JP6084012B2 - ポリカーボネート樹脂組成物及びそれからなる光学用成形品 - Google Patents

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本発明は、耐熱性、機械的強度等を損なうことなく、更に、白濁や光線透過率の低下がなく、色相ならびに輝度の良好なポリカーボネート樹脂組成物、ならびにこれを成形してなる導光板、面発光体材料、銘板等の光学用成形品に関する。
液晶表示装置には、薄型化、軽量化、省電力化、高輝度・高精細化の要求に対処するために面状光源装置が組み込まれている。この面状光源装置には、一面が一様な傾斜の傾斜面を有する楔型断面の導光板が備えられている。また、高輝度を得るために上記の傾斜面にプリズム形状の凹凸パターンを形成して光散乱機能を付与する提案もなされている(特許文献1)。
導光板は、一般に熱可塑性樹脂の射出成形によって得られ、上記の凹凸パターンは、金型表面に形成された凹凸パターンの転写によって付与される。従来、導光板はポリメチルメタクリレート(PMMA)等の材料から成形されてきた。しかし、パーソナルコンピュータ、携帯電話、PDA等の機器内部で発生する熱が大きくなる傾向にあり、また機器の軽薄短小化に対応するために、使用される熱可塑性樹脂には耐熱性が高く、かつ機械的強度も高い樹脂が求められており、PMMAからポリカーボネート樹脂に置き換えられつつある。
ポリカーボネート樹脂は、PMMAと比較して、機械的性質、熱的性質、電気的性質には優れるが、光線透過率の面ではやや劣る。従って、ポリカーボネート樹脂製導光板を使用した面状光源装置の場合には、PMMAと比べて輝度が低下するという問題があった。
従来から、ポリカーボネート樹脂製導光板における輝度を高める方法が幾つか提案されている。
特許文献2では、蛍光増白剤とビーズ状架橋アクリル樹脂を併用し、蛍光増白剤により輝度を向上し、ビーズ状架橋アクリル微粒子により輝度のむらを少なくする方法が、特許文献3では、アクリル樹脂および脂環式エポキシ樹脂を添加することにより光線透過率および輝度を向上させる方法が、特許文献4では、コポリエステルカーボネートを導入して凹凸パターンの転写を向上させることにより輝度を向上させる方法が提案されている。
しかしながら、特許文献2の方法では、部分的に輝度は向上するが、ビーズ状架橋アクリル樹脂や蛍光増白剤の添加により光線透過率が低下するため、導光板の光源より遠い部分の輝度の低下が大きく、均一な輝度を得ることが出来ないという問題があった。特許文献3の方法では、アクリル樹脂の添加により色相は良好になるが、白濁するために光線透過率および輝度を上げることが出来ず、脂環式エポキシ樹脂を添加することにより透過率が向上する可能性はあるが、色相の改善効果は認められないという問題があった。特許文献4の方法の場合、流動性や転写性の改善効果は期待できるものの、耐熱性が低下するという欠点があった。
特開平10−55712号公報 特開平9−20860号公報 特開平11−158364号公報 特開2001−215336号公報
本発明は、ポリカーボネート樹脂本来の特性、すなわち耐熱性、機械的強度等を損なうことなく、更に、白濁や光線透過率の低下がなく、色相ならびに輝度の良好なポリカーボネート樹脂組成物、ならびにこれを成形してなる導光板、面発光体材料、銘板等の光学用成形品を提供するものである。
本発明者らは、かかる課題を解決するために鋭意検討を行った結果、ポリカーボネート樹脂に水素化ビスフェノールA系化合物およびリン系酸化防止剤を含有させることにより、白濁や光線透過率の低下が無く、色相ならびに輝度の良好な導光板等の光学用成形品が得られることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、ポリカーボネート樹脂(A)100重量部、水素化ビスフェノールA系化合物(B)0.01〜1重量部およびリン系酸化防止剤(C)0.02〜1重量部を含み、該水素化ビスフェノールA系化合物(B)が、下記式1または下記式2で表される水素化ビスフェノールAまたは水素化ビスフェノールAグリシジルエーテルであり、
該リン系酸化防止剤(C)が、下記一般式1で表される化合物であるポリカーボネート樹脂組成物を成形してなることを特徴とする光学用成形品に関する。
式1
Figure 0006084012

