JP6085062B1 - シールド掘削方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】流動性のある排泥を排土する工程で、排泥を非流動化させ、止水プラグゾーンを形成するための薬剤の添加混合を効率よく効果的に行うことができ、薬剤の使用量を低減でき、しかも、高品位な止水性を有するプラグゾーンの形成を可能にできる、簡便で安全で経済的なシールド掘削方法の提供。【解決手段】シールド掘削機で掘削する際に生じる、掘削土砂に、水と、加泥材又は起泡材を含有した流動性のある排泥を排土する工程において、排泥をシールド掘削機の隔壁後方へ搬送・搬出するための装置内に薬剤を添加して前記排泥の流動性を低下させる際に、前記薬剤の添加を、圧縮空気を併用して行って該圧縮空気で前記薬剤を搬送・搬出装置内に飛散・拡散させ、前記排泥に前記薬剤を分散・混合させることで該排泥を急速に非流動化させ、前記搬送・搬出装置内の排泥の一部に止水プラグゾーンを速やかに形成させることを特徴とするシールド掘削方法。【選択図】図4

Description

泥土圧シールド工法類に分類される、泥土加圧シールド工法、気泡シールド工法、ケミカルプラグシールド工法等で生じる、掘削土砂を含む流動性を有する排泥に薬剤を添加して非流動化し、排土用の搬送・搬出装置内の排泥の一部に止水プラグゾーンを速やかに形成させることを実現した止水性を改善するシールド掘削方法に関する。
泥土圧シールド工法は、シールドチャンバー内の土圧を維持し、シールド切羽周辺の地山の乱れの低減、地表面沈下の低減という効果を期待するものである。
ここで、シールドチャンバーの土圧を維持して、チャンバー内の土砂の流動性を維持しながら、例えば、スクリューコンベア(以下、排土用の搬送・搬出装置の代表例として説明する)で排土を行う上で、脆弱な土質、耐水砂礫土質、高水圧下の施工においては、スクリューコンベア内の掘削土砂が、地山の土圧に対して有効となる止水プラグを形成することは、シールド掘削において特に重要となる。これに対し、仮に、スクリューコンベアで搬送・搬出される排泥の非流動化の機能が十分に発揮されない場合は、土砂や地下水、泥土、気泡土が地下水と混じり合った排土は、チャンバーの圧力で加圧され、スクリューコンベア排土口(スクリューゲート)より噴発することがある。この噴発が起こった場合は、チャンバーの圧力低下を招き、土圧バランスが崩れ、地表に影響を与えることが知られている。このため、スクリューコンベア内における、排出が容易な程度に流動性が与えられている掘削土砂に対しての、非流動化による止水プラグの形成機能は、安全な泥土圧シールド工法を施工する上で特に重要であると考えられる。
また、泥土加圧シールドや気泡シールド工法は、理想的には、掘削土砂は、切羽で、加泥、気泡と混合され、泥土、気泡土となるので、シールドチャンバー(隔壁内)で良好な流動性を維持し、土圧管理を容易にしている。しかし、上記したような流動性のある排泥をスクリューコンベアにて非流動化することは容易なことでなく、高水圧下や砂礫土では地下水と土砂の混ざった噴発が発生するため、この場合は、シールドチャンバー内における排泥の流動性を犠牲にして、スクリューコンベア内の排土が固くなることを優先して行うことが一般的であり、安定した掘削を困難にしていた。
先に述べた泥土加圧シールド工法の問題点への対処方法として、下記の提案がされている。例えば、泥土圧シールド工法に分類されるケミカルプラグシールド工法として、水溶性高分子物質を流動性の排土と反応させ、非流動化させることでスクリューコンベアの止水プラグを形成することが考案されている(特許文献1参照)。
特許文献1の説明によれば、この技術では、シールド式トンネル工法で、掘削土砂をシールド機の隔壁工法へ排出する途中において、水溶性高分子物質を添加混合して流動性の掘削土砂を、凝集、脱水の作用により非流動化させると、そのスクリューコンベア後部に充填された掘削土砂が、地山の土圧に対する止水プラグ機能を果たすとしている。また、上記技術では、排土は、ダンプカーでそのまま搬出できるよう凝集、脱水されているので、掘削土砂の改良を必要としないとされている。
また、水溶性高分子物質と、硼素含有化合物またはアルデヒド基含有化合物を含む特有の組成物を掘進用添加剤に使用し、チャンバー内で加圧されたままの状態で、掘削土砂と掘進添加材が混合されて土砂に流動性を与え、非流動化が必要なスクリューコンベアで、アルカリ性物質又は酸性物質からなる反応剤を添加混合することで急速に水溶性高分子物質の溶解(膨潤)が起こるように構成し、流動性を呈していた掘削土砂を急速に非流動化させる方法についての提案もある(特許文献2参照)。この工法では、施工において、特定の化合物を使用して表面を非水溶性にした高分子物質を、掘削添加剤に配合して泥土に予め添加させる一方で、水溶性高分子物質の溶解(膨潤)が起こる反応剤を別途準備しておき、準備した反応液をスクリューコンベアに注入することで、水溶性高分子物質の機能を発揮させ、止水プラグを形成している。
また、スクリューコンベアに、アニオン性水溶性高分子物質を掘削土砂に添加混合し、ついでカチオン性水溶性高分子物質および/または凝固剤を添加混合することにより流動性の掘削土砂を非流動化せしめ、止水栓個所を形成する、掘削土砂を凝集、脱水、非流動化させる工法についての提案もある(特許文献3参照)。
