第1の発明は、機器本体の内部に設けられた焼成室内に収納され、調理材料が入れられる調理容器と、調理容器内で練り軸を回転中心として回転することにより、調理容器内に入れられた調理材料を混練する練り羽根と、を備え、練り羽根は、第1の壁と、第1の壁の外側にある第2の壁とを有し、第1の壁は、頂部とその両側に傾斜部を有した山形状であり、頂部の高さ位置と、練り軸側の傾斜部との間には、パン生地を通過させるための空間部が形成され、第1の壁における練り軸側の傾斜部は曲線状で、第1の壁における練り軸側の傾斜部の水平方向に対する傾斜角度は上方にいくほど大きくなる、自動製パン機である。これにより、練り羽根の第1の壁において、頂部の高さ位置と、練り軸側の傾斜部との間にパン生地を通過させるための空間部が形成されることにより、パン生地を調理容器の内壁面に押しつけて伸ばして練るだけでなく、空間部を通過させることで回転させながら練ることができる。これにより、パン生地を効率的に練ることができる。また、第1の壁における練り軸側の傾斜部を曲線状とすることにより、パン生地が空間部を通過する際に傷むことを防止しながら、パン生地を回転させて練ることができる。さらに、第1の壁における練り軸側の傾斜部の形状を工夫することにより、傾斜部上の空間部の大きさを確保して、パン生地の回転を促進することができる。
第2の発明は、特に第1の発明の第1の壁の外向き方向の長さのうち、練り軸側の傾斜部が占める長さの割合は1/3以上である。これにより、第1の壁における練り軸側の傾斜部が占める長さの割合を所定の割合以上に設定することにより、傾斜部上の空間部の大きさを確保して、パン生地の回転を促進することができる。
第3の発明は、特に第1又は第2の発明の第1の壁の外向き方向の長さのうち、練り軸と反対側の傾斜部が占める長さの割合は1/3以上である。これにより、第1の壁における練り軸と反対側の傾斜部が占める長さの割合を所定の割合以上に設定することにより、パン生地の伸ばしと回転をバランス良く行うことができ、より効率的にパン生地を練ることができる。
第4の発明は、特に第1から第3のいずれか1つの発明の第2の壁は、第1の壁から練り羽根の回転方向とは逆方向に折れ曲がっている。これにより、第2の壁が第1の壁から練り羽根の回転方向とは逆方向に折れ曲がっていることにより、パン生地を調理容器の内壁面に押しつけやすくなるため、パン生地をより効率的に練ることができる。
第5の発明は、特に第4の発明の練り羽根の外向き方向の長さのうち、第2の壁が占める長さの割合は1/4以下である。これにより、練り羽根における第2の壁が占める長さの割合を所定の割合以下に設定することにより、パン生地の伸ばしと回転をバランス良く行いながらパン生地を練ることができ、パン生地を効率的に練ることができる。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
《実施形態》
本発明の実施形態にかかる自動製パン機の全体構成について説明する。図1は、本実施形態にかかる自動製パン機の斜視図であり、図2は、当該自動製パン機の蓋体を開けた状態を示す斜視図である。図3は、本実施形態にかかる自動製パン機の断面図である。図4は、本実施形態にかかる自動製パン機の一部拡大断面図である。
図1〜3において、本実施形態にかかる自動製パン機1は、略直方体形状の機器本体10を備えている。機器本体10の上面の一部には、操作部20が設けられている。
操作部20は、操作キー群と、表示部とによって構成されている。操作キー群には、例えば、スタートキー、取り消しキー、タイマーキー、予約キー、パンの調理コースなどを選択する選択キー等が含まれる。調理コースには、例えば、米粒を出発原料に用いてパンを製造するコース、米粉を出発原料に用いてパンを製造するコース、小麦粉を出発原料に用いてパンを製造するコースなどが含まれる。表示部は、例えば、液晶表示パネル等によって構成され、時間、操作キー群によって設定された内容、エラー等を表示するものである。
機器本体10の内部には、焼成室30が設けられている。焼成室30は、上面が開口した箱形状に形成されている。焼成室30の内部には、パン生地、ケーキ、餅などの調理材料を収容する調理容器40が着脱自在に収納される。
また、焼成室30の内部には、図3に示すように、調理容器40を加熱する加熱部の一例であるシーズヒータ31と、焼成室30内の温度を検知する温度検知部の一例である温度センサ32とが設けられている。