式2
Figure 0006084012
一般式1
Figure 0006084012

(一般式1において、R1、R2は炭素数1〜20のアルキル基、またはアルキル基で置換されてもよいアリール基を、a、bは整数0〜3を示す。)

本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、輝度、光線透過率、機械的性質、耐熱性及び色相安定性に優れているため、薄型(厚さ0.3mm程度)の導光板の成形加工においても色相が変化したり、樹脂そのものが劣化したりすることがなく、工業的利用価値が極めて高いものである。
本発明にて使用されるポリカーボネート樹脂(A)とは、種々のジヒドロキシジアリール化合物とホスゲンとを反応させるホスゲン法、又はジヒドロキシジアリール化合物とジフェニルカーボネートなどの炭酸エステルとを反応させるエステル交換法によって得られる重合体であり、代表的なものとしては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)から製造されたポリカーボネート樹脂が挙げられる。
上記ジヒドロキシジアリール化合物としては、ビスフェノールAの他に、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル−3−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−第三ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3、5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパンのようなビス(ヒドロキシアリール)アルカン類、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンのようなビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類、4,4′−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジメチルジフェニルエーテルのようなジヒドロキシジアリールエーテル類、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルフィドのようなジヒドロキシジアリールスルフィド類、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジメチルジフェニルスルホキシドのようなジヒドロキシジアリールスルホキシド類、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジメチルジフェニルスルホンのようなジヒドロキシジアリールスルホン類等が挙げられる。
これらは、単独又は2種類以上混合して使用される。これらの他に、ピペラジン、ジピペリジルハイドロキノン、レゾルシン、4,4′−ジヒドロキシジフェニル等を混合して使用してもよい。
さらに、上記のジヒドロキシアリール化合物と以下に示すような3価以上のフェノール化合物を混合使用してもよい。
3価以上のフェノールとしてはフロログルシン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプテン、2,4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプタン、1,3,5−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ベンゾール、1,1,1−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−エタン及び2,2−ビス−[4,4−(4,4′−ジヒドロキシジフェニル)−シクロヘキシル]−プロパンなどが挙げられる。
ポリカーボネート樹脂(A)の粘度平均分子量は、通常10000〜100000、好ましくは12000〜30000である。かかるポリカーボネート樹脂を製造するに際し、分子量調節剤、触媒等を必要に応じて使用することができる。
本発明にて使用される水素化ビスフェノールA系化合物(B)は、下記式1および下記式2で表される化合物などが挙げられる。
式1
Figure 0006084012
式2
Figure 0006084012
水素化ビスフェノールA系化合物(B)の配合量は、ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対して、0.01〜1重量部である。水素化ビスフェノールA系化合物(B)の配合量が0.01重量部未満の場合、光線透過率および色相の向上効果が十分ではないため好ましくない。また、配合量が1重量部を超える場合、光線透過率が低下するため好ましくない。
本発明にて使用されるリン系酸化防止剤(C)としては、下記一般式1で表わされる化合物等が挙げられる。
一般式1
Figure 0006084012
一般式1において、R1、R2は炭素数1〜20のアルキル基、またはアルキル基で置換されてもよいアリール基を、a、bは整数0〜3を示す。
一般式1の化合物としてはアデカ社製アデカスタブPEP−36が商業的に入手可能なものとして挙げられる。
