JP6070921B2 - 自動変速機の制御装置 - Google Patents
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Description
このような警告回転速度に基づくエンジンの過回転を警告する対策を実施する一方、通常時には警告回転速度未満の回転域でエンジンを運転させるように各種制御を実行している。自動変速制御を例に挙げると、当該自動変速制御ではアクセル操作量や車速などに基づき所定のシフトマップから目標ギヤ段を決定しているが、このシフトマップの特性は、常に警告回転速度未満の回転域でエンジンを運転させるように設定されている。例えば車両の加速時には、車速と共にエンジン回転速度が上昇して警告回転速度に達する以前に、シフトマップから高ギヤ側の目標ギヤ段が決定されてシフトアップが実行され、それに伴ってエンジン回転速度がステップ状に低下して警告回転速度未満に抑制される。
例えばトラックやバスでは、貨物の積載状態や搭乗人数に応じた車両重量の格差が大であるため、空車状態で降坂路を加速しているときなどには車両への負荷が非常に少なくなる。一方で、トラックやバスなどに搭載される比較的大排気量のディーゼルエンジンはガソリンエンジンと比較して回転落ちが悪い。その対策として、加速中のシフトアップ時には圧縮開放ブレーキを作動させてエンジンに負荷を加えることにより回転落ちを早めているが、それでもシフトアップに伴う燃料カットから実際にエンジン回転速度が低下し始めるまでには無視できないタイムラグが発生する。
このようにシフトアップの開始後もエンジン回転速度Neが上昇し続けるため、上記した車両負荷が少ない走行条件が重なった場合には、図4に示すようにエンジン回転速度Neが警告回転速度NeUpを超えてしまう事態が発生する。このときブザーによる警告は行われるが、警告回転速度NeUpの超過は一時的なものであり、且つアクセル操作とは関係のない自動変速制御によるシフトアップ過程で発生することから、運転者にとって意味のない無用な警告であり耳障りなだけである。
まず、車両の加速時においてエンジン回転数Neがシフトアップの指示回転数Netに達すると、変速信号を出力して油圧回路にシフトアップを実行させる。これと並行してシフトアップ中の実最大エンジン回転数Nerを読み込み、最大目標エンジン回転数Nec(エンジン或いは変速機の許容上限回転数であり、上記警告回転速度NeUpに相当)に対する実最大エンジン回転数Nerの偏差ΔNeに基づき指示回転数Netを補正する。そして、補正後の指示回転数Netを新たな指示回転数Netとして次回のシフトアップ時の処理に適用することにより、変速油圧や変速クラッチの摩擦状況などのバラツキに起因するエンジン及び変速機の過回転を防止している。
例えば、登坂路と降坂路とでは最適な指示回転数Netが相違する。登坂路では車両負荷の増加に起因してシフトアップ中のエンジン回転速度Neの上昇が緩慢になるため、警告回転速度NeUpを超えることはない。よって、特許文献1の技術によれば、シフトアップの開始タイミングを遅延させるべく指示回転数Netが増加補正され、次回のシフトアップが遅いタイミングで開始される。ところが、このとき車両が降坂路を走行中であると、車両負荷の減少に起因してシフトアップ中にエンジン回転速度Neが急激に上昇して警告回転速度NeUpを超えてしまう。
本発明はこのような問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、常にシフトアップの開始タイミングを適切に設定でき、もって降坂路などでのシフトアップ中にエンジン回転速度が警告回転速度を超える事態を未然に防止でき、これに起因する無用なエンジン過回転の警告を回避することができる自動変速機の制御装置を提供することにある。
例えば空車状態で降坂路を加速しているときには車両への負荷が非常に少なくなるため、シフトマップによる目標ギヤ段の決定に基づくタイミングでシフトアップした場合には、燃料カットの開始後もエンジン回転速度が上昇し続けてエンジンの警告回転速度を超える事態が発生する。本発明によれば、このような状況では、エンジン回転速度が警告回転速度に到達するよりも回転落ち時間だけ先行するタイミングで強制的にシフトアップ処理が開始される。従って、エンジン回転速度が警告回転速度を超える事態を未然に防止でき、これに起因する無用な警告を回避することができる。
