JP6081513B2 - 放熱部品用銅合金板 - Google Patents
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Description
本発明は、パソコン、タブレット端末、スマートフォン、携帯電話、デジタルカメラ等の電子機器に搭載されているCPU、液晶等の熱を放散させる放熱部品に用いる銅合金板材に関する。
パソコン、タブレット端末、スマートフォン、携帯電話、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ等の電子機器には、搭載されているCPU、液晶、撮像素子等の電子部品から発生する熱を放散させる放熱部品が使用されている。放熱部品は、電子部品の過度の温度上昇を防止し、電子部品の熱暴走を防止して正常に機能させるためのものである。放熱部品として、熱伝導性の高い純胴、強度と耐食性に優れるステンレス鋼、軽量のアルミニウム合金等の素材を加工したものが使用されている。これらの放熱部品は放熱機能だけでなく、電子機器に加わる外力から搭載された電子部品を保護する構造部材としての役割も担っている。
電子機器に搭載される電子部品には高速化、高機能化が求められ、電子部品の高密度化が常に進展している。そのため、電子部品の発熱量は急速に増大している。また、電子機器の小型化、薄型化、軽量化の要求の下で、放熱部品にも薄肉化が要求されている。しかし、放熱部品を薄肉化した場合でも、放熱性能及び構造強度の維持が求められている。
放熱部品の素材である板材は、ヘム曲げ(密着曲げ)、90°曲げ、絞り等の塑性加工を経て放熱部品に成形される。曲げ加工において、リードフレームや端子では曲げ部の幅(曲げ線の長さ)は数ミリ程度以下であるが、放熱部品においては曲げ部の幅が20mm程度以上の大きいものもある。曲げ幅が大きくなるほど、板材の曲げ加工性が急激に低下することが知られており、放熱部品用板材には端子やリードフレーム用板材と比べて、厳しい曲げ加工性が要求される。
放熱部品の素材である板材は、ヘム曲げ(密着曲げ)、90°曲げ、絞り等の塑性加工を経て放熱部品に成形される。曲げ加工において、リードフレームや端子では曲げ部の幅(曲げ線の長さ)は数ミリ程度以下であるが、放熱部品においては曲げ部の幅が20mm程度以上の大きいものもある。曲げ幅が大きくなるほど、板材の曲げ加工性が急激に低下することが知られており、放熱部品用板材には端子やリードフレーム用板材と比べて、厳しい曲げ加工性が要求される。
放熱部品の素材として純銅は、熱伝導性には優れるものの強度が小さく、放熱部品を薄肉化することができない。ステンレス鋼は熱伝導率が低く(2〜3%IACS)、放熱量が大きい電子部品用放熱部品として適用できない。アルミニウム合金は、強度と熱伝導性がともに不十分である。一方、銅合金は、強度及び導電性に優れるものは多い(例えば特許文献1〜3参照)が、幅広の曲げ加工が可能であるものはなかった。
本発明は、高強度、優れた曲げ加工性、及び放熱性を有する放熱部品用銅合金板を提供することを目的とする。
本発明に係る放熱部品用銅合金板は、Ni:0.1〜1.0mass%、Fe:0.01〜0.3mass%、P:0.03〜0.2mass%を含み、残部がCu及び不可避不純物からなり、圧延平行方向の引張強度が580MPa以上、耐力が560MPa以上、伸びが6%以上、圧延直角方向の引張強度が600MPa以上、耐力が580MPa以上、伸びが3%以上であり、導電率が50%IACS以上、曲げ半径Rと板厚tの比R/tを0.5とし曲げ線を圧延垂直方向とした90度曲げを行ったときの曲げ加工限界幅が70mm以上、曲げ線を圧延垂直方向とした密着曲げを行ったときの曲げ加工限界幅が20mm以上であることを特徴とする。
上記銅合金は、さらにSi、Zn、Sn、Co、Al、Cr、Mg、Mn、Ca、Pb、Ti、Zrの1種又は2種以上を合計で0.3mass%以下、含有することができる。
上記銅合金板の表面に、必要に応じてめっき等により表面被覆層を形成し、耐食性を向上させることができる。表面被覆層として、Sn層、Cu−Sn合金層、Ni層又はNi−Co層のうち1層又は複数層が考えられる。