リン系酸化防止剤(C)の配合量は、ポリカーボネート樹脂(A)100重量部あたり、0.02〜1重量部である。配合量が0.02重量部未満では、熱安定性が劣ることから色相の向上効果が十分でないため好ましくない。また、1重量部を超えると、返って熱安定性が低下し、光線透過率および色相の向上効果が十分ではないため好ましくない。配合量は、0.04〜0.5重量部が好適で、さらに好ましくは0.05〜0.2重量部である。
さらに、本発明の効果を損なわない範囲で、各種の熱安定剤、酸化防止剤、着色剤、離型剤、軟化材、帯電防止剤、等の添加剤、衝撃性改良材、他のポリマーを配合してもよい。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物の各種配合成分の混合方法には、特に制限はなく、公知の混合機、例えばタンブラー、リボンブレンダー等による混合や押出機による溶融混練が挙げられる。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物を成形する方法には、特に制限はなく、公知の射出成形法、圧縮成形法等を用いることができる。
以下に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はそれら実施例に制限されるものではない。尚、「部」は重量基準に基づく。
原料として以下のものを使用した。
ポリカーボネート樹脂(A)
ビスフェノールAとホスゲンから合成されたポリカーボネート樹脂
(住化スタイロンポリカーボネート社製カリバー 200−80、
以下「PC」と略記)
水素化ビスフェノールA系化合物(B)
水素化ビスフェノールA
(丸善石油化学社製H−BPA、以下「B−1」と略記)
水素化ビスフェノールAグリシジルエーテル
(共栄社化学社製エポライト4000、以下B−2と略記)
リン系酸化防止剤(C)
アデカ社製アデカスタブPEP−36(以下「P系AO」と略記)
前述の各種原料を表1および表2に示す配合比率にて一括してタンブラーに投入し、10分間乾式混合した後、二軸押出機(日本製鋼所社製TEX30α)を用いて、溶融温度220℃にて混練し、ポリカーボネート樹脂組成物の各種ペレットを得た。
得られたペレットを用いて各種評価用試験片を作成し、評価に供した。結果を表1および表2に示した。尚、それぞれの評価方法は以下のとおり。
(評価用試験片の作成方法)
得られたペレットを120℃で4時間以上乾燥した後に、射出成形機(ファナック製S2000i100B)を用いて成形温度360℃、金型温度100℃でJIS K7139多目的試験片A型(長さ168mm×厚さ4mm)を作成した。端面を切削し、切削端面についてはメガロテクニカ製樹脂板端面鏡面機PB−500を用いて鏡面加工した。
(光線透過率の評価方法)
光線透過率の評価は、以下のとおり積算光線透過率を求めることで行った。
日立分光光度計U−4100に長光路測定付属装置を設置し、光源として50Wハロゲンランプを用いて、光源前マスク5.6mm×2.8mm、試料前マスク6.0mm×2.8mmを使用した状態で1nm毎の分光透過率を測定した。この時の透過率を積算し、十の位を四捨五入することにより求めた。波長380〜780nmの領域における積算光線透過率が28000以上を良好とした。
(色相の評価方法)
波長450nmの可視光線は青色を呈するため、波長450nmの光線透過率が高いほど黄色味が小さく、色相に優れている。積算光線透過率と同様の測定方法で分光透過率を測定し、波長450nmの光線透過率が55%以上を良好とした。
Figure 0006084012
判定:良好(○)、不良(×)
Figure 0006084012
判定:良好(○)、不良(×)
実施例1〜7に示すように、本発明の要件を具備したポリカーボネート系樹脂組成物は、高い光線透過率および優れた色相を示した。
比較例1および3は、水素化ビスフェノールA系化合物の配合量が少ない場合であり、光線透過率および色相が不十分であった。
比較例2および4は、水素化ビスフェノールA系化合物の配合量が多い場合であり、光線透過率が不十分であった。
比較例5は、リン系酸化防止剤の配合量が少ない場合であり、色相が不十分であった。
比較例6は、リン系酸化防止剤の配合量が多い場合であり、光線透過率および色相が不十分であった。

Claims (2)

  1. ポリカーボネート樹脂(A)100重量部、水素化ビスフェノールA系化合物(B)0.01〜1重量部およびリン系酸化防止剤(C)0.02〜1重量部を含み、該水素化ビスフェノールA系化合物(B)が、下記式1または下記式2で表される水素化ビスフェノールAまたは水素化ビスフェノールAグリシジルエーテルであり、
    該リン系酸化防止剤(C)が、下記一般式1で表される化合物であるポリカーボネート樹脂組成物を成形してなることを特徴とする光学用成形品。
    式1
    Figure 0006084012

    式2
    Figure 0006084012
    一般式1
    Figure 0006084012

    (一般式1において、R1、R2は炭素数1〜20のアルキル基、またはアルキル基で置換されてもよいアリール基を、a、bは整数0〜3を示す。)
  2. 導光板である、請求項1に記載の光学用成形品。
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