JP6062192B2 - マイエナイト複合材および電子放出用陰極 - Google Patents

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Description

本発明は、マイエナイト系材料に関する。
マイエナイトは立方晶系の寵状の構造をもつ酸化物結晶であり、この寵状構造の内部空間自体に、たとえば電子が包接されることで、電子を真空中もしくは接触する相手材料側に電子を受け渡しい特徴がある。すなわち、マイエナイトは仕事関数が低く、その値はアルカリ金属と同等である。
特開2003−238149
一般に、マイエナイト系の材料は強度が低く、脆弱な材料であるため、加工が困難であるという課題があった。たとえば、マイエナイト系材料を用いて電子放出用陰極を作製する場合には、機械加工によって先鋭化させようとする際に細心の注意を要し、歩留まりを高めることが困難であった。また、マイエナイト系材料は、延性や展性がほとんどないため、圧延、線引き加工、溶接などの加工が事実上不可能である。
本発明はこうした課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、マイエナイト系材料の加工性を向上させる技術の提供にある。
本発明のある態様は、マイエナイト複合材である。当該マイエナイト複合材は、電子伝導性およびマイエナイト構造を有し、下記一般式(1)で表される酸化物と、
[A242864(4+δ)+・(2+δ/2)X2−・・・・(1)
((1)式中、AはCa2+またはSr2+であり、TはAl3+のみ、またはAl3+を基本とし、Si4+、Ga3+、Zn2+、またはP5+によってAl3+が部分的に置換され、X2−はO2−、S2ー、O 2ー、2OH、2F、2Cl、2O、2O 、2H、2e(電子)からなる群より選ばれ、こららのうち複数の任意の比率の組み合わせが許容される。また、δは8以下の値である。)
Ti、Ni、Fe、Cr、Co、W、Moからなる群より選ばれる元素で構成される金属結合材と、を備えることを特徴とする。
上記態様のマイエナイト複合材において、前記酸化物と前記金属結合材との体積比が10:90〜95:5の範囲であってもよい。また、X が2eであってもよい。
本発明の他の態様は、X が2eである前記酸化物を含む上述したいずれかの態様のマイエナイト複合材を用いた電子放出用陰極である。
本発明によれば、マイエナイト系材料の加工性を向上させることができる。
熱電子放出特性の計測のための装置の概要を示す図である。 引き出し電場4×10V/cmを印加した際の、放出電流密度と温度の関係を示すグラフである。
以下、本発明の実施の形態を説明する。
発明者らが上述したマイエナイト系材料の課題を、製造コストやプロセスに影響しない手段で解決するため、マイエナイト系材料の改質を鋭意検討したところ、マイエナイトの粉末を、金属材料と結合材として固化させたマイエナイト複合材料により所望の特性が得られることが見いだされた。
実施の形態に係るマイエナイト複合材は、(A)酸化物(マイエナイト)および(B)金属結合材を有する。以下、本実施の形態のマイエナイト複合材が有する各成分について詳細に説明する。
(A)酸化物
(A)酸化物は、電子伝導性およびマイエナイト構造を有し、下記一般式(1)で表される。
[A242864(4+δ)+・(2+δ/2)X2−・・・・(1)
(1)式中、AはCa2+またはSr2+である。Aの一部はMg2+で置換されてもよい。TはAl3+のみ、またはAl3+を基本としSi4+、Ga3+、Zn2+、またはP5+によって部分的にAl3+が置換された組成である。陰イオンX2−はO2−、S2ー、O 2ー、2OH、2F、2Cl、2O、2O 、2H、2e(電子)からなる群より選ばれる。陰イオンX2−は、単一のイオン種に限られず、複数のイオン種からなっていてもよい。
2−=2e、すなわち籠状構造内に電子のみが含まれる状態を1とすると、電子濃度がその1/1000以上、すなわち(A)酸化物における体積濃度に換算して2×1018cm−3以上となることで、マイエナイト複合材の体積伝導率が室温で約1×10−2S・cm−1以上となり、電子放出用陰極として十分な電気伝導度を得ることができる。以下、X2−として2eを1/1000以上含むマイエナイトを「マイエナイト・エレクトライド」と呼ぶ。