上記銅合金板の表面に、必要に応じてめっき等により表面被覆層を形成し、耐食性を向上させることができる。表面被覆層として、Sn層、Cu−Sn合金層、Ni層又はNi−Co層のうち1層又は複数層が考えられる。
本発明によれば、構造部材としての強度、特に変形及び落下衝撃性に耐える強度、複雑形状への加工に耐えうる曲げ加工性、及び半導体素子等からの熱に対する高放熱性を有する放熱部品用銅合金板を提供することができる。また、この銅合金板に前記表面被覆層を形成した場合、耐食性が向上し、過酷な環境下においても放熱部材としての性能が低下するのを防止できる。
以下、本発明に係る放熱部品用銅合金板について、詳細に説明する。
<銅合金板の組成>
銅合金の組成は、Ni:0.1〜1.0mass%、Fe:0.01〜0.3mass%、P:0.03〜0.2mass%を含み、残部がCu及び不可避不純物からなる。この銅合金は、必要に応じて副成分として、Si、Zn、Sn、Co、Al、Cr、Mg、Mn、Ca、Pb、Ti、Zrの1種又は2種以上を合計で0.3mass%以下含む。この組成は、特許文献1に記載された銅合金組成と主要部分で一致する。
<銅合金板の組成>
銅合金の組成は、Ni:0.1〜1.0mass%、Fe:0.01〜0.3mass%、P:0.03〜0.2mass%を含み、残部がCu及び不可避不純物からなる。この銅合金は、必要に応じて副成分として、Si、Zn、Sn、Co、Al、Cr、Mg、Mn、Ca、Pb、Ti、Zrの1種又は2種以上を合計で0.3mass%以下含む。この組成は、特許文献1に記載された銅合金組成と主要部分で一致する。
Niは、後述するPとの金属間化合物を析出することで、銅合金を高強度化する。Ni含有量が0.1mass%未満では、Ni−P化合物が少ないため、所望の強度が得られない。一方、Ni含有量が1.0mass%を超えると、鋳造時に粗大なNi−P化合物の晶出物が多量に生成し、熱間加工性を劣化させる。従って、Ni含有量は0.1〜1.0mass%とする。Ni含有量の下限は好ましくは0.3mass%、より好ましくは0.4mass%、上限は好ましくは0.9mass%、より好ましくは0.8mass%である。
Feは、Ni及びPとの金属間化合物を形成することで、銅合金を高強度化させる。また、Ni−P化合物の晶出物の生成を抑制し、熱間加工性を改善する。Fe含有量が0.01mass%未満では、上記効果が不十分である。一方、Fe含有量が0.3mass%を超えると、Fe−P化合物の析出が優先となり、Pと化合物を形成しなかった固溶Ni及びFeの影響により、導電率が低下する。従って、Fe含有量は0.01〜0.3mass%とする。Fe含有量の下限は好ましくは0.05mass%、より好ましくは0.07mass%、上限は好ましくは0.2mass%、より好ましくは0.15mass%である。
Pは、Ni及びFeとの金属間化合物を形成し、Cuの母相に析出して、強度を向上させる。P含有量が0.03mass%未満では、Ni−Fe−P化合物の析出が十分でなく、所望の強度が得られない。一方、P含有量が0.2mass%を超えると、Ni−P化合物の晶出物が多量に発生し、熱間加工性が劣化する。従って、P含有量は0.03〜0.2mass%とする。P含有量の下限は好ましくは0.06mass%、より好ましくは0.08mass%、上限は好ましくは0.17mass%、より好ましくは0.15mass%である。
副成分として必要に応じて添加されるSi、Zn、Sn、Co、Al、Cr、Mg、Mn、Ca、Pb、Ti、Zrは、銅合金の強度を向上させ、さらに製造時の熱間圧延性を向上させる作用もある。しかし、上記副成分の1種又は2種以上の合計含有量が0.3mass%を超えると、銅合金の強度は向上するものの、導電率及び熱伝導性が低下する。従って、上記副成分の合計含有量は0.3mass%以下とする。
<銅合金板の特性>