しかし、上記した、掘進用添加剤として、水溶性高分子物質と、硼素含有化合物またはアルデヒド基含有化合物を含む特有の組成物を使用する方法は、手間と材料コストが高くなる。このため、近年は、スクリューコンベアに注入口を設け、この注入口より直接にエマルジョン系の高分子物質等を注入して止水プラグを形成することが行われるようになっている。また、前記した、掘削土砂が泥土や気泡土となり、シールドチャンバーで良好な流動性を維持し、土圧管理が容易な、泥土加圧シールド工法、気泡シールド工法においても、水溶性高分子物質はエマルジョン系が多く使用されており、次第に実績は多くなっている。このように、従来技術では、エマルジョン系の薬剤と排泥との凝集反応による非流動化への改質で、スクリューコンベア排出口の近傍の下流側に良好な止水プラグゾーンを形成することが行われている。
特許第3017030号公報 特許第3017031号公報 特許第3421450号公報
しかしながら、上記した現状に対し、本発明者らは、下記の解決すべき課題を認識するに至った。本発明者らの検討によれば、従来の方法で、スクリューコンベア排出口の近傍の下流側に良好な止水プラグゾーンを形成させる場合、シールドチャンバーからの排土量に対する水溶性高分子物質等の薬剤の添加量は、通常、容量比率で0.05%〜0.5%程度と、排土量に対して少量で足りるはずである。すなわち、1m3排土あたりに換算すると、薬剤量は0.5L〜5L/m3で足りるはずである。
これに対し、排土用の搬送・搬出装置として一般的な、長さが数メートルのスクリューコンベアで、排泥に、水溶性高分子物質等の薬剤を分散・混合させる場合、スクリューコンベアに撹拌・混合の性能を期待することはできないため、その撹拌効率は、極めて悪いものになっている。具体的には、撹拌・混合される時間が短く、しかも、スクリューコンベアは、掘削土(排泥)で閉塞された状態で、スクリューの回転は緩やかであり、この穏やかなスクリューの回転に伴って排土はその中を移動しており、その状態で添加された水溶性高分子物質等の薬剤と反応する。このように、従来行われている、排土用の搬送・搬出装置であるスクリューコンベアで、良好な止水プラグゾーンを形成するための水溶性高分子物質等の薬剤を、排泥に少量混合させる場合、均一に急速に薬剤を分散させることは難しい。この薬剤の混合不足及び反応時間の不足に対し、従来方法では、添加する水溶性高分子物質等の薬剤量を多くし、注入個所を多くすることで、混合不良の解決を図っている。
排泥と、良好な止水プラグゾーンを形成するための水溶性高分子物質等の薬剤の混合比率は、下記の理由で、水溶性高分子物質等の薬剤の添加量が多くなっている。すなわち、上記したように、シールドチャンバーと、排土用の搬送・搬出装置であるスクリューコンベアとでは、求められる土の流動性が大きく異なること、スクリューコンベアにおける撹拌・混合の不良、この撹拌・混合の不良に起因した水溶性高分子物質の添加量の不足の問題、薬剤との反応時間が短いという問題など、様々なロス原因で、水溶性高分子物質等の薬剤の添加量は増大しており、その材料コストは上昇している。更に、近年増加する大断面シールドなどの高水圧下では、特に排土の噴発が生じた場合の影響は大きいことが予想され、排泥の非流動化による高品位な止水性を有するプラグゾーンの形成が求められ、更に止水に要するコストは増加する傾向にある。
したがって、本発明の目的は、スクリューコンベア等の排土用の搬送・搬出装置を用いて流動性のある排泥を排土する工程において、排泥を非流動化させ、止水プラグゾーンを形成するための水溶性高分子物質等の薬剤の添加混合を、効率よく効果的に行うことができ、薬剤の使用量を低減でき、しかも、高品位な止水性を有するプラグゾーンの形成を可能にできる、簡便で安全で経済的なシールド掘削方法を提供することにある。
上記の目的は、下記の本発明によって達成される。すなわち、本発明は、シールド掘削機で掘削する際に生じる、掘削土砂に、水と、加泥材又は起泡材の少なくともいずれかを含有した流動性のある排泥を排土する工程において、前記排泥をシールド掘削機の隔壁後方へ搬送・搬出するための排土用の搬送・搬出装置内に薬剤を添加して前記排泥の流動性を低下させる際に、前記薬剤の添加を、圧縮空気を併用して行って該圧縮空気で前記薬剤を前記搬送・搬出装置内に飛散・拡散させ、前記排泥に前記薬剤を分散・混合させることで該排泥を急速に非流動化させ、前記搬送・搬出装置内の排泥の一部に止水プラグゾーンを速やかに形成させることを特徴とするシールド掘削方法を提供する。
本発明の好ましい形態としては、下記のことが挙げられる。前記搬送・搬出装置が、スクリューコンベアであること;前記薬剤が、水溶性高分子物質又は吸水性高分子物質或いはこれらの混合物の、エマルジョン、或いは、有機溶剤に懸濁させた懸濁液又は高濃度水溶液の少なくともいずれかであること;前記搬送・搬出装置の薬剤の注入口の近傍で、前記薬剤と前記圧縮空気とを混合し、前記注入口から薬剤を多量の空気とともに添加すること;前記圧縮空気を断続的に用い、前記薬剤の飛散・拡散を間欠的に行うこと;前記薬剤の添加量が、容量比率で、排土に対して、0.05%〜0.5%であること;が挙げられる。
