JP5877274B2 - 熱電変換材料 - Google Patents
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Description
本開示は、熱電発電や熱電冷却に利用される熱電変換材料に関する。
熱電発電は、ゼーベック効果、すなわち物質の両端に温度差をつけると、その温度差に比例して物質の両端の間に生じる熱起電力を利用して、熱のエネルギーを直接電気エネルギーに変換する技術である。この技術は、僻地用電源、宇宙用電源、軍事用電源等として一部で実用化されている。また、熱電冷却は、ペルチェ効果、すなわち電流によって運ばれる電子によって熱を移動させる現象を利用した技術である。具体的には、電気伝導キャリアの符合の違う2つの物質を、熱的に並列に、かつ電気的に直列につないで電流を流したときに、電気伝導キャリア(担体)の符号の違いが熱流の向きの違いに反映することを利用して、接合部を吸熱する技術である。例えば、このとき、電気伝導キャリア(担体)がホールであるp型半導体と、電気伝導キャリア(担体)が電子であるn型半導体といった電気伝導キャリアの符合の違う2つの物質を用いる。このような素子構成は、いわゆるπ型と呼ばれる素子であり、もっとも一般的な構成である。
熱電発電や熱電冷却における熱と電気の間のエネルギー変換効率は、使用する材料の性能指数ZTで決定付けられる。性能指数ZTは、材料のゼーベック係数S、電気抵抗率ρ、熱伝導率κと、評価環境の絶対温度Tと、を用いて、ZT=S2T/ρκのように表される。性能指数ZTが高ければ高いほどエネルギー変換効率は高く、電気伝導キャリアの注入された半導体において、しばしば高い性能指数ZTが実現される。そのため、高い性能指数ZTを実現するためには、熱伝導率κの低い半導体であることが重要な条件である。
また、熱電発電における材料性能の指標としては、出力因子PF=S2/ρもしばしば用いられる。出力因子PFは、熱電変換において得られる出力電力に比例するため、出力因子PFの高い熱電変換材料を用いれば単位時間当たりに大きな電気エネルギー得ることが出来る。
熱伝導率κの低い半導体の一つとして、X3Ni3Sb4(X=Zr、Hf)が熱電材料の候補として提案されている。この化合物の合成はすでに試みられており、室温での熱伝導率κがX=Zrの場合に4.3W/m・K、X=Hfの場合に2.7W/m・Kであることが示されている(例えば、非特許文献1参照。)。
J. R. Salvador, X. Shi, J. Yang and H.Wang著「Synthesis and transport properties of M3Ni3Sb4 (M=Zr and Hf): An intermetallic semiconductor」 Physical Review B 77, 235217, 2008年6月27日
しかし、非特許文献1に記載の材料では、非常に低い性能指数しか得られていなかった。
そこで、本開示の目的は、高い性能指数を有する熱電変換材料を提供することである。
本開示に係る熱電変換材料は、化学式X3T3−yT’ySb4(0.025≦y≦0.5)で表され、前記Xは、ZrとHfのうちの一以上の元素から成り、前記Tは、NiとPdとPtのうちNiを含む一以上の元素から成り、T’はCo、Rh、Irのうち一つ以上の元素から成る。
本開示に係る熱電変換材料は、化学式X3T3−yT’ySb4(0.025≦y≦0.5)で表され、Niの一部をCo、Rh、Irのいずれかで置換することによって、高い性能指数を有すると共に、高温大気中に晒しても熱電変換性能を維持させることができる。
本開示の第1態様に係る熱電変換材料は、化学式X3T3−yT’ySb4(0.025≦y≦0.5)で表される熱電変換材料であって、前記Xは、ZrとHfのうちの一以上の元素から成り、前記Tは、NiとPdとPtのうちNiを含む一以上の元素から成り、T’はCo、Rh、Irのうち一以上の元素から成る。
本開示の第2態様に係る熱電変換材料は、化学式Hf3T3−yT’ySb4(0.025≦y≦0.5)で表される熱電変換材料であって、前記Tは、NiとPdとPtのうちNiを含む一以上の元素から成り、T’はCo、Rh、Irのうち一以上の元素から成る。
本開示の第3態様に係る熱電変換材料は、上記第1態様又は第2態様において、前記T’は、Coであってもよい。
