JP6057642B2 - スラグ除去装置及びスラグ除去方法 - Google Patents
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Description
このような高炉設備において微粉炭の吹き込み運転をする際、微粉炭として亜瀝青炭や褐炭などの一般的に灰融点が1100〜1300℃程度と低い低品位炭を使用した場合には、微粉炭を炉内に吹き込むために使用する約1200℃の熱風中に含まれる酸素と微粉炭の一部とが燃焼反応を示すことにより、この時に生じる燃焼熱で融点の低い灰(以下、「スラグ」と呼ぶ)がインジェクションランスや羽口内で溶解する。
このような問題を解決するため、例えば下記の特許文献1に開示されている従来技術のように、微粉炭中のスラグ軟化点(温度)が低い場合には、高炉内の温度以上の融点となるように軟化点調整処理を行い、羽口へのスラグ付着を防止することが行われている。
さらに、下記の特許文献3には、2本のランス先端部に形成される隙間に蓄積される付着物を除去するため、粒径1〜2mmの固形チップを吹き込んでランスを振動させることが開示されている。
特許文献1に開示された従来技術の問題は、微粉炭と固体の添加物(造滓剤)とを完全に(均一に)混合させることが困難であり、この結果、添加物の混合割合が所定値より低い部分におけるスラグ形成を防止できないことである。また、添加物を用いる場合には、新たに石灰石や蛇紋岩などの酸化カルシウム(CaO)源が必要となるため、余分なコストが発生するという問題も指摘されている。
なお、特許文献3に開示された従来技術はランスを振動させるものであり、ブローパイプや羽口への適用は困難である。
本発明は、上記の課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、軟化点調整を行わない微粉炭を用いた場合でも、簡単な装置構成で容易かつ確実にスラグ除去を達成でき、さらに、パイプ破損等のリスクを極力低減できる高炉設備のスラグ除去装置及びスラグ除去方法を提供することにある。
本発明に係るスラグ除去装置は、鉄鉱石から銑鉄を製造する高炉本体の羽口から熱風とともに補助燃料の微粉炭を吹き込むブローパイプに設けられ、前記微粉炭のスラグに前記熱風及び/または前記微粉炭の燃焼熱により溶融する成分を含んでいるブローパイプ用のスラグ除去装置であって、前記ブローパイプの内部で前記微粉炭を吹き込むインジェクションランスと、前記インジェクションランスとは別に設けられ、前記ブローパイプ内に固形物及び可燃性液体の少なくとも一つを吹き込む噴射ノズルとを備え、前記噴射ノズルのノズル先端が、前記ブローパイプの軸方向において前記インジェクションランスの先端部と略一致する位置か、あるいは、若干上流側に設置され、前記熱風の流れ内に設けられていることを特徴とするものである。
上記の発明において、前記噴射ノズルは、前記ブローパイプ内に前記固形物を吹き込む場合に、前記固形物を供給する固形物供給源と、前記固形供給源から前記噴射ノズルに前記固形物を供給する固形物供給配管とを備え、前記固形物供給配管は前記固形物の供給を制御する第1の開閉制御弁を備えていてもよい。
また、上記の発明において、前記噴射ノズルから、前記ブローパイプ内に前記固形物を吹き込む場合に、前記固形物は、前記羽口付近の温度より融点が高くかつ前記微粉炭より粒径が大きいことが好ましい。
なお、好適な固形物としては、粒状石炭、スラグ、石灰粒、ペレット粒、焼結鉱、鉄粉等を例示でき、これらの中から1種または複数種を混合して使用すればよい。
なお、上述した固形物の噴射ノズル及び液体の噴射ノズルは、各々別体に設けたものでもよいし、あるいは、開閉制御弁の開閉操作で流路を切り換えて噴射物を選択できる一体型のノズルでもよい。
また、前記噴射ノズルから、前記ブローパイプ内に前記固形物及び前記可燃性液体を吹き込む場合に、前記噴射ノズルは、前記固形物を噴射する第1の噴射ノズルと、前記可燃性液体を噴射する第2の噴射ノズルとを備えていてもよい。
本実施形態のスラグ除去装置及びスラグ除去方法は、原料炭が低品位炭の微粉炭を羽口から高炉内に熱風とともに吹き込む高炉設備に用いられる。
