JP2013120687A - プラズマ処理装置及びプラズマ処理方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】基材の表面近傍をごく短時間だけ均一に高温熱処理するに際して、或いは、反応ガスによるプラズマまたはプラズマと反応ガス流を同時に基材へ照射して基材を低温プラズマ処理するに際して、プラズマを安定的かつ効率的に発生させ、基材の所望の被処理領域全体を短時間で効率よく処理することができるプラズマ処理装置及び方法を提供することを目的とする。
【解決手段】誘導結合型プラズマトーチユニットTにおいて、ソレノイドコイル3が、第一石英ブロック4内部に挿入された第二石英ブロック5に設けた凹部に配置される。環状の長尺チャンバ内部の空間7に発生したプラズマPは、長尺チャンバにおけるスリット状の開口部としてのプラズマ噴出口8より基材2に向けて噴出する。プラズマ噴出口8の長手方向に対して垂直な向きに、長尺チャンバと基材載置台1とを相対的に移動させることで、基材2を処理する。
【選択図】図1
【解決手段】誘導結合型プラズマトーチユニットTにおいて、ソレノイドコイル3が、第一石英ブロック4内部に挿入された第二石英ブロック5に設けた凹部に配置される。環状の長尺チャンバ内部の空間7に発生したプラズマPは、長尺チャンバにおけるスリット状の開口部としてのプラズマ噴出口8より基材2に向けて噴出する。プラズマ噴出口8の長手方向に対して垂直な向きに、長尺チャンバと基材載置台1とを相対的に移動させることで、基材2を処理する。
【選択図】図1
Description
本発明は、熱プラズマを基材に照射して基材を処理する熱プラズマ処理や、反応ガスによるプラズマまたはプラズマと反応ガス流を同時に基材へ照射して基材を処理する低温プラズマ処理などの、プラズマ処理装置及びプラズマ処理方法に関するものである。
従来、多結晶シリコン(poly−Si)等の半導体薄膜は薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)や太陽電池に広く利用されている。とりわけ、poly−SiTFTは、キャリア移動度が高いうえ、ガラス基板のような透明の絶縁基板上に作製できるという特徴を活かして、例えば、液晶表示装置、液晶プロジェクタや有機EL表示装置などの画素回路を構成するスイッチング素子として、或いは液晶駆動用ドライバの回路素子として広く用いられている。
ガラス基板上に高性能なTFTを作製する方法としては、一般に「高温プロセス」と呼ばれる製造方法がある。TFTの製造プロセスの中でも、工程中の最高温度が1000℃程度の高温を用いるプロセスを一般的に「高温プロセス」と呼んでいる。高温プロセスの特徴は、シリコンの固相成長により比較的良質の多結晶シリコンを成膜することができる点、シリコンの熱酸化により良質のゲート絶縁層を得ることができる点、及び清浄な多結晶シリコンとゲート絶縁層との界面を形成できる点である。高温プロセスではこれらの特徴により、高移動度でしかも信頼性の高い高性能TFTを安定的に製造することができる。
他方、高温プロセスは固相成長によりシリコン膜の結晶化を行うプロセスであるために、600℃程度の温度で48時間程度の長時間の熱処理を必要とする。これは大変長時間の工程であり、工程のスループットを高めるためには必然的に熱処理炉を多数必要とし、低コスト化が難しいという点が課題である。加えて、耐熱性の高い絶縁性基板として石英ガラスを使わざるを得ないため基板のコストが高く、大面積化には向かないとされている。
一方、工程中の最高温度を下げ、安価な大面積のガラス基板上にpoly−SiTFTを作製するための技術が「低温プロセス」と呼ばれる技術である。TFTの製造プロセスの中でも、最高温度が概ね600℃以下の温度環境下において比較的安価な耐熱性のガラス基板上にpoly−SiTFTを製造するプロセスは、一般に「低温プロセス」と呼ばれている。低温プロセスでは、発振時間が極短時間のパルスレーザーを用いてシリコン膜の結晶化を行うレーザー結晶化技術が広く使われている。レーザー結晶化とは、基板上のシリコン薄膜に高出力のパルスレーザー光を照射することによって瞬時に溶融させ、これが凝固する過程で結晶化する性質を利用する技術である。
しかしながら、このレーザー結晶化技術には幾つかの大きな課題がある。一つは、レーザー結晶化技術によって形成したポリシリコン膜の内部に局在する多量の捕獲準位である。この捕獲準位の存在により、電圧の印加によって本来能動層を移動するはずのキャリアが捕獲され、電気伝導に寄与できず、TFTの移動度の低下、閾値電圧の増大といった悪影響を及ぼす。
更に、レーザー出力の制限によって、ガラス基板のサイズが制限されるといった課題もある。レーザー結晶化工程のスループットを向上させるためには、一回で結晶化できる面積を増やす必要がある。しかしながら、現状のレーザー出力には制限があるため、第7世代(1800mm×2100mm)といった大型基板にこの結晶化技術を採用する場合には、基板一枚を結晶化するために長時間を要する。
また、レーザー結晶化技術は一般的にライン状に成形されたレーザーが用いられ、これを走査させることによって結晶化を行なう。このラインビームは、レーザー出力に制限があるため基板の幅よりも短く、基板全面を結晶化するためには、レーザーを数回に分けて走査する必要がある。これによって基板内にはラインビームの継ぎ目の領域が発生し、二回走査されてしまう領域ができる。この領域は一回の走査で結晶化した領域とは結晶性が大きく異なる。そのため両者の素子特性は大きく異なり、デバイスのバラツキの大きな要因となる。
