JP6072214B2 - 吸収性物品 - Google Patents

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Description

本発明は、吸収性物品に関する。
生理用ナプキンや失禁パッド等の吸収性物品は、経血等の排泄物の漏れを抑制するため、着用者の身体形状に沿うように変形することが望まれる。このような身体形状に沿って変形することができる吸収性物品として、例えば、特許文献1には、吸収体が、該吸収体における平均曲げ剛性よりも曲げ剛性が低く、且つ隣接する領域よりも曲げ剛性が低い折曲部を有する吸収性物品が開示されている。この特許文献1に開示された吸収性物品は、吸収体に形成された折曲部を起点として吸収性物品が柔軟に変形するので、着用者の身体形状に沿ってフィットし易く、柔らかい使用感も得ることができる。
特許文献2には、吸収体が、その一部において密度及び坪量が高められた領域を有し、且つ、該密度及び坪量が高められた領域中に局部的に更に吸収体の密度が高められた部分を有し、該部分が対応する凹部を有する吸収性物品が開示されている。この特許文献2に開示された吸収性物品は、吸収体が密度の高められた複数の凹部を有しているため、吸収体が柔軟に変形することができる。
また、特許文献3には、上層吸収要素が、合成繊維が含まれる上層吸収体と、この上層吸収体を囲繞する合成繊維の不織布からなる被包シートとから構成され、前記上層吸収要素には、前記被包シートの表面側からのエンボスによって、該上層吸収体を幅方向に横断する横断溝が長手方向に間隔を空けて複数設けられた吸収性物品が開示されている。この特許文献3に開示された吸収性物品は、上層吸収体とこの上層吸収体を囲繞する不織布からなる被包シートとをエンボスによって一体化した構造を有し、そのエンボス溝が起点となって折れ曲がるため、身体の丸みに沿って滑らかに湾曲することができる。
特開2008−229214号公報 特開2009−131417号公報 特開2011−136015号公報
しかしながら、特許文献1及び2に開示された吸収性物品は、吸収体に設けられた折曲部や凹部が、吸収体が折れ曲がる際の起点となるが、吸収体が搬送材やラップ材と貼り合わせられると、前記起点が搬送材等のテンションによって突っ張ってしまい、所期の柔軟性が十分に発揮されない虞があった。また、特許文献3に開示された吸収性物品は、エンボス溝が、上層吸収体と被包シートとを同時にエンボスすることによって形成されるため、エンボス溝間の被包シートが突っ張ってしまい、柔軟性が損なわれる虞があった。
そこで、本発明は、吸収体を搬送材やラップ材等に貼り合わせても十分な柔軟性を有し、快適な装着感の得られる吸収性物品を提供することを目的とする。
本発明の吸収性物品は、吸収体が、複数の貫通しないスリット部を有し且つ親水性繊維を含む親水性繊維層を少なくとも含み、前記親水性繊維層は、前記スリット部を有する面と反対側の面において、前記複数の貫通しないスリット部と前記吸収性物品の厚さ方向で対応する位置に、複数の凹部を有するものである。
本発明の吸収性物品は、吸収体が、複数の貫通しないスリット部を有する親水性繊維層を少なくとも含み、前記親水性繊維層が、前記スリット部を有する面と反対側の面において、前記複数の貫通しないスリット部と前記吸収性物品の厚さ方向で対応する位置に、複数の凹部を有することで、当該複数の凹部を起点として吸収体を容易に変形させることが可能となるため、吸収性物品として十分な柔軟性を有し、快適な装着感を提供することができる。
本発明によれば、十分な柔軟性を有し、快適な装着感が得られる吸収性物品を提供することができる。
図1は、本発明の一実施形態に係る吸収性物品の平面図である。 図2は、本発明の一実施形態に係る吸収性物品に用いられる吸収体の平面図である。 図3は、図2に示す吸収体の長手方向DLに延びる中央軸線CLに沿った部分断面図である。
