JP6065689B2 - 二次電池電極用バインダーの製造方法、二次電池電極の製造方法、及び二次電池の製造方法 - Google Patents

二次電池電極用バインダーの製造方法、二次電池電極の製造方法、及び二次電池の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、金属集電体との接着性および二次電池電解液との濡れ性に優れた水性フッ素樹脂組成物の製造方法、水性フッ素樹脂組成物、並びにこの組成物を含む二次電池電極用バインダー、二次電池電極、及び二次電池に関する。
フッ素(F)原子は半径が小さく、電気陰性度が高いため、カーボン(C)原子との結合(C−F結合)は他の結合に比べて結合エネルギーが大きくなる。そのため、C−F結合を有するフッ素樹脂は、耐薬品性、耐熱性、耐候性(耐紫外線性)、耐酸化性(不燃性)等に優れ、化学的および電気的分野を中心に用途が広がりつつある。
近年では、上記特性を生かし、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)等のフッ素樹脂は、主にリチウムイオン二次電池などの二次電池電極用バインダー、ポリマー電解質として利用されている。
フッ素樹脂が二次電池電極用バインダーに用いられる場合は、電極の活物質(主にLiCoO2、LiFePO4のような無機金属酸化物)を結着させ、且つその活物質を含む電極活物質層をアルミニウム、銅等からなる集電体に接着させる必要がある。また、二次電池電極用バインダー或いはポリマー電解質として用いられる場合は、電解液(LiPF6、LiBF4或いはLiClO4等のリチウム塩とエチレンカーボネート等の非プロトン性極性溶媒によって構成される。)に濡れやすいことが要求される。しかし、フッ素樹脂に含まれるF原子またはC−F結合の分極率は小さいため、分子間力が小さく、表面エネルギーが低い。そのため、各種の固体への接着性、および各種の液体への濡れ性が悪い。
フッ素樹脂の接着性、濡れ性を改善するため、PVdFのポリマー骨格に極性の高いモノマーをグラフト共重合させること、或いはPVdFの改質反応が有効である。
非特許文献1においては、PVdFの膜をプラズマ処理により表面活性化させ、アクリル酸(AA)溶液に浸漬した後に、60℃でグラフト化反応を行っている。これにより得られたポリアクリル酸(PAA)によってグラフト共重合を行ったPVdF膜の水との接触角は、PAAの修飾前より大幅に下がったことが報告されている。
非特許文献2には、超臨界二酸化炭素中で、ラジカル開始剤として過酸化ベンゾイル(BPO)を使用し、PAAによってグラフト共重合を行ったPVdF(PVdF−g−PAA)を合成したことが報告されている。
非特許文献3には、PVdFの骨格に、原子移動ラジカル重合(ATRP)法を用い、ポリメタクリル酸側鎖を導入することによりグラフト共重合を行ったPVdF(PVdF−g−PMMA)やポリオキシエチレン側鎖を導入することによりグラフト共重合を行ったPVdF(PVdF−g−POEM)を得たことが報告されている。
また、特許文献1には、PVdFの骨格に、(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリレート由来の重合体を2〜25重量%グラフト共重合させることによりPVdFグラフト共重合体を製造する方法が提案されている。
また、特許文献2には、過酸化物などのラジカル開始剤の存在下で、PVdFに、グラフト共重合が可能な結合基(不飽和基等)および接着性を付与する官能基(カルボキシル基等)を有する化合物をグラフト共重合させて、PVdFグラフト共重合体を製造する方法が提案されている。
特許文献3には、PVdFを塩基で部分的に脱フッ化水素処理し、酸化剤とさらに反応させて変性フッ素ポリマーの製造法が提案されている。
特開昭56−133309号公報 特開平7−173447号公報 特開2001−11115号公報
F. L. Huang, Q. et al., Dynamic wettability and contact angles of poly(vinylidenefluoride) nanofiber membranes grafted with acrylic acid, "eXPREESS Polymer Letter", 2010, vol.4, p.551-558 Loredana Ferro et al. , "Preparation of pH sensitive poly(vinilydenefluoride) porous membranes by grafting of acrylic acid assisted by supercritical carbon dioxide", J. Supercritical Fluids, 2012, 66, p.241-250 J. F. Hester et al., ATRP of Amphiphilic Graft Copolymers Based on PVDF and Their Use as Membrane Additives, "Macromolecules", 2002, 35, p.7652-7661
しかし、非特許文献1の製造法は、PVdFを活性化するためにプラズマ照射を行う必要があるため、製造プロセス上の制限が大きかった。また、非特許文献2の製造法も、特殊なプロセス(高圧状態で超臨界流体の使用)を必要としているため、容易に工業化することはできなかった。また、非特許文献3の製造法は、製造工程での取扱いに注意を払う必要のある高沸点溶媒N−メチル−2−ピロリドン(NMP)を使用する必要があり、環境負荷が大きく、また、コストも高かった。
