以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、説明の簡略化を図るべく、図中、同一符号を付してある。
(第1実施形態)
図1〜図6により、本発明に係る冷凍サイクル装置10の第1実施形態を説明する。
冷凍サイクル装置10では、冷媒として通常のフロン系冷媒(具体的には、HFC−134a)を採用しており、高圧側冷媒圧力が冷媒の臨界圧力を超えない亜臨界サイクルを冷凍サイクルとして構成している。なお、本実施形態の冷凍サイクル装置10は、例えば、車両用空調装置に適用されている。
冷凍サイクル装置10は、圧縮機11、凝縮器12、膨張弁13、蒸発器14、およびアキュムレータ15を備え、冷媒を循環させる冷媒回路10aを構成している。なお、本実施形態の冷媒には、圧縮機11を潤滑するための冷凍機油が混入されている。
具体的には、圧縮機11は、冷媒を吸入し、圧縮して吐出するものである。圧縮機11は、電動モータにより圧縮機構を駆動する電動圧縮機であって、電動モータの回転速度を変えることにより冷媒吐出容量を連続的に変更可能に構成されている。
凝縮器12は、圧縮機11から吐出された高温高圧冷媒と冷却ファン12aにより送風される空気とを熱交換させることにより、高温高圧冷媒を放熱させて高温高圧冷媒を凝縮する放熱用熱交換器である。冷却ファン12aは、制御回路20によって回転速度(送風空気量)が制御される電動式送風機である。
膨張弁13は、凝縮器12にて放熱しつつ凝縮された冷媒を減圧膨張させる減圧手段であるとともに、膨張弁13の冷媒流れ下流側(すなわち、低圧側)へ流出させる冷媒の流量を調整する流量調整手段でもある。具体的には、膨張弁13は、冷媒を減圧させる絞り通路と、絞り通路の開度(以下、絞り開度という)を変更可能に構成された弁体と、この弁体を駆動して絞り開度を変更させるステッピングモータ等の電動アクチュエータとを有して構成される可変絞り機構である。
蒸発器14は、膨張弁13にて減圧された低圧冷媒と送風ファン14aから送風される送風空気とを熱交換させて、低圧冷媒を蒸発させて吸熱作用を発揮させる吸熱用熱交換器である。送風ファン14aは、制御回路20によって回転速度(すなわち、送風空気量)が制御される電動式送風機である。なお、蒸発器14としては、例えば、車載空調装置用の冷却用熱交換器を用いることができる。アキュムレータ15は、蒸発器14から流出された冷媒を液冷媒とガス冷媒とに分離して、液冷媒を貯めつつ、ガス冷媒を圧縮機11の入口に導くようになっている。
制御回路20は、マイクロコンピュータ、RAM、フラッシュメモリ等から構成されている。制御回路20は、センサ16a、16bの検出値や始動スイッチ18の出力信号に基づいて、圧縮機11の回転速度を制御しつつ、凝縮器12の出口側冷媒の過冷却度を目標値に近づけるように膨張弁13の絞り開度を制御する冷凍サイクル運転制御処理を実行する。制御回路20は、センサ16a、16b、17a、17bの検出値に基づいて、冷媒回路10a内の冷媒量の適否を判定する冷媒不足判定処理を実行する。
センサ16aは、凝縮器12の出口および膨張弁13の入口の間の冷媒の温度を検出する冷媒温度センサである。センサ16bは、凝縮器12の出口および膨張弁13の入口の間の冷媒圧力(すなわち、高圧側冷媒圧力)を検出する冷媒圧力センサである。センサ17aは、蒸発器14の出口およびアキュムレータ15の入口の間の冷媒温度を検出する冷媒温度センサである。センサ17bは、蒸発器14の出口およびアキュムレータ15の入口の間の冷媒圧力(すなわち、低圧側冷媒圧力)を検出する冷媒圧力センサである。始動スイッチ18は、冷媒回路10a(すなわち、圧縮機11)の作動を開始させるために使用者によって操作されるスイッチである。
次に、本実施形態の作動について説明する。
制御回路20は、冷媒不足判定処理を冷凍サイクル運転制御処理に先だって実行する。冷媒不足判定処理の実行は、使用者によって始動スイッチ18がオンされたときに開始される。冷凍サイクル運転制御処理の実行は、後述する冷媒不足判定処理において冷媒回路10aの冷媒量が適量であると判定したときに開始される。以下、冷媒不足判定処理に先だって、冷凍サイクル運転制御処理について説明する。
(冷凍サイクル運転制御処理)
制御回路20は、図2のフローチャートにしたがって、冷凍サイクル運転制御処理を実行する。
まず、圧縮機11の回転速度を電子制御装置から与えられる指令値に設定する(ステップ100)。これにより、圧縮機11は冷媒を吸入して圧縮して吐出する。凝縮器12は、圧縮機11から吐出される高温高圧冷媒を放熱しつつ凝縮する。この凝縮された冷媒は、膨張弁13の絞り通路を通過することにより、減圧膨張される。この膨張弁13の絞り通路を通過した冷媒は、蒸発器14において、送風ファン14aから送風される送風空気から吸熱する。この吸熱した冷媒は、アキュムレータ15において、液冷媒とガス冷媒とに分離される。そして、液冷媒はアキュムレータ15内に貯められて、ガス冷媒は圧縮機11の入口に導かれる。これにより、冷媒が圧縮機11→凝縮器12→膨張弁13→蒸発器14→アキュムレータ15→圧縮機11の順に循環する。
