以下、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。なお、第2の実施形態以降において、既に説明した実施形態の構成と同様又は類似する構成については、既に説明した実施形態の構成に付した符号と同一の符号を付し、また、説明を省略することがある。
<第1の実施形態>
図1(a)は、本発明の第1の実施形態に係る車載撮像システム1を有する車両101の平面図であり、図1(b)は、車両101のインストルメント・パネル105周辺の正面図であり、図1(c)は、車両101の運転席周辺の側面図である。
車載撮像システム1は、撮像装置3(図1(a)及び図1(b))と、撮像装置3の撮像した画像を表示する表示装置5(図1(b))と、車両101の運転者に関する情報を取得するための視覚センサ7(図1(b)及び図1(c))とを有している。
撮像装置3は、例えば、車両101(車体103)において通常はサイドミラーが設けられる位置にサイドミラーに代えて設けられている。すなわち、車両101の側方両側に1対設けられている。なお、ここでいうサイドミラーは、車両101のボンネットに設けられるフェンダーミラーであってもよいし、前席用のドアに設けられるドアミラーであってもよいし、その他の形式のものであってもよい。
また、撮像装置3は、図1(a)において点線で示すように、サイドミラーが映す範囲と同様の範囲を撮像するように設けられている。すなわち、撮像装置3は、車体103の後方(車体103の側方に設けられていることから後側方)を映すように設けられている。
撮像装置3の構成は、公知の構成とされてよい。撮像装置3は、特に図示しないが、例えば、レンズ(若しくはレンズ群)と、レンズにより集められた光を受光する撮像素子と、これらを収容する筐体とを含んでいる。なお、撮像装置3は、簡素な構成とされ、軽量化乃至は小型化されることが好ましいが、可変絞りやズームレンズなどが設けられてもよい。また、図1では、ドアミラーと同様の外観を有する撮像装置3を例示しているが、実際には、撮像装置3は、ドアミラーよりも小型化可能である。
表示装置5は、車両101において、運転者が概ね前方を向いたまま表示装置5の画面5aを視認可能な位置に設けられている。好適には、表示装置5は、車両101の内部に設けられている。例えば、表示装置5は、インストルメント・パネル105の中央上方側に設けられている。表示装置5は、例えば、1対の撮像装置3に対応して1対設けられている。ただし、一のみの表示装置5を設け、その画面を表示上分割して1対の撮像装置3により撮像された1対の画像を表示するようにしてもよい。表示装置5は、例えば、液晶表示装置や有機EL表示装置により構成されている。
視覚センサ7は、例えば、CMOSイメージセンサやCCDイメージセンサ等の固体撮像素子を含んで構成されている。視覚センサ7は、好適には、車両101において、運転者を前方から(表示装置5側から)撮像可能な位置に設けられている。視覚センサ7の撮像した画像は、後述するように、運転者の視点及び視線の情報を取得することに供される。
図2(a)〜図2(c)は、車載撮像システム1の動作の概要を説明するための図である。
図2(a)は、比較例としてのサイドミラー151の作用を説明する平面図である。この図において、点P1及び点P2は、運転者の視点を模式的に示している。点P1及び点P2の位置の間で運転者の視点が移動すると、点線及び1点鎖線により模式的に示すように、運転者から見てサイドミラー151に映し出される実際の風景の範囲が変化する。従って、例えば、運転者は、車両の後退時等においては、通常の走行時の視点の位置に対して視点を移動させることにより、自己が望む範囲をサイドミラー151により視認し、好適に車両の運転を行うことができる。
一方、サイドミラー151の代わりに設けた車載撮像システムにおいて、単純に、撮像装置3の撮像した画像を表示装置5に表示した場合、表示装置5に対して運転者が視点を移動させても、運転者が視認できる範囲は変化しない。
