JP6073565B2 - 磁気抵抗素子 - Google Patents

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Description

本発明は、外部磁場強度を検知する磁気抵抗素子に関する。
一般に、磁気抵抗素子は、素子の入力端子間にバイアスをかけ、周囲の磁界の変化に応じて素子内を流れるキャリアの行路が変化することにより、出力端子に起電力が生じたり、素子の抵抗値が変化したりすることにより磁界強度の測定を行う素子である。
この磁気抵抗素子の用途としては、紙幣などに代表されるような磁気印刷物の磁気パターンを検出する素子、強磁性体からなる歯車の回転を検出する素子などがある。
磁気抵抗素子の磁気抵抗効果は、次式(1)、(2)で表すことができる。
(ΔR/R0)∝(μ×B)2:低印加磁界時 ……(1)
(ΔR/R0)∝(μ×B) :高印加磁界時 ……(2)
なお、(1)、(2)式中のΔR=RB−R0であり、RBは磁界中での抵抗値R0は、無磁界での抵抗値である。また、μは電子移動度、Bは印加磁界である。ΔR/R0は磁気抵抗素子の感度に相当し、低磁場中では電子移動度μの2乗に比例し、高磁場中では電子移動度μに比例する。よって、磁気抵抗素子では、より高い感度(ΔR/R0)を得るために、電子移動度μの高いInSbのバルクや、真空蒸着法により形成した薄膜などが使用されている。
このような磁気抵抗素子の例として、基板上に化合物半導体薄膜がミアンダ状に形成され、その上に短絡電極が複数形成された構造(例えば、特許文献1参照)や、コルビノ構造が知られている。コルビノ構造の磁気抵抗素子は、半導体を中心電極とリング状電極とにより挟んだものである。中心電極を中心として、半導体、リング状電極が同心円上に配置される。コルビノ構造は、ホール効果による電荷の蓄積がないので、大きな磁気抵抗効果が得られる(例えば、特許文献2参照。)。
特開2005−327859号公報 特許第2950243号明細書 特開昭58−155782号公報
歯車検出や紙幣認識といった用途では、決まったピッチの磁性体を検出するため、一定の間隔で、一定の面積が検出できるように磁気抵抗素子を配置する必要がある。しかしながらコルビノ構造では、内側電極層からリードの引きだしができないためこれらの用途に使用することができない。そこで、コルビノ形磁気抵抗素子を2等分した形の構成を有するハーフコルビノ形の対を対抗させ、複数個基板上に直列に接続した構造が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
しかしながら、この構成ではハーフコルビノ素子の1対のうち片方のみしか有効に利用できておらず、また、磁気抵抗効果が不十分なため、同心円状の短絡電極を複数形成する必要があった。さらには、電極層を広面積に配置しているため、単位面積あたりの抵抗値が低下し、例えば半導体素子の小型化を実現させようとした場合に、十分な素子抵抗が得られないという問題があった。
本発明は、このような問題を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、工業的製造が容易な方法で、歯車検出や紙幣認識といった用途に実用可能で、高い磁気抵抗効果を有し、抵抗も維持した磁気抵抗素子を提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に係る磁気抵抗素子は、基板上に形成された化合物半導体膜からなる感磁部と、上記感磁部の上部に、上記感磁部の1/3以下の幅で配置される感磁部接続電極と、上記感磁部接続電極と分離し、上記感磁部に、上記感磁部接続電極の接続幅よりも広い幅で接続される短絡電極とを備え、上記短絡電極の形状は、上記感磁部接続電極と上記感磁部とが接続する接続電極接続部から遠ざかるにつれて、上記接続電極接続部上記短絡電極との間の距離が徐々に長くなる部分を有するように形成され、上記感磁部、上記感磁部接続電極、及び、上記短絡電極からなるユニットを複数個直列に接続し、上記感磁部接続電極と、隣接する上記短絡電極とが接続されることを特徴とする。
