JP6072411B2 - 燃料圧力制御装置および同装置を用いた燃料供給装置 - Google Patents

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Description

本発明は、燃料ポンプからインジェクションへ向かう燃料を調圧するのに用いられる燃料圧力制御装置および同装置を用いた燃料供給装置に関する。
自動二輪車(車両)では、キャブレータに代わり、インジェクタを用いて燃料を噴射する方式が普及している。こうした方式には、燃料ポンプからの燃料を、燃料圧力制御装置により調圧してから、インジェクタへ供給することが行われている。
燃料圧力制御装置は、自動二輪車に搭載された燃料ポンプからインジェクタへ至る経路に介装される装置で、多くはアキュームレータを用いた構造が採用されている。
この燃料圧力制御装置には、特許文献1に開示されているような室空間を、付勢部材で付勢されるダイヤフラムにより区画し、ダイヤフラムを挟んだ付勢方向側に上記経路と連通する調圧室としたアキュームレータを用い、この調圧室の入出部に、調圧室が所定圧力になるにしたがい流入を止める閉弁構造を設けた構造が用いられる。つまり、燃料圧力が減少するときは、調圧室内に燃料が導入され、調圧室内が所定の燃料圧力になると閉弁して圧力を保持し、ダイヤフラムの変位で調圧を続ける構造となっている。
特開2000−265924号公報
この燃料圧力制御装置は、燃料圧力が上昇した場合、ダイヤフラムの変位で、過剰圧力を抑える。
ところで、自動二輪車でも、かなり高圧の燃料が用いられる傾向にある。
燃料圧力制御装置は、燃料ポンプからの燃料の圧力が高くなると、過剰圧力の燃料を抑える能力も高くなるが、ダイヤフラムの変位で過剰圧力を抑える構造は、その能力が閉空間の背圧室で制限される。しかも、ダイヤフラムに過度の負担が強いられるので、燃料脈動の吸収は安定して行われにくくなる。そのため、多くは特許文献1にも開示されているように、別途、専用のダンパー、すなわち脈動を吸収するパルセーションダンパを併用して、脈動の吸収性能を補うことが行われている。
これでは、かなり高圧の燃料を用いる場合、燃料圧力制御装置の他にパルセーションダンパを用いることが余儀なくされ、実質的に大形化を招いたり、コスト的な負担が強いられたりする。
そこで、本発明の目的は、一つのアキュームレータ構造だけで、ダイヤフラムに負担を強いずに、過剰圧力の燃料に十分に対応し得る調圧、さらには燃料の脈動の吸収が十分に行える燃料圧力制御装置および同装置を用いた燃料供給装置を提供することにある。
請求項1の発明は、上記目的を達成するために燃料圧力制御装置は、アキュームレータを、燃料圧力を受けて変位するダイヤフラムと、ダイヤフラムにより室空間が区画され、ダイヤフラムを挟んで経路側に開口する調圧室と、ダイヤフラムの変位を許容する背圧室とを構成するアキュームレータ本体と、ダイヤフラムを調圧室側へ付勢する第一付勢部材と、ダイヤフラムが調圧室の燃料圧力を受けて所定値以上に変位するとき、調圧室の過剰圧力の燃料を調圧室外へ逃がすリリース手段とを具備して構成した。
さらに、簡単な構造ですむよう、リリース手段は、調圧室と背圧室との間を連通するように設けられた燃料通路と、燃料通路内であって調圧室と背圧室の間に介在する逆止弁と、逆止弁をダイヤフラムの付勢方向と反対側に付勢する第二付勢部材と、ダイヤフラムが調圧室の燃料圧力を受けて所定値以上変位するとき、逆止弁を開かせる開放手段と、開放した逆止弁からの燃料を調圧室外へ導出させる導出部とを有し、逆止弁は、第二付勢部材により付勢される弁体と、該弁体と接離する弁座部材とを有し、開放手段は、先端部が弁体と当接するピン部材を有し、該ピン部材の先端部が第二付勢部材の付勢力に抗して弁体を押すことで逆止弁を開かせるように構成した。
請求項の発明は、さらに上記目的に加え、燃料圧力制御装置の小形化が図れるよう、燃料通路および逆止弁は、ダイヤフラムに設けられ、開放手段は、ピン部材が背圧室の底面から突き出すよう背圧室に設けられ、導出部は、背圧室の一部を開放して形成されることとした。