例えば図4に示すような高炉設備において、鉄鉱石、石灰石及び石炭等の原料1は、原料定量供給装置10から搬入コンベア11を介して高炉本体20の頂部に設けた炉頂ホッパ21に供給される。高炉本体20の下部側壁には、円周方向に略等ピッチで配設された複数の羽口22を備えている。各羽口22には、高炉本体20の内部へ熱風2を供給するブローパイプ30の下流側端部が連結されている。また、各ブローパイプ30の上流側端部は、高炉本体20の内部へ供給する熱風2の供給源である熱風送給装置40と接続されている。
微粉炭製造装置50で製造された改質後の微粉炭(改質炭)3は、窒素ガス等の搬送ガス4によりサイクロンセパレータ60へと気体搬送される。気体搬送された微粉炭3は、サイクロンセパレータ60で搬送ガス4を分離した後、貯蔵タンク70内に落下して貯蔵される。このような改質後の微粉炭3は、高炉本体20の高炉吹込炭(PCI炭)として使用される。
このような微粉炭3は、含酸素官能基(カルボキシル基、アルデヒド基、エステル基、水酸基等)のタール生成基が離脱して大きく減少しているものの、主骨格(C,H,Oを中心とする燃焼成分)の分解(減少)が大きく抑制されている。このため、高炉本体20の内部に羽口22から熱風2とともに吹き込むと、主骨格中に酸素原子を多く含むとともに、径の大きい細孔によって、熱風2の酸素が炭の内部にまで拡散しやすいだけでなく、タール分が非常に生じにくくなっているので、未燃炭素(煤)をほとんど生じることなく完全燃焼することができる。
この後、冷却工程に進んだ原料炭は、酸素濃度が2体積%以下の低酸素雰囲気中で冷却(50℃以下)された後、微粉砕工程で微粉砕(粒径:77μm以下(80%パス))されることによって容易に製造される。
この場合、噴射ノズル80から噴射する好適な液体6としては、水または重油等の可燃性液体を例示できる。また、噴射ノズル80から噴射する好適な固形物7としては、粒状石炭、スラグ、石灰粒、ペレット粒、焼結鉱、鉄粉等を例示でき、これらの中から1種または複数種を混合して使用すればよい。
これに対し、噴射ノズル80から噴射される固形物7は、熱風2の流れを推進力としてブローパイプ30内を溶融することなく進むので、羽口22の付近に付着しているスラグSに衝突する。従って、固形物7は、スラグSに衝突して力学的な衝撃を与えることができる。この結果、固形物7の衝突を受けたスラグSは、衝突時の衝撃により破壊されるため容易に除去することができる。
また、噴射ノズル80を設置する半径方向の位置は、熱風2の流路抵抗とならないように、そして、ブローパイプ30の壁面に付着したスラグSに向けて直射できるようにするため、ブローパイプ30の壁面から近い位置が望ましい。
液体供給配管84には、主な構成要素として、液体供給源83内の液体を噴射ノズル80へ圧送するための送出ポンプ85と、開閉状態の切替操作によって噴射ノズル80への液体供給(オン・オフ)を制御する開閉制御弁86と、が設けられている。
固形物供給源87の固形物は、例えば窒素ガス等のように、図示しない固形物搬送ガス供給源を備えている。また、固形物供給配管88には、主な構成要素として、開閉状態の切替操作によって噴射ノズル80への固形物供給(オン・オフ)を制御する開閉制御弁89が設けられている。
すなわち、ブローパイプ30の内壁面や羽口22の付近にスラグSが付着していると、ブローパイプ30の流路断面積低下により圧力損失が生じるので、熱風母管32から供給されて高炉本体20へ流出する熱風の流れには圧力低下が生じることとなる。従って、熱風母管32に接続された圧力導入管90aと、ブローパイプ30のブローパイプ下流位置に接続された圧力導入管90bとにより、差圧計90によりスラグ付着領域の前後に生じる熱風2の差圧ΔPを計測し、差圧ΔPの大小からスラグSの付着状況を推測する。
こうして計測した差圧ΔPは、予め定めた閾値との比較により、上述した開閉制御弁86,89の開閉操作に使用される。
しかし、好ましいスラグ除去方法としては、第1段階のスラグ除去工程として、最初に噴射ノズル80から液体を単独噴射してスラグ除去を実施し、第1段階のスラグ除去工程で所定のスラグ除去を達成できない場合には、第2段階のスラグ除去工程として、噴射ノズル80から固形物7を単独で噴射する。