また、本発明の請求項2に係る磁気抵抗素子は、上記感磁部接続電極と、上記短絡電極とが、連続した同一の金属で構成されていることを特徴とする。
また、本発明の請求項3に係る磁気抵抗素子は、基板上に形成された化合物半導体膜からなる2つ以上の感磁部と、外部接続用の3つの端子電極とを備えることを特徴とする。
また、本発明の請求項4に係る磁気抵抗素子は、基板上に形成された化合物半導体膜からなる4つ以上の短冊状の感磁部と、外部接続用の4つの端子電極とを備える磁気抵抗素子において、上記感磁部が並行に形成され、上記感磁部からなる抵抗体がフルブリッジ構造に接続されることを特徴とする。
また、本発明の請求項5に係る磁気抵抗素子は、上記感磁部の上に保護膜が形成され、上記感磁部接続電極の下に上記保護膜がないエリアを形成することにより、上記感磁部接続電極と上記感磁部とを接続することを特徴とする。
また、本発明の請求項6に係る磁気抵抗素子は、上記感磁部接続電極の上記感磁部との接続部から上記短絡電極の中央部までの距離Lよりも、上記感磁部接続電極の上記感磁部との接続部と上記短絡電極の中央部以外との距離の方が長いことを特徴とする。
また、本発明の請求項7に係る磁気抵抗素子は、上記感磁部が四角形であることを特徴とする。
また、本発明の請求項8に係る磁気抵抗素子は、電流の進行方向に対して垂直な方向に上記短絡電極が形成されることを特徴とする。
また、本発明の請求項に係る磁気抵抗素子は、上記感磁部が四角形であって、電流の進行方向に対して平行方向の感磁部端部にも短絡電極を形成することを特徴とする。
また、本発明の請求項10に係る磁気抵抗素子は、上記感磁部接続電極の上記感磁部との接続部から上記短絡電極の中央部までの距離Lと、感磁部の幅Wの比率L/WがL/W=0.05以上1.25以下であることを特徴とする。
また、本発明の請求項11に係る磁気抵抗素子は、上記感磁部、上記感磁部接続電極、及び、上記短絡電極からなるユニット毎に、上記感磁部が分断されていることを特徴とする。
また、本発明の請求項12に係る磁気抵抗素子は、上記化合物半導体膜は、InAsySb(1-y)(0≦y≦1)からなる薄膜であることを特徴とする。
また、本発明の請求項13に係る磁気抵抗素子は、上記基板は、Si基板またはGaAs基板であることを特徴とする。
本発明の磁気抵抗素子によれば、感磁部の短冊、オフセット電圧を小さくして、検出精度を向上させた磁気抵抗素子を工業的に容易に提供することができる。
本発明の一実施形態に係る磁気抵抗素子を示す構成図であり、図1(a)は、磁気抵抗素子を示す構成図であり、図1(b)は、図1(a)の部分の拡大構成図であり、図1(c)は、図1(b)と同様の部分の断面図である。 本発明の別の実施形態に係る磁磁気抵抗素子を示す構成図であり、図2(a)は、磁気抵抗素子を示す構成図であり、図2(b)は、図2(a)の部分の拡大構成図であり、図2(c)は、図2(b)と同様の部分の断面図である。 本発明の磁気抵抗素子の感磁部の形状の例を示す構成図である。 本発明の磁気抵抗素子の感磁部と電極の間に感磁部の間に保護膜を介さず積層する構造の例を示す構成図であり、感磁部を分断していない場合の例を示す構成図である。 本発明の磁気抵抗素子の感磁部と電極の間に感磁部の間に保護膜を介さず積層する構造の例を示す構成図であり、感磁部を分断している場合の例を示す構成図である。 本発明の磁気抵抗素子の製造工程の一例を示す工程図である。 本発明の磁気抵抗素子の磁気抵抗効果を示す図である。 従来の磁気抵抗素子の一例を示す構成図である。
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、複数の図面において同一の符号は同一物を表し、その繰り返しの説明は省略する。
図1は、本発明の一実施形態に係る磁気抵抗素子100を示したものであり、図1(a)は、磁気抵抗素子を示す構成図であり、図1(b)は、図1(a)の部分の拡大構成図であり、図1(c)は、図1(b)と同様の部分の断面図である。