例えば燃費重視のシフトマップでは、シフトアップ処理のタイミングが早められてエンジンが低回転域で運転されることにより燃費低減が達成される。また、走行性能重視のシフトマップでは、シフトアップ処理のタイミングが遅くされてエンジンが高回転域で運転されることにより良好な加速性能が達成される。
そして、エンジン回転速度の上昇抑制のために、より先行するタイミングでシフトアップする場合でも、燃費重視のシフトマップの適用時には、低回転側の警告回転速度に基づき早めのタイミングでシフトアップ処理が開始される。また、走行性能重視のシフトマップの適用時には、高回転側の警告回転速度に基づき遅めのタイミングでシフトアップ処理が開始される。結果として通常時のシフトマップの変速特性に倣って、燃費重視或いは走行性能重視の特性でシフトアップ処理が実行されるため、運転者の違和感を未然に防止することができる。
図1は本実施形態の自動変速機の制御装置が適用されたトラックの駆動系を示す全体構成図である。
車両には走行用動力源としてディーゼルエンジン(以下、エンジンという)1が搭載されている。エンジン1は、加圧ポンプによりコモンレールに蓄圧した高圧燃料を各気筒の燃料噴射弁に供給し、各燃料噴射弁の開弁に伴って筒内に噴射する所謂コモンレール式機関として構成されている。なお、エンジン1の形式はこれに限ることはなく、コントロールラックの作動に応じて各気筒への燃料噴射を制御する従来形式のディーゼル機関としてもよいし、ガソリンエンジンとしてもよい。
電磁弁9の開弁時にはエアタンク11からエア通路10を経てエアシリンダ8に圧縮エアが供給され、エアシリンダ8が作動してアウタレバー7を介してクラッチ板5をフライホイール4から離間させ、これによりクラッチ装置2が接続状態から切断状態に切り換えられる。一方、電磁弁9が閉弁すると、圧縮エアの供給中止によりエアシリンダ8が作動しなくなることから、クラッチ板5はプレッシャスプリング6によりフライホイール4に圧接され、これによりクラッチ装置2は切断状態から接続状態に切り換えられる。このように電磁弁9の開閉に応じてエアシリンダ8が作動して、クラッチ装置2を自動的に断接操作可能になっている。
ECU21の入力側には、エンジン1の回転速度Neを検出するエンジン回転速度センサ22、変速機3の入力軸3aの回転速度(クラッチ回転速度)を検出するクラッチ回転速度センサ23、レバー操作部13のチェンジレバー13aの切換位置を検出するレバー位置センサ24、変速機3のギヤ位置を検出するギヤ位置センサ25、アクセルペダル26の操作量θaccを検出するアクセルセンサ27、及び変速機3の出力軸3bに設けられて車速Vを検出する車速センサ28などのセンサ類が接続されている。
なお、このように単一のECU21で総合的に制御することなく、例えばECU21とは別にエンジン制御専用のECUを備えるようにしてもよい。
ところが、[背景技術]で述べたように、トラックが空車状態で降坂路を加速しているときなどには車両への負荷が非常に少なくなるため、上記シフトマップの設定にも拘わらず、シフトアップ中にエンジン回転速度Neが警告回転速度NeUpを超えてしまう事態が発生する。このときブザー30による警告は行われるが、警告回転速度NeUpの超過が一時的なものであり、且つ自動変速によるシフトアップ過程で発生することから、運転者にとっては意味のない無用な警告となってしまう。
適切なシフトアップ開始タイミングとは、より具体的には、車両の加速に伴って上昇中のエンジン回転速度Neが警告回転速度NeUpに達する時点(超える直前)よりも回転落ち時間Tだけ先行するタイミングである。このシフトアップ開始タイミングでシフトアップを開始(以下、強制シフトアップという)して燃料カットすれば、上昇中のエンジン回転速度Neは警告回転速度NeUpに達した時点で低下し始め、警告回転速度NeUpを超える事態を防止できることになる。