そこで、本実施形態の車載撮像システム1は、運転者が表示装置5に対して視点を移動させると、表示装置5に表示される実際の風景の範囲が変化するように構成される。例えば、サイドミラー151と同様に、運転者が表示装置5に対して視点を移動させると、その移動方向とは逆方向に、表示装置5に表示される風景の範囲が移動するように車載撮像システム1は構成される。
また、この際、課題の欄においても述べたように、撮像装置3の姿勢を変化させる駆動機構を設けるとすれば、機器の大型化等を招くことから、そのような駆動機構を必要としない方法により、表示装置5に表示される範囲を変化させる。具体的には、以下のとおりである。
図2(b)は、撮像装置3の視野51に収まる風景又はその画像を示し、図2(c)は、表示装置5の画面5aを示している。
撮像装置3は、その視野51に収まる風景を撮像可能である。なお、ここでいう視野51は、広義の視野であり、撮像装置3を動かさずに撮像可能な範囲をいうものとする。ただし、視野51を狭義の視野(画角とワーキングディスタンスとによって規定される範囲)としても、実施形態の構成及び動作は実質的に変わらない。
一方、表示装置5は、視野51の画像全体を表示するのではなく、視野51のうちの一部である表示範囲53についてのみ、撮像装置3の撮像した画像を表示する。例えば、図2(c)の左側の画面5aでは、図2(b)の位置P11に位置する表示範囲53についての画像が表示されている。
そして、車載撮像システム1は、運転者の視点が移動すると、表示範囲53の位置を変化させる。例えば、図2(b)において矢印y1で示すように、車載撮像システム1は、表示範囲53の位置を位置P11から位置P12に変更する。すなわち、画面5aに表示される画像は、図2(c)の左側に示す画像から図2(c)の右側に示す画像に切り換えられる。その結果、画面5aの表示は、あたかも撮像装置3の姿勢を変えたかのように切り換えられることになる。
なお、図2(c)では、表示範囲53の画像は、画面5aの全体に表示されているが、画面5a内の一定の領域に表示される限り、画面5aの一部の領域において表示されてもよい。一定の領域は、例えば、表示範囲53の位置の変更の前後で画面5aにおいて同一の位置及び広さを有する領域である。ただし、一定の領域は、運転者の操作等によって適宜にその広さ等が調整可能なものであってよい。また、画面5aには、撮像装置3の撮像した画像に並べて又は重ねて、適宜な情報を提示する画像が表示されてよい。
図3は、上述のような動作を実現する、車載撮像システム1の信号処理系の構成を示すブロック図である。
車載撮像システム1は、上述した視覚センサ7、撮像装置3及び表示装置5に加え、制御部9を有している。
制御部9は、例えば、特に図示しないが、CPU、ROM、RAM及び外部記憶装置を含むコンピュータにより構成されている。なお、コンピュータは、画像処理用のICと、当該ICや撮像装置3等の制御を行うマイクロコンピュータとを組み合わせて構成するなど、適宜に構成されてよい。
制御部9は、例えば、視覚センサ7からの画像(信号)に基づいて運転者の視点情報及び視線情報を取得する画像処理部11と、その取得された情報に基づいて撮像装置3を制御する表示範囲変更部13とを有している。なお、視覚センサ7及び画像処理部11は、視点・視線検出センサ15を構成している。
画像処理部11は、例えば、視覚センサ7により撮像された画像において運転者の頭又は瞳を特定し、また、その特定した頭又は瞳の座標を特定する。すなわち、画像処理部11は、視点の座標を特定する。そして、画像処理部11は、視覚センサ7から順次取得される画像に基づいて、視点の座標の変化を監視し、視点の移動方向及び移動距離を検出する。
なお、このような視点の検出は、例えば、公知の撮像装置のオートフォーカスにおいて利用されている頭又は瞳の検出技術により実現されてよい。視点の座標は、頭又は瞳の図形重心等の、頭又は瞳のうちの適宜な代表点の座標でよい。視点の座標、移動方向又は移動距離は、実際の縮尺とは異なる数値(例えば画素数)により表わされるものであってもよいし、実際の縮尺の数値により表わされるものであってもよい。実際の縮尺の数値は、予め入力された視覚センサ7の位置情報及び視野情報等に基づいて算出される。