シーズヒータ31は、焼成室30に収容された調理容器40の下部を、隙間を空けて包囲するように配置されている。温度センサ32は、焼成室30内の平均的な温度を検知することができるように、シーズヒータ31から少し離れた位置に配置されている。
焼成室30の上面開口部は、機器本体10の上部に設けられた蓋50によって開閉される。蓋50は、機器本体10の上方後部(図3の右上側)に設けられたヒンジ部10Aに回動自在に取り付けられている。蓋50は、蓋本体51と、外蓋52とを備えている。蓋本体51には、グルテンやドライイーストなどの粉状の副材料を収容する副材料容器53と、レーズン、ナッツなどの比較的体積の大きな副材料を収容する副材料容器54とが取り付けられている。副材料容器53,54は、調理容器40の上方に配置されている。外蓋52は、副材料容器53,54の上部開口部を開閉可能に取り付けられている。
副材料容器53の底壁は、開閉板53aで構成されている。開閉板53aは、副材料容器53内の副材料を調理容器40内に投入することができるように回動可能に構成されている。同様に、副材料容器54の底壁は、開閉板54aで構成されている。開閉板54aは、副材料容器54内の副材料を調理容器40内に投入することができるように回動可能に構成されている。開閉板53a,54aの開閉のタイミングは、後述する制御部90により制御される。
また、焼成室30の底壁30aの略中心部には、調理容器支持部11が設けられている。調理容器支持部11は、図4に示すように、略筒状に形成され、焼成室30の底壁30aから下方に離れるに従って、内径が段階的に小さくなるように形成されている。調理容器支持部11の外周面の下端部には、ベアリング12を介して第1のプーリ61が設けられている。
調理容器支持部11の下部の中心穴には、略円筒形の第3のワンウェイクラッチ13が設けられている。第3のワンウェイクラッチ13の内側には、略円筒形の本体側練り軸16Aが垂直方向に延在するように設けられている。第3のワンウェイクラッチ13は、本体側練り軸16Aの正方向(例えば、時計回り)の回転を許容する一方、本体側練り軸16Aの逆方向(例えば、反時計回り)の回転を規制するように構成されている。
本体側練り軸16Aの外周下部には、第2のワンウェイクラッチ15が設けられている。第2のワンウェイクラッチ15は、第1のプーリ61と係合するように設けられている。第2のワンウェイクラッチ15は、第1のプーリ61が正方向に回転するとき、本体側練り軸16Aを正方向に回転させる一方、第1のプーリ61が逆方向に回転するとき、本体側練り軸16Aが逆方向に回転しないように本体側練り軸16Aの回転を規制するように構成されている。
本体側練り軸16Aの内部には、略円柱状の本体側ミル軸14Aが垂直方向に延在するように設けられている。本体側ミル軸14Aは、本体側練り軸16Aに対して相対回転可能に設けられている。本体側ミル軸14Aの下端部には、第2のプーリ62が固定されている。
また、焼成室30の外側であって機器本体10の内部には、モータの一例であるインバータモータ70が設けられている。インバータモータ70は、出力軸71の単位時間当たりの回転数及び回転方向(正方向、逆方向)を自在に変更することができるモータである。
インバータモータ70の出力軸71の外周上部には、第3のプーリ63が固定されている。第3のプーリ63と第1のプーリ61には、第1のベルト65が架け回されている。インバータモータ70が駆動されて出力軸71が回転するとき、当該出力軸71の回転力は、第3のプーリ63、第1のベルト65を介して第1のプーリ61に伝達される。
また、インバータモータ70の出力軸71の外周下部には、ベアリング67を介して第4のプーリ64が設けられている。第4のプーリ64と第2のプーリ62には、第2のベルト66が架け回されている。
また、インバータモータ70の出力軸71の外周面において第3のプーリ63と第4のプーリ64との間には、第1のワンウェイクラッチ68が設けられている。第1のワンウェイクラッチ68は、出力軸71が逆方向に回転するとき、第4のプーリ64を逆方向に回転させる一方、出力軸71が正方向に回転するとき、第4のプーリ64が正方向に回転しないように第4のプーリ64の回転を規制する。
また、本体側ミル軸14Aの上端部には、本体側コネクタ17Aが固定されている。本体側コネクタ17Aは、略円柱形の容器側ミル軸14Bの下端部に固定された容器側コネクタ17Bと係合可能に構成されている。本体側コネクタ17Aと容器側コネクタ17Bとが係合した状態で、本体側ミル軸14Aが回転したとき、容器側ミル軸14Bが回転する。