最後に、レーザー結晶化装置は装置構成が複雑であり且つ、消耗部品のコストが高いため、装置コストおよびランニングコストが高いという課題がある。これによって、レーザー結晶化装置によって結晶化したポリシリコン膜を使用したTFTは製造コストが高い素子になってしまう。
このような基板サイズの制限、装置コストが高いといった課題を克服するため、「熱プラズマジェット結晶化法」と呼ばれる結晶化技術が研究されている(例えば、非特許文献1を参照)。本技術を以下に簡単に説明する。タングステン(W)陰極と水冷した銅(Cu)陽極を対向させ、DC電圧を印加すると両極間にアーク放電が発生する。この電極間に大気圧下でアルゴンガスを流すことによって、銅陽極に空いた噴出孔から熱プラズマが噴出する。
熱プラズマとは、熱平衡プラズマであり、イオン、電子、中性原子などの温度がほぼ等しく、それらの温度が10000K程度を有する超高温の熱源である。このことから、熱プラズマは被熱物体を容易に高温に加熱することが可能であり、a−Si膜を堆積した基板が超高温の熱プラズマ前面を高速走査することによってa−Si膜を結晶化することができる。
このように装置構成が極めて単純であり、且つ大気圧下での結晶化プロセスであるため、装置を密閉チャンバ等の高価な部材で覆う必要が無く、装置コストが極めて安くなることが期待できる。また結晶化に必要なユーティリティは、アルゴンガスと電力と冷却水であるため、ランニングコストも安い結晶化技術である。
図5は、この熱プラズマを用いた半導体膜の結晶化方法を説明するための模式図である。
同図において、熱プラズマ発生装置31は、陰極32と、この陰極32と所定距離だけ離間して対向配置される陽極33とを備え構成される。陰極32は、例えばタングステン等の導電体からなる。陽極33は、例えば銅などの導電体からなる。また、陽極33は、中空に形成され、この中空部分に水を通して冷却可能に構成されている。また、陽極33には噴出孔(ノズル)34が設けられている。陰極32と陽極33の間に直流(DC)電圧を印加すると両極間にアーク放電が発生する。
この状態において、陰極32と陽極33の間に大気圧下でアルゴンガス等のガスを流すことによって、上記の噴出孔34から熱プラズマ35を噴出させることができる。ここで「熱プラズマ」とは、熱平衡プラズマであり、イオン、電子、中性原子などの温度がほぼ等しく、それらの温度が10000K程度を有する超高温の熱源である。
このような熱プラズマを半導体膜の結晶化のための熱処理に利用することができる。具体的には、基板36上に半導体膜37(例えば、アモルファスシリコン膜)を形成しておき、当該半導体膜37に熱プラズマ(熱プラズマジェット)35を当てる。このとき、熱プラズマ35は、半導体膜37の表面と平行な第1軸(図示の例では左右方向)に沿って相対的に移動させながら半導体膜37に当てられる。すなわち、熱プラズマ35は第1軸方向に走査しながら半導体膜37に当てられる。
ここで「相対的に移動させる」とは、半導体膜37(及びこれを支持する基板36)と熱プラズマ35とを相対的に移動させることを言い、一方のみを移動させる場合と両者をともに移動させる場合のいずれも含まれる。このような熱プラズマ35の走査により、半導体膜37が熱プラズマ35の有する高温によって加熱され、結晶化された半導体膜38(本例ではポリシリコン膜)が得られる(例えば、特許文献1を参照)。
図6は、最表面からの深さと温度の関係を示す概念図である。同図に示すように、熱プラズマ35を高速で移動させることにより、表面近傍のみを高温で処理することができる。熱プラズマ35が通り過ぎた後、加熱された領域は速やかに冷却されるので、表面近傍はごく短時間だけ高温になる。
このような熱プラズマは、点状領域に発生させるのが一般的である。熱プラズマは、陰極32からの熱電子放出によって維持されており、プラズマ密度の高い位置では熱電子放出がより盛んになるため、正のフィードバックがかかり、ますますプラズマ密度が高くなる。つまり、アーク放電は陰極の1点に集中して生じることとなり、熱プラズマは点状領域に発生する。
半導体膜の結晶化など、平板状の基材を一様に処理したい場合には、点状の熱プラズマを基材全体に渡って走査する必要があるが、走査回数を減らしてより短時間で処理できるプロセスを構築するには、熱プラズマの照射領域を広くすることが有効である。このため、古くから熱プラズマを大面積に発生させる技術が検討されている。
例えば、プラズマトーチの外ノズルより噴射するプラズマジェットに、外ノズルの中心軸線と交差する方向でプラズマジェットを広幅化させるための広幅化ガスを2ケ所から同時に噴出し、プラズマジェットを広幅化させる方法が開示されている(例えば、特許文献2を参照)。或いは、ノズル通路の口部が、当該ノズル通路の軸芯に対して所定角度で傾斜していることを特徴とするプラズマノズルを設け、ノズル通路を構成するケーシング、またはそのケーシングの一部を、その長手軸芯回りに高速で回転させ、プラズマノズルをワークピースに沿って通過移動させる方法が開示されている(例えば、特許文献3を参照)。
また、少なくとも一つの偏芯して配置されたプラズマノズルを持つ回転ヘッドを設けたものが開示されている(例えば、特許文献4を参照)。
なお、大面積を短時間で処理することを目的としたものではないが、熱プラズマを用いた溶接方法として、帯状電極を用い、その幅方向が溶接線方向となるように配置して溶接することを特徴とする高速ガスシールドアーク溶接方法が開示されている(例えば、特許文献5を参照)。