本発明によれば、汎用されているスクリューコンベア等の排土用の搬送・搬出装置を用い、流動性のある排泥を排土する工程において、排泥を非流動化させ、止水プラグゾーンを形成するための水溶性高分子物質等の薬剤の添加混合を、効率よく効果的に行うことができ、その結果、薬剤の使用量の低減を可能にするとともに、近年増加する大断面シールドなどの高水圧下であっても、高品位な止水性を有するプラグゾーンを速やかに形成することが実現できる、安全で経済的なシールド掘削方法の提供が可能になる。本発明によれば、泥土圧シールド工法により地中を掘進するシールド掘削機で掘削され、シールドチャンバー内へ取込まれた流動性を有する掘削土砂を、スクリューコンベア等の搬送・搬出装置で排土する工程において、圧縮空気を利用するという極めて簡便な手段で、薬剤の使用量の低減が図れ、しかも排泥を急速に非流動化することで止水プラグゾーンを速やかに形成することができ、その結果、排土の噴発を効果的に防止できるようになるので、作業の安全性の向上が図れ、その経済的な効果は極めて大きい。
泥土へ圧縮空気を併用して薬剤を注入した場合の効果を確認するための予備試験装置を模式的に示す図である。 本発明を実施するための、スクリューコンベアの薬剤注入口に取り付けた薬剤を圧縮空気と併用して泥土に添加するための装置の一例を模式的に示す図である。 泥土に圧縮空気を併用して薬剤注入した場合の効果を確認するための試験装置を模式的に示す図である。 本発明の方法を実施するための、スクリューコンベアの薬剤注入口に設ける薬剤の添加装置の一例を模式的に示す図である。 本発明の方法によって得られる泥土の非流動化の効果を確認するために採用したコンクリートスランプ試験器で確認する様子を模式的に示す図である。 本発明の方法の適用が可能なシールド掘削機で掘削し、掘削によって生じる掘削土砂を排土する様子を模式的に示す参考図である。
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。本発明者は、上記した従来技術の現状に鑑み、従来の工法を基本的には変更することなく、簡便な手段で、水溶性高分子物質等の薬剤の添加量を低減でき、しかも、止水プラグゾーンを効率よく形成することを実現できるシールド掘削方法を実現すべく、排土用の搬送・搬出装置であるスクリューコンベア内における排泥への水溶性高分子物質等の薬剤の添加の問題について鋭意検討を行った。
検討する中で、本発明者は、排泥内への空気の透気性は、液体の透水性との比較で、10倍程は流れやすいという点に注目し、この高い空気の透気性を薬剤の添加に効果的に利用できるのではないかと考え、更に詳細な検討を行い、本発明に至った。具体的には、圧縮空気を利用し、少量の高分子物質等の薬剤を多量の空気とともに添加するという極めて簡便な手段によって、排泥内に万遍なく薬剤を混合することが実現でき、その結果、良好な止水プラグゾーンが速やかに、且つ、安定して形成できるようになることを見出した。
本発明者の検討によれば、スクリューコンベア内で、排泥の流動性を低下させて、止水プラグゾーンを形成させるための薬剤の添加を、圧縮空気を併用して行うと、簡便な方法でありながら、スクリューコンベア内で、薬剤が、泥土や気泡土である排泥に効果的に飛散・拡散され、その結果、薬剤が排泥に万遍なく分散・混合される。このため、従来の使用量よりも薬剤量を少なくしても、流動性のある排泥と十分に反応し、排泥の流動性を速やかに低下させることができる。本発明の方法によって達成される、排泥の効率のよい非流動化によって、速やかに、高品位な止水性を有するプラグゾーンの形成ができるので、特に、本発明を前記した近年増加する大断面シールドなどの高水圧下におけるシールド掘削工事に適用した場合にもたらされる効果は、極めて大きなものになる。以下、排土用の搬送・搬出装置としてスクリューコンベアを例にとって説明するが、スクリューコンベアは代表例であり、その搬送・搬出機構が限定されるものでなく、本発明は、流動性のある排泥を搬送・搬出する際に、排土の噴出を防止するための止水プラグゾーンを形成する必要があるいずれの場合においても適用できる。
流動性のある排泥を非流動化する場合、高分子物質物質等の薬剤に対する混合機能は、通常のミキサー撹拌であれば高く、その分散効果も時間さえ確保すれば期待できると考えられる。しかし、従来のシールド掘削方法において、上記薬剤を添加・混合・分散させるためのミキサー撹拌を新たに導入することは、システム全体を見直す必要を生じるので、有効な解決策とはなり難い。一方、前記したように、シールド掘削方法で生じる排土の搬送・搬出装置に一般的に使用されているスクリューコンベアは、土の動きが少なく、長さも限られることから、添加した薬剤と排泥との反応時間が短く、排泥と高分子物質等の薬剤との混合機能は脆弱である。
一方、止水プラグゾーンの生成は、泥土圧シールド工法類に分類される、泥土加圧シールド工法、気泡シールド工法、ケミカルプラグシールド工法で、特に、高圧水下、含水砂礫土をシールドで掘削する場合においては、排土の噴出を防止して安全に掘削を進める上で必要であり、効率的に、確実に安定して止水プラグゾーンを形成することが重要である。これに対し、本発明の方法では、排泥に薬剤を添加する際に圧縮空気を併用したことで、スクリューコンベア内で、薬剤を排泥に万遍なく分散・混合することができ、従来技術の課題であった、少ない薬剤量で、速やかに安定して高品位な止水プラグゾーンの形成ができるという顕著な効果が得られる。