また、画像処理部11は、例えば、視覚センサ7により撮像された画像において運転者の頭又は瞳の向きを特定する。すなわち、画像処理部11は、運転者の見ている方向(広義の視線)を特定する。画像処理部11若しくは表示範囲変更部13は、運転者の見ている方向と、上述のように特定した視点の座標(実際の縮尺であることが好ましい)とから、視点から運転者が見ている方向へ延ばした直線(狭義の視線)を特定可能である。
なお、このような視線の検出は、撮像装置のオートフォーカスや障害者のコミュニケーション支援装置において利用されている公知の視線入力技術により実現されてよい。視線の情報は、角度(方角)により表わされるものであってもよいし、座標により表わされるものであってもよいし、その双方により表わされるものであってもよい。
撮像装置3は、例えば、撮像素子としてのCMOS(イメージ)センサ17を含んで構成されている。CMOSセンサ17は、公知のように、XYアドレス型の撮像素子である。すなわち、CMOSセンサ17は、XY方向(図3の紙面左右方向)に配列された複数のセル19(画素)と、複数のセル19に接続されたX走査シフトレジスタ21X及びY走査シフトレジスタ21Y(以下、両者を区別せずに単に「走査シフトレジスタ21」ということがある。)とを有している。各セル19は、光電変換素子を含んで構成され、受光した光の量に応じた量の信号電荷を蓄える。そして、CMOSセンサ17は、走査シフトレジスタ21により任意のセル19を選択して(実際にはXY方向に順次選択して)、その選択したセル19に蓄積された信号電荷を読み出す。
従って、CMOSセンサ17は、全てのセル19のうち一部のセル19のみについて、その蓄積した信号電荷を出力することが可能である。すなわち、CMOSセンサ17は、視野51に対応する画像信号のうち、表示範囲53に対応する画像信号のみを出力可能である。なお、市販のCMOSセンサは、画像信号を出力する範囲を内部的に補正する機能を有していることがあり、その機能を上記の動作に利用してもよい。
表示範囲変更部13は、撮像装置3の走査シフトレジスタ21を制御することにより、信号電荷が読み出されるセル19を含む範囲を規定し、ひいては、表示範囲53を規定する。また、表示範囲変更部13は、信号電荷が読み出されるセル19を含む範囲の、CMOSセンサ17の受光面上の位置を変更することにより、表示範囲53の視野51内の位置を変更する。この表示範囲53の位置の変更は、画像処理部11からの視点情報及び視線情報に基づいて行われる。
表示装置5は、撮像装置3から出力された画像信号に基づく画像を、その画像の全体の大きさが画面5aの一定の領域(例えば画面5aの全体)の大きさに一致するように、適宜に拡大乃至は縮小して、画面5aに表示する。従って、表示範囲変更部13によって撮像装置3が制御され、これにより、信号電荷が読み出されるセル19の範囲が規定され、また、その位置が変更されると、画面5aの一定の領域に表示される実際の風景の範囲(表示範囲53)が規定され、また、その位置が変更される。
図4は、図2を参照して説明した動作を実現するために、制御部9が実行する処理の手順の一例を示すフローチャートである。この処理は、例えば、イグニッションキーにより車両101の電源をONしたときに開始され、所定の間隔(例えば0.01〜0.1秒オーダー)で繰り返し実行される。なお、この間隔は、撮像装置3及び表示装置5の画像更新間隔よりも長くてよい。
ステップS1では、制御部9は、表示範囲53を予め設定された初期位置に設定する。そして、その初期位置の表示範囲53について、撮像装置3の撮像した画像が表示装置5により画面5aの一定の領域に表示される。
ステップS2では、制御部9は、視覚センサ7の撮像した画像に基づいて、視線情報を取得する。