また、必要に応じて、第2段階のスラグ除去工程で所定のスラグ除去を達成できない場合に実施するように、噴射ノズル80から液体6及び固形物7を同時に噴射してスラグ除去をする第3段階のスラグ除去工程を設けてもよい。
従って、液体噴射による第1段階のスラグ除去工程を優先的に実施し、この液体噴射ではスラグSを除去できなかった場合にのみ、例えば所定時間継続して液体噴射をしてもスラグ除去が完了したことを確認できないような場合にのみ、第2段階のスラグ除去工程を実施する。この結果、液体6では除去できなかったスラグSについても、固形物7による衝撃力を利用して確実に除去することが可能になる。
なお、第2段階のスラグ除去工程において、液体6及び固形物7を同時噴射することも可能である。
なお、二つの閾値については、上述した第1段階及び第2段階等のスラグ除去工程で同じ値を採用してもよいし、あるいは、例えば液体噴射による第1段階のスラグ除去工程を優先的に実施する場合など、後段階のスラグ除去工程に第1段階のスラグ除去工程より大きな値を採用してもよい。
また、第2の閾値(スラグ除去停止閾値)LLは、スラグ検出手段の差圧計90で検出したスラグ付着量がスラグ除去停止閾値より少ないと判断した場合、開閉制御弁86,89を閉じて液体6及び固形物7の噴射を停止するための閾値である。
そして、スラグSの付着がない運転開始時(初期設定時)には、開閉制御弁86,89が閉状態に設定されており、さらに、差圧計90で検出した差圧ΔPは第2の閾値LLより低く、しかも、ほとんど差圧がない状態(ΔP≒0)となっている。
この開信号により、開閉制御弁86,89が開とされ、同時に送出ポンプ85も起動される。この結果、液体供給源83内に貯蔵されている液体6は、噴射ノズル80よりブローパイプ30の内部に向けて噴射され、同時に、固形物供給源87内に貯蔵されている固形物7も、噴射ノズル80よりブローパイプ30の内部に向けて噴射される。
なお、上述した第1の閾値HLは、開閉制御弁86,89を開状態とする第2の閾値LLとの間にヒステリシスを設けて開閉制御弁86,89の頻繁な開閉を防止するため、若干大きな値(HL>LL)に設定されている。
特に、液体として重油等の可燃性液体を採用すれば、可燃性液体が燃焼することで熱風の温度をさらに上昇させることができる。
第3の閾値HHLは、閉状態の開閉制御弁86,89を開く第1の閾値HLより大きな設定値(HHL>HL)であり、この閾値HHLを超えた差圧ΔPを検出した場合には、スラグSの除去等に問題があると判断できる。従って、差圧ΔPが第3の閾値HHLを超えた場合には、例えば高炉設備の制御室等にアラームを出力することで早急に必要な対応を実施できるようになるので、ブローパイプ30の破損といった高炉設備の重大なトラブルを未然に防止することが可能になる。すなわち、第3の閾値HHLは、スラグ付着量が上述した第1の閾値(スラグ除去閾値)HLより大きい値に設定されたアラーム出力閾値である。
さらに、液体噴射を優先したスラグ除去を実施することで、ブローパイプ30に生じる摩耗や破損等のリスクを低減することができる。
従って、微粉炭3の軟化点調整を行わなくても、付着したスラグSを破壊して除去することができるので、ブローパイプ30については、例えば羽口22の摩耗寿命までメンテナンス期間の延長が可能となる。
なお、本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、その要旨を逸脱しない範囲内において適宜変更することができる。
2 熱風
3 微粉炭(改質炭)
4 搬送ガス
5 銑鉄(溶銑)
6 液体
7 固形物
10 原料定量供給装置
20 高炉本体
21 炉頂ホッパ
22 羽口
30 ブローパイプ
31 インジェクションランス(ランス)
32 熱風母管
33 旋回ベーン(旋回流形成部)
34 旋回リボン(旋回流形成部)
40 熱風送給装置
50 微粉炭製造装置
60 サイクロンセパレータ
70 貯蔵タンク
80 噴射ノズル
81 ノズル先端
86,89 開閉制御弁
90 差圧計
S スラグ(灰)
Claims (9)
- 鉄鉱石から銑鉄を製造する高炉本体の羽口から熱風とともに補助燃料の微粉炭を吹き込むブローパイプに設けられ、前記微粉炭のスラグに前記熱風及び/または前記微粉炭の燃焼熱により溶融する成分を含んでいるブローパイプ用のスラグ除去装置であって、