請求項の発明は、小形で、高い調圧性能、脈動吸収性能を有する燃料供給装置が得られるよう、請求項1または請求項2に記載の燃料圧力制御装置のアキュームレータ本体に、燃料ポンプを一体的に連結する構成を採用した。
請求項の発明は、燃料ポンプの吐出口で生じる負圧が吐出性能に影響しないよう、燃料ポンプとアキュームレータ本体とを、燃料ポンプの吐出口とアキューム本体の調圧室が対向する位置で一体的に連結する構成を採用した。
本発明によれば、調圧室の燃料圧力が所定の燃料圧力以上になり、ダイヤフラムの変位が所定変位に達すると、過剰燃料圧力の燃料を調圧室外へ逃がすから、どのような過剰燃料圧力でもダイヤフラムに負担を強いずに調圧ができる。しかも、燃料噴射に伴う脈動の吸収は、所定の燃料圧力を保ちながら変位するダイヤフラムで行われるから、燃料圧力の調圧、脈動の吸収とも安定して行うことができる。特にダイヤフラムは、所定変位に達するまでの燃料圧力範囲では脈動の吸収を十分に担うから、従来のように別途、ダンパーを用いる必要がなくなる。
それ故、一つのアキュームレータ構造だけ、すなわち単品で、ダイヤフラムに負担を強いずに、十分な調圧性能、脈動吸収性能を有する燃料圧力制御装置が提供でき、小形化やコストの低減化に貢献する。
また、リリース手段に、逆止弁、先端部が同逆止弁の弁体と当接するピン部材により第二付勢部材の付勢力に抗して弁体を押して同逆止弁を開かせる構造を用いたり、ダイヤフラムに同逆止弁を設ける構造や、同逆止弁を開放する構造を背圧室に設ける構造を用いたりすることで、燃料圧力制御装置の小型化を維持しつつ、簡単な構造で調圧室外へ燃料を開放する構造とすることができる。そのうえ、ダイヤフラムの背圧室は燃料を逃がす構造となっているので、たとえダイヤフラムが破損して、ベーパーなど、燃料に含まれる揮発成分が調圧室から背圧室へ漏れることがあっても、大気中に漏れることはなく、安全性の点にも優れる。
また、燃料圧力制御装置を燃料ポンプと一体的に連結することで、小形で、高い調圧性能、脈動吸収性能を有する燃料供給装置が提供できる。しかも、当該連結を、燃料ポンプの吐出口とアキューム本体の調圧室が対向する位置で連結する構造としたことで、燃料ポンプの吐出口で生じる負圧が吐出性能に影響しないようにでき、インジェクタへ燃料を安定した燃料圧力で供給できる。
本発明の一実施形態に係る燃料圧力制御装置、燃料供給装置を搭載した自動二輪車を示す側面図。 燃料圧力制御装置を、同装置と一体的に連結された燃料ポンプと共に示す斜視図。 同燃料圧力制御装置の内部構造を示す図2中のA−A線に沿う断面図。 燃料圧力制御装置の燃料を調圧したり燃料脈動を吸収したりする挙動を説明する断面図。
以下、本発明を図1ないし図4に示す一実施形態にもとづいて説明する。
図1は、本発明の燃料圧力制御装置を据え付けた自動二輪車の概略的な側面図を示している。図1中の矢印Fは自動二輪車のフロント方向を示し、矢印Rは自動二輪車のリア方向を示している。
まず、自動二輪車の各部を説明すると、同二輪車は前後方向に延びるメインフレーム部材、例えばメインチューブ部材1(一部しか図示しない)を有する。同メインチューブ部材1のフロント側の端部には、フロントフォーク3を介して前輪5が懸架され、同じくリア側の端部には、スイングアーム部材7を介して後輪9が懸架される。
メインチューブ部材1には、フロント側から順に燃料タンク11、シート12が据え付けられている。ちなみにメインチューブ部材1を挟んだ片側(右側)には、ブレーキペダルやスロットルグリップなど加減速系統(図示しない)が設けられ、反対側(左側)には、クラッチレバーやシフトペダルなど変速系統(図示しない)が設けられる。
メインチューブ部材1から下側に延びたダウンチューブ部材1a、燃料タンク11で囲まれる空間(エンジンルーム)には、内燃機関、例えばピストン13aを往復動可能に収めたレシプロ式のエンジン13が据え付けられている。このエンジン13の吸気側には、短管部材15(吸気管部材)、スロットルバルブ装置17が連結され、エンジン13の吸入側ポート(図示しない)とエアクリーナ(図示しない)との間をつなぐ吸気路を構成している。
短管部材15には、図2にも示されるように燃料供給装置21が設けられている。この燃料供給装置21は、例えば燃料ポンプ20と燃料圧力制御装置であるところのプレッシャレギュレータ61とを一体的に連結し、これに電子制御式のインジェクタ19、燃料ポンプ20を駆動するモータ部25などを組み付けた構造が用いられている。
