JP6061384B2 - アルミ・樹脂接合体の製造方法及びアルミ・樹脂接合体 - Google Patents

アルミ・樹脂接合体の製造方法及びアルミ・樹脂接合体 Download PDF

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Description

この発明は、アルミ基材と樹脂部材とが一体的に強固に接合されたアルミ・樹脂接合体を製造する方法、及びアルミ・樹脂接合体に関する。
一般に自動車等を中心とした輸送機器産業では、CO2削減の理由等から、軽量であって、加工性や耐食性等に優れたアルミ基材の適用が拡大している。一方で、樹脂も軽量で成形性に優れていることから、軽量化を図る手段のひとつとして、その適用範囲が拡大している。そして、これらを一体的に接合したアルミ・樹脂接合体についても注目が集まっている。
従来、このような異種材質であるアルミ基材と樹脂とが互いに一体的に接合したアルミ・樹脂接合体を得るにあたっては、予め樹脂を成形した樹脂成形体とアルミ基材とを用いて、その間を接着剤により加圧下で接合する技術が採用されてきた。近年では、工業的に優れた接合方法として、アルミ基材を射出成形用金型内にインサートし、このインサートされたアルミ基材の表面に向けて溶融した熱可塑性樹脂を射出して、熱可塑性樹脂の射出成形により樹脂成形体を成形すると同時に、アルミ基材と樹脂成形体との間を接合する方法が知られている。
例えば、特許文献1では、アルミ形状体を酸水溶液でエッチング処理してその表面に凹凸部を形成し、凹凸部に起因する複数の凹状部内に熱可塑性樹脂が進入して固化した樹脂成形体の嵌入部を形成することで、アルミ形状体と樹脂成形体とが互いに係止されたアルミ・樹脂射出一体成形品が提案されている。また、特許文献2には、Al−Si系合金鋳物部材の表面に酸系液による化学エッチング処理を施し、内面に共晶Si結晶からなる凸部を複数有する凹状部を形成したアルミ合金部材が樹脂接合性に優れることが開示されている。更に、特許文献3や特許文献4には、アンモニアやヒドラジン等の水溶性アミン系化合物の水溶液に浸漬させたアルミニウム合金形状物と熱可塑性樹脂組成物とを射出成形によって一体化した複合体が開示されている。
しかしながら、これら特許文献1〜4等に記載された湿式の表面処理では、廃液が発生するため、その処理が問題になることがあり、また、樹脂を接合したい箇所のみを処理しようとする場合には、マスキング等の工程が別途必要になり、結果としてコストアップが避けられない。
一方で、乾式の表面処理として、例えば、特許文献5の実施例1には、アルゴン、酸素、窒素、CF4/酸素、エチレンを使った真空プラズマ処理で処理したアルミプレートを金型内に設置して、熱可塑性エラストマー組成物を射出成形して、樹脂・金属複合体を得たことが記載されており、射出操作において、脱型の際に樹脂成形体がアルミプレートから剥離したり、所定の位置からずれたりすることは全く起こらなかったとされている。また、アルミニウム又はアルミニウム合金のようなアルミ基材に関する処理とは異なるが、特許文献6には、シリコンのような基体の表面に有機化合物の膜を形成した上で、プラズマエッチングによりその有機化合物膜に凹凸を形成して、接着部に利用できることが記載されている。
しかしながら、これら特許文献5及び6に記載されたようなプラズマ処理を施しても、アルミ基材と樹脂との接合強度を十分に得ることはできず、アルミ基材と樹脂との接合界面での強度信頼性に劣るものであった。
WO2009/151099A1パンフレット 特開2010-174372号公報 特許第3954379号公報 特許第4270444号公報 特開2001-239548号公報 特開2003-66203号公報
そこで、本発明者らは、上記のような従来技術を鑑みて、プラズマ処理を用いて、アルミ基材と熱可塑性樹脂からなる樹脂部材との接合強度が極めて高いアルミ・樹脂接合体を得るための手段について鋭意検討した結果、所定のエッチングガスをプラズマジェットと混合してアルミ基材に噴射して、アルミ基材の表面を粗化処理することで、アルミ基材と樹脂部材との接合密着性を顕著に向上させたアルミ・樹脂接合体が得られることを見出し、本発明を完成させた。
したがって、本発明の目的は、アルミ基材と樹脂部材との接合強度が極めて高いアルミ・樹脂接合体を得ることができるアルミ・樹脂接合体の製造方法を提供することにある。
また、本発明の別の目的は、アルミ基材と樹脂部材との接合強度が極めて高いアルミ・樹脂接合体を提供することにある。
すなわち、本発明は、アルミニウム又はアルミニウム合金からなるアルミ基材と熱可塑性樹脂からなる樹脂部材とが接合されたアルミ・樹脂接合体を製造する方法であって、塩素原子を含有する気体分子と水分子とを含んだエッチングガスをプラズマジェットと混合して、得られた混合プラズマジェットをアルミ基材に噴射してアルミ基材の表面の一部又は全部を粗化処理し、粗化処理により形成されたアルミ基材の凹凸部に起因する複数の凹状部内に熱可塑性樹脂を進入させて固化し、樹脂部材の嵌入部を形成してアルミ基材と樹脂部材とが接合されたアルミ・樹脂接合体を得ることを特徴とするアルミ・樹脂接合体の製造方法である。
