JP6076509B2 - クロストリジウム属の菌の毒素産生抑制活性を有するペプチド - Google Patents

クロストリジウム属の菌の毒素産生抑制活性を有するペプチド Download PDF

Info

Publication number
JP6076509B2
JP6076509B2 JP2015561017A JP2015561017A JP6076509B2 JP 6076509 B2 JP6076509 B2 JP 6076509B2 JP 2015561017 A JP2015561017 A JP 2015561017A JP 2015561017 A JP2015561017 A JP 2015561017A JP 6076509 B2 JP6076509 B2 JP 6076509B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
ala
group
trp
phe
clostridium
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2015561017A
Other languages
English (en)
Other versions
JPWO2015119170A1 (ja
Inventor
清水 徹
徹 清水
郁 大谷
郁 大谷
中山 二郎
二郎 中山
貴久 松藤
貴久 松藤
ラビンドラ パル シン
ラビンドラ パル シン
大久保 謙一
謙一 大久保
美樹 神川
美樹 神川
志達 高橋
志達 高橋
健太郎 岡
健太郎 岡
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Miyarisan Pharmaceutical Co Ltd
Original Assignee
Miyarisan Pharmaceutical Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Miyarisan Pharmaceutical Co Ltd filed Critical Miyarisan Pharmaceutical Co Ltd
Application granted granted Critical
Publication of JP6076509B2 publication Critical patent/JP6076509B2/ja
Publication of JPWO2015119170A1 publication Critical patent/JPWO2015119170A1/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Classifications

    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C07ORGANIC CHEMISTRY
    • C07KPEPTIDES
    • C07K7/00Peptides having 5 to 20 amino acids in a fully defined sequence; Derivatives thereof
    • C07K7/04Linear peptides containing only normal peptide links
    • C07K7/06Linear peptides containing only normal peptide links having 5 to 11 amino acids
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A23FOODS OR FOODSTUFFS; TREATMENT THEREOF, NOT COVERED BY OTHER CLASSES
    • A23KFODDER
    • A23K20/00Accessory food factors for animal feeding-stuffs
    • A23K20/10Organic substances
    • A23K20/142Amino acids; Derivatives thereof
    • A23K20/147Polymeric derivatives, e.g. peptides or proteins
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A23FOODS OR FOODSTUFFS; TREATMENT THEREOF, NOT COVERED BY OTHER CLASSES
    • A23LFOODS, FOODSTUFFS, OR NON-ALCOHOLIC BEVERAGES, NOT COVERED BY SUBCLASSES A21D OR A23B-A23J; THEIR PREPARATION OR TREATMENT, e.g. COOKING, MODIFICATION OF NUTRITIVE QUALITIES, PHYSICAL TREATMENT; PRESERVATION OF FOODS OR FOODSTUFFS, IN GENERAL
    • A23L33/00Modifying nutritive qualities of foods; Dietetic products; Preparation or treatment thereof
    • A23L33/10Modifying nutritive qualities of foods; Dietetic products; Preparation or treatment thereof using additives
    • A23L33/17Amino acids, peptides or proteins
    • A23L33/18Peptides; Protein hydrolysates
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61KPREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
    • A61K35/00Medicinal preparations containing materials or reaction products thereof with undetermined constitution
    • A61K35/66Microorganisms or materials therefrom
    • A61K35/74Bacteria
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P31/00Antiinfectives, i.e. antibiotics, antiseptics, chemotherapeutics
    • A61P31/04Antibacterial agents
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P43/00Drugs for specific purposes, not provided for in groups A61P1/00-A61P41/00
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C07ORGANIC CHEMISTRY
    • C07KPEPTIDES
    • C07K7/00Peptides having 5 to 20 amino acids in a fully defined sequence; Derivatives thereof
    • C07K7/64Cyclic peptides containing only normal peptide links
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61KPREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
    • A61K38/00Medicinal preparations containing peptides

Landscapes

  • Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Proteomics, Peptides & Aminoacids (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • Polymers & Plastics (AREA)
  • Molecular Biology (AREA)
  • Medicinal Chemistry (AREA)
  • General Health & Medical Sciences (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Food Science & Technology (AREA)
  • Mycology (AREA)
  • Genetics & Genomics (AREA)
  • Biophysics (AREA)
  • Biochemistry (AREA)
  • Animal Behavior & Ethology (AREA)
  • Pharmacology & Pharmacy (AREA)
  • Veterinary Medicine (AREA)
  • Public Health (AREA)
  • Nutrition Science (AREA)
  • Zoology (AREA)
  • Animal Husbandry (AREA)
  • Microbiology (AREA)
  • Epidemiology (AREA)
  • Chemical Kinetics & Catalysis (AREA)
  • Nuclear Medicine, Radiotherapy & Molecular Imaging (AREA)
  • General Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Oncology (AREA)
  • Communicable Diseases (AREA)
  • Bioinformatics & Cheminformatics (AREA)
  • Medicines That Contain Protein Lipid Enzymes And Other Medicines (AREA)
  • Peptides Or Proteins (AREA)
  • Fodder In General (AREA)
  • Coloring Foods And Improving Nutritive Qualities (AREA)
  • Medicines Containing Material From Animals Or Micro-Organisms (AREA)