本開示の第4態様に係る熱電変換材料は、上記第1態様又は第2態様において、前記yは、0.2≦y≦0.5の範囲であってもよい。
本開示の第5態様に係る熱電変換材料は、上記第3態様において、前記yは、0.2≦y≦0.5の範囲であってもよい。
本開示の第4態様に係る熱電変換材料は、上記第1態様又は第2態様において、前記yは、0.2≦y≦0.5の範囲であってもよい。
本開示の第5態様に係る熱電変換材料は、上記第3態様において、前記yは、0.2≦y≦0.5の範囲であってもよい。
<従来の熱電変換材料における課題>
発明者は、従来の熱電変換材料、例えば、非特許文献1に記載のZr3Ni3Sb4及びHf3Ni3Sb4を含む熱電変換材料X3Ni3Sb4(X=Zr又はHf)について検討した。その結果、従来の熱電変換材料X3Ni3Sb4(X=Zr又はHf)では、高いゼーベック係数Sを示すが、高温大気中で酸化されて熱電変換性能を著しく失ってしまうという問題点があることを見出した。
発明者は、従来の熱電変換材料、例えば、非特許文献1に記載のZr3Ni3Sb4及びHf3Ni3Sb4を含む熱電変換材料X3Ni3Sb4(X=Zr又はHf)について検討した。その結果、従来の熱電変換材料X3Ni3Sb4(X=Zr又はHf)では、高いゼーベック係数Sを示すが、高温大気中で酸化されて熱電変換性能を著しく失ってしまうという問題点があることを見出した。
そこで、本開示では、高い性能指数を有すると共に、高温耐久性を有する熱電変換材料X3Ni3Sb4を提供する。
以下、本開示の実施の形態に係る熱電変換材料について、図面を参照しながら説明する。
(実施の形態1)
本開示の実施の形態1に係る熱電変換材料であるX3T3−yT’ySb4(0.025≦y≦0.5)について説明する。ここで、Xは、ZrとHfのうちの一以上の元素から成り、Tは、NiとPdとPtのうち、Niを含む一以上の元素から成り、T’はCo、Rh、Irのうち一以上の元素から成る。化合物X3T3−yT’ySb4は、空間群I−43dに属する立方晶の対称性を持つ。図1は、このX3T3−yT’ySb4の結晶構造を示す模式図である。図1に示されているように、X3T3−yT’ySb4は、単位胞内にZr+Hf:Ni+Pd+Pt+Co+Rh+Ir:Sb=3:3:4の割合で原子が配置される結晶構造をとる。
本開示の実施の形態1に係る熱電変換材料であるX3T3−yT’ySb4(0.025≦y≦0.5)について説明する。ここで、Xは、ZrとHfのうちの一以上の元素から成り、Tは、NiとPdとPtのうち、Niを含む一以上の元素から成り、T’はCo、Rh、Irのうち一以上の元素から成る。化合物X3T3−yT’ySb4は、空間群I−43dに属する立方晶の対称性を持つ。図1は、このX3T3−yT’ySb4の結晶構造を示す模式図である。図1に示されているように、X3T3−yT’ySb4は、単位胞内にZr+Hf:Ni+Pd+Pt+Co+Rh+Ir:Sb=3:3:4の割合で原子が配置される結晶構造をとる。
本開示の製造方法は、特に限定されない。例えば、図2に示されているような以下のような製造方法によって作成することができる。
(1)まず、Zr、Hf、Ni、Co、Rh、Ir、Pd、Pt、Sbのうち、所望の元素を含む原料を化学量論比で所望の分量だけ秤量する(工程P1)。この秤量された原料から見積もられる組成比を仕込み組成と呼ぶ。
(2)このうち、Zr、Hf、Ni、Pd、Pt、Co、Rh、Irのうち、所望の元素を含む原料について、アーク溶解法を用いて原料を合金化して合金Aを得る。ここではArガスに置換された雰囲気下でハースライナー上に載置された原料にアーク放電プラズマを照射し、2200℃以上の高温で溶解させ、これを冷却させることによって、まず合金Aを作製する(工程P2)。
(3)次に、得られた合金AとSbを含む原料とをアーク溶解法を用いてAr雰囲気下1200〜1500℃の低温で溶解させ、これを冷却させることにより合金Bを作製する(工程P3)。
(1)まず、Zr、Hf、Ni、Co、Rh、Ir、Pd、Pt、Sbのうち、所望の元素を含む原料を化学量論比で所望の分量だけ秤量する(工程P1)。この秤量された原料から見積もられる組成比を仕込み組成と呼ぶ。
(2)このうち、Zr、Hf、Ni、Pd、Pt、Co、Rh、Irのうち、所望の元素を含む原料について、アーク溶解法を用いて原料を合金化して合金Aを得る。ここではArガスに置換された雰囲気下でハースライナー上に載置された原料にアーク放電プラズマを照射し、2200℃以上の高温で溶解させ、これを冷却させることによって、まず合金Aを作製する(工程P2)。