また、本発明は、アルミニウム又はアルミニウム合金からなるアルミ基材と熱可塑性樹脂からなる樹脂部材とが接合されたアルミ・樹脂接合体であって、前記アルミニウムは1000系であり、また、前記アルミニウム合金は2000系、3000系、5000系、ADC5、ADC6、7000系、又は8000系のいずれかであり、前記アルミ基材の表面の一部又は全部が、塩素原子を含有する気体分子と水分子とを含んだエッチングガスをプラズマジェットと混合して得られた混合プラズマジェットで粗化処理されており、粗化処理により形成されたアルミ基材の凹凸部に起因する複数の凹状部内に熱可塑性樹脂が進入し[て]固化した樹脂部材の嵌入部が形成されて、凹状部と嵌入部とにより前記アルミ基材と前記樹脂部材とが互いに係止されていると共に、前記複数の凹状部のうちの一部又は全部において、該凹状部の開口縁部の一部又は全体から開口幅方向中心に向けて雪庇状に突き出した突出部が形成されて、該突出部により前記アルミ基材の凹状部と前記樹脂部材の嵌入部とが互いに脱離不能な係止構造を形成していることを特徴とするアルミ・樹脂接合体である。
本発明においては、塩素原子を含有する気体分子と水分子とを含んだエッチングガスをプラズマジェットと混合して、アルミ基材に噴射することで、アルミ基材の表面を粗化処理する。このような混合プラズマジェットを用いることにより、アルミ基材の表面に凹凸部が形成されるメカニズムについては必ずしも明確になってはいないが、現時点では以下のように推測している。ここでは、塩素原子を含有する気体分子がHClの場合を例に説明すると、アルミ基材との反応は次のとおりと考えられる。
HCl → H + Cl
Al + 3Cl → AlCl3
Al + Cl → AlCl
すなわち、HClと水分子とを含んだエッチンガスがプラズマジェットと混合されることでプラズマ化され、塩素プラズマ(Clラジカル)が発生するものと考えられる。そして、このClラジカルを含んだ混合プラズマジェットが噴射されてAl(金属アルミ)と反応し、AlCl3やAlClを形成してこれらが気化することで、凹凸部が形成されてアルミ基材の表面が粗化されるものと考えている。
この例ではHClを用いて説明したが、上記のようなAl(金属アルミ)との反応に必要なClラジカルを発生させることができればよく、HCl以外にも、例えば、Cl2(塩素ガス)、CCl4(四塩化炭素)、BCl3(三塩化ホウ素)等のようなCl原子を含有した気体分子を用いることができる。このうち、水溶液を形成して、水分子を含んだ状態でのエッチングガスが得られ易いことから、好ましくはHClであるのがよい。すなわち、例えば、塩酸を加温して気化させることで、塩化水素(HCl)ガスと水分子(水蒸気)とを含んだエッチングガスを容易に作り出すことができる。その際、HClの供給量を確保し易くするために、塩酸は50℃以上の温度にするのがよい。ただし、90℃を超えると塩酸加熱の危険性があることから、塩酸は90℃以下の温度にする。
また、エッチングガス中の水分子(気体)の役割については、塩素原子を含有する気体分子の濃度を希釈する働きのほか、エッチンガスがプラズマジェットと混合されることでOH-にイオン化されて、Alの一部を酸化してAl23等のアルミ酸化物を形成したり、アルミ基材の表面をヒドロキシ基で修飾する作用も見込まれる。すなわち、部分的にアルミ酸化物の結晶が生成したり、それらが離脱することによって、アルミ基材の表面の粗化に一部寄与するものと考えられる。また、ヒドロキシ基で修飾されたアルミ基材は、樹脂部材との化学的な結合をもたらして、密着強度を向上させる働きも考えられる。
また、本発明において、エッチングガスと混合されるプラズマジェットを得るには、アルゴン、ヘリウム、窒素、ドライ空気等のようなプラズマ発生ガスを用いるようにすればよい。そして、エッチングガスとプラズマジェットとを混合して混合プラズマジェットを得るにあたっては、好適には、外管と内管とを備えた同軸二重管構造を有した混合ノズルを用いて、大気圧下で混合プラズマジェットを噴出させるようにするのがよい。
すなわち、同軸二重管構造の混合ノズルを備えたプラズマ発生装置を使用して、混合ノズルの先端部外管側からエッチングガスが噴出されるようにし、また、その先端部内管側からプラズマジェットが噴出されるようにして、エッチングガスがプラズマジェットとダウンフロー領域で混合されるようにするのが好適である。このようにすることで、プラズマジェットの生成効率を低下させることなくエッチングガスと混合させることができる。その際、アルミ基材を混合ノズルの下流に据え付け、混合プラズマジェットをアルミ基材の表面に噴出させることで、プラズマ生成部(電極)とプロセス部(処理対象物)を離して利用できるリモート型のプラズマジェット処理が可能になる。そのため、アルミ基材へのアクセシビリティに優れ、樹脂部材を接合させたい箇所を選択的に粗化処理することができる。一般的には、大気圧プラズマジェットのサイズは数mm〜数百μmであるため、このサイズに従った処理サイズの局所的な粗化処理を必要に応じて繰り返すようにすればよい。また、大気圧下でアルミ基材の粗化処理を行うことができることから、特別な排気装置や圧力容器が不要になり、装置が簡素化できて装置コスト(処理コスト)が低減できると共に、高密度・高反応性であるため高速処理が可能となる。