なお、以上のシフトアップ開始タイミングに基づく強制シフトアップは、あくまでも警告回転速度NeUpの超過による無用な警告を防止するものであり、基本的にはシフトマップに基づく自動変速制御を優先すべきである。そこで、シフトマップに基づくシフトアップタイミング(高ギヤ側の目標ギヤ段tgtGが決定されたタイミング)よりも先行してシフトアップ開始タイミングが特定された場合に限って、シフトアップ開始タイミングでシフトアップを開始する。以下、このような知見に基づきECU21が実行する処理について説明する。
まず、ステップS2で現在車両の加速に伴いエンジン回転速度Neが上昇中であるか否かを判定し、判定がNo(否定)のときには一旦ルーチンを終了する。また、ステップS2の判定がYes(肯定)のときにはステップS4に移行し、アクセルセンサ27により予め設定された判定値θacc0以上のアクセル操作量θaccが所定時間に亘って継続して検出されたか否かを判定する。
よって、これらの状況では強制シフトアップを実行しない方が望ましいため、ECU21はステップS4でNoの判定を下すとルーチンを終了する。
ステップS6或いはステップS8の判定がNoのときには既にシフトアップ中であるため、強制シフトアップを実行する余地がないと見なしてルーチンを終了する。
NeUp≦Ne+DNe×T……(1)
上記のようにNeUpは警告回転速度であり、Neは現在のエンジン回転速度、DNeは単位時間当たりのエンジン回転速度Neの増加率、Tは回転落ち時間である。これら現在のエンジン回転速度Ne及びその増加率DNeが、本発明のエンジン回転速度Neの上昇度合いに相当する。
回転落ち時間Tとは、上記シフトアップ処理について説明した手順の内、燃料カットの開始から圧縮開放ブレーキ29の作動によりエンジン回転速度Neが低下し始めるまでの所要時間を意味する。回転落ち時間Tは、予め実施した試験に基づき設定されてECU21の記憶装置に記憶されている(記憶手段)。この試験では変速機3を実際にシフトアップさせて、シフトアップ中のエンジン1の回転低下に基づき実際に燃料カットの開始からエンジン回転速度Neの低下開始までの所要時間が算出され、その所要時間が回転落ち時間Tとして記憶される。
2段シフトアップとは、トラックなどの多数ギヤ段の変速機3を搭載した大型車両特有の変速操作である。この種の車両では積載状態での登坂路走行のようにエンジン駆動力に余裕がない場合を想定して、可能な限りエンジン1を適切な回転域に保持して駆動力を確保するために変速機3のギヤ段が細分化されている。このため、降坂路などのようにエンジン駆動力に余裕がある走行状態で通常の1段刻みのシフトアップを行うと、かえって変速毎のトルク抜けによる弊害が顕著になることから、この場合には1段飛び越した2段シフトアップを実行している。
ECU21は図2のステップS2〜10の全ての条件が満足されている場合には、ステップS12で式(1)に基づく判定処理を制御インターバル毎に逐次実行している。通常の車両の加速時には、シフトマップに基づくタイミングでシフトアップが開始された場合であっても、圧縮開放ブレーキ29の作動によりエンジン回転速度Neは警告回転速度NeUpを超える以前に低下し始める。このため式(1)の成立よりも先行して、自動変速制御でシフトマップに基づき目標ギヤ段tgtGが決定される。
よって、ECU21は図2では変速制御に関して何ら処理することなくルーチンを終了し、変速機3のシフトアップはシフトマップにより目標ギヤ段tgtGが決定されたタイミングで実行されることになる。
従って、図3に示すように、上昇中のエンジン回転速度Neは図中に実線で示す警告回転速度NeUpに達した時点で低下し始めることから、シフトアップ中にエンジン回転速度Neが警告回転速度NeUpを超える事態を未然に防止でき、これに起因する無用なエンジン過回転の警告を回避することができる。
加えて、図2のフローチャートに基づく制御をECU21に追加するだけのため、製造コストの高騰を抑制した上で上記作用効果を達成することができる。