流動性のある排泥を非流動化するための高分子物質物質等の薬剤は、高品位な止水性を有するプラグゾーンの形成を可能にするためには、スクリューコンベア内で、排泥に効率よく薬剤が分散した状態で混合された状態になることが必要である。ここで、本発明で使用する薬剤は、止水プラグゾーンを形成するために従来より使用されているものをいずれも使用することができ、この点については異なるものではない。具体的には、水溶性高分子物質又は吸水性高分子物質、或いは、これらの混合物の、エマルジョン、或いは、有機溶剤に懸濁させた懸濁液又は高濃度水溶液などが使用でき、液状のものであることが好ましい。本発明で使用する高分子物質は、合成のものであっても、天然のものであってもいずれでもよい。
合成の高分子物質としては、例えば、ポリビニルアルコール(中でも部分ケン化物が好ましい)、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ソーダ、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドン又はスルホン化スチレンなど親水基を導入したオレフィン系ポリマー等が挙げられる。また、天然の高分子物質としては、例えば、各種澱粉、アルギン酸塩、ペクチン、グアガム、ローカストビーンガム、タマリンド、サイリュームガム、アラビアガム、キサンタンガム、デキストリン、セルロース及びプルランなど多糖類が包含される。
通常、工業的に生産される高分子物質のエマルジョンを使用するが、粉末状の高分子物質を用い、懸濁液として使用することも有効である。その場合には、現場で使用できる安全性の高い物質である、例えば、有機溶剤として、プロピレングリコールやポリエチレングリコールなどのアルコール類を使用することが好ましい。これらは、揮発性、毒性、可燃性、異臭性の低い材料である。また、液状製品として高分子物質の高濃度水溶液を使用することも有効である。
本発明の方法で用いる薬剤としては、例えば、掘削土砂に含有されている気泡量や水分等や、その流動性に応じて、下記に挙げるような市販されているものを適宜に使用することができる。泥土圧シールド用添加剤として市販されているクリーンSP−H(商品名、立花マテリアル社製、主成分:固形分30%のアクリル系樹脂エマルジョンであるアニオン系高分子)や、グアガム(粉末、天然多糖類のノニオン系高分子)や、高吸水性樹脂であるサンフレッシュST−500MPSA(ポリアクリル酸塩架橋体、三洋化成社製)などが挙げられる。
本発明者らの検討によれば、上記に挙げたような液状の薬剤は、圧縮空気を利用して添加すると、薬剤が勢いよく飛散するので、スクリューコンベア内に広範に拡散させることが容易にできる。その結果、スクリューコンベア内で、あまり動くことなく移動している排泥に万遍なく薬剤が分散・混合されることになり、高品位の止水プラグゾーンが速やかに形成される。本発明で使用する圧縮空気は、これを利用することで、薬剤を飛散・拡散できればよく、特に限定されない。圧縮空気は、コンプレッサーで圧縮したものを使用するが、その使用圧力は、シールドチャンバー内の泥土圧に0.2〜0.8MPaをプラスした圧力が効果的である。本発明者らの検討によれば、圧力を高くして使用する場合は、圧縮空気を断続的に用い、薬剤の飛散・拡散を間欠的に行うことが好ましい。下記に、圧縮空気を利用して薬剤を添加する具体的な方法について説明する。
従来方法でも、止水プラグゾーンを形成するため、スクリューコンベアで排泥に薬剤を添加することは行われており、スクリューコンベアの外周には、薬剤の注入口が数か所、設けられている。本発明の方法においても、スクリューコンベア外周に取り付けられた薬剤の注入口を利用して、薬剤の添加を行えばよく、この点についても従来の方法と異なることはない。本発明の方法は、スクリューコンベア内で薬剤を排泥に添加する際に、圧縮空気を併用することを特徴とする。具体的には、注入口付近で、薬剤と圧縮空気とを混合し、ケーシング内へ主に空気圧で注入する。注入管理は、排泥の非流動化状態を、例えば、搬送・搬出されていく排土の固さ加減を目視やスクリューのトルクメーター等で確認することで容易に行うことができる。この結果、良好な止水プラグゾーンの生成を可能にするとともに、その状態を安定して維持することが実現できる。
高分子物質等の薬剤を添加することによる止水プラグゾーン形成には、排泥の含水率や種類等によって異なるが、容量部で、単位土量に対し、0.05%〜0.5%程度を必要とする。添加した薬剤の排泥中への分散・混合が不十分であれば、個所によって薬剤の濃度がバラツキ、良好な止水プラグゾーンを継続して生成することはできない。一方、スクリューゲートよりの排土の噴発が生じた場合、安全性を含め、その影響は多大であり、噴発の発生を防止することは重要である。このため、先に述べたように、従来方法では、良好な止水プラグゾーンを継続し生成する目的で、高分子物質等の薬剤の添加量は増加する傾向にあり、材料ロスは大きくなっている。これに対し、本発明の方法によれば、添加した薬剤の排泥中への分散・混合が十分に行われるので、薬剤を過剰に添加する必要がなくなるので、排泥への高分子物質等の薬剤の添加量を低減できる。薬剤の使用量を低減できることによって生じるランニングコストの削減ができるとともに、排土はそのまま埋め立て等に用いられるので、薬剤の添加量の低減は、環境面に対する影響の低減も達成できる点でも評価される。