また、本体側練り軸16Aの上端部には、係合片16Aaが設けられている。係合片16Aaは、略円筒形の容器側練り軸16Bの下端部に固定された係合片16Baと係合可能に構成されている。本体側練り軸16Aが回転するとき、係合片16Aaが係合片16Baに係合し、容器側練り軸16Bが回転する。
容器側ミル軸14Bは、容器側練り軸16Bの内側に円筒形の軸受け18を介して設けられている。容器側ミル軸14Bと容器側練り軸16Bとは、調理容器40が焼成室30内にセットされたとき、調理容器40の底部の中心部に設けられた貫通穴を通じて調理容器40内に突出するように設けられている。
調理容器40の底部には、図3に示すように、有底筒状の凹部41が形成されている。また、調理容器40の底部外面には、容器側練り軸16Bを取り囲むように筒状の台座42が設けられている。調理容器40は、台座42が調理容器支持部11に載置され、本体側コネクタ17Aと容器側コネクタ17Bとが係合されることで焼成室30内にセットされる。一方、調理容器40は、本体側コネクタ17Aと容器側コネクタ17Bとの係合が外されることで、焼成室30内から取り外すことができる。なお、台座42は、調理容器40とは別に形成してもよいし、調理容器40と一体的に形成してもよい。
容器側ミル軸14B及び容器側練り軸16Bの調理容器40の内部に突出する部分には、羽根ユニット80が着脱自在に取り付けられている。
羽根ユニット80は、キャップ81と、ミル羽根82と、ドーム状カバー83と、練り羽根84と、セーフティカバー85とを備えている。
キャップ81は、容器側ミル軸14Bの先端部に着脱自在に設けられている。ミル羽根82は、キャップ81の外周面から外方に突出するように設けられている。
ミル羽根82は、米粒などの穀物粒を粉砕して製パン原料を製造するための羽根である。調理容器40が焼成室30内にセットされるとともにキャップ81が容器側ミル軸14Bに取り付けられた状態において、ミル羽根82は、概ね調理容器40の凹部41内に位置するように設けられている。ミル羽根82の具体的構成や好ましい形状等については、後で詳しく説明する。
ドーム状カバー83は、ミル羽根82を上方から覆うように形成されている。ドーム状カバー83には、図5及び図6に示すように、ドーム状カバー83の内側の空間とドーム状カバー83の外側の空間とを連通する複数の窓部83aが設けられている。ミル羽根82の回転により製造された製パン原料は、複数の窓部83aを通じてドーム状カバー83の内側の空間とドーム状カバー83の外側の空間に排出される。
練り羽根84は、ドーム状カバー83の外面に垂直方向に立設するように設けられている。練り羽根84は、調理容器40内の製パン原料を混練してパン生地を製造するための羽根である。練り羽根84の具体的構成や好ましい形状等については、後で詳しく説明する。
セーフティカバー85は、ドーム状カバー83の下端部に取り付けられ、ミル羽根82を下方から覆うように形成されている。また、セーフティカバー85は、その一部が容器側練り軸16Bの内面に嵌合するように、容器側練り軸16Bに取り付けられている。容器側練り軸16Bが回転するとき、セーフティカバー85、ドーム状カバー83、及び練り羽根84が一体的に回転する。調理容器40が焼成室30内にセットされるとともにセーフティカバー85が容器側練り軸16Bに取り付けられた状態において、ミル羽根82は、概ね調理容器40の凹部41よりも上方に位置するように設けられている。また、セーフティカバー85には、調理容器40内に入れられた米粒や水などの材料をドーム状カバー83内に取り込むための開口部(図示せず)が設けられている。
また、機器本体10の操作部20の下方には、各部の駆動を制御する制御部90が設けられている。制御部90には、複数の調理コースに対応する調理シーケンスが記憶されている。調理シーケンスとは、浸水、ミル、冷却、練り、発酵、焼成などの各製造工程を順に行うにあたって、各製造工程においてシーズヒータ31の通電時間、温調温度、インバータモータ70の回転方向、回転速度、開閉板53a,54aの開閉のタイミングなどが予め決められている調理の手順のプログラムをいう。制御部90は、操作部20にて選択された特定の調理コースに対応する調理シーケンスと温度センサ32の検知温度に基づいて、インバータモータ70、シーズヒータ31、開閉板53a,54aの駆動を制御する。