(A)酸化物は、[A242864(4+δ)+で表される単位格子骨格が12個で籠状構造(ケージ)を形成し、その内部に(2+δ/2)X2−で表される陰イオンを取り込むことができる空間群I−43dに属する結晶である。たとえば、AがCa2+で、TがAl3+のみの場合には、上記一般式(1)中のδは0となり、[A242864(4+δ)+で表される単位格子骨格の正電荷は4となる。一方、Al3+の一部が異価陽イオン、たとえばSi4+で置換されている場合には、δは0以上8以下の値となる。δの値は、ケージ内の陰イオンの種類によっても変わるが、たとえば、2Clを主要な陰イオンとした場合には、δを最大8にすることができる。
(B)金属結合材
(B)金属結合材は、Ti、Ni、Fe、Cr、Co、W、Moからなる群より選ばれる元素で構成される。(B)金属結合材は、上記元素によってネットワーク構造を形成している。本実施の形態のマイエナイト複合材において、上述した(A)酸化物と(B)金属結合材との体積比は、10:90〜95:5の範囲であることが好ましい。(A)酸化物と(B)金属結合材の合計体積を基準として、(A)酸化物の体積比率が10%より小さいと、電子放出能などのマイエナイト本来の特性が十分に得られなくなる。一方、(A)酸化物と(B)金属結合材の合計体積を基準として、(A)酸化物の体積比率が95より大きいと、(B)金属結合材の結合性が著しく損なわれ、マイエナイト複合材の強度が低下する。また、マイエナイト複合材内部で(B)金属結合材同士のネットワークが繋がりにくくなり、マイエナイト複合材のバルク電気伝導度が著しく低下する。
なお、(A)酸化物自体の融点が1450℃程度であることから、(B)金属結合材として用いられる元素は、(A)酸化物よりも著しく高い高融点を持つ、W、Moなどの高価な金属を必ずしも用いる必要はない。比較的入手種が容易で価格も安く、また粉末冶金での実績がある金属Ti、Ni、Fe、Crを用いることが好適である。特に、Tiは酸化物の生成自由エネルギーの絶対値が大きいため、マイエナイトと還元してマイエナイト・エレクトライドを生成または維持することができるため、マイエナイトの酸化劣化を抑えることが求められる用途に適する。
実施の形態に係るマイエナイト複合材は、マイエナイト・エレクトライド粉末と金属粉末とを所望の用途に応じて、体積比10:90〜95:5の比率で混合して、固化させることによって作製することができる。マイエナイト・エレクトライド粉末と金属粉末とを固化させる方法は、特に限定されないが、たとえば、真空中またはカーボンルツボ中のような酸素や水分などの酸化剤が極力除去された雰囲気で、マイエナイト・エレクトライド粉末および金属粉末からなる混合物を加熱し、焼結させる方法が挙げられる。たとえば、ガラスカプセル内にマイエナイト・エレクトライド粉末と金属粉末との混合体を真空封止してもよい。また、カーボン製の金型を用いて真空中や不活性ガス中でプレス加熱してもよい。特に、プレス加熱は緻密なマイエナイト複合材を得られるという利点を有する。
このようにして得られたマイエナイト複合材は、所望の形態に容易に加工することが可能である。マイエナイト複合材の加工に要する手法は、金属結合材として用いた金属材料にもよるが、切断、機械研磨、圧延加工、プレス加工、押し出し加工等の機械加工が挙げられる。マイエナイト複合材の最終的な表面仕上げを担う工程では、水分を極力排した手法を用いることが必要となる。たとえば、研磨工程では、油性の研磨剤を用いることにより、表面の保護を図ることができ、マイエナイト複合材の表面にあるマイエナイト・エレクトライドが水分と反応して分解することを抑制し、電子放出特性などの特性を保つことができる。
以上説明したマイエナイト複合材は、(B)金属結合材がネットワークを形成することにより、マイエナイト・エレクトライド単体に比べて強度が増加するため、取り扱いが容易となる。また、金属結合材でマイエナイト成分をバインドすることにより、展性や延性を向上させることができ、鍛造、圧延、線引き加工、溶接などの種々の加工法を適用することができる。また、他の金属材料との溶接性を向上させることができる。