また、扁平な直方体状の絶縁体材料を用いた、線状の細長い形状をなす誘導結合型プラズマトーチが開示されている(例えば、特許文献6を参照)。
なお、長尺の電極を用いた細長い線状のプラズマを生成する方法が開示されている(例えば、特許文献7を参照)。熱プラズマを発生させるものと記載されているが、これは低温プラズマを発生させるものであり、熱処理に適した構成ではない。仮に熱プラズマを発生させたとすると、電極を用いた容量結合型であるため、アーク放電が一箇所に集中し、長尺方向に均一な熱プラズマを発生させることは困難と推察される。一方、低温プラズマ処理装置としては、エッチングガスやCVD(Chemical Vapor Deposition)用のガスをプラズマ化することにより、エッチングや成膜などのプラズマ処理が可能な装置である。
また、マイクロストリップラインを用いて長尺プラズマを生成する方法が開示されている(例えば、特許文献8を参照)。この構成では、プラズマに接触するチャンバ壁面が完全には冷却できない(水冷流路によって囲まれていない)ので、熱プラズマ源としては動作できないものと考えられる。
また、複数の放電電極をライン状に並べることにより、線状の長尺プラズマトーチを形成するものが開示されている(例えば、特許文献9を参照)。
S.Higashi, H.Kaku,T.Okada,H.Murakami and S.Miyazaki,Jpn.J.Appl.Phys.45,5B(2006)pp.4313−4320
しかしながら、半導体の結晶化など、ごく短時間だけ基材の表面近傍を高温処理する用途に対して、従来の熱プラズマを大面積に発生させる技術は有効ではなかった。
従来例に示した特許文献2に記載の、熱プラズマを大面積に発生させる技術においては、広幅化はされるものの、広幅化された領域における温度分布は100℃以上となっており、均一な熱処理の実現は不可能である。
また、従来例に示した特許文献3、4に記載の、熱プラズマを大面積に発生させる技術においては、本質的には熱プラズマを揺動させるものであるから、実質的に熱処理されている時間は、回転させずに走査した場合と比べて短くなるので、大面積を処理する時間が特段短くなるものではない。また、均一処理のためには回転速度を走査速度に比べて十分に大きくする必要があり、ノズルの構成が複雑化することは避けられない。
また、従来例に示した特許文献5に記載の技術は溶接技術であり、大面積を均一に処理するための構成ではない。仮にこれを大面積処理用途に適用しようとしても、この構成においては点状のアークが帯状電極に沿って振動するので、時間平均すると均一にプラズマが発生するものの、瞬間的には不均一なプラズマが生じている。したがって、大面積の均一処理には適用できない。
また、従来例に示した特許文献6に記載の技術は、非特許文献1や特許文献1に開示されているDCアーク放電を用いたものと異なり、誘導結合型の高周波プラズマトーチであることが特徴である。無電極放電であることから、熱プラズマの安定性に優れ(時間変化が小さい)、電極材料の基材への混入(コンタミネーション)が少ないという利点がある。
さて、誘導結合型プラズマトーチにおいては、高温プラズマから絶縁体材料を保護するために、絶縁体材料を二重管構成としてその間に冷媒を流す方法が一般的に採用されている。しかしながら、従来例に示した特許文献6に記載の技術においては、絶縁体材料が扁平な直方体状をなしていることから、これを単純に二重管構成としただけでは、十分な流量の冷媒を流すことができない。なぜなら、絶縁体材料は一般に金属に比べて機械的強度に劣るため、絶縁体材料を長尺方向に余りに長くすると、二重管の内圧を高くできなくなるからである。このため、大面積を均一に処理するのに限界がある。
なお、点状の熱プラズマであっても、その直径が大きければ大面積処理の際の走査回数を減らせるため、用途によっては短時間で処理できる。しかし、熱プラズマの直径が大きいと、走査時に熱プラズマが基材上を通過する時間が実質的に長くなるため、ごく短時間だけ基材の表面近傍のみを高温処理することはできず、基材のかなり深い領域までが高温になり、例えばガラス基板の割れや膜剥がれなどの不具合を生じることがある。
また、従来例に示した特許文献9に記載の技術では、先に述べた誘導結合型の高周波プラズマトーチと比較して、熱プラズマの安定性に劣り(時間変化が大きい)、電極材料の基材への混入(コンタミネーション)が多いという欠点がある。
また、従来例に示した特許文献6に記載の技術に見られるような誘導結合型の高周波プラズマトーチにおいては、円筒型のものが分析用、或いは、溶射用に実用化されているが、プラズマの発生効率が悪く、ガス流量を増すと放電が不安定化するという欠点があった。
本発明はこのような課題に鑑みなされたもので、基材の表面近傍をごく短時間だけ均一に高温熱処理するに際して、或いは、反応ガスによるプラズマまたはプラズマと反応ガス流を同時に基材へ照射して基材を低温プラズマ処理するに際して、プラズマを安定的かつ効率的に発生させることができ、基材の所望の被処理領域全体を短時間で効率よく処理することができるプラズマ処理装置及び方法を提供することを目的としている。
本願の第1発明のプラズマ処理装置は、誘電体部材に囲まれた環状チャンバと、前記環状チャンバに連通する開口部と、前記環状チャンバ内にガスを導入するためのガス供給配管と、コイルと、前記コイルに接続された高周波電源と、基材載置台とを備えたプラズマ処理装置であって、前記コイルはソレノイドコイルであり、前記ソレノイドコイルは、前記環状チャンバの内側の誘電体部材に囲まれた空間に設けられており、かつ、前記ソレノイドコイルの中心軸が、前記環状チャンバから前記開口部へ向かう向きに配されていることを特徴とする。