放熱部材には、構造部材としての強度、特に変形及び落下衝撃に耐える強度が必要とされる。銅合金板の圧延平行方向の引張強度が580MPa以上、耐力が560MPa以上、かつ圧延直角方向の引張強度が600MPa以上、耐力が580MPa以上であれば、放熱部材を薄肉化しても、構造部材として必要な強度が確保できる。また、銅合金板の圧延平行方向の伸びが6%以上、かつ圧延直角方向の伸びが3%以上であれば、銅合金板から放熱部材を絞り加工や曲げ加工で成形する場合の成形加工性に特に問題が生じない。
放熱部材には、構造部材としての強度、特に変形及び落下衝撃に耐える強度が必要とされる。銅合金板の圧延平行方向の引張強度が580MPa以上、耐力が560MPa以上、かつ圧延直角方向の引張強度が600MPa以上、耐力が580MPa以上であれば、放熱部材を薄肉化しても、構造部材として必要な強度が確保できる。また、銅合金板の圧延平行方向の伸びが6%以上、かつ圧延直角方向の伸びが3%以上であれば、銅合金板から放熱部材を絞り加工や曲げ加工で成形する場合の成形加工性に特に問題が生じない。
銅合金板を素材として放熱部材を成形する場合、一般に銅合金板には優れた曲げ加工性が必要とされる。銅合金板を、曲げ半径Rと板厚tの比R/tを0.5とし曲げ線を圧延垂直方向とした90度曲げを行ったときの曲げ加工限界幅が70mm以上、曲げ線を圧延垂直方向とした密着曲げを行ったときの曲げ加工限界幅が20mm以上であれば、放熱部品の製造に支障が生じない。銅合金板の曲げ加工限界幅が上記の値に達しない場合、放熱部品を製造するプロセスで曲げ加工部にクラックや破断が発生し、複雑形状への成形が困難となる。
半導体素子等から発生する熱を吸収し、外部に放散させるには、放熱部材用銅合金板の導電率が50%IACS以上、熱伝導率が220W/m・K以上であることが好ましい。なお、熱伝導率は、Wiedemann−Franz則より、導電率から換算でき、導電率が50%IACS以上であれば、熱伝導率は220W/m・K以上となる。
<銅合金板の製造工程>
本発明に係る銅合金板は、溶解鋳造、均質化処理、熱間圧延、冷間圧延、再結晶焼鈍、冷間圧延、複数回の時効焼鈍、及び冷間圧延の工程で製造することができる。なお、この工程は、時効焼鈍を複数回繰り返し行う点を除いて、従来の製造方法(特許文献1参照)と同じである。
均質化処理では鋳塊を900〜1000℃に0.5〜5時間加熱し、その温度で熱間圧延を開始し、熱間圧延後、直ちに20℃/秒以上の冷却速度で急冷(好ましくは水冷)し、必要に応じて両面を面削後、適宜の圧延率で冷間圧延を行う。
本発明に係る銅合金板は、溶解鋳造、均質化処理、熱間圧延、冷間圧延、再結晶焼鈍、冷間圧延、複数回の時効焼鈍、及び冷間圧延の工程で製造することができる。なお、この工程は、時効焼鈍を複数回繰り返し行う点を除いて、従来の製造方法(特許文献1参照)と同じである。
均質化処理では鋳塊を900〜1000℃に0.5〜5時間加熱し、その温度で熱間圧延を開始し、熱間圧延後、直ちに20℃/秒以上の冷却速度で急冷(好ましくは水冷)し、必要に応じて両面を面削後、適宜の圧延率で冷間圧延を行う。
続く再結晶焼鈍は、650〜775℃の温度範囲に10〜100秒加熱する。この再結晶焼鈍は、銅合金板(製品)の伸び及び曲げ加工性を改善するために行われる。再結晶焼鈍の温度が650℃未満又は保持時間が10秒未満では、再結晶が不十分となり、銅合金板(製品)の曲げ加工性が劣化する。一方、再結晶焼鈍の温度が775℃を超え又は保持時間が100秒を超えると、再結晶粒が粗大化し(平均結晶粒径が10μm以上に粗大化)、銅合金板(製品)において十分な強度が得られない。
再結晶焼鈍後、必要に応じて冷間圧延を行う。この冷間圧延を行う場合、その加工率は、後述する仕上げ冷間圧延において所定の加工率及び製品板厚が得られるように、75%以下の範囲内で適宜設定すればよい。
再結晶焼鈍後、必要に応じて冷間圧延を行う。この冷間圧延を行う場合、その加工率は、後述する仕上げ冷間圧延において所定の加工率及び製品板厚が得られるように、75%以下の範囲内で適宜設定すればよい。