以下、本発明の吸収性物品に係る好適な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る吸収性物品である生理用のナプキン1の平面図である。図1に示すように、ナプキン1は、平面視にて、長手方向DL及び該長手方向DLに直交する幅方向DWを有する縦長の形状を有している。ナプキン1は、着用者の肌面側に位置する左右一対の液不透過性の側部シート2a、2bと、該側部シート2a、2bの衣服側に位置し、不織布や液透過性プラスチックフィルム等からなる液透過性の表面シート3と、衣服側(すなわち、前記肌面側とは反対側)に位置する液不透過性の裏面シート(図示せず)と、前記表面シート3及び前記裏面シートの間に位置し、経血等の体液を吸収保持する吸収体4と、を含む各種部材によって構成されている。さらに、本実施形態に係るナプキン1は、前記吸収体4が、親水性繊維を含む親水性繊維層5と、前記親水性繊維層5の肌面側に隣接し、前記親水性繊維層5を少なくとも部分的に被覆する、合成繊維からなる合成繊維層6とを備えた2層の積層構造を有する。なお、本発明の吸収性物品において、吸収体は、このような2層の積層構造を有するものに限定されず、上述の親水性繊維層を含むものであれば、単層構造を有するものでも、2層以上の任意の積層構造を有するものでもよい。
以下、本発明の吸収性物品に用いられる吸収体について、図面を参照しながら詳細に説明する。図2は、本発明の一実施形態に係る吸収性物品(ナプキン1)に用いられる吸収体4の平面図であり、図3は、図2に示す吸収体4の長手方向DLに延びる中央軸線CLに沿った部分断面図である。図2に示すように、本実施形態においては、吸収体4が、吸収性物品の長手方向DLと一致する方向の縦方向(MD方向)に長い、縦長の形状を有している。
本実施形態において、吸収体4は、親水性繊維層5と、前記親水性繊維層5の肌面側に隣接する合成繊維層6とを備えた、2層の積層構造を有している。前記親水性繊維層5としては、パルプを含む繊維構造体に高吸収性ポリマーを分散保持させたものなどを好適に用いることができるが、本発明の吸収性物品に用いられる親水性繊維層は、経血等の体液を吸収保持する機能を有するものであれば特に制限されず、上述のパルプを含む繊維構造体に高吸収性ポリマーを分散保持させたもののほかに、セルロース系繊維等の親水性繊維からなる不織布などの任意の吸収性材料を用いることができる。また、親水性繊維層は、上述の吸収性材料をロールプレス等により圧縮したものも、吸収体の剛性が高くなり、吸収性物品の使用中に吸収体が裂け難くなるので、好適に用いることができる。
本発明の吸収性物品において、親水性繊維層の坪量は特に制限されないが、吸液性や柔軟性、強度などの観点から、好ましくは100g/m〜500g/mであり、更に好ましくは150g/m〜300g/mである。また、親水性繊維層の厚さについても特に制限されないが、上記と同様の観点から、好ましくは1.0〜10.0mmであり、更に好ましくは1.5mm〜5.0mmである。
また、前記合成繊維層6としては、ポリオレフィン系繊維(例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等)やポリエステル系繊維(例えば、ポリエチレンテレフタレート等)などの合成繊維からなる液透過性の不織布を好適に用いることができる。合成繊維層として不織布を用いると、表面シートを透過した経血等の体液を吸収した後もその形態が維持し易くなるため、吸収体が型崩れし難くなる。なお、本発明の吸収性物品に用いられる合成繊維層は、経血等の体液を透過させることができるものであれば特に制限されず、上述の不織布のほかに、例えば、合成繊維からなる織布等の任意の繊維材料を用いることができる。
本発明の吸収性物品において、合成繊維層の坪量は特に制限されないが、液透過性や柔軟性、強度などの観点から、好ましくは10g/m〜70g/mであり、更に好ましくは20g/m〜40g/mである。また、合成繊維層の厚さについても特に制限されないが、上記と同様の観点から、好ましくは0.1mm〜5.0mmであり、更に好ましくは0.2mm〜2.0mmである。
本実施形態においては、合成繊維層6の少なくとも一部が、ホットメルト等の任意の接着剤によって親水性繊維層5と接合されている。親水性繊維層5と合成繊維層6とが接合されていることで、吸収性物品の使用中に、親水性繊維層5と合成繊維層6とが離間して吸収体4がよれたり、後述するスリット部や切込み部を起点として吸収体4が裂けたりすることが起こり難くなる。さらに、前記親水性繊維層と前記合成繊維層とが、ホットメルト接着剤によって接合されていると、各繊維層の表面、特に、合成繊維層の表面に凹凸等が形成されず、また、接合部が高剛性化し難いため、吸収性物品として良好な肌触りや柔軟性を得ることができる。