次に、図6を用いて、インバータモータ70の出力軸71が正方向に回転されたときの動作について説明する。図6は、インバータモータ70に関連する部品の構成を示す断面図である。図6において、斜線部は、正方向に回転する部品を示している。
図6に示すように、インバータモータ70の出力軸71が正方向に回転されたとき、当該出力軸71の回転力が、第3のプーリ63及び第1のワンウェイクラッチ68に伝達され、これらの部品が正方向に回転する。
第3のプーリ63の回転力は、第1のベルト65、第1のプーリ61、第2のワンウェイクラッチ15に伝達され、これらの部品が正方向に回転する。第2のワンウェイクラッチ15は、第1のプーリ61が正方向に回転するので、本体側練り軸16Aを正方向に回転させる。このとき、第3のワンウェイクラッチ13は、本体側練り軸16Aの正方向の回転を許容する。本体側練り軸16Aの回転力は、容器側練り軸16B、セーフティカバー85、ドーム状カバー83、及び練り羽根84に伝達され、これらの部品が正方向に回転する。
一方、第1のワンウェイクラッチ68は、出力軸71が正方向に回転するので、第4のプーリ64が正方向に回転しないように第4のプーリ64の回転を規制する。
すなわち、インバータモータ70の出力軸71が正方向に回転されたときは、練り羽根84が正方向に回転する一方で、ミル羽根82は回転しないようになっている。
次に、図7を用いて、インバータモータ70の出力軸71が逆方向に回転されたときの動作について説明する。図7は、インバータモータ70に関連する部品の構成を示す断面図である。図7において、斜線部は、逆方向に回転する部品を示している。
図7に示すように、インバータモータ70の出力軸71が逆方向に回転されたとき、当該出力軸71の回転力が、第3のプーリ63及び第1のワンウェイクラッチ68に伝達され、これらの部品が逆方向に回転する。
第3のプーリ63の回転力は、第1のベルト65、第1のプーリ61、第2のワンウェイクラッチ15に伝達され、これらの部品が逆方向に回転する。第2のワンウェイクラッチ15は、第1のプーリ61が逆方向に回転するので、本体側練り軸16Aが逆方向に回転しないように本体側練り軸16Aの回転を規制する。
一方、第1のワンウェイクラッチ68は、出力軸71が逆方向に回転するので、第4のプーリ64を逆方向に回転させる。この第4のプーリ64の回転力は、第2のベルト66、第2のプーリ62、本体側ミル軸14A、容器側ミル軸14B、キャップ81、ミル羽根82に伝達され、これらの部品が逆方向に回転する。なお、このとき、第3のワンウェイクラッチ13は、本体側ミル軸14Aの回転力により、本体側練り軸16Aが逆方向に回転(いわゆる、共回り)することを規制する。
すなわち、インバータモータ70の出力軸71が逆方向に回転されたときは、ミル羽根82が逆方向に回転する一方で、練り羽根84は回転しないようになっている。
なお、本実施形態において、第1のプーリ61は、第2〜第4のプーリ62〜64に比べて大きな直径を有するように構成されている。これにより、インバータモータ70の出力軸71の回転速度に対する練り羽根84の回転速度を低速(例えば、250rpm)にするとともに、高トルクが得られるようにしている。また、練り羽根84の回転速度に対するミル羽根82の回転速度を高速(例えば、4000rpm)にするようにしている。
なお、本実施形態において、「ミル軸」は、本体側コネクタ17Aと容器側コネクタ17Bとが係合されることにより連結された本体側ミル軸14Aと容器側ミル軸14Bとにより構成されている。また、「練り軸」は、係合片16Aaと係合片16Baとが係合されることにより連結された本体側練り軸16Aと容器側練り軸16Bとにより構成されている。また、ミル羽根82の回転中心となるミル軸の中心軸と、練り羽根84の回転中心となる練り軸の中心軸とは、同一軸上に位置するように設けられている。
また、本実施形態において、「駆動力切換部」は、ベアリング12,67、第1〜第4のプーリ61〜64、第1及び第2のベルト65,66、第1〜第3のワンウェイクラッチ68,15,13により構成されている。「駆動力切換部」は、ミル軸及び練り軸へのモータ70の回転駆動力の伝達経路を切り換えるものである。
次に、図8、図9A〜図9Cを用いて、ミル羽根82の好ましい形状等について説明する。図8は、ドーム状カバー83に対するミル羽根82の相対位置を示す底面図である。図9Aはミル羽根82の斜視図であり、図9B及び図9Cはミル羽根82の側面図である。