次に、センサ16a、16bの検出値を読み込む(ステップ110)。その後、ステップ120においてセンサ16a、16bの検出値に基づいて凝縮器12の出口側冷媒の過冷却度SCを求める。
具体的には、冷媒圧力−飽和温度マップによって、センサ16bの検出圧力(すなわち、凝縮器12から流出される冷媒圧力)に対応関係である冷媒の飽和温度(℃)を求める。冷媒圧力−飽和温度マップは、冷媒圧力および冷媒の飽和温度が1対1で特定される関係を示す情報である。このため、冷媒圧力−飽和温度マップにおいて、センサ16bの検出圧力に対応関係にある飽和温度(℃)として選択することになる。次に、この選択された飽和温度(℃)をT1とし、センサ16aの検出温度(すなわち、凝縮器12の出口側の冷媒温度)(℃)をT2としたときに、(T1−T2)を過冷却度SCとして求める。
次に、このように求めた過冷却度SCを目標値に近づけるように膨張弁13の絞り開度を制御する(ステップ130)。例えば、過冷却度SCが目標値よりも大きいときには(すなわち、過冷却度SC>目標値)、膨張弁13の絞り開度を大きくして、膨張弁13を通過する冷媒流量を増加させる。一方、過冷却度SCが目標値よりも小さいときには(すなわち、過冷却度SC<目標値)、膨張弁13の絞り開度を小さくして、膨張弁13を通過する冷媒流量を減少させる。これにより、過冷却度SCを目標値に近づけることができる。
このようなステップ100、110、120、130の各処理を繰り返すことにより、圧縮機11の回転速度を電子制御装置からの指令値に追従させるように圧縮機11の回転速度を制御し、かつ過冷却度SCを目標値に近づけることができる。
(冷媒不足判定処理)
制御回路20は、図3のフローチャートにしたがって、冷媒不足判定処理を実行する。
まず、ステップ200において、圧縮機11の回転速度を設定する。圧縮機11の回転速度は、センサ16bの検出値が凝縮圧力の目標値(以下、目標凝縮圧力という)に一致させるように決められる。凝縮圧力は、圧縮機11の出口と膨張弁13の入口との間の高圧側冷媒圧力である。目標凝縮圧力は、凝縮器12で発揮する所望の加熱能力に関連する圧力値であって、予め設定されたものである。そして、センサ16bの検出値が目標凝縮圧力よりも大きいときには、圧縮機11の回転速度を下げる。センサ16bの検出値が目標凝縮圧力よりも小さいときには、圧縮機11の回転速度を上げる。
次に、ステップ210において、膨張弁13の絞り開度を設定する。絞り開度の設定については、後述する。その後、ステップ220において、センサ16a、16b、17a、17bの検出値(すなわち、センサ値)を読み込む。次に、ステップ230において、センサ16a、16bの検出値に基づいて、過冷却度SCを求める。過冷却度SCの算出方法は、上記ステップ120の算出方法と同じであるため、その説明を省略する。これに加えて、上記ステップ230では、センサ17a、17bの検出値に基づいて蒸発器14の出口側冷媒の過熱度SHを以下の通り求める。
まず、上記冷媒圧力−飽和温度マップによって、センサ17bによって検出される蒸発圧力に対応関係にある冷媒の飽和温度(℃)を求める。蒸発圧力は、膨張弁13の出口と圧縮機11の入口との間の低圧側冷媒圧力である。このため、冷媒圧力−飽和温度マップにおいて、センサ17bの検出圧力に対応関係にある飽和温度(℃)として選択することになる。次に、この選択された飽和温度(℃)をT4とし、センサ17aの検出温度(すなわち、蒸発器14の出口側の冷媒温度)(℃)をT3としたときに、(T3−T4)を過熱度SHとして求める。
次に、ステップ240において、過冷却度SCと過熱度SHとに基づいて、冷媒回路10a内の冷媒量が不足しているか否かについて次の通り判定する。
すなわち、過冷却度SCが基準値Taよりも小さいか否かを判定し、かつ過熱度SHが基準値Tbよりも大きいか否かを判定する。ここで、過冷却度SCが基準値Ta未満で、かつ過熱度SHが基準値Tb以上であるときには、冷媒回路10a内の冷媒量が必要冷媒量よりも少なくて、冷媒回路10a内の冷媒量が不足しているとしてYESと判定する。
一方、過冷却度SCが基準値Ta未満で、かつ過熱度SHが基準値Tb未満であるときには、冷媒回路10a内の冷媒量が必要冷媒量よりも多いとしてNOと判定する。過冷却度SCが基準値Ta以上で、かつ過熱度SHが基準値Tb以上であるときには、冷媒回路10a内の冷媒量が必要冷媒量よりも多いとしてNOと判定する。過冷却度SCが基準値Ta以上で、かつ過熱度SHが基準値Tb未満であるときには、冷媒回路10a内の冷媒量が必要冷媒量よりも多いとしてNOと判定する。
なお、本実施形態の基準値Taとしては、予め決められた温度として例えば10℃が用いられる。基準値Tbとしては、予め決められた温度として例えば5℃が用いられる。
ここで、必要冷媒量は、冷媒回路10aにおいて、冷凍サイクルを作動させるために必要な冷媒量である。つまり、必要冷媒量は、圧縮機11を稼働した状態で、蒸発器14で吸熱して熱を凝縮器12から放熱する際に必要な冷媒量である。必要冷媒量は、後述するように、膨張弁13の絞り開度が小さくなるほど、多くなる。