親水性繊維層と合成繊維層とを一体化する手段は特に制限されず、上述の接着剤のほかに、エンボス等の圧着手段又は水流絡合等の係合手段を用いることもできる。これらの手段は、それぞれ単独で用いても、併用してもよい。特に、親水性繊維層と合成繊維層との一体化にエンボスを用いると、親水性繊維層と合成繊維層とが、複数のエンボスピンによって形成される複数の圧搾部において接合されるため、親水性繊維層と合成繊維層とが離間して吸収体がよれたり、裂けたりし難くなると共に、繊維密度の高い圧搾部が複数箇所に形成されることで吸収体の剛性が高くなり、吸収性物品の使用中に吸収体が裂けるというようなことがより起こり難くなる。
そして、図2及び図3に示すように、吸収体4は、合成繊維層6の上から、該合成繊維層6を貫通し、親水性繊維層5の厚さ方向DTの途中部分まで切り込まれることによって形成された、合成繊維層6における複数の貫通した切込み部7と、親水性繊維層5における複数の貫通しないスリット部8とを有している。前記切込み部7は、図3に示すように、親水性繊維層5の各スリット部8と厚さ方向DTで対応する位置に、前記スリット部8と連通するように形成されているので、後述する切込み部7とスリット部8の合計深さが深くなり、吸収体4が、切込み部7及びスリット部8を有する面側に折れ曲がる(すなわち、切込み部7及びスリット部8を有する面側に谷折りされる)ようになるため、吸収体4を着用者の身体形状に沿って変形させ易くすることができるとともに、前記スリット部8から親水性繊維層中のパルプ等が露出するのを防ぐことができる。なお、本明細書において、合成繊維層の切込み部と親水性繊維層のスリット部とが連通するとは、前記切込み部と前記スリット部とが空間的に連続する状態にあることを意味し、合成繊維層と親水性繊維層との密着の有無は問わない。
また、本実施形態においては、直線状の複数の切込み部7及びスリット部8が、平面視にて、親水性繊維層5及び合成繊維層6の略全面に亘って配置されているが、本発明の吸収性物品はこのような配置に限定されず、前記切込み部及びスリット部は、平面視にて、親水性繊維層5及び合成繊維層6の一部の領域のみに配置されていてもよい。
さらに、本実施形態においては、合成繊維層6が、親水性繊維層5の肌面側に隣接して配置されている。親水性繊維層5のスリット部8を有する面を、着用者の肌面側とすることで、吸収性物品の着用時において、吸収体4が着用者の身体形状に沿って肌面側に湾曲した際に、前記親水性繊維層5中のパルプが移動し易く、吸収体4を着用者の身体形状に沿って変形させ易くすることができる。
本発明の吸収性物品は、吸収体を構成する親水性繊維層が、複数の貫通しないスリット部を有することで、当該スリット部を起点として折れ曲り易くなるため、吸収性物品を着用者の身体形状の曲率に沿って変形させることができる。さらに、前記吸収体において、前記親水性繊維層に隣接する合成繊維層が不織布で構成されている場合、不織布は、テンションが掛かることによって剛性が高くなり易いため、吸収性物品の柔軟性が損なわれる虞があるが、当該合成繊維層が、複数の貫通する切込み部を有することで、上述のテンションが取り除かれるため、吸収体の高剛性化を抑制することができ、吸収性物品を柔軟性に優れたものとすることができる。
本発明の吸収性物品において、直線状の切込み部及びスリット部の長さは特に制限されず、例えば3mm〜50mmであり、好ましくは5mm〜15mmである。前記切込み部及びスリット部の長さが3mm以上であると、前記スリット部を起点として吸収体が折れ曲がり易くなるため、吸収性物品を着用者の身体形状の曲率に沿って容易に変形させることができる。また、前記切込み部及びスリット部の長さが50mm以下であると、吸収体が幅方向DW外側からの圧力を受けた際に、前記切込み部及びスリット部が開口して裂けてしまうというようなことがなく、吸収性物品としての耐久性を確保することができる。