また、本実施の形態のマイエナイト複合材は、(B)金属結合材の体積比率とほぼ比例する(B)金属結合材自身の電気伝導性を有する。単体の金属内では比較的伝導率が低いTiであっても、(A)酸化物のみよりも少なくとも10倍以上高い伝導率を得ることができる。
また、本実施の形態のマイエナイト複合材は、金属材料やグラファイトなどの導体と良好な電気接触を得ることができる。このため、マイエナイト・エレクトライドのみを熱電子放出源や、電子デバイスへの電極に適用するために必要とされた、煩雑な措置が不要となり、従来材料であるLaBをそのまま置き換える代替材料となりうる。
本実施の形態のマイエナイト複合材において、(B)金属結合材としてTiを主要に含む金属を用いると、Tiがいわゆるゲッターとして作用することでマイエナイト複合材中のマイエナイト・エレクトライドの酸化劣化を抑え、長寿命化に寄与する。
(A)酸化物としてA=Ca2+、T=Al3+としたマイエナイト・エレクトライドを用い、(B)金属結合材としてTiを用いると、マイエナイト複合材の構成元素がCa、Al、Ti、Oのみとなり、熱陰極に用いられるLaBや冷陰極に用いられるMoなど、従来用いられている材料よりも、安価で入手しやすい原料でマイエナイト複合材を形成することができる。
(マイエナイト複合材を用いた電子放出用陰極)
上述したマイエナイト複合材に隙間を設けて引き出し電極を設置し、真空中で室温から1000℃程度の温度域でマイエナイト複合材と引き出し電極間に強電場を印加すると電子が放出される。なお、実施の形態に係るマイエナイト複合材を用いた電子放出用陰極は、熱電子放出用に限られず、冷電子放出用にも適用されうる。
次に、実施例によって本発明をさらに詳細に説明する。
(実施例1)
焼結法によって作製した、相純度99%以上、相対密度99%以上のマイエナイト(上述した一般式(1)において、A=Ca2+、T=Al3+、X2−=O2−としたマイエナイト)を、粒状Tiと共に石英ガラス管に真空封止後1100℃で2週間の熱処理を行った。得られたマイエナイト・エレクトライドの電子濃度をヨードメトリー法で測定したところ、2×1021cm−3であった。マイエナイト・エレクトライド表面に生成した主に酸化チタンからからなる反応相を機械研磨によって除去することで、原料となるマイエナイト・エレクトライドを得た。このマイエナイト・エレクトライドを乳鉢粉砕によって、平均粒径約3μmに粉砕した。このマイエナイト・エレクトライド粉末と市販の純度99%,平均粒径約10μmの金属Ti粉末を90:10(vol%)の体積比率となるように秤量し、再度乳鉢混合した。混合粉末を、硬質グラファイトからなる内径15mmφの一軸金型に充填して、SPSシンテックス製プラズマ焼結装置を用いて焼結した。本プラズマ焼結法の条件は以下の通りであり、雰囲気は油回転ポンプで得られた約10Paの低真空、金型への一軸加圧は112MPa、焼結条件は800℃で6分であった。得られたマイエナイト複合材の表面を研磨した後、X線回折法で複合体を構成する相を調べたところ、マイエナイト・エレクトライドと金属Tiのみであり、その他の相は存在しても2wt%以下程度と見積もられた。
(実施例2)
実施例2のマイエナイト複合材は、マイエナイト・エレクトライド粉末と金属Ti粉末との体積比率を80:20(vol%)としたことを除き、実施例1と同様に作製された。実施例2のマイエナイト複合材の焼結密度を測定したところ、92%であった。
(実施例3)
実施例3のマイエナイト複合材は、マイエナイト・エレクトライド粉末と金属Ti粉末との体積比率を70:30(vol%)としたことを除き、実施例1と同様に作製された。実施例3のマイエナイト複合材の焼結密度を測定したところ、90%であった。
(実施例4)
実施例4のマイエナイト複合材は、マイエナイト・エレクトライド粉末と金属Ti粉末との体積比率を10:90(vol%)としたことを除き、実施例1と同様に作製された。実施例4のマイエナイト複合材の焼結密度を測定したところ、99%であった。