また、特許文献1の方法は、γ照射等による活性化されたPVdFを使う必要があり、製造プロセス上の制限が大きかった。特許文献2の方法は、高温でPVdFを溶融させる必要があり、用途が主に積層体等向けに限定されるため、二次電池電極用バインダーに用いるための方法としては適当ではなかった。また、特許文献3の方法は、強い塩基や酸化剤の使用が必要であり、さらに脱フッ化水素工程を有するため、製造プロセス上の制限が大きかった。
本発明の目的は、集電体への接着性及び二次電池の電解液との濡れ性に優れた水性フッ素樹脂組成物を温和な条件で得ることができる水性フッ素樹脂組成物の製造方法、この製造方法により得られる水性フッ素樹脂組成物、この水性フッ素樹脂組成物を含む二次電池電極用バインダー、二次電池電極及び二次電池を提供することである。
本発明者は上記の課題を解決するべく鋭意検討した結果、水にフッ化ビニリデン重合体を分散させて原子移動ラジカル重合法を用いてグラフト共重合体を得ることにより上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明によれば、
(1) MXn(Mは周期表第4族〜第11族遷移金属を示し、Xはハロゲン原子を示す。また、nは1以上5以下の整数を示す。)で表される化合物と、ホスフィン、リン酸エステル、アミン及びピリジンからなる群より選択される少なくとも1つの配位子化合物の存在下で、水に分散されたフッ化ビニリデン重合体と、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルニトリル、又は(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも1つの不飽和化合物とを、原子移動ラジカル重合反応させることにより、前記不飽和化合物を前記フッ化ビニリデン重合体にグラフト共重合させたグラフト共重合体、前記MXnで表される化合物及び前記配位子化合物を含む水性フッ素樹脂組成物を得る工程を含むことを特徴とする水性フッ素樹脂組成物の製造方法、
(2) 前記Mは、銅又は鉄であることを特徴とする(1)記載の水性フッ素樹脂組成物の製造方法、
(3) 前記フッ化ビニリデン重合体の粒子径は0.01〜1μmであることを特徴とする(1)記載の水性フッ素樹脂組成物の製造方法、
(4) 前記MXnで表される化合物の重量含有率は、前記水性フッ素樹脂組成物に含まれる全固形分量に対して10〜1000ppmであることを特徴とする(1)記載の水性フッ素樹脂組成物の製造方法、
(5) (1)記載の水性フッ素樹脂組成物の製造方法により得られる水性フッ素樹脂組成物であって、前記不飽和化合物を前記フッ化ビニリデン重合体にグラフト共重合させたグラフト共重合体、前記MXnで表される化合物及び前記配位子化合物が水に均一に分散されたことを特徴とする水性フッ素樹脂組成物、
(6) (5)記載の水性フッ素樹脂組成物を含むことを特徴とする二次電池電極用バインダー、
(7) (6)記載の二次電池電極用バインダーを含むことを特徴とする二次電池電極、
(8) (7)記載の二次電池電極を含むことを特徴とする二次電池
が提供される。
本発明のフッ素樹脂組成物の製造方法によれば、集電体との接着性及び二次電池の電解液との濡れ性に優れた水性フッ素樹脂組成物を温和な条件で得ることができる。また、本発明の水性フッ素樹脂組成物は、集電体への接着性及び二次電池の電解液との濡れ性に優れた水性フッ素樹脂組成物を温和な条件で得ることができる。また、本発明によれば、上記水性フッ素樹脂組成物を含む二次電池電極用バインダー、二次電池電極及び二次電池が提供される。
本発明に用いる原子移動ラジカル重合のスキームを示す図である。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態に係る水性フッ素樹脂組成物の製造方法について説明する。本発明の水性フッ素樹脂組成物の製造方法は、MXn(Mは周期表第4族〜第11族遷移金属を示し、Xはハロゲン原子を示す。また、nは1以上5以下の整数を示す。)で表される化合物と、ホスフィン、リン酸エステル、アミン及びピリジンからなる群より選択される少なくとも1つの配位子化合物の存在下で、水に分散されたフッ化ビニリデン重合体と、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルニトリル、又は(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも1つの不飽和化合物とを、原子移動ラジカル重合反応させることにより、前記不飽和化合物を前記フッ化ビニリデン重合体にグラフト共重合させたグラフト共重合体、前記MXnで表される化合物及び前記配位子化合物を含む水性フッ素樹脂組成物を得る工程を含むことを特徴とする。
(MXnで表される化合物)
本発明に用いるMXnで表される化合物におけるMは第4〜11族遷移金属原子であり、2つ以上の酸化状態を有することが好ましい。また、Mは銅又は鉄であることがより好ましい。また、MXnで表される化合物におけるXはハロゲン原子を示し、塩素、臭素またはヨウ素であることがより好ましい。また、nは1〜5の整数を示す。
MXnで表される化合物は後述する原子移動ラジカル重合(ATRP)反応において触媒として機能する。
(配位子化合物)
本発明に用いる配位子化合物は、ホスフィン、リン酸エステル、アミン及びピリジンからなる群より選ばれる少なくとも1つの化合物である。上記MXnで表される化合物のMが銅である場合には、銅(I)触媒とともに用いる配位子としては、二座又は三座ピリジンに基づく配位子、或いは直鎖、脂肪族、多座アミン配位子が好ましい。上記MXnで表される化合物のMが鉄である場合には、鉄(II)触媒とともに用いる配位子としては、トリアルキルホスフィンおよびトリアルキルアミン等の単純な単座配位子が好ましい。その中、鉄(II)とトリアルキルアミンの組み合わせは極めて安価なので、もっとも好ましい。
