従来、多結晶シリコン(poly−Si)等の半導体薄膜は薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)や太陽電池に広く利用されている。とりわけ、poly−SiTFTは、キャリア移動度が高いうえ、ガラス基板のような透明の絶縁基板上に作製できるという特徴を活かして、例えば、液晶表示装置、液晶プロジェクタや有機EL表示装置などの画素回路を構成するスイッチング素子として、或いは液晶駆動用ドライバの回路素子として広く用いられている。
ガラス基板上に高性能なTFTを作製する方法としては、一般に「高温プロセス」と呼ばれる製造方法がある。TFTの製造プロセスの中でも、工程中の最高温度が1000℃程度の高温を用いるプロセスを一般的に「高温プロセス」と呼んでいる。高温プロセスの特徴は、シリコンの固相成長により比較的良質の多結晶シリコンを成膜することができる点、シリコンの熱酸化により良質のゲート絶縁層を得ることができる点、及び清浄な多結晶シリコンとゲート絶縁層との界面を形成できる点である。高温プロセスではこれらの特徴により、高移動度でしかも信頼性の高い高性能TFTを安定的に製造することができる。
他方、高温プロセスは固相成長によりシリコン膜の結晶化を行うプロセスであるために、600℃程度の温度で48時間程度の長時間の熱処理を必要とする。これは大変長時間の工程であり、工程のスループットを高めるためには必然的に熱処理炉を多数必要とし、低コスト化が難しいという点が課題である。加えて、耐熱性の高い絶縁性基板として石英ガラスを使わざるを得ないため基板のコストが高く、大面積化には向かないとされている。
一方、工程中の最高温度を下げ、安価な大面積のガラス基板上にpoly−SiTFTを作製するための技術が「低温プロセス」と呼ばれる技術である。TFTの製造プロセスの中でも、最高温度が概ね600℃以下の温度環境下において比較的安価な耐熱性のガラス基板上にpoly−SiTFTを製造するプロセスは、一般に「低温プロセス」と呼ばれている。低温プロセスでは、発振時間が極短時間のパルスレーザーを用いてシリコン膜の結晶化を行うレーザー結晶化技術が広く使われている。レーザー結晶化とは、基板上のシリコン薄膜に高出力のパルスレーザー光を照射することによって瞬時に溶融させ、これが凝固する過程で結晶化する性質を利用する技術である。
しかしながら、このレーザー結晶化技術には幾つかの大きな課題がある。一つは、レーザー結晶化技術によって形成したポリシリコン膜の内部に局在する多量の捕獲準位である。この捕獲準位の存在により、電圧の印加によって本来能動層を移動するはずのキャリアが捕獲され、電気伝導に寄与できず、TFTの移動度の低下、閾値電圧の増大といった悪影響を及ぼす。更に、レーザー出力の制限によって、ガラス基板のサイズが制限されるといった課題もある。レーザー結晶化工程のスループットを向上させるためには、一回で結晶化できる面積を増やす必要がある。しかしながら、現状のレーザー出力には制限があるため、第7世代(1800mm×2100mm)といった大型基板にこの結晶化技術を採用する場合には、基板一枚を結晶化するために長時間を要する。
また、レーザー結晶化技術は一般的にライン状に成形されたレーザーが用いられ、これを走査させることによって結晶化を行なう。このラインビームは、レーザー出力に制限があるため基板の幅よりも短く、基板全面を結晶化するためには、レーザーを数回に分けて走査する必要がある。これによって基板内にはラインビームの継ぎ目の領域が発生し、二回走査されてしまう領域ができる。この領域は一回の走査で結晶化した領域とは結晶性が大きく異なる。そのため両者の素子特性は大きく異なり、デバイスのバラツキの大きな要因となる。最後に、レーザー結晶化装置は装置構成が複雑であり且つ、消耗部品のコストが高いため、装置コストおよびランニングコストが高いという課題がある。これによって、レーザー結晶化装置によって結晶化したポリシリコン膜を使用したTFTは製造コストが高い素子になってしまう。