本発明においてプラズマジェットを発生させる条件については特に制限はなく、公知の条件を採用することができる。例えば、プラズマジェット生成電源として、定常動作のものでは、DC駆動、マイクロ波駆動、正弦波やパルス等の低周波駆動、RF(高周波)駆動等が挙げられる。このうち、サイズが小さくなるとプラズマ粒子の拡散や流れによる損失レートが大きくなるため、小さい体積に効率的に電力注入できるように、駆動周波数は高い方が有利となるが、特にこれらに制限されない。また、プラズマジェット生成用電極については、単極タイプ又は両極タイプのいずれでも可能であるが、アルミ基材上でのプラズマ噴射効果を促進させる観点から、粗化処理の際にはアルミ基材に電位を加えるようにするのが望ましい。そして、例えば、低周波パルス駆動の大気圧プラズマジェットを生成する場合には、放電を生じさせるために、電圧は5kV以上、周波数は1kHz以上としてパルス駆動高電圧を印加するのが望ましく、また、樹脂部材との密着性に優れた接合を得るには、少なくとも10分程度の噴射時間でアルミ基材に対して混合プラズマジェットを噴射するのが望ましい。
また、同軸二重管構造を有した混合ノズルを用いる際には、例えば、内管側には、アルゴンやヘリウム等のプラズマ生成ガスをガス流量1000〜5000sccm程度の流量で供給してプラズマジェットを発生させ、また、外管側には、塩素原子を含有する気体分子と水分子とを含んだエッチングガスをアルゴン、ヘリウム、窒素等の同伴ガスと共に供給して、プラズマジェットと混合させるようにするのがよい。
そして、このような粗化処理によりアルミ基材に形成された凹凸部は、それに起因する複数の凹状部内に熱可塑性樹脂が進入して固化した樹脂部材の嵌入部を形成し、アルミ基材の凹状部と樹脂部材の嵌入部とが互いに係止して、アルミ基材と樹脂部材とが一体的に結合したアルミ・樹脂接合体を得ることができる。この凹状部が形成される理由について、アルミ基材は、通常、その表面にAl23からなる薄いアルミナ表面層を有するところ、このアルミナ表面層は一部に欠陥が存在すると考えられる。そのため、先に示したようなClラジカルによる金属アルミの反応が、これらの欠陥から優先的に開始され、混合プラズマジェットが噴出されたアルミ基材の表面には、結果として凹状部が形成される。
また、アルミ基材の内部の金属アルミは、欠陥での反応と同様に、アルミナ表面層よりも速く進み、その結果としてアルミナ表面層やその直下の金属アルミの反応が遅れる。そのため、この反応が遅れた部分が、アルミナ表面層の欠陥から始まった金属アルミの反応がその内部まで進んだ際に、雪庇状の突出部として残ることも考えられる。すなわち、混合プラズマジェットが噴射されたアルミ基材には、その複数の凹状部のうちの一部又は全部において、凹状部の開口縁部の一部又は全体から開口幅方向中心に向けて雪庇状に突き出した突出部が形成されることがあり、その場合には、この突出部によりアルミ基材の凹状部と樹脂部材の嵌入部とが互いに脱離不能な係止構造を形成して、より強固な接合界面が得られる。
ここで、混合プラズマジェットの噴出によるアルミ基材の粗化処理について、粗化処理により形成されたアルミ基材の凹凸部におけるJIS規格の中心線平均粗さRa(JIS B 0601-1982)が200nm以上2000nm以下となるようにするのがよく、好ましくは中心線平均粗さRaが250nm以上1500nm以下となるようにするのがよい。Raが200nm未満であると密着性の不良が生じるおそれがあり、反対にRaが2000nmを超えると表面処理に要する時間がかかり過ぎる問題がある。
また、上述したように、凹状部において雪庇状に突き出した突出部が形成される程度までアルミ基材の粗化処理を行うことが、より強固な接合界面を得る上で好適であるが、その場合には、アルミ基材を厚み方向に切った縦断面で見た場合で、雪庇状に突き出した突出部を備えた凹状部が、最大開口幅で1μm以上100μm以下、好ましくは2μm以上80μm以下となるようにすると共に、最深部から開口縁部までの高さで1μm以上100μm以下、好ましくは2μm以上90μm以下となるようにするのがよい。
そして、本発明においては、混合プラズマジェットを噴出して粗化処理されたアルミ基材については、例えば、射出成形用金型内にセットし、この金型内に溶融した熱可塑性樹脂を射出して固化させる、いわゆるアルミ基材を用いた熱可塑性樹脂との一体成形により、目的のアルミ基材と樹脂部材とのアルミ・樹脂接合体を得ることができる。あるいは、予め熱可塑性樹脂を射出成形して所定の樹脂部材を形成しておき、得られた樹脂部材を粗化処理したアルミ基材の上にレーザー溶着、振動溶着、超音波溶着、ホットプレス溶着、熱板溶着、非接触熱板溶着、又は高周波溶着等の手段を用いた熱圧着により一体的に接合することで、目的のアルミ基材と樹脂部材とのアルミ・樹脂接合体を得るようにしてもよい。これらの場合において、混合プラズマジェットが噴射された個所に対応させて、アルミ基材の一部の表面に樹脂部材が突き合わせ状態で結合されるようにしてもよく、アルミ基材の全面に樹脂部材が突き合わせ状態で結合されるようにしてもよい。
