JP6063514B2 - 部材の仮固定方法及び構造体 - Google Patents

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Description

本発明は、部材の仮固定方法及び構造体に関する。
光学レンズや光学部品、光学デバイス、プリズム、半導体実装部品等を加工するためには仮固定用接着剤が用いられている。近年では、テレビ、ノートパソコン、カーナビゲーション、電卓、携帯電話、タブレットパソコン、電子手帳、及びPDA(Personal Digital Assistant)等の各種電子機器の表示装置には、液晶ディスプレイ(LCD)、有機ELディスプレイ(OLED)、電界発光ディスプレイ(ELD)、電界放出ディスプレイ(FED)、及びプラズマディスプレイ(PDP)等の表示素子が使用されている。その表示素子を保護するため、表示素子と対向させて保護用の板ガラス製品を設置するのが一般的である。最近では、保護用の板ガラス製品の表面には所定の印刷パターン(例えば、携帯電話の表示画面のデザイン)が意匠性の点から施されていることが多いが、これらの印刷パターンは光が透過しないものが多い。
一方で、上記板ガラス製品を所定の形状に加工する際は、大判の板ガラスを、両面テープや接着剤等の仮固定用接着剤を使用して積層後、所定の形状に切削加工を行い、さらに接着剤を除去して加工が行われる。
部材を加工するに際しての仮固定用途として、特許文献1には発泡剤を添加した紫外線硬化型アクリレート系接着剤が開示されている。この接着剤は、紫外線の照射により部材を仮固定し、所定の形状に部材を加工後、温水中に浸漬し剥離を行うものである。しかしながら、所定の印刷パターンを有し光が透過しない部分の硬化性に関しては、十分ではない。
一方、エポキシ系接着剤は、硬化収縮が低く、各種被着体への接着性や、耐熱性、透湿性に優れていることから、仮固定用接着剤として用いられている。
エポキシを用いた仮固定用接着剤としては、特許文献2に、金属炭酸塩を含むエポキシ樹脂接着剤組成物が開示されている。しかし、特許文献2記載の仮固定用樹脂組成物は、常温硬化型の接着剤であり、24時間の養生を必要とするため、生産効率を高めることが難しい。また、完全に剥離させるにはpH3以下の酸に浸漬させることが必要であり、酸成分による腐植を生じる可能性があるため、表面にスズドープ酸化インジウム(ITO)を有する透明導電ガラスの仮固定用途には適さない。
また、特許文献3では、エポキシ樹脂およびカチオン重合開始剤、光カチオン重合開始剤を含み、活性エネルギー線によって表層が硬化するインクジェット記録ヘッドが開示されているが、インクジェット記録ヘッド用の封止剤であり、部材を固定するための仮固定用途には適さない。
特許文献4では、熱硬化性樹脂成分、潜在性硬化剤、不飽和基を有する光重合性樹脂成分、可視光ラジカル重合開始剤を含有し、光照射により仮硬化し、その後に加熱により最終強度が出る樹脂組成物について記載されている。特許文献4記載の樹脂組成物は、精密位置合わせの必要な電子製品および光学製品等の組み立てに際し、位置ずれなく2つの物品(部品等)を接着できる。しかしながら、そもそも最終的に部材を固定する用途の樹脂組成物であり、部材を加工するに際しての仮固定用途には全く適さない。また特許文献4記載の樹脂組成物は、最終強度の発現のためには、光照射による仮硬化の後に加熱することが必要であり、本発明の接着剤組成物とは異なり、光照射のみでは最終強度が発現しない。従って、所定の印刷パターンを有し光が透過しない部分の硬化性に関しては、本発明の接着剤組成物とは異なり、光照射のみでは十分には硬化させることができない。
特開2010−100831号公報 特開2008−297520号公報 特開2007−331334号公報 国際公開WO2008/035791号公報
本発明は、上記問題と実状に鑑み、接着強度が高く、水中での剥離性に優れ、光が透過しない部位でも硬化可能である仮固定用接着剤組成物を提供することを目的とする。さらに、この接着剤組成物を用いて接着した構造体、並びにこれを用いて接着した部材の仮固定方法を提供することを目的とする。
すなわち、上記課題を解決する本発明は、下記より構成される。
(1)(A)多官能(メタ)アクリレートと、(B)単官能(メタ)アクリレートと、(C)光ラジカル重合開始剤と、(D)エポキシ化合物とオキセタン化合物からなるカチオン重合性化合物と、(E)アリールスルホニウム塩からなる光カチオン重合開始剤と、を含有する仮固定用接着剤組成物を用い、波長365nmの紫外線を、1〜10000mJ/cmのエネルギーで前記仮固定用接着剤組成物に照射し、硬化させることで部材を仮固定する工程と、該仮固定された部材を加工後、5〜100℃の水に浸漬し、前記仮固定用接着剤組成物の硬化体を部材から取り外す工程と、からなる部材の仮固定方法。
(2)2〜100枚の部材同士を接着し積層させて積層接着体を作製した後、前記積層接着体を5〜100℃の水に浸漬し、前記仮固定用接着剤組成物の硬化体を積層接着体から取り外す、(1)に記載の部材の仮固定方法。
(3)前記仮固定用接着剤組成物中の(A)多官能(メタ)アクリレートと(B)単官能(メタ)アクリレートの総和100質量部中、(A)多官能(メタ)アクリレートが10〜60質量部である、(1)または(2)に記載の部材の仮固定方法。
(4)前記仮固定用接着剤組成物中の(A)多官能(メタ)アクリレートと(B)単官能(メタ)アクリレートの総和100質量部に対し、前記(D)エポキシ化合物とオキセタン化合物からなるカチオン重合性化合物が3〜60質量部である、(1)〜(3)のいずれか一つに記載の部材の仮固定方法。
(5)前記(E)アリールスルホニウム塩からなる光カチオン重合開始剤が、式(1)で表される、(1)〜(4)のいずれか一つに記載の部材の仮固定方法。


(式中Xは、PF6、SbF6、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェートを表す。)
(6)前記(D)エポキシ化合物とオキセタン化合物からなるカチオン重合性化合物が、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート及び3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキメチル)オキセタンの組み合わせ、並びに3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート及び3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタンの組み合わせから選択される少なくとも1種以上の組み合わせである、(1)〜(5)のいずれか一つに記載の部材の仮固定方法。