このような基板サイズの制限、装置コストが高いといった課題を克服するため、「熱プラズマジェット結晶化法」と呼ばれる結晶化技術が研究されている(例えば、非特許文献1を参照)。本技術を以下に簡単に説明する。タングステン(W)陰極と水冷した銅(Cu)陽極を対向させ、DC電圧を印加すると両極間にアーク放電が発生する。この電極間に大気圧下でアルゴンガスを流すことによって、銅陽極に空いた噴出孔から熱プラズマが噴出する。熱プラズマとは、熱平衡プラズマであり、イオン、電子、中性原子などの温度がほぼ等しく、それらの温度が10000K程度を有する超高温の熱源である。このことから、熱プラズマは被熱物体を容易に高温に加熱することが可能であり、a−Si膜を堆積した基板が超高温の熱プラズマ前面を高速走査することによってa−Si膜を結晶化することができる。
このように装置構成が極めて単純であり、且つ大気圧下での結晶化プロセスであるため、装置を密閉チャンバ等の高価な部材で覆う必要が無く、装置コストが極めて安くなることが期待できる。また結晶化に必要なユーティリティは、アルゴンガスと電力と冷却水であるため、ランニングコストも安い結晶化技術である。
図9は、この熱プラズマを用いた半導体膜の結晶化方法を説明するための模式図である。
同図において、熱プラズマ発生装置31は、陰極32と、この陰極32と所定距離だけ離間して対向配置される陽極33とを備え構成される。陰極32は、例えばタングステン等の導電体からなる。陽極33は、例えば銅などの導電体からなる。また、陽極33は、中空に形成され、この中空部分に水を通して冷却可能に構成されている。また、陽極33には噴出孔(ノズル)34が設けられている。陰極32と陽極33の間に直流(DC)電圧を印加すると両極間にアーク放電が発生する。この状態において、陰極32と陽極33の間に大気圧下でアルゴンガス等のガスを流すことによって、上記の噴出孔34から熱プラズマ35を噴出させることができる。ここで「熱プラズマ」とは、熱平衡プラズマであり、イオン、電子、中性原子などの温度がほぼ等しく、それらの温度が10000K程度を有する超高温の熱源である。
このような熱プラズマを半導体膜の結晶化のための熱処理に利用することができる。具体的には、基板36上に半導体膜37(例えば、アモルファスシリコン膜)を形成しておき、当該半導体膜37に熱プラズマ(熱プラズマジェット)35を当てる。このとき、熱プラズマ35は、半導体膜37の表面と平行な第1軸(図示の例では左右方向)に沿って相対的に移動させながら半導体膜37に当てられる。すなわち、熱プラズマ35は第1軸方向に走査しながら半導体膜37に当てられる。ここで「相対的に移動させる」とは、半導体膜37(及びこれを支持する基板36)と熱プラズマ35とを相対的に移動させることを言い、一方のみを移動させる場合と両者をともに移動させる場合のいずれも含まれる。このような熱プラズマ35の走査により、半導体膜37が熱プラズマ35の有する高温によって加熱され、結晶化された半導体膜38(本例ではポリシリコン膜)が得られる(例えば、特許文献1を参照)。
図10は、最表面からの深さと温度の関係を示す概念図である。同図に示すように、熱プラズマ35を高速で移動させることにより、表面近傍のみを高温で処理することができる。熱プラズマ35が通り過ぎた後、加熱された領域は速やかに冷却されるので、表面近傍はごく短時間だけ高温になる。
このような熱プラズマは、点状領域に発生させるのが一般的である。熱プラズマは、陰極32からの熱電子放出によって維持されており、プラズマ密度の高い位置では熱電子放出がより盛んになるため、正のフィードバックがかかり、ますますプラズマ密度が高くなる。つまり、アーク放電は陰極の1点に集中して生じることとなり、熱プラズマは点状領域に発生する。
半導体膜の結晶化など、平板状の基材を一様に処理したい場合には、点状の熱プラズマを基材全体に渡って走査する必要があるが、走査回数を減らしてより短時間で処理できるプロセスを構築するには、熱プラズマの照射領域を広くすることが有効である。このため、長尺の熱プラズマを発生させ、一方向にのみ走査する技術が検討されている(例えば、特許文献2〜9を参照)。