図1において、磁気抵抗素子100は、絶縁基板111と、絶縁基板111上にあって、化合物半導体膜112aから成る感磁部112と、感磁部112の上部または側面に形成された電極113と、感磁部112間を接続するための接続電極115を備え、これらの構成ユニットが少なくとも4つ以上直列に接続される。電極113は、感磁部112の上部に感磁部112の1/3以下の幅で配置される感磁部接続電極113aと、感磁部112に感磁部接続電極113aの接続幅よりも広い幅で接続される短絡電極113bと、感磁部接続電極113aと感磁部112との接続部である接続電極接続部113cとを備える。また、磁気抵抗素子100は、さらに、接続電極115及び感磁部112を形成する化合物半導体膜112aを保護するための保護膜116を備え、保護膜116は、短絡電極113bと接続電極接続部113c以外の領域に形成される。
感磁部112の幅Wに対して、感磁部112で接続された接続電極接続部113cと短絡電極113bとの間の距離Lは、長くなればホール効果による電荷の蓄積が発生し、磁気抵抗効果が下がり、Lが短くなれば抵抗値が下がるので、L/W=0.05〜1.25の範囲が好ましい。より好ましくは0.1〜0.7である。
これらの構成ユニットの直列に配置した数は、上限を制限するものではないが、少ないと抵抗値が小さくなり、数が多いとチップサイズが大きくなるため、4個以上1000個以下が好ましい。また、より好ましくは、20個以上200個以下である。また、図1に示す、磁気抵抗素子100は、外部との電気的接続を行うための4つの取り出し電極114を備え、これにより、取り出し電極114に外部端子を接続することによって、感磁部112からなる抵抗体がフルブリッジ構造に接続される。なお、本発明に関しては、接続端子数を制限するものではなく、2端子や3端子、あるいは5端子以上であっても良い。
図1では、感磁部として長方形の短冊上に電極を配置した構造を示したが、図2に示す別の実施形態200のように、ユニット毎に感磁部212を分断した構造としてもよい。本発明では、感磁部の分断有無を指定するものではないが、このようにユニット毎に感磁部を分断した構造の方が磁気抵抗効果に関与しない感磁部が存在せず抵抗値が高くできるため、より好ましい。
また、分断した感磁部112の形状は、長方形が結晶構造上、及び、加工性の観点で好ましいが、図3に示すように、例えば、円形状等であっても良い。
また、図1に示すように、保護膜116を形成し、感磁部112と接続する部分の保護膜116を除去して接続電極接続部113cと感磁部112を接続した構造の方が、配線電極による抵抗低下がないため好ましいが、図4に示すように、感磁部112と電極113の間に保護膜116を介さずに積層する構造であっても良い。なお、図4において、図4(a)は、感磁部を分断していない場合を示し、図4(b)は、感磁部を分断している場合を示す。このような構造の場合も、上述のように、感磁部112を分断している方が好ましい。
また、短絡電極113bの形状は、円形であっても良いが、感磁部の電流方向について垂直である方が、電子が磁場中に曲げられた際に、進行経路が長くなり、結果的に磁気抵抗効果が高くなるため好ましい。また、より好ましくは、図3(a),(b),(h)に示すように、接続電極接続部113cから遠ざかるにつれ距離が長くなる構造が望ましい。例えば、600mTで移動度40000cm2/(V・s)の場合は、電子の進行方向は、進行方向に対して67°の方向に曲げられるため、長方形の感磁部112とした場合、図1、図2、図3(a)に示したように、短絡電極113bは電流進行方向の感磁部側面にも接続した構造の方が、より高磁場での電荷の蓄積が緩和できるため好ましい。