(7)前記仮固定用接着剤組成物が、さらに(F)架橋ポリマー粒子を含有する、(1)〜(6)のいずれか一つに記載の部材の仮固定方法。
(8)前記(F)架橋ポリマー粒子が、架橋ポリメタクリル酸メチル、架橋ポリスチレン及びメタクリル酸メチルとスチレンの共重合架橋体から選択される少なくとも1種類以上である、(7)に記載の部材の仮固定方法。
(9)前記(F)架橋ポリマー粒子の平均粒径が10〜200μmである、(7)又は(8)に記載の部材の仮固定方法。
(10)前記(F)架橋ポリマー粒子の粒径(μm)を対数で表示したときの粒径に対する粒子体積分布の標準偏差が、0.01〜0.25である、(7)〜(9)のいずれか一つに記載の部材の仮固定方法。
(11)(1)〜(10)のいずれか一つに記載の部材の仮固定方法により部材を接着し、固定してなる構造体。
(12)前記部材の光線透過率が、0.1%未満の部位と50%以上の部位を併せ持つ、(11)に記載の構造体。
本発明では、多官能(メタ)アクリレートと、単官能(メタ)アクリレートと、光ラジカル重合開始剤と、エポキシ化合物とオキセタン化合物からなるカチオン重合性化合物と、アリールスルホニウム塩からなる光カチオン重合開始剤と、架橋ポリマー粒子と、を含有する仮固定用接着剤組成物を硬化させることで、部材の一部が不透明であっても、該不透明部も効果的に硬化させることを見出した。また、本発明の仮固定用接着剤組成物は、接着性および水中での剥離性に優れる。このため、これを用いて接着した部材は、剥離後の糊残りがなく、部材を加工した際の、寸法安定性に優れる。
本発明の接着剤組成物の適用例を示した、携帯電話の表示画面図である。 光不透過部硬化試験における、試験片図である。
<用語の説明>
本願明細書において、仮固定用接着剤組成物(以下、接着剤組成物と略す)とは、エネルギー線を照射することによって硬化させることができる接着剤組成物を意味する。ここで、エネルギー線とは、紫外線、可視光線等に代表されるエネルギー線を意味する。また、光不透過部とは、350〜450nmの波長における光線透過率が0.1%未満の部位を意味する。
以下本発明を説明する。
<接着剤組成物>
本発明の接着剤組成物は、(A)多官能(メタ)アクリレートと、(B)単官能(メタ)アクリレートと、(C)光ラジカル重合開始剤と、(D)エポキシ化合物とオキセタン化合物からなるカチオン重合性化合物と、(E)アリールスルホニウム塩からなる光カチオン重合開始剤と、からなるものである。
本発明で使用する(A)多官能(メタ)アクリレートは、分子末端および側鎖に、2個以上の(メタ)アクリロイル基を有するオリゴマーおよびモノマーを意味する。
2個以上の(メタ)アクリロイル基を有するオリゴマーとしては、1,2-ポリブタジエン末端ウレタン(メタ)アクリレート(例えば、日本曹達社製「TE−2000」、「TEA−1000」)、前記水素添加物(例えば、日本曹達社製「TEAI−1000」)、1,4−ポリブタジエン末端ウレタン(メタ)アクリレート(例えば、大阪有機化学社製「BAC−45」)、ポリイソプレン末端(メタ)アクリレート、ポリエステル系ウレタン(メタ)アクリート(例えば、日本合成社製「UV−2000B」、「UV−3000B」、「UV−7000B」、根上工業社製「KHP−11」、「KHP−17」)、ポリエーテル系ウレタン(メタ)アクリレート(例えば、日本合成社製「UV−3700B」、「UV−6100B」)、ビスフェノールA型エポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中では、基材との接着性が良好な点で、ポリエステル系ウレタン(メタ)アクリート及びポリエーテル系ウレタン(メタ)アクリレートが好ましく、ポリエステル系ウレタン(メタ)アクリートがより好ましい。多官能(メタ)アクリレートオリゴマーまたはポリマーの重量平均分子量は、3000〜60000が好ましく、3500〜40000がより好ましい。重量平均分子量は、GPCシステム(東ソ−社製SC−8010)等を使用し、市販の標準ポリスチレンで検量線を作成して求めることができる。
2個以上の(メタ)アリロイル基を有するモノマーとしては、2官能(メタ)アクリレートモノマー、3官能(メタ)アクリレートモノマー、4官能以上の(メタ)アクリレートモノマー等が挙げられる。
2官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロール−トリシクロデカン(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ステアリン酸変性ペンタエリストールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシプロポキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシテトラエトキシフェニル)プロパン、ジメチロール−トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中では、温水中での剥離性が良好な点で、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロール−トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートが好ましい。
3官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス[(メタ)アクリロイキシエチル]イソシアヌレート等が挙げられる。これらの中では、接着強度の高い硬化物が得られる点で、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートが好ましい。
4官能以上の(メタ)アクリレートモノマーとしては、ジメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリストールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリストールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