Description

本発明は、ペプチドおよび該ペプチドを利用したクロストリジウム属の菌の毒素産生抑制剤に関する。本発明はまた、クロストリジウム・ブチリカムの培養液を利用したクロストリジウム属の菌の毒素産生抑制剤に関する。
嫌気性細菌であるクロストリジウム属(Clostridium)の菌は、土壌、河川、海水、生物の腸など、自然界に広く生息し、食中毒や感染症の原因菌としても知られている。
クロストリジウム属の菌の一種であるウェルシュ菌(Clostridium perfringens)もまた、そのような食中毒・感染症の原因菌のひとつである。ウェルシュ菌は多種の毒素を分泌し、重篤な感染症であるガス壊疽を引き起こすことでも知られている。ウェルシュ菌が分泌する毒素としては、アルファ−毒素(ホスホリパーゼC、遺伝子名:plc)、シーター−毒素(ヘモリシン、遺伝子名:pfoA)、カッパ−毒素(コラゲナーゼ、遺伝子名:colA)等が知られている。
非特許文献1には、ウェルシュ菌において、VirR/VirSシステムと呼ばれる制御系によって、これらの毒素の産生が遺伝子レベルで正に制御されていることが記載されている。
クロストリジウム属をはじめとするグラム陽性菌は、外界の環境に対応してオートインデューサーを分泌する。分泌されたオートインデューサーは菌に作用し、毒素産生を促す。グラム陽性菌である黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)では、チオラクトン構造を有するある種のペプチドがオートインデューサーとして機能し、AgrA/AgrCシステムを介して毒素産生を促進することが知られている。非特許文献2には、黄色ブドウ球菌のオートインデューサーペプチドに対するホモログをウェルシュ菌が有しており、当該ホモログがVirR/VirSシステムを介して毒素の産生を促進することが開示されている。
非特許文献3や4には、クロストリジウム属の菌であるクロストリジウム・ディフィシレ(Clostridium difficile)やボツリヌス菌(Clostridium botulinum)が、VirRやVirSのホモログをコードする遺伝子を有していることが記載されている。
非特許文献3には、オートインデューサーペプチドAgrDをコードする遺伝子を、ウェルシュ菌(Clostridium perfringens)、クロストリジウム・ディフィシレ(Clostridium difficile)、ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)、クロストリジウム・アセトブチリカム(Clostridium acetobutylicum)などのクロストリジウム属の菌が有していることが記載されている。
清水 徹,日本細菌学雑誌(2004),59(2),第377−385頁 Ohtani, K.ら,Journal of Bacteriology(2009),191,第3919−3927頁 Sebaihia, M.ら,Genome Research(2007),17,第1082−1092頁 Cooksley, C.M.ら,Applied and Environmental Microbiology(2010),76,第4448−4460頁
クロストリジウム属の菌は食中毒や重篤な感染症の原因菌であり、クロストリジウム属の菌によってもたらされるこれらの健康被害を予防・制御する技術の開発が強く要望されている。
クロストリジウム属の菌の増殖を、抗生物質の使用によって阻害するという手段も用いられているが、耐性菌が発生するという問題が存在する。
したがって、本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、クロストリジウム属の菌による食中毒や感染症等の健康被害を予防、治療および/または制御する手段を提供することを目的とする。
本願発明者らは、驚くべきことに、クロストリジウム・ブチリカムとクロストリジウム属の菌との共培養により、クロストリジウム菌の毒素産生を抑制し得ることを見出した。当該事実に基づき、クロストリジウム属の菌の毒素産生を抑制し得る成分について、鋭意研究を行った。その結果、ある種の構造を有するペプチドを用いることによって上記課題が解決されることを見出し、本発明の完成に至った。本発明は、以下の内容をその骨子とする。
(1) 下記式(1):
式(1)中、Rは水素原子、アミノ酸およびその誘導体、ならびに置換または無置換の、炭素数1〜10のアシル基、ベンジルオキシカルボニル基、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル基およびフェニルイソチオシアネート基からなる群から選択され、XおよびXはそれぞれ独立にAla、Gly、Trp、Met、Pro、Phe、Val、Leu、IleおよびTyrからなる群から選択され、XおよびXは任意のアミノ酸である、ただし、XがPheのときはXがThrであり、XがAlaのときはXがAlaであり、XがThrのときはXがTrpまたはAlaである;
で表わされるペプチド。
(2) 下記式(2):
式(2)中、Rは水素原子、アミノ酸およびその誘導体、ならびに置換または無置換の、炭素数1〜10のアシル基、ベンジルオキシカルボニル基、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル基およびフェニルイソチオシアネート基からなる群から選択され、XおよびXはそれぞれ独立にAla、Gly、Trp、Met、Pro、Phe、Val、Leu、IleおよびTyrからなる群から選択され、XおよびXは任意のアミノ酸であり、ZはCys、Ser、Thr、Tyr、AsnおよびGlnからなる群から選択される、ただし、XがPheのときはXがThrであり、XがAlaのときはXがAlaであり、XがThrのときはXがTrpまたはAlaである;
で表わされるペプチド。
(3) クロストリジウム・ブチリカム(Clostridium butyricum)を培養した培養液または前記培養液の乾燥物を有効成分として含有する、クロストリジウム属の菌の毒素産生抑制剤。
図1は、環化した合成ペプチドを、逆相HPLCにより精製した際の、クロマトグラムを示す。 図2は、図1におけるフラクション4を分析した、MSスペクトルである。 図3は、N末端保護基(Fmoc)を除去した合成ペプチドを、逆相HPLCにより精製した際の、クロマトグラムを示す。 図4は、図3におけるフラクション32を分析した、MSスペクトルである。 図5は、本発明に係るペプチドによる、ウェルシュ菌のシーター−毒素の遺伝子発現を確認した結果である。環状CFWAH(レーン4)またはペプチド6n(レーン5)がウェルシュ菌の毒素産生抑制活性を有することを示す。 図6は、共培養実験に用いたプレートおよび実験の様子を示す模式図である。 図7は、クロストリジウム・ブチリカムとウェルシュ菌とを共培養した場合における、ウェルシュ菌の毒素遺伝子の発現量を確認したノーザンブロットの結果である。クロストリジウム・ブチリカムが培地中に分泌する成分によって、ウェルシュ菌の毒素遺伝子発現が抑制されることを示す。 図8は、クロストリジウム・ブチリカムのagrD遺伝子をウェルシュ菌内で発現させた場合の、ウェルシュ菌の毒素遺伝子の発現量を確認したノーザンブロットの結果である。 図9は、AgrDcb−チオラクトンおよびAgrDcb−ラクタムによるウェルシュ菌の毒素産生抑制活性を確認した定量PCRの結果である。 図10は、実施例5における培養時のOD値の変化を示す。 図11は、実施例5におけるESI−MS分析結果を示す。
クロストリジウム属の菌による食中毒や感染症を予防・制御するために従来使用されてきた抗生物質とは異なり、本発明はクロストリジウム属の菌の毒素産生を抑制するものであり、耐性菌が発生しにくいという利点がある。以下、本発明の実施の形態を説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態のみには限定されない。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
また、本明細書において、範囲を示す「X〜Y」は「X以上Y以下」を意味し、「重量」と「質量」、「重量%」と「質量%」及び「重量部」と「質量部」は同義語として扱う。また、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20〜25℃)/相対湿度40〜50%の条件で測定する。
本発明によれば、クロストリジウム属の菌による食中毒や感染症等の健康被害を予防、治療および/または制御することができる。本発明に係るペプチドは、特に、ウェルシュ菌によってもたらされる健康被害の予防、治療および/または制御に有効である。また、本発明に係るクロストリジウム・ブチリカム(Clostridium butyricum)を培養した培養液または前記培養液の乾燥物を有効成分として含有する剤を用いることにより、クロストリジウム属の菌の毒素産生を抑制し得る。
[ペプチド]
本発明の第1の形態は、下記式(1):
で表わされるペプチドを提供する。
本明細書において、別途に言及されない限り、「アミノ酸」は、D型またはL型のいずれであってもよいα―アミノ酸を指すが、好ましくはL型のα―アミノ酸である。
式(1)における窒素原子および水素原子は、システイン残基のアミノ基に由来する。式(1)におけるカルボニル基は、Xのカルボキシル基に由来する。式(1)における硫黄原子は、システイン残基のチオール基に由来する。式(1)においては、システイン残基のチオール基と、Xのカルボキシル基とがチオラクトンを形成し、環化している。
式(1)において、Rは水素原子、アミノ酸およびその誘導体、ならびに置換または無置換の、炭素数1〜10のアシル基、ベンジルオキシカルボニル基(Z基)、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル基(Fmoc基)およびフェニルイソチオシアネート基からなる群から選択される。なお、ベンジルオキシカルボニル基(Z基)や9−フルオレニルメチルオキシカルボニル基(Fmoc基)は、ペプチド合成において汎用される、代表的なアミノ基の保護基である。また、フェニルイソチオシアネート基は、フェニルイソチオシアネートとアミノ酸のアミノ基との反応によって形成される、アミノ酸配列分析において汎用される基である。Rがアミノ酸またはその誘導体の場合、Rのカルボキシル基の炭素原子と式(1)の窒素原子とで、ペプチド結合を形成する。
上記「アミノ酸の誘導体」としては、例えばオルニチン、サルコシン、デスモシン、イソデスモシン、ヒドロキシリジン、3−ヒドロキシプロリン、4−ヒドロキシプロリン、2−アミノアジピン酸、3−アミノアジピン酸、β−アラニン、β−アミノプロピオン酸、2−アミノ酪酸、4−アミノ酪酸、6−アミノカプロン酸、2−アミノヘプタン酸、2−アミノイソ酪酸、3−アミノイソ酪酸等が挙げられる。上記アシル基は、飽和または不飽和の、炭素数1〜10の直鎖または分岐鎖のものが該当し、具体的にはホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレニル基、イソバレニル基、ピバロイル基、ヘキサノイル基、オクタノイル基、アクリロイル基、メタクリロイル基等が挙げられるが、これらに限定されない。
式(1)のRにおいて、アシル基、ベンジルオキシカルボニル基、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル基、フェニルイソチオシアネート基の置換基としては、本発明の効果が得られる限りにおいて特に限定されず、任意の置換基を採用できるが、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基等の脂肪族炭化水素基;シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の脂環式炭化水素基;フェニル基などの芳香族炭化水素基;ヒドロキシル基;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;アリルオキシ基等のアルケニルオキシ基;フェノキシ基等のアリールオキシ基;ベンジルオキシ基等のアラルキルオキシ基;アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基等のアシルオキシ基;カルボキシル基;アセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基等のアシル基;オキソ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子等が挙げられる。
式(1)において、Rは水素原子、Ala、Gly、Trp、Met、Pro、Phe、Val、Leu、Ile、およびベンジルオキシカルボニル基からなる群から選択されることが好ましく、より好ましくは水素原子、またはベンジルオキシカルボニル基である。
式(1)において、好ましくは、Rは水素原子、Ala、Gly、Trp、Met、Pro、Phe、Val、Leu、Ile、およびベンジルオキシカルボニル基からなる群から選択され、XおよびXはそれぞれ独立にAla、Gly、Trp、Met、Pro、Phe、Val、Leu、IleおよびTyrからなる群から選択され、XはAla、Gly、Trp、Met、Pro、Phe、Val、LeuおよびIleからなる群から選択され、Xは任意のアミノ酸である、ただし、XがPheのときはXがThrであり、XがAlaのときはXがAlaであり、XがThrのときはXがTrpまたはAlaである。
式(1)において、XはAla、Gly、Trp、Met、Pro、Phe、Val、Leu、IleおよびTyrからなる群から選択されるが、好ましくは、Phe、Trp、Tyr、Ala、Val、Leu、およびIleからなる群から選択される。すなわち、本発明のある実施形態では、Rは水素原子、Ala、Gly、Trp、Met、Pro、Phe、Val、Leu、Ile、およびベンジルオキシカルボニル基からなる群から選択され、XはPhe、Trp、Tyr、Ala、Val、Leu、およびIleからなる群から選択され、XはAla、Gly、Trp、Met、Pro、Phe、Val、Leu、IleおよびTyrからなる群から選択され、XはAla、Gly、Trp、Met、Pro、Phe、Val、LeuおよびIleからなる群から選択され、Xは任意のアミノ酸である、ただし、XがPheのときはXがThrであり、XがAlaのときはXがAlaであり、XがThrのときはXがTrpまたはAlaである。式(1)において、XはPhe、Leu、およびAlaからなる群から選択されることがさらに好ましい。すなわち、本発明のある実施形態では、Rは水素原子、またはベンジルオキシカルボニル基であり、XはPhe、Leu、およびAlaからなる群から選択され、XはAla、Gly、Trp、Met、Pro、Phe、Val、Leu、IleおよびTyrからなる群から選択され、XはAla、Gly、Trp、Met、Pro、Phe、Val、LeuおよびIleからなる群から選択され、Xは任意のアミノ酸である、ただし、XがPheのときはXがThrであり、XがAlaのときはXがAlaであり、XがThrのときはXがTrpまたはAlaである。
式(1)において、XはAla、Gly、Trp、Met、Pro、Phe、Val、Leu、IleおよびTyrからなる群から選択されるが、好ましくは、Phe、TrpおよびTyrからなる群から選択される。すなわち、本発明のある実施形態では、Rは水素原子、Ala、Gly、Trp、Met、Pro、Phe、Val、Leu、Ile、およびベンジルオキシカルボニル基からなる群から選択され、XはAla、Gly、Trp、Met、Pro、Phe、Val、Leu、IleおよびTyrからなる群から選択され、XはPhe、TrpおよびTyrからなる群から選択され、XはAla、Gly、Trp、Met、Pro、Phe、Val、LeuおよびIleからなる群から選択され、Xは任意のアミノ酸である、ただし、XがPheのときはXがThrであり、XがAlaのときはXがAlaであり、XがThrのときはXがTrpまたはAlaである。式(1)において、XはPhe、またはTrpであることがさらに好ましい。すなわち、本発明のある実施形態では、Rは水素原子、またはベンジルオキシカルボニル基であり、XはPhe、Trp、Tyr、Ala、Val、Leu、およびIleからなる群から選択され、XはPhe、またはTrpであり、XはAla、Gly、Trp、Met、Pro、Phe、Val、LeuおよびIleからなる群から選択され、Xは任意のアミノ酸である、ただし、XがPheのときはXがThrであり、XがAlaのときはXがAlaであり、XがThrのときはXがTrpまたはAlaである。
式(1)において、Xは任意のアミノ酸であるが、Ala、Gly、Trp、Met、Pro、Phe、Val、LeuおよびIleからなる群から選択されることが好ましく、Ala、Trp、およびPheからなる群から選択されることがより好ましい。すなわち、本発明のある実施形態では、Rは水素原子、Ala、Gly、Trp、Met、Pro、Phe、Val、Leu、Ile、およびベンジルオキシカルボニル基からなる群から選択され、XおよびXはそれぞれ独立にAla、Gly、Trp、Met、Pro、Phe、Val、Leu、IleおよびTyrからなる群から選択され、XはAla、Trp、およびPheからなる群から選択され、Xは任意のアミノ酸である、ただし、XがPheのときはXがThrであり、XがAlaのときはXがAlaであり、XがThrのときはXがTrpまたはAlaである。別の実施形態では、Rは水素原子、Ala、Gly、Trp、Met、Pro、Phe、Val、Leu、Ile、またはベンジルオキシカルボニル基からなる群から選択され、XはPhe、Trp、Tyr、Ala、Val、Leu、およびIleからなる群から選択され、XはPhe、TrpおよびTyrからなる群から選択され、XはAla、Trp、およびPheからなる群から選択され、Xは任意のアミノ酸である、ただし、XがPheのときはXがThrであり、XがAlaのときはXがAlaであり、XがThrのときはXがTrpまたはAlaである。
式(1)において、Xは任意のアミノ酸であるが、His、Lys、Arg、Ala、Thr、およびSerからなる群から選択されてもよい。すなわち、式(1)中、Rは水素原子、Ala、Gly、Trp、Met、Pro、Phe、Val、Leu、Ile、およびベンジルオキシカルボニル基からなる群から選択され、XおよびXはそれぞれ独立にAla、Gly、Trp、Met、Pro、Phe、Val、Leu、IleおよびTyrからなる群から選択され、Xは任意のアミノ酸であり、XはHis、Lys、Arg、Ala、Thr、およびSerからなる群から選択される、ただし、XがPheのときはXがThrであり、XがAlaのときはXがAlaであり、XがThrのときはXがTrpまたはAlaである。より好ましくは、式(1)において、Rは水素原子、またはベンジルオキシカルボニル基であり、XはPhe、Trp、Tyr、Ala、Val、Leu、およびIleからなる群から選択され、XはPhe、TrpおよびTyrからなる群から選択され、XはAla、Gly、Trp、Met、Pro、Phe、Val、LeuおよびIleからなる群から選択され、XはHis、Lys、Arg、Ala、Thr、およびSerからなる群から選択される、ただし、XがPheのときはXがThrであり、XがAlaのときはXがAlaであり、XがThrのときはXがTrpまたはAlaである。さらに好ましくは、XはHis、Ala、Thr、およびSerからなる群から選択される。すなわち、本発明の一実施形態では、式(1)において、Rは水素原子、またはベンジルオキシカルボニル基であり、XはPhe、Trp、Tyr、Ala、Val、Leu、およびIleからなる群から選択され、XはPhe、TrpおよびTyrからなる群から選択され、XはAla、Trp、およびPheからなる群から選択され、XはHis、Ala、Thr、およびSerからなる群から選択される、ただし、XがPheのときはXがThrであり、XがAlaのときはXがAlaであり、XがThrのときはXがTrpまたはAlaである。
本発明の更に好ましい実施形態においては、式(1)において、Rは水素原子、またはベンジルオキシカルボニル基であり、XはPhe、Leu、およびAlaからなる群から選択され、XはPhe、またはTrpであり、XはAla、Trp、およびPheからなる群から選択され、XはHis、Ala、Thr、およびSerからなる群から選択される、ただし、XがPheのときはXがThrであり、XがAlaのときはXがAlaであり、XがThrのときはXがTrpまたはAlaである。
式(1)において、Rが水素原子であり、XがPheであり、XがTrpであり、XがAlaであり、XがHisである、配列番号1で表わされる配列が、特に好ましい。
この他、式(1)において特に好ましい配列を、配列番号20〜22、31、33および35として以下に示す。
本発明のある態様においては、下記式(2):