このようなステップ240においてNOと判定したときには、次のステップ250において、過冷却度SCが基準値Ta以上であるか否かを判定する。過冷却度SCが基準値Ta未満であるときには、NOと判定してステップ200に戻る。このため、冷媒回路10a内の冷媒量が必要冷媒量よりも多く、かつ過冷却度SCが基準値Ta未満である限り、ステップ200、210、220、230、ステップ240のNO判定、およびステップ250のNO判定を繰り返す。
このことにより、圧縮機11の回転速度がセンサ16bの検出値によって制御されて、凝縮圧力が目標凝縮圧力に近づくことになる。つまり、凝縮圧力が安定化することになる。
ここで、圧縮機11を起動してから凝縮圧力が安定状態に至る前では、過冷却度SCおよび過熱度SHが不安定な状態になる(図4(c)(d)参照)。
そこで、本実施形態では、凝縮圧力と目標凝縮圧力との間の差圧ΔP(=|凝縮圧力−目標凝縮圧力|)が一定値未満になるタイミングta(図4(a)(b)参照)以降において、膨張弁13の絞り開度を次のように制御する(ステップ210)。
すなわち、膨張弁13の絞り通路を全開した開度(以下、全開開度という)を初期開度とし、初期開度から、ステップ210毎に、絞り開度を一定開度ずつ縮小させる。つまり、膨張弁13の絞り通路を全開した状態から、絞り開度を時間経過に伴って徐々に小さくする。
これにより、絞り開度の初期開度を凝縮器12の出口側冷媒が気液二相状態になる開度とし、冷媒回路10aを構成する機器の運転状態量に関係なく、膨張弁13の絞り通路を通過する冷媒流量を時間経過に伴って連続的に減らすことになる。なお、機器の運転状態量は、例えば、過冷却度SC、過熱度SH、圧縮機11の消費電力、アキュムレータ15内の液冷媒量である。
このように圧縮機11を駆動しつつ、膨張弁13の絞り開度を初期開度から時間経過に伴って縮小する状態で、センサ16a、16b、17a、17bの検出値に基づいて過冷却度SCおよび過熱度SHを繰り返し算出する。この算出毎に、過冷却度SCおよび過熱度SHに基づいて、冷媒回路10a内の冷媒量が不足しているか否かを判定する(ステップ240)。
その後、ステップ240において、冷媒回路10a内の冷媒量が不足しているとして、YESと判定したときには、当該冷媒不足判定処理を終了する。この場合には、冷凍サイクル運転制御処理の実行が禁止される。一方、ステップ250において、過冷却度SCが基準値Ta以上になると、冷媒回路10a内の冷媒量が必要冷媒量よりも多いとしてYESと判定して、当該冷媒不足判定処理を終了する。つまり、冷媒回路10aの冷媒量が適量である場合には、ステップ250においてYESと判定して、冷凍サイクル運転制御処理を開始する。
次に、本実施形態の膨張弁13の絞り開度と冷媒回路10aの必要冷媒量との関係について図5のモリエル線図を用いて説明する。
まず、図5において縦軸を冷媒圧力として、横軸を比エンタルピ(kJ/kg)とし、点線(A−B−C−D−E)は絞り開度が比較的小さい場合の冷凍サイクルのサイクルバランス、実線(F−G−H−I−J)は絞り開度が比較的大きい場合の冷凍サイクルのサイクルバランスを示す。
図5中のA−B間(或いは、F−G間)の工程は、圧縮機11で冷媒を吸入圧縮する工程である。B−C間(或いは、G−H間)の工程は、凝縮器12で冷媒を放熱凝縮する工程である。C−D間(或いは、H−I間)の工程は、膨張弁13で冷媒を減圧する工程である。D−E間(或いは、I−J間)の工程は、蒸発器14で冷媒が蒸発して吸熱する工程である。E−A間(或いは、J−F間)は、アキュムレータ15や冷媒配管の圧力損失を示している。
まず、膨張弁13の絞り開度が小さい場合は、膨張弁13の流量特性に基づき圧縮機11で吐出される冷媒流量を流すために必要な前後差圧を確保するよう、凝縮圧力(図5中のP1)は上昇し、蒸発圧力(図5中P2)は低下する。
なお、前後差圧とは、膨張弁13の入口側冷媒圧力(すなわち、凝縮圧力)と膨張弁13の出口側冷媒圧力(すなわち、蒸発圧力)との間の差圧である。
そして、凝縮圧力が上昇すると、凝縮器12における冷媒と空気との温度差が拡大するため、凝縮器12内の凝縮作用が促進されて凝縮器12の出口側冷媒は過冷却度が増加する。過冷却度は、飽和液線および点Cの間の比エンタルピの差分に相当する。その結果、凝縮器12の出口付近の冷媒は過冷却状態となるため、冷媒回路10a内の必要冷媒量は増加する。
一方、膨張弁13の絞り開度を大きくした場合は、凝縮圧力(図5中P3)が低下し、蒸発圧力(図5中P4)は上昇する。このため、膨張弁13の流量特性に基づき圧縮機11で吐出される冷媒流量を流すために必要な前後差圧が確保される。そして、凝縮圧力が低下すると、凝縮器12での冷媒と空気の温度差が縮小するため、凝縮器12内での凝縮作用が抑制されて凝縮器12の出口側冷媒は乾き度が増加する。乾き度は、液冷媒とガス冷媒を含む冷媒中に含まれるガス冷媒が占める重量比率(kg/kg)である。その結果、凝縮器12の出口付近の冷媒は気液二相状態となるため、冷媒回路10a内の必要冷媒量は減少する。このように膨張弁13の絞り開度が冷媒回路10a内の必要冷媒量に影響を与えることになる。