図2には、この燃料供給装置21の全体および内部構造(点線部分)が示され、図3には、この燃料供給装置21の各部の断面(図2中のA−A線に沿う断面)が示されている。
このうち燃料ポンプ20は、図3にも示されるように筒状のポンプ本体33内に、筒形のプランジャ式ポンプ部35、同ポンプ部35の吸込能力を補うダイヤフラム式ポンプ部49を収めて構成される。さらに述べれば、プランジャ式ポンプ部35は、筒形のスリーブ37、同スリーブ37内に往復動可能に収めたプランジャ39、同プランジャ39の内腔に組み付けた吸入バルブ41、スリーブ37の吐出側に組み付けた吐出バルブ43を有して構成される。
モータ部25は、図2および図3に示されるように例えばモータケース27aにDCモータ27を内蔵して構成される。DCモータ27の出力部は、回転運動を往復運動に変換するカム機構29(変換機構)を介して、プランジャ39に接続され、プランジャ39が、DCモータ27により往復駆動されると、プランジャ39内の燃料(吸込燃料)が吸入バルブ41を通じて、スリーブ端に形成される加圧室45へ導かれ、同加圧室45で加圧され、吐出バルブ43から吐出されるようにしている。
ダイヤフラム式ポンプ部49は、図3に示されるようにスリーブ37の吸込側に形成したダイヤフラム室51、同ダイヤフラム室51を塞ぐように設けたダイヤフラム53、同ダイヤフラム53の中央部をプランジャ39端に固定する固定具55を有して構成される。ダイヤフラム室51は、通路57aを介して吸込バルブ57につなげてある。これで、プランジャ39が往復動すると、ダイヤフラム53が振幅し、同振幅がもたらすダイヤフラム室51でのポンプ動作により、吸込バルブ57から燃料を吸い込み、プランジャ39内へ導くようにしている。ちなみに、インジェクタ19は、ポンプ本体33に形成された接続口部33cに組み付けてある。
プレッシャレギュレータ61には、図3に示されるように例えば円形のダイヤフラム63で構成されるアキュームレータ65が用いられている。このアキュームレータ65が、ポンプ本体33の吐出側の端に着脱可能に連結されている。この連結により、プレッシャレギュレータ61の全体を、プランジャ式ポンプ部35の吐出端となる吐出バルブ43の出口側に形成された吐出口44から、インジェクタ19の基部、すなわち接続口部33aへ至る通路33b(経路)の途中に介装させている。
このアキュームレータ65(プレッシャレギュレータ61)には、ダイヤフラム63に過大な負担を強いずに、十分に、プランジャ式ポンプ部35から吐出される燃料を調圧したり、インジェクタ19の燃料噴射に伴う燃料の脈動を吸収したりする工夫が施されている。
この技術を説明するべく、図2および図3を参照してアキュームレータ65の構造を説明すると、69は、ポンプ本体33の吐出側の端面に、同端面の全体を覆い隠すように連結されたアキュームレータ本体、71は、ポンプ本体33と向き合う端面に形成されたアキュームレータ本体69の室空間である。
ちなみに、アキュームレータ本体69には、ダイヤフラム室51と、吸込路57aおよび吸込バルブ57とを介して連通する吸込用接続口体74aや、同じくリタ−ン路59aおよびリターンバルブ59とを介して連通するリターン用接続口体74bが設けられ、燃料タンク11の燃料を吸込用接続口体74aからダイヤフラム式ポンプ部49へ導いたり、プランジャ式ポンプ部35で吸い込まれない余剰燃料をリターン用接続口体74bから燃料タンク11へ戻せるようにしてある。図3中の二点鎖線76a,76bは、吸込用接続口体74aやリターン用接続口体74bと燃料タンク11間を接続するホースを示している。
アキュームレータ本体69の内部の説明に戻ると、上記室空間71は、例えば吐出口44と同心状の有筒状の空間でなる。この室空間71内には、同室空間71を吐出口44側とその反対側とに区画するようにダイヤフラム63が組み付けられる。ダイヤフラム63は、第一付勢手段であるスプリング部材75により、吐出口44側へ付勢され、ダイヤフラム63を挟んで通路33b(経路)側に、当該通路側33bに開口する調圧室77を形成し、反対側にダイヤフラム63の変位を許容する背圧室67を形成している。この背圧室67にスプリング部材75が設置してある。