ステップS3では、制御部9は、取得した視線情報に基づいて、運転者の視線が、画面5aの少なくとも一部を含む、予め設定された設定範囲に向けられているか否かを判定する。すなわち、制御部9は、運転者が画面5aを視認しているか否かを判定する。具体的には、制御部9は、例えば、運転者の見ている方向(広義の視線)が、予め設定された角度範囲に収まっているか否か判定したり、好適には、視点から運転者の見ている方向へ延びる直線(狭義の視線)が、予め設定された所定の面積の平面(例えば画面5a)を通過するか否かを判定する。
視線が設定範囲に向けられていると判定された場合、制御部9は、計時を開始する(ステップS4)。換言すれば、タイマをリセットする。一方、向けられていないと判定された場合、制御部9は、計時中か否か判定する(ステップS5)。換言すれば、制御部9は、これまでに一旦は視線が設定範囲に向けられたか否か判定する。計時中でないと判定された場合は、ステップS2に戻る。
従って、運転者が画面5aを一回も見ていない場合においては、表示範囲53は、初期位置のままであり、視点の移動に応じた表示範囲53の位置の変更は行われない。これにより、無駄に表示範囲53が変更されることが抑制される。また、運転者が画面5aを見始めたときの表示範囲53の位置を一定の位置とすることができる。なお、ステップS3の設定範囲は、車両101の製造者において設定されてもよいし、運転者において設定されてもよい。
ステップS4にて計時が開始され、又は、ステップS5において計時中と判定された場合、制御部9は、ステップS4の計時開始から所定の時間が経過したか否か判定する(ステップS6)。この所定の時間は、図4のフローチャートの実行周期よりも長い時間である。そして、制御部9は、所定の時間が経過したと判定した場合は、ステップS1に戻り、経過していないと判定した場合は、ステップS7に進む。
従って、運転者が、一定の時間、画面5aを見ていない場合には、表示範囲53は初期位置に戻される。これにより、画面5aを再度見始めたときに、表示範囲53の位置を一定の位置とすることができる。
一方、一定の時間内であれば、運転者が画面5aを見ていない間においても、後述の手順によって、視点の移動に伴って表示範囲53の位置は変更される。これにより、ミラーを見ていなくても視点が移動すれば、その後、視線をミラーに戻したときに、視点の移動に伴ってミラーに映し出される範囲が変化しているのと同様の状況が実現される。
なお、ステップS6の所定の時間の長さは、運転の容易性等の観点から適宜に設定されてよく、また、車両101の製造者において設定されても、運転者において設定されてもよい。
ステップS7では、制御部9は、視覚センサ7の撮像した画像に基づいて、視点情報を取得する。
ステップS8では、制御部9は、取得した視点情報に基づいて、視点が移動したか否か判定する。例えば、前回の視点情報と今回の視点情報とを比較して、その差が閾値を超えているか否かを判定する。なお、ステップS8を最初に実行するときには、移動は無しと判定される。また、3以上の複数時点の視点情報に基づいて判定が行われてもよい。
視点が移動していない場合、厳密にいえば、視点の移動が比較的微小である場合、制御部9は、ステップS2に戻る。従って、表示範囲53の位置の変更は行われない。これにより、運転者の意図していない視点の微小な揺れ等に応じて画面5aにおいて画像が頻繁に揺れるようなことが抑制され、画面5aの視認性が向上すると期待される。
視点が移動している場合、制御部9は、ステップS9に進み、視点の移動方向及び移動量に応じて、表示範囲53の新たな位置を算出する。例えば、制御部9は、既に述べたように、ミラーを見るときと同様の感覚で画面5aを見ることができるように新たな位置を算出する。すなわち、制御部9は、視点の移動方向とは反対側へ、また、視点の移動量に応じた量(例えば比例した量)で、表示範囲53を視野51内において移動させるための新たな位置を算出する。なお、表示範囲53が視野51の端に到達し、更にその端を超えて表示範囲53を移動させるような視点の移動があった場合は、例えば、表示範囲53の位置はそのままとされる。