次に、上述した膨張弁13の絞り開度および必要冷媒量の関係を踏まえて、本実施形態の作用効果について図6を参照して説明する。図6は、絞り開度と必要冷媒量Hとの間の関係と、凝縮器12出口側冷媒の状態量(具体的には、過冷却度SC、乾き度)と必要冷媒量Hとの間の関係とを示すグラフである。図6の横軸において飽和液線と交差する点を、過冷却度SCおよび乾き度のそれぞれの基準値としての零(0)としている。
上記特許文献1では、圧縮機11の起動と共に膨張弁13の絞り開度はサイクル効率が最大に近づくように凝縮器12の出口側冷媒が過冷却域となる開度域K1(図6参照)で調整される。開度域K1では、冷媒回路10a内の冷媒量(すなわち、残存量)が規定量より少ない状態となる。このため、絞り開度を開度域K1にして圧縮機11を起動させた場合、起動時点より冷媒不足運転となり、精度良く冷媒不足を判定できる安定運転状態に至るまで冷媒不足運転を継続する必要がある。安定運転状態は、冷凍サイクルを規定する凝縮圧力、蒸発圧力、過熱度SH、および過冷却度SCがそれぞれ安定した状態である。
本実施形態では、膨張弁13の絞り通路を全開した全開開度を膨張弁13の初期開度としている。このため、凝縮器12の出口側冷媒が気液二相域となる開度域K2(図6参照)で膨張弁13の初期開度が調整されることになる。開度域K2では、冷媒回路10a内の冷媒量が規定量より少ない状態で圧縮機11を起動させた場合でも、冷媒不足運転にならない。つまり、冷媒量が足りている状態から圧縮機の稼働を開始させることが可能になる。冷媒不足運転は、冷媒回路10a内の冷媒量が必要冷媒量よりも少ない状態で圧縮機11を運転させることである。規定量は、必要冷媒量に対して冷媒の余裕量を加算した冷媒量である。したがって、冷媒量が不足した状態で圧縮機を稼働させる期間を短くすることが可能になる。
そして、絞り開度は、その初期開度から経時的に縮小方向に調整されることで必要冷媒量が連続的に増加し、必要冷媒量が冷媒回路10a内の冷媒量を超えた時点K3(図6参照)で、冷媒不足運転となる。ここで、冷媒不足運転に至る前後の冷凍サイクルの運転状態には連続性があるため、冷媒不足運転に至る時点の冷凍サイクルの運転状態は、限りなく安定運転状態に近い状態になる。つまり、絞り開度が時間経過に伴って縮小されるので、冷凍サイクルの運転状態が徐々に変化して、冷媒不足運転に至る時点の冷凍サイクルの運転状態は、ほぼ安定運転状態となる。安定運転状態は、冷凍サイクルが安定した状態である。このため、冷媒量が不足しているか否かを判定する判定精度を高めることができる。
以上により、冷媒回路10a内の冷媒量が不足しているか否かを判定する判定精度を高めつつ、冷媒回路10a内の冷媒量が必要冷媒量よりも少ない状態で圧縮機11を運転させる冷媒不足運転の時間を最小限にすることができる。
(第2実施形態)
上記第1実施形態では、過熱度SHおよび過冷却度SCを用いて冷媒不足を判定する例について説明したが、これに代えて、本実施形態では、凝縮圧力の経時的変化量を用いて冷媒不足を判定する例について説明する。
本実施形態と上記第1実施形態とは、制御回路20で実行される冷媒不足判定処理が相違する。そこで、本実施形態の制御回路20で実行される冷媒不足判定処理について説明する。本実施形態の制御回路20は、図3に代わる図7のフローチャートにしたがって、冷媒不足判定処理を実行する。
まず、ステップ200Aにおいて、圧縮機11の回転速度を設定する。圧縮機11の回転速度は、一定の目標回転速度に一致させるように決められる。
次のステップ210において、膨張弁13の絞り開度を一定開度ずつ縮小させる。絞り開度の設定処理については、図3のステップ210の処理と同じであるため、その説明を省略する。その後、ステップ220Aにおいて、センサ16a、16bの検出値を読み込む。
このとき、ステップ220Aの実行回数をNとし、N回目のセンサ16bの検出値を凝縮圧力(N)とし、(N−1)回目のセンサ16bの検出値を凝縮圧力(N−1)とする。ここで、ステップ210毎に絞り開度を縮小する開度は、一定となる。(凝縮圧力(N)−凝縮圧力(N−1))は、絞り開度の変化量当たりの凝縮圧力の変化量になる。
ここで、絞り開度は、絞り通路を全開したときを100%とし、絞り通路を全閉したときを0%としたとき、弁体によって変更される絞り通路の開口面積が占める比率を示す百分率である。
次のステップ240Aにおいて、(凝縮圧力(N)−凝縮圧力(N−1))が基準値よりも小さいか否かを判定することにより、冷媒回路10a内の冷媒量が不足しているか否かを判定する。その後、(凝縮圧力(N)−凝縮圧力(N−1))が基準値よりも大きいときにはNOと判定して、次のステップ250に移行する。このとき、上記第1実施形態と同様、センサ16a、16bの検出値に基づいて過冷却度SCを算出し、この過冷却度SCが基準値Ta以上であるか否かを判定する。このとき、過冷却度SCが基準値Ta未満であるときには、ステップ250でNOと判定して、ステップ200Aに戻る。
このため、(凝縮圧力(N)−凝縮圧力(N−1))が基準値よりも大きく、かつ過冷却度SCが基準値Ta未満である限り、ステップ200A、210、220A、ステップ240のNO判定、およびステップ250のNO判定を繰り返す。
このことにより、圧縮機11の回転速度が一定の目標回転速度になるように制御されて、凝縮圧力が目標凝縮圧力に近づくことになる。そして、圧縮機11の回転速度と目標回転速度との差圧ΔN(=|回転速度−目標回転速度|)が一定値未満になるタイミングをタイミングtb(図8(a)(b)参照)とする。そして、タイミングtb以降において、上記第1実施形態と同様、膨張弁13の絞り通路を全開した開度を初期開度とし、この初期開度から、ステップ210毎に、絞り開度を一定開度ずつ縮小させる。これにより、上記第1実施形態と同様、絞り開度の初期開度を凝縮器12の出口側冷媒が気液二相状態になる開度とし、膨張弁13の絞り通路を通過する冷媒流量を時間経過に伴って連続的に減らすことになる。
このように圧縮機11を駆動しつつ、膨張弁13の絞り開度を初期開度から時間経過に伴って縮小する状態で、凝縮圧力(N)をセンサ16bによって繰り返し検出する。この検出毎に、(凝縮圧力(N)−凝縮圧力(N−1))に基づいて、冷媒回路10a内の冷媒量が不足しているか否かを判定する(ステップ240A)。
その後、ステップ240Aにおいて、冷媒回路10a内の冷媒量が不足しているとして、YESと判定したときには、当該冷媒不足判定処理を終了する。この場合には、冷凍サイクル運転制御処理の実行が禁止される。一方、ステップ250において、過冷却度SCが基準値Ta以上になると、冷媒回路10a内の冷媒量が必要冷媒量よりも多いとしてYESと判定して、当該冷媒不足判定処理を終了する。
次に、本実施形態で凝縮圧力に基づき、冷媒回路10a内の冷媒量が不足しているか否かを判定できる理由を、冷媒不足判定処理の実行時における凝縮圧力の経時変化の違いで説明する。
まず、冷媒回路10a内の冷媒量が必要冷媒量よりも多い場合、圧縮機11を一定の回転速度で稼働させると共に、膨張弁13の絞り開度を縮小すると、所定の冷媒流量を流すために膨張弁13の前後差圧は拡大して、凝縮圧力の上昇が促進される(図8(c)中グラフa参照)。前後差圧とは、膨張弁13の入口側冷媒圧力と膨張弁13の出口側冷媒圧力との間の差圧である。
一方、冷媒回路10a内の冷媒量が不足している場合、圧縮機11を一定の回転速度で稼働させると共に、膨張弁13の絞り開度を縮小すると、過熱度SHが上昇し圧縮機11の吸入冷媒密度が低下するため、冷媒流量は低下する。その結果、膨張弁13の前後差圧は比較的拡大せず、凝縮圧力の上昇は抑制される(図8(c)中グラフb参照)。
以上により、ステップ240A毎に、(凝縮圧力(N)−凝縮圧力(N−1))を、絞り開度の変化量当たりの凝縮圧力の変化量(すなわち、凝縮圧力の経時的変化量)として算出し、(凝縮圧力(N)−凝縮圧力(N−1))が基準値より小さくなると、冷媒回路10a内の冷媒量が不足していると判定することができる。
(第3実施形態)
上記第2実施形態では、ステップ240において、絞り開度の変化量当たりの凝縮圧力の変化量を用いて冷媒量の不足を判定する例について説明したが、これに代えて、本実施形態では、圧縮機11の消費電力を用いて冷媒量の不足を判定する例について説明する。
本実施形態では、図7のステップ240毎に、圧縮機11で消費される消費電力を求めるために、インバータ回路から圧縮機11に流れる交流電流を測定する電流センサと、インバータ回路から圧縮機11に与えられる交流電圧を測定する電圧センサとを備える。インバータ回路は、圧縮機11の電動モータを駆動する駆動回路である。
このようなステップ240では、電流センサで測定される電流値と電圧センサで測定される電圧値とを用いて圧縮機11の消費電力を求める。N回目のステップ240で求めた消費電力を消費電力(N)とし、(N−1)回目のステップ240で求めた消費電力を消費電力(N−1)とする。消費電力(N)から消費電力(N−1)を引いた差分ΔS(消費電力(N)−消費電力(N−1))を圧縮機11の消費電力の経時的変化量として求める。
ここで、上記第2実施形態で説明したように、冷媒回路10a内の冷媒量が必要冷媒量よりも多い場合、圧縮機11を一定の回転速度で稼働させると共に、膨張弁13の絞り開度を縮小すると、冷媒流量は増大する。このため、圧縮機11を稼働させるのに必要な動力が増大して、圧縮機11の消費電力の上昇が促進される(図9(c)中グラフc参照)。
一方、冷媒回路10a内の冷媒量が不足している場合、圧縮機11を一定の回転速度で稼働させると共に、膨張弁13の絞り開度を縮小すると、過熱度SHが上昇し圧縮機11の吸入冷媒密度が低下するため、冷媒流量は低下する。このため、圧縮機11を稼働させるのに必要な動力が低下して、圧縮機11の消費電力の上昇が抑制される(図9(c)中グラフd参照)。
そこで、本実施形態では、冷媒回路10a内の冷媒量が不足しているか否かを判定するために、差分ΔSが基準値よりも小さいか否かを判定する。例えば、差分ΔSが基準値よりも小さいときには冷媒回路10a内の冷媒量が不足しているとしてYESと判定する。差分ΔSが基準値よりも大きいときには冷媒回路10a内の冷媒量が必要冷媒量よりも多いとしてNOと判定する。
以上により、圧縮機11の消費電力の経時的変化量を用いて冷媒量の不足を判定することができる。
(第4実施形態)