多官能の(メタ)アクリレートは、単独でも2種以上の組み合わせでも使用することができるが、(メタ)アクリロイル基を有するオリゴマーと、(メタ)アクリロイル基を有するモノマーを併用することが、接着剤組成物の粘度を好適に調整できる点で好ましい。
(A)の添加量は、(A)と(B)の総和100質量部中、10〜60質量部であることが好ましく、20〜50質量部であることがより好ましい。添加量を10質量部以上とすることで、水中での剥離性が向上する。また、添加量を60質量部以下とすることで、部材への濡れ性が向上し、接着性が良好となる。
(B)で表される単官能(メタ)アクリレートとは、分子中に1個の(メタ)アクリロイル基を有するモノマーを意味する。
単官能(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニロキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、メトキシ化シクロデカトリエン(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、エトキシカルボニルメチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチレングリコール変性(メタ)アクリレート、パラクミルフェノールエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、ノニルフェノールエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、ノニルフェノール(エチレンオキサイド4モル変性)(メタ)アクリレート、ノニルフェノール(エチレンオキサイド8モル変性)(メタ)アクリレート、ノニルフェノール(プロピレンオキサイド2.5モル変性)(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルカルビトール(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性フタル酸(メタ)アクリレ−ト、エチレンオキシド変性コハク酸(メタ)アクリレート、トリフロロエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸ダイマー、β−(メタ)アクロイルオキシエチルハイドロジェンサクシネート、n−(メタ)アクリロイルオキシアルキルヘキサヒドロフタルイミド、2−エチル−2−ブチル−プロパンジオール(メタ)アクリレート、ジメチロール−トリシクロデカン(メタ)アクリレート、2−(1,2−シクロヘキサカルボキシイミド)エチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらは、単独でも2種以上の組み合わせで使用することもできる。
単官能(メタ)アクリレートの中では、硬化性および水中での剥離性が良好な点で、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(1,2−シクロヘキサカルボキシイミド)エチル(メタ)アクリレートが好ましく、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレートと、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレートの併用、またはフェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレートと2−(1,2−シクロヘキサカルボキシイミド)エチル(メタ)アクリレートの併用がより好ましい。
フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレートと、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレートの併用の場合は、(A)と(B)の総和100質量部中、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレートが30〜55質量部、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレートが10〜35部であることが特に好ましい。
フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレートと、2−(1,2−シクロヘキサカルボキシイミド)エチル(メタ)アクリレートの併用の場合は、(A)と(B)の総和100質量部中、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレートが5〜30質量部、2−(1,2−シクロヘキサカルボキシイミド)エチル(メタ)アクリレートが25〜50質量部であることが特に好ましい。
(C)光ラジカル重合開始剤は、可視光線や紫外線の照射によりラジカルを発生し、接着剤組成物を硬化させるものである。
(C)の添加量は、(A)と(B)の総和100質量部に対し、1〜20質量部であることが好ましく、3〜15質量部であることがさらに好ましい。添加量を1質量部以上とすることで、接着剤組成物の硬化性が向上し、部材の切削加工時に位置ずれが生じにくくなる。また、添加量を20質量部以下とすることで、光不透過部の硬化性を向上することができる。
光ラジカル重合開始剤としては、ベンゾフェノン及びその誘導体、ベンジル及びその誘導体、エントラキノン及びその誘導体、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジルジメチルケタール等のベンゾイン誘導体、ジエトキシアセトフェノン、4−t−ブチルトリクロロアセトフェノン等のアセトフェノン誘導体、2−ジメチルアミノエチルベンゾエート、p−ジメチルアミノエチルベンゾエート、ジフェニルジスルフィド、チオキサントン及びその誘導体、カンファーキノン、7,7−ジメチル−2,3−ジオキソビシクロ[2.2.1]ヘプタン−1−カルボン酸、7,7−ジメチル−2,3−ジオキソビシクロ[2.2.1]ヘプタン−1−カルボキシ−2−ブロモエチルエステル、7,7−ジメチル−2,3−ジオキソビシクロ[2.2.1]ヘプタン−1−カルボキシ−2−メチルエステル、7,7−ジメチル−2,3−ジオキソビシクロ[2.2.1]ヘプタン−1−カルボン酸クロライド等のカンファーキノン誘導体、2−メチル−1−[4-(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1等のα−アミノアルキルフェノン誘導体、ベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ベンゾイルジエトキシポスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジメトキシフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジエトキシフェニルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド誘導体、オキシ−フェニル−アセチックアシッド2−[2−オキソ−2−フェニル−アセトキシ−エトキシ]−エチルエステル及びオキシ−フェニル−アセチックアシッド2−[2−ヒドロキシ−エトキシ]−エチルエステル等が挙げられる。これらの中では、硬化性に優れる点で、ベンジルジメチルケタール、オキシ−フェニル−アセチックアシッド2−[2−オキソ−2−フェニル−アセトキシ−エトキシ]−エチルエステル、オキシ−フェニル−アセチックアシッド2−[2−ヒドロキシ−エトキシ]−エチルエステルが好ましい。
これらは、単独でも2種以上の組み合わせで使用することもできる。
(D)エポキシ化合物とオキセタン化合物からなるカチオン重合性化合物とは、紫外線の照射に伴い、アリールスルホニウム塩が発生したカチオンにより、重合する特性を有する。エポキシ化合物とオキセタン化合物を併用することで、接着剤組成物の光不透過部の硬化性と、接着強度を高めることができる。
エポキシ化合物としては特に限定されないが、例えば、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ビスフェノールS型エポキシ化合物、ビフェニル型エポキシ化合物、フルオレン型エポキシ化合物、ノボラックフェノール型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物、これらの変性物等の芳香族系、あるいは、エチレングリコールのジグリシジルエーテル、プロピレングリコールのジグリシジルエーテル又は1,6−ヘキサンジオールのジグリシジルエーテル等のアルキレングリコールのジグリシジルエーテル、グリセリンあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はトリグリシジルエーテル等の多価アルコールのポリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル等のポリアルキレングリコールのジグリシジルエーテル、及びアルキレンオキサイド等の脂肪族系が挙げられる。ここで、アルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド等の脂肪族系エポキシ化合物、3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタアクリレート等の分子内に1個以上のエポキシ基と1個以上のエステル基を含有する脂環式エポキシ化合物等が挙げられる。これらの中では、接着強度および硬化性の点で、3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタアクリレート等の脂環式エポキシ化合物が好ましい。
オキセタン化合物としては特に限定されないが、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシメチル]ベンゼン、3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン、ジ(1−エチル−3−オキセタニ
ル)メチルエーテル、3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン等が挙げられる。
(D)エポキシ化合物とオキセタン化合物の組み合わせとしては特に限定されないが、エポキシ化合物が3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート、オキセタン化合物が、3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキメチル)オキセタンの組み合わせ、またはエポキシ化合物が3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、オキセタン化合物が3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタンの組み合わせが好ましい。
(D)の添加量は、(A)と(B)の総和100質量部に対し、3〜60質量部であることが好ましく、5〜40質量部であることがさらに好ましい。添加量を3質量部以上とすることで、接着剤組成物の光不透過部硬化性が向上する。また、添加量を60質量部以下とすることで、より高い接着強度を得ることができる。
(E)光カチオン重合開始剤としては、アリールスルホニウム塩誘導体(例えば、ダウケミカル社製のサイラキュアUVI−6990、サイラキュアUVI−6974、旭電化工業社製のアデカオプトマーSP−150、アデカオプトマーSP−152、アデカオプ
トマーSP−170、アデカオプトマーSP−172、サンアプロ社製のCPI−100P、CPI−101A、CPI−200K、CPI−210S、CPI−110P、CPI−110B、ICP−200KI、ダブルボンド社製チバキュアー1190等)、アリールヨードニウム塩誘導体(例えば、チバスペシャリティーケミカルズ社製のイルガキュア250、ローディア・ジャパン社製のRP−2074、BASF社製のイルガキュア290)、アレン−イオン錯体誘導体、ジアゾニウム塩誘導体、トリアジン系開始剤及びその他のハロゲン化物等の酸発生剤が挙げられる。これらの中では紫外線に対する感度の点で、トリアリールスルホニウム系の光カチオン重合開始剤が好ましい。
