JP6057444B1 - 遺体保存方法および遺体保存器具 - Google Patents
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Abstract
Description
そのため以前にはタブー視されていた死に関する話題が肯定的に受止められ、開放的に人前で話をできる社会傾向にある。
葬儀の執り行いに関しても、一つの在り方として「故人をより生前に近い状態で弔う」ことを希望する遺族のニーズが存在する。
またその他の遺体保存手法としては、欧米で発達してきたエンバーミング(血液・体液・内臓など腐敗変質しやすい物質を遺体内から除去する遺体保存手法)、さらには二酸化塩素を利用した遺体の保存手法も散見される(例えば、特許文献1・2参照)。
社会的な環境意識が高まり各所で二酸化炭素の削減が叫ばれるなか、二酸化炭素そのものから成るドライアイスを用いた遺体保存手法は時代に逆行する感が否めない。すなわちドライアイスを使用する手法は、二酸化炭素排出の直接的な一因となり環境に対する配慮に欠けるという問題がある。
故人を弔うために駆けつけた葬儀の参列者や葬儀を裏方として支える者に対し遺体保存用の二酸化塩素を知らず知らずのうちに吸わせてしまうような状況は、健康面への配慮を欠くだけでなく道義的にも好ましいものとはいえない。
そのため二酸化塩素を使った遺体の保存手法も上述した負の側面をはらむがゆえに、次善の策といった感が否めずあまり推奨できる遺体保存方法とはいえない。
この点から捉えると同文献3・4の技術は、ドライアイス・二酸化塩素を使った従来的な手法よりも新しい遺体保存方法の領域に踏込んだものといえる。
容易に想像できるように遺体の腐敗は皮膚などの体表部分から進行するよりも、むしろ体内(内臓、体内に残存する血液・体液など)から進行していくことが多い。
そのため遺体周囲に消臭抗菌剤を配したとしても、その消臭抗菌効果は腐敗進行の支配的要因となる体内の血液・体液や内臓に直接的に及ぶとは考えにくい。
それゆえに特許文献3の技術では純粋な遺体保存方法として捉えたときに、遺体の腐敗進行を食い止める効果が充分に発揮される手法とは言い難い。
しかしながら特許文献4では遺体保存の具体的手法に関する説明としては、単に「抗菌消臭剤を、遺体の口・鼻・耳・肛門から注射器で注入するとともに遺体表面にも塗布する」と記載されているにとどまる。
そのため同文献4は、遺体保存の手法として純技術的に捉えたときに「抗菌消臭剤がどのような経路を経て遺体内に注入され、抗菌消臭剤が体内のおよそどの辺りの部位に到達・浸透することで腐敗進行を遅らせる効果が発揮されるのか」開示されたものではなく、確固たる論理性をもって確立された遺体保存方法であるとは言い難い。
そこで上記の課題を解決するために本願の第1発明に係る遺体保存方法は、
穀物から抽出されたアミノ酸をそれぞれに含んで成る2種類の防腐剤を使用して遺体を保存する遺体保存方法であって、
遺体内部に注入される前記アミノ酸を含んだ液状の体内用防腐剤を注射器に充填する充填行程と、
同体内用防腐剤に対し海藻由来のゲル剤とグリセリンを配合して成る体表用防腐剤を、前記遺体の毛髪と遺体全身の体表部分に塗布する体表保護行程と、
前記遺体を仰向けにした状態で下顎を上向きにすることで同遺体の鼻腔から気管までを開通させる気道確保行程と、
細径のチューブを下顎を上向きにした遺体の鼻腔から挿入し、同チューブの一端は遺体の体外に出したまま保持する一方、同チューブの他端を遺体内の咽頭を通過させて喉頭まで到達させるチューブ挿入行程と、
前記体外に出したままのチューブの一端を体内用防腐剤を充填した注射器の先端部に取付けて連通させるチューブ取付行程と、
前記注射器の押子を押込むことで体内用防腐剤を遺体内に注入する体内注入行程と、を備え、
前記体内注入行程では、