このような構成により、基材の表面近傍をごく短時間だけ均一に高温熱処理するに際して、或いは、反応ガスによるプラズマまたはプラズマと反応ガス流を同時に基材へ照射して基材を低温プラズマ処理するに際して、プラズマを安定的かつ効率的に発生させることができる。
本願の第1発明のプラズマ処理装置において、好適には、前記環状チャンバが、長尺な形状であり、前記開口部が、長尺で線状であり、前記コイルが、前記開口部の長手方向と平行な向きに長尺な形状をもち、前記開口部の長手方向に対して垂直な向きに、前記チャンバと前記基材載置台とを相対的に移動可能とする移動機構を備えることが望ましい。
このような構成により、基材の表面近傍をごく短時間だけ均一に高温熱処理するに際して、或いは、反応ガスによるプラズマまたはプラズマと反応ガス流を同時に基材へ照射して基材を低温プラズマ処理するに際して、基材の所望の被処理領域全体を短時間で効率よく処理することができる。
また、この場合、好適には、前記誘電体部材の内部に、前記開口部の長手方向に対して平行に冷媒流路が設けられていることが望ましい。或いは、前記開口部の長手方向に対して平行で、内部が冷媒流路となっている誘電体管が、前記誘電体部材に接合されていてもよい。
このような構成により、簡単な構成で冷却性に優れたプラズマ処理装置を実現できる。
また、本願の第1発明のプラズマ処理装置において、好適には、前記誘電体部材は、内部誘電体ブロックが外部誘電体ブロックに挿入されることによって構成されていることが望ましい。
このような構成により、簡単な構成でプラズマ処理装置を実現できる。
また、好適には、前記環状チャンバと前記開口部とを連通させる通路が、1mm以下の隙間から成ることが望ましい。
このような構成により、より安定なプラズマ発生が可能となる。
また、好適には、前記環状チャンバの太さが、1mm以上10mm以下であることが望ましい。
このような構成により、より安定なプラズマ発生が可能となる。
また、好適には、前記環状チャンバの外径が、10mm以上であることが望ましい。
このような構成により、より安定なプラズマ発生が可能となる。
本願の第2発明のプラズマ処理方法は、誘電体部材で囲まれた環状チャンバ内にガスを供給しつつ、前記環状チャンバに連通する開口部から基材に向けてガスを噴出すると共に、コイルに高周波電力を供給することで、前記環状チャンバ内に高周波電磁界を発生させてプラズマを発生させ、前記基材の表面を処理するプラズマ処理方法であって、前記ソレノイドコイルは、前記環状チャンバの内側の誘電体部材に囲まれた空間に設けられており、かつ、前記ソレノイドコイルの中心軸が、前記環状チャンバから前記開口部へ向かう向きに配されていることを特徴とする。
このような構成により、基材の表面近傍をごく短時間だけ均一に高温熱処理するに際して、或いは、反応ガスによるプラズマまたはプラズマと反応ガス流を同時に基材へ照射して基材を低温プラズマ処理するに際して、プラズマを安定的かつ効率的に発生させることができ、基材の所望の被処理領域全体を短時間で効率よく処理することができる。
本発明によれば、基材の表面近傍をごく短時間だけ均一に高温熱処理するに際して、或いは、反応ガスによるプラズマまたはプラズマと反応ガス流を同時に基材へ照射して基材を低温プラズマ処理するに際して、プラズマを安定的かつ効率的に発生させることができ、基材の所望の被処理領域全体を短時間で効率よく処理することができる。
以下、本発明の実施の形態におけるプラズマ処理装置について図面を用いて説明する。
(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態1について、図1及び図2を参照して説明する。
以下、本発明の実施の形態1について、図1及び図2を参照して説明する。
図1(a)は、本発明の実施の形態1におけるプラズマ処理装置の構成を示すもので、誘導結合型プラズマトーチユニットの長尺方向に垂直な面で切った断面図である。
図1(b)は、誘導結合型プラズマトーチユニットの長尺方向に平行で、かつ、基材に垂直な面で切った断面図である。図1(a)は、図1(b)の破線で切った断面図である。図1(b)は、図1(a)の破線で切った断面図、また、図2は、図1に示した誘導結合型プラズマトーチユニットの組立構成図であり、各部品(一部)の斜視図を並べたものである。
図1及び図2において、基材載置台1上に基材2が載置されている。誘導結合型プラズマトーチユニットTにおいて、導体製のソレノイドコイル3が第一石英ブロック4及び第二石英ブロック5の近傍に配置される。誘電体製の長尺チャンバは、第一石英ブロック4及び第二石英ブロック5によって囲まれた空間(長尺チャンバ内部の空間7)により画定される。ソレノイドコイル3は、環状チャンバの内側の誘電体部材を構成する第二石英ブロック5に囲まれた空間(第一石英ブロック4内部に挿入された第二石英ブロック5に設けた凹部)に設けられており、かつ、ソレノイドコイル3の中心軸(図1(a)、(b)の破線)が、環状チャンバから開口部としてのプラズマ噴出口8へ向かう向きに配されている。
長尺チャンバのソレノイドコイル3に近い側の内壁面は、ソレノイドコイル3と平行な曲面である。このような構成では、ソレノイドコイル3の任意の部位において、ソレノイドコイル3から長尺チャンバまでの距離が等しくなるので、小さい高周波電力で誘導結合性プラズマの発生が可能となり、効率の良いプラズマ生成が実現できる。
誘導結合型プラズマトーチユニットTは、全体が接地された導体製のシールド部材(図示しない)で囲われ、高周波の漏洩(ノイズ)が効果的に防止できるとともに、好ましくない異常放電などを効果的に防止できる。