で表わされるペプチドを提供する。式(2)中、Rは水素原子、アミノ酸およびその誘導体、ならびに置換または無置換の、炭素数1〜10のアシル基、ベンジルオキシカルボニル基(Z基)、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル基(Fmoc基)およびフェニルイソチオシアネート基からなる群から選択され、XおよびXはそれぞれ独立にAla、Gly、Trp、Met、Pro、Phe、Val、Leu、IleおよびTyrからなる群から選択され、XおよびXは任意のアミノ酸であり、ZはCys、Ser、Thr、Tyr、AsnおよびGlnからなる群から選択される、ただし、XがPheのときはXがThrであり、XがAlaのときはXがAlaであり、XがThrのときはXがTrpまたはAlaである。
式(2)におけるカルボニル基は、Xのカルボキシル基に由来する。式(2)における窒素原子は、Zのアミノ基に由来する。式(2)においては、Zの窒素原子と、Xのカルボキシル基とが置換(Rが水素原子ではない場合)または無置換(Rが水素原子の場合)のラクタムを形成し、環化している。
式(2)において、Rは水素原子、アミノ酸およびその誘導体、ならびに置換または無置換の、炭素数1〜10のアシル基、ベンジルオキシカルボニル基(Z基)、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル基(Fmoc基)、フェニルイソチオシアネート基からなる群から選択される。Rがアミノ酸またはその誘導体の場合、Rのカルボキシル基の炭素原子と式(2)の窒素原子とで、アミド結合を形成する。
上記「アミノ酸の誘導体」としては、上記の式(1)についてのものと同様である。また、式(2)のRにおける、アシル基、ベンジルオキシカルボニル基、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル基、フェニルイソチオシアネート基の置換基についても、上記の式(1)についてのものと同様である。
式(2)において、Rは水素原子、Ala、Gly、Trp、Met、Pro、Phe、Val、Leu、Ile、およびベンジルオキシカルボニル基からなる群から選択されることが好ましく、より好ましくは水素原子、またはベンジルオキシカルボニル基である。
式(2)において、好ましくは、Rは水素原子、Ala、Gly、Trp、Met、Pro、Phe、Val、Leu、Ile、およびベンジルオキシカルボニル基からなる群から選択され、XおよびXはそれぞれ独立にAla、Gly、Trp、Met、Pro、Phe、Val、Leu、IleおよびTyrからなる群から選択され、XはAla、Gly、Trp、Met、Pro、Phe、Val、LeuおよびIleからなる群から選択され、Xは任意のアミノ酸であり、ZはCys、Ser、Thr、Tyr、AsnおよびGlnからなる群から選択される、ただし、XがPheのときはXがThrであり、XがAlaのときはXがAlaであり、XがThrのときはXがTrpまたはAlaである。
式(2)において、XはPhe、Trp、Tyr、Ala、Val、Leu、およびIleからなる群から選択されることが好ましい。すなわち、本発明のある実施形態では、Rは水素原子、Ala、Gly、Trp、Met、Pro、Phe、Val、Leu、Ile、およびベンジルオキシカルボニル基からなる群から選択され、XはPhe、Trp、Tyr、Ala、Val、Leu、およびIleからなる群から選択され、XはAla、Gly、Trp、Met、Pro、Phe、Val、Leu、IleおよびTyrからなる群から選択され、XはAla、Gly、Trp、Met、Pro、Phe、Val、LeuおよびIleからなる群から選択され、Xは任意のアミノ酸であり、ZはCys、Ser、Thr、Tyr、AsnおよびGlnからなる群から選択される、ただし、XがPheのときはXがThrであり、XがAlaのときはXがAlaであり、XがThrのときはXがTrpまたはAlaである。式(2)において、XはPhe、Leu、およびAlaからなる群から選択されることがさらに好ましい。すなわち、本発明のある実施形態では、Rは水素原子、またはベンジルオキシカルボニル基であり、XはPhe、Leu、およびAlaからなる群から選択され、XはAla、Gly、Trp、Met、Pro、Phe、Val、Leu、IleおよびTyrからなる群から選択され、XはAla、Gly、Trp、Met、Pro、Phe、Val、LeuおよびIleからなる群から選択され、Xは任意のアミノ酸であり、ZはCys、Ser、Thr、Tyr、AsnおよびGlnからなる群から選択される、ただし、XがPheのときはXがThrであり、XがAlaのときはXがAlaであり、XがThrのときはXがTrpまたはAlaである。
式(2)において、XはPhe、TrpおよびTyrからなる群から選択されることが好ましい。すなわち、本発明のある実施形態では、Rは水素原子、Ala、Gly、Trp、Met、Pro、Phe、Val、Leu、Ile、およびベンジルオキシカルボニル基からなる群から選択され、XはAla、Gly、Trp、Met、Pro、Phe、Val、Leu、IleおよびTyrからなる群から選択され、XはPhe、TrpおよびTyrからなる群から選択され、XはAla、Gly、Trp、Met、Pro、Phe、Val、LeuおよびIleからなる群から選択され、Xは任意のアミノ酸であり、ZはCys、Ser、Thr、Tyr、AsnおよびGlnからなる群から選択される、ただし、XがPheのときはXがThrであり、XがAlaのときはXがAlaであり、XがThrのときはXがTrpまたはAlaである。式(2)において、XはPhe、またはTrpであることがさらに好ましい。すなわち、本発明のある実施形態では、Rは水素原子、またはベンジルオキシカルボニル基であり、XはPhe、Trp、Tyr、Ala、Val、Leu、およびIleからなる群から選択され、XはPhe、またはTrpであり、XはAla、Gly、Trp、Met、Pro、Phe、Val、LeuおよびIleからなる群から選択され、Xは任意のアミノ酸であり、ZはCys、Ser、Thr、Tyr、AsnおよびGlnからなる群から選択される、ただし、XがPheのときはXがThrであり、XがAlaのときはXがAlaであり、XがThrのときはXがTrpまたはAlaである。
式(2)において、Xは任意のアミノ酸であるが、Ala、Gly、Trp、Met、Pro、Phe、Val、LeuおよびIleからなる群から選択されることが好ましく、Ala、Trp、およびPheからなる群から選択されることがより好ましい。すなわち、本発明のある実施形態では、Rは水素原子、Ala、Gly、Trp、Met、Pro、Phe、Val、Leu、Ile、およびベンジルオキシカルボニル基からなる群から選択され、XおよびXはそれぞれ独立にAla、Gly、Trp、Met、Pro、Phe、Val、Leu、IleおよびTyrからなる群から選択され、XはAla、Trp、およびPheからなる群から選択され、Xは任意のアミノ酸であり、ZはCys、Ser、Thr、Tyr、AsnおよびGlnからなる群から選択される、ただし、XがPheのときはXがThrであり、XがAlaのときはXがAlaであり、XがThrのときはXがTrpまたはAlaである。別の実施形態では、Rは水素原子、Ala、Gly、Trp、Met、Pro、Phe、Val、Leu、Ile、およびベンジルオキシカルボニル基からなる群から選択され、XはPhe、Trp、Tyr、Ala、Val、Leu、およびIleからなる群から選択され、XはPhe、TrpおよびTyrからなる群から選択され、XはAla、Trp、およびPheからなる群から選択され、Xは任意のアミノ酸であり、ZはCys、Ser、Thr、Tyr、AsnおよびGlnからなる群から選択される、ただし、XがPheのときはXがThrであり、XがAlaのときはXがAlaであり、XがThrのときはXがTrpまたはAlaである。
式(2)において、XはHis、Lys、Arg、Ala、Thr、およびSerからなる群から選択されてもよい。すなわち、式(2)中、Rは水素原子、Ala、Gly、Trp、Met、Pro、Phe、Val、Leu、Ile、およびベンジルオキシカルボニル基からなる群から選択され、XおよびXはそれぞれ独立にAla、Gly、Trp、Met、Pro、Phe、Val、Leu、IleおよびTyrからなる群から選択され、Xは任意のアミノ酸であり、XはHis、Lys、Arg、Ala、Thr、およびSerからなる群から選択され、ZはCys、Ser、Thr、Tyr、AsnおよびGlnからなる群から選択される、ただし、XがPheのときはXがThrであり、XがAlaのときはXがAlaであり、XがThrのときはXがTrpまたはAlaである。より好ましくは、式(2)において、Rは水素原子、またはベンジルオキシカルボニル基であり、XはPhe、Trp、Tyr、Ala、Val、Leu、およびIleからなる群から選択され、XはPhe、Trp、およびTyrからなる群から選択され、XはAla、Gly、Trp、Met、Pro、Phe、Val、LeuおよびIleからなる群から選択され、XはHis、Lys、Arg、Ala、Thr、およびSerからなる群から選択され、ZはCys、Ser、Thr、Tyr、AsnおよびGlnからなる群から選択される、ただし、XがPheのときはXがThrであり、XがAlaのときはXがAlaであり、XがThrのときはXがTrpまたはAlaである。さらに好ましくは、XはHis、Ala、Thr、およびSerからなる群から選択される。すなわち、本発明の一実施形態では、式(1)において、Rは水素原子、またはベンジルオキシカルボニル基であり、XはPhe、Trp、Tyr、Ala、Val、Leu、およびIleからなる群から選択され、XはPhe、TrpおよびTyrからなる群から選択され、XはAla、Trp、およびPheからなる群から選択され、XはHis、Ala、Thr、およびSerからなる群から選択される、ただし、XがPheのときはXがThrであり、XがAlaのときはXがAlaであり、XがThrのときはXがTrpまたはAlaである。
式(2)において、ZはCysであることが好ましい。すなわち、式(2)中、Rは水素原子、Ala、Gly、Trp、Met、Pro、Phe、Val、Leu、Ile、およびベンジルオキシカルボニル基からなる群から選択され、XおよびXはそれぞれ独立にAla、Gly、Trp、Met、Pro、Phe、Val、Leu、IleおよびTyrからなる群から選択され、XおよびXは任意のアミノ酸であり、ZはCysである、ただし、XがPheのときはXがThrであり、XがAlaのときはXがAlaであり、XがThrのときはXがTrpまたはAlaである。より好ましくは、Rは水素原子、またはベンジルオキシカルボニル基であり、XはPhe、Trp、Tyr、Ala、Val、Leu、およびIleからなる群から選択され、XはPhe、TrpおよびTyrからなる群から選択され、XはAla、Trp、およびPheからなる群から選択され、XはHis、Lys、Arg、Ala、Thr、およびSerからなる群から選択され、ZはCysである、ただし、XがPheのときはXがThrであり、XがAlaのときはXがAlaであり、XがThrのときはXがTrpまたはAlaである。
本発明の更に好ましい実施形態においては、式(2)において、Rは水素原子、またはベンジルオキシカルボニル基であり、XはPhe、Leu、およびAlaからなる群から選択され、XはPhe、またはTrpであり、XはAla、Trp、およびPheからなる群から選択され、XはHis、Ala、Thr、およびSerからなる群から選択され、ZがCysである、ただし、XがPheのときはXがThrであり、XがAlaのときはXがAlaであり、XがThrのときはXがTrpまたはAlaである。
式(2)において、Rが水素原子であり、XがPheであり、XがTrpであり、XがAlaであり、XがHisであり、ZがCysである、配列番号23で表わされる配列が、特に好ましい。
この他、式(2)において特に好ましい配列を、配列番号24〜26、32、34および36として以下に示す。
各アミノ酸は、その側鎖の相違に基づいて、類似の性質を有するアミノ酸と置換しうることが、本願技術分野においては知られている(保存的置換)。Pheは、例えば、非極性アミノ酸であるAla、Gly、Trp、Met、Pro、Val、Leu、Ileや芳香族アミノ酸であるTyrと置換しうる。Trpは、例えば、非極性アミノ酸であるAla、Gly、Phe、Met、Pro、Val、Leu、Ileや芳香族アミノ酸であるTyrと置換しうる。Alaは、例えば、非極性アミノ酸であるPhe、Gly、Trp、Met、Pro、Val、Leu、Ileと置換しうる。Hisは、例えば、塩基性アミノ酸であるLysまたはArgと置換しうる。Cysは、極性があり電荷を持たないアミノ酸であるSer、Thr、Tyr、AsnまたはGlnと置換しうる。
一方、式(1)で表されるペプチドにおいて、XがAlaのときはXがAlaであり、XがThrのときはXがTrpまたはAlaである。さらに、式(2)で表されるペプチドにおいて、XがAlaのときはXがAlaであり、XがThrのときはXがTrpまたはAlaである。すなわち、XまたはXがAla、またはThrの場合は、ペプチド中の所定の位置において上記のような保存的置換が、例外的に成立しない。これは、式(1)におけるシステインとチオラクトン構造を、または式(2)におけるZとラクタム構造を形成するXまたはXのアミノ酸種によって、ウェルシュ菌VirSへの結合が制約されるためであると考えられる。なお、上記メカニズムは推定であり、本発明の技術的範囲をなんら制限するものではない。
本発明の効果は以下のメカニズムに基づくものと考えている。すなわち、細胞外シグナルに対するセンサーであるVirSに対して、式(1)で表わされるチオラクトン構造を有する、所定の長さのペプチドがアンタゴニストとして機能することにより、VirR/VirSシステムの下流で制御される毒素遺伝子の発現が抑制されることによるものと考えられる。また、細胞外シグナルに対するセンサーであるVirSに対して、式(2)で表わされる置換または無置換のラクタム構造を有する、所定の長さのペプチドがアンタゴニストとして機能することにより、VirR/VirSシステムの下流で制御される毒素遺伝子の発現が抑制されることによるものと考えられる。また、上記ペプチド配列において、芳香族アミノ酸の位置(特に、式(1)で表わされるペプチドにおけるX、および式(2)で表わされるペプチドにおけるX)と関係した3次元的構造が、VirSへの結合活性に影響しているのではないかと考えられる。XまたはXがPheのときに上記のような保存的置換が例外的に成立しない理由も、VirSへの結合活性と関連しているのではないかと考えられる。なお、上記メカニズムは推定であり、本発明の技術的範囲をなんら制限するものではない。
式(1)または式(2)で表わされるペプチドは、当業者であれば任意の方法によって製造することができる。例えば、直鎖状ペプチドを固相合成法により合成し、または宿主細胞に発現させ、その後、該直鎖状ペプチドを環化することによって得られる。式(1)または式(2)で表わされるペプチドは、クロストリジウム・ブチリカム(Clostridium butyricum)を培養した培養液から従来公知の方法により精製・単離されたものであっても良い。
固相合成法によってペプチドを合成する場合は、特に制限されるものではないが、例えばFmoc(9−フルオレニルメチルオキシカルボニル)合成法や、ベンジルオキシカルボニル法、Boc(t−ブチルオキシカルボニル)合成法等、当業者に公知の方法が採用できる。Fmoc合成法を例に説明すると、樹脂(例えば、Wangレジン、または2−クロロトリエチルクロリドレジン)等の固相に結合させたFmoc−アミノ酸から、20%(v/v)ピペリジン/N,N’−ジメチルホルムアミド(DMF)等の塩基を用いて、保護基であるFmoc基を除去する。その後、次のFmoc−アミノ酸を反応させる操作を繰り返すことで、目的の配列を有するペプチドが合成できる。カイザーテスト等の呈色反応によって、脱保護反応を確認することもできる。樹脂からのペプチドの切り離しや、側鎖の保護基の脱保護などの除去反応では、酸(例えば、トリフルオロ酢酸(TFA))やアルカリ(例えば、ピペリジン)処理を行えばよい。アルカリ処理によって脱保護をする場合、処理時間を短くする(例えば約3分)ことによって式(1)で表わされるチオラクトン構造を有するペプチドを優先的に、処理時間を長く(例えば15分〜1時間)することによって式(2)で表わされるラクタム構造を有するペプチドを優先的に得ることができる。または、式(2)で表わされるラクタム構造を有するペプチドは、式(1)で表わされるチオラクトン構造を有するペプチドをアンモニア等によってアルカリ転化処理することによっても得ることができる。
宿主細胞にペプチドを発現させて調製する場合は、任意のプロモーターの下流に、所望のペプチド配列(例えば、Cys−Phe−Trp−Ala−His(配列番号1))をコードするポリヌクレオチドを組込んだベクターを宿主細胞に導入する。ベクターとしては、プラスミド、コスミド、ウイルスまたはファージなどが挙げられる。プロモーターは、宿主細胞に応じて適宜選択できるが、T7プロモーター、lacプロモーター、trpプロモーター、tacプロモーター、spaプロモーター、SV40プロモーター、CMVプロモーター、EFプロモーター等が例示できる。宿主細胞としては、大腸菌、枯草菌等の原核細胞;酵母;カビ;HEK−293細胞、COS−7細胞、CHO細胞等の哺乳動物細胞;バキュロウィルスによる昆虫細胞;カイコ等の個体、などが挙げられる。宿主細胞への導入方法は、マイクロインジェクション、カルシウムリン酸法、エレクトロポレーション、リポソームを用いたトランスフェクションなど、当業者に公知の方法を採用できる。宿主細胞が合成したペプチドは、透析、カラム処理、洗浄等、任意の方法で精製、回収すればよい。
上記方法にて得た直鎖状のペプチドは、PyBOP(ヘキサフルオロリン酸(ベンゾトリアゾール−1−イルオキシ)トリピロリジノホスホニウム)やDCC(N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド)等のカップリング試薬を用いた反応により、環化することができる。例えば、上記ペプチド濃度が0.5〜2mg/ml程度となるようにN,N’−ジメチルアセトアミド(DMA)等に溶解し、1〜5当量程度のPyBOPとジメチルアミノピリジンとを加え、1〜20時間程度反応させればよい。カップリング反応は、室温でもよいが、20〜50℃程度に加温しても良い。また、N等の不活性ガス雰囲気下で行っても良い。
上記反応によって得られた環状ペプチドは、固相抽出(例えば、ウォーターズ社製のSep−Pac(登録商標)等を用いることができる。)や液体クロマトグラフィー(例えば、逆相HPLC)等、当業者に公知の方法によって精製・単離できる。また、合成された環状ペプチドの構造は、MS(例えば、ESI−MS)やHNMRなど、当業者に公知の手段によって確認できる。
[毒素産生抑制剤]
本発明の第2の形態は、式(1)のペプチドを有効成分として含有する、クロストリジウム属の菌の毒素産生抑制剤を提供する。本発明の他の実施形態では、クロストリジウム属の菌の毒素産生抑制のための、式(1)のペプチドの使用、が提供される。
本発明の別の実施形態では、式(2)のペプチドを有効成分として含有する、クロストリジウム属の菌の毒素産生抑制剤を提供する。本発明のさらに別の実施形態では、クロストリジウム属の菌の毒素産生抑制のための、式(2)のペプチドの使用、が提供される。
クロストリジウム属の菌は、ガス壊疽、大腸炎、家畜や家禽の壊死性腸炎、下痢症、エンテロトキセミア、蜂巣炎、子宮感染、菌血症、食中毒、破傷風等の健康被害を引き起こす原因菌である。
本発明において、クロストリジウム属の菌とは、クロストリジウム属のうちクロストリジウム・ブチリカム以外の種の菌を意味し、例えば、ウェルシュ菌(Clostridium perfringens)、クロストリジウム・ディフィシレ(Clostridium difficile)、ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)、破傷風菌(Clostridium tetani)、クロストリジウム・ノビイ(Clostridium novyi)などであり、好ましくはウェルシュ菌(Clostridium perfringens)、クロストリジウム・ディフィシレ(Clostridium difficile)およびボツリヌス菌(Clostridium botulinum)からなる群から選択され、本発明はウェルシュ菌(Clostridium perfringens)に特に好適に用いられる。
クロストリジウム属の菌が産生する毒素としては、特に制限されるものではないが、例えばVirR/VirSシステムの下流で制御されうる毒素である。より具体的には、アルファ−毒素(ホスホリパーゼC)、シーター−毒素(ヘモリシン)、カッパ−毒素(コラゲナーゼ)、毒素調節RNA(VR−RNA)によって制御される毒素、α−クロストリパイン、コラーゲンアドヘジン、ベータ2−毒素、溶血毒素、ミュー−毒素(ヒアルロニダーゼ)、エンテロトキシン、シアリダーゼ、デルタ−毒素(ヘモリシン)、ニュー−毒素(DNase)、ノイラミニダーゼなどが例示できる。
本発明によれば、上記のようなクロストリジウム属の菌によって引き起こされる健康被害を予防、治療および/または制御することができる。