前記注射器から送られた体内用防腐剤が咽頭に挿通されたチューブを通じて喉頭周辺に注入されることで、遺体の下気道周辺ならびに食道以下の消化器系に効率的に浸透する構成とした。
しかし下顎を引いた状態にすると(同図4)、舌根70(舌の付け根)が背側に落込む「舌根沈下」が起こるとともに、舌根70と連動して喉頭軟骨が持上がることで喉頭蓋により上気道71(下気道への入口)が閉ざされてしまう(気道閉塞)。
そのため何らかの手だてを講じなければ、外部から遺体の体内に防腐剤を効率的に浸透させることは難しい。
遺体保存処置を施す際に直面する上記問題に対する明確な解決策は、特許文献4をはじめとする穀物由来の抽出成分を含む抗菌消臭剤を用いる従来の遺体保存方法では与えられてこなかった。
さらに第1発明に係る遺体保存方法では、下顎が上向いて気道が開通した遺体の鼻腔72から細径のチューブ40を挿入し(図5(b)参照)、同チューブ40の一端は遺体BDの体外に出したまま保持する一方、同チューブ40の他端を遺体内の咽頭を通過させて喉頭74まで到達させる。
なお咽頭73は、吸気・呼気を通す呼吸器の役割ととともに、口腔から食物を食道に運ぶ消化器としての役割も果たす。
また人体内部では喉頭74ちかくにおいて、肺に吸気を導くための気管75と、食物を胃腸に導くための食道76に分岐する(図4)。
このようにすることで体内用防腐剤が、上気道71(鼻腔・咽頭・喉頭)に滞留してしまうことなく、より遺体内部の奥深くに位置する、食道以下の「消化器」(胃・小腸・大腸など)や、「下気道」(気管・主気管支・肺)に効率的に注入される。
そのため遺体内の深部にある腐敗変質物質(体内の血液・体液や内臓)に直接的に防腐剤を行き渡らせることができる。特に消化管壁に体内用防腐剤PR2が浸透することで、遺体内の腐敗変質物質の腐敗進行を効果的に食い止める(遅らせる)ことができる。
まず豆類(たとえば大豆)を水に浸漬してから、水分を十分に吸収した豆を砕いて粥状にする。続いて粥状にした豆の溶液を100℃付近で10〜20分加熱し、さらに80℃付近で20〜60分加熱する。
その後、この溶液を濾過し、濾過で得られた液に水(精製水ならびに特殊還元性アルカリイオン水)と凝集剤を添加する。そして添加後の溶液を100℃付近で20〜60分加熱し、固形物を分離することで体内用防腐剤PR2を得ることができる。同体内用防腐剤のpH値は、4.5前後である。
これらのうち本発明の防腐剤を特徴づける組成物は「ブチレングリコール」と「特殊還元性アルカリイオン水」である。
またブチレングリコールは人間の皮膚に対する毒性がないため、本願の防腐剤(体表用防腐剤および体内用防腐剤)を利用して遺体保存方法を実施する上で「作業者の安全性についても確保」することができる。
しかしながら本願の遺体保存方法によればアルコールに代えてブチレングリコールを使用して体内用防腐剤・体表用防腐剤が作られているため、イスラム教のハラル(イスラム法で許された項目)認証を受けることも可能であり、本遺体保存方法を多様な宗教の信仰者が幅広く利用することが可能となる。
この特殊還元性アルカリイオン水のpH(power of hydrogen:水素イオン濃度指数)値はpH(20℃)12〜12.4であり「非常に強いアルカリ性」を示しており、比重(20℃)は1.002である。
このような効果を奏する特殊還元性アルカリイオン水を遺体保存に応用すれば「遺体の体表部分や内部に潜む各種ウイルスの不活化や細菌の抑制」が可能である。
本発明において体表用防腐剤PR1(図2)に添加される海藻由来のゲル剤の粘性は、原材料の海藻に含まれる粘着成分であるフコダインなどによりもたらされる。
さらに遺体の取扱いに携わる者(葬儀業者など)が遺体に触れる必要のある作業をこなすときにも、ウイルスや細菌による作業者の感染症防止が可能となる。