また、配位子上の置換基によって触媒中心金属Mの酸化還元能力が影響される。電子供与基は高酸化状態金属種を安定化させるため、その発生を促進する。逆に、電子吸引基は低酸化状態種の発生を促進する。
(フッ化ビニリデン重合体)
本発明に用いるフッ化ビニリデン重合体(以下、「VdF重合体」ということがある。)は、フッ化ビニリデン(以下、「VdF」ということがある。)のホモポリマー又はコポリマーを指す。そのコポリマーは、VdFとエチレン、プロピレン等のオレフィン類;スチレン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼン等の芳香族ビニル化合物; 酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類; フッ化ビニル、テトラフルオロエチレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン化ビニル系化合物; ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等の共役ジエン類からなる群より選択される少なくとも1つの単量体と共重合して得られるポリマーである。
(不飽和化合物)
本発明に用いる不飽和化合物は、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルニトリル、又は(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも1つの化合物である。ここで、本発明において、(メタ)アクリル酸は、メタクリル酸及びアクリル酸を意味し、(メタ)アクリロニトリルは、メタクリロニトリルとアクリロニトリルを意味する。また、(メタ)アクリレートは、アクリル酸エステルおよびメタアクリル酸エステルの両者を含む意味で用いられる。
これらのなかでも、不飽和化合物としては、(メタ)アクリレートを用いることが好ましく、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを用いることが好ましく、非カルボニル性酸素原子に結合するアルキル基の炭素数が1〜18である(メタ)アクリル酸アルキルエステルを用いることがより好ましい。
非カルボニル性酸素原子に結合するアルキル基の炭素数が1〜18である(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸2−メトキシエチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ノニル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸シクロヘキシル、およびアクリル酸イソボルニルなどのアクリル酸アルキルエステル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸t-ブチル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸イソデシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸トリデシル、メタクリル酸ステアリル、およびメタクリル酸シクロヘキシルなどのメタクリル酸アルキルエステルが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。
非カルボニル性酸素原子に結合するアルキル基の炭素数が1〜18である(メタ)アクリル酸アルキルエステルの中でも、非カルボニル性酸素原子に結合するアルキル基の炭素数が2〜12の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを用いることがさらに好ましい。また、得られるグラフト共重合体のガラス転移温度(Tg)を下げ、柔軟性を増加させる観点から、アクリル酸2−メトキシエチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル等を用いることが特に好ましい。
(原子移動ラジカル反応)
本発明に用いる原子移動ラジカル重合(ATRP)反応は、図1に示すスキームで表される反応メカニズムである。本発明においては、水を溶媒として用いた原子移動ラジカル重合を行うことにより、不飽和化合物をVdF重合体にグラフト共重合させたグラフト共重合体を温和な反応条件で得ることができる。
図1に示すようにラジカル移動可能な原子(フッ素原子)を含有するVdF重合体(i)と遷移金属複合体(MXnで表される化合物及び配位子化合物)との間の酸化還元反応によって例えば、図1の(ii)で示すようにラジカルを形成させ、不飽和化合物と反応させることにより、不飽和化合物をVdF重合体にグラフト共重合させたグラフト共重合体(iii)を得ることができる。このグラフト共重合体(iii)は、不飽和化合物由来のグラフト鎖をVdF重合体に付加したフッ素樹脂である。
なお、図1において、mはVdF重合体の重合度、Aは不飽和化合物、kはグラフト鎖における不飽和化合物の重合度をそれぞれ示している。また、図1においては、不飽和化合物としてAのみを用いる例を示しているが、不飽和化合物として2種類以上を併用してもよい。また、図1においては、VdF重合体(i)として、VdFのホモポリマーを示しているが、上述のようにVdFのコポリマーを用いてもよい。また、図1においては、MXnで表される化合物におけるMの酸化状態をM(n)及びM(n+1)で示している。
ここで、本発明に用いるATRP反応において、VdF重合体(i)は水に分散された状態で用いる。即ち、本発明におけるATRP反応は溶媒として水を用いて行われる。水に分散されたVdF重合体は、乳化重合により製造されたラテックスが好ましい。また、VdF重合体の粒子径は、0.01〜1μmであることが好ましく、0.1〜0.3μmであることがより好ましい。