本発明の毒素産生抑制剤は、所望の効果を発揮するのに十分な量(すなわち、有効量)の式(1)で表わされるペプチドを含有する。または、本発明の毒素産生抑制剤は、所望の効果を発揮するのに十分な量(すなわち、有効量)の式(2)で表わされるペプチドを含有する。毒素産生抑制剤は、式(1)で表わされるペプチドまたは式(2)で表わされるペプチドのみから構成されてもよいが、製剤化のために許容されうる添加剤を併用して、常法に従い、経口製剤または非経口製剤として調製されることが好ましい。このような製剤化のために許容されうる添加剤としては、例えば、賦形剤、安定剤、防腐剤、湿潤剤、乳化剤、滑沢剤、甘味料、着色料、香料、緩衝剤、酸化防止剤、pH調整剤、結合剤、増粘剤、分散剤、懸濁化剤、崩壊剤、制菌剤、界面活性剤などを挙げることができる。剤形は特に制限されず、適宜設定すればよいが、例えば錠剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、カプセル剤、丸剤、徐放剤、溶液、懸濁液、乳濁液、ローション剤、注射剤、点滴剤、外用剤、坐剤、貼付剤などである。
式(1)で表わされるペプチドは、保存期間中に、転化反応が自然進行して式(2)で表わされるペプチドへと構造変化する場合がある。また、式(2)で表わされるペプチドを、式(1)で表わされるペプチドを原料として合成した場合などは、式(2)で表わされるペプチドは、精製後であっても少量の式(1)で表わされるペプチドを含み得る。したがって、上記の毒素産生抑制剤において、「式(1)で表わされるペプチド」は不純物程度の式(2)で表わされるペプチドを含んでもよく、また、「式(2)で表わされるペプチド」は不純物程度の式(1)で表わされるペプチドを含んでもよい。また、上記の毒素産生抑制剤は、式(1)で表わされるペプチドと式(2)で表わされるペプチドとを、任意の割合で含むものであっても良い。この場合、式(1)で表わされるペプチドと式(2)で表わされるペプチドとの割合は特に制限されないが、例えば、1:1000〜1000:1(重量比)である。
本発明の第3の形態は、クロストリジウム・ブチリカム(Clostridium butyricum)を培養した培養液または前記培養液の乾燥物を有効成分として含有する、クロストリジウム属の菌の毒素産生抑制剤を提供する。本発明の他の実施形態では、クロストリジウム属の菌の毒素産生抑制のための、クロストリジウム・ブチリカム(Clostridium butyricum)を培養した培養液または前記培養液の乾燥物の使用、が提供される。
バクテリアが生産したオートインデューサーペプチドは通常、細胞外に分泌される。黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)が分泌するAgrD(配列番号2)は、以下の式(3)で表わされる構造であると推定されている。
一方、クロストリジウム・ブチリカム・ミヤイリ 588(Clostridium butyricum MIYAIRI 588)は、黄色ブドウ球菌のAgrDのホモログであると推定される、以下の配列のオートインデューサーペプチドAgrDをコードする遺伝子を有している。
クロストリジウム・ブチリカム・ミヤイリ 588が有するAgrDには、式(1)または式(2)で表わされるペプチドの配列に相当する配列が含まれる。本発明の技術的範囲を制限するものではないが、クロストリジウム・ブチリカムの培養液による、ウェルシュ菌をはじめとするクロストリジウム属の菌の毒素産生抑制活性は、次のメカニズムによるのではないかと考えている。すなわち、クロストリジウム・ブチリカムの培養液が、式(1)または式(2)で表わされるペプチドであるAgrDを含むことにより、ウェルシュ菌をはじめとするクロストリジウム属の菌の毒素産生抑制活性が発揮されるのではないかと推定される。なお、上記メカニズムは推定であり、本発明の技術的範囲をなんら制限するものではない。
クロストリジウム・ブチリカムは、栄養のバランスがとれている間は分裂増殖を繰り返す(栄養細胞)が、そのバランスが崩れると菌体内に胞子を生じる芽胞形成性かつ嫌気性のグラム陽性桿菌である。嫌気性細菌に限らず、多くの細菌は、栄養細胞の形態を有する際には、乾燥状態で放置されると容易に死滅する。しかしながら、芽胞は休止細胞であるため、乾燥、熱や化学薬品などの様々な外的環境に対して強い抵抗性を有し、保存には好都合である。
また、上述したように、クロストリジウム・ブチリカムは芽胞形成性であり、芽胞の状態にある際には、様々な外的環境に対して抵抗性を有する。このため、クロストリジウム・ブチリカムが芽胞の形態で人や動物に経口投与されると、胃酸、腸液や胆汁酸などの消化液と接しても、クロストリジウム・ブチリカムは完全には死滅せずに小腸下部から大腸に至るまでの発酵部位にも到達し増殖することが可能となる。
さらに、クロストリジウム・ブチリカムは、生菌剤、飼料添加物や食品として広く市販されており、人や家畜などの哺乳動物に長期間にわたって投与しても全く副作用を認めず、高い安全性が確認されている。
本発明に用いることができるクロストリジウム・ブチリカム(Clostridium butyricum)としては、クロストリジウム・ブチリカム・ミヤイリ、クロストリジウム・ブチリカム(FERM P−11868)、クロストリジウム・ブチリカム(FERM P−11868)、クロストリジウム・ブチリカム(FERM P−11869)、クロストリジウム・ブチリカム(FERM P−11870)、クロストリジウム・ブチリカム・Prazmowski 1880(NBRC 13949)、クロストリジウム・ブチリカム・Prazmowski 1880(NBRC 3315)、クロストリジウム・ブチリカム・Prazmowski 1880(NBRC 3858)、クロストリジウム・ブチリカム・ATCC859(Clostridium butyricum ATCC 859)、クロストリジウム・ブチリカム・ATCC860(Clostridium butyricum ATCC 860)、クロストリジウム・ブチリカム・ATCC3627(Clostridium butyricum ATCC 3627)、クロストリジウム・ブチリカム・ATCC19398(Clostridium butyricum ATCC 19398)が例示できる。好ましくは、クロストリジウム・ブチリカム(Clostridium butyricum)は、クロストリジウム・ブチリカム・ミヤイリ 588(Clostridium butyricum MIYAIRI 588、FERM BP−2789)、クロストリジウム・ブチリカム ミヤイリ585(FERM BP−06815)、クロストリジウム・ブチリカム・ミヤイリ595(FERM BP−06816)及びクロストリジウム・ブチリカム・ミヤイリ630(FERM BP−06817)からなる群より選択される1種以上であり、より好ましくはクロストリジウム・ブチリカム・ミヤイリ 588(Clostridium butyricum MIYAIRI 588、FERM BP−2789)である。なお、クロストリジウム・ブチリカム・ミヤイリ 588株は、1981年5月1日付で通商産業省工業技術院微生物工業技術研究所(現在の独立行政法人 製品評価技術基盤機構 特許生物寄託センター)(〒292−0818 日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8)にFERM BP−2789として寄託され、1990年3月6日付で、ブダペスト条約に基づく国際寄託機関に移管され、受託番号FERM BP−2789として寄託されている。
本発明の第3の形態に係る毒素産生抑制剤は、クロストリジウム・ブチリカムを培養した培養液または前記培養液の乾燥物を有効成分として含有する。
クロストリジウム・ブチリカム・ミヤイリは生菌剤としてミヤリサン製薬株式会社から市販されており、人や動物に長期に投与しても全く副作用の無いものであるため、本発明における使用にとって特に好適である。なお、有効成分であるクロストリジウム・ブチリカムとしては、1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
本発明において、クロストリジウム・ブチリカムの培養物、すなわち「クロストリジウム・ブチリカムを培養した培養液または前記培養液の乾燥物」は、既知の微生物の培養方法、例えば、特願平08−252088号に開示された方法により得られる。その一実施態様を下記に示す:クロストリジウム・ブチリカムを1.0(w/v)%ペプトン、1.0(w/v)%酵母エキス、1.0(w/v)%コーンスターチおよび0.2(w/v)%沈降炭酸カルシウムからなる培地に10〜10個/mLになるように接種し、37℃にて48時間静置培養することにより、「クロストリジウム・ブチリカムの培養液」を得る。「培養液の乾燥物」を得るためには、得られた培養液を0〜80℃、好ましくは10〜20℃で、1〜24時間、好ましくは5〜18時間風乾等による乾燥処理を行う。または0〜80℃、好ましくは10〜20℃、0.05〜500Torr(7Pa〜66.7kPa)、好ましくは1〜100Torr(133Pa〜13.3kPa)で、1〜24時間、好ましくは2〜15時間減圧乾燥処理すればよい。乾燥物を得るためには、スプレードライ、フリーズドライなどを用いても良い。
本発明のクロストリジウム・ブチリカムの培養に使用する培地は、使用する菌株の種類等によっても異なるが、使用するクロストリジウム・ブチリカムが資化しうる炭素源、適量の窒素源、無機塩およびビタミン類などのその他の栄養素を含有する培地であれば、合成培地または天然培地のいずれでもよい。
例えば、本発明による培地中で使用される炭素源の例として、使用する菌株が資化できる炭素源であれば特に制限されない。炭素源としては、必ずしも糖に制限されないが、菌体の増殖を考慮すると、使用する細菌が利用可能な糖または糖を含むものが好ましく使用される。使用できる炭素源の具体例としては、資化性を考慮して、セロビオース、グルコース、フルクトース、ガラクトース、ラクトース、マルトース、マンノース、メリビオース、ラフィノース、サリシン、スターチ、スクロース、トレハロース、キシロース、デキストリン、溶性デンプンおよび糖蜜等が挙げられる。これらの炭素源のうち、スターチ、グルコース、フルクトース、スクロースおよび糖蜜が好ましく使用される。上記した炭素源を、使用するクロストリジウム・ブチリカムを考慮して、1種または2種以上選択して使用してもよい。この際、炭素源の添加濃度は、使用するクロストリジウム・ブチリカムや炭素源の種類および使用する培地の炭素源以外の培地組成等によっても異なるが、通常0.5〜5(w/v)%、好ましくは2〜4(w/v)%である。
また、窒素源およびビタミン類としては、例えば、肉エキス、ペプトン、ダイズペプトン、プロテアーゼペプトン、酵母エキス、肝臓エキス、消化血清末、大豆または小麦の加水分解物、大豆粉末、ミルクカゼイン、カザミノ酸、各種アミノ酸、コーンスティープリカー、その他の動物、植物、微生物の加水分解物等の有機窒素化合物および硫酸アンモニウムなどのアンモニウム塩が挙げられる。これらの窒素源のうち、ペプトン、ダイズペプトン、プロテアーゼペプトン、酵母エキス、消化血清末、肉エキス、肝臓エキス、コーンスティープリカー、および大豆または小麦の加水分解物が好ましく使用される。上記した窒素源およびビタミン類を、使用するクロストリジウム・ブチリカムの生育を向上させるために、1種または2種以上選択して使用してもよい。この際、上記窒素源の添加濃度は、使用する菌株や窒素源の種類および使用する培地の窒素源以外の培地組成等によっても異なるが、窒素源を多く含むペプトンを使用する際には、通常0.5〜4(w/v)%、好ましくは1〜3(w/v)%であり、窒素源およびビタミン類を多く含む味液やコーンスティープリカーを使用する際には、通常0.5〜5(w/v)%、好ましくは1〜4(w/v)%であり、さらに、ビタミン類を多く含む酵母エキスあるいは肉エキスを使用する際には、通常0.5〜4(w/v)%、好ましくは1〜3(w/v)%である。
さらに、無機塩としては、マグネシウム、マンガン、カルシウム、ナトリウム、カリウム、モリブデン、ストロンチウム、ホウ素、銅、鉄、スズおよび亜鉛などのリン酸塩、塩酸塩、硫酸塩、酪酸塩、プロピオン酸塩、塩化物等のハロゲン化物、および酢酸塩等から選ばれた1種または2種以上を使用することができる。また、培地中に、必要に応じて、消泡剤、植物油、界面活性剤、血液および血液成分、抗生物質などの薬剤、植物または動物ホルモンなどの生理活性物質、チオグリコール酸塩やシステインなどの還元剤等を適宜添加してもよい。
本発明において行われる培養の条件は、本発明に使用するクロストリジウム・ブチリカムの生育の範囲(pHや温度等)等の生理学的性質によって異なるが、クロストリジウム・ブチリカムは偏性嫌気性であるため、通気しない、または窒素もしくは炭酸ガスを通気しながら、または培地中に還元剤を加えることにより酸化還元電位を下げるなどによって、嫌気的条件下で培養されることが必要である。その際の培養条件は、使用される菌株の生育の範囲、培地の組成や培養法によって適宜選択され、本菌株が増殖できる条件であれば特に制限されない。具体的には、培養温度は、通常20〜42℃、好ましくは35〜40℃である。
また、本発明において、クロストリジウム・ブチリカムの培養は、培養中に産生される酸をアルカリで中和することにより増殖が促進されるため、予め培地に炭酸カルシウムを添加してもよい。この際、炭酸カルシウムの添加量は、通常0.1〜4(w/v)%、好ましくは0.2〜2.5(w/v)%である。または、上記中和工程を、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化カリウムおよび炭酸カリウム等のアルカリ水溶液によって培地のpHを設定pHの範囲内に抑えながら行ってもよい。なお、アルカリ水溶液を使用する場合には、「設定pH」とは、培養期間中に予め設定されている培地のpHを意味し、「設定pHの範囲」とは、培養期間中に許容されるpHの範囲であり、一般的には、設定pH±許容差で表わす。本発明によると、設定pHは、通常5.0〜7.5、好ましくは5.5〜6.5の範囲内で設定され、設定pHの範囲は、設定pH±0.5、望ましくは設定pH±0.2である。
なお、本発明において、培養を行う間の培地のpHは、菌の接種時では中性付近、より好ましくは6.5〜7.5とする。なお、アルカリ水溶液を使用する場合には、酸素が混入しないように緩やかに攪拌しながら設定pHの範囲内に入るよう維持することが好ましい。このように菌の接種時および菌の増殖時のpHを制御することによって、菌密度を飛躍的に増大させることができる。
本発明による培養において、クロストリジウム・ブチリカムの初期培養濃度は、クロストリジウム・ブチリカムが生育できる範囲であれば特に制限されず、通常、クロストリジウム・ブチリカムの培養で行われるものと同様である。具体的には、通常10〜10個/mL、好ましくは10〜10個/mLである。
好ましくは、クロストリジウム・ブチリカムの培養液は、対数増殖中期以降のものである。本明細書において「対数増殖中期」とは、増殖を開始してから定常期に達するまでのおよそ中間の時期を指し、例えば波長660nmにおけるOD値が0.5〜1.0を示す時期であることをいう。本発明において好ましく用いられるクロストリジウム・ブチリカムの対数増殖中期以降の培養液は、ウェルシュ菌の毒素産生抑制活性を示す限り特に制限されないが、例えば、培養開始から500時間以内に回収されたものであり、より好ましくは100時間以内に回収されたものである。
本発明の毒素産生抑制剤においては、培養液または培養液の乾燥物を有効成分として用いても良いが、培養液を乾燥する前に遠心分離し、遠心分離等によって得られる菌(菌体や芽胞)を含む沈殿もしくは上清、またはこれらの乾燥物を有効成分として用いても良い。すなわち、本発明のある実施形態では、クロストリジウム・ブチリカムを培養した培養液を遠心分離して得られる菌(菌体および/もしくは芽胞)を含む沈殿もしくは上清、または前記沈殿もしくは前記上清の乾燥物を有効成分として含む、毒素産生抑制剤が提供される。
クロストリジウム・ブチリカムを経口的に摂取すると、上述のように小腸下部から大腸に到達して増殖する。従って、遠心分離等によって得られる菌(菌体や芽胞)を含む沈殿を経口投与することによって、プロバイオティクス的な効果が期待できる。一方、クロストリジウム属の菌が分泌するAgrDは水溶性であることから、遠心分離等によって得られる上清を回収することによって、上清に分泌されたAgrDを含む画分を得て、注射剤や塗布剤等に利用することもできる。
遠心分離の条件は特に制限されるものではないが、例えば2,000〜6,000gで10〜30分である。菌(菌体や芽胞)を含む沈殿または上清を乾燥する方法は、上記の「培養液の乾燥物」を得る方法が適宜参酌される。
こうして得られた培養液、または培養液をさらに遠心分離して得られた沈殿もしくは上清から、さらに当業者に公知の方法を用いて、本発明に係るペプチドを濃縮・精製しても良い。濃縮の方法は特に制限されないが、透析、限外濾過、液体クロマトグラフィーなど、当業者に知られた方法を採用し、実施例に示す手段によって毒素産生抑制の効果を確認しつつ、活性の高い画分を回収すればよい。本発明に係る培養液、または培養液をさらに遠心分離して得られた沈殿もしくは上清には、上記の濃縮物や精製物も含まれる。
本実施形態におけるクロストリジウム属の菌や、クロストリジウム属の菌が産生する毒素については、本発明に係るペプチドを含有する毒素産生抑制剤について上述した事項が参酌される。
本発明の毒素産生抑制剤は、所望の効果を発揮するのに十分な量(すなわち、有効量)の、クロストリジウム・ブチリカムを培養した培養液または前記培養液の乾燥物を含有する。本発明の別の実施形態においては、毒素産生抑制剤は、所望の効果を発揮するのに十分な量(すなわち、有効量)の、クロストリジウム・ブチリカムを培養した培養液を遠心分離して得られる菌を含む沈殿もしくは上清、または前記沈殿もしくは前記上清の乾燥物を含有する。毒素産生抑制剤は、培養液もしくはその乾燥物、または培養液の上清もしくは沈殿、もしくはこれらの乾燥物により構成されてもよいが、製剤化のために許容され得る添加剤を併用して、常法に従い、経口製剤または非経口製剤として調製されることが好ましい。製剤化のために許容され得る添加剤としては、本発明に係るペプチドを含有する毒素産生抑制剤について上述した事項が参酌される。
[クロストリジウム属の菌による健康被害を予防および/または治療する方法]
本発明のある実施形態では、式(1)で表わされるペプチドの有効量を患者に投与することを含む、クロストリジウム属の菌による健康被害を予防および/または治療する方法を提供する。本発明の別の実施形態では、式(2)で表わされるペプチドの有効量を患者に投与することを含む、クロストリジウム属の菌による健康被害を予防および/または治療する方法を提供する。
本発明のある実施形態では、クロストリジウム・ブチリカムを培養した培養液または前記培養液の乾燥物の有効量を患者に投与することを含む、クロストリジウム属の菌による健康被害を予防および/または治療する方法を提供する。本発明の別の実施形態では、クロストリジウム・ブチリカムを培養した培養液を遠心分離して得られる菌(菌体および/もしくは芽胞)を含む沈殿もしくは上清、または前記沈殿もしくは前記上清の乾燥物の有効量を患者に投与することを含む、クロストリジウム属の菌による健康被害を予防および/または治療する方法を提供する。
ここで、「有効量」とは、クロストリジウム属の菌による健康被害の予防および/または治療といった所望の効果を発揮するうえで少なくとも必要とされる有効成分の量を意味する。また、「患者」とは、特に制限するものではないが、例えばヒト;イヌ、ネコ等のペット;マウス、ラット等の実験動物;ニワトリ、ウズラ、シチメンチョウ、アヒル、ガチョウ等の家禽類;ブタ、ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ等の家畜;魚類等を意味する。
毒素産生抑制剤における上記記載は、適宜変更されて本実施形態に適用される。
[医薬組成物]
本発明の第4の形態は、式(1)で表わされるペプチド、またはクロストリジウム・ブチリカムを培養した培養液もしくは前記培養液の乾燥物を有効成分として含有する毒素産生抑制剤を含む、医薬組成物を提供する。本発明の別の実施形態では、式(2)で表わされるペプチド、またはクロストリジウム・ブチリカムを培養した培養液もしくは前記培養液の乾燥物を有効成分として含有する毒素産生抑制剤を含む、医薬組成物を提供する。本発明のある実施形態では、クロストリジウム・ブチリカムを培養した培養液を遠心分離して得られる菌(菌体および/もしくは芽胞)を含む沈殿もしくは上清、または前記沈殿もしくは前記上清の乾燥物を有効成分として含有する毒素産生抑制剤を含む、医薬組成物を提供する。
医薬組成物は、当業者に適切と考えられるいずれの投与経路によって投与されても良い。例えば、医薬組成物は、経口、経静脈、筋肉内、髄腔内、腹腔内、経皮(例えば塗り薬として)または吸入投与されうる。本発明の医薬組成物は、これらの各投与形態に応じて、薬理学的に許容される担体を含む。薬理学的に許容される担体としては、特に限定されるものではないが、例えば、乳糖、デンプン等の賦形剤;デキストリン、セルロース等のバインダー;水、有機溶剤等の溶剤;ワセリン、ミツロウ、パラフィン等の基剤等が挙げられる。
医薬組成物における有効成分の配合割合は、特に限定されるものではないが、医薬組成物全体に対して、毒素産生抑制剤が例えば0.001〜50重量%である。