磁気抵抗素子100の感磁部112を構成する化合物半導体膜112aは、InSbやInAsのバルク、あるいは、InSb、InAs、またはInAsySb(1-y)(0≦y≦1)、InaAlbGa(1-a-b)AsxSb(1-x)(0≦a+b≦1、0≦x≦1)からなる薄膜であることが好ましいが、本発明においては、その構成元素に限定するものではない。また、Siや、Sn、S、Se、Te、Ge、またはCなどの不純物をドープしたものであっても良い。
化合物半導体膜112aが薄膜である場合、薄膜を形成する方法としては、真空蒸着法や分子線エピタキシー(MBE)法などが好ましいが、必ずしもこれらの形成方法でなくても良い。
感磁部接続電極113a、短絡電極113b、接続電極接続部113c、取り出し電極114、および、接続電極115は、蒸着法、スパッタ法、またはめっき法などを使用して形成され、Cu、Al、Au単層、または、Ti/Au、Ni/Au、Cr/Cu、Cu/Ni/Au、Ti/Au/Ni、Cr/Au/Ni、Cr/Ni/Au/Ni、NiCr/Auの積層などとしても良いが、これらの構成元素を限定するものではない。
感磁部接続電極113a、短絡電極113b、接続電極接続部113c、取り出し電極114、および、接続電極115は、必ずしも同じ電極構造でなくても良いが、同じ電極構造とし、同じ工程で形成する方が工業的には好ましい。また、電極厚は厚いと製造時間が長くなってしまうため工業的に不利であり、薄いと抵抗値が高くなってしまうため、例えば0.1〜1.5μmが好ましい。より好ましくは0.3〜1μmであり、さらに好ましくは0.3〜0.7μmである。
化合物半導体膜112aを保護するための保護膜116は、一般的には絶縁性無機質材料であることが好ましい。保護膜116には、例えば、窒化シリコンや酸化ケイ素等の薄膜を、プラズマCVD法等により150〜500nm程度形成したものが使用されるが、本発明においては、保護膜116の有無、種類、および膜厚を規定するものではない。
そして、このようにして形成された磁気抵抗素子100において、図1に示すように、素子外部に形成されるモールド樹脂による、化合物半導体膜112aからなる感磁部112や各電極113への圧力や面内応力を緩和する目的で、感磁部112および短絡電極113上を覆うように軟樹脂層117が形成されることが多い。この軟樹脂層117には、一般的に、1〜300μmのシリコン系樹脂や、1〜10μm厚のゴム系樹脂が使用されるが、本発明においては、軟樹脂層117の有無、種類、および膜厚を規定するものではない。
次に、本発明の一実施形態に係る例として、4つの取り出し電極を有する磁気抵抗素子の製造方法について説明する。
図5(a)〜(e)は、図2に示す、磁気抵抗素子200と同様の磁気抵抗素子500の製造プロセスフローを示す図であって、図2(a)に示すX−Y断面図を示す図である。簡便化のため、2ユニット部のみを表記している。製造プロセスには、通常のフォトグラフィーの技術を使用することができる。
まず、図5(a)に示すように、まず、絶縁基板511上に化合物半導体膜512aを成膜する。絶縁基板511としては、例えば、厚さ625μmのGaAs基板を適用することができる。また、絶縁基板511として、Si基板を適用することもできる。上記化合物半導体膜512aとして、例えばInSb膜を成膜する。
次に、図5(b)に示すように、化合物半導体膜512a上に、感磁部512形成用のマスクパターンを露光・現像し、その後、化合物半導体膜512aを、塩酸・過酸化水素系のエッチング液で所望の形状にメサエッチングして、絶縁基板511上に感磁部512を形成する。感磁部512の形成方法は、ドライ方式でもよく、塩酸・過酸化水素系以外のエッチング液を使用してもよい。そして、保護膜516としての窒化シリコン膜を、プラズマCVD法により感磁部512の上に例えば、150nm程度形成する。
次いで、図5(c)に示すように、感磁部512上の、感磁部接続電極513a、接続電極接続部513c、取り出し電極514、および、接続電極515を形成する部分の保護膜516としての窒化シリコン膜を、感磁部接続電極513a、短絡電極513bを形成する部分よりも狭い範囲で反応性イオンエッチング装置を使用して除去すると共に、取り出し電極514および接続電極515を形成する部分の窒化シリコン膜(保護膜516)を除去する。