長尺チャンバ内部の空間7は、内部誘電体ブロックとしての第二石英ブロック5の外壁面と、これが挿入された外部誘電体ブロックとしての第一石英ブロック4の内壁面に囲まれている。つまり、長尺チャンバ全体が誘電体で囲まれている構成である。また、長尺チャンバ内部の空間7は環状である。ここでいう環状とは、一続きの閉じたヒモ状をなす形状を意味し、円形に限定されるものではない。
本実施の形態においては、レーストラック形(2つの長辺をなす直線部と、その両端に2つの短辺をなす円、楕円、または直線が連結されてなる、一続きの閉じたヒモ状の形状)の長尺チャンバを例示している。長尺チャンバ内部の空間7に発生したプラズマPは、長尺チャンバにおけるスリット状の開口部としてのプラズマ噴出口8より基材2に向けて噴出する。また、長尺チャンバの長手方向とプラズマ噴出口8の長手方向とは平行に配置されている。
第二石英ブロック5の内部にプラズマガスマニホールド9が2箇所設けられている。プラズマガス供給配管10よりプラズマガスマニホールド9に供給されたガスは、第二石英ブロック5に設けられたガス導入部としてのプラズマガス供給穴11(貫通穴)を介して、長尺チャンバ内部の空間7に導入される。このような構成により、長手方向に均一なガス流れを簡単に実現できる。プラズマガス供給配管10へ導入するガスの流量は、その上流にマスフローコントローラなどの流量制御装置を備えることにより制御される。このような構成では、2つのガス供給系(プラズマガスマニホールド9及びプラズマガス供給配管10)のガス流量バランスを制御することもできる。
プラズマガス供給穴11は、丸い穴状のものを長手方向に複数設けたものであるが、長尺のスリットであってもよい。
また、基材載置台1に近い部分に、シールドガス供給口としてのシールドガスノズル13が配置され、その内部にはシールドガスマニホールド14が設けられる。このように、2系統のガス導入が準備されており、プラズマ生成に適したプラズマガスとは別にシールドガスを供給して、大気中の酸素、二酸化炭素など、処理に不要、或いは悪影響を及ぼすガスのプラズマ照射面への混入を低減することが可能となる。
なお、シールドガス供給口は、プラズマ噴出口8の長尺方向と平行な向きに長尺な形状をもつスリットであってもよいし、或いは、プラズマ噴出口8の長尺方向と平行な向きに並んだ多数の穴であってもよい。
ソレノイドコイル3は中空の銅管からなり、内部が冷媒流路となっている。すなわち、水などの冷媒を流すことで、冷却が可能である。また、第一石英ブロック4及び第二石英ブロック5には、プラズマ噴出口8の長手方向に対して平行に冷媒流路15が設けられている。また、第一石英ブロック4には、プラズマ噴出口8の長手方向に対して垂直な向きにも冷媒流路15が設けられ、プラズマ噴出口8の長手方向に対して平行な冷媒流路15と立体的に交差し、外部との間で冷媒の給排水が行われる。
また、第二石英ブロック5内において冷媒流路が合流して束ねられ、外部との冷媒の給排水が行われる。これらの冷媒流路は、その断面が円であるから、大量の冷媒を流した際もその内圧によって構成部材の変形が起きにくい。つまり、本実施の形態においては、従来例に示した特許文献6に記載の技術において二重管構成として水冷した場合に比べて、はるかに大量の冷媒を流すことができ、効果的な冷却が可能である。
長方形のスリット状のプラズマ噴出口8が設けられ、基材載置台1(或いは、基材載置台1上の基材2)は、プラズマ噴出口8と対向して配置されている。この状態で、長尺チャンバ内にガスを供給しつつ、プラズマ噴出口8から基材2に向けてガスを噴出させながら、図示していない高周波電源よりソレノイドコイル3に高周波電力を供給することにより、長尺チャンバ内部の空間7にプラズマPを発生させ、プラズマ噴出口8からプラズマを基材2に照射することにより、基材2上の薄膜22をプラズマ処理することができる。プラズマ噴出口8の長手方向に対して垂直な向きに、長尺チャンバと基材載置台1とを相対的に移動させることで、基材2を処理する。つまり、図1(a)の左右方向へ、図1(b)の紙面に垂直な方向へ、誘導結合型プラズマトーチユニットTまたは基材載置台1を動かす。
長尺チャンバ内に供給するガスとして種々のものが使用可能だが、プラズマの安定性、着火性、プラズマに暴露される部材の寿命などを考えると、不活性ガス主体であることが望ましい。なかでも、Arガスが典型的に用いられる。Arのみでプラズマを生成させた場合、プラズマは相当高温となる(10,000K以上)。
なお、本構成においては、プラズマ噴出口8の長手方向の長さが、基材2の幅以上となっているので、一度の走査(誘導結合型プラズマトーチユニットTと基材載置台1とを相対的に移動すること)で基材2の表面近傍の薄膜22の全体を処理することができる。
このようなプラズマ処理装置において、長尺チャンバ内にガス噴出口よりArまたはAr+H2ガスを供給しつつ、プラズマ噴出口8から基材2に向けてガスを噴出させながら、図示していない高周波電源より13.56MHzの高周波電力を、ソレノイドコイル3に供給することにより、長尺チャンバ内部の空間7に高周波電磁界を発生させることでプラズマPを発生させ、プラズマ噴出口8からプラズマを基材2に照射するとともに走査することで、半導体膜の結晶化などの熱処理を行うことができる。