図8に示すように、ミル羽根82の両端部は、穀物粒を切るのではなく、すり潰すように形成されている。具体的には、ミル羽根82の両端部は、平面視においてドーム状カバー83の内周端部に沿うように、一定の長さのすり潰し領域82Aを有するように形成されている。これにより、穀物粒を効率良く製パン原料にすることができ、ミル羽根82の回転速度を低下させることができる。その結果、穀物粒を製パン原料にする際、すなわちミルする際に発生する音を低減することができる。
また、ミル羽根82の両端部のエッジは、波形状に形成されている。これにより、当該エッジと穀物粒との接触面積を増やし、穀物粒のすり潰し効果を向上させることができる。また、好ましくは、ミル羽根82の両端部のエッジは、正弦波状(曲線で構成される波状)に形成される。これにより、ユーザがミル羽根82に触れることにより、ユーザの指が切れることを抑えることができる。
また、ミル羽根82の両端部のエッジは、一定の厚さ(例えば、1.5mm)を有する(すなわち、刃先を有しない)ように構成されている。これにより、ユーザがミル羽根82に触れることにより、ユーザの指が切れることをより一層抑えることができる。また、当該エッジと穀物粒との接触面積を増やし、穀物粒のすり潰し効果を向上させることができる。また、ミル羽根82の全体としての強度を確保することができる。なお、ミル羽根82は、エッジを含めて均一な厚さに構成されてもよい。
また、ミル羽根82の両端部は、図9B及び図9Cに示すように、正面から見て互いに逆方向に傾斜している。具体的には、ミル羽根82の両端部は、ミル羽根82の回転方向の下流側(最初に米粒に衝突する側)に位置する部分が、その上流側に位置する部分よりも下方に位置するように傾斜している。また、ミル羽根82の両端部の水平面に対する傾斜角度は、従来よりも大きく、例えば13度とされている。これにより、穀物粒を効率良く製パン原料にすることができ、ミル羽根82の回転速度をより一層低下させることができる。その結果、穀物粒を製パン原料にする際、すなわちミルする際に発生する音をより一層低減することができる。
なお、本実施形態では、ミル羽根82の両端部のエッジを波形状に形成したが、本発明はこれに限定されない。例えば、ミル羽根82の両端部のエッジは曲線状であってもよい。なお、図10は、エッジを曲線状としたミル羽根82により穀物粒を粉砕する際に、ミル羽根82にかかる応力を示す図である。図11は、従来の刃先を有するミル羽根により穀物粒を粉砕する際に、当該ミル羽根にかかる応力を示す図である。図10及び図11より、エッジを曲線状としたミル羽根82の方が、従来のミル羽根よりも穀物粒に対してより大きな力を加えられることが分かる。
次に、図12〜図15を用いて、練り羽根84の好ましい形状等について説明する。図12は、ドーム状カバー83に対する練り羽根84の相対位置を示す上面図である。図13は、練り羽根84の側面図である。図14は、練り羽根84と調理容器40との相対位置を示す上面図である。図15は、図12における練り羽根84のA−A断面図である。
図12、13に示すように、ドーム状カバー83と一体形成される練り羽根84は、ドーム状カバー83の中心Cからではなく、ドーム状カバー83の中心Cから離れた位置を支点Fとして外側に向かって延びている(すなわち、練り羽根84の支点Fから離れる方向に伸びる)。本実施形態では、練り羽根84の支点Fは、ドーム状カバー83の中心Cから約8mm離れた位置に配置されている。図12における練り羽根84の回転方向Rは時計回りである。
図13に示すように、練り羽根84は、第1の壁105と、第1の壁105から外側に伸びる第2の壁103とを備える。第1の壁105は、練り羽根84の支点Fから外側に向かって上方に延びる第1の傾斜部100と、第1の傾斜部100から外側に向かって水平に延びる頂部101と、頂部101から外側に向かって下方に延びる第2の傾斜部102とを備える。本実施形態における第1の傾斜部100は、水平方向に対する傾斜角度が上方にいくほど大きくなる。具体的には、第1の傾斜部100は直線形状ではなく放物線状の曲線形状を有する。第1の傾斜部100の上方には空間部104が形成されている。空間部104は、頂部101の高さ位置Hと第1の傾斜部100とで囲まれた部分であり、概ね楕円を4等分した形状を有している。一方で、本実施形態における第2の傾斜部102は、略直線状に形成されている。水平方向に対する第2の傾斜部102の傾斜角度は45度〜50度に設定される。