本実施形態では、上記第1〜第3の実施形態において、ステップ240で冷媒量が不足しているとしてYESと判定したときの膨張弁13の絞り開度を用いて冷媒回路10a内の冷媒量(すなわち、残存量)を求める例について図10を参照して説明する。図10は、横軸が膨張弁13の絞り開度とし、縦軸が冷媒量とし、冷媒回路10a内の必要冷媒量をグラフHで示している。
本実施形態では、制御回路20のメモリ(記憶手段)には、絞り開度と必要冷媒量が1対1で特定される関係を示す必要冷媒量マップが冷媒量情報として記憶されている。制御回路20は、算出手段として、ステップ240で冷媒量が不足しているとしてYESと判定したときの膨張弁13の絞り開度を検出する。さらに、制御回路20は、算出手段として、必要冷媒量マップにおいて、この検出した絞り開度に対応関係にある必要冷媒量を冷媒回路10a内の冷媒量(図10中残存量と記す)として算出する。必要冷媒量マップは、膨張弁13の絞り開度に対する冷媒量の関係式を示している。
なお、必要冷媒量マップは運転条件や環境条件により一義的には決まらないため、運転条件や環境条件に応じて補正してもよい。
本実施形態では、膨張弁13の絞り開度によって演算された冷媒回路10a内の冷媒量(残存量)に基づき、以下の(1)、(2)ように、情報を利用者に提供することができる。
(1)冷媒量が不足している情報に併せて、規定量と残存量(検出値)の差分から必要冷媒補充量を求め、この必要冷媒補充量を利用者に提供する。この情報により利用者は、冷媒再充填にあたり補充量を必要最小限にすることができる。
(2)冷媒量が不足していない場合にも、残存量の検出値の記憶蓄積させておくことにより、冷媒量が不足した状態に至る予測時期を推定し、この推定した予測時期を利用者に提供する。
(他の実施形態)
上記第1〜第4実施形態では、ステップ200において、センサ16bの検出値が目標凝縮圧力に一致させるように圧縮機11の回転速度を制御した例について説明したが、これに代えて、次のようにしてもよい。
すなわち、圧縮機11の回転速度は、センサ17bの検出値が蒸発圧力の目標値(以下、目標蒸発圧力という)に一致させるように決められる。目標蒸発圧力は、蒸発器14で発揮する所望の冷却能力に関連する圧力値であって、予め設定されたものである。そして、センサ17bの検出値が目標蒸発圧力よりも大きいときには、圧縮機11の回転速度を下げる。センサ16bの検出値が目標凝縮圧力よりも小さいときには、圧縮機11の回転速度を上げる。これにより、センサ16bの検出値が目標蒸発圧力に一致させるように圧縮機11の回転速度を制御することができる。
この場合、蒸発圧力と目標蒸発圧力との差圧ΔP(=|蒸発圧力−目標蒸発圧力|)が一定値未満になるタイミングにおいて、膨張弁13の絞り開度を縮小させる制御を開始する。
ここで、センサ16b(若しくは、17b)の検出値を目標凝縮圧力(若しくは、目標蒸発圧力)に一致させるように圧縮機11を制御する場合において、利用者によって目標凝縮圧力(若しくは、目標蒸発圧力)が変更される場合には、冷凍サイクルの安定状態に至るのに要する所要時間が長くなる。冷凍サイクルの安定状態とは、凝縮圧力、蒸発圧力、目標凝縮圧力、および目標蒸発圧力がそれぞれ安定した状態である。
このように、利用者によって目標凝縮圧力(若しくは、目標蒸発圧力)が変更される場合には、上記所要時間が延長されるのを抑制するために、圧縮機11の回転速度を一定の目標回転速度に一致させるように圧縮機11を制御してもよい。この場合、圧縮機11の回転速度と目標回転速度との差圧ΔN(=|圧縮機11の回転速度−目標回転速度|)が一定値未満になるタイミングにおいて、膨張弁13の絞り開度を縮小させる制御を開始する。
上記第3実施形態では、冷媒回路10aを構成する機器の運転状態として、圧縮機11の消費電力を採用した例について説明したが、これに代えて、次の(3)、(4)、(5)のようにしてもよい。
(3) 冷媒回路10aを構成する機器の運転状態として、アキュムレータ15内の冷媒の液面高さを採用する。この場合、アキュムレータ15内の冷媒の液面高さが第1閾値未満であるか否かを判定することにより、冷媒回路10a内の冷媒量が不足しているか否かを判定する。
(4) 冷媒回路10aを構成する機器の運転状態として、アキュムレータ15内の冷媒重量を採用する。この場合、アキュムレータ15内の冷媒重量が第2閾値未満であるか否かを判定することにより、冷媒回路10a内の冷媒量が不足しているか否かを判定する。
(5) 冷媒回路10aを構成する機器の運転状態として、アキュムレータ15内の液冷媒の体積を採用する。この場合、アキュムレータ15内の液冷媒の体積が第3閾値未満であるか否かを判定することにより、冷媒回路10a内の冷媒量が不足しているか否かを判定する。
上記第1実施形態では、ステップ240において、過冷却度SCと過熱度SHとに基づいて、冷媒回路10a内の冷媒量が不足しているか否かについて判定した例について説明したが、これに代えて、次の(6)、(7)、(8)のようにしてもよい。