続いて時効焼鈍を複数回繰り返して行う。時効焼鈍の条件は、いずれも350〜450℃で1〜10時間の範囲内であることが好ましい。時効処理の温度が350℃未満又は保持時間が1時間未満では、析出が不十分であり、銅合金板(製品)の導電率が向上しない。一方、時効処理の温度が450℃を超え又は保持時間が10時間を超えると、析出物が粗大化し、銅合金板(製品)で十分な強度が得られない。各時効焼鈍後は、銅合金板材は室温まで冷却される。このように製造工程の一部として時効焼鈍を複数回繰り返すことで、組織(結晶粒のサイズ及び方位等)が均一化され、曲げ加工性が向上し、90度曲げの曲げ加工限界幅及び密着曲げの加工限界幅の大きい本発明に係る銅合金板を製造できる。なお、従来は、時効焼鈍は1回だけ行われていた(特許文献1参照)。
時効焼鈍後、目標板厚まで仕上げの冷間圧延を行う。圧延率は目標とする製品強度に応じて設定する。
仕上げ冷間圧延後、必要に応じて短時間焼鈍を行う。この短時間焼鈍の条件は、250〜450℃で20〜40秒間とする。この条件で短時間焼鈍を行うことにより、仕上げ冷間圧延で導入された歪みが除去される。また、この条件であれば材料の軟化がなく強度の低下が少ない。
仕上げ冷間圧延後、必要に応じて短時間焼鈍を行う。この短時間焼鈍の条件は、250〜450℃で20〜40秒間とする。この条件で短時間焼鈍を行うことにより、仕上げ冷間圧延で導入された歪みが除去される。また、この条件であれば材料の軟化がなく強度の低下が少ない。
<銅合金板の表面被覆層>
銅合金板にめっき等により表面被覆層を形成することにより、放熱部材の耐食性が向上し、過酷な環境下においても放熱部材としての性能が低下するのを防止できる。
銅合金板の表面に形成する表面被覆層として、Sn層が好ましい。Sn層の厚さが0.2μm未満では、耐食性の改善が十分ではなく、5μmを超えると生産性が低下し、コストアップとなる。従って、Sn層の厚さは0.2〜5μmとする。Sn層は、Sn金属及びSn合金を含む。
厚さ0.2〜5μmのSn層の下に、Cu−Sn合金層を形成することができる。Cu−Sn合金層の厚さが3μmを超えると、曲げ加工性が低下するため、Cu−Sn合金層の厚さは3μm以下とする。この場合、Cu−Sn合金層の下に、下地層としてさらにNi層又はNi−Co合金層を形成することができる。Ni層又はNi−Co合金層の厚さが3μmを超えると、曲げ加工性が低下するため、Ni層又はNi−Co合金層の厚さは3μm以下とする。
銅合金板にめっき等により表面被覆層を形成することにより、放熱部材の耐食性が向上し、過酷な環境下においても放熱部材としての性能が低下するのを防止できる。
銅合金板の表面に形成する表面被覆層として、Sn層が好ましい。Sn層の厚さが0.2μm未満では、耐食性の改善が十分ではなく、5μmを超えると生産性が低下し、コストアップとなる。従って、Sn層の厚さは0.2〜5μmとする。Sn層は、Sn金属及びSn合金を含む。
厚さ0.2〜5μmのSn層の下に、Cu−Sn合金層を形成することができる。Cu−Sn合金層の厚さが3μmを超えると、曲げ加工性が低下するため、Cu−Sn合金層の厚さは3μm以下とする。この場合、Cu−Sn合金層の下に、下地層としてさらにNi層又はNi−Co合金層を形成することができる。Ni層又はNi−Co合金層の厚さが3μmを超えると、曲げ加工性が低下するため、Ni層又はNi−Co合金層の厚さは3μm以下とする。
表面被覆層として、Ni層又はNi−Co合金層、及びCu−Sn合金層をこの順に形成することができる。Ni層又はNi−Co合金層、及びCu−Sn合金層の厚さは、曲げ加工性の劣化を防止するとの観点から、いずれも3μm以下とする。
表面被覆層として、Ni層又はNi−Co合金層のいずれか1層を形成することができる。これらの被覆層は、曲げ加工性の劣化を防止するとの観点から、いずれも3μm以下とする。
上記各被覆層は、電気めっき、リフローめっき、無電解めっき、スパッタ等により形成することができる。Cu−Sn合金層は、銅合金母材にSnめっきをし、又は銅合金母材にCuめっき及びSnめっきをした後リフロー処理等を行い、CuとSnを反応させて形成することができる(例えば特開2004−68026号公報参照)。リフロー処理の加熱条件は、230〜600℃×5〜30秒とする。
