる。当然に、目移し直後のシリンダ針には保持するループが無い(ダイヤル針へ送り渡しているため)ことになる。
殊に、添え糸とする熱融着弾性糸がベア糸であると、ベア糸が、地糸に用いる糸(ポリエステルなど)に比べて細くて滑りが少なく且つ切れやすいという特性を有していることが要因となって、ベア糸の給糸ミスは頻発することになる。
なお従来、これらの問題を解決するため、シリンダ針のフック形状を種々に工夫する試みもあった。しかし、フック形状の変更だけでは問題解消の確実性に乏しく、編成速度や給糸速度等、編機運転上の稼働効率低下に繋がる制御も必要になるといった具合に、根本的な解決には至っていない。また、シリンダ針の生産に関して需要と供給の量的なバランスが確保できないことから、シリンダ針の生産コストが極めて高騰する問題もあった。
即ち、本発明に係る丸編機は、縦軸まわりに回転するシリンダの外周面にシリンダ針が上下動自在に保持され、前記シリンダ針の上下動軌道にベア糸用給糸ポイントが設定され、前記ベア糸用給糸ポイントよりも前記シリンダの回転方向で上流となる位置にプレーティング編の地糸とする糸をシリンダ針の上下動軌道へ向けて給糸する地糸用給糸ポイントが設定されている丸編機において、前記シリンダの外周位置に前記ベア糸用給糸ポイントへベア糸を給糸するベア糸給糸装置が備えられており、前記ベア糸給糸装置は、前記ベア糸用給糸ポイントへ向けてベア糸を導くように前記シリンダの上周部で水平回転軸まわりに回転自在に保持されたベア糸用ガイドローラと、前記ベア糸用ガイドローラに導かれて前記ベア糸用給糸ポイントに至る部分のベア糸が当該ベア糸用給糸ポイントを含む水平面に対して鋭角の縦方向給糸角度となるように、前記ベア糸用ガイドローラの設置位置を調
節可能にするローラ保持機構と、を有しており、前記ベア糸給糸装置における前記ベア糸用ガイドローラの設置位置とは前記シリンダの径方向において相対的に内方となる位置に、前記地糸用給糸ポイントへ地糸を導く地糸用給糸ガイドが設けられていることを特徴とする。
前記ベア糸給糸装置は、前記ベア糸用ガイドローラに対してベア糸の給糸方向で上流となる位置に、当該ベア糸用ガイドローラの水平回転軸と交差して設定される別の水平回転軸まわりに回転自在に保持されて、前記ベア糸を外接支持するアイドルローラが設けられているものとするのが好適である。
図1乃至図8は、本発明に係る丸編機2を示している。
まず丸編機2の概要について説明する。図1に示すように、この丸編機2は、円筒形のシリンダ5と、このシリンダ5の上部に同心に設けられた円盤状のダイヤル6とを有しており、ダブル編み(フライス生地の編成)が可能である。
本実施形態では、任意箇所での裁断(切りっぱなし)をしても、ほつれが起こらないようにできる生地を編成するものとして、添え糸に熱融着弾性糸を用いた「プレーティング編」を行う設定とする。熱融着弾性糸にはベア糸(ポリウレタン等の裸糸)を用いるものとする。また、プレーティング編の地糸には、特に限定されるものではないが、例えばポリエステルなどを用いるものとする。
また本実施形態では「メッシュ編」を行う設定とする。従って、この丸編機2で用いるシリンダ針10には、ダイヤル針11への目移しを可能にする目移し専用針(シリンダ針10に保持されたループ内へダイヤル針11の突入を導く構造を有した針)を選択してある。このようなシリンダ針10(目移し専用針)では、当該シリンダ針10が下降する際にループを脱ぎながらダイヤル針11への目移し(ループ送り)を行うようになるので、脱がれるループにラッチ17が引っ掛かり、目移し後にはラッチ17が閉止状態とされる(図2左端のシリンダ針10を参照)。
このラッチオープナー18は、シリンダ5の回転に伴って走行するシリンダ針10の列
に、線材により形成したカムレール18aを添わせるようになっており、カムレール18aの先端は、シリンダ5の回転方向に対する逆方向(上流側)へ向けてある。そのため、このカムレール18aは、シリンダ針10のフック内へ突き刺さるようになって、閉止状態にあるラッチ17と接触しながらこのラッチ17を強制的に下方へ揺動させ(開動させ)、もって、フックに地糸g及びベア糸sの給糸を可能とさせるものである。
ベア糸給糸装置1は、シリンダ5の上周部に寄り添うようにして設けられたベア糸用ガイドローラ20と、このベア糸用ガイドローラ20へベア糸sを導くように設けられたアイドルローラ21とを有し、また図3及び図4に示すように、ベア糸用ガイドローラ20の設置部分に設けられたローラ保持機構22及び第2ローラ保持機構23を有している。