上記したように、本発明を特徴づける圧縮空気と高分子物質等の薬剤の併用の効果は、圧縮空気によって実現できる、スクリューコンベア内で高分子物質等の薬剤を飛散・拡散させる効果であり、このことによって、先に述べたスクリューコンベア撹拌の脆弱性に起因した、薬剤の添加量の増加傾向が効果的に改善され、排泥を非流動化して良好な止水プラグゾーンが速やかに、且つ、継続して形成され、シールド掘削を安全に低コストで行うことができ、その2次的効果として、土壌環境保護の面にも貢献できる。
次に、好ましい実施形態を記載して、本発明をより詳細に説明する。本発明は、これらの実施例に限定されるものでなく、本発明の構成によって、上記した顕著な効果が得られれば、いずれの実施形態も含まれる。
(圧縮空気による薬剤注入についての予備試験:図1参照)
上記した様々な問題解決を図る目的で、解決方法を見出すべく、次の予備実験を行い、圧縮空気を用いて液状の薬剤を添加した場合に、流動性のある排泥を効率よく改質して非流動化させることができるかを確認した。図1に示した試験装置を用意して、後述するようにして試験を行った。内径15cm、高さ20cmの容量3.5Lの、耐圧0.5MPaの円筒のチャンバー(容器)を用意した。該容器側面には、エアー抜きフィルターと圧力計(1MPa)が付けられており、0.1〜0.3MPaに任意に設定が可能な圧力調整弁を設けた。チャンバー内の上部に、圧縮空気を用いて薬剤をチャンバー内に添加する機構を設けた。
圧縮空気を用いて薬剤をチャンバー内に添加する機構として、バルブAとバルブBと、これらのバルブを0.5〜2.0Lの容量のホースで繋ぐ構造の装置を用意した。そして、バルブAをチャンバーの上部に繋ぎ、バルブBから空気を流入させるようにし、圧縮空気のホースは、試験で設定する圧力差を計算し、その容量分となるサイズのものをそれぞれ取り付けるようにした。薬剤は、圧縮空気を送る前のホース内に、後述する気泡土に対して容量比が0.2%となる量を封入した。薬剤に、クリーンSP−H(商品名、立花マテリアル社製、主成分:固形分30%のアクリル系樹脂エマルジョンであるアニオン系高分子)を使用した。
上記した試験装置を用い、下記の試験を行った。チャンバー内に、容量部で、砂質土100部、気泡40部、スランプ試験値25cmの気泡土を投入し、チャンバーを密閉した。そして、バルブAを閉じた状態で、バルブBから圧縮空気をホース内に送り、ホース内を、薬剤と圧縮空気とが併存し、所望の条件になった状態にしてバルブBを閉じた。その後に、バルブAを開けて、圧縮空気とともにチャンバー内に薬剤を添加した。添加は、チャンバー内の圧力に対し、ホース内の圧力が高くなるように圧力差を設けることで行った。具体的には、0.2MPa、0.4MPa、0.6MPaと、段階的に圧力差をつけて試験を行った。また、圧縮空気の注入量は、30%、50%を想定して行った。
その結果、薬剤の添加に圧縮空気を併用することで、消泡と排水、薬剤の拡散効果が向上する傾向が確認でき、排泥を取り出し素手の簡易な撹拌で流動性を確認すると排泥の非流動化が速やかに起こることが確認できた。また、圧縮空気は、高圧になるほど注入スピードが上昇し拡散効果が増すため、チャンバー内に間欠的に薬剤と圧縮空気を注入する構成を有することが効果的であることが確認された。
(注入混合個所の説明:図2参照)
上記した結果から、スクリューコンベアで、薬剤を圧縮空気と併用して排泥に添加する装置として、スクリューコンベアの薬剤注入口に、例えば、図2に示した簡単な構造のものを設ければ、本発明の顕著な効果を得ることができることがわかる。(A)は、薬剤の添加を停止している状態を示しており、(B)は、スクリューコンベア内で、圧縮空気と併用して薬剤の添加が行われている状態を示す。すなわち、図2に示した、前記した予備試験装置におけるホース及び2個のバルブを一体化した構造を有する簡易な装置で、スクリューコンベア内に薬剤を、効果的に飛散・拡散させることができ、その結果、薬剤を排泥内に、良好な状態に分散・混合させることができる。後述する、図4に示したスクリューコンベアの薬剤注入口に設ける薬剤の添加装置の一例の模式図中の、4で示した混合チャンバー部分に、上記に説明した図2に示した構造の装置を設けることで、本発明の顕著な効果が得られる。なお、図4の説明については後述する。
(実際に予想される泥土に圧縮空気を併用した薬剤注入効果の確認試験)
スクリューコンベアで排土に、圧縮空気を使用し、実際に予想される流動性を有する排泥に薬剤を飛散・拡散させることによって、排泥を非流動化して、良好な止水プラグゾーンが形成される排土にする有効性を確認すべく、図3に概略を示す構成を有する実験装置を準備した。そして、下記のようにして試験を行った。
(実験装置)