(6) 過冷却度SCおよび過熱度SHのうち過熱度SHのみに基づいて、冷媒回路10a内の冷媒量が不足しているか否かを繰り返し判定する。そして、過冷却度SCに関係なく、過熱度SHが基準値Tbよりも大きいときには、冷媒回路10a内の冷媒量が必要冷媒量よりも少なくて、冷媒回路10a内の冷媒量が不足していると判定する。一方、過熱度SHが基準値Tbよりも小さいときには、冷媒回路10a内の冷媒量が必要冷媒量よりも多いと判定する。
(7) 過熱度SHの経時的変化量に基づいて、冷媒回路10a内の冷媒量が不足しているか否かを繰り返し判定する。
具体的には、Nをステップ230の実行回数とし、N回目のステップ230で算出される過熱度SHの算出値を過熱度SH(N)とし、(N−1)回目のステップ230で算出される過熱度SHの算出値を過熱度SH(N−1)とする。そして、ステップ230毎に、過熱度SH(N)と過熱度SH(N−1)との差分ΔSH{=過熱度SH(N)−過熱度SH(N−1)}を過熱度SHの経時的変化量として繰り返し求める。
ここで、過熱度SHの経時的変化量が基準値Ka以上であるときには、冷媒回路10a内の冷媒量が必要冷媒量よりも少なくて、冷媒回路10a内の冷媒量が不足していると判定する。一方、過熱度SHの経時的変化量が基準値Ka未満であるときには、冷媒回路10a内の冷媒量が必要冷媒量よりも多いと判定する。
このように過熱度SHの経時的変化量を用いて冷媒回路10a内の冷媒量の適否を判定する場合には、センサ17a、17bの検出値の精度が有る程度低くても、冷媒回路10a内の冷媒量の適否を精度良く判定することができる。
(8) 過熱度SHの経時的変化量と過冷却度SCの経時的変化量とに基づいて、冷媒回路10a内の冷媒量が不足しているか否かを繰り返し判定する。
具体的には、上記(6)と同様、Nをステップ230の実行回数とし、N回目のステップ230で算出される過熱度SHの算出値を過熱度SH(N)とする。(N−1)回目のステップ230で算出される過熱度SHの算出値を過熱度SH(N−1)とする。
これに加えて、N回目のステップ230で算出される過冷却度SCの算出値を過冷却度SC(N)とし、(N−1)回目のステップ230で算出される過冷却度SCの算出値を過冷却度SC(N−1)とする。
そして、N回目のステップ230において、過冷却度SC(N)から過冷却度SC(N−1)を引いた差分ΔSC{=過冷却度SC(N)−過冷却度SC(N−1)}を過冷却度SCの経時的変化量として繰り返し求める。これに加えて、過熱度SH(N)から過熱度SH(N−1)を引いた差分ΔSH{=過熱度SH(N)−過熱度SH(N−1)}を過熱度SHの経時的変化量として繰り返し求める。
例えば、N回目のステップ240において、過冷却度SCの経時的変化量が基準値Ka未満で、かつ過熱度SHの経時的変化量が基準値Kb以上であるときに、冷媒回路10a内の冷媒量が不足していると判定する。
一方、N回目のステップ240において、次の(a)、(b)、(c)のとき、冷媒回路10a内の冷媒量が必要冷媒量よりも多いと判定する。
(a)は、過冷却度SCの経時的変化量が基準値Ka未満で、かつ過熱度SHの経時的変化量が基準値Kb未満である場合である。(b)は、過冷却度SCの経時的変化量が基準値Ka以上で、かつ過熱度SHの経時的変化量が基準値Kb未満である場合である。(c)は、過冷却度SCの経時的変化量が基準値Ka以上で、かつ過熱度SHの経時的変化量が基準値Kb以上である場合である。
(9) 過熱度SHと過冷却度SCの経時的変化量とに基づいて、冷媒回路10a内の冷媒量が不足しているか否かを繰り返し判定する。
具体的には、過冷却度SCの経時的変化量が基準値未満で、かつ過熱度SHが基準値以上であるときに、冷媒回路10a内の冷媒量が不足していると判定する。一方、次の(d)、(e)、(f)のとき、冷媒回路10a内の冷媒量が必要冷媒量よりも多いと判定する。(d)は、過冷却度SCの経時的変化量が基準値未満で、かつ過熱度SHが基準値未満である場合である。(e)は、過冷却度SCの経時的変化量が基準値以上で、かつ過熱度SHが基準値未満である場合である。(f)は、過冷却度SCの経時的変化量が基準値以上で、かつ過熱度SHが基準値以上である場合である。
(10) 過熱度SHの経時的変化量と過冷却度SCとに基づいて、冷媒回路10a内の冷媒量が不足しているか否かを繰り返し判定する。
具体的には、過冷却度SCが基準値未満で、かつ過熱度SHの経時的変化量が基準値以上であるときに、冷媒回路10a内の冷媒量が不足していると判定する。一方、次の(g)、(h)、(i)のとき、冷媒回路10a内の冷媒量が必要冷媒量よりも多いと判定する。(g)は、過冷却度SCが基準値未満で、かつ過熱度SHの経時的変化量が基準値未満である場合である。(h)は、過冷却度SCが基準値以上で、かつ過熱度SHの経時的変化量が基準値未満である場合である。(i)は、過冷却度SCが基準値以上で、かつ過熱度SHの経時的変化量が基準値以上である場合である。
さらに、上記第2、第3実施形態では、冷凍サイクル装置において亜臨界サイクルを構成した例について説明したが、これに代えて、冷媒として例えば二酸化炭素を採用して、冷凍サイクル装置において高圧側冷媒圧力が冷媒の臨界圧力を超える超臨界サイクルを構成してもよい。同様に、上記(4)、(5)の場合においても、冷凍サイクル装置において高圧側冷媒圧力が冷媒の臨界圧力を超える超臨界サイクルを構成してもよい。