次いで、図5(d)に示すように、フォトリソグラフィー、リフトオフ法を使用して、感磁部接続電極513a、短絡電極513b、接続電極接続部513c、取り出し電極514、および、接続電極515を形成する。感磁部接続電極513a、短絡電極513b、接続電極接続部513c、取り出し電極514、および、接続電極515は、前述のように、蒸着法、スパッタ法、またはめっき法などを使用して形成し、例えば、Cu、Al、Au単層或いは、前述のようにこれらを含む積層に形成される。
最後に、図5(e)に示すように、感磁部512、感磁部接続電極513a、短絡電極513b、及び、接続電極接続部513c全面を覆うように、軟樹脂層517をフォトリソグラフィーにより形成する。
これにより、4つの入出力用の取り出し電極(端子電極)514を有し、各取り出し電極514間に、感磁部512と、感磁部接続電極513aと、短絡電極513bと、接続電極接続部513cとを有する4端子構成の磁気抵抗素子500を、フォトリソグラフィーを応用して作成することができる。
また、化合物半導体膜512aを形成する化合物半導体は閃亜鉛鉱構造の化合物半導体であればよく、バルクであっても良い。また、各電極513乃至515を形成した後に保護膜516を形成しても良く、保護膜516の種類は窒化シリコンでなくても良い。保護膜516を除去する方法は、反応性イオンエッチングではなく、他のドライエッチングやウエットエッチング方式であっても良い。
また、感磁部接続電極513a、短絡電極513b、接続電極接続部513c、取り出し電極514、および、接続電極515とは2度に分けて形成しても良い。また、取り出し電極514及び接続電極515と、感磁部接続電極513a、短絡電極513b、及び、接続電極接続部513cとは異なる電極材料で形成してもよく、また、取り出し電極514と接続電極515とも異なる電極材料で形成してもよい。
ここで、化合物半導体膜512aが薄膜状半導体層に対応し、取り出し電極514が入出力電極に対応し、短絡電極513bを形成するAu層が金属層に対応している。
以下に、本発明の実施例を説明する。なお、本発明は、この実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
まず、厚さ0.63mmの半絶縁性GaAs単結晶基板511上に、分子線エピタキシー法を使用して、SnドープInSb薄膜512aをエピタキシャル成長させた(図5(a))。
次に、GaAs基板511上に成膜したInSb薄膜512aの表面にフォトレジストを均一に塗布し、露光・現像した後に、塩酸・過酸化水素系のエッチング液でメサエッチングし、InSb薄膜512aからなる感磁部512を形成した(図5(a))。
感磁部としてのInSb薄膜512aの上に、保護膜516として窒化シリコン薄膜をプラズマCVD法で150nm形成した(図5(b))。
その後、再度フォトレジストを塗布した後に、感磁部接続電極513a、短絡電極513b、接続電極接続部513c、取り出し電極514、および、接続電極515の端部を形成する部分の窒化シリコン薄膜512aを、CF4ガスにより反応性イオンエッチング装置を用いて除去した(図5(c))。
続いてフォトレジストを塗布して、露光・現像を行って、感磁部接続電極513a、短絡電極513b、接続電極接続部513c、取り出し電極514、及び、接続電極515を形成するための電極形成用のフォトレジストマスクを形成した。
次に、真空蒸着法により、感磁部接続電極513a、短絡電極513b、接続電極接続部513c、取り出し電極514、及び、接続電極515を蒸着し、リフトオフ法で感磁部接続電極513a、短絡電極513b、接続電極接続部513c、取り出し電極514、及び、接続電極515を形成した。これら電極は、Ti/Auの積層構造とした、1層目のTiを形成後、真空中で引き続き2層目のAuを形成した。各電極513乃至515の厚さは、Ti/Au=100nm/450nmとした(図5(d))。