図3に示した実験装置を用いて試験した。直径200mmで高さ500mmの透明アクリル製のシリンダー1を用意し、該シリンダーの高さ250mmの位置まで、模擬土2を充填した。このシリンダー1の底面近傍の側壁部分に設けた孔からエアチューブ3を導入して、エアチューブ3の先端が、充填されている模擬土2中に位置するようにした。そして、このエアチューブ3の他端を、その両端にストップバルブ5及び6が設けられている圧力容器4の、ストップバルブ5が設けられている側に接続した。また、ストップバルブ6が設けられている側に、減圧弁を有するコンプレッサー7を接続した。
(模擬泥土A〜Cの調製)
試験に使用する流動性のある模擬土として、一般によく見受けられる透水性のある砂質地盤を想定して、表1−1に示した模擬泥土(砂質土)Aと、表1−2に示した模擬気泡混合泥土(砂質土)Bとを、それぞれ10L作製した。また、シルト質・粘土の地盤を想定し、表1−3に示した模擬泥土(シルト質・粘土)Cの3種類を作製した。「トチクレー」(商品名)は、関東化成社製の栃木産の土木用乾燥粘土であり、「TB−200」(商品名、立花マテリアル社製)は、群馬産200メッシュ品のベントナイトである。
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(試験方法)
図3の装置と、表1−1〜表1−3に示した3種類の模擬泥土を使用し、下記のようにして、薬剤を単独で用いた場合と、圧縮空気の量・圧力を変化させ、薬剤を併用した場合における、土の非流動化の違いを確認した。薬剤には、先に用いたと同様に、クリーンSP−Hを使用した。
図3に示したように、模擬泥土2を、透明アクリルシリンダー1へ7Lを投入し、非流動化に必要な模擬泥土Aと模擬気泡混合土Bは平均的量の薬剤14mL(模擬土に対して0.2%)また、模擬泥土Cは28mL(模擬土に対して0.4%)をエアーチューブ3に注射器を用いて挿入した。次に、注入量に見合った容量の圧力容器4をセットし、圧縮空気圧0.2MPa〜0.8MPaで、コンプレッサー7に付属する減圧弁を所定圧に調整し、ストップバルブ5を閉にし、ストップバルブ6を開とし、圧力容器4に所定圧力で充満し、バルブ6を閉じて、次に、ストップバルブ5を開くことで、薬剤を透明アクリルシリンダー1の模擬泥土2に、圧縮空気とともに薬剤を飛散・拡散させた。
薬剤が飛散・拡散したことによる効果を確認する方法としては、下記のようにして行った。試験は、上記試験で使用した薬剤を、前記で調製した模擬泥土A〜模擬泥土Cに対して添加することについてそれぞれ行った。具体的には、先に述べたようにして薬剤を、模擬泥土A〜模擬泥土Cに圧縮空気と併用して添加した後、これらの模擬泥土をホバートミキサーへ静かに移し、0秒(薬剤投入直後=撹拌前)、10秒、30秒で、それぞれの所定時間の撹拌作業を行い、処理模擬土をそれぞれに得た。また、模擬泥土A〜模擬泥土Cのそれぞれに圧縮空気を用いることなく添加し、ホバートミキサーを、0秒(薬剤投入直後=撹拌前)、5秒、10秒、20秒、30秒間で、それぞれの所定時間撹拌したものを比較用の処置模擬土とした。得られた各処理模擬土について、図5に示したようにして、コンクリートスランプ試験器で確認し、非流動化の程度を確認した。
その結果を、表に示した。表2−1〜表2−3は、前記したバッチで作製した模擬泥土Aについて、模擬泥土7Lを透明アクリルシリンダーへ投入し、図3の装置で薬剤を添加した結果である。表2−2は、効果をわかりやすくするために、表2−1に示した結果から、ホバートミキサーで10秒間撹拌した場合におけるスランプCの値(ホバートミキサーで10秒間撹拌)のデータを取り出し、薬剤の添加の際に使用した圧縮空気の圧力(MPa)と、泥土に対する空気投入量(%)との関係で示したものである。
Figure 0006085062
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また、表2−1で得られたデーターを基本とし、実際のスクリューコンベアの排出口における泥土が非流動化した状態のスランプ値が11cm程度であることを考慮して、採取したデーターを参考に、本発明の方法を適用した場合に必要になる薬剤の量を求める試験を行った。その結果を表2−3に示した。表2−3に示したように、スランプ値が11cmになる効果を発揮するには、掘削排土量1m3に対し、圧縮空気を併用しなければ14mL/7L=0.2%(2kg/m3)必要である。これに対し、圧力0.8MPaと空気量を70%とした状態で薬剤を添加した場合は、その添加量を7mLとして、0.1%(1kg/m3)に低減しても、10.0秒撹拌のスランプ値が10.5cmであり、目標とする非流動化の11.0cmを超える結果が得られることが確認された。つまり、このことは、本発明の方法を適用することで、薬剤の使用量は半減することができることが意味している。
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表3−1、表3−2は、先にバッチで調製した模擬気泡混合泥土Bについて、模擬泥土7Lを透明アクリルシリンダーへ投入し、図3の装置で薬剤を添加した結果である。表3−2は、表3−1に示した結果から、ホバートミキサーで30秒間撹拌した場合におけるスランプEの値を取り出し、薬剤の添加の際に使用した圧縮空気の圧力(MPa)と、泥土に対する空気投入量(%)との関係で示したものである。