表面被覆層として、Ni層又はNi−Co合金層のいずれか1層を形成することができる。これらの被覆層は、曲げ加工性の劣化を防止するとの観点から、いずれも3μm以下とする。
上記各被覆層は、電気めっき、リフローめっき、無電解めっき、スパッタ等により形成することができる。Cu−Sn合金層は、銅合金母材にSnめっきをし、又は銅合金母材にCuめっき及びSnめっきをした後リフロー処理等を行い、CuとSnを反応させて形成することができる(例えば特開2004−68026号公報参照)。リフロー処理の加熱条件は、230〜600℃×5〜30秒とする。
表1のNo.1〜21に示す組成の銅合金を溶解し、電気炉により大気中で、厚さ50mm、長さ80mm、幅200mmの鋳塊に溶製した。その後、この鋳塊を950℃で1時間加熱した後、厚さ15mmまで熱間圧延し、直ちに水中に浸漬して急冷した。次に、熱間圧延材の表面を面削して酸化膜を除去した後、厚さ1.0mmまで冷間圧延を行った。続いて、750℃×60秒間の再結晶焼鈍を行った。なお、再結晶焼鈍後に板表面で測定した平均結晶粒径(JISH0501に規定された切断法で測定)は、いずれも10μm未満であった。
次いで加工率40%の冷間圧延を行った後、No.1〜18については時効焼鈍を2回繰り返し行い、No.19〜21については時効焼鈍を1回のみ行った。No.1〜18において、1回目の時効焼鈍は375℃×5時間の条件で行い、いったん室温まで冷却した後、2回目の時効焼鈍を425℃×2時間の条件で行った。No.19〜21の時効焼鈍は400℃×5時間の条件で行った。続いて、希硫酸液で表面酸化物を除去した後、加工率67%で目標板厚の0.2mmまで仕上げ冷間圧延を行った。
仕上げ冷間圧延後、350℃で30秒間の短時間焼鈍を行った。
仕上げ冷間圧延後、350℃で30秒間の短時間焼鈍を行った。
以上の工程で得られた銅合金条(製品板)と、市販のステンレス鋼板(SUS304)及びアルミニウム合金(5052(H38))を供試材として、機械的特性、導電率、曲げ限界幅を下記要領で測定した。また、Wiedemann−Franz則により、導電率から熱伝導率を算出した。これらの結果を表1に示す。
<機械的特性>
各供試材から、長手方向が圧延方向に平行及び垂直となるようにJIS5号試験片を採取し、JISZ2241の規定に基づいて引張試験を行い、圧延方向に平行方向(‖)及び垂直方向(⊥)の引張強度、耐力及び伸びを測定した。
<導電率>
導電率は、JISH0505の規定に基づいて測定した。
各供試材から、長手方向が圧延方向に平行及び垂直となるようにJIS5号試験片を採取し、JISZ2241の規定に基づいて引張試験を行い、圧延方向に平行方向(‖)及び垂直方向(⊥)の引張強度、耐力及び伸びを測定した。
<導電率>
導電率は、JISH0505の規定に基づいて測定した。
<90度曲げの曲げ限界幅>
供試材から、長さ30mm、幅10〜100mm(幅10、15、20、25・・・と5mmおきに100mm幅まで)の幅の異なる4角形の試験片(各幅ごとに3個)を作成した。試験片の長さ30mmの辺の方向が供試材の圧延方向に平行となるようにした。この試験片を用い、図1に示すV字ブロック1及び押し金具2を油圧プレスにセットし、曲げ半径Rと板厚tの比R/tを0.5とし、曲げ線(図1の紙面に垂直方向)の方向を試験片3の幅方向とし(Good Way曲げ)、90度曲げを行った。V字ブロック1及び押し金具2の幅(図1の紙面に垂直方向の厚み)は120mmとした。また、油圧プレスの荷重は、試験片の幅10mmあたり1000kgf(9800N)とした。
曲げ試験後、試験片の曲げ部外側全長を100倍の光学顕微鏡で観察し、3個の試験片の全てで1箇所も割れが観察されなかった場合を合格、それ以外を不合格と判定した。合格した試験片の最大幅を、その供試材の曲げ限界幅とした。