その一例として陽イオン界面活性剤には、細菌細胞膜のタンパク質を変性させることによって殺菌性を発揮する塩化ベンザルコニウムが挙げられる。
また抗菌作用のある両性イオン界面活性剤の例としてラウリルアミノプロピオン酸、さらに抗菌作用のある非イオン系界面活性剤の例としてポリオキシ−プロピレングリコールが挙げられる。
界面活性剤が有する高い浸透性により、体表用防腐剤PR1の体表塗布・体内用防腐剤PR2の体内注入を行った際、これらの防腐剤PR1・PR2が効率よく遺体に浸透できる。
さらに本防腐剤PR1・PR2(図2)に添加するキレート剤(配位結合によって金属イオンと錯イオンを形成するもの)についても、エチレンジアミン4酢酸2ナトリウム(EDTA2Na)をはじめとする一般的なものを使用すればよい。
そのため塩素系消毒液を利用して遺体に消毒を施すと、殺菌作用・抗菌作用だけでなく塩素の漂白効果により衣類・敷物類などが白抜きされてしまうおそれがある。
しかしながら本願の遺体保存方法で使用する防腐剤は、染色した繊維製品に噴霧して脱色試験・変色試験を行った結果、脱色・変色の生じないことが確認されている。
そのため本防腐剤が遺体に着用された衣服などに付着しても、脱色(白抜き)を防止できる。
また上記の課題を解決するために本願の第2発明に係る遺体保存方法は、第1発明に係る遺体保存方法であって、
同遺体保存方法による保存対象が人の遺体である場合、前記チューブ挿入工程において、内径が1mm〜3mmかつ長さが13cm以上に形成された筒状の前記チューブを遺体の鼻腔から挿入する構成とした。
チューブの材料には種々の一般的な材料を採用可能であり、例えば、PVC(ポリ塩化ビニル)樹脂、FEP(4フッ化エチレン・6フッ化プロピレン共重合体)樹脂、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)樹脂、PP(ポリプロピレン)樹脂、シリコンゴム、ナイロンエラストマなどを使用すればよい。
なお本遺体保存方法で使用する注射器は、市場で広く流通している一般的な製品を採用できる。
上記の課題を解決するために本願の第3発明に係る遺体保存器具は、穀物から抽出されたアミノ酸をそれぞれに含んで成る2種類の防腐剤を使用して遺体を保存するための遺体保存器具であって、
遺体内部に注入される前記アミノ酸を含んだ液状の体内用防腐剤と、
同体内用防腐剤に対し海藻由来のゲル剤とグリセリンを配合して成る防腐剤であって前記遺体の毛髪と遺体全身の体表部分に塗布される体表用防腐剤と、
同遺体の鼻腔から挿入される細径のチューブであって、一端が遺体の体外に出たまま保持され、他端が遺体内の咽頭を通過して喉頭まで到達されるチューブと、
前記体内用防腐剤を充填する注射器であって、前記体外に出したままのチューブの一端を先端部に取付け、押子を押込むことで体内用防腐剤を遺体内に注入する注射器と、
を備え、
前記注射器から送られた体内用防腐剤が咽頭に挿通されたチューブを通じて喉頭周辺に注入されることで、遺体の下気道周辺ならびに食道以下の消化器系に効率的に浸透する構成とした。
また上記の課題を解決するために本願の第4発明に係る遺体保存器具は、第3発明に係る遺体保存器具であって、
前記チューブの他端に取付けられる紡錘形状のスムーサであって、金属製ないしはプラスチック製からなる同スムーサ、をさらに備える構成とした。
[実施形態]
本願の遺体保存方法は、穀物から抽出されたアミノ酸をそれぞれに含んで成る2種類の防腐剤を使用して、人や動物の遺体を保存する(腐敗進行を遅らせる)ものである。
本発明の実施形態は、植物性アミノ酸の一種である「大豆アミノ酸」由来の天然系有効成分を含む防腐剤を使用し、遺体の体表部分ならびに体内の双方から遺体の腐敗進行を防止する遺体保存方法を構成した例である。