ステップS10では、制御部9は、算出した新たな位置に表示範囲53を設定する。すなわち、制御部9は、CMOSセンサ17の制御において、信号電荷が読み出されるセル19を含む範囲の位置を変更する。そして、表示装置5においては、新たな位置の表示範囲53の画像が画面5aに表示される。その後、制御部9は、ステップS2に戻る。
以上のとおり、本実施形態では、車載撮像システム1は、車体103に設けられた撮像装置3と、車体103に設けられ、撮像装置3の視野51内の一部である表示範囲53についてのみ撮像装置3の撮像した画像を表示可能な表示装置5と、表示範囲53の視野51内における位置を変更する表示範囲変更部13とを有する。
従って、撮像装置3の姿勢を変化させる駆動装置を設けることなく、表示装置5において表示する実際の風景の範囲を変更することができる。その結果、撮像装置3の小型化乃至は軽量化を図ることができる。また、電気信号の処理の変更によって表示装置5に表示される実際の風景の範囲を変更することから、撮像装置3の姿勢を変化させる場合に比較して、迅速に表示装置5に表示される実際の風景の範囲を変化させることができる。
また、本実施形態では、撮像装置3は、車体103の後方を撮像可能に車体103の側方に設けられている。すなわち、車載撮像システム1は、サイドミラーの代わり若しくはサイドミラーの補助装置として機能するものである。
サイドミラー及び撮像装置3は、車体の側方に突出するものであることから、撮像装置3が小型化されると、車両101の空気抵抗を低減して走行性能を向上させたり、車両101の全体としての幅を小さくして駐車スペースを小さくしたりすることができる。
また、本実施形態では、車載撮像システム1は、車両101の運転者の視点の位置若しくは視点の移動を検出する視点検出センサ(視点・視線検出センサ15:視覚センサ7及び画像処理部11の組み合わせ)を更に有する。表示範囲変更部13は、視点検出センサの検出結果に応じて表示範囲53の位置を変更する。
従って、スイッチを操作したりすることなく、表示範囲53の位置を変更することができる。その結果、例えば、両手でハンドル操作をしながら表示範囲53の位置を変更することができ、車両の運転性が向上する。また、表示範囲53の位置変更の必要性を感じてから車載撮像システム1に表示範囲53の位置変更を指示するまでに必要な時間も短縮されると考えられる。その結果、運転者は、緊急時の対処を好適に行うことができると期待される。
また、本実施形態では、表示範囲変更部13は、視点・視線検出センサ15の検出結果から得られる視点の移動方向とは反対方向へ表示範囲53の位置を変更する。
従って、車載撮像システム1は、表示装置5の視認に対して、ミラーを視認するのと同様の感覚を運転者に提供することができる。その結果、運転者の車載撮像システム1の操作性が向上すると期待される。
また、本実施形態では、車載撮像システム1は、運転者の視線を検出する視線検出センサ(視点・視線検出センサ15)を更に有する。表示範囲変更部13は、視線検出センサの検出結果から得られる視線が(少なくとも一旦は)表示装置5の画面5aの少なくとも一部を含む所定の設定範囲に向けられたことを条件として、視点検出センサの検出結果に応じて表示範囲53の位置を変更する。
従って、既に述べたように、運転者が画面5aを見ていないときに無駄に表示範囲53の位置が変更されることが抑制される。また、運転者が画面5aを見始めたときの表示範囲53の位置を一定とすることも可能となる。
また、本実施形態では、視点検出センサ(視点・視線検出センサ15)は、運転者を撮像し、撮像した画像から運転者の頭又は目を特定することにより、運転者の視点位置又は移動を検出する。
従って、視点の検出方法が後述する実施形態に比較して直接的であり、精度良く視点を検出できると期待される。また、視点検出センサは、実施形態において示したように、その一部の構成を視線検出センサと兼用することができ、全体としてのコスト削減も期待される。
撮像装置3は、視野51のうち一部についてのみ画像の信号を出力可能なCMOSセンサ17を含んで構成されている。表示範囲変更部13は、CMOSセンサ17を制御し、これにより、表示範囲53についてのみ画像の信号を出力させて表示装置5に表示範囲53についてのみ撮像装置3の撮像した画像を表示させるとともに表示範囲53の位置を変更する。