(3)次に、得られた合金AとSbを含む原料とをアーク溶解法を用いてAr雰囲気下1200〜1500℃の低温で溶解させ、これを冷却させることにより合金Bを作製する(工程P3)。
これら合金Aと合金Bを作製する溶融の過程においては、アーク溶解法の他に真空状態や不活性雰囲気の下で抵抗発熱体による加熱で溶融する方法、高周波の電磁波を用いて溶融する誘導加熱法などを用いることが出来る。
この合金Bの密度を上げる場合には放電プラズマ焼結法(SPS法)を用いて焼結体を作製する(工程P4)。SPS法は、試料に圧力を印加しながらパルス電流を加えて加熱することを特徴とする焼結手法である。
(a)まず合金Bを乳鉢・乳棒やボールミル法などを用いて粉砕、混合し、合金Bの粉末を得る。粉砕の作業に当たっては粉末の酸化を避けるために不活性ガス雰囲気下で行うことが望ましい。そのための方法として、例えば、グローブボックスを用いてもよい。
(b)得られた合金Bの粉末を、外形50mm、内径10mmのグラファイトの円筒状ダイの中に充填し、このダイを1Pa以下の真空中に導入する。
(c)ダイに覆われた試料の上下から50MPaの圧力を加えた上で、上下のパンチを通してパルス電流を流し100℃/分程度の速度で850℃まで昇温する。850℃まで昇温させた後、これを5分保持することにより、緻密な焼結体を得ることが出来る。
なお、焼結過程においては、SPS法の代わりにホットプレス法を用いてもよい。
合金Bや、その焼結体を任意の形状に加工して用いることにより、熱電変換材料としての利用、あるいは熱電変換物性の測定を行うことができる。
(a)まず合金Bを乳鉢・乳棒やボールミル法などを用いて粉砕、混合し、合金Bの粉末を得る。粉砕の作業に当たっては粉末の酸化を避けるために不活性ガス雰囲気下で行うことが望ましい。そのための方法として、例えば、グローブボックスを用いてもよい。
(b)得られた合金Bの粉末を、外形50mm、内径10mmのグラファイトの円筒状ダイの中に充填し、このダイを1Pa以下の真空中に導入する。
(c)ダイに覆われた試料の上下から50MPaの圧力を加えた上で、上下のパンチを通してパルス電流を流し100℃/分程度の速度で850℃まで昇温する。850℃まで昇温させた後、これを5分保持することにより、緻密な焼結体を得ることが出来る。
なお、焼結過程においては、SPS法の代わりにホットプレス法を用いてもよい。
合金Bや、その焼結体を任意の形状に加工して用いることにより、熱電変換材料としての利用、あるいは熱電変換物性の測定を行うことができる。
(実施例1)
実施の形態1に記載した製造方法の一例に従ってX3T3−yT’ySb4の焼結体を作製した。この焼結体を下記記載の測定方法に適した大きさにそれぞれ切削した上で、熱伝導率κ、電気抵抗率ρ、ゼーベック係数Sの測定を行った。
実施の形態1に記載した製造方法の一例に従ってX3T3−yT’ySb4の焼結体を作製した。この焼結体を下記記載の測定方法に適した大きさにそれぞれ切削した上で、熱伝導率κ、電気抵抗率ρ、ゼーベック係数Sの測定を行った。
まず、熱伝導率κの測定方法について説明する。熱伝導率κは、密度n、比熱Cと熱拡散率lを用いてκ=n×C×lのようにして求められる。密度nの測定にはアルキメデス法を用いた。そして、熱拡散率lと比熱Cの測定値を得るためにNETZSCH製の測定装置LFA457を用いて、レーザーフラッシュ法による測定を行った。
レーザーフラッシュ法による熱拡散率測定を行うために、焼結体を直径10mm、厚み1mm程度の円筒状に切り出し、表裏面にグラファイトコーティングを施したサンプルをAr雰囲気の中に導入した。熱拡散率lは、このサンプルの表面にレーザーを照射した時の裏面温度の時間変化から求めた。試料の比熱測定にもレーザーフラッシュ法を援用し、レーザー照射後のサンプル裏面の温度の時間変化を比熱が既知であるサンプルと比較する比較法を用いた。
また、ゼーベック係数Sと電気抵抗率ρの測定は、4端子法を用いて行い、アルバック理工製の測定装置ZEM−3を利用した。試料は、2mm×2mm×8mm程度の直方体に切り出し、0.1気圧のヘリウム雰囲気下にて測定を行った。長辺方向の両端間で電流を印加し、長辺方向の両端の間に挟まれた2点にプローブ電極を接触させることにより、プローブ電極間の電位差と温度差とを読み取った。電気抵抗率ρは、印加する電流I、プローブ電極間電圧ΔV、試料の断面積S、及びプローブ電極間隔Lから、定義式ρ=ΔV/I×S/Lを用いて求めた。また、ゼーベック係数Sは、電位差ΔVと温度差ΔTの比から、定義式S=―ΔV/ΔTより求めた。