(E)のアニオン種としては、特に限定されないが、例えば、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等のホウ素化合物、六フッ化リン酸アニオン、トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート等のリン化合物、六フッ化アンチモン酸アニオン等のアンチモン化合物、ヒ素化合物、アルキルスルホン酸化合物等のハロゲン化物が挙げられる。これらの中では、比較的高いカチオン重合活性を有することから、六フッ化リン酸アニオン、六フッ化アンチモン酸アニオン、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートおよび、トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェートが好ましい。
これらは、単独でも2種以上の組み合わせで使用することもできる。
(E)の添加量は、(D)成分100部に対し、0.1〜5質量部であることが好ましく、0.5〜3質量部であることがさらに好ましい。添加量を0.1質量部以上とすることで光不透過部の硬化性を向上することができる。
(F)架橋ポリマー粒子としては、(A)〜(E)に膨膨または溶解しない粒状物質が好ましい。(A)〜(E)に膨膨または溶解しない架橋ポリマー粒子としては、架橋ポリメタクリル酸メチル、架橋ポリスチレン、メタクリル酸メチルとスチレンの共重合体架橋体が挙げられる。
これらの架橋ポリマー粒子は、公知の懸濁重合および分散重合方法により得ることができる。
これらは、単独でも2種以上の組み合わせで使用することもできる。
(F)架橋ポリマー粒子は、部材を接着した際の、膜厚を調整する役割を担う。架橋ポリマー粒子の平均粒径は10〜200μmが好ましく、50〜110μmがより好ましい。平均粒径を10μm以上とすることで、水中での剥離性が向上する。また、200μm以下とすることで、光の回折現象を利用した光不透過部の硬化性が向上する。
(F)の粒子体積分布の粒径(μm)を対数で表示したときの粒子体積分布の標準偏差は、0.01〜0.25が好ましく、0.01〜0.1がより好ましい。標準偏差を0.25以下とすることで、粒径のばらつきによる硬化体膜厚のばらつきが少なくなり、仮固定した部材の加工時のずれが生じ難く、寸法精度が向上する。
本発明における平均粒径及び粒子体積分布の標準偏差は、島津製作所製「レーザー回折式粒度分布測定装置SALD−2200」により測定した。具体的には、架橋ポリマー粒子を界面活性剤と共に精製水中に分散させた試料を作製し、これをポンプで循環させながら測定した。得られた粒子体積分布曲線より求めた体積平均径を平均粒径とし、さらに粒子体積分布曲線より粒径の標準偏差を求めた。
(F)の添加量は、(A)と(B)の総和100質量部に対し、0.05〜5質量部であることが好ましく、0.2〜3質量部であることがより好ましい。 添加量を0.05質量部以上とすることで、水中での剥離性が向上する。また、添加量を5質量部以下とすることで、より高い接着強度を得ることができる。
本発明の接着剤組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、一般に使用されているアクリルゴム、ウレタンゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン共重合体等の各種エラストマー、極性有機溶媒、無機フィラー、補強材、可塑剤、増粘剤、染料、顔料、難燃剤、シランカップリング剤、界面活性剤、発泡剤等の添加剤を使用してもよい。
本発明において、仮固定する際に用いられる部材の材質に特に制限はないが、紫外線を透過できる材料からなる部材が好ましい。このような材質としては、水晶部材、ガラス部材、プラスチック部材等が挙げられる。本発明の部材は、水晶振動子、ガラスレンズ、プラスチックレンズ、プリズム、半導体実装部品等の、テレビ、ノートパソコン、カーナビゲーション、電卓、携帯電話、タブレットパソコン、電子手帳、及びPDA(Personal Digital Assistant)等の各種電子機器の表示装置に使用できる。本発明は、液晶ディスプレイ(LCD)、有機ELディスプレイ(OELD)、電界発光ディスプレイ(ELD)、電界放出ディスプレイ(FED)及びプラズマディスプレイ(PDP)等の表示素子保護用板ガラスの加工における仮固定に適用可能である。
更に本発明における接着剤組成物は、350〜450nmの波長における光線透過率が0.1%未満の部位と、350〜450nmの波長における光線該透過率が50%以上の部位とを併せ持つ、部材及び部材同士を接着することができる。本発明における接着剤組成物は、例えば、光線透過率が0.1%未満の部位と該透過率が50%以上の部位の両方を表面に有する部材及び部材同士を接着することができる。350〜450nmの波長における光線透過率が0.1%未満の部位としては、例えば、板ガラス製品の表面に意匠性の観点から施されている所定の印刷パターン等が挙げられる。印刷パターンの例としては、図1に示す、携帯電話機の印刷パターン11が挙げられる。
350〜450nmの波長における光線透過率が50%以上の部位としては、板ガラス中で印刷パターンが施されていない部位等が挙げられる。
本発明では光線回折現象を利用して光線透過率が0.1%未満の部位でも可視光線又は紫外線を照射することで組成物を硬化させることができる。尚、350〜450nmの波長における光線透過率は分光光度計(例えば、型式UV−2550、島津製作所社製)を用いて測定することができる。その際には、空気をブランクとして採用する。
本発明における、可視光線又は紫外線を照射するための照射源としては、重水素ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、キセノンランプ、キセノン−水銀混成ランプ、ハロゲンランプ、エキシマランプ、インジュームランプ、タリウムランプ、LEDランプ、無電極放電ランプ等のエネルギー照射源が挙げられる。
可視光線又は紫外線を照射して、接着剤組成物を硬化させ、部材を仮固定する際は、波長365nmにおいて10〜10000mJ/cmのエネルギーを組成物に照射し部材同士を接着する。10〜10000mJ/cmであれば組成物が硬化し、十分な接着強度が得られる。10mJ/cm以上であれば組成物が十分に硬化し、10000mJ/cm以下であれば硬化歪みがなく、接着強度が向上する。部材及び部材同士を仮固定する際のエネルギー量は、接着強度の点で、100〜5000mJ/cmがより好ましく、1000〜3000mJ/cmが最も好ましい。