また、点状の熱プラズマの間に絶縁体材料を挿入してチャンバを環状とすることで熱プラズマが環状となり、絶縁体材料を用いて環状のチャンバを狭いヒモ状に形成し一部を開口することで、長尺の熱プラズマを基材に曝すことが可能となることが報告されている。(例えば、非特許文献2を参照)この構造では、基材が環状チャンバの外周に配置される。
以下、本発明の実施の形態におけるプラズマ処理装置について図面を用いて説明する。
(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態1について、図1及び図2を参照して説明する。
図1(a)は、本発明の実施の形態1におけるプラズマ処理装置の構成を示すもので、誘導結合型プラズマトーチユニットの長尺方向に垂直な面で切った断面図である。図1(b)は、誘導結合型プラズマトーチユニットの長尺方向に平行で、かつ、基材に垂直な面で切った断面図である。図1(a)は図1(b)の破線A−A’で切った断面図である。図1(b)は図1(a)の破線B−B’で切った断面図、また、図2は、図1に示した誘導結合型プラズマトーチユニットの組立構成図であり、各部品(一部)の斜視図を並べたものである。
図1及び図2において、基材保持機構1上に基材2が載置されている。誘導結合型プラズマトーチユニットTは、基材保持機構1の外周を囲うように配置されている。誘導結合型プラズマトーチユニットTにおいて、導体製のソレノイドコイル3が第一石英ブロック4及び第二石英ブロック5の近傍に配置される。誘電体製の長尺チャンバ7は、第一石英ブロック4及び第二石英ブロック5によって囲まれた空間(長尺チャンバ7の内部空間)により画定される。
長尺チャンバ7のソレノイドコイル3に近い側の内壁面は、ソレノイドコイル3と平行な曲面である。このような構成では、ソレノイドコイル3の任意の部位において、ソレノイドコイル3から長尺チャンバ7までの距離が等しくなるので、小さい高周波電力で誘導結合性プラズマの発生が可能となり、効率の良いプラズマ生成が実現できる。
誘導結合型プラズマトーチユニットTは、全体が接地された導体製のシールド部材(図示しない)で囲われ、高周波の漏洩(ノイズ)が効果的に防止できるとともに、好ましくない異常放電などを効果的に防止できる。
長尺チャンバ7の内部空間は、第二石英ブロック5に設けた環状の溝と、第一石英ブロック4に囲まれている。つまり、長尺チャンバ7全体が誘電体で囲まれている構成である。また、長尺チャンバ7の内部の空間は環状である。ここでいう環状とは、一続きの閉じたヒモ状をなす形状を意味し、円形に限定されるものではない。本実施の形態においては、レーストラック形(2つの長辺をなす直線部と、その両端に2つの短辺をなす直線が連結されてなる、一続きの閉じたヒモ状の形状)の長尺チャンバ7を例示している。長尺チャンバ7内部の空間に発生したプラズマPは、長尺チャンバ7におけるスリット状の開口部8としてのプラズマ噴出口より基材2に向けて噴出する。また、長尺チャンバ7の長手方向とプラズマ噴出口(開口部8)の長手方向とは平行に配置されている。
第二石英ブロック5にプラズマガスマニホールド9が設けられている。プラズマガス供給配管10よりプラズマガスマニホールド9に供給されたガスは、第二石英ブロック5に設けられたガス導入部としてのプラズマガス供給穴11(貫通穴)を介して、長尺チャンバ7内部の空間に導入される。このような構成により、長手方向に均一なガス流れを簡単に実現できる。プラズマガス供給配管10へ導入するガスの流量は、その上流にマスフローコントローラなどの流量制御装置を備えることにより制御される。
プラズマガス供給穴11は、長手方向に長尺のスリット状の穴を設けたものであるが、長手方向に丸い穴状のものを複数設けたものであってもよい。