プラズマ発生の条件としては、プラズマ噴出口8と基材2間の距離=3〜50mm、走査速度=50〜3000mm/s、プラズマガス総流量=1〜100SLM、Ar+H2ガス中のH2濃度=0〜10%、シールドガス(N2)流量=1〜100SLM、高周波電力=0.5〜10kW程度の値が適切である。ただし、これらの諸量のうち、ガス流量及び電力は、プラズマ噴出口8の長さ100mm当たりの値である。ガス流量や電力などのパラメータは、プラズマ噴出口8の長さに比例した量を投入することが適切と考えられるためである。
このように、プラズマ噴出口8の長手方向と、基材載置台1とが平行に配置されたまま、プラズマ噴出口8の長手方向とは垂直な向きに、長尺チャンバと基材載置台1とを相対的に移動するので、生成すべきプラズマの長さと、基材2の処理長さがほぼ等しくなるように構成することが可能となる。
また、本実施の形態においては、長尺チャンバ内部の空間7は環状である。そして、環状チャンバと開口部としてのプラズマ噴出口8とを連通させる通路の隙間(図1(a)の寸法g)を0.5mmとしている。このような長尺チャンバの構造がもたらす効果について、以下で説明する。
従来例に示した特許文献6には、プラズマトーチ内部の構造は詳細に開示されていないが、一般的な円筒型の誘導結合型プラズマトーチと同様、一塊の直方体形状の空間であるものと推察される。このような空間に大気圧誘導結合型プラズマを発生させると、円環状の(ドーナツ形状の)プラズマがチャンバ内に発生しやすい。すなわち、直方体形状のチャンバ内に円環状のプラズマが発生するので、チャンバ内はその一部のみが非常に高密度のプラズマとなり、長尺方向に均一な処理を行うことが困難である。
一方、本実施の形態においては、長尺の環状チャンバを構成しているため、その形状に沿ってレーストラック形の細長い長尺プラズマPが発生する。したがって、従来例に比べて、格段に長尺方向に均一な処理を行うことができる。また、チャンバの体積が従来例に比べて小さくなることから、単位体積当たりに作用する高周波電力が増すので、プラズマ発生効率がよくなるという利点もある。
また、従来の一般的な誘導結合型プラズマトーチにおいては、ガス流量を増すと放電が不安定になることが指摘されている(例えば、Hironobu Yabuta et al., “Design and evaluation of dual inlet ICP torch for low gas consumption”, Journal of Analytical Atomic Spectrometry, 17(2002)1090−1095頁を参照)。これは、チャンバ内で環状プラズマが揺動した際に、ガス流れの下流域において環状プラズマとコイルとの距離が離れすぎて誘導結合を維持できなくなり、プラズマが失火してしまうためと考えられる。
一方、本実施の形態においては、環状チャンバと開口部としてのプラズマ噴出口8とを連通させる通路の隙間gを0.5mmと極めて狭く構成しているため、環状プラズマPがこの通路に侵入することができず、環状チャンバ内(通路よりも上流の領域)にとどまる。したがって、ガス流量を増しても環状プラズマPの揺動が起きず、極めて安定した長尺の環状プラズマPが維持される。したがって、従来例に比べて、格段に安定したプラズマ発生が可能となる。
なお、環状チャンバと開口部としてのプラズマ噴出口8とを連通させる通路の隙間gについて詳細に調べたところ、gが1mm以下である場合に環状プラズマPの揺動を抑制できることがわかった。gがあまりに小さいと、長尺方向の部品加工や組立精度の影響が増し、また、通路を通過して基材2に到達するプラズマ流が弱まるため、0.1mm以上、好ましくは0.3mm以上に構成することが望ましい。
(実施の形態2)
以下、本発明の実施の形態2について、図3を参照して説明する。
以下、本発明の実施の形態2について、図3を参照して説明する。
図3は本発明の実施の形態2におけるプラズマ処理装置の構成を示すもので、誘導結合型プラズマトーチユニットの長尺方向に垂直な面で切った断面図であり、図1(a)に相当する。
図3において、内部が冷媒流路を構成する石英管16が、第一石英ブロック4に対してその外壁面に、接着剤17により接合されている。また、第二石英ブロック5に対しては、その内部に設けた凹部に、内部が冷媒流路を構成するソレノイドコイル3が、接着剤により接合されており、ソレノイドコイル3自身と第二石英ブロック5の両方を冷却することができる構造である。
さて、長尺の環状チャンバと開口部としてのプラズマ噴出口8とを連通させる通路の隙間の寸法については、実施の形態1において詳しく説明したが、ここで、その他の寸法について説明を加える。
環状チャンバの太さ(環状チャンバを構成する、一続きの閉じたヒモの太さ)をdとすると、図3においては、第一石英ブロック4内壁面と、第二石英ブロック5の凸部の外壁面との間の距離dとして表される。また、環状チャンバの外径(環状チャンバの全体としての大きさ)をwとすると、図3においては、互いに向かい合った、第一石英ブロック4の内壁面の距離wとして表される。環状チャンバは長尺であるので、長辺部と短辺部とでは、環状チャンバの外径wは異なり、長辺部における環状チャンバの外径wの方が小さい。
これらの寸法d(環状チャンバの太さ)、w(環状チャンバの外径)について実験的に詳細に調べたところ、dが1mm未満であると、環状チャンバ内には高密度の熱プラズマが極めて発生しにくくなることが判明した。また、wが10mm未満の場合も、環状チャンバ内には高密度の熱プラズマが極めて発生しにくくなることが判明した。こうした実験から、環状チャンバの太さは、1mm以上であることが好ましく、環状チャンバの外径は、10mm以上であることが好ましいことがわかった。