さらに、熱電変換材料としての高温耐久性を検証するために、600℃の大気中で1時間熱処理した後の熱電変換性能の変化具合から検証を行った。検証する性能指標としては、同一のサンプルから同時測定を行うことができる電気抵抗率ρとゼーベック係数Sとから求められる出力因子PF=S2/ρを採用した。具体的には、大気中での熱処理前後の出力因子を測定し、その減少率を算出した。
最後に、エネルギー分散型X線分光法(Energy dispersive X-ray spectroscopy,EDX)を利用して上記製造過程で得た焼結体の実際の組成を分析した。EDX法は、電子線を試料に照射したときに発生する特性X線のエネルギー分布から試料表面近傍の元素の比率を測定する方法である。従来例においても同等の手法である電子線マイクロアナライザ(EPMA)を用いて組成分析を行っている。本測定では、試料表面上の異なる4点についてEDX法による組成分析を行い、4点の平均から化学組成を求めた。ここでは非特許文献1に従い、Ni原子の存在量を3に揃えて全体の化学組成を表記する。また、Ni原子を置換した系においては、置換元素を含むNi、Co、Rh、Ir、Pd、Ptの原子数の総和が3となるように全体の組成比を表記する。
それぞれの組成の試料について、仕込み組成と、実際の組成と、上記記載の測定方法によって得られた熱電変換の性能指数ZTの室温での値と、性能指数ZTの最大値と、を表1に示す。
表1に記載の従来例1−4は、非特許文献1に記載された測定値から計算したものであり、室温での性能指数の値のみが報告されている。なお、従来例2及び4では、仕込み組成でHfが含まれていないにもかかわらず、実際の組成にHfがわずかに含まれている。また、従来例3では、仕込み組成でZrが含まれていないにもかかわらず、実際の組成にZrがわずかに含まれている。これは、非特許文献1において使用された原料となるZr又はHfにおいて、不純物としてHf又はZrを1%程度含んでいたことが原因と思われる。
表1における実施例1−6、及び比較例1−3は、Zr3Ni3Sb4中のNiをCoで置換した試料に対する性能指数ZTの室温での値と最大値である。Co置換によってp型の電気特性が得られると共に、性能指数ZTに著しい上昇が見られた。特に、y=0.1で性能指数ZTは最大値をとり、300Kの室温で0.205、710Kの高温で0.519という高い値を示した。
表1における実施例7−9は、最適な性能指数ZTを与えるZr3Ni2.9Co0.1Sb4のZrをHfに置換した場合の性能指数ZTを示している。すでに存在が報告されているZr3Ni3Sb4やHf3Ni3Sb4だけではなく、両者の合金Zr3−xHfxNi3Sb4もCo置換によって0.4を超える高い性能指数ZTを実現させられることが確認できた。
表2における実施例12、13は、Coに代えてRhやIrを置換した場合の性能指数ZTを示している。Rh置換やIr置換によってもp型の電気特性が得られると共に、性能指数ZTに著しい上昇が見られた。RhやIrはCoと同じ第9族元素であり、Rh置換やIr置換によってCo置換と同様に性能指数を向上する役割を果たすものと思われる。
次に、高温耐久性を評価するために、Zr3−xHfxNi3−yCoySb4について、600℃の大気中で1時間熱処理した後に、室温での出力因子PFがどのように変化するかを調査した。大気中で熱処理を行うと試料の表面が黒色化し、ZrO2やNi‐Sb合金が形成されることに伴う出力因子の劣化が見られた。
表3は、Zr3Ni3−yCoySb4について、大気中での熱処理前後の出力因子の値と、その減少率を示す表である。表2では、上記Zr3―xHfxNi3−yCoySb4において、x=0(Hfを含まない場合)における出力因子の減少度合いを示している。また、図3は、Zr3Ni3−yCoySb4について、高温大気中で熱処理を行った後の出力因子の値と、その減少率と、Co置換量yとの関係を示すグラフである。Coを含まないサンプル(y=0)では70%程度の減少率であったが、y≧0.025ではその減少率は、Coを含まない場合の半分以下に抑えられた。大気中熱処理による出力因子の減少は、Co量が多ければ多いほど抑制される傾向にあり、図3に示すように、y≧0.2では、出力因子の減少率(●)は、10%を下回る。すなわち、Co置換は、本材料の高温耐久性を増す方向に寄与することが見出された。したがって、出力因子の減少率の観点において、Co量(y)としては、0.025以上が好ましく、0.2以上がさらに好ましい。