なお、図示しないが基材保持機構1に近い部分に、シールドガス供給口としてのシールドガスノズルを配置してもよい。プラズマ生成に適したプラズマガスとは別にシールドガスを供給して、大気中の酸素、二酸化炭素など、処理に不要、或いは悪影響を及ぼすガスのプラズマ照射面への混入を低減することも可能となる。なお、シールドガス供給口は、プラズマ噴出口(開口部8)の長尺方向と平行な向きに長尺な形状をもつスリットであってもよいし、或いは、プラズマ噴出口(開口部8)の長尺方向と平行な向きに並んだ多数の穴であってもよい。
ソレノイドコイル3は中空の銅管からなり、内部が冷媒流路となっている。すなわち、水などの冷媒を流すことで、冷却が可能である。また、第一石英ブロック4及び第二石英ブロック5には、プラズマ噴出口(開口部8)の長手方向に対して平行に冷媒流路が設けられてもよい。また、第一石英ブロック4及び第二石英ブロック5とソレノイドコイル3とを接着剤6によって接合することで、接着剤6を介して第一石英ブロック4及び第二石英ブロック5の冷却が可能である。
長方形のスリット状のプラズマ噴出口(開口部8)が設けられ、基材保持機構1(或いは、基材保持機構1上の基材2)は、プラズマ噴出口(開口部8)と対向して配置されている。この状態で、長尺チャンバ7内にガスを供給しつつ、プラズマ噴出口(開口部8)から基材2に向けてガスを噴出させながら、図示していない高周波電源よりソレノイドコイル3に高周波電力を供給することにより、長尺チャンバ7内部の空間にプラズマPを発生させ、プラズマ噴出口(開口部8)からプラズマを基材2に照射することにより、基材2上の薄膜22をプラズマ処理することができる。プラズマ噴出口(開口部8)の長手方向に対して垂直な向きに、長尺チャンバ7と基材保持機構1とを相対的に移動させることで、基材2を処理する。つまり、図1(a)の左右方向へ、図1(b)の紙面に垂直な方向へ、誘導結合型プラズマトーチユニットTまたは基材保持機構1を動かす。
長尺チャンバ7内に供給するガスとして種々のものが使用可能だが、プラズマの安定性、着火性、プラズマに暴露される部材の寿命などを考えると、不活性ガス主体であることが望ましい。なかでも、Arガスが典型的に用いられる。Arのみでプラズマを生成させた場合、プラズマは相当高温となる(10,000K以上)。
なお、本構成においては、プラズマ噴射口(開口部8)の長手方向の長さが、基材2の幅以上となっているので、一度の走査(誘導結合型プラズマトーチユニットTと基材保持機構1とを相対的に移動すること)で基材2の表面近傍の薄膜22の全体を処理することができる。
このようなプラズマ処理装置において、長尺チャンバ7内にガス噴出口(開口部8)よりArまたはAr+H2ガスを供給しつつ、プラズマ噴出口(開口部8)から基材2に向けてガスを噴出させながら、図示していない高周波電源より13.56MHzの高周波電力を、ソレノイドコイル3に供給することにより、長尺チャンバ7内部の空間に高周波電磁界を発生させることでプラズマPを発生させ、プラズマ噴出口(開口部8)からプラズマを基材2に照射するとともに走査することで、半導体膜の結晶化などの熱処理を行うことができる。
プラズマ発生の条件としては、プラズマ噴出口(開口部8)と基材2間の距離=0.1〜5mm、走査速度=50〜3000mm/s、プラズマガス総流量=1〜100SLM、Ar+H2ガス中のH2濃度=0〜10%、シールドガス(N2)流量=1〜100SLM、高周波電力=0.5〜10kW程度の値が適切である。ただし、これらの諸量のうち、ガス流量及び電力は、プラズマ噴出口(開口部8)の長さ100mm当たりの値である。ガス流量や電力などのパラメータは、プラズマ噴出口(開口部8)の長さに比例した量を投入することが適切と考えられるためである。
このように、プラズマ噴出口(開口部8)の長手方向と、基材保持機構1とが平行に配置されたまま、プラズマ噴出口(開口部8)の長手方向とは垂直な向きに、長尺チャンバ7と基材保持機構1とを相対的に移動するので、生成すべきプラズマの長さと、基材2の処理長さがほぼ等しくなるように構成することが可能となる。