ここで、アルミ基材を射出成形用金型内にセットして行う熱可塑性樹脂の射出成形の場合には、用いられる熱可塑性樹脂に求められる通常の成形条件を採用し得るものであるが、射出成形時に溶融した熱可塑性樹脂がアルミ基材の凹状部内に確実に進入して固化することが重要であり、金型温度やシリンダー温度を熱可塑性樹脂の種類や物性、更には成形サイクルの許す範囲で比較的高めに設定するのが好ましく、特に金型温度については、下限温度を90℃以上、好ましくは130℃以上にする必要があるが、上限は、使用する熱可塑性樹脂の種類に応じて、100℃から当該熱可塑性樹脂の融点又は軟化点(後述するようなエラストマー成分が添加される場合にはどちらか高い方の融点又は軟化点)より20℃程度低い温度までの範囲であるのがよい。また、下限金型温度は、熱可塑性樹脂の融点から140℃以上低くならないように設定するのが好ましい。
本発明において、アルミ・樹脂接合体を形成するアルミ基材については特に制限されないが、具体例としては、例えば、純Al系の1000系、Al−Cu系の2000系、Al−Mn系の3000系、Al−Si系の4000系、Al−Mg系の5000系、ADC5、及びADC6、Al−Mg−Si系の6000系、Al−Zn−Mg系の7000系、Al−Fe系の8000系、Al−Si−Mg系のADC3、Al−Si−Cu系のADC10、ADC10Z、ADC12、及びADC12Z、Al−Si−Cu−Mg系のADC14等のようなアルミニウム又はアルミニウム合金からなるものが挙げられる。そして、各種構造体や部品で使用されるアルミ・樹脂接合体を得るに際して、これらを適宜加工したり、更にはそれらを適宜組み合わせるなどして、所望の形状のアルミ基材とすればよい。
これらのアルミ基材については、混合プラズマジェットを噴射する前に、必要に応じて、脱脂や表面調整、表面付着物・汚染物等の除去を目的として、酸水溶液による酸処理、及び/又は、アルカリ溶液によるアルカリ処理からなる前処理を施してもよい。ここで、この前処理に用いる酸水溶液としては、例えば、市販の酸性脱脂剤で調製したもの、硫酸、硝酸、フッ酸、リン酸等の鉱酸や酢酸、クエン酸等の有機酸や、これらの酸を混合して得られた混合酸等の酸試薬を用いて調製したもの等を用いることができ、また、アルカリ水溶液としては、例えば、市販のアルカリ性脱脂剤により調製したもの、苛性ソーダ等のアルカリ試薬により調製したもの、又はこれらのものを混合して調製したもの等を用いることができる。これらの酸水溶液及び/又はアルカリ水溶液を用いて行なう前処理の操作方法及び処理条件については、従来、この種の酸水溶液又はアルカリ水溶液を用いて行なわれている前処理の操作方法及び処理条件と同様でよく、例えば、浸漬法、スプレー法等の方法により行うことができる。
また、アルミ基材の表面に上記の前処理を施した後や、混合プラズマジェットを噴射する粗化処理より凹凸部を形成した後には、必要により水洗処理をしてもよく、この水洗処理には工業用水、地下水、水道水、イオン交換水等を用いることができる。更に、前処理や粗化処理が施されたアルミ基材については、必要により乾燥処理が行われるが、この乾燥処理についても、室温で放置する自然乾燥でよいほか、エアーブロー、ドライヤー、オーブン等を用いて行う強制乾燥でもよい。
一方、アルミ・樹脂接合体を形成する熱可塑性樹脂については、各種の熱可塑性樹脂を単独で用いることができるが、好ましくは、例えばポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS)、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンスルフィド(PPS)等のポリアリーレンサルファイド樹脂、ポリアセタール樹脂、液晶性樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル系樹脂、ポリオキシメチレン樹脂、ポリイミド樹脂、シンジオタクティックポリスチレン樹脂等やこれらの熱可塑性樹脂の2種以上の混合物が挙げられる。また、アルミ基材と樹脂部材との間の密着性、機械的強度、耐熱性、寸法安定性(耐変形、反り等)、電気的性質等の性能をより改善するために、これらの熱可塑性樹脂に繊維状、粉粒状、板状等の充填剤や、各種のエラストマー成分を添加するようにしてもよい。
ここで、熱可塑性樹脂に添加される充填剤としては、ガラス繊維、カーボン繊維、金属繊維、アスベスト繊維、硼素繊維等の無機質繊維充填剤や、ポリアミド、フッ素樹脂、アクリル樹脂等の高融点有機質繊維充填剤や、石英粉末、ガラスビーズ、ガラス粉、炭酸カルシウムをはじめとする無機粉体類等の粉状充填剤や、ガラスフレーク、タルクやマイカ等の珪酸塩類等の板状充填剤等が挙げられる。これらの添加剤を熱可塑性樹脂に添加する場合には、熱可塑性樹脂100重量部に対して250重量部以下、好ましくは20重量部以上220重量部以下、より好ましくは30重量部以上100重量部以下の範囲で添加するのが望ましい。この充填剤の添加量が250重量部を超えると流動性が低下し、アルミ基材の凹状部へ進入し難くなり良好な密着強度を得られなかったり、機械的特性の低下を招くおそれもある。
また、熱可塑性樹脂に添加されるエラストマー成分としては、ウレタン系、コアシェル型、オレフィン系、ポリエステル系、アミド系、スチレン系等のエラストマーが例示され、射出成形時の熱可塑性樹脂の溶融温度等を考慮して選択することができる。これらのエラストマー成分を熱可塑性樹脂に添加する場合には、熱可塑性樹脂100重量部に対して30重量部以下、好ましくは3〜25重量部の範囲であるのが望ましい。このエラストマー成分の添加量が30重量部を超えると、更なる密着強度向上効果が見られず機械的特性の低下等の問題が生じる。なお、このエラストマー成分の配合効果は、熱可塑性樹脂としてポリエステル系樹脂を用いた場合に特に顕著に現れる。