Figure 0006085062
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表4−1、表4−2は、先にバッチで調製した模擬泥土(シルト質・粘土)Cについて、その中の模擬泥土7Lを透明アクリルシリンダーへ投入し、図3の装置で薬剤を添加した結果である。表4−2は、表4−1に示した結果から、ホバートミキサーで30秒間撹拌した場合におけるスランプEの値を取り出し、薬剤の添加の際に使用した圧縮空気の圧力(MPa)と、泥土に対する空気投入量(%)との関係で示した。
Figure 0006085062
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上記した結果から、本発明が目的とする流動性のある各模擬泥土の非流動化の効果は、まず、いずれの泥土の場合も、空気量が多く、且つ、圧縮空気の圧が高いほど同じ撹拌時間においてスランプ値は小さくなる(非流動化が進む)ことが判明した。これは、圧縮空気を併用して添加を行ったことによる薬剤の飛散・拡散効果によるものと考えられる。実験数値を見ても明らかにその圧縮空気の併用効果が見られた。因みに、圧縮空気の併用効果によるメリットは、スクリューコンベアの脆弱な撹拌時間の短縮、薬剤の使用量の低減に役立ち、良好な止水プラグゾーンを安定的、持続的に形成することを可能にすることが期待できる。本発明者は、本発明の技術を適用すれば、施工の際に、従来のスクリューコンベアで排土を搬出する際に生じる泥土の噴出の問題を解消し、高水圧、耐水砂礫層下であっても、泥土圧シールド工法における安全なシールド施工を実現するのに寄与できるので、その工業的価値は極めて高い。
以下、上記で得られた効果について詳述する。上記したように、薬剤の添加の際に、圧縮空気を併用し、スクリューコンベアに取付けた注入口から薬剤を注入すると、圧縮空気の噴射効果で、薬剤が即座に排泥に向けて飛散・拡散されるので、急速に、薬剤と排泥が反応して凝集による非流動化をすることが確認された。その実験結果は表2〜4に示されており、これらから、流動性のある排泥の種類によらず、薬剤の添加に圧縮空気を併用したことによる非流動化、更に、これによってもたらされる止水プラグゾーンを速やかに形成される効果が、十分に期待できることが確認できた。模擬泥土の配合でみると、一般によく見受けられる透水性のある砂質地盤を想定した、表1−1及び表1−2に示した泥土は、いずれも、薬剤の添加に圧縮空気を併用した場合は、薬剤を単独で添加した場合と比較し、流動状態から非流動化までの時間が大幅に短縮し、急速な非流動化(改質効果)が得られることが確認された。中でも、表1−2に示した気泡混合泥土で実験した結果、圧縮空気を併用したことによる改質効果は顕著なものがあり、薬剤を単独で添加した場合と比較し、流動状態から非流動化までの時間が半減し、より改質時間が短縮し、その改質効果が大きくなることが確認できた。また、表1−3に示した配合の加水した柔らかいシルト・粘土に対しても、表4−1に示したように、泥土圧シールド工法で、圧縮空気と薬剤の併用効果が確認できた。更に、データーを見やすく置き換えた、表2−2、表3−2、表4−2を参照すると、いずれの場合も、同量の薬剤の使用で、圧縮空気を併用することで得られる効果を、スランプ値で確認することができた。
上記した結果から、圧縮空気と薬剤を併用し、薬剤の添加操作を行うことで、流動性を有する掘削土砂は急速に非流動化して、止水プラグゾーンを形成すると考えられる。しかし、スクリューコンベア内の掘削土砂は、その中を短時間で通過することや、排泥に対する薬剤の添加割合が少ないこと、そして、スクリューコンベア内部のスクリュー羽根も、撹拌の目的でなく、排土目的のものであるので、スクリューコンベアにおける排泥と薬剤の混合機能は脆弱といえる。これに対し、特に高水圧下や帯水層砂礫に対しては、シールド掘削作業において、今後、更に確実に、排泥を非流動化して固化して高品位の止水プラグゾーンを生成することが必要になると考えられるので、本発明のシールド掘削方法の利用できる、泥土圧シールドの土質適応範囲は更に拡大するものと期待される。
先の試験の結果、圧縮空気を薬剤の添加に併用することで、薬剤をスクリューコンベア内へ広く飛散・拡散でき、排泥と薬剤との急速な混合効果が得られ、排泥の急速非流動化を実現でき止水プラグの形成が認められた。また、表2−3に示したように、良好な止水プラグゾーンを生成に必要になると考えられるスクリューコンベア排出口の非流動化した排土のスランプ値を11cmとするのに、本発明の方法を適用すれば、薬剤の量を、従来の方法での使用量に比べて半減することも可能であることが確認できた。このことは、薬剤に係る費用の低減、更には、排土は、そのまま埋め立て等に使用されることから、環境への影響を低減できるので、経済性及び土壌環境保全の意味で、その利用が期待される。
図4は、本発明のシールド掘削方法を実際のシステムに組み入れた場合の一例を示す模式図である。図4中の9はスクリューコンベアであり、その上段側にあるのが、本発明を特徴づける圧縮空気と薬剤の注入装置である。図4を参照して、現場における実際に使用する機器の配置や作業フローを説明する。1は薬剤の貯蔵タンクであり、42は薬剤の注入ポンプであり、3は逆止弁である。8はコンプレッサーであり、7は減圧弁・圧力計であり、5は電磁弁であり、6は圧力タンクである。そして4が混合チャンバーである。