従来例に示した特許文献6には、プラズマトーチ内部の構造は詳細に開示されていないが、一般的な円筒型の誘導結合型プラズマトーチと同様、一塊の直方体形状の空間であるものと推察される。このような空間に大気圧誘導結合型プラズマを発生させると、円環状の(ドーナツ形状の)プラズマがチャンバ内に発生しやすい。すなわち、直方体形状のチャンバ内に円環状のプラズマが発生するので、チャンバ内はその一部のみが非常に高密度のプラズマとなり、長尺方向に均一な処理を行うことが困難である。
また、従来例に示した非特許文献2には、高温プラズマをレーストラック形の長尺チャンバに閉じ込めることで、高温プラズマが安定的に維持できることが報告されている。この構造による長尺プラズマトーチでは、レーストラックを含むプラズマトーチユニットが基材及び基材保持機構の外周に位置する。
同例でも議論されているが、環状プラズマの性質上、ドーナツ形状は小さくなろうとするため、高温プラズマがチャンバ内で基材から離れる方向に寄せられる。このことから、十分な熱効率を得ることが出来ない。一方、本実施の形態においては、長尺の環状チャンバを構成しているため、その形状に沿ってレーストラック形の細長い長尺のプラズマPが発生する。また基材の外周に環状チャンバを配置していることから、高温プラズマは基材に近付く方向に引寄せられる。したがって、従来例に比べて、格段に長尺方向に均一で熱効率のよい処理を行うことができる。
(実施の形態2)
以下、本発明の実施の形態2について、図3及び図4を参照して説明する。
図3(a)は、本発明の実施の形態2におけるプラズマ処理装置の構成を示すもので、誘導結合型プラズマトーチユニットの長尺方向に垂直な面で切った断面図であり、図1(a)に相当する。図3(b)は、誘導結合型プラズマトーチユニットの長尺方向に平行で、かつ、基材に垂直な面で切った断面図である。
図3(a)は図3(b)の破線A−A’で切った断面図である。図3(b)は図3(a)の破線B−B’で切った断面図、また、図4は、図3に示した誘導結合型プラズマトーチユニットの組立構成図であり、各部品(一部)の斜視図を並べたものである。実施の形態2及び以下の実施の形態において、実施の形態1と同様な構成要素のものは同じ符号を用い、説明は省略する。
実施の形態1との違いは、プラズマガス供給配管10を第一石英ブロック4又は第二石英ブロック5における基材に対して平行な方向となる側面に接続せず、長尺チャンバ7の長手方向に対して垂直な方向の側面に接続し、プラズマガス供給配管10から長尺チャンバ7へガスを導入するプラズマガス供給穴11を設ける点である。このことで、第一石英ブロック4及び第二石英ブロック5における基材の移動方向に垂直な面に凸部が無い構造とすることができる。
このような構成では、ソレノイドコイル3を第一石英ブロック4及び第二石英ブロック5の外周に任意に配置することができ、とくにソレノイドコイル3を基材保持機構と垂直であって長尺チャンバ7と同一平面上に配置することができる。したがって、ソレノイドコイル3から長尺チャンバ7までの距離が等しく且つ最も近く配置できるので、小さい高周波電力で誘導結合性プラズマの発生が可能となり、効率の良いプラズマ生成が実現できる。
また、前述した基材の移動方向に垂直な面における長尺チャンバ7に最も近い領域に凹部を配置しても良い。長尺チャンバ7のより近傍にソレノイドコイル3を配置でき、さらに効率の良いプラズマ生成をすることが可能となる。
(実施の形態3)
以下、本発明の実施の形態3について、図5を参照して説明する。
図5は本発明の実施の形態3におけるプラズマ処理装置の構成を示すもので、誘導結合型プラズマトーチユニットTの長尺方向に垂直な面で切った断面図であり、図1(a)に相当する。実施の形態1及び実施の形態2との違いは、長尺チャンバ7を石英ブロックに空間を設けて成すものでなく、中空の第一石英チューブ12を環状に繋ぐことによって環状の長尺チャンバ7を成している。
このような中空の石英チューブの一部の基材に対面する領域に開口部をプラズマ噴出口(開口部8)として設ける。また、プラズマガス供給配管10を長尺チャンバ7に接続することで石英チューブにガスを供給することができる。