上述したように、練り羽根84の第1の壁105は、頂部101とその両側に傾斜部100、102を有した上方に凸となる山形状に形成されている。
図12、13に示すように、第1の壁105の外側(練り羽根84の端部分)に形成された第2の壁103は、第1の壁105から練り軸16A、16B(図4)とは反対側に延在して、練り羽根84の回転方向Rとは逆方向(反時計方向)に折れ曲がっている。
図14に示すように、練り羽根84およびドーム状カバー83は、調理容器40内の底面に配置される。ドーム状カバー83の中心Cは、調理容器40の中心と略一致する。調理容器40内の対向する内壁面107には一対の突起部108が設けられている。突起部108は、練り羽根84との間にてパン生地を練るための突起である。本実施形態では、練り羽根84が回転する際の先端の軌跡Tと突起部108との距離は3mmに設定されている。
図15は、図12における練り羽根84のA−A断面図であって、練り羽根84の実寸の一例を示す。本実施形態では、練り羽根84の第1の壁105の外向き方向の長さは41mmである。ここでの外向き方向の長さとは、練り羽根84が調理容器40に向かって外側に延在する方向に沿った長さのことである。第1の壁105の外向き方向の長さのうち、第1の傾斜部100が占める長さは17mmであり、頂部101が占める長さは9mmであり、第2の傾斜部102が占める長さは15mmである。本実施形態では、練り羽根84の第1の壁105の外向き方向の長さ(41mm)のうち、第1の傾斜部100が占める長さ(17mm)の割合と、第2の傾斜部102が占める長さ(15mm)の割合をそれぞれ1/3以上となるように設定している(15/41、17/41)。
また、第2の壁103の長さは10.8mmである。よって、練り羽根84の外向き方向の全体の長さは51.8mmである(41+10.8)。本実施形態では、練り羽根84の外向き方向の長さ(51.8mm)のうち、第2の壁103が占める長さ(10.8mm)の割合を1/4以下としている(10.8/51.8)。その他の長さについては、説明を省略する。なお、ここで例示した実寸は一例に過ぎず、その他の長さを採用しても良い。
このように構成される練り羽根84の動作および作用について、以下に説明する。
調理容器40内にパン生地が入った状態で練り羽根84が動作されると、ドーム状カバー83の中心Cを回転中心として練り羽根84が回転方向R(図12、14)へ回転される。練り羽根84が回転すると、練り羽根84の第1の壁105がパン生地に接触し、パン生地を調理容器40の内壁面107に向かって外側へ押しやるように作用する。外側へ押しやられたパン生地は、練り羽根84の第2の壁103に案内されるとともに、第2の壁103の先端(練り羽根84の先端)と、調理容器40の内壁面107(特に突起部108)との隙間に入り込み、その隙間にて練り羽根84の回転に応じて伸ばされながら練られる。このように、練り羽根84の回転によりパン生地を伸ばしながら練ることができる。ここで、第2の壁103は練り羽根84の回転方向Rとは逆方向に折れ曲がっているため、パン生地をより外側に案内して伸ばすことができる。
また、練り羽根84における第1の傾斜部100の上方に空間部104(図13)が形成されているため、パン生地がドーム状カバー83の中心C近傍にある場合などには、パン生地は第1の傾斜部100を乗り越えるように空間部104を通過することができる。パン生地が空間部104を通過して回転方向Rの下流側へ移動することにより、パン生地を回転させることができる。
上述したように、パン生地を練り羽根84の先端部と調理容器40の内壁面107および突起部108との間で伸ばして練るとともに、空間部104を設けることによってパン生地を回転させながら練ることができる。このような動作を繰り返すことにより、パン生地の回転および伸ばしといった練り動作を繰り返し行うことができるため、パン生地を効率的に練り込むことができる。これにより、レーズンやナッツなどの副材料をパン生地に効果的に均一に練り込むことができる。このように効率的に練り込まれたパン生地は成形工程で丸く纏まるため、見栄えを安定させることができる。