次に、モールド樹脂による圧力や面内応力を緩和するために、感磁部512、感磁部接続電極513a、短絡電極513b、及び、接続電極接続部513cを含む全面に軟樹脂層517としてゴム系樹脂を形成した(図5(e))。
このようにして、上述の図5と同様の手順で、化合物半導体膜512aを感磁部512とし、半導体感磁部512の列が1素子あたり8列であり、取り出し電極514間に、複数の感磁部512、感磁部接続電極513a、短絡電極513b、接続電極接続部513cを有する4端子の磁気抵抗素子500を複数製作した。感磁部512は、分断した構造であり、長方形に加工した。また、感磁部512と接続する部分の保護膜516を除去して接続電極接続部513cと感磁部512を接続する構造とした。短絡電極513bは、感磁部512の電流方向について垂直に配置し、さらに、電流進行方向の感磁部側面にも接続する構造とした。感磁部512の幅Wは75μm、感磁部512で接続された接続電極接続部513cと短絡電極513bとの間の距離Lは18μm、L/W=0.24とした。これらの構成ユニットの直列に配置した数は、12個であった。
次に、このようにして製作した磁気抵抗素子500に対し、これらを評価するための試験を行った。この試験は次の手順で行った。
裏面研削によって、GaAs基板511を所定の厚さに研磨し、リードフレーム上に接着剤で接着した後に、プラスチックパッケージでモールドした。その後、磁場中の抵抗を測定して磁気抵抗効果を評価した。
半導体層と、サイズが幅4.4mm、奥行き4.4mm、高さ5mmのSmCo磁石との距離を0.45mmとし、半導体層と磁性歯車との距離を0.15mmとして磁場シュミレーションし、得られた磁気抵抗効果より、5V印加時の出力振幅電圧をシミュレーションしたところ、711mVと高い出力が得られた。
特性評価として磁場中での抵抗値を測定し、磁気抵抗変化率を計算した。その結果を後述する比較例を含めて、図6に示す。このときの抵抗値は160Ωであった。例えば、600mTでの磁気抵抗変化率は、330%と非常に大きな値となった。
(比較例1)
図7は、比較のために使用した、従来の磁気抵抗素子の一例を示す構成図である。
図7に示すように、従来の磁気抵抗素子700は、基板上に化合物半導体薄膜がミアンダ状に形成され、その上に短絡電極が複数形成された構造でパターンを形成した。作成フローは実施例1と同様に行った。短絡電極間が磁気を検出する1ユニットとなるが、直列に接続したユニット数は12個であった。また、このときの抵抗値は75Ωであった。また、600mTでの磁気抵抗変化率は270%と実施例1よりも低い値となった。
比較例1も実施例1と同様に、半導体層と、サイズが幅4.4mm、奥行き4.4mm、高さ5mmのSmCo磁石との距離を0.45mmとし、半導体層と磁性歯車との距離を0.15mmとして磁場シュミレーションし、得られた磁気抵抗効果より、5V印加時の出力振幅電圧をシミュレーションしたところ、615mVと実施例1よりも低い出力となった。
以上のように、本発明によれば、感磁部の短冊、オフセット電圧を小さくして、検出精度を向上させた磁気抵抗素子を工業的に容易に提供することができる。
100,200,500 磁気抵抗素子
111,211,511 絶縁基板
112,212,512 感磁部
112a,212a,512a 化合物半導体膜などの磁気抵抗体膜
113、213、513 電極
113a,213a,513a 感磁部接続電極
113b,213b,513b 短絡電極
113c,213c,513c 接続電極接続部
114,214,514 取り出し電極
115,215,515 接続電極
116,216,516 保護膜
117,217,517 軟樹脂層

Claims (15)

  1. 基板上に形成された化合物半導体膜からなる感磁部と、
    前記感磁部の上部に、前記感磁部の1/3以下の幅で配置される感磁部接続電極と、