前記スリット部の深さは、特に制限されないが、吸収体の折れ曲がり易さなどの点から、例えば0.05mm〜5.0mmであり、好ましくは0.1mm〜3.0mmである。なお、本明細書において、スリット部の深さは、親水性繊維層の表面に沿った平面と、スリット部における最深部との間の距離を意味し、具体的には、以下の測定方法によって求められる深さを指す。(1)スリット部を有する親水性繊維層を含む吸収体を、スリット部の延在する方向と垂直に交わる平面で切断する。(2)切断した吸収体の断面を走査型電子顕微鏡などの電子顕微鏡で観察し、任意の隣り合う2つのスリット部の間に位置する最も厚さの厚い部分(以下、「最厚部」という。)の厚さ(mm)を測定する。(3)任意の10箇所の最厚部の厚さ(mm)を測定し、その平均値を最厚部平均厚さ(mm)とする。(4)電子顕微鏡写真又は画像を用いて、吸収体のスリット部を有する面とは反対側の面を下側にして吸収体を水平面に載置したときに、該水平面に接する部分からなる平面を仮想底面と仮定するとともに、前記仮想底面と平行な平面であって、前記底面からの距離が前記最厚部平均厚さと一致する位置に位置する平面を仮想基準表面と仮定し、該仮想基準表面からスリット部の最深部までの距離(mm)を測定する。(5)任意の10個のスリット部について、前記仮想基準表面からスリット部の最深部までの距離(mm)を測定し、その平均値をスリット部の深さ(mm)とする。
本実施形態においては、複数の切込み部7及びスリット部8が、平面視にて、吸収体4の縦方向(すなわち、吸収性物品の長手方向DL)に対して垂直な横方向(CD方向)、すなわち吸収性物品の幅方向Dwと平行な方向に延在している。複数の切込み部及びスリット部がこのような方向に延在していると、吸収体が吸収性物品の長手方向DLに湾曲し易くなるので、吸収性物品が着用者の身体形状の曲率の大きい部分に対応して変形し易くなり、着用者に対する吸収性物品のフィット性をより向上させることができる。
また、本実施形態においては、複数の切込み部7及びスリット部8が、平面視にて、親水性繊維層5及び合成繊維層6の略全面に亘って千鳥状に配置されている。複数の切込み部及びスリット部がこのように配置されていると、吸収体において切込み部及びスリット部の存在しない剛性の高い領域が、吸収性物品の長手方向DLに連続して形成されないため、吸収性物品をより変形し易くすることができる。また、このような効果は、上述の千鳥状の配置形態に限らず、例えば、複数のスリット部を、吸収性物品の長手方向DLに隣接するスリット部同士が前記長手方向DLにおいて常に重なる部分を有するように配置することで得ることができる。
また、図2に示すように、本発明の吸収性物品は、親水性繊維層及び合成繊維層のうちの幅が広い方(すなわち、幅方向Dの長さが長い方)の繊維層(親水性繊維層及び合成繊維層が同じ幅の場合は、両繊維層)における幅方向DWの両縁部(すなわち、吸収体の幅方向Dにおける両縁部)に、スリット部又は切込み部が存在していないことが好ましい。吸収体の両縁部にスリット部又は切込み部が存在していないことで、当該両縁部において所定の強度を確保することができるため、吸収性物品の幅方向DWの両縁部と着用者の腿周りとの間で摩擦等が生じても、吸収体が裂け難くなる。
複数の切込み部及びスリット部を形成する手段は、前記切込み部と前記スリット部とが吸収体の厚さ方向で対応する位置に形成されるものであれば特に制限されず、任意の手段を採用することができる。例えば、複数の切込み部及びスリット部は、一体化した親水性繊維層及び合成繊維層を任意の搬送手段によって搬送しながら、合成繊維層の上方から、回転する切断ロールの周面上に設けられた複数の切断刃を押し当てることによって形成することができる。なお、切断ロールの切断刃と搬送手段との間のクリアランスを調節することによって、スリット部を、前記親水性繊維層を貫通しないように形成することができる。
また、複数の切込み部及びスリット部の延在方向は、吸収性物品の幅方向DWに平行な方向に限定されず、例えば、平面視にて、吸収性物品の幅方向DWに対して0°以上45°未満の角度を形成する方向であってもよい。なお、本明細書において、「吸収性物品の幅方向DWに対して0°以上45°未満の角度」とは、吸収性物品の幅方向DWに平行な直線と、切込み部及びスリット部とが交わることによって形成される角度のうちの最も小さい角度が、0°以上45°未満の角度であることを意味する。切込み部及びスリット部の延在方向と、吸収性物品の幅方向DWとのなす角度が45°以上であると、切込み部及びスリット部を形成する際に、親水性繊維層内において吸収性物品の幅方向DWに配向した繊維が切断され易くなるため、親水性繊維層の幅方向における強度が低下する虞がある。
本発明の吸収性物品において、切込み部及びスリット部の平面視における形状は、上述の直線状に限定されず、吸収体の変形のし易さや吸収体としての強度を損なわない範囲内において、任意の形状を採用することができる。このような形状としては、例えば、曲線、V字形、波形、ジグザグ形、円形、多角形などが挙げられる。