更に、本発明のアルミ・樹脂接合体を製造するための熱可塑性樹脂には、一般に熱可塑性樹脂に添加される公知の添加剤、すなわち難燃剤、染料や顔料等の着色剤、酸化防止剤や紫外線吸収剤等の安定剤、可塑剤、潤滑剤、滑剤、離型剤、結晶化促進剤、結晶核剤等を、要求される性能に応じて適宜添加することができる。
本発明では、所定のエッチングガスをプラズマジェットと混合して、アルミ基材の表面に噴射する方法を採用することから、湿式法のような廃液の処理が問題となるようなことはない。また、このような混合プラズマジェットを用いることで、樹脂部材の接合が必要な個所を選択的に高速で処理することができることから、マスキング等の工程を省略することができ、アルミ基材と樹脂部材との界面の密着強度が極めて高いアルミ・樹脂接合体を低コストで、容易にかつ簡便に得ることができる。
図1は、実施例で使用したアルミ基材の表面処理装置の模式説明図である。 図2(A)はプラズマ発生装置における混合ノズルを先端及び側面から写した写真であり、図2(B)は混合ノズルを説明するための側面断面面である。 図3は、実施例で使用した電源による電圧電流波形である(電圧±5.0kV、周波数5kHz、Duty比50%の場合)。 図4は、エッチングガスのプラズマ化による塩素プラズマの生成を確認するための発光分光測定に使用した装置の模式説明図である。 図5は、エッチングガスをプラズマ化した際の発光分光測定の結果である。 図6は、実施例1で得られた粗化処理アルミ基材を断面観察したSEM写真である(×1000倍)。 図7は、実施例1で得られた粗化処理アルミ基材を表面観察したSEM写真である〔(a)×1000倍、(b)×5000倍〕。 図8は、粗化処理アルミ基材の表面に形成された凹凸部の一部分を模式的に描いた説明図である。 図9は、実施例で作製したアルミ・樹脂接合体を説明するための説明図である。 図10は、実施例で作製したアルミ・樹脂接合体の接合強度を評価する際に使用した評価試験方法を説明するための説明図である。 図11は、実施例5で得た粗化処理アルミ基材の平面写真である。 図12は、実施例1〜6及び比較例1で得られた結果をもとに、混合プラズマジェットの噴射時間とアルミ基材の表面粗さRaとの関係をグラフにしたものである。 図13(A)は、実施例5に係る粗化処理アルミ基材の光学顕微鏡写真であり(×200倍)、図13(B)はその一部のAFM測定結果である。 図14(A)は、比較例1に係るアルミ基材の光学顕微鏡写真であり(×200倍)、図14(B)はその一部のAFM測定結果である。 図15(A)は、比較例2に係るアルミ基材の光学顕微鏡写真であり(×200倍)、図15(B)はその一部のAFM測定結果である。
以下、実施例及び比較例に基づいて、本発明のアルミ・樹脂接合体の製造方法を具体的に説明する。なお、以下は本発明の実施形態の一例を示すものであって、本発明はこれらの内容に制限されるものではない。
〔混合プラズマジェットの生成〕
図1には、混合プラズマジェットを用いてアルミ基材の表面を粗化処理する表面処理装置の様子が模式的に示されている。このアルミ基材の表面処理装置は、外管1と内管2の同軸二重管構造の混合ノズルを有するプラズマ発生装置10と、試料ステージ11に備え付けられたアルミ基材Wがプラズマ発生装置10から噴出される混合プラズマジェットで処理される処理用チャンバー20と、ガス洗浄瓶からなり、プラズマ発生装置10における混合ノズルの外管1にエッチングガスを供給するためのエッチングガス供給装置30とから構成される。
このうち、プラズマ発生装置10については、図2に示されるように、先端部の口径(内径)が2mmの石英ガラス製の内管2の一部外側を、外径15mmのガラス管からなる外管1が取り囲むような同軸二重管構造の混合ノズルを形成しており、外管1の接続口1aから供給されるエッチングガスが先端部から噴出されて、内管2の先端部から噴出されるプラズマジェットとダウンフロー領域で混合されるようになっている。また、この混合ノズルの先端部からおよそ100mmの位置には、プラズマジェット生成用の電極3として銅箔テープが内管2に巻き付けられている。そして、この表面処理装置を使ってアルミ基材の粗化処理を行うにあたっては、以下のような混合プラズマジェットの生成条件を採用した。
先ず、エッチングガス供給装置30のガス洗浄瓶に10%塩酸を入れて80℃に加温し、ガス注入口からヘリウムガスをガス流量50sccmで注入して(He-2)、外管1の接続口1aに接続されたガス出口側からHClガスとH2Oガスとを含んだエッチングガスが外管1に供給されるようにした。また、内管2にはヘリウムガスをガス流量500sccmで供給した(He-1)。このように混合ノズルの外管1と内管2にそれぞれガスをフローした状態で、電圧±7.5kV、周波数5kHz、デューティ比(Duty比)50%のパルス駆動高電圧を印加することにより、低周波パルス駆動大気圧プラズマジェットを内管2内で生成し、混合ノズル先端部の内管側より大気圧中へ噴出させて、混合ノズルの先端部外管側から噴出されるエッチングガスとダウンフロー領域で混合して、混合プラズマジェットを得るようにした。なお、電源には株式会社ハイデン研究所製SBP−10K−HF型を使用し、半導体スイッチング方式のパルス生成方式を採用して、立ち上がり時間が500ns以下、立ち下り時間が500ns以下となるようにした。また、図3には、電圧が±5.0kVの場合であるが、この電源を使用して電圧±5.0kV、周波数5kHz、デューティ比50%のパルス駆動高電圧が印加されたときの電圧電流波形が示されている。