同体内用防腐剤に海藻由来のゲル剤とグリセリンを配合して成る体表用防腐剤を、遺体の毛髪と遺体全身の体表部分に塗布する「体表保護行程」(ステップS2)と、を備える。
下顎を上向きにした遺体の鼻腔から細径のチューブを挿入し、同チューブの一端は遺体の体外に出したまま保持する一方、同チューブの他端を遺体内の咽頭ならびに喉頭を通過させて気管まで到達させる「チューブ挿入行程」(ステップS4)と、を備える。
注射器の押子を押込むことで体内用防腐剤を遺体内に注入する「体内注入行程」(ステップS6)と、を備える。
上述した「体内注入行程」では、注射器から送られた体内用防腐剤が咽頭に挿通されたチューブを通じて喉頭周辺に注入されることで遺体の下気道周辺ならびに食道以下の消化器系に効率的に浸透するように構成される。
以下、この内容について詳しく説明する。
また体表用防腐剤PR1は、体内用防腐剤PR2に海藻由来のゲル剤とグリセリンを配合して成る防腐剤である。体表用防腐剤PR1は、遺体の毛髪と遺体全身の体表部分に塗布される。
なお1体の成人遺体に対する使用量(容量)は、体表用防腐剤PR1が「120ml」、体内用防腐剤PR2が「50ml」である。
同チューブ40は、注射器30の先端部32と接続されるものであり塩化ビニル・シリコンなどの材料からなる。
特に保存対象が人の遺体である場合、チューブ40の筒内径は1mm〜3mmの範囲内で選択することが望ましい。
また注射器30の先端部32には体外に出たままのチューブ40の一端が取付けられ、ピストンとして機能する押子33を押込むことで体内用防腐剤PR2を遺体内に注入する。
このようにして注射器30から送られた体内用防腐剤PR2が咽頭に挿通されたチューブ40を通じて喉頭周辺に注入されることで、遺体の消化器系(胃・小腸・大腸)や下気道(気管・気管支・肺)に効率的に浸透する。
なお死後硬直(筋源繊維タンパク質のミオシンとアクチンが強く結合してアクトミオシンを生成し、筋肉が硬くなっていく現象)は、死後およそ12時間で大関節・末梢関節などの全身に及ぶ。そのため、本願による遺体保存処置は「死後12時間以内に施す」ことが望ましい。
本例の防腐剤PR1・PR2では大豆の抽出成分を抗菌成分として利用している。
大豆には、人の体内で合成することのできない必須アミノ酸であるトリプトファン・リシン・メチオニン・フェニルアラニン・トレオニン・バリン・ロイシン・イソロイシン・ヒスチジンが含まれている。
また同表1中における菌量の単位は「CFU(Colony Forming Unit)/ml」であり、コロニーを形成する能力のある単位数(1ml中に存在する細菌の個数)を表す。
ノロウイルスは、非細菌性急性胃腸炎を引起こすウイルスである。
またSARS(Severe Acute Respiratory Syndrome)コロナウイルスは、重症急性呼吸器症候群の病原体となるウイルスである。
なおインフルエンザウイルスについては、H1N1株を使用して試験を実施した。
さらに本例の防腐剤PR1・PR2は表1から看取されるように、カビの繁殖を抑制する「抗カビ効果」を有することも確認されている。
また黄色ブドウ球菌は、人の皮膚・消化管(腸)などに常在する菌であり表皮感染症・食中毒・肺炎・髄膜炎・敗血症などを引起こすおそれがある。
腸管出血性大腸菌O−157は、加熱の不十分な食材から感染することの多い、出血性大腸炎を引起こす菌である。
また大腸菌は、尿路感染症の原因菌にもなりうる。
レジオネラ菌は、レジオネラ肺炎(在郷軍人病)をはじめとする多くのレジオネラ症を引起こす種を含んだ通性細胞内寄生性菌である。
またサルモネラ菌は、腸チフス・パラチフスないしは感染型食中毒を引起こすものを含んだ腸内細菌である。
ここで本例の遺体保存方法で使用される防腐剤PR1・PR2は上述のようにウイルス不活化効果・抗菌効果が有意に認められるため、遺体の腐敗進行防止と作業者の感染症防止に資する。