ベア糸用ガイドローラ20は、ローラ外周面に、ベア糸sをガイドするV字溝、U字溝、又は角溝(コ字状溝)等が形成されたもので、シリンダ5の上周部(上方であったり径方向外方であったりする場合を含む)に設けられる水平回転軸26により、回転自在に保持されている。ローラ外周面に設けられる溝は、V字溝であることが走行する糸の揺らぎ(蛇行)や外れを防止するうえで、好適である。
このように、ベア糸用ガイドローラ20は自在回転する構造であることが重要であって、この回転でベア糸sとの相対速度差をゼロにして、ベア糸sに擦過損傷を与えない状態を維持できるようになっている。なお、ベア糸用ガイドローラ20は、POMやナイロンなどの樹脂材により形成するのが好適である。
また、水平アーム30は、垂直取付片32と水平張出片33とを有するL型ブラケット34により、水平張出片33で片持ち支持させる構造とする。水平アーム30には、水平張出片33に支持される部分に、当該水平アーム30のアーム長手方向に沿って長い長孔36が形成されており、この長孔36へ差し込んだ取付ボルト37をL型ブラケット34の水平張出片33へ螺合させるものとする。
このような構造を採用すれば、水平アーム30の六角穴付きネジ31を少し緩めた状態にすることで、ローラ支軸28を上下動させることができ(図4中のZ参照)、これに伴ってベア糸用ガイドローラ20の高さ調節が可能になる。また、L型ブラケット34の取付ボルト37を少し緩めた状態にすることで、水平アーム30を長孔36に沿ってスライドさせることができ(図3、図4中のX参照)、これに伴ってベア糸用ガイドローラ20をベア糸用給糸ポイントBPから離反させる距離の調節が可能になる。
また、L型ブラケット34の取付ボルト37を少し緩めた状態では、水平アーム30を取付ボルト37まわりで水平揺動させることも可能であるので(図3、図4中のR参照)、これに伴ってベア糸用ガイドローラ20の向き調節が可能になる。なお、水平アーム30の六角穴付きネジ31を少し緩めた状態では、ローラ支軸28を垂下軸27まわりで回転させることも可能であるので(図3、図4中のQ参照)、これによってもベア糸用ガイドローラ20の向き調節が可能になる。
地糸用給糸ガイド15は、地糸用給糸ポイントGPへ給糸する地糸gが、ベア糸用ガイドローラ20からベア糸用給糸ポイントBPへ給糸されるベア糸sと交錯することがないようにするため、シリンダ5の径方向において、ベア糸用ガイドローラ20の設置位置とは相対的に内方となる位置関係を保持して配置されている。
糸用ガイドローラ20からベア糸用給糸ポイントBPへ給糸されるベア糸sに振動が生じないので、給糸のミスや編成のミスなどが防止されるという利点がある。
なお、水平回転軸26,40の交差角は60°〜90°内であれば特に限定されるものではないが、互いに直交関係(90°)とするのが周辺機材との接触干渉を防止するうえで好適である。
以上、詳説したところから明らかなように、本発明に係る丸編み機2では、ベア糸給糸装置1の第1保持機構22及び第2保持機構23によるベア糸用ガイドローラ20の位置調節により、このベア糸用ガイドローラ20に導かれてベア糸用給糸ポイントBPに至る部分のベア糸sについて、縦方向給糸角度α及び横方向給糸角度βを、それぞれ鋭角となるように設定することができるものである。
従って、任意箇所での裁断(切りっぱなし)をしても、ほつれが起こらない生地を歩留まり良く編成できるものであり、しかもベアフライスのメッシュ編などの採用も可能となっている。
例えば、丸編機2は、ダブル機(ダブル編み用)とすることが限定されるものではなく、シングル機(シングル編み用)としてもよいし、靴下編み機等としてもよい。要するに、縦軸Pまわりに回転する円筒形シリンダ5を有し、その外周面に、シリンダ針10が保持された編機(ダブルシリンダなども含む)であればよい。
目移しは、シリンダ針10からダイヤル針11へ向けた目移しに限定されず、ダイヤル針11からシリンダ針10へ向けた目移し、或いはシリンダ針10同士やダイヤル針11同士で行う目移しなどとしてもよい。
従って、ベア糸給糸装置1は、プレーティング編を行う場合の地糸の給糸や、プレーティング編以外を行う場合の給糸に採用することも可能である。この場合において、特許請求の範囲及び発明の名称の「ベア糸」を、給糸対象にする糸の名称に置き換えればよい。