また、エッチングガスのプラズマ化により塩素プラズマが生成することを確認するため、次のような発光分光測定を行った。ここでは、微弱な発光であるClピークを確認するために、図4に示したような単管ノズルを使用して、プラズマジェット生成用電極3より上流でHClガスとH2Oガスとを含んだエッチングガスをヘリウムガスとともに供給し、プラズマ化させるようにした。また、処理用チャンバー20内では、発光分光分析装置(OES)の受光部を試験管に挿入することで保護し、プラズマジェットの下流方向から測定を行った。これら以外については、先の表面処理装置における混合プラズマジェットの生成条件と同じにした。測定結果は図5に示されるとおりであり、エッチングガスのプラズマジェットからClピークを確認することができた(479.4nm)。このことから、先の表面処理装置における混合プラズマジェット中でも、同様にClラジカルが存在するものと考えられる。
[実施例1]
市販のアルミニウム板材(A5052; 板厚2.0mm)から40mm×40mmの大きさのアルミ基材を切り出して、図1に示した表面処理装置の試料ステージ11に取り付けた。そして、このアルミ基材Wに対して直流バイアス450Vを印加し、処理用チャンバー20内を大気圧に保った状態で、先に説明した混合プラズマジェットの生成条件で混合プラズマジェットを1分間噴射して、アルミ基材Wを粗化処理した。このとき、混合ノズルの先端部とアルミ基材Wの表面との間隔は1cmとした。また、光学顕微鏡で確認したところによれば、アルミ基材の表面で混合プラズマジェットが噴射されたスポット径はおよそ1000μmであった。そして、このような1回の混合プラズマジェットの噴射を行った後、混合プラズマジェットの噴射位置が重ならないように、試料ステージ11におけるアルミ基材Wの取り付け位置を動かして、1回目の噴射位置のすぐ隣に上記と同様にして1分間の混合プラズマジェットの噴射を行い、これらを繰り返しながら、アルミ基材Wの表面の5mm×10mmの領域内に合計24箇所の混合プラズマジェットの噴射を行って粗化処理面を形成して、粗化処理アルミ基材を得た。
上記で得られた粗化処理アルミ基材について、先ず、原子間力顕微鏡(キーエンス社製VN-8010)を用いて、粗化処理面のなかから200μm×200μmの範囲を選択してAFM(Atomic Force Microscope)による表面解析を行ったところ、中心線平均粗さRaは278.9nmであった。ここで、図6は、粗化処理アルミ基材の粗化処理面が含まれる部分を厚み方向に切って、走査型電子顕微鏡(日本電子社製JCM-5700)を用いてその断面の一部を断面観察したSEM写真である(倍率1000倍)。この断面SEM写真から分かるように、粗化処理により形成された凹凸部に起因する凹状部のなかには、プラズマ照射直下に形成された凹状部の開口縁部から開口幅方向中心に向けて雪庇状に突き出した突出部が形成されたもの〔(i)で示したもの〕や、プラズマ照射直下の周囲に形成された(i)で示した凹状部よりも微細な凹状部を有したもの〔(ii)で示したもの〕が確認できる。このうち、雪庇状に突き出した突出部を備えた凹状部(雪庇保有凹状部)を模式的に示したものが図8である。そして、任意に選んだ雪庇保有凹状部について、その最大開口幅(穴径)dと最深部から開口縁部までの高さ(深さ)hを計測したところ、d=5.5μm及びh=6.5μmであった。なお、図6に示した断面観察では、プラズマ処理したアルミ基材の処理面に接着剤を塗布してSEM観察用の試料を作製した。
また、先の図6に示された微細な凹状部(ii)について、粗化処理面の一部を表面観察したSEM写真が図7である〔(a)は倍率1000倍、(b)は倍率5000倍〕。これらのSEM写真からも分かるように、粗化処理アルミ基材の粗化処理面には、粗化処理によって雪庇保有凹状部以外にも凹凸部が形成されたことが確認できる。
そして、上記で得られた粗化処理アルミ基材を射出成形機の金型内にセットし、熱可塑性樹脂としてポリフェニレンサルファイド(PPS)(ポリプラスチックス社製商品名:フォートロン、グレード名RSF10719)を用いて、金型温度150℃、樹脂温度320℃、射出速度100mm/s、保圧50MPa、保圧時間3秒の射出成形条件でPPSの射出成形を行い、図9に示すように、5mm×10mm×30mmの大きさのPPS成形体(樹脂部材)41を成形すると共に、このPPS成形体41を粗化処理アルミ基材42の粗化処理面(5mm×10mm)で接合させて、試験用のアルミ・樹脂接合体40を作製した。
得られた試験用アルミ・樹脂接合体40について、図10に示すように、アルミ・樹脂接合体40の粗化処理アルミ基材42を冶具44に固定し、PPS成形体41の上端にその上方から1mm/min.の速度で荷重43を印加し、粗化処理アルミ基材42とPPS成形体41との間の接合部分を破壊する方法でアルミ・樹脂接合体40の接合部のせん断強度を評価する試験を実施し、接合が破壊されるときの力(せん断破壊荷重:N)を測定した。また、その際の破断面を観察して、○:接合面の一部あるいはその大部分が樹脂の凝集破壊で破壊された場合、及び×:粗化処理アルミ基材42とPPS成形体41との界面で破壊された場合の基準で、耐久試験の前後におけるアルミ・樹脂接合体の接合強度を評価した。結果を表1に示す。