供試材から、長さ30mm、幅10〜100mm(幅10、15、20、25・・・と5mmおきに100mm幅まで)の幅の異なる4角形の試験片(各幅ごとに3個)を作成した。試験片の長さ30mmの辺の方向が供試材の圧延方向に平行となるようにした。この試験片を用い、図1に示すV字ブロック1及び押し金具2を油圧プレスにセットし、曲げ半径Rと板厚tの比R/tを0.5とし、曲げ線(図1の紙面に垂直方向)の方向を試験片3の幅方向とし(Good Way曲げ)、90度曲げを行った。V字ブロック1及び押し金具2の幅(図1の紙面に垂直方向の厚み)は120mmとした。また、油圧プレスの荷重は、試験片の幅10mmあたり1000kgf(9800N)とした。
曲げ試験後、試験片の曲げ部外側全長を100倍の光学顕微鏡で観察し、3個の試験片の全てで1箇所も割れが観察されなかった場合を合格、それ以外を不合格と判定した。合格した試験片の最大幅を、その供試材の曲げ限界幅とした。
<密着曲げの曲げ限界幅>
90度曲げ試験と同様の方法で、供試材から、長さ30mm、幅5〜50mm(幅5、10、15、20・・・と5mmおきに50mm幅まで)の幅の異なる4角形の試験片(各幅ごとに3個)を作成した。試験片の長さ30mmの辺の方向が圧延方向に平行となるようにした。この試験片を用い、曲げ半径Rと板厚tの比R/tを2.0とし、曲げ線の方向を試験片の幅方向とし(Good Way)、JISZ2248の規定に倣って、おおよそ170度まで曲げた後、密着曲げを行った。
曲げ試験後、曲げ部における割れの有無を100倍の光学顕微鏡で観察し、3個の試験片の全てで1箇所も割れが観察されなかった場合を合格、それ以外を不合格と判定した。合格した試験片の最大幅を、その供試材の曲げ限界幅とした。
90度曲げ試験と同様の方法で、供試材から、長さ30mm、幅5〜50mm(幅5、10、15、20・・・と5mmおきに50mm幅まで)の幅の異なる4角形の試験片(各幅ごとに3個)を作成した。試験片の長さ30mmの辺の方向が圧延方向に平行となるようにした。この試験片を用い、曲げ半径Rと板厚tの比R/tを2.0とし、曲げ線の方向を試験片の幅方向とし(Good Way)、JISZ2248の規定に倣って、おおよそ170度まで曲げた後、密着曲げを行った。
曲げ試験後、曲げ部における割れの有無を100倍の光学顕微鏡で観察し、3個の試験片の全てで1箇所も割れが観察されなかった場合を合格、それ以外を不合格と判定した。合格した試験片の最大幅を、その供試材の曲げ限界幅とした。
表1,2に示すように、本発明に規定された合金組成を有し、製造工程の一部として時効焼鈍を2回繰り返して行ったNo.1〜9は、引張強度、耐力、伸び、導電率、90度曲げ及び密着曲げの曲げ限界幅が本発明の規定を満たす。
一方、本発明に規定された合金組成を有しないNo.10〜18、及び製造工程の一部として時効焼鈍を1回のみ行ったNo.19〜21は、引張強度、耐力、伸び、導電率、90度曲げ及び密着曲げの曲げ限界幅のいずれか1以上が本発明の規定を満たさない。
No.10は、Ni含有量が不足で、強度が低い。
No.11は、Ni含有量が過剰で、Ni−P化合物が多く晶出し、熱間圧延時に割れが発生して、以後の工程が実施できなかった。
No.12は、Fe含有量が不足で、Ni−P化合物が多く晶出し、熱間圧延時に割れが発生して、以後の工程が実施できなかった。
No.13は、Fe含有量が過剰なため、導電率及び熱伝導率が低い。
No.10は、Ni含有量が不足で、強度が低い。
No.11は、Ni含有量が過剰で、Ni−P化合物が多く晶出し、熱間圧延時に割れが発生して、以後の工程が実施できなかった。
No.12は、Fe含有量が不足で、Ni−P化合物が多く晶出し、熱間圧延時に割れが発生して、以後の工程が実施できなかった。
No.13は、Fe含有量が過剰なため、導電率及び熱伝導率が低い。
No.14は、P含有量が過剰で、Ni−P化合物が多く晶出し、熱間圧延時に割れが発生して、以後の工程が実施できなかった。
No.15は、P含有量が不足で、強度が低い。
No.16〜18は、いずれも副成分の含有量が過剰で、導電率及び熱伝導率が低く、曲げ限界幅が小さい。
No.19〜21は、時効焼鈍を1回のみ行った従来工程材であり、曲げ限界幅が不足する。