また、図3に示すように、本実施形態において、前記親水性繊維層5は、前記スリット部8を有する面と反対側の面において、複数のスリット部8と厚さ方向で対応する位置に、複数の凹部9を有している。親水性繊維層にこのような複数の凹部が形成されていると、当該複数の凹部における変形が容易になるため、吸収性物品が優れた柔軟性を有するものとなり、着用者に快適な装着感を提供することができる。
本発明の吸収性物品において、凹部の構造は、吸収体の折れ曲がり易さを損なわない限り特に制限されないが、凹部の長さは、身体形状に沿った変形のし易さなどの点から、例えば3mm〜60mmであり、好ましくは5mm〜20mmである。また、凹部の幅も特に制限されないが、例えば0.1mm〜5mmであり、好ましくは0.5mm〜2mmである。凹部の幅がこのような範囲内にあると、吸収体が折れ曲がる際の起点として機能し易くなる。
本発明の吸収性物品において、凹部の深さは特に制限されないが、吸収体の折れ曲がり易さ等の点から、例えば0.05mm〜5mmであり、好ましくは0.1mm〜3mmである。なお、本明細書において、凹部の深さは、親水性繊維層のスリット部を有する面と反対側の面と、凹部の最深部との間の距離を意味し、上述のスリット部の深さと同様の測定方法によって求めることができる。すなわち、上述のスリット部の深さの測定方法において、前記仮想底面から凹部の最深部までの距離(mm)を測定し、任意の10個の凹部について実施した上記距離の測定値の平均値を、凹部の深さ(mm)とする。
また、本発明の吸収性物品においては、前記スリット部及び前記切込み部の合計深さが、前記凹部の深さよりも深いことが好ましい。前記スリット部及び前記切込み部の合計深さを、前記凹部の深さよりも深くすることで、吸収体が前記スリット部及び前記切込み部を有する面側に折れ曲がるようになるため、前記スリット部によって親水性繊維層中のパルプ等が露出するのを防ぐことができ、その結果、吸収体としての耐久性を向上させることができる。なお、前記スリット部及び前記切込み部の合計深さは、上述のスリット部の深さと同様にして測定することができる。
本発明の吸収性物品において、平面視における凹部の形状は特に制限されないが、前記スリット部と実質的に同一の形状を有することが好ましい。前記スリット部と前記凹部とが、平面視にて実質的に同一の形状を有していると、前記スリット部と前記凹部との間の部分を起点として吸収体を精度よく折り曲げることができる。なお、本明細書において、実質的に同一の形状とは、各形状が、同一種類の形状であって、各形状の中心線同士が重複する形状を意味する。
本発明の吸収性物品における複数の凹部は、例えば、エンボス等の圧搾手段によって容易に形成することができる。前記凹部をエンボス等の圧搾手段によって形成すると、親水性繊維層の厚さ方向において、貫通しないスリット部の底部と凹部との間の部分が圧搾されて高密度化し、当該高密度化した部分とその周辺部分との間に剛性差が生じるため、当該高密度化した部分を起点として親水性繊維層が折れ曲がり易くなり、吸収性物品が着用者の身体形状に沿って変形し易くなる。また、前記スリット部の底部と凹部との間の部分が高密度化することによって、吸収体の前記スリット部を有する領域が強化されるため、吸収体としての耐久性を向上させることもできる。
また、前記圧搾手段を上述の切込み部及びスリット部の形成手段と兼用することもできる。すなわち、前記凹部は、前記切込み部及びスリット部と同時に形成することができる。吸収体に切込み部、スリット部及び凹部を同時に形成する方法は、一体化した親水性繊維層5及び合成繊維層6を任意の搬送手段によって搬送する工程(a)と、前記親水性繊維層5及び合成繊維層6を搬送しながら、前記合成繊維層6の上方から複数の切断刃を押し当てることによって、前記合成繊維層6及び親水性繊維層5のそれぞれに複数の貫通する切込み部7及び貫通しないスリット部8を形成する工程(b)と、前記親水性繊維層5及び合成繊維層6から前記切断刃を取り除く工程(c)とを含む。