つまり、調圧室77に対し、吐出口44は開口し、接続口部33c(インジェクタ端が組付く部分)から延びる通路33b連通している。これで、インジェクタ18へ向かう経路の途中に、調圧室77の燃料出入り部を配置させている。これにより、アキュームレータ65は、プランジャ式ポンプ部35から燃料が調圧室77へ導入され、ダイヤフラム63の変位により所定の燃料圧力まで蓄えられ、同蓄えた燃料がインジェクタ19へ供給される。
また、調圧室77は、プランジャ式ポンプ部35の吐出口44に対向するように形成され、同対向する位置でアキュームレータ65とプランジャ式ポンプ部35とを連結させている。この構造にて、燃料の吸入、吐出の際に生じるプランジャ式ポンプ部35の圧力変動を調圧室77にて効果的に吸収し、インジェクタ19へ安定した燃料圧力で供給できる構造にしている。
このアキュームレータ65(アキュームレータ本体69)に、調圧室77の燃料圧力が所定圧力(燃料噴射に適した圧力)以上になるとき、調圧室77の過剰圧力の燃料を調圧室77外へ逃がすリリース機構78(本願のリリース手段に相当)が設けられている。
リリース機構78は、調圧室77と背圧室67との間を連通する燃料通路79と、調圧室77の燃料の圧力の上昇にしたがい燃料通路79を閉じるレギュレート弁81(本願の逆止弁に相当)と、調圧室77の燃料圧力が所定の燃料圧力以上になりダイヤフラム63が所定値以上に変位するとき、上記閉じたレギュレート弁81を開かせる開放具83(本願の開放手段に相当)と、開放したレギュレート弁81から燃料を調圧室77外へ導出させる導出部84とを有して構成される。
プレッシャレギュレータ61を小形にするため、リリース機構78は、燃料通路79およびレギュレート弁81を、ダイヤフラム73に据付け、開放具83を背圧室67に据付けている。また導出部84は、例えば背圧室67の側壁の一部を開放させた開口で形成される。この導出部84がリターン用接続口体74bと連通され、燃料が調圧室77外へ導けるようにしている。
さらに述べれば、レギュレート弁81は、ダイヤフラム63の中央部に筒形の弁室部材83を設けて、調圧室77と背圧室67とを連通させる燃料通路79を形成している。そして、この燃料通路79に弁構造を設けて、レギュレート弁81を構成している。
すなわち、レギュレート弁81は、燃料通路79に、弁体であるボール85と、同ボール85を付勢するスプリング部材87(戻し用:本願の第二付勢部材に相当)と、上記ボール85と接離する弁座部材89とを設けて、燃料通路79に、背圧室67から調圧室77へ向かう方向への燃料の流通を許し、また調圧室77の圧力が上昇するにしたがい燃料通路79を閉じる機能をもつ逆止弁を構成してなる。この逆止弁を閉じながらのダイヤフラム63の変位により、調圧室77にプランジャ式ポンプ部35からの燃料が導入されるようにしている。
開放具83は、例えば背圧室67の底面中央から突き出したピン部材86で構成される。ピン部材86の先端部は、例えば弁座部材89の弁孔へ挿脱自在に挿入される。このピン部材86の先端側の外周面には、例えば逃がし用の溝部86a(図3にだけに二点鎖線で図示)が、複数条、形成されている。このピン部材86は、調圧室77の燃料圧力が所定の圧力(燃料噴射に適した圧力)になると、弁座部材89の弁孔を塞いでいるボール85の下面と接する設定としてある(閉弁)。これにより、調圧室77の燃料圧力が所定の燃料圧力以上になり、ダイヤフラム63の変位が所定変位に達すると、ピン部材86の先端部でボール85を押し上げ、弁孔を開放、つまり燃料通路79を開放させて、調圧室77の過剰圧力の燃料を、開放する溝部86aを通じて調圧室77外、ここでは背圧室67、導出部84を通じてリターン用接続口体74bへ逃がせるようにしている。
この過剰圧力の燃料を逃がす構造により、ダイヤフラム63に過度の負担を強いずに、燃料の調圧や燃料噴射に伴う脈動の吸収が行われるようにしている。この挙動が図4(a)〜(e)に示されている。
図4(a)〜(e)を参照して、この燃料の調圧や脈動の吸収を説明する。