貯蔵タンク1の薬剤は、注入ポンプ2によって混合チャンバー4へ連続して送り込まれる。同時に、コンプレッサー8に貯蔵された圧縮空気は、減圧弁7で所定圧力に減圧されて、圧力タンク6の前後に設置した電磁弁5の2基の開閉で、設定圧力の一定量の圧縮空気が貯留されて、電磁弁の開閉が繰り返されながら混合チャンバー4へ断続に送られる。そして、チャンバー4内の薬剤は、圧縮空気と同時に、その注入口からスクリューコンベア9へ送り込まれるように構成されている。チャンバー4内の薬剤を、圧縮空気と同時にスクリューコンベア9へ送り込む際には、例えば、図2に模式的に示したような構造の装置を用いることができる。
上記した動作が繰り返され、スクリューコンベア9内を搬送されてくる排泥(流動状態)10に、圧縮空気と薬剤が飛散・拡散して注入される。その結果、流動性を有する排泥10に、スクリューコンベアを移動しながら撹拌効果が表れて、薬剤が分散・混合され、次第に排土(非流動化)11へ改質されるとともに、止水プラグゾーン12が形成されることになる。
(実施工の効果)
本発明のシールド掘削方法を実際の施工に適用した場合の効果について確認した。具体的には、下記に述べるようにして、本発明の方法によって得られる圧縮空気と薬剤の併用による効果を確認するため、実際の現場で確認した。直径11.3mの泥土圧シールド機で、起泡材を使用し、対象土は全面が粗砂を多く含む砂質土で地下水圧はシールド機下部で、0.3MPaの現場で、その効果を確認した。本発明を適用しない従来の施工では、掘削が順調な場合、薬剤としてクリーンSP−H(商品名、立花マテリアル社製、アクリル系樹脂エマルジョンであるアニオン系高分子)を排泥(流動状態)1m3に対して、2.5kg〜3.2kgを使用することで、スランプ値3cm〜4cmの排土(非流動化)に改質し、スクリューコンベアの止水プラグゾーンを形成させ、安定した掘削を行っていた。しかし、地下水が多く排土に混入した場合は、薬剤の添加量を倍増させて、5.0kg〜6.0kgとしても、スランプ値は15cm以上となり、スクリューゲートより水圧による土砂の噴発が見られる場合があり、この現場において止水プラグゾーンの形成によいとされる5cm以下の排土にするには程遠い値であった。
そこで、圧縮空気を利用し、圧力1.2MPaの圧縮空気と薬剤を排泥(流動状態)に注入したところ、そのスランプ値は5cmとなり、しかも、薬剤の添加量は1.5kg〜2kg/m3ですみ、その使用量も次第に減少して安定した掘削が続くようになった。
以上は1例であるが、上記した現場では、掘進スピード20mmで毎分2m3の排土が排出されて、薬剤の添加量は5kg/m3で、上記したように不安定な掘削が行われていた。これに対し、本発明を適用し、薬剤の添加に圧縮空気の併用を採用することで、薬剤の使用量が1/3程度となった。つまり、上記した現場の泥土圧シールドは、全線のうち、4000mで本発明のシステムを使用したと計算すれば、土量400000m3に対して、従来の施工では平均2.75kg/m3添加して1100tonの薬剤を使用していたのが、平均1.75kg/m3の添加で薬剤の使用量を700tonと計算できる。その結果、薬剤にかかる費用が大幅に低減されることが達成できるとともに、噴発がない安定したシールド掘削が可能になる。更に、土砂と混合される薬剤量の減少で、排土の安全面でも優れるものになるという効果も得られる。

Claims (6)

  1. シールド掘削機で掘削する際に生じる、掘削土砂に、水と、加泥材又は起泡材の少なくともいずれかを含有した流動性のある排泥を排土する工程において、前記排泥をシールド掘削機の隔壁後方へ搬送・搬出するための排土用の搬送・搬出装置内に薬剤を添加して前記排泥の流動性を低下させる際に、前記薬剤の添加を、圧縮空気を併用して行って該圧縮空気で前記薬剤を前記搬送・搬出装置内に飛散・拡散させ、前記排泥に前記薬剤を分散・混合させることで該排泥を急速に非流動化させ、前記搬送・搬出装置内の排泥の一部に止水プラグゾーンを速やかに形成させることを特徴とするシールド掘削方法。
  2. 前記搬送・搬出装置が、スクリューコンベアである請求項1に記載のシールド掘削方法。
  3. 前記薬剤が、水溶性高分子物質又は吸水性高分子物質或いはこれらの混合物の、エマルジョン、或いは、有機溶剤に懸濁させた懸濁液又は高濃度水溶液の少なくともいずれかである請求項1又は2に記載のシールド掘削方法。
  4. 前記搬送・搬出装置の薬剤の注入口の近傍で、前記薬剤と前記圧縮空気とを混合し、前記注入口から薬剤を多量の空気とともに添加する請求項1〜3のいずれか1項に記載のシールド掘削方法。
  5. 前記圧縮空気を断続的に用い、前記薬剤の飛散・拡散を間欠的に行う請求項1〜4のいずれか1項に記載のシールド掘削方法。
  6. 前記薬剤の添加量が、容量比率で、前記排泥に対して、0.05%〜0.50%である請求項1〜5のいずれか1項に記載のシールド掘削方法。
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