従って、CMOSセンサ17から表示装置5への信号量が低減される。その結果、消費電力の抑制及び処理速度の向上が期待される。また、CMOSセンサは、既に述べたように、信号を出力する範囲を内部的に補正する機能を有していることがあり、その機能を利用することにより、設計変更を少なくすることができる。その結果、安価に表示範囲53の変更が実現されることが期待される。
<第2の実施形態>
図5は、第2の実施形態に係る車載撮像システム201の信号処理系の構成を示すブロック図である。
車載撮像システム201は、表示範囲変更部の構成(動作)、及び、撮像装置の撮像素子の構成のみが第1の実施形態の車載撮像システム1と相違する。具体的には、以下のとおりである。
車載撮像システム201の撮像装置203は、撮像素子としてのCCD(Charge Coupled Device)(イメージ)センサ217を含んで構成されている。CCDセンサ217は、公知のように、電荷転送型の撮像素子である。すなわち、CCDセンサ217は、XY方向(図5の紙面左右方向)に配列された複数のセル219(画素)を有している。各セル219は、光電変換素子を含んで構成され、受光した光の量に応じた量の信号電荷を蓄える。そして、CCDセンサ217は、いわゆるバケツリレーのようにセル219の電荷を隣のセル219へ転送することにより、順次セル219に蓄積された信号電荷を読み出す。
従って、CCDセンサ217は、基本的には、全てのセル219の蓄積した信号電荷を出力するものであり、一部のセル219についてのみ信号電荷を出力する機能は有していない。換言すれば、CCDセンサ217は、視野51に相当する画像信号を出力するものであり、表示範囲53に相当する画像信号のみを出力する機能は有していない。なお、撮像装置203は、撮像素子として、CMOSセンサ17を含んで構成され、全てのセル19の蓄積した信号電荷を出力するように構成されてもよい。
車載撮像システム201の制御部209において構成された表示範囲変更部213は、撮像装置203から出力された視野51に相当する画像信号から、表示範囲53に相当する画像信号を抽出し、表示装置5に出力する。表示装置5は、第1の実施形態と同様に、入力された画像信号に基づく画像を、その画像の全体の大きさが画面5aの一定の領域(例えば画面5aの全体)の大きさに一致するように、適宜に拡大乃至は縮小して、画面5aに表示する。
このようにして、表示装置5は、表示範囲についてのみ撮像装置203の撮像した画像を表示する。また、表示範囲変更部213は、信号を抽出する範囲の視野51内における位置を変更することにより、表示装置5に表示される範囲(表示範囲53)の位置を変更する。
以上の第2の実施形態においても、第1の実施形態と同様の効果が奏される。すなわち、撮像装置203の姿勢を変化させる駆動装置を設けることなく、表示装置5において表示する実際の風景の範囲を変更することができ、その結果、撮像装置203の小型化乃至は軽量化等の効果が奏される。
また、第2の実施形態では、撮像装置203は、その視野51に相当する広さの画像の信号を出力し、表示範囲変更部213は、視野51に相当する広さの画像の信号から一部の信号を抽出して表示装置5に出力するとともに、その信号を抽出する範囲の視野51内における位置を変更する。
従って、撮像装置203は、XYアドレス型の撮像素子を含んで構成されるものに限定されない。その結果、車載撮像システムの設計の自由度が向上する。
<第3の実施形態>
図6は、第3の実施形態に係る車載撮像システム301の要部(主として他の実施形態との相違点)を模式的に示す断面図である。
車載撮像システム301は、視点検出センサの構成のみが第1又は第2の実施形態と相違する。具体的には、以下のとおりである。
車載撮像システム301は、シート111が受ける荷重を検出する荷重センサ331を有している。荷重センサ331は、例えば、シート111の前後方向及び左右方向の複数位置に設けられている。また、車載撮像システム301は、シートベルト113が受ける荷重(引張荷重)を検出する荷重センサ333を有している。