今、燃料タンク11、各ポンプ部35,49、プレッシャレギュレータ61の各部は、燃料タンク11の燃料で満たされているとする。
このとき、モータ部25が作動し、同モータ部25の駆動力で、ダイヤフラム式ポンプ部49、プランジャ式ポンプ部35が駆動されるとする。
すると、燃料タンク11の燃料は、ダイヤフラム式ポンプ部49のダイヤフラム53がなすポンプ動作により、吸込用接続口体74aから吸い込まれ、プランジャ式ポンプ部35へ導かれる。続いて燃料は、プランジャ式ポンプ部35のプランジャ39の往復動により、スリーブ端の加圧室45で加圧され、吐出バルブ43からポンプ本体33端の吐出口44を通じて、プレッシャレギュレータ61へ導出される。
このとき、プランジャ式ポンプ部35で吸い込まれない余剰燃料は、ダイヤフラム式ポンプ部49から、リターン用接続口体74bを通り、燃料タンク11へ戻る。
プレッシャレギュレータ61では、図4(a)に示されるように吐出口44の燃料が調圧室77へ導入される。この燃料圧力により、ボール85は弁座部材89と接し、弁座部材89の弁孔を塞ぐ。これにより、ダイヤフラム63は、燃料通路79が塞がれたまま、プランジャ動作に追従して、スプリング部材75の弾性力に抗しながら変位し、燃料を加圧しながら調圧室77に蓄えていく。
ダイヤフラム63の変位が進み、調圧室77の燃料圧力が所定の圧力(燃料噴射に適した圧力)に上昇すると、図4(b)に示されるように弁孔を閉じているボール85がピン部材86の先端部と接する。さらにダイヤフラム63の変位が進み、調圧室77の燃料圧力が所定圧力以上になると、図4(c)に示されるようにピン部材86によるボール85の押し上げにより、弁座部材89の弁孔を開放させる。
すると、調圧室77の過剰圧力の燃料は、ピン部材86の外周面の溝部86a(図4には図示せず)を通して背圧室67に導入される。続いて過剰圧力の燃料は、背圧室67の導出部84から、リターン用接続口体74bを通じて燃料タンク11へ戻される(調圧室77外)。この過剰燃料圧力の逃がしにより、図4(d)に示されるように調圧室77の燃料は、所定の燃料圧力に保たれる。
こうした燃料の導入、過剰燃料圧力の逃がしの繰り返しにより、調圧室77の燃料は、ダイヤフラム73に過大な負担を強いずに、所定の燃料圧力に保ち続けられる。
この間、インジェクタ19から燃料噴射が行われるとする。すると、図4(e)に示されるようにダイヤフラム63は、調圧室77から導出された噴射燃料分だけ戻り(調圧室77の体積の減少による)、調圧室77の燃料圧力を保持し続ける。これにより、十分にダイヤフラム63の機能を発揮させながら、燃料噴射に伴う脈動の吸収が行われる。
このように調圧室77外へ過剰燃料圧力の燃料を逃がすことにより、どのような過剰燃料圧力でもダイヤフラム63に過大な負担を強いずに調圧ができる。しかも、燃料噴射に伴う燃料脈動の吸収は、燃料圧力を保ちながら変位するダイヤフラム63で行われるから、燃料圧力の調圧、脈動の吸収とも安定して行うことができる。特にダイヤフラム63は、所定変位に達するまでの燃料圧力範囲で、燃料脈動の吸収を十分に担うから、従来のように別途、専用のダンパーを用いなくともすむ。
それ故、一つのアキュームレータ構造といった単品で、ダイヤフラム63に負担を強いず、十分な調圧性能、脈動吸収性能を発揮させるプレッシャレギュレータ61が提供できる。このため、かなり高い圧力の燃料を用いるエンジン13では、燃料噴射系統の小形化やコストの低減化が図れる。
しかも、過剰な燃料圧力を逃がす構造は、調圧室77と背圧室67との間を連通する燃料通路79、レギュレート弁81(逆止弁)、閉じたレギュレート弁81を開かせる開放具83(開放手段)、開放したレギュレート弁81から過剰の燃料圧力を調圧室77外へ導出させる導出部84を組み合わせるだけでよく、簡単な構造ですむ。
そのうえ、プレッシャレギュレータ61は、ダイヤフラム63に燃料通路79、レギュレート弁81を据付け、背圧室67に開放具83を据付け、導出部84を背圧室67に形成すると、プレッシャレギュレータ61のスペースを効率よく活用して据付けが行えるから、プレッシャレギュレータ61の小形化を図ることができる。特に背圧室67は、燃料を逃がす構造にしているので、たとえダイヤフラム63が破損して、ベーパーなど、燃料に含まれる揮発成分が調圧室77から背圧室67へ漏れることがあっても、大気中に漏れることはなく、安全性の点にも優れた構造にできる。