また、dが太すぎるとプラズマ発生効率が低下するので、環状チャンバの太さdは10mm以下であることが望ましい。
(実施の形態3)
以下、本発明の実施の形態3について、図4を参照して説明する。
以下、本発明の実施の形態3について、図4を参照して説明する。
図4は、本発明の実施の形態3におけるプラズマ処理装置の構成を示すもので、誘導結合型プラズマトーチユニットの組立構成図であり、各部品(一部)の斜視図を並べたものである。
図4において、円筒状に成形された導体製のソレノイドコイル3は、第一石英ブロック4の内部に第二石英ブロック5が挿入されてなる石英ブロック群の近傍(内側の第二石英ブロック内に設けた凹部)に配置される。なお、誘導結合型プラズマトーチユニットの断面図は、図1(a)と同様である。つまり、円形の環状チャンバを構成しているため、その形状に沿って円形のドーナツ状プラズマPが発生する。したがって、チャンバの体積が従来例に比べて小さくなることから、単位体積当たりに作用する高周波電力が増すので、プラズマ発生効率がよくなる。
また、環状チャンバと開口部としてのプラズマ噴出口8とを連通させる通路の隙間gを0.5mmと極めて狭く構成しているため、環状プラズマPがこの通路に侵入することができず、環状チャンバ内(通路よりも上流の領域)にとどまる。したがって、ガス流量を増しても環状プラズマPの揺動が起きず、極めて安定した円形の環状プラズマPが維持される。したがって、従来例に比べて、格段に安定したプラズマ発生が可能となる。
なお、図4においては冷媒流路については省略しているが、実施の形態1と同様の構成を採用することも可能であるし、或いは、従来の円筒型誘導結合型プラズマトーチと同様、第一石英ブロック4を二重管構造として、その間に冷媒を流す方式を採用することも可能である。
以上述べたプラズマ処理装置及び方法は、本発明の適用範囲のうちの典型例を例示したに過ぎない。
例えば、誘導結合型プラズマトーチユニットTを、固定された基材載置台1に対して走査してもよいが、固定された誘導結合型プラズマトーチユニットTに対して、基材載置台1を走査してもよい。
また、本発明の種々の構成によって、基材2の表面近傍を高温処理することが可能となる。従来例で詳しく述べたTFT用半導体膜の結晶化や太陽電池用半導体膜の改質に適用可能であることは勿論、プラズマディスプレイパネルの保護層の清浄化や脱ガス低減、シリカ微粒子の集合体からなる誘電体層の表面平坦化や脱ガス低減、種々の電子デバイスのリフロー、固体不純物源を用いたプラズマドーピングなど、さまざまな表面処理に適用できる。また、太陽電池の製造方法としては、シリコンインゴットを粉砕して得られる粉末を基材上に塗布し、これにプラズマを照射して溶融させ多結晶シリコン膜を得る方法にも適用可能である。
また、プラズマの着火を容易にするために、着火源を用いることも可能である。着火源としては、ガス給湯器などに用いられる点火用スパーク装置などを利用できる。
また、説明においては簡単のため「熱プラズマ」という言葉を用いているが、熱プラズマと低温プラズマの区分けは厳密には難しく、また、例えば、田中康規「熱プラズマにおける非平衡性」プラズマ核融合学会誌、Vol.82、No.8(2006)pp.479−483において解説されているように、熱的平衡性のみでプラズマの種類を区分することも困難である。
本発明は、基材を熱処理することを一つの目的としており、熱プラズマ、熱平衡プラズマ、高温プラズマなどの用語にとらわれず、高温のプラズマを照射する技術に関するものに適用可能である。
また、基材の表面近傍をごく短時間だけ均一に高温熱処理する場合について詳しく例示したが、反応ガスによるプラズマまたはプラズマと反応ガス流を同時に基材へ照射して基材を低温プラズマ処理する場合においても、本発明は適用できる。プラズマガスに反応ガスを混ぜることにより、反応ガスによるプラズマを基材へ照射し、エッチングやCVDが実現できる。或いは、プラズマガスとしては希ガスまたは希ガスに少量のH2ガスを加えたガスを用いつつ、シールドガスとして反応ガスを含むガスを供給することによって、プラズマと反応ガス流を同時に基材へ照射し、エッチング、CVD、ドーピングなどのプラズマ処理を実現することもできる。
プラズマガスとしてアルゴンを主成分とするガスを用いると、実施例で詳しく例示したように、熱プラズマが発生する。一方、プラズマガスとしてヘリウムを主成分とするガスを用いると、比較的低温のプラズマを発生させることができる。このような方法で、基材をあまり加熱することなく、エッチングや成膜などの処理が可能となる。エッチングに用いる反応ガスとしては、ハロゲン含有ガス、例えば、CxFy(x、yは自然数)、SF6などがあり、シリコンやシリコン化合物などをエッチングすることができる。反応ガスとしてO2を用いれば、有機物の除去、レジストアッシングなどが可能となる。
CVDに用いる反応ガスとしては、モノシラン、ジシランなどがあり、シリコンやシリコン化合物の成膜が可能となる。或いは、TEOS(Tetraethoxysilane)に代表されるシリコンを含有した有機ガスとO2の混合ガスを用いれば、シリコン酸化膜を成膜することができる。その他、撥水性・親水性を改質する表面処理など、種々の低温プラズマ処理が可能である。従来技術(例えば、特許文献7に記載のもの)に比較すると、誘導結合型であるため、単位体積あたり高いパワー密度を投入してもアーク放電に移行しにくいため、より高密度なプラズマが発生可能であり、その結果、速い反応速度が得られ、基材の所望の被処理領域全体を短時間で効率よく処理することが可能となる。