腐敗とは、細菌などをはじめとする微生物により生物由来の有機物(特に、蛋白質などの窒素を含んだ有機物)が分解されることである。
そして遺体の腐敗変質物質(体内の血液・体液や内臓)が腐敗すると、腐敗アミン(インドール、ケトンなど)の生成分解により不快臭(主に「アンモニア」や「硫化水素」による臭気)を放つ。
しかしながら本防腐剤PR1・PR2は、図3(a)に示すように「アンモニア」に対しても、また図3(b)に示すように「硫化水素」に対しても優れた消臭効果を発揮することが実験により確認されている。
上述した2種類の低級脂肪酸のうちイソ吉草酸については足裏部分の臭気として、またノルマル酪酸については口臭の一原因として人体に対する関連性を有する。
上記実験に使用したアンモニア・硫化水素・イソ吉草酸・ノルマル酪酸・トリメチルアミンはすべて悪臭防止法の規制対象物質に掲げられている。
このようにすることで防腐剤PR1・PR2の浸透性が高まり、ウイルス不活化効果・抗菌効果・消臭効果を効率的に発揮させることができる。
本方法MDは図1に示すように、充填行程(ステップS1)と、体表保護行程(ステップS2)と、気道確保行程(ステップS3)と、チューブ挿入行程(ステップS4)と、チューブ取付行程(ステップS5)と、体内注入行程(ステップS6)と、から構成される。
このとき注射器30の先端部32を体内用防腐剤PR2に浸してから吸上げてもよく、押子33をいったん引抜いて容体31に体内用防腐剤PR2を注いでもよい。
「体表保護行程」(ステップS2)は、体表用防腐剤PR1を遺体の全身表面(頭髪を含む)に塗布する行程である。同行程(ステップS2)により、体表用防腐剤PR1に含まれる「抗菌成分を遺体の体表部分に定着」させる。
なお同防腐剤PR1を塗布するための手段は任意であり、ガーゼなどの布製品を使用してもよく、また素手により塗布してもよい。
「気道確保行程」(ステップS3)では、同防腐剤PR2を体内に注入する際に遺体の気道が確保できるよう「遺体を仰向けの状態にし、さらに下顎を上向きにする」行程である。
遺体をこのような姿勢にすることで舌根沈下に起因する気道閉塞を回避でき、鼻腔72から気管・食道までが開通した状態となる(図5(a))。そのため体内用防腐剤PR2を遺体内の深部へと流し込むことが容易になる。
上記理由ゆえに「気道確保行程」は、遺体内部の腐敗変質物質の隅々まで体内用防腐剤PR2を効率的に浸透させるための本遺体保存方法における大きな特徴点の一つとなる。
「チューブ挿入工程」(ステップS4)は、防腐剤を充填した容体11の先端部に、屈曲可能な可撓性のチューブ40を取付ける工程である。
上記チューブ40は、注射器30の先端部32と接続するものであり塩化ビニル・シリコンなどの軟性材料からなる。保存対象となる遺体が人のものである場合、鼻腔から挿通させることを考慮し、チューブ40の筒内径を1mm〜3mm程度に選定することが望ましい。
「チューブ取付行程」(ステップS5)は、体内用防腐剤PR2を充填した注射器30の先端部32に、可撓性のチューブ40を取付ける工程である。
このとき遺体外部にあるチューブ40の端から、体内用防腐剤PR2が遺体BDの喉頭ちかく(気管および食道周辺)に注入される(図5(c))。
これにより同防腐剤PR2が、鼻腔・咽頭に滞留することなく遺体深部の胃・小腸・大腸などに到達し、消化管壁から効率的に浸透する。
以上で、遺体を保存するための一連の作業が終了する。
上記実施形態に係る遺体保存方法MDは、体表保護行程(ステップS2)・チューブ挿入行程(ステップS4)など作業者が遺体に触れるおそれのある作業完了後に、作業者の手足・衣服・手袋などに体内用防腐剤PR2をスプレー噴霧してもよい。
このようにすれば遺体保存処置に関与した作業者の着用物・使用物も消毒されるため、より一層の感染症防止効果を期待できる。