前記方法により仮固定された部材及び構造体を所望の形状にするために、切断、研削、研磨、孔開け等の加工を施した後、該部材及び構造体を5〜100℃の水に浸漬することにより、前記接着剤組成物の硬化体を剥離することができる。水の温度は、剥離性と温水による接着基材の劣化の点で、30〜95℃がより好ましい。浸漬時間は、1〜120分が好ましく、2〜60分がより好ましい。
更に本発明の仮固定方法では、2〜100枚の部材を接着し積層させた構造体を、5〜100℃の水に浸漬して前記接着剤組成物の積層接着体から部材を取り外すことができる。
積層は例えば、一方又は両方の貼り合わせ面に接着剤組成物が塗布された各部材同士を貼り合わせた後に、両部材に挟まれて広がっている該接着剤組成物を硬化するために光を照射することによって実施することができる。これを所望の回数だけ繰り返すことにより、所望の枚数の部材同士が積層された構造体を作製することができる。光照射は、部材を1枚積層する度に実施してもよく、前記接着剤組成物へ光が到達する限りにおいて、複数枚を積層した後にまとめて実施してもよい。この部材は50〜450nmの波長における光線透過率が0.1%未満の部位と該透過率が50%以上の部位を併せ持つ部材同士の接着であっても良く、光線透過率が0.1%未満の部位同士が重なり合っていても良い。
以下に実施例及び比較例をあげて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
<実施例1>
(接着剤組成物の作製)
以下に示す原料を攪拌機付の容器にて混合し、接着剤組成物を作製した。
(A)多官能(メタ)アクリレートとして、ポリエステル系ウレタンアクリレート(日本合成化学社製「UV−3000B」、重量平均分子量18000)5質量部(以下、単に「部」という)、
(B)単官能(メタ)アクリレートとして、フェノキシジエチレングリコールアクリレート(東亜合成社製「アロニックスM−101A」)30部、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート(東亜合成社製「アロニックスM−5700」)65部、
(C)光ラジカル重合開始剤としてベンジルジメチルケタール(BDK)10部、
(D)カチオン重合性化合物として、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート(ダイセル社製「サイクロマーM100」)25部、3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキメチル)オキセタン(東亜合成社製「OXT212」)10部、
(E)光カチオン重合開始剤として、(4−(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート(サンアプロ社製「CPI−110P」)0.7部、
(F)架橋ポリマー粒子として、架橋ポリスチレン粒子(ガンツ化成社製「GS−100S」、平均粒径100μm、標準偏差0.063)1部、
を使用して接着剤組成物を作製した。得られた接着剤組成物を使用して、以下に示す評価方法にて引張剪断接着強さ、剥離試験および硬化試験を行った。得られた結果を表1に示す。

[引張剪断接着強さ]
耐熱ガラス(商品名「耐熱パイレックス(登録商標)ガラス」、長さ25mm、幅25mm、厚さ2.0mm)上に、接着部位が直径8mmの円形となるよう、作製した接着剤組成物を塗布し、2枚の耐熱ガラスを貼り合わせた。
次に、無電極放電ランプを使用したフュージョン社製硬化装置により、365nmの波長の積算光量が、2000mJ/cmとなる条件にて160秒間硬化させ、引張剪断接着強さ用試験片を作製した。作製した試験片を、JIS K 6850に従い、温度23℃、相対湿度50%の環境下、万能試験機にて10mm/分の速度で引張り、引張剪断接着強さを測定した。
[剥離試験:80℃温水剥離時間]
引張りせん断接着強さの測定に用いた試験片と同様な方法で硬化させた試験片を作製した。試験片を80℃の温水に浸漬させ、温水中で耐熱ガラスが自然に剥離する時間を測定した。
[光不透過部硬化試験]
図2に示す青板ガラス(長さ80mm、幅80mm、厚さ0.7mm)22上の中央部に、黒色インクを、長さ80mm、幅14mmの帯状に塗布し乾燥させ、青板ガラス上に、紫外線が透過しない黒色インクからなる帯状の層21を形成した2枚の青板ガラスを作製した。
次に黒色インクを塗布した反対側の青板ガラス全面に、接着剤組成物2gを均一に塗布し、塗布した接着剤組成物上にPETフィルム(長さ100mm×幅100mm×厚さ0.188mm)を載せた。
PETフィルム上に、他方の黒色インクを塗布した青板ガラスを黒色インク塗布面が重なるように載せ、試験片を作製し、次に、365nmの波長の積算光量が、2000mJ/cmとなる条件にて、青板ガラス上面より紫外線を160秒間照射した。紫外線照射後、試験片よりPETフィルムを剥し、黒色インク塗布面の中央部24の接着剤組成物の硬化率を用いて、光不透過部の接着剤組成物の硬化性を以下の基準により判定した。
良 :硬化率70%以上
可 :硬化率30%以上〜70%未満
不可:硬化率30%未満
光不透過部の接着剤組成物の硬化率は以下の手順で測定した。
まず、黒色インク塗布面の中央部の接着剤組成物をスパチュラで掻き取り測定試料とし、赤外分光装置(サーモサイエンティフィック社製、Nicolet is5、DTGS検出器、分解能4cm−1)を用い、該測定試料に赤外光を入射して赤外分光スペクトルを測定した。
得られた赤外分光スペクトルにて、硬化前後でピーク変化を生じない、2950cm−1付近に観測されるメチレン基の炭素−水素結合の伸縮振動ピークを内部標準とし、この内部標準の硬化前後のピーク面積と、(メタ)アクリレートの炭素−炭素二重結合に結合する炭素−水素結合の面外変角振動のピークおよびエポキシ化合物のエポキシ基のピークが重なったものに帰属される、810cm−1付近のピークの硬化前後の面積より、次式を用い硬化率を算出した。
硬化率(%)=[1−(Ax/Bx)/(A0/B0)]×100
ここで、
Ao:2950cm−1付近の硬化前のピーク面積、
Ax:2950cm−1付近の硬化後のピーク面積、
Bo:810cm−1付近の硬化前のピーク面積、
Bx:810cm−1付近の硬化後のピーク面積、
を表す。
<実施例2〜6>
表1に示す配合に従い、(A)多官能(メタ)アクリレートと(B)単官能(メタ)アクリレートの組成を変更した以外は、実施例1と同様に評価を行った。結果を表1に示す。
尚、実施例1で使用した以外の配合原料としては、以下のものを使用した。
(A)多官能(メタ)アクリレート