また、市販のステンレス鋼板であるNo.22は、導電率及び熱伝導率が低く、市販のアルミニウム合金板であるNo.23は、強度が低く、導電率及び熱伝導率が低い。
No.15は、P含有量が不足で、強度が低い。
No.16〜18は、いずれも副成分の含有量が過剰で、導電率及び熱伝導率が低く、曲げ限界幅が小さい。
No.19〜21は、時効焼鈍を1回のみ行った従来工程材であり、曲げ限界幅が不足する。
また、市販のステンレス鋼板であるNo.22は、導電率及び熱伝導率が低く、市販のアルミニウム合金板であるNo.23は、強度が低く、導電率及び熱伝導率が低い。
次に、表1のNo.2の銅合金条(製品板)を供試材とし、表面にNiめっき、Cuめっき、Snめっき、Cu−Snめっき及びNi−Co合金めっきの1種又は2種以上を、それぞれ所定の厚さで施した。各めっきのめっき浴組成及びめっき条件を表3に、各めっき層の厚さを表4に示す。なお、表4のNo.24〜26,29,30,32〜35は、電気めっき後リフロー処理を施したもので、各めっき層の厚さはリフロー処理後のものである。No.24〜26,29,30,32〜35のCu−Sn層は、リフロー処理により、CuめっきのCuとSnめっきのSnが反応して形成されたものである。なお、このCuめっきは、リフロー処理により消滅した。
各めっき層の厚さは下記要領で測定した。
<Sn層>
まず、蛍光X線膜厚計(セイコー電子工業株式会社;型式SFT3200)を用いてSn層合計厚さ(Cu−Sn合金層を含むSn層合計厚さ)を測定する。その後、p−ニトロフェノール及び苛性ソーダを主成分とする剥離液に10分間浸漬し、Sn層を剥離後、蛍光X線膜厚計を用いて、Cu−Sn合金層中のSn量を測定する。このようにして求めたSn層合計厚さからCu−Sn合金層中のSn量を引くことにより、Sn層厚さを算出した。
<Sn層>
まず、蛍光X線膜厚計(セイコー電子工業株式会社;型式SFT3200)を用いてSn層合計厚さ(Cu−Sn合金層を含むSn層合計厚さ)を測定する。その後、p−ニトロフェノール及び苛性ソーダを主成分とする剥離液に10分間浸漬し、Sn層を剥離後、蛍光X線膜厚計を用いて、Cu−Sn合金層中のSn量を測定する。このようにして求めたSn層合計厚さからCu−Sn合金層中のSn量を引くことにより、Sn層厚さを算出した。
<Cu−Sn合金層>
p−ニトロフェノール及び苛性ソーダを主成分とする剥離液に10分間浸漬し、Sn層を剥離後、蛍光X線膜厚計を用いて、Cu−Sn合金層中のSn量を測定する。Cu−Sn合金層の厚さはSn換算厚さである。
<Ni層、Co層、Ni−Co合金層>
Ni層、Co層、Ni−Co合金層の厚さは、蛍光X線膜厚計を用いて測定した。
p−ニトロフェノール及び苛性ソーダを主成分とする剥離液に10分間浸漬し、Sn層を剥離後、蛍光X線膜厚計を用いて、Cu−Sn合金層中のSn量を測定する。Cu−Sn合金層の厚さはSn換算厚さである。
<Ni層、Co層、Ni−Co合金層>
Ni層、Co層、Ni−Co合金層の厚さは、蛍光X線膜厚計を用いて測定した。
No.24〜36の各供試材から試験片を作成し、耐食性及び曲げ加工性を下記要領で測定した。
<耐食性>
耐食性は、塩水噴霧試験にて評価した。5質量%のNaClを含む99.0%脱イオン水(和光純薬工業株式会社製)を用い、試験条件は、試験温度:35℃±1℃、噴霧液PH:6.5〜7.2、噴霧圧力:0.07〜0.17MPa(0.098±0.01MPa)とし、72時間噴霧後に水洗及び乾燥した。続いて実体顕微鏡にて試験片の表面を観察し、腐食(母材腐食とめっき表面の点状腐食)の有無を観察した。
<耐食性>
耐食性は、塩水噴霧試験にて評価した。5質量%のNaClを含む99.0%脱イオン水(和光純薬工業株式会社製)を用い、試験条件は、試験温度:35℃±1℃、噴霧液PH:6.5〜7.2、噴霧圧力:0.07〜0.17MPa(0.098±0.01MPa)とし、72時間噴霧後に水洗及び乾燥した。続いて実体顕微鏡にて試験片の表面を観察し、腐食(母材腐食とめっき表面の点状腐食)の有無を観察した。
<めっきの曲げ加工性評価>