前記ブローパイプの内部で前記微粉炭を吹き込むインジェクションランスと、
前記インジェクションランスとは別に設けられ、前記ブローパイプ内に固形物及び可燃性液体の少なくとも一つを吹き込む噴射ノズルとを備え、
前記噴射ノズルのノズル先端が、前記ブローパイプの軸方向において前記インジェクションランスの先端部と略一致する位置か、あるいは、若干上流側に設置され、前記熱風の流れ内に設けられているスラグ除去装置。 - 前記噴射ノズルは、
前記ブローパイプ内に前記固形物を吹き込む場合に、
前記固形物を供給する固形物供給源と、前記固形物供給源から前記噴射ノズルに前記固形物を供給する固形物供給配管とを備え、前記固形物供給配管は前記固形物の供給を制御する第1の開閉制御弁を備えている請求項1に記載のスラグ除去装置。 - 前記噴射ノズルから、前記ブローパイプ内に前記固形物を吹き込む場合に、
前記固形物は、前記羽口付近の温度より融点が高くかつ前記微粉炭より粒径が大きい請求項1または請求項2に記載のスラグ除去装置。 - 前記インジェクションランスより上流側となる位置に、前記熱風の流れに旋回流を発生させる旋回流形成部を備えている請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のスラグ除去装置。
- 前記噴射ノズルは、
前記ブローパイプ内に前記可燃性液体を吹き込む場合に、
前記可燃性液体を供給する液体供給源と、前記液体供給源から前記噴射ノズルに前記可燃性液体を供給する液体供給配管を備え、前記液体供給配管は前記可燃性液体の供給を制御する第2の開閉制御弁を備えている請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のスラグ除去装置。 - 前記噴射ノズルから、前記ブローパイプ内に前記固形物及び前記可燃性液体を吹き込む場合に、
前記噴射ノズルは、前記固形物を噴射する第1の噴射ノズルと、前記可燃性液体を噴射する第2の噴射ノズルとを備えている請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のスラグ除去装置。 - 前記噴射ノズルより上流側の熱風圧力と、前記ブローパイプの出口近傍熱風圧力との差圧により、スラグ付着状況を検出するスラグ検出手段を備えている請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のスラグ除去装置。
- 前記スラグ検出手段で検出したスラグ付着状況がスラグ除去閾値以上と判断し、
前記噴射ノズルから、前記ブローパイプ内に前記固形物を吹き込む場合に、前記固形物の供給を制御する第1の開閉制御弁を開いて前記固形物が噴射され、
前記噴射ノズルから、前記ブローパイプ内に前記可燃性液体を吹き込む場合に、前記可燃性液体の供給を制御する第2の開閉制御弁を開いて前記可燃性液体が噴射され、
前記噴射ノズルから、前記ブローパイプ内に前記固形物及び前記可燃性液体を吹き込む場合に、前記第1の開閉制御弁を開いて前記固形物が噴射されるとともに、前記第2の開閉制御弁を開いて前記可燃性液体が噴射され、
前記スラグ検出手段で検出したスラグ付着量がスラグ除去停止閾値より少ないと判断し、
前記噴射ノズルから、前記ブローパイプ内に前記固形物の吹き込みを停止する場合に、前記第1の開閉制御弁を閉じて前記固形物の噴射が停止され、
前記噴射ノズルから、前記ブローパイプ内に前記可燃性液体の吹き込みを停止する場合に、前記第2の開閉制御弁を閉じて前記可燃性液体の噴射が停止され、
前記噴射ノズルから、前記ブローパイプ内に前記固形物及び前記可燃性液体の吹き込みを停止する場合に、前記第1の開閉制御弁を閉じて前記固形物の噴射が停止されるとともに、前記第2の開閉制御弁を閉じて前記可燃性液体の噴射が停止される請求項7に記載のスラグ除去装置。 - 前記スラグ付着状況が前記スラグ除去閾値より大きい値に設定されたアラーム出力閾値を備えている請求項8に記載のスラグ除去装置。
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