また本実施形態では、練り羽根84の第1の壁105の外向き方向の長さのうち、第1の傾斜部100と第2の傾斜部102が占める長さの割合をそれぞれ1/3以上となるように設定している。このような設定により、パン生地の伸ばしと回転をバランス良く行うことができ、より効率的にパン生地を練ることができる。
また本実施形態では、空間部104を形成する第1の傾斜部100を曲線状に形成しているため、空間部104を通過する際にパン生地を傷付けることなく回転させることができる。さらに、第1の傾斜部100を、上方に行くほど水平方向に対する傾斜が大きくなる放物線状に形成することにより、空間部104の空間を広く確保することができるため、パン生地をより空間部104に案内することができ、パン生地の回転を促進することができる。よって、パン生地をより効率的に練ることができる。
また本実施形態では、練り羽根84の外向き方向の長さのうち、第2の壁103が占める長さの割合を1/4以下としている。これにより、パン生地の伸ばしと回転をバランス良く行うことができ、より効率的にパン生地を練ることができる。
なお、本実施形態では、練り羽根84の支点Fをドーム状カバー83の中心C(練り羽根84の回転中心)からずれた位置から延在する場合について説明したが、このような場合に限らず例えば、ドーム状カバー83の中心Cと一致させても良い。
次に、図16を用いて、本実施形態にかかる自動製パン機1によって実行される米粒用製パンコースの流れの一例を説明する。図16は、本実施形態にかかる自動製パン機1によって実行される米粒用製パンコースの流れを示す模式図である。図16に示すように、米粒用製パンコースにおいては、浸水工程と、ミル工程と、冷却工程と、練り(捏ね)工程と、発酵工程と、焼成工程とが順次に実行される。
米粒用製パンコースを開始するにあたって、ユーザは、以下の動作を行う。
まず、ユーザは、容器側ミル軸14Bにキャップ81を取り付けるとともに、セーフティカバー85の一部を容器側練り軸16Bの内面に嵌合させる。これにより、羽根ユニット80が、図3に示すように、調理容器40内にセットされる。
その後、ユーザは、米粒、水、調味料(例えば、食塩、砂糖、ショートニング)等の主材料を調理容器40内に入れるとともに、パンの製造工程の途中で自動投入するドライイースト、グルテン、ナッツなどの副材料を副材料容器53,54に入れる。
その後、ユーザは、調理容器40を焼成室30内にセットし、蓋50により焼成室30の上面開口部を閉じる。その後、ユーザは、操作部20によって米粒用製パンコースを選択し、スタートキーを押す。これにより、制御部90が、米粒を出発原料に用いてパンを製造する米粒用製パンコースの制御動作を開始する。
米粒用製パンコースがスタートされると、制御部90の指令によって浸水工程が開始される。浸水工程は、米粒に水を含ませることによって、その後に行われるミル工程において、米粒を芯まで粉砕しやすくするための工程である。浸水工程では、調理容器40に予め投入された主材料の静置状態が所定時間(本実施形態では30分)維持される。
浸水工程の開始から所定時間が経過すると、制御部90の指令によって浸水工程が終了され、ミル工程が開始される。ミル工程は、調理容器40内に入れられた米粒を粉砕して製パン原料を製造する工程である。ミル工程において、制御部90は、インバータモータ70を制御して出力軸71を逆方向に回転させ、図7を用いて上述したように、米粒と水とが含まれる混合物の中でミル羽根82を回転(例えば、4000rpm)させる。これにより、米粒が粉砕される。
粉砕された米粒と水とが含まれる混合物は、ドーム状カバー83の複数の窓部83aを通じてドーム状カバー83の外側の空間に排出される。これに伴い、調理容器40の凹部41内の米粒と水とを含む混合物がセーフティカバー85に設けられた開口部(図示せず)からドーム状カバー83の内側の空間に取り込まれる。このようにして、次々に米粒がミル羽根82によって粉砕され、その結果、ペースト状の粉砕粉を含む製パン原料が製造される。
なお、ミル羽根82と衝突する米粒の大きさが大きいときは、大きな衝突音が発生する。このため、制御部90は、ミル工程の開始から所定時間(例えば、5分間)は、ミル羽根82を低速回転させ、その後、ミル羽根82を高速回転させるようにインバータモータ70を制御することが好ましい。これにより、ミル工程における大きな衝突音の発生を抑えることができる。