供試材から、長さ30mm、幅20mmの4角形の試験片(各幅ごとに3個)を作成した。試験片の長さ30mmの辺の方向が供試材(母材)の圧延方向に平行となるようにした。この試験片を用い、図1に示すV字ブロック1及び押し金具2を油圧プレスにセットし、曲げ半径Rと板厚tの比R/tを2.0とし、曲げ線の方向を母材の圧延方向に垂直方向に向け、90度曲げを行った。油圧プレスの荷重は、試験片の幅10mmあたり1000kgf(9800N)とした。
曲げ試験後、試験片の曲げ部外側全長を100倍の光学顕微鏡で観察し、3個の試験片の全てで1箇所も割れが観察されなかった場合を割れ無し、1箇所でも割れが観察された場合を割れ有りと判定した。
供試材から、長さ30mm、幅20mmの4角形の試験片(各幅ごとに3個)を作成した。試験片の長さ30mmの辺の方向が供試材(母材)の圧延方向に平行となるようにした。この試験片を用い、図1に示すV字ブロック1及び押し金具2を油圧プレスにセットし、曲げ半径Rと板厚tの比R/tを2.0とし、曲げ線の方向を母材の圧延方向に垂直方向に向け、90度曲げを行った。油圧プレスの荷重は、試験片の幅10mmあたり1000kgf(9800N)とした。
曲げ試験後、試験片の曲げ部外側全長を100倍の光学顕微鏡で観察し、3個の試験片の全てで1箇所も割れが観察されなかった場合を割れ無し、1箇所でも割れが観察された場合を割れ有りと判定した。
表4に示すように、本発明に規定されためっき構成及び各めっき層厚さを有するNo.24〜33は、塩水噴霧試験で母材腐食が観察されず、曲げ加工性試験で割れが発生しなかった。なお、Ni層又はNi−Co合金層からなる下地層が形成されていないNo.26、及びSn層が残留せずCu−Sn合金層が表面に露出したNo.30は、母材腐食は観察されなかったが、点状腐食(被覆層表面が点状に腐食する現象)が観察された。
一方、めっき層厚さが本発明の規定を外れるNo.34〜36は、塩水噴霧試験で母材腐食が観察されたか、曲げ加工性試験でめっきに割れが発生した。
No.34は、Sn層の厚さが薄く、母材腐食が発生した。
No.35,36は、Cu−Sn合金層又はNi層の厚さが厚く、曲げ加工試験でめっきに割れが発生した。
No.34は、Sn層の厚さが薄く、母材腐食が発生した。
No.35,36は、Cu−Sn合金層又はNi層の厚さが厚く、曲げ加工試験でめっきに割れが発生した。
1 V字ブロック
2 押し金具
2 押し金具
Claims (6)
- Ni:0.1〜1.0mass%、Fe:0.01〜0.3mass%、P:0.03〜0.2mass%を含み、残部がCu及び不可避不純物からなり、圧延平行方向の引張強度が580MPa以上、耐力が560MPa以上、伸びが6%以上、圧延直角方向の引張強度が600MPa以上、耐力が580MPa以上、伸びが3%以上であり、導電率が50%IACS以上、曲げ半径Rと板厚tの比R/tを0.5とし曲げ線の方向を圧延垂直方向とした90度曲げを行ったときの曲げ加工限界幅が70mm以上、曲げ線の方向を圧延垂直方向とした密着曲げを行ったときの曲げ加工限界幅が20mm以上であることを特徴とする放熱部品用銅合金板。
- 表面に厚さ0.2〜5μmのSn層が形成されていることを特徴とする請求項1に記載された放熱部品用銅合金板。
- 表面に厚さ3μm以下のCu−Sn合金層と厚さ0.2〜5μmのSn層がこの順に形成されていることを特徴とする請求項1に記載された放熱部品用銅合金板。
- 表面に厚さ3μm以下のNi層又はNi−Co合金層、厚さ3μm以下のCu−Sn合金層、及び厚さ0.2〜5μmのSn層がこの順に形成されていることを特徴とする請求項1に記載された放熱部品用銅合金板。
- 表面に厚さ3μm以下のNi層又はNi−Co合金層、及び厚さ3μm以下のCu−Sn合金層がこの順に形成されていることを特徴とする請求項1に記載された放熱部品用銅合金板。
- 表面に厚さ3μm以下のNi層又はNi−Co合金層のいずれか1層が形成されていることを特徴とする請求項1に記載された放熱部品用銅合金板。
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