さらに、本発明の医薬組成物は、前記の有効成分に加えて、抗生物質、ビタミン類(例えば、ビタミンC、ビタミンE)、アミノ酸類、ペプチド類、ミネラル類(例えば、亜鉛、鉄、銅、マンガンなど)、核酸、多糖類、脂肪酸類、生薬等を任意に含有しても良い。抗生物質としては、特に制限されるものではないが、例えばペニシリンやアンピシリン等のペニシリン系抗生物質、セファマイシン等のセフェム系抗生物質、バンコマイシン等のグリコペプチド系抗生物質、メロペネム等のカルバペネム系抗生物質、クロラムフェニコール系抗生物質、テトラサイクリン、ドキシサイクリン等のテトラサイクリン系抗生物質、エリスロマイシン等のマクロライド系抗生物質等が挙げられる。
本発明の医薬組成物の用量は、処置すべき症状や病態、年齢等によって適宜変更すればよいが、例えば有効成分として0.1〜1000mg/kg体重である。
本発明の医薬組成物は、ヒトまたは非ヒト動物のいずれに投与されるものであっても良い。
[飲食品]
本発明の第5の形態は、式(1)で表わされるペプチド、またはクロストリジウム・ブチリカムを培養した培養液もしくは前記培養液の乾燥物を有効成分として含有する毒素産生抑制剤を含む、飲食品を提供する。本発明の別の実施形態では、式(2)で表わされるペプチド、またはクロストリジウム・ブチリカムを培養した培養液もしくは前記培養液の乾燥物を有効成分として含有する毒素産生抑制剤を含む、飲食品を提供する。本発明のある実施形態では、クロストリジウム・ブチリカムを培養した培養液を遠心分離して得られる菌(菌体および/もしくは芽胞)を含む沈殿もしくは上清、または前記沈殿もしくは前記上清の乾燥物を有効成分として含有する毒素産生抑制剤を含む、飲食品を提供する。
本発明に係る毒素産生抑制剤を含む飲食品は、飲食品を摂取した生体内のみならず、摂取前の食品中において、クロストリジウム属の菌が毒素を産生することをも抑制しえる。クロストリジウム属の菌は耐熱性の芽胞を形成するため、加熱によっても容易には殺菌されない。従って、本発明は、加熱殺菌が困難であったり、加熱殺菌が不十分であったりする飲食品においても、クロストリジウム属の菌の毒素産生を抑制し得るという点において利点がある。
本発明において、「飲食品」は、医薬以外のものであって、哺乳動物が経口摂取可能な形態のものであれば特に制限はなく、その形態も液状物(溶液、懸濁液、乳濁液など)、半液体状物、粉末、または固体成形物のいずれのものであってもよい。このため飲食品は、例えば飲料の形態であってもよく、また、サプリメントのような栄養補助食品の錠剤形態であってもよい。
飲食品として具体的には、例えば、即席麺、レトルト食品、缶詰、電子レンジ食品、即席スープ・みそ汁類、フリーズドライ食品などの即席食品類;清涼飲料、果汁飲料、野菜飲料、豆乳飲料、コーヒー飲料、茶飲料、粉末飲料、濃縮飲料、栄養飲料、アルコール飲料などの飲料類;パン、パスタ、麺、ケーキミックス、唐揚げ粉、パン粉などの小麦粉製品;飴、キャラメル、チューイングガム、チョコレート、クッキー、ビスケット、ケーキ、パイ、スナック、クラッカー、和菓子、デザート菓子などの菓子類;ソース、トマト加工調味料、風味調味料、調理ミックス、たれ類、ドレッシング類、つゆ類、カレー・シチューの素類などの調味料;加工油脂、バター、マーガリン、マヨネーズなどの油脂類;乳飲料、ヨーグルト類、乳酸菌飲料、アイスクリーム類、クリーム類などの乳製品;魚肉ハム・ソーセージ、水産練り製品などの水産加工品;畜肉ハム・ソーセージなどの畜産加工品;農産缶詰、ジャム・マーマレード類、漬け物、煮豆、シリアルなどの農産加工品;冷凍食品;栄養食品などが挙げられる。
本発明に係る飲食品は、クロストリジウム属の菌による健康被害を受けているか、またはそのリスクが高い者に対して好適に使用することができる。ここで、リスクが高い者としては、例えば、体組成や食生活をはじめとする各種の指標を考慮して、または、健康診断等の診断・診察から、当該リスクが高いと判断された者や、そのようなリスクが高いと本人または周囲の者から認識されるに至った者が含まれる。
本発明において「飲食品」には、健康食品、機能性食品、特定保健用食品、栄養補助食品、疾病リスク低減表示が付された食品、または、病者用食品のような分類のものも包含される。
本発明の飲食品においては、上述した有効成分に加えて、他の機能を有する成分をさらに添加してもよい。また例えば、日常生活で摂取する食品、健康食品、機能性食品、サプリメント(例えば、カルシウム、マグネシウム等のミネラル類、ビタミンK等のビタミン類を1種以上含有する食品)に本発明の有効成分を配合することにより、本発明による効果に加えて、他の成分に基づく機能を併せ持つ飲食品を提供することができる。
飲食品における有効成分の配合割合は、特に限定されるものではないが、飲食品乾燥重量に対して、毒素産生抑制剤が例えば0.001〜50重量%である。
[飼料]
本発明の第6の形態は、式(1)で表わされるペプチド、またはクロストリジウム・ブチリカムを培養した培養液もしくは前記培養液の乾燥物を有効成分として含有する毒素産生抑制剤を含む、飼料を提供する。本発明の別の実施形態では、式(2)で表わされるペプチド、またはクロストリジウム・ブチリカムを培養した培養液もしくは前記培養液の乾燥物を有効成分として含有する毒素産生抑制剤を含む、飼料を提供する。本発明のある実施形態では、クロストリジウム・ブチリカムを培養した培養液を遠心分離して得られる菌(菌体および/もしくは芽胞)を含む沈殿もしくは上清、または前記沈殿もしくは前記上清の乾燥物を有効成分として含有する毒素産生抑制剤を含む、飼料を提供する。
本発明に係る飼料は、非ヒト動物、例えばイヌ、ネコ等のペット;マウス、ラット等の実験動物;ニワトリ、ウズラ、シチメンチョウ、アヒル、ガチョウ、アイガモ、キジ等の家禽類;ブタ、ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ等の家畜;サケ、アユ、マグロ、ブリ、ヒラメ、タイ、ウナギ、エビ類等の魚介類などに投与されるものであるが、これらに限定されない。
クロストリジウム属の菌による健康被害として、特にニワトリをはじめとする家禽類におけるウェルシュ菌感染症が例示できる。ブロイラー生産におけるウェルシュ菌の感染症による被害は深刻であり、ときには斃死率が50%に至ることもある。本発明に係る毒素産生抑制剤を含む飼料を投与することにより、家禽類におけるウェルシュ菌感染症を有効に予防、抑制および/または治療することが期待される。
本発明の飼料の原料としては、特に限定されないが、例えばトウモロコシ、こうりゃん、大麦、小麦、コメ、小麦粉、米粉、大豆粉、米ぬか、大豆粕、なたね粕、ふすま、コーングルテンミール、コーングルテンフィード、脱脂粉乳、魚粉、デンプン、セルロース、ビタミン類、ビール酵母、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム等である。飼料形状も特に制限されず、例えばペレット、粉末飼料、固形飼料、液体飼料、サイレージ等に上述の毒素産生抑制剤を添加するなど、任意に設定できる。飼料における有効成分の配合割合は、特に限定されるものではないが、飼料乾燥重量に対して、毒素産生抑制剤が例えば0.01〜10重量%である。
[実施態様]
(1) 下記式(1):
式(1)中、Rは水素原子、アミノ酸およびその誘導体、ならびに置換または無置換の、炭素数1〜10のアシル基、ベンジルオキシカルボニル基、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル基およびフェニルイソチオシアネート基からなる群から選択され、XおよびXはそれぞれ独立にAla、Gly、Trp、Met、Pro、Phe、Val、Leu、IleおよびTyrからなる群から選択され、XおよびXは任意のアミノ酸である、ただし、XがPheのときはXがThrであり、XがAlaのときはXがAlaであり、XがThrのときはXがTrpまたはAlaである;
で表わされるペプチド。
(2) 前記式(1)中、XがPhe、TrpおよびTyrからなる群から選択される、(1)に記載のペプチド。
(3) 前記式(1)中、XがHis、Ala、Thr、およびSerからなる群から選択される、(1)または(2)に記載のペプチド。
(4) 前記式(1)中、Rが水素原子、またはベンジルオキシカルボニル基である、(1)〜(3)のいずれか1つに記載のペプチド。
(5) 前記式(1)中、XがAla、Gly、Trp、Met、Pro、Phe、Val、LeuおよびIleからなる群から選択される、(1)〜(4)のいずれか1つに記載のペプチド。
(6) 前記式(1)中、XがPhe、Trp、Tyr、Ala、Val、Leu、およびIleからなる群から選択される、(1)〜(5)のいずれか1つに記載のペプチド。
(7) 下記式(2):
式(2)中、Rは水素原子、アミノ酸およびその誘導体、ならびに置換または無置換の、炭素数1〜10のアシル基、ベンジルオキシカルボニル基、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル基およびフェニルイソチオシアネート基からなる群から選択され、XおよびXはそれぞれ独立にAla、Gly、Trp、Met、Pro、Phe、Val、Leu、IleおよびTyrからなる群から選択され、XおよびXは任意のアミノ酸であり、ZはCys、Ser、Thr、Tyr、AsnおよびGlnからなる群から選択される、ただし、XがPheのときはXがThrであり、XがAlaのときはXがAlaであり、XがThrのときはXがTrpまたはAlaである;
で表わされるペプチド。
(8) 前記式(2)中、ZがCysである、(7)に記載のペプチド。
(9) 前記式(2)中、XがPhe、TrpおよびTyrからなる群から選択される、(7)または(8)に記載のペプチド。
(10) 前記式(2)中、XがHis、Ala、Thr、およびSerからなる群から選択される、(7)〜(9)のいずれか1つに記載のペプチド。
(11) 前記式(2)中、Rが水素原子、またはベンジルオキシカルボニル基である、(7)〜(10)のいずれか1つに記載のペプチド。
(12) 前記式(2)中、XがAla、Gly、Trp、Met、Pro、Phe、Val、LeuおよびIleからなる群から選択される、(7)〜(11)のいずれか1つに記載のペプチド。
(13) 前記式(2)中、XがPhe、Trp、Tyr、Ala、Val、Leu、およびIleからなる群から選択される、(7)〜(12)のいずれか1つに記載のペプチド。
(14) (1)〜(13)のいずれか1つに記載のペプチドを有効成分として含有する、クロストリジウム属の菌の毒素産生抑制剤。
(15) クロストリジウム・ブチリカム(Clostridium butyricum)を培養した培養液または前記培養液の乾燥物を有効成分として含有する、クロストリジウム属の菌の毒素産生抑制剤。
(16) 前記クロストリジウム・ブチリカムが、クロストリジウム・ブチリカム・ミヤイリ 588(Clostridium butyricum MIYAIRI 588、FERM BP−2789)である、(15)に記載のクロストリジウム属の菌の毒素産生抑制剤。
(17) 前記クロストリジウム属の菌が、ウェルシュ菌(Clostridium perfringens)である、(14)〜(16)のいずれか1つに記載の毒素産生抑制剤。
(18) (14)〜(17)のいずれか1つに記載の毒素産生抑制剤を含む、医薬組成物。
(19) (14)〜(17)のいずれか1つに記載の毒素産生抑制剤を含む、飲食品。
(20) (14)〜(17)のいずれか1つに記載の毒素産生抑制剤を含む、飼料。
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。なお、特記しない限り、作業は室温(25℃)で行った。
<実施例1>
下記の手法により、式(1)で表わされるペプチド(環状CFWAH)を合成し、ウェルシュ菌に対する毒素産生抑制活性を確認した。
[ペプチドの合成]
以下の方法により、直鎖状のペプチド(ペプチド配列:Cys−Phe−Trp−Ala−His(配列番号1))を合成した。なお、カイザーテストには、Kaiser test kit(国産化学社製)を用いた。
(1)0.3mmol相当の樹脂(Fmoc−His(1−Trt)−Wangレジン)(Novabiochem製)を量り取り、ペプチド合成用の振とう管に入れた。
(2)6mlのDMF(関東化学社製)を加えて60分振とうし、樹脂を膨潤させた。
(3)6mlのDMFで樹脂を3回洗浄した。
(4)12mlの20%(v/v)ピペリジン(関東化学社製)/DMFで樹脂を洗浄した。
(5)6mlの20%(v/v)ピペリジン/DMFを添加し、60分振とうした。
(6)カイザーテストを行った。
(7)6mlのDMFで樹脂を3回洗浄した。
(8)6mlのNMP(N−メチル−2−ピロリジニン、関東化学社製)で3回洗浄した。
(9)以下の試薬をそれぞれ別の試験管で調製した。
Fmoc−アミノ酸 0.9mmol/NMP 3ml
DCC(関東化学社製) 0.9mmol/NMP 1.5ml
HOBT・HO 0.9mmol/NMP 1.5ml
(HOBT・HO:1−ヒドロキシベンゾトリアゾール、国産化学社製)
なお、Fmoc−アミノ酸としては、Fmoc−Ala−OH、Fmoc−Trp(Boc)−OH、Fmoc−Phe−OH(以上、Novabiochem製)、Fmoc−Cys(Trt)−OH(国産化学社製)を、この順番で用いた。Bocはt−ブチルオキシカルボニル基を、Trtはトリチル基を指す。
(10)上記3種の試薬を振とう管に加え、3時間以上振とうした。
(11)カイザーテストによって脱保護反応を確認した。
(12)6mlのNMPで3回、6mlのDMFで3回、樹脂を洗浄した。
(13)(3)から(12)までの操作を計4回繰り返し、ペプチドを伸長させた。
(14)6mlのメタノール(ナカライテスク社製)で樹脂を3回洗浄した。
(15)得られた樹脂付きペプチドを、真空乾燥機にて乾燥させた。
なお、表6におけるアミノ酸6〜8残基のペプチドについても、上述の方法に準じて、使用するFmoc−アミノ酸を適宜追加して合成した。
[樹脂および側鎖の保護基の除去]
上述の方法により得られた樹脂付きペプチドについて、側鎖の保護基および樹脂の除去反応を行った。
(1)乾燥させた樹脂付きペプチド50mgをフラスコに入れ、以下の組成の切断カクテルを加えて室温で60分間攪拌した。
(2)PTFE膜(φ0.2μm、関東化学社製)で濾過し、60mlの冷ジエチルエーテル(関東化学社製)を添加した。
(3)4℃で一晩静置し、ペプチドを析出させた。
(4)PTFE膜(φ4.5μm、47mm、ADVANTEC製)で吸引濾過し、析出したペプチドを回収した。
(5)回収したペプチドを、500μlのDMSOに溶解し、Sep−pak(登録商標)(C18)plusカラム(ウォーターズ社製)により精製し、60%(v/v)CHCN/超純水溶出画分を回収した。
(6)60%(v/v)CHCN/超純水溶出画分を濃縮乾固し、凍結乾燥することにより、側鎖の保護基および樹脂を除去した直鎖状のペプチドを得た。
[ペプチドの環化]
上述の方法により得られた直鎖状のペプチドを、以下の方法により環化し、チオラクトン構造を有するペプチド(環状Fmoc−CFWAH)を合成した。
(1)直鎖状ペプチド10mgをフラスコに量り取り、4mlのN,N’−ジメチルアセトアミド(DMA)(関東化学社製)を加えて溶解させた。
(2)20mgのPyBOP(Novabiochem製)と20mgのジメチルアミノピリジン(Merck社製)を添加した。
(3)Nガスを充填し、室温で攪拌しながら10時間程度攪拌した。
(4)80mlの氷冷超純水に、反応液を少しずつ添加した。
(5)Sep−pak(登録商標)(C18)plusカラム(ウォーターズ社製)により精製し、60%(v/v)CHCN/超純水溶出画分を回収した。
(6)試料を濃縮乾固、凍結乾燥した後、1mlのDMSOに溶解させた。
(7)逆相HPLCにより、試料を精製した。逆相HPLCの測定条件は以下の通りである。
使用機器:LC−2000Plusシリーズ(日本分光社製)
カラム :Intertsil ODS−3 20×150mm(GLサイエンス社製)流速 :10ml/min
検出波長:280nm
逆相HPLCによるクロマトグラムを図1に示す。各フラクションをESI−MSに供したところ、フラクション4において目的の分子イオンピークが[M+H] m/z=867に確認された。フラクション4のESI−MSによる分析結果を図2に示す。ESI−MSの分析条件を以下に示す。
(ESI−MSの分析条件)
使用機器 :液体クロマトグラフ飛行時間型質量分析計JMS−T100LC(日本電子社製)
溶媒 :A液:超純水/0.05%(v/v)TFA、B液:CHCN/0.05%(v/v)TFA
流速 :0.2ml/min
サンプル注入量:約5μl
混合比率 :B液=20%
(8)逆相HPLCにおけるフラクション4を濃縮乾固した後、凍結乾燥し、環状ペプチド(環状Fmoc−CFWAH)を得た。
[N末端保護基(Fmoc)の除去]
上述の方法により得られた環状のペプチドを、短時間ピペリジンで処理することにより、N末端保護基(Fmoc)を除去した。
(1)0.1mgの環状Fmoc−CFWAHを20μlのDMFに溶解し、20μlの20%(v/v)ピペリジン(国産化学社製)/DMFを添加して3分間室温で静置した。
(2)360μlの15%(v/v)CHCN/1%(v/v)酢酸(シグマ・アルドリッチ社製)を添加した。
(3)反応液をSep−pak(登録商標)(C18)plusカラム(ウォーターズ社製)により精製し、60%(v/v)CHCN/超純水溶出画分を回収した。
(4)試料を濃縮乾固、凍結乾燥した後、1mlのDMSOに溶解させた。
(5)逆相HPLCにより、試料を精製した。逆相HPLCの測定条件は以下の通りである。
使用機器:LC−2000Plusシリーズ(日本分光社製)
カラム :Intertsil ODS−3 20×150mm(GLサイエンス社製)
流速 :10ml/min
検出波長:220nm
逆相HPLCによるクロマトグラムを図3に示す。各フラクションをESI−MSに供したところ、フラクション32において目的の分子イオンピークが[M+H] m/z=644に確認された。フラクション32のESI−MSによる分析結果を図4に示す。なお、ESI−MSの分析条件は上述のとおりである。
(8)逆相HPLCにおけるフラクション32を濃縮乾固した後、凍結乾燥し、式(1)で表わされるチオラクトン構造を有する環状ペプチド(環状CFWAH)を得た。
なお、表6におけるアミノ酸6〜8残基のペプチドについても、上述の方法に準じて、チオラクトン構造を有する環状ペプチドとして得た。表6において、環状Fmoc−CFWAH(ペプチド5n)およびペプチド6nが本発明に相当する。
また、上記合成方法において、工程(1)のピペリジンによる脱保護の時間を3分から15分に延長することで、式(2)で表わされるラクタム構造を有するペプチドを優先的に得ることができる。
[ウェルシュ菌に対する環状CFWAHの毒素産生抑制活性]
ウェルシュ菌strain 13(金沢大学大学院医学系研究科・細菌感染症制御学講座保存株)を10mlのTSF培地(トリプトン40g、ソイトン4g、フルクトース5g/L)にて、37℃で6時間培養した。その後、500μlの培養液を遠心分離(15,000rpm×5分)し、菌体を回収した。
菌体ペレットを500μlのTSF培地にて再懸濁した。チオラクトン構造を有する下記の5〜8残基の環状ペプチドをDMSOに溶解し、それぞれ最終10μMになるように培地に加え、37℃にて2.5時間インキュベートした。その後、ホットフェノール法によりトータルRNAを調製した。すなわち、2mlのウェルシュ菌培養液を15,000rpmで5分間遠心分離して上清を除去した。菌体を20mM酢酸ナトリウム、1mM EDTA、0.5%(w/v)SDSを含む100μlの溶液Aに懸濁した。さらに100μlのクエン酸飽和フェノール(pH4.3)を混和して、65℃恒温槽にて5分間振とうさせた。その後、15,000rpmで5分間遠心分離して水層を回収し、エタノール沈殿にてRNAを析出させ、トータルRNAを調製した。調製したトータルRNAは、50μlの水に溶解させた。
シーター−毒素(pfoA)遺伝子プローブを用いて、ノーザンブロット解析を行った。すなわち、調製したトータルRNA 10μgを尿素にて変性し、アガロース電気泳動にて分離し、ナイロンメンブレンに転写した。AlkPhos−Direct Labeling kit(GE Healthcare)を用い、PCRで増幅(配列番号10および11のプライマーを使用、鋳型:ウェルシュ菌strain 13のゲノムDNA、ポリメラーゼ:EX―Taq(タカラバイオ社製)、PCR条件:98℃×3分、98℃×30秒→52℃×30秒→68℃×30秒,30サイクル)した毒素遺伝子DNAをラベル化した。ナイロンメンブレン上の遺伝子を、ラベル化DNA(プローブ)とRapid−hybバッファー中(GE Healthcare)で55℃で2時間ハイブリダイズさせた。2×SSPEバッファー/0.1%(w/v)SDSおよび0.7×SSCバッファー/0.1%(w/v)SDSでナイロンメンブレンを洗浄した。シグナルの検出には、CDPstar化学発光法を用いた。
ノーザンブロット解析の結果を図5に示す。図5中、レーン1は10mlの、レーン2は500μlの無添加培地でインキュベートした結果を、レーン3は10μlのDMSOを培地に添加してインキュベートした結果を、レーン4〜7はそれぞれ環状CFWAH(ペプチド5n)、ペプチド6n、ペプチド7nまたはペプチド8nを終濃度10μMになるように培地に添加してインキュベートした結果を示す。図5に示す通り、環状CFWAH(ペプチド5n)、またはペプチド6nに毒素発現抑制活性がみられ、環状CFWAH(ペプチド5n)で特に高い活性が認められた。
以上より、式(1)で表わされるペプチドが、クロストリジウム属の菌に対して毒素産生抑制活性を有することが示された。
<実施例2>
下記の手法により、クロストリジウム・ブチリカムの培養液による、クロストリジウム属の菌の毒素産生抑制活性を確認した。
[共培養実験]
ウェルシュ菌strain 13、クロストリジウム・ブチリカム・ミヤイリ 588(Clostridium butyricum MIYAIRI 588、FERM BP−2789、ミヤリサン製薬株式会社より入手)、またはクロストリジウム・ブチリカム・ATCC19398(ATCCより購入)をGAM培地(GAMブイヨン(日水製薬株式会社製)、組成:59.0g(1L分)中、ペプトン10.0g、ダイズペプトン3.0g、プロテアーゼペプトン10.0g、消化血清末13.5g、酵母エキス5.0g、肉エキス2.2g、肝臓エキス1.2g、ブドウ糖3.0g、リン酸二水素カリウム2.5g、塩化ナトリウム3.0g、溶性デンプン5.0g、L−システイン塩酸塩0.3g、チオグリコール酸ナトリウム0.3g、pH7.1)で一晩、37℃で培養した。培養液をそれぞれ2ml採取して遠心分離し(15,000rpm×5分)、菌体を回収した。菌体ペレットを2mlのGAM培地にて2回洗浄し、2mlのGAM培地に懸濁した。
共培養には、カップ付き培養プレート(THINCERTS,Greiner Bio−One,657641)を用いた。共培養に使用したプレートの模式図を、図6に示す。培養プレートの各ウェル底面と、各ウェルに挿入されたカップの底面とは、接触していない。カップ底面はポアサイズ0.4μmの膜で構成されているため、ウェル内の上層(カップ内)と下層(カップ底面より下の領域)とは、ポアサイズ0.4μmの膜で仕切られている。
培養ウェル内の下層に、4.5mlのGAM培地および上記で調製した500μlのクロストリジウム・ブチリカムの懸濁液(クロストリジウム・ブチリカム・ミヤイリ 588またはクロストリジウム・ブチリカム・ATCC19398)を加えた。コントロールとして、別のウェルの下層には、上記クロストリジウム・ブチリカムの懸濁液の代わりに500μlのGAM培地を入れた。ウェル内の上層に、4.5mlのGAM培地を入れ、37℃で嫌気培養した。クロストリジウム・ブチリカムから産生された物質のうち、膜を通過できる物質は、嫌気培養中に上層のGAM培地中に拡散する。
培養5時間または7時間後、上記で調製した500μlのウェルシュ菌を上層に加え、再度37℃で嫌気培養(共培養)した。共培養開始から2時間後および3時間後に、カップ上のウェルシュ菌からホットフェノール法にてトータルRNAを調製した。
[マイクロアレイ解析]
マイクロアレイ解析はOhtaniらの方法(Ohtani,K.ら,Anaerobe (2010),16:258−264)に準じて行った。すなわち、コントロールのウェルシュ菌から調製したトータルRNAをCy5で、クロストリジウム・ブチリカムと共培養したウェルシュ菌から調製したトータルRNAをCy3で、それぞれラベル化した。蛍光色素Cy3およびCy5はGE Healthcareより購入した。ラベル化反応には、SuperScript Indirect cDNA labeling kit(インビトロジェン製)を用いた。
ラベル化RNAを、ウェルシュ菌カスタムDNAマイクロアレイ(国立大学法人九州大学農学研究院 久原哲教授より分与)にハイブリダイズさせた。マイクロアレイは、GEOデータベース(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/geo/)におけるアクセッションナンバーGPL9765のものを使用した。マイクロアレイ上の各遺伝子DNAスポットの蛍光強度を、マイクロアレイ用スキャナー(富士フィルム社製)にて測定し、各遺伝子の発現比(共培養/コントロール)を計算した。データ解析にはRおよびlimma(Linear Model for Microarray Data)ソフトウェアを用い、p値が0.05未満のとき、遺伝子発現に有意な変動があったものとみなした。
培養5時間後にウェルシュ菌を上層に加えたときの、マイクロアレイ実験の結果の一部を、表7に示す。表7において、下線のある数値は、クロストリジウム・ブチリカムとの共培養によって遺伝子発現が有意に抑制されているものを示す。クロストリジウム・ブチリカム培養液から拡散した物質がウェルシュ菌に作用し、これらの遺伝子群の発現が抑制されたことを示す。
発現が抑制された遺伝子群には、アルファ−毒素(plc)、カッパ−毒素(colA)など、毒素をコードする遺伝子が含まれていた。
[ノーザンブロット解析]
前述のマイクロアレイで確認された遺伝子発現の抑制を、ノーザンブロット解析により確認した。なお、ノーザンブロットは上述の方法にて行った。遺伝子プローブとしては、上述のPCR法にて調製したアルファ−毒素(plc、配列番号12および13のプライマーを使用)、シーター−毒素(pfoA、配列番号10および11のプライマーを使用)、カッパ−毒素(colA、配列番号14および15のプライマーを使用)、毒素調節RNA(VR−RNA、図7におけるVR、配列番号16および17のプライマーを使用)、およびVirR/VirSシステムに調節される遺伝子(CPE0845、図7における0845、配列番号18および19のプライマーを使用)を用いた。
ノーザンブロット解析の結果を図7に示す。図7において、「GAM」のレーンは下層にGAM培地を入れた場合の結果を、「st13」のレーンはウェルシュ菌の単培養の場合の結果を、「Miya」のレーンはクロストリジウム・ブチリカム・ミヤイリ 588と共培養したときの結果を、「ATCC」のレーンはクロストリジウム・ブチリカム・ATCC19398と共培養したときの結果をそれぞれ示す。また、「A5」および「B5」は、培養5時間後にウェルシュ菌を上層に加えたときの結果を、「A7」および「B7」は、培養7時間後にウェルシュ菌を上層に加えたときの結果をそれぞれ示す。
図7に示す通り、クロストリジウム・ブチリカムとの共培養によって、いずれの遺伝子も著しく発現が減少していることが確認された。
以上より、クロストリジウム・ブチリカムから培地中に分泌された成分が、クロストリジウム属の菌において毒素産生を抑制することが確認された。従って、クロストリジウム・ブチリカムの培養液が、クロストリジウム属の菌に対して毒素産生抑制活性を有することが示された。また、図7より、クロストリジウム属の菌に対する毒素産生抑制活性は、クロストリジウム・ブチリカム・ミヤイリ 588において特に優れていることが分かる。
[クロストリジウム・ブチリカムagrD遺伝子による毒素遺伝子発現の抑制]
クロストリジウム・ブチリカムagrD遺伝子を、ウェルシュ菌内で発現させたときの、ウェルシュ菌の毒素遺伝子発現に対する効果を検討した。
クロストリジウム・ブチリカムのagrD領域のDNA断片を、PCRにて調製した。ポリメラーゼとしてはKOD(東洋紡社製)を用い、95℃×3分、98℃×10秒→52℃×30秒→68℃×2分,30サイクル、の条件にて増幅した。なお、鋳型としては、クロストリジウム・ブチリカム・ミヤイリ 588から抽出したゲノムDNAを用いた。DNA調製は定法に従って行った。プライマーとしては、以下のものを用いた。
PCRの増幅産物を制限酵素SmaIで処理し、ウェルシュ菌と大腸菌のシャトルベクターpJIR 418にクローニングした。
ウェルシュ菌strain 13(野生株、図8における「13/」)または、agrD変異株(ウェルシュ菌strain 13由来、図8における「TS230/」)に、クロストリジウム・ブチリカムのagrD遺伝子をもつプラスミド(図8における「agrbu」)または組み換え前のシャトルベクター(図8における「418」)をエレクトロポレーション法により導入した。ベクター上にはクロラムフェニコール耐性遺伝子がコードされているので、エレクトロポレーション後は、クロラムフェニコールでプラスミドをもつウェルシュ菌コロニーを選択した。
エレクトロポレーション後、ウェルシュ菌をGAM培地にて37℃で培養した。培養開始から3時間後に上述の方法でトータルRNAを調製した。上述の方法に準じてノーザンブロット解析を行い、遺伝子発現を確認した。結果を図8に示す。
図8より、クロストリジウム・ブチリカムagrD遺伝子をウェルシュ菌内で発現させることで、ウェルシュ菌のpfoA、colAおよびplcの発現が低下することが確認された。
以上より、クロストリジウム・ブチリカムのAgrDが、クロストリジウム属の菌において毒素産生を抑制することが示された。
<実施例3>
下記の手法により、式(1)で表わされるペプチド(AgrDcb−チオラクトン)および式(2)で表されるペプチド(AgrDcb−ラクタム)を合成し、ウェルシュ菌に対する毒素産生抑制活性を確認した。
[AgrDcb−チオラクトンの合成]
(1)化学合成されたTrtResin(Trt(2−Cl)−resin)/Z基(ベンジルオキシカルボニル基)付きペプチド(Z基−CFWAH−TrtResin)を、株式会社スクラムより購入した。290mgの樹脂付き乾燥ペプチドを、上記組成の切断カクテル10mlに加え、室温で5時間撹拌した。その後、実施例1と同様の方法により樹脂の除去を行い、樹脂を除去した直鎖状のZ基付きペプチドを得た。
(2)直鎖状のZ基付きペプチドを用いて、実施例1と同様の方法によりPyBOPを用いた脱水環化反応を行った。これにより、環状Z基−CFWAHを得た。
(3)次に、TFA/チオアニソールを用いてN末端保護基であるZ基を除去した。すなわち11mgの上記環状Z基−CFWAHを、下記の切断カクテル(2)に加え、室温で12.5時間撹拌した。
(4)氷冷した200mlの5%(v/v)CHCN/超純水/0.1%(v/v)TFAに反応液を少量ずつ添加し、反応を停止させた。
(5)反応液をSep−pak(登録商標)(C18)plusカラム(ウォーターズ社製)により精製し、30%(v/v)CHCN/超純水/0.1%(v/v)TFA溶出画分を回収した。
(6)試料を濃縮乾固、凍結乾燥した後、DMSOに溶解させた。
(7)上記の条件で逆相HPLCによる精製を行った後、試料を乾固させてAgrDcb−チオラクトン(CFWAH)を得た。
[AgrDcb−ラクタムの合成]
次に、アルカリ転化反応により式(2)で表されるペプチド(AgrDcb−ラクタム)を合成した。
(1)上記の方法で合成したAgrDcb−チオラクトンをDMSOに溶解し、10μg/μl溶液を調製した後、超純水を加えて3μg/μl溶液に希釈した。
(2)10μlの上記溶液に、28%(w/w)アンモニア水溶液10μlを加え、37℃で30分間反応させた。
(3)反応液に0.05%(v/v)TFA水溶液120μlを加えて反応を停止させた後、5%酢酸を用いてpHを約7に調整した。
(4)上記の条件で逆相HPLCによる精製を行い、得られた各フラクション中を上記条件にてESI−MSにより分析し、目的のm/z=645を含むフラクションを回収した。
(5)得られたペプチドフラクションを乾固し、AgrDcb−ラクタム(CFWAH)を得た。
[ウェルシュ菌に対する環状CFWAHの毒素産生抑制活性]
AgrDcb−チオラクトンおよびAgrDcb−ラクタムを用いて、ウェルシュ菌の毒素産生抑制活性を評価した。
ウェルシュ菌strain 13を2mlのGAM培地にて、37℃で5時間培養した。その後、終濃度10μMのAgrDcb−チオラクトンまたはAgrDcb−ラクタムを含むTSF培地にウェルシュ菌培養液を添加し、37℃で2.5時間培養した。その後、培養液を遠心分離して菌体を回収した後、実施例1と同様の方法によりトータルRNAを調製した。対照区として、本発明にかかるペプチドを含まない培地で培養したウェルシュ菌から調製したトータルRNAを用いた。
定量PCRを行い、ウェルシュ菌におけるシーター−毒素(pfoA)をコードする遺伝子発現を評価した。なお、定量PCRには配列番号27(TGAAGCACCTCCACTTATGG)および配列番号28(GCATCTCCTCCTAAAACTACTG)のプライマー、およびOne Step SYBR(登録商標) PrimeScript RT−PCR Kit II (Perfect Real Time)(タカラバイオ社製)を用いた。ハウスキーピング遺伝子としては、16S rRNAを用いた(配列番号29:AGTTACAGTCCAGAGAGTCG、配列番号30:TATCTAGAGTGCAGGAGAGG)。測定は、リアルタイムPCRシステム Mx3000P QPCR System(アジレントテクノロジー社製)にて42℃×5分→95℃×10秒→(95℃×5秒→60℃×20秒→72℃×32秒)×40サイクルの条件で行った。結果を図9に示す。
図9に示す通り、AgrDcb−チオラクトンおよびAgrDcb−ラクタムによって、ウェルシュ菌のシーター−毒素(pfoA)をコードする遺伝子発現が抑制されていることがわかる。ウェルシュ菌シーター−毒素(pfoA)をコードする遺伝子の発現量を指標として、AgrDcb−チオラクトンおよびAgrDcb−ラクタムについて、毒素産生抑制活性のIC50を求めたところ、両者とも10μMであった。
AgrDcb−チオラクトンは少ない合成ステップで得られるという利点がある。一方、AgrDcb−ラクタムはAgrDcb−チオラクトンよりも構造的に安定であるという利点がある。
<実施例4>
実施例(3)の手法に準じて、式(1)におけるR、およびX〜Xがそれぞれ表9のアミノ酸であるチオラクトン構造を有する環状ペプチドを合成し、ウェルシュ菌シーター−毒素(pfoA)をコードする遺伝子発現を定量PCR測定した。なお、表9におけるZ基(ベンジルオキシカルボニル基)付きペプチドは、上記のPyBOPを用いた脱水環化反応後、TFA/チオアニソールを行わずに、Sep−pak(登録商標)(C18)plusカラム(ウォーターズ社製)および逆相HPLCにて精製することにより得た。
ウェルシュ菌シーター−毒素(pfoA)をコードする遺伝子の発現量を指標として、各環状ペプチドの毒素産生抑制活性についてIC50を求めた。なお、表9において、「アゴニスト」はpfoA遺伝子発現が上昇した(アゴニスト活性を有する)ことを、「活性なし」は毒素産生抑制活性(アンタゴニスト活性)またはアゴニスト活性のいずれも確認されなかったことを示す。
アゴニスト活性またはアンタゴニスト活性の発現には、VirSに対してペプチドが結合できる(結合活性を有する)ことが必要であると考えられる。表9において、Z基−CLWFT−Bzl基(ウェルシュ菌のアミノ酸配列)、およびZ基−CLWFAにおいてアゴニスト活性が、また、Z基−CAWAA、Z基−CLWAT、およびZ基−CLFWTにおいてアンタゴニスト活性が認められた一方で、Z基−CLAFTにおいてはアゴニスト活性またはアンタゴニスト活性のいずれも認められなかった。この結果から、Xが芳香族アミノ酸であることにより、VirSに対する結合活性が向上するものと考えられる。
Z基−CLWFT−Bzl基(ウェルシュ菌のアミノ酸配列)はアゴニストである一方、Z基−CLWFSはアンタゴニストであった。この結果から、XがThrであることがアゴニスト活性に必要であると考えられる。
<実施例5>
クロストリジウム・ブチリカムがAgrDを細胞外へ分泌していること確認した。
まず、以下の条件で培養を行い、分析用サンプルを回収した。すなわち、10mLのブレインハートインフュージョン培地(BHI培地)(BD社製)にクロストリジウム・ブチリカム MIYAIRI 588を1コロニー接種し、嫌気チャンバー内(窒素80%/水素10%/二酸化炭素10%)、37℃で一晩培養した。培養液を600mLのBHI培地(1Lの三角コルベン使用)に1%接種し、嫌気チャンバー内(37℃)で培養した。培養中、OD660nmを継時で測定し、OD660nmが0.209(培養3.75時間、対数増殖期前期、図10におけるa)、0.660(培養4.5時間、対数増殖期中期、図10におけるb)、1.648(培養5.1時間、対数増殖期後期、図10におけるc)、および1.130(培養24時間、対数増殖静止期、図10におけるd)のタイミングで培養液を回収した。回収の際は、120mLの培養液を分取し、5000×gで10分間遠心分離し、上清を回収して分析用サンプルとした。培養時のOD値の変化を、図10に示す。
次に、回収した培養上清0.4mlにアンモニア水溶液(28%(w/w))10μlと2−メルカプトエタノール1.5μlを添加して、37℃で3時間インキュベートした(アンモニア処理)。反応液に0.05%(v/v)TFAを120μl添加して中和した後、酢酸エチル60μlを加え、撹拌混和後に8000rpm×5分(4℃)で遠心分離した。酢酸エチル層を回収し、酢酸エチルを留去した後、回収した固形分をDMSO50μlに溶解してESI−MS分析に供した。
(ESI−MSの分析条件)
使用機器 :液体クロマトグラフ飛行時間型質量分析計JMS−T100LC(日本電子社製)
カラム :ZORBAX Eclipse XDB−C18, 5μm, 2.1×50mm(アジレントテクノロジー社製)
溶媒 :A液:超純水/0.05%(v/v)TFA、B液:CHCN/0.05%(v/v)TFA
検出質量数 :m/z=645
流速 :0.2 ml/分
HPLC溶出条件:
ESI−MSの分析結果を図11に示す。図11中のa〜dは、それぞれ図10におけるa〜dの時点で回収したサンプルであることを示す。
図11に示す通り、対数増殖期中期以降においてm/z=645に目的のピークが検出された。ピーク強度は対数増殖後期では増加し、静止期でも同等の強度のピークが検出された。なお、培養液をアンモニア処理せずに同様の方法にて分析したところ、m/z=645に目的のピークは観察されなかった。よって、m/z=645のピークは、培養液中に分泌された環状CFWAH(チオラクトン)が、上記のアンモニア処理によってラクタムに転化したものであると考えられる。
以上より、クロストリジウム・ブチリカム MIYAIRI 588は環状CFWAH(チオラクトン)を培養液中に分泌していると推定された。
分泌された環状CFWAH(チオラクトン)を含むクロストリジウム・ブチリカムの培養液は、おそらくはVirSに対してアンタゴニストとして機能することにより、ウェルシュ菌の毒素産生を抑制するものと考えられる。
好ましい実施形態の上記実施例および説明は、特許請求の範囲によって定義される本発明を限定するものというより、例示するものとして解釈されるべきである。本明細書で引用された全ての刊行物は、その全体が本明細書中に参照によって組込まれる。容易に理解されるように、上述した特徴の多数の変形および組み合わせは、特許請求の範囲に記載の本発明から逸脱することなく利用されることができる。そのような変形は、本発明の範囲からの逸脱とはみなされず、全てのそのような変形は、特許請求の範囲内に含まれることが意図される。
本出願は、2014年2月7日に出願された日本特許出願番号2014−022811号、および2014年10月16日に出願された日本特許出願番号2014−211962号に基づいており、その開示内容は、参照され、全体として、組み入れられている。
〔配列番号:5〕
アミノ酸6残基からなる環状ペプチド。
〔配列番号:6〕
アミノ酸7残基からなる環状ペプチド。
〔配列番号:7〕
アミノ酸8残基からなる環状ペプチド。
〔配列番号:8〕
クロストリジウム・ブチリカムagrDを含むDNA断片の増幅のためのPCRプライマー配列。
〔配列番号:9〕
クロストリジウム・ブチリカムagrDを含むDNA断片の増幅のためのPCRプライマー配列。
〔配列番号:10〕
ウェルシュ菌pfoAを含むDNA断片の増幅のためのPCRプライマー配列。
〔配列番号:11〕
ウェルシュ菌pfoAを含むDNA断片の増幅のためのPCRプライマー配列。
〔配列番号:12〕
ウェルシュ菌plcを含むDNA断片の増幅のためのPCRプライマー配列。
〔配列番号:13〕
ウェルシュ菌plcを含むDNA断片の増幅のためのPCRプライマー配列。
〔配列番号:14〕
ウェルシュ菌colAを含むDNA断片の増幅のためのPCRプライマー配列。
〔配列番号:15〕
ウェルシュ菌colAを含むDNA断片の増幅のためのPCRプライマー配列。
〔配列番号:16〕
ウェルシュ菌VR−RNAを含むDNA断片の増幅のためのPCRプライマー配列。
〔配列番号:17〕
ウェルシュ菌VR−RNAを含むDNA断片の増幅のためのPCRプライマー配列。
〔配列番号:18〕
ウェルシュ菌CPE0845を含むDNA断片の増幅のためのPCRプライマー配列。
〔配列番号:19〕
ウェルシュ菌CPE0845を含むDNA断片の増幅のためのPCRプライマー配列。
〔配列番号:27〕
ウェルシュ菌pfoAの定量PCR用プライマー配列。
〔配列番号:28〕
ウェルシュ菌pfoAの定量PCR用プライマー配列。
〔配列番号:29〕
ウェルシュ菌16S rRNAの定量PCR用プライマー配列。
〔配列番号:30〕
ウェルシュ菌16S rRNAの定量PCR用プライマー配列。