[実施例2〜6]
1回の混合プラズマジェットの噴射時間を8分(実施例2)、6分(実施例3)、4分(実施例4)、10分(実施例5)、及び30分(実施例6)に変更した以外はそれぞれ実施例1と同様にして粗化処理アルミ基材を得た。得られた各粗化処理アルミ基材について、実施例1と同様にしてAFMによる表面解析から粗化処理面の中心線平均粗さRaを測定し、また、断面SEM観察によって、任意に選んだ雪庇保有凹状部の最大開口幅(穴径)dと最深部から開口縁部までの高さ(深さ)hを求めた。更には、得られた粗化処理アルミ基材について、それぞれ実施例1と同様にしてPPS成形体41を接合させて試験用のアルミ・樹脂接合体40を作製し、せん断破壊荷重を測定すると共に、その際の破断面からアルミ・樹脂接合体の接合強度を評価した。結果を表1にまとめて示す。
このうち、図11には、実施例5で得られた粗化処理アルミ基材の写真が示されている。この写真の下方中央部分に粗化処理面が表されており、1箇所あたり混合プラズマジェットを10分間噴射して、5mm×10mmの領域内の24箇所に混合プラズマジェットを噴射した様子が分かる。
[比較例1]
混合プラズマジェットによる粗化処理を行わずに、未処理のアルミ基材を用いて、実施例1と同様にしてPPS成形体41を接合させて試験用のアルミ・樹脂接合体40を作製した。ここで、実施例1と同様にして、未処理のアルミ基材の中心線平均粗さRaを測定したところ206.7nmであった。また、実施例1と同様にして、断面SEM写真による断面観察を行ったが、雪庇状に突き出した突出部を備えた凹状部は一切観察されなかった。
次いで、この比較例1に係るアルミ・樹脂接合体40について、実施例1と同様にしてせん断破壊荷重を測定するために、冶具44に固定した未処理のアルミ基材42に荷重43を印加しようとしたところでPPS成形体41が外れてしまい、荷重はゼロという結果であった。その際の接合面を確認したところ、未処理のアルミ基材42とPPS成形体41との界面で剥離した状態であった。
[比較例2]
エッチングガスを供給せずに、内管2にヘリウムガスをガス流量500sccmで供給して、混合ノズルの先端部からプラズマジェットのみ噴射するようにした以外は実施例1と同様にしてアルミ基材を粗化処理した。得られたアルミ基材について、プラズマジェットのみを噴射した個所の中心線平均粗さRaを実施例1と同様にして測定したところ、Raは375.0nmであった。また、実施例1と同様にして、断面SEM写真による断面観察を行ったが、雪庇状に突き出した突出部を備えた凹状部は一切観察されなかった。
次いで、この比較例2に係るアルミ・樹脂接合体40について、実施例1と同様にしてせん断破壊荷重を測定しようとしたが、比較例1と同様、冶具44に固定したアルミ基材42に荷重43を印加しようとしたところでPPS成形体41が外れてしまい、荷重はゼロであった。その際の接合面を確認したところ、やはり、未処理のアルミ基材42とPPS成形体41との界面で剥離した状態であった。
[比較例3]
プラズマを生成させずにエッチングガスのみ噴射した以外は実施例1と同様にしてアルミ基材を粗化処理した。得られたアルミ基材について、プラズマジェットのみを噴射した個所の中心線平均粗さRaを実施例1と同様にして測定したところ、Raは210.3nmであり、表面粗さは元来のアルミ基材の値とほとんど変化しないことを確認した。また、実施例1と同様にして、断面SEM写真による断面観察を行ったが、雪庇状に突き出した突出部を備えた凹状部は一切観察されなかった。
次いで、この比較例3に係るアルミ・樹脂接合体40について、実施例1と同様にしてせん断破壊荷重を測定しようとしたが、比較例1と同様、冶具44に固定したアルミ基材42に荷重43を印加しようとしたところでPPS成形体41が外れてしまい、荷重はゼロであった。その際の接合面を確認したところ、やはり、未処理のアルミ基材42とPPS成形体41との界面で剥離した状態であった。
上記で得られた実施例1〜6及び比較例1の結果をもとに、エッチングガスとプラズマジェットとを混合した混合プラズマジェットの1回あたりの噴射時間と粗化処理後のアルミ基材の表面粗さRaとの関係をグラフにすると図12のようになる。この図12のグラフから分かるように、混合プラズマジェットの噴射時間の増加に伴い、アルミ基材の表面粗さRaが比例関係で上昇する。この結果から計算される粗化処理速度は約34nm/minであった。
更に、上記実施例5で得た粗化処理アルミ基材について、粗化処理面の一部を倍率200倍の光学顕微鏡で観察した光学顕微鏡写真を図13(A)に示す。また、この実施例5で得た粗化処理アルミ基材の粗化処理面から200μm×200μmの範囲を選択して、原子間力顕微鏡で表面解析したAFM測定結果を図13(B)に示す。加えて、比較参照のため、上記比較例1の未処理のアルミ基材について、同様の光学顕微鏡写真とAFM測定結果を図14(A)と図14(B)に、また、上記比較例2でヘリウムのプラズマジェットのみを噴射したアルミ基材について、同様の光学顕微鏡写真とAFM測定結果を図15(A)と図15(B)に、それぞれ示す。