    前記感磁部接続電極と分離し、前記感磁部に、前記感磁部接続電極の接続幅よりも広い幅で接続される短絡電極と
    を備え、
    前記短絡電極の形状は、前記感磁部接続電極と前記感磁部とが接続する接続電極接続部から遠ざかるにつれて、前記接続電極接続部前記短絡電極との間の距離が徐々に長くなる部分を有するように形成され、
    前記感磁部、前記感磁部接続電極、及び、前記短絡電極からなるユニットを複数個直列に接続し、
    前記感磁部接続電極と、隣接する前記短絡電極とが接続されることを特徴とする磁気抵抗素子。
  2. 前記感磁部接続電極と、前記短絡電極とが、連続した同一の金属で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の磁気抵抗素子。
  3. 基板上に形成された化合物半導体膜からなる2つ以上の感磁部と、
    外部接続用の3つの端子電極と
    を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の磁気抵抗素子。
  4. 基板上に形成された化合物半導体膜からなる4つ以上の短冊状の感磁部と、
    外部接続用の4つの端子電極と
    を備える磁気抵抗素子において、
    前記感磁部が並行に形成され、前記感磁部からなる抵抗体がフルブリッジ構造に接続されることを特徴とする請求項1または2に記載の磁気抵抗素子。
  5. 前記感磁部の上に保護膜が形成され、前記感磁部接続電極の下に前記保護膜がないエリアを形成することにより、前記感磁部接続電極と前記感磁部とを接続することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の磁気抵抗素子。
  6. 前記感磁部接続電極の前記感磁部との接続部から前記短絡電極の中央部までの距離Lよりも、前記感磁部接続電極の前記感磁部との接続部と前記短絡電極の中央部以外との距離の方が長いことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の磁気抵抗素子。
  7. 前記感磁部が四角形であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の磁気抵抗素子。
  8. 電流の進行方向に対して垂直な方向に前記短絡電極が形成されることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の磁気抵抗素子。
  9. 前記感磁部が四角形であって、電流の進行方向に対して平行方向の感磁部端部にも短絡電極を形成することを特徴とする請求項8に記載の磁気抵抗素子。
  10. 前記感磁部接続電極の前記感磁部との接続部から前記短絡電極の中央部までの距離Lと、感磁部の幅Wの比率L/WがL/W=0.05以上1.25以下であることを特徴とする請求項7または9に記載の磁気抵抗素子。
  11. 前記感磁部、前記感磁部接続電極、及び、前記短絡電極からなるユニット毎に、前記感磁部が分断されていることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載の磁気抵抗素子。
  12. 前記化合物半導体膜は、InAsySb(1-y)(0≦y≦1)からなる薄膜であることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項に記載の磁気抵抗素子。
  13. 前記基板は、Si基板またはGaAs基板であることを特徴とする請求項1乃至12のいずれか1項に記載の磁気抵抗素子。
  14. 請求項1乃至13のいずれか1項に記載の磁気抵抗素子により紙幣の磁気パターンを検出することを特徴とする紙幣認識装置。
  15. 請求項1乃至13のいずれか1項に記載の磁気抵抗素子により強磁性体からなる歯車の回転を検出することを特徴とする歯車検出装置。
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