上記第1〜第4の実施形態では、膨張弁13の絞り開度を時間経過に伴って連続的に小さくした例について説明したが、これに代えて、膨張弁13の絞り開度を時間経過に伴って段階的に小さくしてもよい。
上記第1、第2実施形態では、圧縮機11として電動圧縮機を用いた例について説明したが、これに代えて、圧縮容量を変化させて冷媒吐出容量を変化させる可変容量型の圧縮機を圧縮機11として用いてもよい。
上記第1〜第4の実施形態では、冷凍サイクル装置10を車両用空調装置に適用した例について説明したが、これに代えて、車両用空調装置以外の設置型空調装置、冷蔵庫、冷凍庫などの各種の機器に冷凍サイクル装置10を適用してもよい。
上記第1〜第4の実施形態では、膨張弁13の絞り開度を初期開度にした際に、冷媒回路10a内の冷媒量が必要冷媒量よりも多い状態にするために、初期開度を全開開度にした例について説明したが、これに限らず、次のようにしてもよい。
すなわち、冷媒回路10a内の冷媒量が必要冷媒量よりも多い状態になるならば、膨張弁13の絞り開度において、全開開度に近い開度を初期開度としてもよい。
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。また、上記各実施形態は、互いに無関係なものではなく、組み合わせが明らかに不可な場合を除き、適宜組み合わせが可能である。また、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
以上のように構成した第1〜第4の実施形態において次の(11)〜(16)のように本発明の特許請求項の範囲を表現してもよい。
(11) 冷凍サイクル装置において、検出手段は、運転実施手段の実行中に蒸発器から流出される冷媒の過熱度を繰り返し検出する過熱度検出手段を備える。そして、N回目に過熱度検出手段が検出した過熱度(N)とし、(N−1)回目に過熱度検出手段が検出した過熱度(N−1)としたときに、冷媒不足判定手段は、過熱度(N)と過熱度(N−1)との差分が第1基準値以上であるとき、冷媒回路内の冷媒量が不足していると判定することを特徴とする。
(12) 冷凍サイクル装置において、検出手段は、運転実施手段の実行中に蒸発器から流出される冷媒の過熱度を繰り返し検出する過熱度検出手段と、運転実施手段の実行中に放熱器から流出される冷媒の過冷却度を繰り返し検出する過冷却度検出手段とを備える。そして、N回目に過熱度検出手段が検出した過熱度(N)とし、(N−1)回目に過熱度検出手段が検出した過熱度(N−1)とする。N回目に過冷却度検出手段が検出した過冷却度(N)とし、(N−1)回目に過冷却度検出手段が検出した過冷却度(N−1)とする。冷媒不足判定手段は、過熱度(N)と過熱度(N−1)との差分が第1基準値以上であり、かつ過冷却度(N)と過冷却度(N−1)との差分が第2基準値未満であるときに、冷媒回路内の冷媒量が不足していると判定することを特徴とする。
(13) 冷凍サイクル装置において、検出手段は、蒸発器から流出される冷媒の過熱度を繰り返し検出する過熱度検出手段である。そして、冷媒不足判定手段は、過熱度検出手段の検出値が第3基準値以上であるときに、冷媒回路内の冷媒量が不足していると判定することを特徴とする。
(14) 冷凍サイクル装置において、検出手段は、蒸発器から流出される冷媒の過熱度を繰り返し検出する過熱度検出手段と、放熱器から流出される冷媒の過冷却度を繰り返し検出する過冷却度検出手段とを備える。冷媒不足判定手段は、過熱度検出手段の検出値が第3基準値以上であり、かつ過冷却度検出手段の検出値が第4基準値以下であるときに、冷媒回路内の冷媒量が不足していると判定することを特徴とする。
(15) 冷凍サイクル装置において、検出手段は、冷媒回路のうち高圧側冷媒圧力を検出する圧力検出手段の検出値に基づいて、絞り通路の開度の変化量当たりの高圧側冷媒圧力の変化量を求める変化量算出手段を備える。冷媒不足判定手段は、変化量算出手段によって求められる高圧側冷媒圧力の変化量が第5基準値以下であるか否かを判定することにより、冷媒回路内の冷媒量が不足しているか否かを判定することを特徴とする。
(16) 冷凍サイクル装置において、圧縮機は、電動モータにより駆動されて冷媒を圧縮して吐出する電動圧縮機である。検出手段は、電動圧縮機の電動モータに消費される消費電力を機器の運転状態として求める電力検出手段の検出値に基づいて、絞り通路の開度の変化量当たりの消費電力の変化量を求める消費電力変化量算出手段を備える。冷媒不足判定手段は、消費電力変化量算出手段によって求められる消費電力の変化量が第6基準値以下であるか否かを判定することにより、冷媒回路内の冷媒量が不足しているか否かを判定することを特徴とする。
以下、上記第1〜第4実施形態の構成要素と本発明の特許請求の範囲との対応関係について示す。すなわち、圧縮機11、アキュムレータ15が冷媒回路を構成する機器に相当し、ステップ200、200A、210が運転実施手段を構成し、ステップ240、240Aが冷媒不足判定手段を構成する。ステップ220、220Aが検出手段(過熱度検出手段、過冷却度検出手段)に相当する。