(比較例1)
比較例1のマイエナイト複合材は、マイエナイト・エレクトライド粉末と金属Ti粉末との体積比率を99:1(vol%)としたことを除き、実施例1と同様に作製された。比較例1のマイエナイト複合材の焼結密度を測定したところ、63%であった。
Figure 0006062192
(焼結密度評価)
実施例1〜4、比較例1のマイエナイト複合材について、重量と外寸から算出した体積から焼結密度を算出した。焼結密度について得られた結果を表1に示す。表1に示すように、比較例1に比べて実施例1〜4は焼結密度が顕著に増加することが確かめられた。比較例1のマイエナイト複合材は強度に乏しく、バルクとしての形態をかろうじて保っていたのに対して、実施例1〜4のマイエナイト複合材はバルクとしての形態を好適に保つことが確認された。
(電気伝導率評価)
実施例1〜3のマイエナイト複合材については、電気的接触の良好性を評価するために二端子法を用いた。この場合には、試料の両端に銀ペーストを塗布して電極とした。一方Tiの配合比が勝る実施例4のマイエナイト複合材については、電気的接触が良好であることは明らかであり、かつ2端子法で測定するには伝導率が高すぎるため、4端子法によりバルク本体の抵抗率を評価した。なお、比較例1のマイエナイト複合材は接触抵抗が極めて高く、電気伝導率の測定ができなかった。電気伝導率について得られた結果を表1に示す。
(溶接性評価)
実施例1〜4のマイエナイト複合材各試料について、以下の溶接条件にてスポット溶接の可否を評価した。
<溶接条件>
溶接材料:K熱電対用アルメル・クロメルφ0.1mm線
溶接装置:Avio Super Welder,NRW−100A
印加圧力:8N
溶接出力:4〜15J
上記条件にて溶接できた場合を「可」とし、溶接できなかった場合を「不可」とし、得られた結果を表1に示す。なお、「不可」の場合には、溶接出力を25Jまで出力を上げても溶接ができなかった。
表1に示すように、実施例1を除く、実施例2〜4のマイエナイト複合材では、スポット溶接を行うことができた。このことから、(A)酸化物と(B)金属結合材の合計体積を基準として、(B)金属結合材の体積を20%以上とすることにより十分な溶接性を得ることができることが確かめられた。比較例1のマイエナイト複合材では、スポット溶接ができなかった。実施例2〜4のマイエナイト複合材が接合された熱電対は、900℃まで熱しても正常に作動することが確認された。
なお、実施例1の途中で得られた、粉砕前のバルク状のマイエナイト・エレクトライドに、同様なスポット溶接を試みたが、接着しなかった。従って、(B)金属結合材による複合化が溶接性に決定的な役割を果たしていることが確認された。
(熱電子放出性評価)
図1は熱電子放出特性の計測のための装置の概要を示す図である。実施例3で得られたマイエナイト複合材を、幅、奥行き0.6mm、長さ2mm、先端径0.14mmφの鉛筆型のチップ状に切削加工し、エミッタ陰極10とした。このエミッタ陰極10をLaBチップを放出源とした市販の電子放出源カートリッジに、LaBチップと置き換える形で設置した。電子放出源カートリッジは一片0.5mmのグラファイト20をエミッタ陰極10の両側に設置した形態になっている。これをさらに、熱電子放出評価用の真空槽に設置した。一対のグラファイト20はそれぞれ陰極用電極30と電気的に接続されており、さらに真空槽内の電線、フィードスルーを通して外部電源40に接続される。一対の陰極用電極30間に最大3A、−10Vまでの電流−電圧を印加することで、グラファイト20とエミッタ陰極10を通過するように電流が印加され、主にグラファイト20の自己発熱とそれと接触すエミッタ陰極10への熱拡散によってエミッタ陰極10が加熱される。エミッタ陰極10の温度は放射温度計で計測した。エミッタ陰極10の先端と同一の面上に直径0.5mmの孔をもつウェーネルト電極50が設置され、エミッタ陰極10の電位とほぼ同等かそれよりも低い電位に調節される。またエミッタ陰極10の先端と1mm程のギャップを介して直径0.8mmの孔を持つ引き出し電極60を設置した。また、エミッタ陰極10の先端の電位が、接地電位に対して最大−4kVになるように電位が印加されることで、エミッタ陰極10の先端から電子が真空中へ引き出される。エミッタ陰極10から放出された電子は、接地電位にある陽極70で捕集し、その電流値を外部の電流計で計測した。陽極70からの二次電子による影響を抑えるため、引き出し電極60には−9Vの電位を与え、二次電子を陽極70に導いた。