本例の防腐剤PR1・PR2の抗菌有効成分は、大豆由来のアミノ酸に限らず、タンパク質の構成成分となるアミノ酸であるグリシン・システイン、または、グリシンの2分子がペプチド結合したグリシルグリシンなど、ウイルス不活化作用のある任意の植物性または動物性由来のアミノ酸を採用することも可能である。
なお防腐剤PR1・PR2そのものは、この抗菌有効成分に界面活性剤を配合して調製する。
またグリシン・システイン・グリシルグリシンは強い消臭作用も併せ持つため、作業者による遺体への保存処置に際し、遺体から放たれる臭気への不快感を和らげることができる。
体表用防腐剤PR1・体内用防腐剤PR2を貯留する各容器10・20(図2)としてはボトル形状に限らず、プラスチックフィルムや金属箔もしくはこれらを多層に重合わせて袋状に成形したパウチ容器(図示略)も使用できる。
この場合、防腐剤PR1・PR2が充填される内側にポリプロピレン、外側にはポリエチレンテレフタレート(PET)等の合成樹脂やアルミ箔を積層加工(ラミネート加工)したフィルムで構成すればよい。
遺体の鼻腔から挿入されるチューブ40については図6に示すように、遺体内の咽頭を通過して喉頭まで挿通される同チューブ40の他端にスムーサ41(金属製またはプラスチック製のキャップ)を取付けてもよい。
このようにすることでチューブ挿入行程(図1のステップS4)において、遺体内の咽頭を通過して喉頭まで挿通されるときの抵抗を少なくすることができる。
なおスムーサ41の先端部を尖った形状にすると遺体内で引っかかりやすくなるため、丸みを帯びた紡錘形状などにすることが望ましい。
またチューブ40の他端にスムーサ41を装着する手法に代えて、遺体BDの鼻腔より挿入する「チューブ40自体の先端形状に丸みを持たせる」ことで、図5(b)のごとく鼻腔壁や軌道に引っかかることなく遺体BDの喉頭ちかく(気管や食道周辺)までスムーズにチューブ40他端を挿入することができる。
なおチューブ40自体の先端形状に丸みを持たせる(紡錘形に形成する等)場合、必ずしもチューブ40の両端を丸くする必要はなく、チューブ40の両端部のうち片側のみ(遺体BD内の咽頭を通過させて喉頭まで到達させる側の他端)に丸みを持たせるようにしてもよい。
鼻腔から体内用防腐剤PR2を注入する器具は必ずしもシリンジ(注射器30)とチューブ40を組合わせたものである必要はなく、浣腸する際にごく一般的に用いられているイチジク形状の注入器(図示略)なども代用可能である。
このような注入器を使用する場合にも、挿入部分(鼻腔から遺体BD内に挿入する管)の長さは「13cm」以上とすればよい。
大規模災害などにより死亡者がほぼ同時期に多数発生した場合、それらの遺体1体1体に対して本遺体保存方法MDによる処置を施すには沢山の人手が必要とされてしまう。
このような状況下では遺体保存処置がなされていない遺体について、遺族による対面のときまでに腐敗がひどく進行してしまっているおそれがあり、遺族の心証も好ましくない。
そのため本遺体保存方法MDでは、体内用防腐剤PR2の体内注入行程(図1のステップS6)を省き、体表用防腐剤PR1の遺体表面に対する塗布のみで対処してもよい。この場合、体内用防腐剤PR2を使用しないことを勘案し、同防腐剤PR1の塗布量を多めに調整する。
本願発明の遺体保存方法MDは、犬や猫などをはじめとするペットの遺体にも応用可能である。
ペットに対して本方法MDを適用する場合でも、図1に示した処置手順は同一である。
ただし人とペットでは体格が大きく異なるため、遺体保存対象となるペットの体格に応じて、体表用防腐剤PR1・体内用防腐剤PR2の使用量を適宜調整すればよい。
成人の遺体であれば体表用防腐剤PR1「120ml」・体内用防腐剤PR2「50ml」をそれぞれ使用するところを、例えば、小型犬であれば体表用防腐剤PR1「12ml」・体内用防腐剤PR2「5ml」程度の使用量に留めてもよい。