運転者が視点(頭)を移動させるときには、シート111が受ける荷重及び/又はシートベルト113が受ける荷重が変化する。そこで、車載撮像システム301の制御部309は、荷重センサ331及び333の検出する荷重の変化に基づいて、運転者の視点の移動を検出する。
例えば、左右に配置された1対の荷重センサ331において、一方の荷重センサ331の検出する荷重が増加し、他方の荷重センサ331の検出する荷重が減少すれば、視点が前記一方に移動したと判定することができる。また、例えば、前後に配置された1対の荷重センサ331において、前方の荷重センサ331の検出する荷重が増加し、後方の荷重センサ331の検出する荷重が減少すれば、視点が前方乃至は上方へ移動したと判定することができる。
<第4の実施形態>
図7は、第4の実施形態の車載撮像システム401の要部(主として他の実施形態との相違点)を模式的に示す断面図である。
車載撮像システム401は、視点検出センサの構成のみが第1又は第2の実施形態と相違する。具体的には、以下のとおりである。
車載撮像システム401は、シートベルト113の変位(移動)を検出するセンサを有している。例えば、当該センサは、インストルメント・パネル105に設けられた発光素子431と、シートベルト113に設けられ、発光素子431からの光を受光する撮像素子433とを有している。車載撮像システム401の制御部409は、撮像素子433の撮像した画像において、発光素子431を特定するとともに、その座標を特定する。そして、制御部409は、その座標の変化を監視することにより、シートベルト113(撮像素子433)の変位を検出することができる。
運転者が視点(頭)を体ごと移動させるときには、シートベルト113が変位する。従って、制御部409は、シートベルト113の移動を検出することにより、運転者の視点の移動を検出することができる。例えば、シートベルト113が左右方向の一方へ移動すれば、制御部409は、視点が前記一方へ移動したと判定することができる。
本発明は、以上の実施形態に限定されず、種々の態様で実施されてよい。
撮像装置は、車両の側方に設けられ、車両の後方を撮像するものに限定されない。例えば、車両の前方に設けられ、車両前方の死角を撮像するものであってもよいし、車両の後方に設けられ、車両後方の死角を撮像するものであってもよいし、車両の内部若しくは外部に設けられ、バックミラーで視認すべき範囲を撮像するものであってもよいし、車両の内部に設けられ、客席を撮像するものであってもよい。
撮像装置の構成は、適宜な構成とされてよい。例えば、撮像装置は、広角レンズ(魚眼レンズ)を有していてもよい。この場合、死角を低減しつつ、小型化を図ることができる。なお、この場合、広角レンズによる歪を補正する画像処理が行われた画像が表示装置に表示されることが好ましい。
表示装置(画面)の配置位置は、インストルメント・パネルの上部中央に限定されず、適宜に設定されてよい。
例えば、1対のサイドミラーに代えて1対の撮像装置により車両の後方を撮像する場合において、1対の撮像装置の画像を表示する1対の表示装置は、運転者から見て左右に離して配置されていてもよい。具体的には、例えば、1対の表示装置は、インストルメント・パネルにおいて、メータ(ハンドル)を挟んで左右に配置されてよい。また、例えば、1対の表示装置は、左右のAピラー又は左右ドア内側に配置(フロントガラスを挟んで通常はサイドミラーが配置される位置の内側に配置)されてよい。
1対の表示装置が運転者から見て左右に離して配置されることにより、例えば、視覚センサによる視点・視線の判別が容易である、運転者が車両の周囲を表示装置により確認した後、目視に移行しやすい、等の効果が奏される。さらに、1対の表示装置がメータを挟んで左右に配置される場合においては、例えば、運転者の視線移動が少なくなるという効果が奏される。また、1対の表示装置がAピラー又はドア内側に配置される場合においては、例えば、サイドミラーと同様の感覚で表示装置を視認できるという効果が奏される。