ベア糸用ガイドローラ20に対して設ける第1保持機構22や第2保持機構23は、前記実施形態で例示したものに限らず、従来公知の種々の構造を採用可能である。要は、第1保持機構22にあっては、ベア糸用ガイドローラ20の設置高さや、ベア糸用給糸ポイントBPからの離反距離、又はこれら設置高さと離反距離との両方を調節できるものであればよく、また第2保持機構23にあっては、ベア糸用ガイドローラ20の向きを調節できるものであればよい。
ベア糸用ガイドローラ20やアイドルローラ21のローラ外周面に設けられる溝をV字
溝とする場合において、図3では、V字の尖端部に凹アールの溝底形状が付されたものを例示した。しかし、このV字の尖端部に内折れ角の溝底形状が付されたものとしてもよい。
2 丸編機
5 シリンダ
6 ダイヤル
7 伝動手段
10 シリンダ針
11 ダイヤル針
12 カムホルダー
13 上部カムホルダー
14 巻取装置
15 地糸用給糸ガイド
17 ラッチ
18 ラッチオープナー
18a カムレール
20 ベア糸用ガイドローラ
21 アイドルローラ
22 ローラ保持機構(第1保持機構)
23 第2ローラ保持機構(第2保持機構)
26 水平回転軸
27 垂下軸
28 ローラ支軸
30 水平アーム
31 六角穴付きネジ
32 垂直取付片
33 水平張出片
34 L型ブラケット
36 長孔
37 取付ボルト
40 水平回転軸
α 縦方向給糸角度
β 横方向給糸角度
BP ベア糸用給糸ポイント
GP 地糸用給糸ポイント
L 軌跡
P 縦軸
W 筒状生地
g 地糸
s ベア糸
Claims (4)
- 縦軸まわりに回転するシリンダの外周面にシリンダ針が上下動自在に保持され、
前記シリンダ針の上下動軌道にベア糸用給糸ポイントが設定され、
前記ベア糸用給糸ポイントよりも前記シリンダの回転方向で上流となる位置にプレーティング編の地糸とする糸をシリンダ針の上下動軌道へ向けて給糸する地糸用給糸ポイントが設定されている丸編機において、
前記シリンダの外周位置に前記ベア糸用給糸ポイントへベア糸を給糸するベア糸給糸装置が備えられており、
前記ベア糸給糸装置は、
前記ベア糸用給糸ポイントへ向けてベア糸を導くように前記シリンダの上周部で水平回転軸まわりに回転自在に保持されたベア糸用ガイドローラと、
前記ベア糸用ガイドローラに導かれて前記ベア糸用給糸ポイントに至る部分のベア糸が当該ベア糸用給糸ポイントを含む水平面に対して鋭角の縦方向給糸角度となるように、前記ベア糸用ガイドローラの設置位置を調節可能にするローラ保持機構と、
を有しており、
前記ベア糸給糸装置における前記ベア糸用ガイドローラの設置位置とは前記シリンダの径方向において相対的に内方となる位置に、前記地糸用給糸ポイントへ地糸を導く地糸用給糸ガイドが設けられていることを特徴とする丸編機。 - 前記ベア糸給糸装置は、前記ベア糸用ガイドローラに導かれて前記ベア糸用給糸ポイントに至る部分のベア糸が当該ベア糸用給糸ポイントを含むシリンダ接線方向の垂直面に対して鋭角の横方向給糸角度となるように、前記ベア糸用ガイドローラの設置位置を調節可能にする第2ローラ保持機構を有していることを特徴とする請求項1記載の丸編機。
- 前記ベア糸給糸装置は、前記ベア糸用ガイドローラに対してベア糸の給糸方向で上流となる位置に、当該ベア糸用ガイドローラの水平回転軸と交差して設定される別の水平回転軸まわりに回転自在に保持されて、前記ベア糸を外接支持するアイドルローラが設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の丸編機。
- 前記シリンダの上部に当該シリンダと同心で一体回転するダイヤルが設けられ且つ当該ダイヤルの上面にダイヤル針が径方向移動自在に保持されていると共に、
前記ベア糸用給糸ポイントに対して前記シリンダの回転方向で上流となる位置に、シリンダ針からダイヤル針への目移しでラッチ閉止状態となったシリンダ針のラッチと接触して当該ラッチを開動させるラッチオープナーが設けられており、
前記地糸用給糸ポイントは、前記ラッチオープナーと前記ベア糸用給糸ポイントとのシリンダ回転方向の相互間に設定されている
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の丸編機。
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