特にプレッシャレギュレータ61と燃料ポンプ20と一体的に連結した燃料供給装置21は、小形で、高い調圧性能、脈動吸収性能を有するので、その効果は大きい。しかも、プレッシャレギュレータ61と燃料ポンプ20とは、吐出室44と調圧室77とが対向する位置で連結したので、燃料ポンプ20の吐出口44で生じる負圧が吐出性能に影響しないようにでき、インジェクタ19へ燃料を安定した燃料圧力で供給できる。
なお、本発明は一実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々可変して実施しても構わない。例えば一実施形態では、リリース手段として、外周面に溝部を有するピン部材でボールを押し上げるリリース機構を採用したが、これに限らず、それ以外の機構や構造で、過剰燃料圧力の燃料を逃がすようにしてもよい。また一実施形態では、本発明を自動二輪車に適用した例を挙げたが、これに限らず、四輪車など他の車両に適用してもよい。
13 エンジン(内燃機関)
19 インジェクタ
20 燃料ポンプ
21 燃料供給装置
44 吐出口
61 プレッシャレギュレータ(燃料圧力制御装置)
63 ダイヤフラム
65 アキュームレータ
67 背圧室
69 アキュームレータ本体
75 スプリング部材(第一付勢部材)
77 調圧室
78 リリース機構(リリース手段)
79 燃料通路
81 レギュレート弁(逆止弁)
84 導出部
86 ピン部材(開放手段)
87 スプリング部材(第二付勢部材)

Claims (4)

  1. 内燃機関の燃料ポンプからインジェクタへ至る経路に介装可能なアキュームレータで構成される燃料圧力制御装置であって、
    前記アキュームレータは、
    燃料圧力を受けて変位するダイヤフラムと、
    前記ダイヤフラムにより室空間が区画され、当該ダイヤフラムを挟んで前記経路側に開口する調圧室と、前記ダイヤフラムの変位を許容する背圧室とを構成するアキュームレータ本体と、
    前記ダイヤフラムを前記調圧室側へ付勢する第一付勢部材と、
    前記ダイヤフラムが前記調圧室の燃料圧力を受けて所定値以上に変位するとき、前記調圧室の過剰圧力の燃料を調圧室外へ逃がすリリース手段と
    を具備し、
    前記リリース手段は、
    前記調圧室と前記背圧室との間を連通するように設けられた燃料通路と、
    前記燃料通路内であって前記調圧室と前記背圧室との間に介在する逆止弁と、
    前記逆止弁を前記ダイヤフラムの付勢方向と反対側に付勢する第二付勢部材と、
    前記ダイヤフラムが前記調圧室の燃料圧力を受けて所定値以上変位するとき、で前記逆止弁を開かせる開放手段と、
    前記開放した逆止弁からの燃料を調圧室外へ導出させる導出部とを有して構成され
    前記逆止弁は、前記第二付勢部材により付勢される弁体と、該弁体と接離する弁座部材とを有し、
    前記開放手段は、先端部が前記弁体と当接するピン部材を有し、該ピン部材の前記先端部が前記第二付勢部材の付勢力に抗して前記弁体を押すことで前記逆止弁を開かせることを特徴とする燃料圧力制御装置。
  2. 前記燃料通路および前記逆止弁は、前記ダイヤフラムに設けられ、
    前記開放手段は、前記ピン部材が前記背圧室の底面から突き出すよう前記背圧室に設けられ、
    前記導出部は、前記背圧室の一部を開放して形成される
    ことを特徴とする請求項1に記載の燃料圧力制御装置。
  3. 請求項1または請求項2に記載の燃料圧力制御装置と、
    前記燃料圧力制御装置の前記アキュームレータ本体と一体的に連結された燃料ポンプと
    を具備してなることを特徴とする燃料供給装置。
  4. 前記燃料ポンプと前記アキュームレータ本体とは、前記燃料ポンプの吐出口と前記アキューム本体の前記調圧室が対向する位置で一体的に連結されることを特徴とする請求項3に記載の燃料供給装置。
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