トリエチレングリコールジメタクリレート(新中村化学社製「NKエステル3G」)
トリメチロールプロパントリアクリレート(新中村化学社製「NKエステルA−TMPT」)
(B)単官能(メタ)アクリレート
2−(1,2−シクロヘキサカルボキシイミド)エチルアクリレート(東亜合成社製「アロニックスM−140」)
<実施例7〜9>
実施例4の(B)単官能(メタ)アクリレートである、フェノキシジエチレングリコールアクリレートと2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレートの組成を変更した以外は、実施例1と同様に各種評価を実施した。結果を表2に示す。
<実施例10〜12>
表2に示す配合に従い、接着剤組成物を作製し、実施例1と同様に各種評価を実施した。結果を表2に示す。
<実施例13>
(A)多官能(メタ)アクリレートとして、ポリエステル系ウレタンアクリレート(日本合成化学社製「UV−7000B」、重量平均分子量3500)20部と、ジメチロール−トリシクロデカンジアクリレート(共栄社化学社製「ライトアクリレートDCP−A」)25部、
(B)単官能(メタ)アクリレートとして、フェノキシジエチレングリコールアクリレート25部と、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート30部、
(C)光ラジカル重合開始剤としてベンジルジメチルケタール10部、
(D)カチオン重合性化合物として、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート5部と、1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシメチル]ベンゼン(東亜合成社製「OXT121」)1部、
(E)光カチオン重合開始剤として、4−(フェニルチオ) フェニルジフェニルスルホニウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、(サンアプロ社製「CPI−210S」)0.7部、
(F)架橋ポリマー粒子として、架橋ポリスチレン粒子(ガンツ化成社製「GS−100S」)1部、
を使用して接着剤組成物を作製し、各種評価を実施した。結果を表3に示す。

<実施例14〜18>
表3に示した(A)多官能(メタ)アリレートを使用した以外は、実施例13と同様な方法で接着剤組成物を作製した。結果を表3に示す。
尚、表1および表2に示した以外の(A)多官能(メタ)アクリレートとしては、以下のものを使用した。
ポリエステル系ウレタンアクリレート(根上工業社製「KHP−17」、重量平均分子量40000)
ネオペンチルグリコールジメタクリレート(新中村化学社製「NKエステルNPG」)
トリメチロールプロパントリメタクリレート(新中村化学社製「NKエステルTMPT」)
ポリテトラメチレングリコールジアクリレート(新中村化学社製「NKエステルA−PMTG−65」)
1,9−ノナンジオールジアクリレート(共栄社化学社製「ライトアクリレート1,9−ND−A」)
<実施例19>
(A)多官能(メタ)アクリレートとして、ポリエステル系ウレタンアクリレート(日本合成化学社製「UV−3000B」、重量平均分子量18000)15部、
(B)単官能(メタ)アクリレートとして、フェノキシジエチレングリコールアクリレート25部と、2−(1,2−シクロヘキサカルボキシイミド)エチルアクリレート45部およびジメチロール−トリシクロデカンジアクリレート15部、
(C)光ラジカル重合開始剤としてベンジルジメチルケタール10部、
(D)カチオン重合性化合物として、3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル 3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(東亜合成社製「C2021P」)4部と、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン(東亜合成社製「OXT101」)1部、
(E)光カチオン重合開始剤として、(4−(フェニルチオ) フェニルジフェニルスルホニウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート0.05部、
(F)架橋ポリマー粒子として、架橋ポリスチレン粒子(ガンツ化成社製「GS−100S」)1部、
を使用して接着剤組成物を作製し、各種評価を実施した。結果を表4に示す。

<実施例20〜24>
(D)カチオン重合性化合物および(E)アリールスルホニウム塩の配合量を変更した以外は、実施例19と同様に接着剤組成物を作製し、各種評価を実施した。結果を表4に示す。
<実施例25>
(C)光ラジカル重合開始剤として、オキシ−フェニル−アセチックアシッド2−[2−オキソ−2−フェニル−アセトキシ−エトキシ]−エチルエステルとオキシ−フェニル−アセチックアシッド2−[2−ヒドロキシ−エトキシ]−エチルエステルの混合物(チバ・ジャパン社製「IRGACURE754」)を8部使用した以外は、実施例4と同様に接着剤組成物を作製し、各種評価を実施した。結果を表5に示す。

<実施例26>
(E)アリールスルホニウム塩として、テトラキス−(ペンタフルオロフェニル)ボレートのアリールスルホニウム塩(BASF社製「IRGACURE−290」)を0.5部使用した以外は、実施例4と同様に接着剤組成物を作製し、各種評価を実施した。結果を表5に示す。
<実施例27>
(E)アリールスルホニウム塩として、(4−(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート(サンアプロ社製「CPI−210S」)を1部使用した以外は、実施例4と同様に接着剤組成物を作製し、各種評価を実施した。結果を表5に示す。
<実施例28>
(F)架橋ポリマー粒子として、架橋ポリスチレン粒子(積水化学工業社製「GS−220」、平均粒径20μm、標準偏差0.058)を2部使用した以外は、実施例4と同様に接着剤組成物を作製し、各種評価を実施した。結果を表5に示す。
<実施例29>
(F)架橋ポリマー粒子として、球状架橋ポリスチレン粒子(積水化学工業社製「GS−L200」、平均粒径200μm、標準偏差0.064)を0.1部使用した以外は、実施例5と同様に接着剤組成物を作製し、各種評価を実施した。結果を表5に示す。
<実施例30>