このうち、図14(B)及び図15(B)のAFM測定結果と図13(B)のAFM測定結果とを比べて明らかなように、HClガスとH2Oガスとを含んだエッチングガスとプラズマジェットとを混合した混合プラズマジェットを用いることで、アルミ基材の表面粗さが大きく向上していることが分かる。ここで、ヘリウムのプラズマジェットのみを噴射した比較例2の場合においても、比較例1における未処理のアルミ基材に比べて表面粗さRaが増しているが、これは、プラズマジェットにより大気中の酸素や水分が作用してアルミ基材の表面を酸化し、その酸化物の結晶が生成したり、これらが離脱するなどして粗化された可能性が考えられる。なお、ここでは光学顕微鏡写真やAFM測定結果を添付していないが、プラズマを生成させずに、HClガスとH2Oガスとを含んだエッチングガスを直接アルミ基材に10分間吹き付けた比較例3の場合では、アルミ基材の表面に変化は認められなかった。
1:混合ノズル外管、1a:接続口、2:混合ノズル内管、3:電極、10:プラズマ発生装置、11:試料ステージ、20:処理用チャンバー、30:エッチングガス供給装置、40:アルミ・樹脂接合体、41:PPS成形体(樹脂部材)、42:粗化処理アルミ基材、43:荷重、44:冶具、W:アルミ基材。

Claims (10)

  1. アルミニウム又はアルミニウム合金からなるアルミ基材と熱可塑性樹脂からなる樹脂部材とが接合されたアルミ・樹脂接合体を製造する方法であって、
    塩素原子を含有する気体分子と水分子とを含んだエッチングガスをプラズマジェットと混合して、
    得られた混合プラズマジェットをアルミ基材に噴射してアルミ基材の表面の一部又は全部を粗化処理し、
    粗化処理により形成されたアルミ基材の凹凸部に起因する複数の凹状部内に熱可塑性樹脂を進入させて固化し、樹脂部材の嵌入部を形成してアルミ基材と樹脂部材とが接合されたアルミ・樹脂接合体を得ることを特徴とするアルミ・樹脂接合体の製造方法。
  2. 外管と内管との同軸二重管構造を有する混合ノズルの先端部外管側から噴出されるエッチングガスを、先端部内管側から噴出されるプラズマジェットとダウンフロー領域で混合して、混合プラズマジェットを得る請求項1に記載のアルミ・樹脂接合体の製造方法。
  3. 混合プラズマジェットが大気圧プラズマジェットである請求項1又は2に記載のアルミ・樹脂接合体の製造方法。
  4. エッチングガスが、塩酸を加温して気化させたHClと水分子とを含んだものである請求項1〜3のいずれかに記載のアルミ・樹脂接合体の製造方法。
  5. アルミ基材には、その複数の凹状部のうちの一部又は全部において、凹状部の開口縁部の一部又は全体から開口幅方向中心に向けて雪庇状に突き出した突出部が形成されて、この突出部によりアルミ基材の凹状部と樹脂部材の嵌入部とが互いに脱離不能な係止構造を形成する請求項1〜4のいずれかに記載のアルミ・樹脂接合体の製造方法。
  6. アルミ基材を厚み方向に切った縦断面で見た場合、雪庇状に突き出した突出部を備えた凹状部は、最大開口幅が1μm以上100μm以下であると共に、最深部から開口縁部までの高さが1μm以上100μm以下である請求項5に記載のアルミ・樹脂接合体の製造方法。
  7. 粗化処理により形成されたアルミ基材の凹凸部は、AFMで測定した場合の表面粗さRaが200nm以上2000nm以下である請求項1〜6のいずれかに記載のアルミ・樹脂接合体の製造方法。
  8. アルミニウム又はアルミニウム合金からなるアルミ基材と熱可塑性樹脂からなる樹脂部材とが接合されたアルミ・樹脂接合体であって、
    前記アルミニウムは1000系であり、また、前記アルミニウム合金は2000系、3000系、5000系、ADC5、ADC6、7000系、又は8000系のいずれかであり、
    前記アルミ基材の表面の一部又は全部が、塩素原子を含有する気体分子と水分子とを含んだエッチングガスをプラズマジェットと混合して得られた混合プラズマジェットで粗化処理されており、
    粗化処理により形成されたアルミ基材の凹凸部に起因する複数の凹状部内に熱可塑性樹脂が進入し固化した樹脂部材の嵌入部が形成されて、凹状部と嵌入部とにより前記アルミ基材と前記樹脂部材とが互いに係止されていると共に、前記複数の凹状部のうちの一部又は全部において、該凹状部の開口縁部の一部又は全体から開口幅方向中心に向けて雪庇状に突き出した突出部が形成されて、該突出部により前記アルミ基材の凹状部と前記樹脂部材の嵌入部とが互いに脱離不能な係止構造を形成していることを特徴とするアルミ・樹脂接合体。
  9. アルミ基材を厚み方向に切った縦断面で見た場合、雪庇状に突き出した突出部を備えた凹状部は、最大開口幅が1μm以上100μm以下であると共に、最深部から開口縁部までの高さが1μm以上100μm以下である請求項に記載のアルミ・樹脂接合体。
  10. 粗化処理により形成されたアルミ基材の凹凸部は、AFMで測定した場合の表面粗さRaが200nm以上2000nm以下である請求項8又は9に記載のアルミ・樹脂接合体。
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