上述のように、ATRP反応を行うことにより、不飽和化合物をVdF重合体にグラフト共重合させたグラフト共重合体、MXnで表される化合物及び配位子化合物を含む水性フッ素樹脂組成物が得られる。また、この水性フッ素樹脂組成物は、グラフト共重合体、MXnで表される化合物及び配位子化合物が水に均一に分散されている。
また、得られるフッ素樹脂組成物に含まれるMXnで表される化合物の含有割合は、水性フッ素樹脂組成物に含まれる全固形分量に対して10〜1000ppmであることが好ましい。
本発明のATRP反応における反応温度は0〜150℃であることが好ましく、40〜95℃であることがより好ましい。反応時の圧力は特に限定されない。反応は空気中でも可能であるが、窒素、アルゴン等の不活性ガスの存在が好ましい。また、反応系中の金属触媒の活性を維持するため、上述の各成分に加えて、アゾ系化合物、(イソ)アスコルビン酸或いはその塩をさらに用いてもよい。
(二次電池電極用バインダーおよび二次電池電極)
本発明の二次電池電極用バインダーは、前記水性フッ素樹脂組成物を含むものであり、その他の成分の添加も可能である。
二次電池電極は、金属箔などの集電体に本発明の二次電池電極用バインダーと電極活物質と混合したスラリーを付着させたものである。二次電池電極の製造法としては、例えば、上記のスラリーを集電体に塗布し、乾燥することにより、集電体上に電極活物質層を形成する方法などがあげられる。電極においては、電極活物質が集電体表面に形成されたバインダー中に分散して固定される
電極活物質は、製造される電気化学素子用電極の種類によって適宜選択される。たとえば、製造される二次電池電極が、リチウムイオン二次電池の正極である場合、正極用の電極活物質(正極活物質)としては、リチウムイオンを可逆的にドープ・脱ドープ可能な金属酸化物が挙げられる。かかる金属酸化物としては、例えば、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム、燐酸鉄リチウム、燐酸マンガンリチウム、燐酸バナジウムリチウム、バナジン酸鉄リチウム、ニッケル−マンガン−コバルト酸リチウム、ニッケル−コバルト酸リチウム、ニッケル−マンガン酸リチウム、鉄−マンガン酸リチウム、鉄−マンガン−コバルト酸リチウム、珪酸鉄リチウム、珪酸鉄−マンガンリチウム、酸化バナジウム、バナジン酸銅、酸化ニオブ、硫化チタン、酸化モリブデン、硫化モリブデン、等を挙げることができる。なお、上記にて例示した正極活物質は適宜用途に応じて単独で使用してもよく、複数種混合して使用してもよい。さらに、ポリアセチレン、ポリ−p−フェニレン、ポリキノンなどのポリマーが挙げられる。これらのうち、リチウム含有金属酸化物を用いることが好ましい。
ここで、本発明においてドープとは、吸蔵、担持、吸着または挿入を意味し、正極にリチウムイオンおよび/ 又はアニオンが入る現象、あるいは負極にリチウムイオンが入る現象と定義する。また、脱ドープとは、放出、脱着、脱離をも意味し、上記ドープの逆の現象をいうものと定義する。
また、製造される電気化学用素子用電極が、上述したリチウムイオン二次電池の負極である場合には、負極用の電極活物質(負極活物質)としては、易黒鉛化性炭素、難黒鉛化性炭素、活性炭、熱分解炭素などの低結晶性炭素(非晶質炭素)、グラファイト(天然黒鉛、人造黒鉛)、カーボンナノウォール、カーボンナノチューブ、あるいはこれら物理的性質の異なる炭素の複合化炭素材料、錫やケイ素等の合金系材料、ケイ素酸化物、錫酸化物、バナジウム酸化物、チタン酸リチウム等の酸化物、ポリアセン等が挙げられる。なお、上記に例示した電極活物質は適宜用途に応じて単独で使用してもよく、複数種混合して使用してもよい。
リチウムイオン二次電池電極用の電極活物質の形状は、粒状に整粒されたものが好ましい。粒子の形状が球形であると、電極成形時により高密度な電極が形成できる。また、リチウムイオン二次電池用の正極活物質及び負極活物質の体積平均粒子径は、正極、負極ともに好ましくは0.1〜100μm、より好ましくは0.5〜50μm、さらに好ましくは0.8〜20μmである。さらに、リチウムイオン二次電池用の正極活物質及び負極活物質のタップ密度は、特に制限されないが、正極では2g/cm3以上、負極では0.6g/cm3以上のものが好適に用いられる。
集電体は、導電性を有するものであれば限定されないが、通常、アルミ箔や銅箔などの金属箔が使用される。金属箔の厚さは特に限定されないが、好ましくは1〜50μm、より好ましくは1〜30μmである。集電体の厚さが薄過ぎる場合は、機械的強度が弱くなり、破断、皺よりが発生しやすいといった生産上の問題を生じる場合があり、厚過ぎる場合は、電池全体としての容量が低下する傾向となる。集電体は、電極活物質層との接着強度を高めるため、その表面が粗面化処理されたものが好ましい。粗面化方法としては、機械的研磨法、電解研磨法、化学研磨法などが挙げられる。機械的研磨法においては、研磨剤粒子を固着した研磨布紙、砥石、エメリバフ、鋼線などを備えたワイヤーブラシ等が使用される。また、電極活物質層との接着強度や導電性を高めるために、集電体表面に中間層を形成してもよい。
スラリーの集電体への塗布方法は特に制限されない。例えば、ドクターブレード法、ディップ法、リバースロール法、ダイレクトロール法、グラビア法、エクストルージョン法、ハケ塗りなどによって塗布される。塗布する量も特に制限されないが、有機溶媒を除去した後に形成される電極活物質層の厚さが好ましくは0.005〜5mm、より好ましくは0.01〜2mmになる程度の量である。乾燥方法も特に制限されず、例えば温風、熱風、低湿風による乾燥、真空乾燥、(遠)赤外線や電子線などの照射による乾燥が挙げられる。乾燥条件は、通常は電極活物質層が集電体から剥離しない程度の速度範囲の中で、できるだけ早く液状媒体が揮発するように調整する。