一方で、高温耐久性の傾向とは異なり、図3に示すように、熱電変換材料として用いるために必要な出力因子(□)は、y=0.1を境にして減少する。Coをy=0.5まで置換すると、熱処理後の室温での出力因子は、y=0.1での最大値に比べて約56%となる。さらにCoをy=0.7の条件まで置換すると、熱処理後の室温での出力因子は、y=0.1での最大値に比べて半分以下となる。したがって、出力因子の観点において、Co量(y)としては、0.5以下が好ましい。
よって、本材料を高温耐久性に優れた熱電変換材料として用いる場合には、Co量の範囲は、出力因子の減少率の観点と出力因子の観点との2つの観点を考慮すると、0.025≦y≦0.5の範囲が好ましく、0.2≦y≦0.5の範囲がより好ましい。
表4は、Zr3−xHfxNi2.9Co0.1Sb4における熱処理前後の出力因子の値と、その減少率を示す表である。具体的には、性能指数ZTおよび出力因子PFの最大値を与えるCo置換量y=0.1の材料に対して、ZrをHfに置換したZr3−xHfxNi2.9Co0.1Sb4における高温耐久性を示している。表3を参照すると、0≦x≦3のどのHf量についても出力因子の減少率は20%以下に抑えられていることから、高温耐久性に関してはZrとHfの割合に限定されないことがわかった。
表5は、Zr3Ni3−yCoySb4において、NiをPdやPtに置換した材料について、大気中熱処理前後での出力因子の変化を、表2及び表3の場合と同様に測定した結果を示している。表4を参照すると、表2の実験結果と同様に、Niの一部をCoに置換することによって高温耐久性の向上が見られた。
表6はZr3Ni3−yRhySb4あるいはZr3Ir3−yCoySb4における大気中での熱処理前後の出力因子の値と、その減少率を示す。Coのかわりに同じ第9族元素であるRhやIrを置換した場合においても、Co置換の際と同様に耐高温性向上の効果が見られた。
以上のように、本開示の熱電変換材料であるX3T3−yT’ySb4(0.025≦y≦0.5、Xは、ZrとHfのうちの一以上の元素、Tは、NiとPdとPtのうち、Niを含む一以上の元素、T’はCo、Rh、Irのうちの一以上の元素)によれば、Niを含むTを所定範囲(0.025≦y≦0.5)のCoで置換することによって、所定の出力因子が得られると共に、耐高温性を向上させることができる。
本開示に係る熱電変換材料は、熱電発電、熱電冷却を行う素子を構成するために用いることができる。
11 Zr3―xHfxT3−yT’ySb4結晶におけるZrもしくはHfの原子位置(黒色)
12 Zr3―xHfxT3−yT’ySb4結晶におけるT=Ni、Pd、PtもしくはT’=Co、Rh、Irの原子位置(灰色)
13 Zr3―xHfxT3−yT’ySb4結晶におけるSbの原子位置(白色)
12 Zr3―xHfxT3−yT’ySb4結晶におけるT=Ni、Pd、PtもしくはT’=Co、Rh、Irの原子位置(灰色)
13 Zr3―xHfxT3−yT’ySb4結晶におけるSbの原子位置(白色)
Claims (5)
- 化学式X3T3−yT’ySb4(0.025≦y≦0.5)で表される熱電変換材料であって、前記Xは、ZrとHfのうちの一以上の元素からなり、前記Tは、NiとPdとPtのうちNiを含む一以上の元素からなり、T’はCo、Rh、Irのうち一以上の元素からなる、熱電変換材料。
- 化学式Hf3T3−yT’ySb4(0.025≦y≦0.5)で表される熱電変換材料であって、前記Tは、NiとPdとPtのうちNiを含む一以上の元素からなり、T’はCo、Rh、Irのうち一以上の元素からなる、熱電変換材料。
- 前記T’は、Coである、請求項1又は2に記載の熱電変換材料。
- 前記yは、0.2≦y≦0.5の範囲である、請求項1又は2に記載の熱電変換材料。
- 前記yは、0.2≦y≦0.5の範囲である、請求項3に記載の熱電変換材料。
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