図2は、引き出し電場4×10V/cmを印加した際の、放出電流密度と温度の関係を示すグラフである。放出電流値は約700℃において1.4mA・cm−2であった。この値は、一般的なBa含侵カソードと同等か1桁くらい少ない程度である。また、マイエナイト・エレクトライドのみでほぼ同一の温度と電場条件では、0.5mA・cm−2(Toda et al,Appl.Phys.Lett.87 254103−1−3(2005))であり、この値よりも大きい。放出電流の絶対値は、エミッタ陰極10先端近傍の電極の配置などに大きく影響を受けるため、本実施例によるエミッタ陰極10は、700℃付近の温度領域では、従来のBa含侵カソードや、マイエナイト・エレクトライドと概ね同等の放出性能である。放出された電子ビームを蛍光板に拡大して投影して観察したところ、粒子状の部位が斑状に光る様子が観測されたことから、エミッタ陰極10表面のマイエナイト・エレクトライドが占める部位から電子が優先的に放出されている事が伺えた。金属結合材のTiの仕事関数は4.3eVであり、4×10V/cmで700℃において電流密度をリチャードソン−ダッシュマン式より算出すると、1.9×10−15mAcmー2であり、計測限界以下であると推測される。ゆえに、計測された電流値はマイエナイト・エレクトライドからの放出の寄与である。
一般に、以下のリチャードソン-ダッシュマンの式より熱電子放出による飽和電流密度、JSが記述される。
Figure 0006062192
ここで、Aはリチャードソン定数、φは仕事関数熱である。引き出し電場を印加することによるショットキー効果を考慮に入れて、充分な電場を印加した条件で計測される電流密度に相当する電子放出の飽和電流密度JSFは、以下のように表される。
Figure 0006062192
ここで、eは電荷素量、kはボルツマン定数、Tは温度、Fは電場、εは真空の誘電率を表す。
実施例3で得られたマイエナイト複合材で形成されたエミッタ陰極10からの熱電子放出特性から仕事関数を適正に見積もるために、リチャードソン-ダッシュマンプロットによる評価を行ったところ、仕事関数が2.1eVであった。この値は、マイエナイト・エレクトライドのみの場合と同等であり、マイエナイト複合材中のマイエナイト・エレクトライドが電子放出を担っていることが示された。
10 エミッタ陰極、20 グラフファイト、30 陰極用電極、40 外部電源、50 ウェーネルト電極、60 引き出し電極、70 陽極

Claims (4)

  1. 電子伝導性およびマイエナイト構造を有し、下記一般式(1)で表される酸化物と、
    [A242864(4+δ)+・(2+δ/2)X2−・・・・(1)
    ((1)式中、AはSr2+またはCa2+であり、TはAl3+のみ、またはAl3+を基本とし、Si4+、Ga3+、Zn2+、またはP5+によってAl3+が部分的に置換され、X2−はO2−、S2ー、O 2ー、2OH、2F、2Cl、2O、2O 、2H、2e(電子)からなる群より選ばれる。また、δは8以下の値である。)
    Ti、Ni、Fe、Cr、Co、W、Moからなる群より選ばれる元素で構成される金属結合材と、を備え
    前記酸化物と前記金属結合材との体積比が10:90〜95:5の範囲であることを特徴とするマイエナイト複合材。
  2. 前記酸化物と前記金属結合材との体積比が10:90〜80:20の範囲である請求項1に記載のマイエナイト複合材。
  3. 前記金属結合材は、Ti、Ni、Fe、Crからなる群より選ばれる請求項1に記載のマイエナイト複合材。
  4. が2eである前記酸化物を含む請求項1乃至3のいずれか1項に記載のマイエナイト複合材を用いた電子放出用陰極。
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