更に、乾燥後の集電体をプレスすることにより電極を安定させてもよい。プレス方法は、金型プレスやカレンダープレスなどの方法が挙げられる。
(二次電池)
本発明の二次電池は、上記二次電池電極を有する二次電池である。より詳細には、上記二次電池電極および電解液と、従来公知のセパレーターおよび電池容器等の部品とを組み合わせて得られる。具体的な製造方法としては、例えば、正極と負極とをセパレーターを介して重ね合わせ、これを電池形状に応じて巻く、折るなどして電池容器に入れ、電池容器に電解液を注入して封口する方法が挙げられる。また必要に応じてエキスパンドメタルや、ヒューズ、PTC素子などの過電流防止素子、リード板などを入れ、電池内部の圧力上昇、過充放電の防止をする事もできる。電池の形状は、コイン型、ボタン型、シート型、円筒型、角形、扁平型など何れであってもよい。
電解液としては、有機溶媒に支持電解質を溶解した有機電解液が用いられる。本発明の二次電池がリチウムイオン二次電池である場合には、支持電解質としてリチウム塩が用いられる。リチウム塩としては、特に制限はないが、LiPF6、LiAsF6、LiBF4、LiSbF6、LiAlCl4、LiClO4、CF3SO3Li、C49SO3Li、CF3CO2Li、(CF3CO)2NLi、(CF3SO22NLi、(C25SO2)NLiなどが挙げられる。中でも、溶媒に溶けやすく高い解離度を示すLiPF6、LiClO4、CF3SO3Liが好ましい。これらは、二種以上を併用してもよい。解離度の高い支持電解質を用いるほどリチウムイオン伝導度が高くなるので、支持電解質の種類によりリチウムイオン伝導度を調節することができる。
電解液に使用する有機溶媒としては、支持電解質を溶解できるものであれば特に限定されないが、ジメチルカーボネート(DMC)、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、メチルエチルカーボネート(MEC)などのカーボネート類;γ−ブチロラクトン、ギ酸メチルなどのエステル類;1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフランなどのエーテル類;スルホラン、ジメチルスルホキシドなどの含硫黄化合物類;が好適に用いられる。またこれらの溶媒の混合液を用いてもよい。中でも、誘電率が高く、安定な電位領域が広いのでカーボネート類が好ましい。用いる溶媒の粘度が低いほどリチウムイオン伝導度が高くなるので、溶媒の種類によりリチウムイオン伝導度を調節することができる。
電解液中における支持電解質の濃度は、好ましくは1〜30重量%、より好ましくは5重量%〜20重量%である。また、支持電解質の種類に応じて、好ましくは0.5〜2.5mol/Lの濃度で用いられる。支持電解質の濃度が低すぎても高すぎてもイオン導電度は低下する傾向にある。用いる電解液の濃度が低いほど重合体粒子の膨潤度が大きくなるので、電解液の濃度によりリチウムイオン伝導度を調節することができる。
セパレーターとしては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂や芳香族ポリアミド樹脂を含む微多孔膜または不織布;無機セラミック粉末を含む多孔質の樹脂コート;など公知のものを用いることができる。例えばポリオレフィン系(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリ塩化ビニル)、及びこれらの混合物あるいは共重合体等の樹脂からなる多孔膜、ポリエチレンテレフタレート、ポリシクロオレフィン、ポリエーテルスルフォン、ポリアミド、ポリイミド、ポリイミドアミド、ポリアラミド、ポリシクロオレフィン、ナイロン、ポリテトラフルオロエチレン等の樹脂からなる微多孔膜またはポリオレフィン系の繊維を織ったもの、またはその不織布、絶縁性物質粒子の集合体等が挙げられる。これらの中でも、セパレーター全体の膜厚を薄くし電池内の活物質比率を上げて体積あたりの容量を上げることができるため、ポリオレフィン系の樹脂からなる微多孔膜が好ましい。セパレーターの厚さは、二次電池内でのセパレーターによる抵抗が小さくなり、また電池製造時の作業性に優れる観点から、好ましくは0.5〜40μm、より好ましくは1〜30μm、更に好ましくは1〜10μmである。
二次電池の具体的な製造方法としては、正極と負極とをセパレーターを介して重ね合わせ、これを電池形状に応じて巻く、折るなどして電池容器に入れ、電池容器に電解液を注入して封口する方法が挙げられる。必要に応じてエキスパンドメタルや、ヒューズ、PTC素子などの過電流防止素子、リード板などを入れ、電池内部の圧力上昇、過充放電の防止をする事もできる。電池の形状は、コイン型、ボタン型、シート型、円筒型、角形、扁平型など何れであってもよい。
本発明の水性フッ素樹脂組成物の製造方法によれば、温和な反応条件で、集電体と接着性および二次電池電解液との濡れ性が優れた水性フッ素樹脂組成物を製造することができる。
また、本発明の水性フッ素樹脂組成物を含む二次電池電極用バインダーを用い、金属集電体との接着性が高い、電解液との濡れ性の良い二次電池電極を製造することができる。本発明の二次電池電極を使用した二次電池は、サイクル特性等において良好な充放電特性を示す。
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、本実施例における部および%は、特記しない限り重量基準である。実施例及び比較例中の評価は以下の条件にて行った。
<体積平均粒子径>
実施例及び比較例で得られた水性フッ素樹脂組成物中のフッ素樹脂粒子の体積平均粒子径を、光散乱粒子径測定器(コールターLS230、コールター社製)を用いて測定した。
<電解液濡れ性>