ミル工程の開始から所定時間(本実施形態では70分)経過すると、制御部90の指令によってミル工程が終了され、冷却工程が開始される。冷却工程は、ミル工程によって上昇した調理容器40内の製パン原料の温度を、ドライイーストが活発に働く温度(例えば、30℃前後)まで下げる工程である。冷却工程において、制御部90は、インバータモータ70の駆動を停止させる。
冷却工程の開始から所定時間(本実施形態では32分)経過すると、制御部90の指令によって冷却工程が終了され、練り工程が開始される。練り工程は、製パン原料にドライイースト、グルテン、ナッツなどの副材料を投入し、これらを混練して、パン生地を製造する工程である。練り工程において、制御部90は、開閉板53a,54aを開放して調理容器40内に副材料を投入するとともに、インバータモータ70を制御して出力軸71を正方向に回転させ、図6を用いて上述したように、製パン原料と副材料とが含まれる混合物の中で練り羽根84を低速回転(例えば、250rpm)させる。これにより、製パン原料と副材料とが含まれる混合物が混練され、所定の弾力を有するパン生地が製造される。
なお、練り工程の間、練り羽根84を同じ速度で継続して回転させると、特に製パン原料と副材料とが含まれる混合物の混練が進んでいない練り工程の初期において、製パン原料や副材料が調理容器40の外側に飛び散るおそれがある。このため、制御部90は、図17に示すように、練り工程が進むに連れて練り羽根84の回転数が徐々に増加するようにインバータモータ70を制御することが好ましい。これにより、練り工程において、製パン原料や副材料が調理容器40の外側に飛び散ることを抑えることができる。
練り工程の開始から所定時間(本実施形態では23分)経過すると、制御部90の指令によって練り工程が終了され、発酵工程が開始される。発酵工程は、パン生地を発酵させる工程である。発酵工程において、制御部90は、シーズヒータ31を制御して、焼成室30の温度を、発酵が進む温度(例えば、38℃)に維持する。
発酵工程の開始から所定時間(本実施形態では75分)経過すると、制御部90の指令によって発酵工程が終了され、焼成工程が開始される。焼成工程は、発酵したパン生地を焼成してパンを焼き上げる工程である。焼成工程において、制御部90は、シーズヒータ31を制御して、焼成室30の温度を、パン焼きを行うのに適した温度(例えば、125℃)まで上昇させる。
焼成工程の開始から所定時間(本実施形態では40分)経過すると、制御部90の指令によって焼成工程が終了される。これにより、全ての製パン工程が終了する。全ての製パン工程が終了したことは、例えば、操作部20の液晶パネルの表示や報知音などにより、ユーザに知らされる。
本実施形態にかかる自動製パン機1によれば、単一のインバータモータ70によりミル羽根82と練り羽根84の両方を回転させるようにしているので、モータを2つ備える従来の自動製パン機よりも装置の小型化を実現することができる。
また、本実施形態にかかる自動製パン機1によれば、駆動力切換部として機能するベアリング12,67、第1〜第4のプーリ61〜64、第1及び第2のベルト65,66、第1〜第3のワンウェイクラッチ68,15,13を全て機器本体10の内部であって焼成室30の外部に設けているので、当該各部品に製パン原料等が詰まるなどの不具合を抑えることができる。これにより、インバータモータ70の回転駆動力の伝達経路の切り換えをより確実に行うことができる。
また、本実施形態にかかる自動製パン機1によれば、モータとしてインバータモータ70を用いているので、ミル羽根82及び練り羽根84の回転数を可変することができる。これにより、例えば、ミル工程の開始から所定時間はミル羽根82を低速回転させることにより、ミル工程における大きな衝突音の発生を抑えることができる。
また、本実施形態にかかる自動製パン機1によれば、インバータモータ70の出力軸71の回転方向に応じて、インバータモータ70の回転駆動力をミル軸に伝達するか、練り軸かを切り換えるようにしているので、インバータモータ70の回転駆動力の伝達経路の切り換えをより確実に行うことができる。
また、本実施形態にかかる自動製パン機1によれば、練り軸16A,16Bを中空管構造とし、当該練り軸の内部にミル軸14A,14Bを設けるようにしている。これにより、より一層の装置の小型化を図ることができる。
尚、本実施例では、穀物粒からパンを作る自動製パン機について説明したが、この種の自動製パン機に限定されるものではなく、粉状の材料からパンを作る通常の自動製パン機についても同様に実施することが可能である。特に練り羽根部分については通常の自動製パン機でも実施可能である。