そして、このような登坂路の走行中には、車両重量や路面勾配などの諸条件によってはシフトマップに基づきシフトアップすると車両が失速してしまう場合がある。この不具合に対する周知の対策として、車両重量や路面勾配などに基づくファジィ制御により現ギヤ段の継続が妥当と推定されるときには、たとえシフトマップに基づくシフトアップタイミングであってもシフトアップせずに現ギヤ段を継続する場合がある。但し、この対策と並行して本発明の図2のルーチンを実行する場合には、無用な警告の回避のために図2のルーチンを優先させるべきである。よって、ファジィ制御に基づくシフトアップのキャンセル中であっても、図2のルーチンで式(1)が成立したときには直ちに強制シフトアップを実行することが望ましい。
エコモードは燃費を重視した走行モードであり、このエコモードに対してノーマルモードは走行性能重視の走行モードと見なせる。例えば走行モードは運転者のスイッチ操作に応じて切り換えられ、それに応じてシフトマップも切り換えられる。エコモードではシフトアップ線を低車速側に設定したシフトマップが適用され、エンジン1が低回転域で運転されることにより燃費低減が達成される。これに対してノーマルモードではシフトアップ線を高車速側に設定したシフトマップが適用され、エンジン1が高回転域で運転されることにより良好な加速性能が達成される。なお、このように走行モードの切換に応じて自動変速制御の内容を切り換えるだけでなく、それに加えてエンジン1の出力特性を切り換えるようにしてもよい。
また、上記実施形態では、シフトアップ時にエンジン1の回転落ちを早めるために圧縮開放ブレーキ29を作動させたが、回転負荷手段はこれに限ることはない。例えば圧縮開放ブレーキ29に代えて、或いは圧縮開放ブレーキ29に加えて、エンジン1の吸気系に設けた吸気絞り弁を閉弁制御したり、エンジン1の排気系に設けた排気絞り弁を閉弁制御したりしてもよい。
2 クラッチ装置
3 変速機
8 エアシリンダ(アクチュエータ)
14 ギヤシフトユニット(アクチュエータ)
21 ECU(記憶手段、変速制御手段)
29 圧縮開放ブレーキ(回転負荷手段)
Claims (2)
- 変速機の変速操作及び該変速操作に伴うクラッチ操作をアクチュエータで行うように構成され、変速制御手段により所定のシフトマップから決定された目標ギヤ段に基づき上記各アクチュエータを駆動制御して、車両の走行用動力源であるエンジンを上限回転速度よりも低回転側に予め設定された警告回転速度未満の回転域で運転させながら上記目標ギヤ段を達成するように変速制御を実行し、上記シフトマップから決定された高ギヤ側の目標ギヤ段に基づきシフトアップするときには、上記エンジンの燃料カットを開始して上記クラッチを切断操作した上で、回転負荷手段により上記エンジンに負荷を加え、エンジン回転速度が上昇から低下に転じた後に上記変速機を上記目標ギヤ段に入れ替えて上記クラッチを接続操作するシフトアップ処理を実行する自動変速機の制御装置において、
上記シフトアップ処理による燃料カットの開始から上記回転負荷手段の負荷により上記エンジン回転速度が低下し始めるまでの回転落ち時間を記憶している記憶手段を備え、
上記車両の加速に伴う上記エンジン回転速度の上昇中に、上記シフトマップに基づくタイミングでシフトアップを開始したときに上記エンジン回転速度が上記警告回転速度を超える場合は、該エンジン回転速度の上昇度合い及び上記記憶手段に記憶された回転落ち時間に基づき、該エンジン回転速度の上記警告回転速度への到達よりも上記回転落ち時間だけ先行するタイミングで上記シフトアップ処理を開始することを特徴とする自動変速機の制御装置。 - 上記変速制御手段は、燃費重視のシフトマップと走行性能重視のシフトマップとを選択的に適用し、該選択したシフトマップから決定された目標ギヤ段に基づき変速制御を実行し、
上記変速制御手段により上記燃費重視のシフトマップが適用されているときには、予め設定された低回転側の警告回転速度に基づき上記シフトアップ処理を開始し、上記変速制御手段により上記走行性能重視のシフトマップが適用されているときには、予め設定された高回転側の警告回転速度に基づき上記シフトアップ処理を開始することを特徴とする請求項1記載の自動変速機の制御装置。
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