実施例及び比較例で得られた水性フッ素樹脂組成物を、銅箔(厚さ18μm)にアプリケータにて均一に塗布し、60℃のホットプレートにて十分に乾燥させて、銅箔上に、表面が平滑で平均膜厚25μmのフィルムを形成した。次に、このフィルムが形成された銅箔を、真空乾燥機にて0.6kPa、120℃で2時間減圧乾燥してバインダーキャストフィルムを得た。得られたバインダーキャストフィルムを、25℃、大気圧のアルゴン雰囲気中にてフィルム面が水平になるように配置した後、マイクロシリンジ(50μl)にて、電解液(1mol/LのLiPF6を溶解したEC:MEC=1:2(容積比))4μlを、フィルム面に対し1cmの高さから滴下し、滴下後30秒経過したときのフィルム上の液滴の直径を測定した。そして、3回の測定の平均値をポリマーフィルムの電解液濡れ性(mm)とし、下記基準により評価した。この値が大きいほど電解液濡れ性が大きいことを示す。結果を表1に示す。
A:4.9mm以上
B:4.2mm以上4.9mm未満
C:3.5mm以上4.2mm未満
D:3.5mm未満
<スラリー安定性>
直径1cmの試験管内に、実施例および比較例得られた正極用スラリーを高さ5cmまで入れ、5本ずつ試験サンプルとした。前記試験サンプルを机上に垂直に設置した。設置した正極用スラリーの状態を10日間観察し、下記の基準により判定した。2相分離が見られないほどスラリー安定性に優れることを示す。結果を表1に示す。
A:10日後にも2相分離がみられない。
B:6〜10日後に2相分離がみられる。
C:2〜5日後に2相分離がみられる。
D:1日後に2相分離がみられる。
<電極のピール強度>
電極の強度の特性として、ピール強度を測定した。実施例及び比較例で得られた、集電体(アルミニウム箔)及び電極活物質層(正極活物質層)を有する電極(正極)を、幅2.5cm×長さ10cmの矩形に切って試験片とし、電極活物質層側の面を上にして固定した。試験片の電極活物質層側の表面にセロハンテープを貼り付けた後、試験片の一端からセロハンテープを50mm/分の速度で180°方向に引き剥がしたときの応力を測定した。測定を10回行い、その平均値を求め、これをピール強度(N/m)とした。求めたピール強度を下記の評価基準に基づいて評価した。この値が大きいほど電極のピール強度が大きいことを示す。結果を表1に示す。
A:15N/m以上
B:10N/m以上15N/m未満
C:5N/m以上10N/m未満
D:5N/m未満
<電解液浸透性>
実施例及び比較例で得られた電極(正極)の電解液浸透性を次のようにして評価した。まず、得られた電極(正極)を板ガラス上に両面テープを用いて貼り、これらをグローブボックス中で、水平に置いた。この電極上に、電解液濡れ性の測定と同様にして電解液を滴下し、その直後から、液滴の光沢がなくなるまでの時間を測定した。測定した時間について、後述する比較例1での時間を100とした場合の指数を算出した。この値が小さいほど電解液浸透性が良好であり、生産性が高いことを示す。結果を表1に示す。
A:35未満
B:35以上55未満
C:55以上75未満
D:75以上
<初期容量>
実施例及び比較例で得られたリチウムイオン二次電池を、25℃環境下で、140mAで電池電圧が4.2Vになるまで定電流充電し、4.2Vで充電電流が14mAになるまで定電圧充電を行った。続いて、140mAで電池電圧が3Vになるまで定電流放電を行い、初期容量とした。この時の初期容量を以下の評価に従い評価した。この値が大きいほど初期容量が大きいことを示す。結果を表1に示す。
A:700mAh以上
B:697mAh以上700mAh未満
C:694mAh以上697mAh未満
D:690mAh以上694mAh未満
E:690mAh未満
<出力特性>
上記のように初期容量を測定したリチウムイオン二次電池を140mAで電池電圧が4.2Vになるまで定電流充電し、4.2Vで充電電流が14mAになるまで定電圧充電を行った。続いて、1400mAで電池電圧が3Vになるまで定電流放電を行い、2C容量とした。
出力特性を下記式
(出力特性)=(2C容量)/(初期容量)×100(%)
により求め、下記の評価に従い評価を行った。この値が大きいほど出力特性が良いことを示す。結果を表1に示す。
A:90%以上
B:87%以上90%未満
C:84%以上87%未満
D:80%以上84%未満
E:80%未満
<充放電サイクル特性>
実施例及び比較例で得られたリチウムイオン二次電池を、25℃環境下で、電池電圧が4.2Vになるまで充電し、140mAで電池電圧が3Vになるまで放電する操作を100回繰り返した。そして、1回目の放電容量に対する100回目の放電容量の比を容量維持率とし、以下の基準に従い評価した。この値が大きいほど繰り返し充放電による容量減が少ないことを示す。結果を表1に示す。
A:80%以上
B:75%以上80%未満
C:70%以上75%未満
D:50%以上70%未満
E:50%未満
(実施例1)
<VdF重合体ラテックスの製造>
攪拌機付きオートクレーブの内部を十分に窒素置換した後、脱酸素した純水179部、及び乳化剤としてパーフロオロデカン酸アンモニウム1部を仕込み、300rpmで撹拌しながら70℃まで昇温した。その後、フッ化ビニリデン(VdF)ガスを内圧1.9MPaに達するまで仕込んだ。次いで、ラジカル開始剤として過硫酸アンモニウム(APS)10wt%水溶液10部を添加し、重合を開始させた。重合中、VdFガスを圧入しながら、内圧を1.9MPaに維持した。また、反応開始3時間後、VdFガスの供給を中止して、APSの10wt%水溶液10部を注入、窒素ガスを圧入し、内圧を1.9MPaに維持しながら、さらに3時間かけて反応を継続した。その後、反応液を冷却し、撹拌を停止した。また、未反応VdFガスを放出して反応を停止させ、VdF重合体ラテックスを含む水性フッ素樹脂組成物A(体積平均粒子径:170nm、固形分:40.0%)333.2部を得た。