Claims (13)

  1. 下記式(1):

    式(1)中、Rは水素原子、アミノ酸、オルニチン、サルコシン、デスモシン、イソデスモシン、ヒドロキシリジン、3−ヒドロキシプロリン、4−ヒドロキシプロリン、2−アミノアジピン酸、3−アミノアジピン酸、β−アラニン、β−アミノプロピオン酸、2−アミノ酪酸、4−アミノ酪酸、6−アミノカプロン酸、2−アミノヘプタン酸、2−アミノイソ酪酸および3−アミノイソ酪酸、ならびに置換または無置換の、炭素数1〜10のアシル基、ベンジルオキシカルボニル基、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル基およびフェニルイソチオシアネート基からなる群から選択され、 、X 、X およびX が下記(1−1)〜(1−4)のいずれかで表わされるペプチド:
    (1−1) Ala、Gly、Trp、he、Val、Leu、IleおよびTyrからなる群から選択され、 はPhe、TrpおよびTyrからなる群から選択され、Alaであり、XはHis、Ala、Thr、およびSerからなる群から選択される、ただし、XがPheのときはXがThrであり、XがAlaのときはXがAlaであ
    (1−2) X はAlaであり、X はTrpであり、X はPheであり、X はAlaである;
    (1−3) X はLeuであり、X はTrpであり、X はPheであり、X はSerである;
    (1−4) X はLeuであり、X はPheであり、X はTrpであり、X はThrである
  2. 前記式(1)中、Rが水素原子、またはベンジルオキシカルボニル基である、請求項に記載のペプチド。
  3. 前記(1−1)において、XがPhe、Trp、Tyr、Ala、Val、Leu、およびIleからなる群から選択される、請求項1または2に記載のペプチド。
  4. 前記(1−1)において、X 、X 、X およびX が下記(1−5)〜(1−8)のいずれかで表わされる、請求項1〜3のいずれか1項に記載のペプチド:
    (1−5) X はPheであり、X はTrpであり、X はAlaであり、X はHisである;
    (1−6) X はLeuであり、X はTrpであり、X はAlaであり、X はThrである;
    (1−7) X はAlaであり、X はTrpであり、X はAlaであり、X はAlaである;
    (1−8) X はLeuであり、X はTrpであり、X はAlaであり、X はSerである。
  5. 下記式(2):