PR2 体内用防腐剤
10 容器
20 容器
30 注射器
40 チューブ
41 スムーサ
MD 遺体保存方法
Claims (2)
- 穀物から抽出されたアミノ酸をそれぞれに含んで成る2種類の防腐剤を使用して遺体を保存する遺体保存方法であって、
遺体内部に注入される前記アミノ酸およびブチレングリコールを含んだ液状の体内用防腐剤であって同体内用防腐剤の全体量に対してナトリウム・マグネシウムなどのミネラル分を含むpH12のアルカリ性電解水が6%添加されてなるpH4.5に調整された体内用防腐剤を注射器に充填する充填行程と、
アミノ酸およびブチレングリコールを含むとともに全体量に対してナトリウム・マグネシウムなどのミネラル分を含むpH12の特殊還元性アルカリイオン水が6%添加されてなるpH4.5に調整された体内用防腐剤に対して海藻由来のゲル剤とグリセリンを配合して成る体表用防腐剤を、前記遺体の毛髪と遺体全身の体表部分に塗布する体表保護行程と、
前記遺体を仰向けにした状態で下顎を上向きにすることで同遺体の鼻腔から気管までを開通させる気道確保行程と、
細径のチューブを下顎を上向きにした遺体の鼻腔から挿入し、同チューブの一端は遺体の体外に出したまま保持する一方、同チューブの他端を遺体内の咽頭を通過させて喉頭まで到達させるチューブ挿入行程と、
前記体外に出したままのチューブの一端を体内用防腐剤を充填した注射器の先端部に取付けて連通させるチューブ取付行程と、
前記注射器の押子を押込むことで体内用防腐剤を遺体内に注入する体内注入行程と、
を備え、
前記体内注入行程では、
前記注射器から送られた体内用防腐剤が咽頭に挿通されたチューブを通じて喉頭周辺に注入されることで、遺体の下気道周辺ならびに食道以下の消化器系に効率的に浸透する
ように構成されたことを特徴とする、遺体保存方法。
- 穀物から抽出されたアミノ酸をそれぞれに含んで成る2種類の防腐剤を使用して遺体を保存するための遺体保存器具であって、
遺体内部に注入される前記アミノ酸およびブチレングリコールを含んだ液状の体内用防腐剤であって、同体内用防腐剤の全体量に対してナトリウム・マグネシウムなどのミネラル分を含むpH12のアルカリ性電解水が6%添加されてなるpH4.5に調整された体内用防腐剤と、
アミノ酸およびブチレングリコールを含むとともに全体量に対してナトリウム・マグネシウムなどのミネラル分を含んだpH12の特殊還元性アルカリイオン水が6%添加されてなるpH4.5に調整された体内用防腐剤に対して海藻由来のゲル剤とグリセリンを配合して成る防腐剤であって前記遺体の毛髪と遺体全身の体表部分に塗布される体表用防腐剤と、
同遺体の鼻腔から挿入される細径のチューブであって、一端が遺体の体外に出したまま保持され、他端が遺体内の咽頭を通過して喉頭まで到達されるチューブと、
前記体内用防腐剤を充填する注射器であって、前記体外に出たままのチューブの一端を先端部に取付け、押子を押込むことで体内用防腐剤を遺体内に注入する注射器と、
を備え、
前記注射器から送られた体内用防腐剤が咽頭に挿通されたチューブを通じて喉頭周辺に注入されることで、遺体の下気道周辺ならびに食道以下の消化器系に効率的に浸透する
ように構成されたことを特徴とする、遺体保存器具。
Priority Applications (2)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2015201691A JP6057444B1 (ja) | 2015-10-13 | 2015-10-13 | 遺体保存方法および遺体保存器具 |
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