このような構成では、ソレノイドコイル3の任意の部位において、ソレノイドコイル3から長尺チャンバまでの距離が等しく且つ最も近く配置できるので、小さい高周波電力で誘導結合性プラズマの発生が可能となり、効率の良いプラズマ生成が実現できる。また、石英チューブの接続で構成出来ることから、長尺チャンバ7の作成が容易となることや、誘導結合型プラズマトーチユニットTを簡素に構成できるという利点がある。
(実施の形態4)
以下、本発明の実施の形態4について、図6を参照して説明する。
図6(a)は、本発明の実施の形態4におけるプラズマ処理装置の構成を示すもので、誘導結合型プラズマトーチユニットの長尺方向に垂直な面で切った断面図であり、図1(a)に相当する。図6(b)は、誘導結合型プラズマトーチユニットTの長尺方向に平行で、かつ、基材に垂直な面で切った断面図である。図6(a)は図6(b)の破線A−A’で切った断面図である。
実施の形態1、2、3においては、基材保持機構1の上面側のみに基材2aを載置してプラズマ処理を行う片面処理の構成であったが、実施の形態4においては基材保持機構1の下面側にも基材2bを真空吸着や静電吸着またはクランプで固定するなど公知の保持方法によって基材を固定することで、一巡の工程で基材保持機構の表側の基材と裏側の基材を同時にプラズマ処理することができる。
このような構成により、基材を2倍のスループットが得られ、より工程コストを安価に出来る利点がある。また、基材保持機構を工夫することで、例えば基材保持機構を誘導結合型プラズマトーチユニットTの移動方向の前後、言い換えれば図6(a)紙面の左右方向、または/および誘導結合型プラズマトーチユニットTの移動方向の左右、言い換えれば図6(a)紙面の手前奥方向、に設けて基材を保持することで、基材の表面と裏面を同時にプラズマ処理することが可能となる。このような構成により、表裏で対照的な温度プロファイルを得るプラズマ処理を実施することが可能となる。
(実施の形態5)
以下、本発明の実施の形態5について、図8を参照して説明する。
図8は本発明の実施の形態5におけるプラズマ処理装置の構成を示すもので、誘導結合型プラズマトーチユニットの長尺方向に垂直な面で切った断面図であり、図1(a)に相当する。
実施の形態5においては、第二石英チューブ13を第一石英チューブ12の環状を成す面と平行に配置した構成となっている。
このような構成では、2つのガス供給系に別種のガスを任意に制御できる。このような構成により、エッチングガス、ドーピングガス、デポジションガスなど種々のガスを追加ガスとして供給することで、基材表面において種々の反応を起こすことができる。
例えば、シリコン窒化膜のパターニングに用いる場合、半導体膜上に窒化膜をCVD法で50nm成膜し、レジストを印刷法等でパターニングする。第一石英チューブ12にArを10SLMとCF4を0.1SLMとO2を0.05SLM導入し高周波電力を10Kw印加しプラズマを生成する。また第二石英チューブ13にはAr10SLMと気化させたH2Oを0.1SLM導入し高周波電力を10Kw印加しプラズマを生成する。前述したレジストパターニングした窒化膜付き基板をプラズマ処理することで、第一石英チューブ12で生成したプラズマでは窒化膜をエッチングし、第二石英チューブ13で生成したプラズマではレジストをアッシングすることでシリコン上に窒化膜をパターニングすることができる。
また、例えばシリコン基板にボロンをドーピングする場合には、第一石英チューブ12にArを10SLMとBF3を0.1SLMを導入し高周波電力を10Kw印加しプラズマを生成する。また第二石英チューブ13にはArを10SLM導入し高周波電力を10Kw印加し高温の熱プラズマを生成し、シリコン基板をプラズマ処理することで、第一石英チューブ12で生成したプラズマではボロンをドーピングし、第二石英チューブ13では熱処理を行うことで前記ドーピングしたボロンを活性化及び拡散させることができる。また、例えば第一石英チューブ12にArを10SLMと気化させたTEOSを0.1SLMとO2を0.05SLM導入し高周波電力を1Kw印加しプラズマを生成する。