    式(2)中、Rは水素原子、アミノ酸、オルニチン、サルコシン、デスモシン、イソデスモシン、ヒドロキシリジン、3−ヒドロキシプロリン、4−ヒドロキシプロリン、2−アミノアジピン酸、3−アミノアジピン酸、β−アラニン、β−アミノプロピオン酸、2−アミノ酪酸、4−アミノ酪酸、6−アミノカプロン酸、2−アミノヘプタン酸、2−アミノイソ酪酸および3−アミノイソ酪酸、ならびに置換または無置換の、炭素数1〜10のアシル基、ベンジルオキシカルボニル基、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル基およびフェニルイソチオシアネート基からなる群から選択され、ZはCysであり、X 、X 、X およびX が下記(2−1)〜(2−4)のいずれかで表わされるペプチド:
    (2−1) Ala、Gly、Trp、he、Val、Leu、IleおよびTyrからなる群から選択され、 はPhe、TrpおよびTyrからなる群から選択され、 はAlaであり、X はHis、Ala、ThrおよびSerからなる群から選択されるだし、XがPheのときはXがThrであり、XがAlaのときはXがAlaであ
    (2−2) X はAlaであり、X はTrpであり、X はPheであり、X はAlaである;
    (2−3) X はLeuであり、X はTrpであり、X はPheであり、X はSerである;
    (2−4) X はLeuであり、X はPheであり、X はTrpであり、X はThrである
  6. 前記式(2)中、Rが水素原子、またはベンジルオキシカルボニル基である、請求項に記載のペプチド。
  7. 前記式(2−1)において、XがPhe、Trp、Tyr、Ala、Val、Leu、およびIleからなる群から選択される、請求項5または6に記載のペプチド。
  8. 前記(2−1)において、X 、X 、X およびX が下記(2−5)〜(2−8)のいずれかで表わされる、請求項5〜7のいずれか1項に記載のペプチド:
    (2−5) X はPheであり、X はTrpであり、X はAlaであり、X はHisである;
    (2−6) X はLeuであり、X はTrpであり、X はAlaであり、X はThrである;
    (2−7) X はAlaであり、X はTrpであり、X はAlaであり、X はAlaである;
    (2−8) X はLeuであり、X はTrpであり、X はAlaであり、X はSerである。
  9. 請求項1〜のいずれか1項に記載のペプチドを有効成分として含有する、クロストリジウム属の菌の毒素産生抑制剤。
  10. クロストリジウム・ブチリカム(Clostridium butyricum)を培養した培養液または前記培養液の乾燥物を有効成分として含有する、クロストリジウム属の菌の毒素産生抑制剤であって、
    前記クロストリジウム属の菌が、ウェルシュ菌(Clostridium perfringens)である、毒素産生抑制剤。
  11. 前記クロストリジウム・ブチリカムが、クロストリジウム・ブチリカム・ミヤイリ 588(Clostridium butyricum MIYAIRI 588、FERM BP−2789)である、請求項10に記載の毒素産生抑制剤。
  12. 前記クロストリジウム属の菌が、ウェルシュ菌(Clostridium perfringens)である、請求項に記載の毒素産生抑制剤。
  13. 請求項12のいずれか1項に記載の毒素産生抑制剤を含む、医薬組成物、飲食品、または飼料。
JP2015561017A 2014-02-07 2015-02-04 クロストリジウム属の菌の毒素産生抑制活性を有するペプチド Active JP6076509B2 (ja)

Applications Claiming Priority (5)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2014022811 2014-02-07
JP2014022811 2014-02-07
JP2014211962 2014-10-16
JP2014211962 2014-10-16
PCT/JP2015/053145 WO2015119170A1 (ja) 2014-02-07 2015-02-04 クロストリジウム属の菌の毒素産生抑制活性を有するペプチド

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP6076509B2 true JP6076509B2 (ja) 2017-02-08
JPWO2015119170A1 JPWO2015119170A1 (ja) 2017-03-23

Family

ID=53777972

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2015561017A Active JP6076509B2 (ja) 2014-02-07 2015-02-04 クロストリジウム属の菌の毒素産生抑制活性を有するペプチド

Country Status (4)

Country Link
US (1) US10214561B2 (ja)
EP (1) EP3103808B1 (ja)
JP (1) JP6076509B2 (ja)
WO (1) WO2015119170A1 (ja)

Families Citing this family (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2017150720A1 (ja) * 2016-03-04 2017-09-08 国立大学法人三重大学 線維症評価用バイオマーカ、線維症の評価方法および評価用細菌培地
WO2017192442A2 (en) * 2016-05-01 2017-11-09 Wisconsin Alumni Research Foundation Peptidic modulators of quorum sensing in staphyloccoccus epidermidis
GB2557654A (en) * 2016-12-14 2018-06-27 Uea Enterprises Ltd Method for nucleic acid depletion
CN114231461B (zh) * 2021-12-28 2023-11-07 武汉科缘生物发展有限责任公司 一种丁酸梭菌、组合物及应用与丁酸梭菌的发酵培养方法

Citations (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH0692862A (ja) * 1992-01-23 1994-04-05 Osamu Otani 腸内菌叢改善剤
WO1998036050A1 (fr) * 1997-02-14 1998-08-20 Nippoh Chemicals Co., Ltd. Clostridium butyricum ayant des effets preventifs et therapeutiques sur les hepatopathies, et agents de soutien du foie et aliments destines a l'alimentation humaine et animale contenant tous le milieu de culture de ladite bacterie
JP2002509073A (ja) * 1997-12-31 2002-03-26 アドヘレックス テクノロジーズ インコーポレイテッド オクルディン関連組織透過性を調節するための組成物および方法
WO2003072034A2 (en) * 2002-02-21 2003-09-04 Rigel Pharmaceuticals, Inc. Cyclic peptides and analogs useful to treat allergies
US20050203025A1 (en) * 1998-05-05 2005-09-15 Adherex Technologies, Inc. Compounds and methods for modulating nonclassical cadherin-mediated functions
US20090305955A1 (en) * 2006-03-23 2009-12-10 Jean-Claude Paul Louis Monboisse Cyclopeptide with Anti-Cancer Activity Derived from Collagen Type IV
JP2013227250A (ja) * 2012-04-25 2013-11-07 Miyarisan Pharmaceutical Co Ltd Nrf2活性化剤およびその用途

Family Cites Families (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US6664367B1 (en) * 1994-07-21 2003-12-16 Biosynthema, Inc. Stable analogs of bioactive peptides containing disulfide linkages
JP5581490B2 (ja) * 2007-10-25 2014-09-03 ザ スクリプス リサーチ インスティテュート 抗体媒介による細菌のクオラムセンシングの破壊
JP2012180315A (ja) * 2011-03-02 2012-09-20 Kobe Gakuin タンパク質チロシンキナーゼ阻害活性を有する環状ペプチド化合物
US9227996B2 (en) * 2013-03-11 2016-01-05 Wisconsin Alumni Research Foundation Peptide-based quorum sensing inhibitors for the attenuation of virulence in Staphylococcus aureus

Patent Citations (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH0692862A (ja) * 1992-01-23 1994-04-05 Osamu Otani 腸内菌叢改善剤
WO1998036050A1 (fr) * 1997-02-14 1998-08-20 Nippoh Chemicals Co., Ltd. Clostridium butyricum ayant des effets preventifs et therapeutiques sur les hepatopathies, et agents de soutien du foie et aliments destines a l'alimentation humaine et animale contenant tous le milieu de culture de ladite bacterie
JP2002509073A (ja) * 1997-12-31 2002-03-26 アドヘレックス テクノロジーズ インコーポレイテッド オクルディン関連組織透過性を調節するための組成物および方法
US20050203025A1 (en) * 1998-05-05 2005-09-15 Adherex Technologies, Inc. Compounds and methods for modulating nonclassical cadherin-mediated functions
WO2003072034A2 (en) * 2002-02-21 2003-09-04 Rigel Pharmaceuticals, Inc. Cyclic peptides and analogs useful to treat allergies
US20090305955A1 (en) * 2006-03-23 2009-12-10 Jean-Claude Paul Louis Monboisse Cyclopeptide with Anti-Cancer Activity Derived from Collagen Type IV
JP2013227250A (ja) * 2012-04-25 2013-11-07 Miyarisan Pharmaceutical Co Ltd Nrf2活性化剤およびその用途

Non-Patent Citations (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Title
JPN6015016145; VIDAL, J. E. et al.: 'Evidence that the Agr-like quorum sensing system regulates the toxin production, cytotoxicity and pa' Molecular microbiology Vol.83, No.1, 2012, p.179-194 *
JPN6015016147; STEINER, E. et al.: 'An agr quorum sensing system that regulates granulose formation and sporulation in Clostridium aceto' Applied and Environmental Microbiology Vol.78, No.4, 2012, p.1113-1122 *
JPN6015016200; WOO, T. D. H. et al.: 'Inhibition of the cytotoxic effect of Clostridium difficile in vitro by Clostridium butyricum MIYAIR' Journal of Medical Microbiology Vol.60, 2011, p.1617-1625 *
JPN6015016203; COOKSLEY, C. M. et al.: 'Regulation of neurotoxin production and sporulation by a putative agrBD signaling system in proteoly' Applied and Environmental Microbiology Vol.76, No.33, 2010, p.4448-4460 *
JPN6015051862; LI, Y. et al.: Journal of Combinatorial Chemistry Vol.11, No.6, 2009, p.1066-1072 *
JPN6015051863; EHRLICH, A. et al.: Journal of Organic Chemistry Vol.61, No.25, 1996, p.8831-8838 *

Also Published As

Publication number Publication date
EP3103808B1 (en) 2018-08-22
EP3103808A1 (en) 2016-12-14
US20160355549A1 (en) 2016-12-08
WO2015119170A1 (ja) 2015-08-13
US10214561B2 (en) 2019-02-26
JPWO2015119170A1 (ja) 2017-03-23
EP3103808A4 (en) 2017-06-21

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP7012840B2 (ja) 乳酸菌及びその用途
Savadogo et al. Bacteriocins and lactic acid bacteria-a minireview
KR101599769B1 (ko) 신규한 락토코쿠스 종 균주 및 이의 용도
JP6076509B2 (ja) クロストリジウム属の菌の毒素産生抑制活性を有するペプチド
KR101995328B1 (ko) 항암 활성을 갖는 락토바실러스 퍼멘텀 WiKim0102 및 이를 유효성분으로 포함하는 조성물
TW200824577A (en) Feed additive and feed
CN101282743B (zh) 细菌素和新的细菌菌株
KR101047948B1 (ko) 박테리오신을 생산하는 유산균 및 이를 함유하는 생균제 조성물
KR101068531B1 (ko) 박테리오신을 생산하는 유산균주 및 이를 함유하는 가축용 복합 생균제 조성물
CN111565581A (zh) Iv型过敏用组合物
JP2018023326A (ja) 発酵物
Atta et al. Application of biotechnology for production, purification and characterization of peptide antibiotic produced by probiotic Lactobacillus plantarum, NRRL B-227
KR101086239B1 (ko) 박테리오신을 생산하는 유산균 및 이를 함유하는 육계용생균제 조성물
RU2009144577A (ru) Пептиды rumc, обладающие антимикробной активностью
KR20180137494A (ko) 장내 세균총 구성 비율 조정제, 의약품, 음식품 및 장내 세균총 구성 비율의 조정 방법
JP6117336B2 (ja) 新たに分離したバチルス・リケニフォルミス及びそれを利用したプロバイオティクス
KR101978455B1 (ko) 락토바실러스 살리바리우스 DJ-sa-01 균주 및 이를 포함하는 면역 증강용 조성물
KR101969132B1 (ko) 생쥐의 락토바실러스 루테리 및 이를 이용한 면역증진용 조성물
JP7387113B2 (ja) 新規ラクトバチルス属乳酸菌
JP7067827B1 (ja) インターフェロン産生促進剤
KR20180053169A (ko) 생쥐의 락토바실러스 존스니 및 이를 이용한 면역증진용 조성물
AU2011218596B2 (en) Bacteriocins and novel bacterial strains
KR20200070845A (ko) 락토바실러스 퍼멘텀 j2 균주에서 유래하는 시나모일 에스터라아제, 및 이의 제조 방법
CN102887945A (zh) 细菌素和新的细菌菌株
KR20040007855A (ko) 콜레스테롤 저하능을 갖는 스트렙토코커스 페시움 균주

Legal Events

Date Code Title Description
A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20161125

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20161128

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20161227

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20170110

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6076509

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250