(F)架橋ポリマー粒子として、架橋ポリメタクリル酸メチル粒子(根上工業社製「アートパールGR−200」、平均粒径33μm、標準偏差0.22)を1部使用した以外は、実施例5と同様に接着剤組成物を作製し、各種評価を実施した。結果を表5に示す。
<比較例1>
実施例4で(A)多官能(メタ)アクリレートを使用せずに、接着剤組成物を作製したが、80℃温水剥離試験において60分経過後も剥離することはなかった。結果を表6に示す。

<比較例2>
実施例4で(B)単官能(メタ)アクリレートを使用せずに、接着剤組成物を作製したが、80℃温水剥離試験において60分経過後も剥離することはなかった。結果を表6に示す。
<比較例3>
実施例5で(C)光ラジカル重合開始剤を使用せずに、接着剤組成物を作製したが、いずれの試験においても、接着剤が硬化しなかったため、評価を行うことができなかった。
<比較例4>
実施例5で(D)カチオン重合性化合物を使用せずに、接着剤組成物を作製したが、光不透過部硬化試験においては、光が透過しなかった部分に未硬化部を生じた。
<比較例5>
実施例5で(D)カチオン重合性化合物として、3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタンを使用せずに、接着剤組成物を作製したが、光不透過部硬化試験においては、光が透過しなかった部分に未硬化部を生じた。
<比較例6>
実施例5で(E)アリールスルホニウム塩を使用せずに、接着剤組成物を作製したが、引張剪断接着強さは低く、光不透過部硬化試験において、光を透過しなかった部分に未硬化部を生じた。
尚、表1〜表5に示す以外の、各種接着剤組成物についても同様な評価を行ったところ、多官能(メタ)アクリレート、単官能(メタ)アクリレート、光ラジカル重合開始剤、エポキシ化合物とオキセタン化合物からなるカチオン重合性化合物およびアリールスルホニウム塩の種類によらず評価結果は良好であった。
表1〜表5の結果から、本発明の接着剤組成物は、接着強度が高く、水中での剥離性に優れ、光が透過しない部位の硬化性も良好であることが分かる。
本発明の接着剤組成物を利用することで、紫外線や可視光が透過しない部材の仮固定が可能となる。また、これを用いた仮固定方法は、光学レンズ、プリズム、アレイ、シリコンウエハ、半導体実装部品の仮固定に産業上有用である。
11・・・印刷パターン
12・・・板ガラス表面
13・・・携帯電話機の表示画面
21・・・黒色インク塗工部
22・・・青板ガラス表面
23・・・光不透過部硬化試験用試験片
24・・・光不透過部硬化試験用の試料掻き取り部

Claims (10)

  1. (A)多官能(メタ)アクリレートと、
    (B)単官能(メタ)アクリレートと、
    (C)光ラジカル重合開始剤と、
    (D)エポキシ化合物とオキセタン化合物からなるカチオン重合性化合物と、
    (E)アリールスルホニウム塩からなる光カチオン重合開始剤と、
    を含有する仮固定用接着剤組成物を用い、
    波長365nmの紫外線を、1〜10000mJ/cmのエネルギーで前記仮固定用接着剤組成物に照射し、硬化させることで部材を仮固定する工程と、
    該仮固定された部材を加工後、5〜100℃の水に浸漬し、前記仮固定用接着剤組成物の硬化体を部材から取り外す工程と、
    からなる部材の仮固定方法。
  2. 2〜100枚の部材同士を接着し積層させて積層接着体を作製した後、前記積層接着体を5〜100℃の水に浸漬し、前記仮固定用接着剤組成物の硬化体を積層接着体から取り外す、請求項1に記載の部材の仮固定方法。
  3. 前記仮固定用接着剤組成物中の(A)多官能(メタ)アクリレートと(B)単官能(メタ)アクリレートの総和100質量部中、(A)多官能(メタ)アクリレートが10〜60質量部である、請求項1または2に記載の部材の仮固定方法。
  4. 前記仮固定用接着剤組成物中の(A)多官能(メタ)アクリレートと(B)単官能(メタ)アクリレートの総和100質量部に対し、前記(D)エポキシ化合物とオキセタン化合物からなるカチオン重合性化合物が3〜60質量部である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の部材の仮固定方法。
  5. 前記(E)アリールスルホニウム塩からなる光カチオン重合開始剤が、式(1)で表される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の部材の仮固定方法。

    (式中Xは、PF、SbF、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェートを表す。)
  6. 前記(D)エポキシ化合物とオキセタン化合物からなるカチオン重合性化合物が、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート及び3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキメチル)オキセタンの組み合わせ、並びに3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート及び3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタンの組み合わせから選択される少なくとも1種以上の組み合わせである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の部材の仮固定方法。
  7. 前記仮固定用接着剤組成物が、さらに(F)架橋ポリマー粒子を含有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の部材の仮固定方法。
  8. 前記(F)架橋ポリマー粒子が、架橋ポリメタクリル酸メチル、架橋ポリスチレン及びメタクリル酸メチルとスチレンの共重合架橋体から選択される少なくとも1種類以上である、請求項7に記載の部材の仮固定方法。
  9. 前記(F)架橋ポリマー粒子の平均粒径が10〜200μmである、請求項7又は8に記載の部材の仮固定方法。
  10. 前記(F)架橋ポリマー粒子の粒径(μm)を対数で表示したときの粒径に対する粒子体積分布の標準偏差が、0.01〜0.25である、請求項7〜9のいずれか一項に記載の部材の仮固定方法。
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