また第二石英チューブ13にはArを10SLM導入し高周波電力を8Kw印加し高温の熱プラズマを生成し、シリコン基板をプラズマ処理することで、シリコン基板表面に酸化膜を形成できる。また、第一石英チューブ12にはTEOSの他にもシラン系のガスと酸素を同時に導入しても同様の効果が得られるし、同時にB2H6を導入した場合にはBSGになり、PH3を導入した場合にはPSGとすることも可能である。
また第一石英チューブ12及び又は第二石英チューブ13を任意の位置に配置することで、熱プロファイルを任意に設定できる利点がある。例えば、第一石英チューブ12と基材のギャップを0.2mmとし、第二石英チューブ13と基材とのギャップを2mmとし且つ長尺のスリットを基材の進行方向に向けておく。第一石英チューブ12及び第二石英チューブ13との距離を10mmとし、トーチユニットの移動速度を100cm/秒とする。このような構成にすると、第一石英チューブ12によって基材が急激に加熱され第二石英チューブ13によって緩やかに冷却することが可能となる。
他にも、第一石英チューブ12と基材のギャップを2mmとし且つ長尺のスリットを基材の進行方向と反対に向けておく。第二石英チューブ13と基材とのギャップを0.2mmとする。第一石英チューブ12及び第二石英チューブ13との距離を1mmとし、トーチユニットの移動速度を100cm/秒とする。このような構成にすると、第一石英チューブ12によって基材が緩やかに過熱され第二石英チューブ13によって急激に加熱され急冷される熱プロファイルが得られる。
なお、実施の形態5では、第一の石英チューブと第二の石英チューブを配置した構成を図示したが、環状チャンバをさらに増やすことで多段のプラズマ処理を行うことも可能であるし、種々のプラズマガスを用いることで多種の反応性プラズマを得ることができ、これらの処理を組合せる事で多様なプラズマ処理が実現可能であることは言うまでもない。
(実施の形態6)
以下、本発明の実施の形態6について、図9及び図10を参照して説明する。
図9(a)は本発明の実施の形態6におけるプラズマ処理装置の構成を示すもので、誘導結合型プラズマトーチユニットの長尺方向に垂直な面で切った断面図であり、図1(a)に相当する。また、図9(b)は、誘導結合型プラズマトーチユニットの長尺方向に平行な面で切った断面図であり、図1(b)に相当する。
実施の形態6においては、ソレノイドコイル3の外側にソレノイドコイル3を取り囲むように長尺チャンバ7が設けられ、長尺チャンバ7の外側に上下二つの基材2を配置した構成となっている。ソレノイドコイル3の上側と下側との間での異常放電を防止するため、絶縁板14がソレノイドコイル3の内部に挿入されている。
このような構成によれば、複数の基材2を同時に処理することができる。
実施の形態6では、長尺チャンバ7及びソレノイドコイル3の形状を長尺状に構成し、2つの基材2を同時に処理できるよう構成したが、任意の多角形状(n角形)に構成し、n個の基材2を同時に処理できるよう構成してもよい。
また、第一石英ブロック4及び第二石英ブロック5を、2つの基材2のそれぞれに対向する2つの誘電体ブロックで構成したが、図10に示すように、基材2が開口部8の長手方向に対して垂直な向きに長尺チャンバ7に対して相対的に移動する方向に分けられた2つの誘電体ブロックで構成してもよい。
(実施の形態7)
以下、本発明の実施の形態7について、図11を参照して説明する。
図11は本発明の実施の形態7におけるプラズマ処理装置の構成を示すもので、誘導結合型プラズマトーチユニットの長尺方向に垂直な面で切った断面図であり、図1(a)に相当する。
実施の形態7においては、ソレノイドコイル3と平行して長尺チャンバ7が設けられ、長尺チャンバ7の外側に上下二つの基材2を配置した構成となっている。また、第一石英ブロック4及び第二石英ブロック5を、基材2が開口部8の長手方向に対して垂直な向きに長尺チャンバ7に対して相対的に移動する方向に分けられた2つの誘電体ブロックで構成している。
このような構成によっても、複数の基材2を同時に処理することができる。