<ATRP反応を用いた水性フッ素樹脂組成物の製造>
攪拌機付きオートクレーブの内部を十分に窒素置換した後、脱酸素した純水50部、乳化剤としてラテムルE−118B(花王株式会社、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム)の25wt%水溶液を4部、前記の方法で製造したVdF重合体ラテックス(体積平均粒子径:170nm、固形分:40.0%)を312部(固形分:124.8部)、触媒としてCuBr(和光純薬株式会社)を0.5部、配位子化合物としてN,N,N’,N’,N’’−ペンタメチルジエチレントリアミン(PMDETA、和光純薬株式会社)を0.4部仕込み、200rpmで撹拌しながら、80℃まで昇温した。30分をかけて撹拌した後、アクリル酸n−ブチル(BA、日本触媒株式会社)40部、アクリル酸2−メトキシエチル(AME、日本触媒株式会社)10部、ラテムルE−118Bを0.3部及びイオン交換水50部が予め乳化混合された液を1時間かけて滴下した。滴下終了後、85℃まで加温し、3時間かけて撹拌を続けた。ブチルアクリレートの転化率が90%以上となった時点で、反応液を減圧し未反応モノマーを留去して、グラフト鎖をVdF重合体に付加させたグラフト共重合体(フッ素樹脂)を含む水性フッ素樹脂組成物B(体積平均粒子径:170nm、固形分:37.5%)を得た。
<正極用スラリー及び正極の製造>
リチウム含有コバルト酸化物系の電極活物質(品名:セルシードC−10N、日本化学工業)100部に対し、水性フッ素樹脂組成物Bを1部(固形分相当)、導電剤としてアセチレンブラックを2部、カルボキシメチルセルロース(CMC)のナトリウム塩を1部それぞれ混合し、固形分濃度が70%になるようにイオン交換水を添加し、プラネタリーミキサーで混合して正極用スラリーを調製した。
この正極用スラリーを厚さ18μmの集電体であるアルミニウム箔に塗布し、120℃で3時間乾燥した後、ロールプレスして厚さ50μmの正極活物質層を有する正極を得た。
<負極用スラリー及び負極の製造>
負極活物質としての粒子径20μm、比表面積4.2m2/gのグラファイト100部と、日本ゼオン(株)製の負極用バインダーBM−400B(スチレン−ブタジエン共重合体の40wt%水性分散液)3部(固形分相当)と、水溶性高分子としてのCMCを1部と、適量の水とを、プラネタリーミキサーで混合して負極用スラリーを調製した。この負極用スラリーを厚さ10μmの集電体としての銅箔の片面に塗布し、110℃で3時間乾燥した後、ロールプレスして厚さ60μmの負極活物質層を有する負極を得た。
<リチウムイオン二次電池の製造>
上記で得られた正極を直径13mmの円形に切り抜いた。また、上記で得られた負極を直径14mmの円形に切り抜いた。また、厚さ25μmの乾式法により製造された単層のポリプロピレン製セパレーター(気孔率55%)を直径18mmの円形に切り抜いた。これらを、ポリプロピレン製パッキンを設置したステンレス鋼製のコイン型外装容器(直径20mm、高さ1.8mm、ステンレス鋼厚さ0.25mm)中に収納した。外装容器内の円形の電極及びセパレーターの配置は、下記の通りとした。円形の正極は、そのアルミニウム箔が外装容器底面に接触するよう配置した。円形のセパレーターは、円形の正極と円形の多孔膜付負極との間に介在するよう配置した。円形の多孔膜付負極は、その多孔膜側の面が、円形のセパレーターを介して円形の正極の正極活物質層側の面に対向するよう配置した。更に負極の銅箔上にエキスパンドメタルを載置し、この容器中に電解液(1mol/LのLiPF6を溶解したEC/DEC=1/2(容積比))を空気が残らないように注入し、ポリプロピレン製パッキンを介して外装容器に厚さ0.2mmのステンレス鋼のキャップをかぶせて固定し、電池缶を封止して、直径20mm、厚さ約3.2mmのフルセル型コインセルを製造した(コインセルCR2032)。
(実施例2)
<ATRP反応を用いた水性フッ素樹脂組成物の製造>において、用いる触媒の種類をCuClとした以外は、実施例1と同様にATRP反応を用いた水性フッ素樹脂組成物の製造を行い、水性フッ素樹脂組成物C(体積平均粒子径:182nm、固形分:37.5%)を得た。
また、<正極用スラリー及び正極の製造>において、水性フッ素樹脂組成物Bに代えて水性フッ素樹脂組成物Cを用いた以外は、実施例1と同様に正極用スラリー及び正極の製造を行った。
その後、実施例1と同様に<負極用スラリー及び負極の製造>、<リチウムイオン二次電池の製造>を行った。
(実施例3)
<ATRP反応を用いた水性フッ素樹脂組成物の製造>において、用いる触媒の種類をFeCl2とし、用いる配位子化合物の種類をジメチルラウリルアミン(花王株式会社製)とした以外は、実施例1と同様にATRP反応を用いた水性フッ素樹脂組成物の製造を行い、水性フッ素樹脂組成物D(体積平均粒子径:181nm、固形分:37.3%)を得た。
また、<正極用スラリー及び正極の製造>において、水性フッ素樹脂組成物Bに代えて水性フッ素樹脂組成物Dを用いた以外は、実施例1と同様に正極用スラリー及び正極の製造を行った。
その後、実施例1と同様に<負極用スラリー及び負極の製造>、<リチウムイオン二次電池の製造>を行った。
(実施例4)
<ATRP反応を用いた水性フッ素樹脂組成物の製造>において、用いる触媒の種類をFeBr2とし、用いる配位子化合物の種類をジメチルラウリルアミン(花王株式会社製)とした以外は、実施例1と同様にATRP反応を用いた水性フッ素樹脂組成物の製造を行い、水性フッ素樹脂組成物E(体積平均粒子径:181nm、固形分:37.3%)を得た。
また、<正極用スラリー及び正極の製造>において、水性フッ素樹脂組成物Bに代えて水性フッ素樹脂組成物Eを用いた以外は、実施例1と同様に正極用スラリー及び正極の製造を行った。