以上のように本発明は、TFT用半導体膜の結晶化や太陽電池用半導体膜の改質に適用可能である。勿論、プラズマディスプレイパネルの保護層の清浄化や脱ガス低減、シリカ微粒子の集合体からなる誘電体層の表面平坦化や脱ガス低減、種々の電子デバイスのリフロー、固体不純物源を用いたプラズマドーピングなど、さまざまな表面処理において、基材の表面近傍をごく短時間だけ均一に高温熱処理するに際して、プラズマを安定的かつ効率的に発生させ、基材の所望の被処理領域全体を短時間で効率よく処理する上で有用な発明である。
また、種々の電子デバイスなどの製造における、エッチング・成膜・ドーピング・表面改質などの低温プラズマ処理において、基材の所望の被処理領域全体を短時間で効率よく処理する上で有用な発明である。
1 基材載置台
2 基材
T 誘導結合型プラズマトーチユニット
3 ソレノイドコイル
4 第一石英ブロック
5 第二石英ブロック
7 長尺チャンバ内部の空間
8 プラズマ噴出口
9 プラズマガスマニホールド
10 プラズマガス供給配管
11 プラズマガス供給穴
13 シールドガスノズル
14 シールドガスマニホールド
15 冷媒流路
22 薄膜
2 基材
T 誘導結合型プラズマトーチユニット
3 ソレノイドコイル
4 第一石英ブロック
5 第二石英ブロック
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8 プラズマ噴出口
9 プラズマガスマニホールド
10 プラズマガス供給配管
11 プラズマガス供給穴
13 シールドガスノズル
14 シールドガスマニホールド
15 冷媒流路
22 薄膜
Claims (9)
- 誘電体部材に囲まれた環状チャンバと、前記環状チャンバに連通する開口部と、前記環状チャンバの内部にガスを導入するためのガス供給配管と、コイルと、前記コイルに接続された高周波電源と、基材載置台とを備えたプラズマ処理装置であって、
前記コイルはソレノイドコイルであり、
前記ソレノイドコイルは、前記環状チャンバの内側の誘電体部材に囲まれた空間に設けられており、かつ、前記ソレノイドコイルの中心軸が、前記環状チャンバから前記開口部へ向かう向きに配されていること、
を特徴とするプラズマ処理装置。 - 前記環状チャンバが、長尺な形状であり、前記開口部が、長尺で線状であり、前記コイルが、前記開口部の長手方向と平行な向きに長尺な形状をもち、前記開口部の長手方向に対して垂直な向きに、前記チャンバと前記基材載置台とを相対的に移動可能とする移動機構を備えた、請求項1記載のプラズマ処理装置。
- 前記誘電体部材の内部に、前記開口部の長手方向に対して平行に冷媒流路が設けられている、請求項2記載のプラズマ処理装置。
- 前記開口部の長手方向に対して平行で、内部が冷媒流路となっている誘電体管が、前記誘電体部材に接合されている、請求項2記載のプラズマ処理装置。
- 前記誘電体部材は、内部誘電体ブロックが外部誘電体ブロックに挿入されることによって構成されている、請求項1記載のプラズマ処理装置。
- 前記環状チャンバと前記開口部とを連通させる通路が、1mm以下の隙間から成る、請求項1記載のプラズマ処理装置。
- 前記環状チャンバの太さが、1mm以上10mm以下である、請求項1記載のプラズマ処理装置。
- 前記環状チャンバの外径が、10mm以上である、請求項1記載のプラズマ処理装置。
- 誘電体部材で囲まれた環状チャンバ内にガスを供給しつつ、前記環状チャンバに連通する開口部から基材に向けてガスを噴出すると共に、コイルに高周波電力を供給することで、前記環状チャンバの内部に高周波電磁界を発生させてプラズマを発生させ、前記基材の表面を処理するプラズマ処理方法であって、
前記ソレノイドコイルは、前記環状チャンバの内側の誘電体部材に囲まれた空間に設けられており、かつ、前記ソレノイドコイルの中心軸が、前記環状チャンバから前記開口部へ向かう向きに配されていること、
を特徴とするプラズマ処理方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2011267963A JP2013120687A (ja) | 2011-12-07 | 2011-12-07 | プラズマ処理装置及びプラズマ処理方法 |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2013120684A (ja) * | 2011-12-07 | 2013-06-17 | Panasonic Corp | プラズマ処理装置及びプラズマ処理方法 |
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US10147585B2 (en) | 2011-10-27 | 2018-12-04 | Panasonic Intellectual Property Management Co., Ltd. | Plasma processing apparatus |
JP2019102277A (ja) * | 2017-12-01 | 2019-06-24 | パナソニックIpマネジメント株式会社 | プラズマ処理装置及び方法、並びに電子デバイスの製造方法 |
CN115427608A (zh) * | 2021-03-08 | 2022-12-02 | 应普技株式会社 | 喷射喷嘴装置 |
-
2011
- 2011-12-07 JP JP2011267963A patent/JP2013120687A/ja active Pending
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