以上述べたプラズマ処理装置及び方法は、本発明の適用範囲のうちの典型例を例示したに過ぎない。
例えば、誘導結合型プラズマトーチユニットTを、固定された基材保持機構1に対して走査してもよいが、固定された誘導結合型プラズマトーチユニットTに対して、基材保持機構1を走査してもよい。また、環状チャンバを構成する材料を石英にしてもよいし、窒化ケイ素や酸化アルミなどの種々の誘電体を用いてもよい。また、環状チャンバの構成は、溝を設けたブロックを張り合わせたものや種々の形状のチューブを用いても良いし、その他の方法を用いてもよい。
また、本発明の種々の構成によって、基材2の表面近傍を高温処理することが可能となる。それにより、従来例で詳しく述べたTFT用半導体膜の結晶化や太陽電池用半導体膜の改質に適用可能であることは勿論、プラズマディスプレイパネルの保護層の清浄化や脱ガス低減、シリカ微粒子の集合体からなる誘電体層の表面平坦化や脱ガス低減、種々の電子デバイスのリフロー、固体不純物源を用いたプラズマドーピングなど、様々な表面処理に適用できる。また、太陽電池の製造方法としては、シリコンインゴットを粉砕して得られる粉末を基材上に塗布し、これにプラズマを照射して溶融させ多結晶シリコン膜を得る方法にも適用可能である。
また、プラズマの着火を容易にするために、着火源を用いることも可能である。着火源としては、ガス給湯器などに用いられる点火用スパーク装置などを利用できる。
また、説明においては簡単のため「熱プラズマ」という言葉を用いているが、熱プラズマと低温プラズマの区分けは厳密には難しく、また、例えば、田中康規「熱プラズマにおける非平衡性」プラズマ核融合学会誌、Vol.82、No.8(2006)pp.479−483において解説されているように、熱的平衡性のみでプラズマの種類を区分することも困難である。本発明は、基材を熱処理することを一つの目的としており、熱プラズマ、熱平衡プラズマ、高温プラズマなどの用語にとらわれず、高温のプラズマを照射する技術に関するものに適用可能である。
また、基材の表面近傍をごく短時間だけ均一に高温熱処理する場合について詳しく例示したが、反応ガスによるプラズマまたはプラズマと反応ガス流を同時に基材へ照射して基材を低温プラズマ処理する場合においても、本発明は適用できる。プラズマガスに反応ガスを混ぜることにより、反応ガスによるプラズマを基材へ照射し、エッチングやCVDが実現できる。
或いは、プラズマガスとしては希ガスまたは希ガスに少量のH2ガスを加えたガスを用いつつ、シールドガスとして反応ガスを含むガスを供給することによって、プラズマと反応ガス流を同時に基材へ照射し、エッチング、CVD、ドーピングなどのプラズマ処理を実現することもできる。プラズマガスとしてアルゴンを主成分とするガスを用いると、実施例で詳しく例示したように、熱プラズマが発生する。
一方、プラズマガスとしてヘリウムを主成分とするガスを用いると、比較的低温のプラズマを発生させることができる。このような方法で、基材をあまり加熱することなく、エッチングや成膜などの処理が可能となる。エッチングに用いる反応ガスとしては、ハロゲン含有ガス、例えば、CxFy(x、yは自然数)、SF6などがあり、シリコンやシリコン化合物などをエッチングすることができる。反応ガスとしてO2を用いれば、有機物の除去、レジストアッシングなどが可能となる。CVDに用いる反応ガスとしては、モノシラン、ジシランなどがあり、シリコンやシリコン化合物の成膜が可能となる。
或いは、TEOS(Tetraethoxysilane)に代表されるシリコンを含有した有機ガスとO2の混合ガスを用いれば、シリコン酸化膜を成膜することができる。その他、撥水性・親水性を改質する表面処理など、種々の低温プラズマ処理が可能である。従来技術(例えば、特許文献7に記載のもの)に比較すると、誘導結合型であるため、単位体積あたり高いパワー密度を投入してもアーク放電に移行しにくいため、より高密度なプラズマが発生可能であり、その結果、速い反応速度が得られ、基材の所望の被処理領域全体を短時間で効率よく処理することが可能となる。