その後、実施例1と同様に<負極用スラリー及び負極の製造>、<リチウムイオン二次電池の製造>を行った。
(実施例5)
<ATRP反応を用いた水性フッ素樹脂組成物の製造>において、用いる触媒の種類をCuClとし、用いる配位子化合物の種類をジメチルラウリルアミン(花王株式会社製)とした以外は、実施例1と同様にATRP反応を用いた水性フッ素樹脂組成物の製造を行い、水性フッ素樹脂組成物F(体積平均粒子径:179nm、固形分:36.5%)を得た。
また、<正極用スラリー及び正極の製造>において、水性フッ素樹脂組成物Bに代えて水性フッ素樹脂組成物Fを用いた以外は、実施例1と同様に正極用スラリー及び正極の製造を行った。
その後、実施例1と同様に<負極用スラリー及び負極の製造>、<リチウムイオン二次電池の製造>を行った。
(比較例1)
<ATRP反応を用いた水性フッ素樹脂組成物の製造>を行わずに、<正極用スラリー及び正極の製造>において、水性フッ素樹脂組成物Bに代えて水性フッ素樹脂組成物Aを用いた以外は、実施例1と同様に正極用スラリー及び正極の製造を行った。
その後、実施例1と同様に<負極用スラリー及び負極の製造>、<リチウムイオン二次電池の製造>を行った。
(比較例2)
<ATRP反応を用いた水性フッ素樹脂組成物の製造>において、触媒及び配位子化合物を用いなかった以外は、実施例1と同様にATRP反応を用いた水性フッ素樹脂組成物の製造を行い、水性フッ素樹脂組成物G(体積平均粒子径:171nm、固形分:31.1%)を得た。
また、<正極用スラリー及び正極の製造>において、水性フッ素樹脂組成物Bに代えて水性フッ素樹脂組成物Gを用いた以外は、実施例1と同様に正極用スラリー及び正極の製造を行った。
その後、実施例1と同様に<負極用スラリー及び負極の製造>、<リチウムイオン二次電池の製造>を行った。
(比較例3)
<ATRP反応を用いた水性フッ素樹脂組成物の製造>において、不飽和化合物であるBA及びAMEを用いなかった以外は、実施例1と同様にATRP反応を用いた水性フッ素樹脂組成物の製造を行い、水性フッ素樹脂組成物H(体積平均粒子径:170nm、固形分:29.2%)を得た。
また、<正極用スラリー及び正極の製造>において、水性フッ素樹脂組成物Bに代えて水性フッ素樹脂組成物Hを用いた以外は、実施例1と同様に正極用スラリー及び正極の製造を行った。
その後、実施例1と同様に<負極用スラリー及び負極の製造>、<リチウムイオン二次電池の製造>を行った。
Figure 0006065689
表1に示すように、MXn(Mは周期表第4族〜第11族遷移金属を示し、Xはハロゲン原子を示す。また、nは1以上5以下の整数を示す。)で表される化合物と、ホスフィン、リン酸エステル、アミン及びピリジンからなる群より選択される少なくとも1つの配位子化合物の存在下で、水に分散されたフッ化ビニリデン重合体と、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルニトリル、又は(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも1つの不飽和化合物とを、原子移動ラジカル重合反応させることにより得られる前記不飽和化合物を前記フッ化ビニリデン重合体にグラフト共重合させたグラフト共重合体、前記MXnで表される化合物及び前記配位子化合物を含む水性フッ素樹脂組成物を含む水性フッ素樹脂組成物の電解液濡れ性は良好であり、この水性フッ素樹脂組成物を含む正極用スラリーの安定性、電極のピール強度、電解液浸透性は良好であった。また、この水性フッ素樹脂組成物を含む電極を用いて製造したリチウムイオン二次電池の初期容量、出力特性、充放電サイクル特性は良好であった。

Claims (7)

  1. MXn(Mは周期表第4族〜第11族遷移金属を示し、Xはハロゲン原子を示す。また、nは1以上5以下の整数を示す。)で表される化合物と、ホスフィン、リン酸エステル、アミン及びピリジンからなる群より選択される少なくとも1つの配位子化合物の存在下で、水に分散されたフッ化ビニリデン重合体と、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルニトリル、又は(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも1つの不飽和化合物とを、原子移動ラジカル重合反応させることにより、前記不飽和化合物を前記フッ化ビニリデン重合体にグラフト共重合させたグラフト共重合体、前記MXnで表される化合物及び前記配位子化合物を含む水性フッ素樹脂組成物を得る工程を含むことを特徴とする二次電池電極用バインダーの製造方法。
  2. 前記Mは、銅又は鉄であることを特徴とする請求項1記載の二次電池電極用バインダーの製造方法。
  3. 前記フッ化ビニリデン重合体の粒子径は0.01〜1μmであることを特徴とする請求項1記載の二次電池電極用バインダーの製造方法。
  4. 前記MXnで表される化合物の重量含有率は、前記水性フッ素樹脂組成物に含まれる全固形分量に対して10〜1000ppmであることを特徴とする請求項1記載の二次電池電極用バインダーの製造方法。
  5. 前記水性フッ素樹脂組成物を得る工程により得られる水性フッ素樹脂組成物であって、前記グラフト共重合体、前記MXnで表される化合物及び前記配位子化合物が水に均一に分散されたことを特徴とする請求項1記載の二次電池電極用バインダーの製造方法
  6. 請求項5記載の二次電池電極用バインダーの製造方法を含むことを特徴とする二次電池電極の製造方法
  7. 請求項6記載の二次電池電極の製造方法を含むことを特徴とする二次電池の製造方法
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