この方法では、前記工程(b)において、前記複数の貫通する切込み部7及び貫通しないスリット部8が形成されるが、その際に、前記切断刃の押圧力によって、前記貫通しないスリット部8の底部と前記搬送手段との間の部分が圧搾されて、図3に示すような高密度化部HDが形成されると共に、前記親水性繊維層5が前記切断刃の当接点(すなわち、前記スリット部8の底部)を中心として下側に凸となるように変形する。そして、このように変形した前記親水性繊維層5は、前記工程(c)において、前記切断刃の押圧力が取り除かれると、前記親水性繊維層5を構成する繊維の弾性力によって元の形状に復元するが、前記貫通しないスリット部8の底部と前記搬送手段との間の高密度化部HDは圧搾されていて復元せず、前記高密度化部HDが前記スリット部8の底部に隣接した状態が維持されるため、当該高密度化部HDを中心とした凹部9が、前記親水性繊維層5の前記搬送手段側の面(すなわち、前記スリット部8を有する面と反対側の面)に形成される。
このような方法によれば、複数の切込み部及びスリット部と、複数の凹部とを一つの工程で同時に形成することができるため、吸収性物品の柔軟化をより効率よく実現することができると共に、前記スリット部と前記凹部とが、吸収体の厚さ方向で対応する位置に、平面視にて実質的に同一の形状を有するように形成されるため、前記スリット部の底部と前記凹部との間の部分(すなわち、高密度化部HD)を起点とした吸収体の折り曲げを精度よく実現することができ、着用者に快適な装着感を提供することができる。また、貫通しないスリット部の底部と凹部との間に高密度化部HDが形成されるため、上述のエンボス等による圧搾手段を用いた場合と同様の効果を得ることができる。
また、凹部の形成手段は上述の各手段に限定されず、例えば、親水性繊維層の所定部分を低坪量化すること等によっても容易に凹部を形成することができる。
本発明は、上述した実施形態の生理用のナプキンのほかに、例えば、パンティーライナー、失禁パッド等の様々な吸収性物品に適用することができる。また、本発明の吸収性物品は、上述の実施形態に制限されることなく、本発明の目的、趣旨を逸脱しない範囲内において、適宜変更が可能である。
1 ナプキン(吸収性物品)
2a、2b 側部シート
3 表面シート
4 吸収体
5 親水性繊維層
6 合成繊維層
7 切込み部
8 スリット部
9 凹部

Claims (9)

  1. 液透過性の表面シートと、液不透過性の裏面シートと、前記表面シート及び前記裏面シートの間に位置する吸収体とを含む、吸収性物品であって、
    前記吸収体は、複数の貫通しないスリット部を有し且つ親水性繊維を含む親水性繊維層を少なくとも含み、
    前記親水性繊維層は、前記スリット部を有する面と反対側の面において、前記複数の貫通しないスリット部と前記吸収性物品の厚さ方向で対応する位置に、複数の凹部を有し、
    さらに、前記複数の貫通しないスリット部は、平面視にて、前記吸収性物品の幅方向に対して0°以上45°未満の角度を形成する方向に延在し、且つ、前記吸収性物品の長手方向に隣接するスリット部同士が前記長手方向において常に重なる部分を有するように配置されている、前記吸収性物品。
  2. 前記スリット部と前記凹部とが、平面視にて、実質的に同一の形状を有している、請求項1に記載の吸収性物品。
  3. 前記吸収体が、前記親水性繊維層に隣接し且つ合成繊維からなる合成繊維層を備え、前記合成繊維層は、前記親水性繊維層の各スリット部と厚さ方向で対応する位置に、前記スリット部と連通する切込み部を有する、請求項1又は2に記載の吸収性物品。
  4. 前記スリット部及び前記切込み部の合計深さが、前記凹部の深さよりも深い、請求項3に記載の吸収性物品。
  5. 前記合成繊維層が不織布からなる、請求項3又は4に記載の吸収性物品。
  6. 前記親水性繊維層と前記合成繊維層とが接合されている、請求項3〜5のいずれか一項に記載の吸収性物品。
  7. 前記親水性繊維層と前記合成繊維層とが、ホットメルト接着剤によって接合されている、請求項3〜5のいずれか一項に記載の吸収性物品。
  8. 前記合成繊維層が、前記親水性繊維層の肌面側に隣接している、請求項3〜7のいずれか一項に記載の吸収性物品。
  9. 前記スリット部の底部と前記凹部との間の部分が、他の部分と比べて高密度である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の吸収性物品。
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