表示範囲の位置変更は、視点の移動に応じて行われるものに限定されない。例えば、表示範囲の位置変更は、インストルメント・パネル等に設けられた専用の操作部材に対する操作に応じて行われてもよいし、タッチパネル式の表示装置の画面に対する操作に応じて行われてもよいし、バックギアへギアチェンジを行う等の運転操作に応じて行われてもよいし、車両と周囲の障害物との位置関係の変化等の運転状況に応じて行われてもよい。
また、表示範囲の位置変更が視点の移動に応じて行われる場合において、視点が検出される者は、運転者に限らず、同乗者であってもよい。また、視点の移動に応じた表示範囲の位置変更は、ミラーと同様の感覚を運転者等に与えるものでなくてもよい。例えば、視点の移動方向と同一の方向へ表示範囲が移動してもよい。
実施形態では、比較的短い周期で視点の移動を検出し、その視点の移動に応じて表示範囲を変更したから、表示範囲の位置は、あたかも撮像装置が姿勢を変化させているように、連続的に変更される。しかし、表示範囲の位置変更は、あたかも複数の撮像装置の間で画像が表示される撮像装置が切り換えられたかのように間欠的に行われてもよい。
また、表示範囲の位置変更は、その視野内における表示範囲の面積の変更を伴ってもよい。例えば、視点が表示装置の画面に近づいたときは、表示範囲を広くするようにしてもよい。このような表示範囲の変更も、ミラーに対して視点を移動させたときの感覚と同様の感覚を運転者等に提供できる。このような場合において、表示範囲は、一時的に視野と同等の広さとされることがあってもよい。
また、例えば、右折又は左折の際に方向指示器に連動して、表示範囲を広くし及び/又表示範囲の位置を変更し、表示範囲が巻き込み確認に必要な範囲(車両の後側方)を含むようにしてもよい。この場合、積極的に安全性向上のための情報を運転者に提供できる。なお、この態様においては、撮像装置が上述した広角レンズを有して、撮像装置の視野が広いことが好ましい。
図4に例示したフローチャートは、適宜に変更されてよい。例えば、ステップS4〜S6を省略するとともに、視線が表示装置に向けられていないときはステップS2に戻るようにしてもよい。すなわち、視線が表示装置に向けられているときのみ、視点の移動等に応じて表示範囲の位置を変更するようにしてもよい。逆に、ステップS2及び3も省略してしまい、視線が表示装置に向けられているか否かに関わらず、視点の移動等に応じて表示範囲の位置を変更するようにしてもよい。また、例えば、ステップS8は省略し、視点の微小な移動にも表示範囲の位置変更が応じるようにしてもよい。
撮像装置の視野内の一部である表示範囲についてのみ撮像装置の撮像した画像を表示する場合において、表示範囲外の画像信号が表示範囲の画像の表示に利用されてもよい。例えば、表示範囲に相当する画像の外周縁の画素の色補正等に、表示範囲外の画像信号が利用されてもよい。
また、第1の実施形態と第2の実施形態とを適宜に組み合わせてもよい。例えば、表示範囲よりも少し広い範囲で画像信号を撮像装置に出力させ、その画像信号から表示範囲に相当する画像信号を抽出するとともに、表示範囲外の画像信号を上述のような補正等に利用してよい。
本発明の車載撮像システムにおいて、表示装置は、適宜な操作等に応じて、撮像装置の視野全体について撮像装置の撮像した画像を表示することがあってもよい。
本発明は、撮像装置の姿勢を変化させる駆動装置を不要とする。ただし、そのような駆動装置が設けられてもよい。駆動装置が設けられたとしても、例えば、表示範囲の変更は信号処理を変更するだけであるから、表示装置に表示される実際の風景の範囲を迅速に切り換えることができる等の効果が奏される。また、駆動装置が設けられることにより、例えば、駐車後、撮像装置を車体側へ移動(収納)させて、車両全体の幅を狭くしたり、走行前に撮像装置の視野の範囲を調整したり、駆動装置による撮像装置の姿勢の変化と表示範囲の変更とを組み合わせて表示装置に表示される実際の風景の範囲を大きく変更したりすることができる。